題「子猫」第4話
 一護が今居るのは、有名な菓子処「久里屋」
浮竹に連れられてきた。何でも好きなものを食べると良いと言われ、並べられている菓子を見つめていた。
もちろん、やちるや他のメンバーも居た。色々迷い、いつものそば饅頭と新作だと出された綺麗な花の形をした和菓子にした。
尻尾を揺らしながら、嬉しそうに眺めている。一護は花の和菓子をもう一つ指差した。
「ん?もう一つかい?何個でも良いんだぞ?」
言いながら浮竹が渡してやると紙に包んで袂に入れた。
「あー、いっちー剣ちゃんに見せてあげるんでしょ?」
やちるの問に、こっくり頷き大切そうに袖の袂を触った。

― 数分前、十一番隊隊舎に浮竹が乱菊達とやってきた。
一護は縁側で、胡坐をかいた剣八の足の上に腹這いになって、じゃれていた。
「何だ、半病人がこんなとこになんか用か?」
剣八の問いかけに、
「いや、一護君とやちるちゃん達と久里屋に行ってお茶でも飲もうかと思ってね。誘いに来たんだが・・・」
一護が剣八を見上げる。苦い顔をしている。
「その様子じゃ一護君は無理そうだね」
我関せずといった感じで足をブラブラさせ、剣八の膝に頭を乗せていた。
「一護、浮竹が菓子食わせてくれるってよ」
また見上げると、座り直し顔を覗き込んできた。
「行って来いよ、菓子は好きだろうが」
尻尾ですりすりすると頬をペロリと舐めた。草鞋(わらじ)が履けないので履かせてもらう。
剣八が乱菊を呼び止めた。
「おい、松本」
「はい?何ですか?更木隊長」
「一護に酒は飲ますなよ」
「はぁ、何でですか?」
「何ででもだ、分かったな」
少しきつめの口調に乱菊は頷いた。おそらく大変な目に合うだろうから、絶対飲まさないようにしようと思った。

 場面は久里屋に戻って、面々は二階に通され、お茶とそれぞれのお菓子にきゃあきゃあ言っている。
浮竹は、ほんわかした笑顔でお茶を啜っていた。
一護は、花の形の菓子を眺めては尻尾を揺らしている、その場にいた全員の顔が綻んだ。
「おやぁ、浮竹ってば自分ばっかり女の子と遊んで、ずるいねぇ」
京楽隊長だ。
「何だ、来てたのか?京楽」
「まあね、七緒ちゃんがお酒飲ませてくんないから、いつものヤツ買いに来たら楽しそうな声が聞こえてきたからさ」
おや、と一護の方に目をやる京楽。
「珍しいね、一護君が一人で皆といるなんて。剣八は何にも言わなかったのかい?」
「ちゃんと許可は取ったよ」
笑いながら浮竹が言った。
きょとん、と京楽を見ていたがやちるが、
「いっちー、早くお菓子食べよー、あたしもね、いっちーと同じやつ選んだよ。一緒に食べよ」
と言ってきたので、食べ始めた。花の形をした菓子は、はんなりとした甘さですぐ口の中で溶けていった。
後に残ったのは鼻腔をくすぐる花の香りだった。
「くふん・・・」
気に入ったようだ、尻尾を揺らして口に運ぶ。
「おいしいねぇ、いっちー」
「にゃあ」
お茶を飲んで食べ終わると、浮竹と京楽が笑いながら話していた。他のメンバーもお菓子に舌鼓を打ち、話に花を咲かせていた。
一護が京楽の持っている変わった形の最中に気付いた。フンフンと匂いを嗅ぐと、
「ん?これが食べたいのかい?」
京楽が差し出すとパクリと一口食べる。パクパクと一個平らげた。
「おや、おいしかったかい?」
「うるるる」
一護に気付いた乱菊が、
「だめですよ!京楽隊長、一護にお酒飲ませちゃ、更木隊長に言われてるんですから」
「飲ませてないよ?徳利最中食べただけだよ」
しかし一護の顔はほんのり赤くなり、眼は潤んでいた。くてんとその場に倒れた。
「い、一護君?」
一護はペタリと顔を畳につけていた。冷たくて気持ち良いようだ。
「酔ってるね、酒粕入ってるからかな?」
「うああん」
一護が鳴いた。京楽はぎくっとした。そのうち一護が脱ぎ出した。
「きゃあ!何やってんの!一護やめなさい!」
「なあぁんん、ああん」
暑いのか汗を掻いている。しかしほとんど前を肌蹴ている一護をほっておいては剣八に何を言われるか・・・。
「一護!ごめんね。縛道の一「塞」!」
乱菊が鬼道をかける。
「うああ?」
動かなくなった四肢に戸惑いながらも暴れなかった。
「やちる、いまのうちに更木隊長、呼んできて。あたしらじゃ何もできないわ」
「うん!分かった!」

 すぐにやちると剣八が現れた。一護は、はぁはぁ、と息を荒くし、尻尾はまるで蛇のように畳の上を這いずり回っていた。
「なあう、うう、ああう」
剣八に気付いた一護はしきりに鳴いた。
「酒は飲ますなって言ったろうが・・・」
「すいません」
「いや、ボクが徳利最中食べさせちゃったんだよ」
ちらと京楽に視線を投げると、
「鬼道かけてんのか」
と聞いた。
「あ、ハイ、全部脱ぎそうだったもので、つい・・・」
乱菊が話す。
「ふうん、まあ良い。もう解け、連れて帰る。やちる、一護のかわりにたらふく食っとけ」
「うん!わかった!あっ!剣ちゃん、いっちーの袖にお菓子入ってるから気をつけてね」
「袖に菓子だ?あぁ、これか」
確かめると一護を担いで出て行った。
「大丈夫かな?一護君」
「さあね、剣八も大変だね。あんなに甘く鳴かれてさ」
小さく溜め息をついてつぶやいた京楽。

 「あ、お帰りなさい。隊長一護君大丈夫でした?」
「弓親、人払いだ」
「あ、はい」
担がれた一護の尻尾がくねくねと動いては剣八に絡み付く。弓親は心の中で、
(ご愁傷様、一護君)
お風呂の用意もいるなぁなどと考え人払いに行った。
 自室に一護を連れていくと敷いてあった蒲団の上に下ろされた一護はくたりと身を横たえた。
袖の中から菓子を取り出し、部屋の隅にある文机に置いた。
(ったく、発情期が済んだと思ったら次はこれかよ・・・)
目の前のやけに扇情的な一護を見て、心の中で一人ごちた。

 酒のせいで上気した肌、潤んだ瞳に全てが煽られる。熱い呼気を奪い口付ける。
「ん、んんっ、ああ、ああん」
首に腕を回して、身体を擦り寄せる。何度も何度も擦りつける。
力が抜け蒲団の上に倒れ込む。ぐいッと身体をこちらに向け、
「他の男に晒したのか・・・?」
「?」
「他の男に肌、晒しやがって・・・!」
地を這うような低い声に怒気を感じ取った一護は脅え、耳はペタンと寝てしまった。
「怖いのか・・・?クク、さっきまで擦り寄ってきたくせによ」
「にゃ、にゃあう」
弱々しく鳴く一護の袴の腰紐を解き、全て脱がせる。
剣八の大きな乾いた手が、汗をかいてしっとりしている一護の胸や腹を這いまわった。
「あ、ああ・・・」
酒が入り敏感になっている一護は身を捩った。一護のソレは半勃ちになっていた。
剣八が胸の突起を両方、親指で押し潰し、捏ね始めると一層声を上げた。
「なあっああん、んんっ、んんっ!」
「へえ、いつもより敏感だな、じゃあここはどうだ?」
尻尾を触り始めた。
「あっ、あっ、なあぁんん」
するりと撫でただけなのにビクビクと身体を震えさせ、硬くした。
「ククッ、今日はたっぷり可愛がってやるよ・・・」
そう言うと深く口付けをしてきた。角度を変えては貪った。互いの唾液が混ざり合い口の端から伝い落ちた。
ようやく解放すると一護は、はぁ、はぁ、と息を乱し涙目になって剣八を見つめていた。
「な、なあぁう」
一声鳴くと身体を起こした。何をするのかと思いほっておくと、剣八の死覇装に手を掛けた。
袷に手を入れ脱がせていき、首筋から舌を這わせていった。
「ん、あ、なあん」
鎖骨に吸い付いては、甘く噛む。胸の突起に吸い付いたが、「くすぐってえ」と引き剥がされた。
一護は、腰紐を解いて袴を寛げた。そこから先は剣八が脱いで二人とも裸になった。
「こっからどうすんだ?一護」
一護はすでに上を向いている剣八自身に吸い付いた。チュッチュッと吸い付いたり、ペロペロ舐め始めた。
まあ、これはこれで、良いけどよと考えながら剣八は、
「一護、そんなんじゃ無理だな、教えてやるから言う通りにやってみろ」
「ん、なあう」
「舐めるだけじゃなく、咥えてみろ。歯は立てるなよ」
言われた通り口に含む。
「そんで舌動かしてみろ」
「ん・・・、ふ、う」
溢れる唾液と先走りで、湿った音が響いた。
「んん、ん、んくん」
口の中に溜まったモノを嚥下して、口から離すと下から舐めあげた。
「まぁまぁだな、最後までやるか?」
言ってる意味が分からない。首を傾げると、下腹部を指さされ、
「いつも、おまえん中に注いでるモン、飲むかって聞いてんだよ」
笑いながら言ってきた。一護は赤くなって俯いたが、行為を再開させた。尻尾が誘うように揺れている。
「へえ、可愛いな」
一護の髪をクシャリと撫でた。
「んふ、くう、ん」
一護がチュッと吸い上げ飲み込んだ刺激で剣八が吐精した。
「くっ」
「んんっ!んっ、んくん!」
突然だったので大半は口から出てしまったが、残ったモノは飲み下した。
はぁっ、はぁっ、と息も荒い一護は、剣八自身に残った白濁をペロペロ舐め清めた。
顔に付いた残りを指で掬い取り、舐め取った。
どこかうっとりとしたその顔に剣八がむしゃぶりついた。
「ん、んん、あう」
己の残滓をすべて舐めとり一護を抱き締めた。
「堪んねえな一護、返礼とご褒美やるよ」
剣八は硬くしている一護自身を口に含んだ。
「にゃっ、なああん、うあ、あああん」
揺れる腰を押さえられ、強く吸われるとあっけなく吐き出した。
「ほれ、今度はご褒美だ、後ろ向け」
言われた通り後ろを向くと、腰をぐいっと引き寄せられ上半身が蒲団に突っ伏した。
「んにゃあ!」
驚いて声を上げる一護に構わず、双丘を割り広げひっそり息づく蕾に舌を這わした。
「なっ!なあう!ああっ!ああっ!うああっ!」
敷布を握り締め悶えていると一護自身は硬さを取り戻した。尻尾で剣八の顔を叩く。
「邪魔」
一言言うと尻尾の根元を握り込んだ。
「ああう!」
ぱたたっと一護が吐精した。ひくひくと後ろも収縮する。収縮する度に舌が差し込まれた。
「ああん、んん、んっ!ふうう!はあっ!」
指を一本入れてきた。くちゅくちゅ音を立てている。
「ああう、ううん、うああ」
誘うように腰を揺らし、尻尾をあげた。指を曲げ、中でクリッと動かすと、さらに甘い声を出してきた。
「あぁあん、ああん、うううん」
「欲しいか?一護」
「あぁあう、なああん」
強請るよう鳴き続ける一護。
「俺が欲しいのか?誰でもいいのか、どっちだ?」
「に、にゃあ?」
「俺以外にあんな顔見せて、俺以外に肌晒しやがって・・・!どっちだ、一護・・・」
指で中を掻きまわす。
「んんっ!ああんっ!ああっ!ああっ!」
指が増える度にガクガク足が震え、勃ちあがった自身からは先走りが溢れていた。
「どうした一護?どっちだ、ん?」
「な、なああう・・・」
「分かんねえよ・・・、そうだ、これでイカなかったら、他の誰でもない、俺が欲しいって事にしてやろう」
「あ、ああう・・」
「優しいなぁ?これだったら分かり易いよなあ」
グチュッと指を動かした。
「はあっ!あっ!ああっ!ああっ!」
「イキそうか?誰でも良いんなら、浮竹でも京楽でも呼んでやるぞ?」
ぐちゅぐちゅと容赦なく、中を抉り続ける。
「ひいっ!んああっ!ああっ!ああっ!」
「お・・・前から垂れてきたぞ?」
空いている手で一護自身の先端に指を這わせた。
「やああっ!!ああっ!あううっ!!ううっ!!ううっ!!うううっ!!」
一護は両手で自身を握り締め、イクまいと必死だった。涙と涎で顔はぐちゃぐちゃだった。
「どうした?イキたいんだろ?ほら・・・」
さらに容赦なく今度は前立腺を攻め始めた。
「ひっ!ひいっ!ああんっ!ああっ!ああっ!やああっ!」
ぶんぶんと頭(かぶり)を振り、涙を零し続けた。そのうち後ろがキュウウと締め付けられてきた。
「イクのか?一護?誰を呼ぶ?浮竹か?京楽か?それとも他の男か・・・」
「やあ!やああっ!」
「俺が良いのか?」
こくこく頷く一護。もう眼は虚ろで空を彷徨っている。
「一護、俺はここだ、こっち見ろ」
「んああ・・・」
ひくひくと痙攣する一護の身体に触ると、びくっと跳ねる。
やり過ぎたかと、剣八は優しく口付けしながら、一護の両手を外し解放へ導いた。
「んっ!んん!ふっ!んっ、んっ、んーー!」
口を吸われながら達した一護は暫らく動けなかった。

「ひっく、ひっく、ううっ、うっ」
「何、泣いてんだ・・・」
一護は脅えたように障子の方を見ては、泣きだした。
「ふっ、ううっ、ひっ、うくっ」
どうやらイってしまった事によって違う誰かが呼ばれると思っているらしい。
「誰も呼ばねえよ・・・」
「・・・?」
しゃくりあげながら、剣八を見上げる。
「誰にも見せねえし、やらねえから安心しろ」
泣かせた事に罪悪感を感じながらも、
「続きどうすんだ?」
自分の熱いモノを押しつける。
「にゃ、にゃああう」
腕を剣八の首に回して抱き付いた。口付けると自分から舌を絡ませてきた。剣八は思う存分味わい尽くした。
くちゅっと音を立てて唇が離れるとペロリと一護が舐めてきた。
「一護、後ろ向け・・・」
言われた通りにする。腰を高く持ち上げられ、まだひくつくソコを指の腹でさする。
「は、ふうん・・・」
腰は揺らめいて、尻尾は高く上げられた。
「入れるぞ、一護」
熱く滾ったモノを宛がい、沈めていった。
「あ、ああん、うううん・・・」
はふう、と息をつき、剣八の熱さと大きさを甘受した。
剣八が動く度に、一護の口からは切ない様な甘い声が出ていた。
「んんなああぁあん」
一護の尻尾が剣八の腰に回された。可愛い事をすると苦笑しながら、強く腰を打ち付けた。
「ああうっ!うんんっ!ああっ!ああっ!あっ!あっーー!」
達した一護の強い締め付けに剣八も奥に熱を吐き出した。
「ふうっ、ほれ一護、ここにまた出されたぞ」
腰を揺らすとぐちゅっと音がした。
「んなあん」
耳元で囁かれピルピル揺れる耳に舌を這わすと、
「うああん、うんん」
と鳴き声を上げ、締め付けてきた。一護が身を捩って剣八に抱き付く。不安定な格好なのに離れようとしない。
「しょうがねえな」
剣八は一護を抱え直すと、向かい合わせで抱き合った。ようやく安心したのか頭を擦り寄せてくる一護。
「一護、まだまだ終わんねえぞ」
細い腰を掴むと持ち上げ、抜ける際(きわ)まで抜くと手を離す。
「うああっ!あ、あ」
また持ち上げると今度は浅い場所を突いてくる。
「あん、ああ、あ、あ、う、ああっ!」
グリっと前立腺に当たった。びくびくする身体にほくそ笑む剣八。
「そこか?気持ち良いのは?」
最初から知ってるくせに、そう嘯くと、奥を貫く行為とそこを抉る行為を繰り返した。
「あっ!ああっ!ひんっ!んああっ!ああん、ああっ、あっー!」
一護がイっても動きは止まらず、過ぎた快感は子供には強すぎた。
「あひっ!ひっ!ひいいんっ!あうううっ!ううっ!ううっ、あっ!あっーー!」
薄くなった精液しか出なくなっても、攻めは続いた。
「一護、あんな姿、俺以外に見せんじゃねえよ・・・、次あんな事になってたら奴らの前で気絶するまで犯してやる・・・!」
聞こえているのかいないのか、泣き叫ぶ一護。強い快楽で気絶もできない。
「あ、あ、ひっ!ひああっ!あぐっ!ううっ!んあっあっあっーー!」
最奥に突き入れられて、熱い塊を感じて一護も果てやがて気絶した。
剣八はぴくっぴくっと痙攣する一護の下腹が若干、膨らんでいるのが分かった。
自身を抜くと、ぷちゅっと己の吐き出した白濁が出た。それは一護の痙攣に合わせて外に出てきた。
ヤべえ、このまま襲っちまいそうだ。すぐに風呂場に運んで処理をした。
中を掻き出されている間、一護は無意識だろう鼻に掛った声を漏らしては剣八を煽った。
くそっ!起きてたら承知しねえ。などと自分勝手な事を考えながら、一護の身体を洗い清めた。

 部屋に戻ると蒲団が新しくなって枕元には水差しと、お粥が置いてあった。
起きたら食わせろってか・・・。気の付く事だ。口移しで一護に水を飲ませる。コクコクと小さな音を立てて水を飲む一護。
「ん・・・、なあう」
「起きたか、腹へったか?粥あんぞ」
一護は、少し不安そうにじっと剣八を見て離れようとしなかった。
「なんだ?腹減ってねえのか?」
粥を入れようと一護を膝から下ろそうとした時、慌てたように首に抱きついて離れようとしなかった。
微かに震えていた。
「一護・・・、悪かった、大丈夫だ、誰にもやらねえから」
きつく抱き締めながら、言い聞かせた。
「ふ、ふえ、うええ、うええええん、うああああん」
剣八の背中を掻き抱きながら、とうとう泣き出した。
止めるでもなく剣八は一護の背中を撫で続けた。
「ひっ、ひっ、んく、ふっ、うっ、う」
ようやく落ち着いてきた。頭を撫でながら、まだ目元に残る涙を舐めとってやった。
すん、すん、と泣きやんできたのを見計らって、髪を梳きながら、
「粥食うか?」
と聞くと、こくんと頷いた。膝から下りると大人しく待っていた。
「ほら、こっち来い」
胡坐をかいた膝を叩いて一護を呼ぶ。おずおずと近づくと膝に乗ろうか、どうしようか迷うように尻尾を動かした。
「いいから来い!」
引っ張られて膝に乗せられる。
「ほら、口開けろ」
「う、あぁ」
「早くしろ、口移しで食わすぞ」
観念したように口を開ける一護。匙で掬った粥を口に運ぶ。
「ん・・・」
ゆっくり飲み込む。それを繰り返し粥を食べ終わる。
「そういや、一護。お前なんか菓子持ってたな。腐んねえうちに食っとけ」
言われて思い出した。綺麗だと思って剣八に見せたくて持ってたのだ。紙に包まれたそれを手渡される。
「にゃあ」
「あ、なんだ?」
菓子を差し出している。
「なんだ、俺にか?」
「にゃあ」
「ふうん、甘いもんはあんま好きじゃねえけどな」
包みを開けると、そこには可愛らしい花の形をした菓子があった。
「へえ、凝ってんな。んで俺にくれんのか?」
こくんと頷いて見つめてくる。早く喰えと言われてるようだ。
ぱくっと一口食べると、上品な甘さですぐに消えてなくなった。後には花の香りが残るだけ・・・。
「美味いな。お前も半分食うか?」
嬉しそうに笑う一護に問いかける。ぴくっと反応するが、剣八にと持って帰って来たのだから食べてもらいたい。
くくっと笑うと、
「いいから、ほれお前も食いたいんだろ?」
また胡坐の上に乗せられる。
「ほら」
齧りかけの和菓子に口を付ける。鼻腔をくすぐる香りに、
「くふん・・・」
と尻尾をぱたりぱたりと揺らす。一護が齧った所を食べる剣八に一護が顔を赤くした。
「ほら、あと一口だ」
パクリと菓子を食べ、剣八の指を舐める一護。
「くすぐってえよ、ほら、腹も膨れただろ。もう寝るぞ」
抱きかかえて蒲団に横になる。正直腰がだるかった一護。もそもそと剣八の隣で腕を枕に眠りに就いた。

 翌日、起きると隣りに剣八の姿が無いので、幾分むっとして障子を開けると庭に出した、縁台で昼寝していた。
すぐ横まで行き、ぷくっと頬を膨らませじーっと見ていた。
「なんだ、やっとお目覚めか?」
「にゃあ」
「文句いうな、ここで寝りゃいいだろが」
ほれと手を伸ばしてきた。一護はその手に甘んじて剣八の胸の上で微睡(まどろ)んだ。
尻尾は剣八の足に絡み付かせて。




08/09/17作 第20作目です。なんか剣ちゃんがどんどん鬼畜になってるような気が・・・。(^^ゞ
 どうでしょうか?

08/11/30修正
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