題「子猫」
一護が猫になった。いや、こういう言い方は違うな。外見は人間のままだが中身が猫になった。
十二番隊と女性死神協会のせいだ。ご丁寧に耳と尻尾まで付けて。それは感情のまま、意思のままに動くようだ。
女連中は面白がって一護を追いかけ回す、怯えた一護は逃げまくって木の一番高い所などに隠れたり、十一番隊に入り浸っている。(いつもいるから落ち着くのか?)
 だが今日は酷かったらしく、隊首会の最中に一番隊に転がり込んできた。(因みに二足歩行だ、四足歩行は歩きにくいらしい。)
怯えきった顔で周りをみて、後ろから近付く女共の声が耳に届くとあたふたとしだした。
「あー、こんな所に居た!ホラ行くわよ一護」
と言ったのは松本乱菊と他、女性死神協会のメンバー。
一護はフーッ!と威嚇したが効き目は無いようで引きずられる様に連れて行かれようとしていた。廊下中に、
「ギャアア!ギャアア!」
という一護の叫び声が響いていた。だが扉の所で、扉に噛み付き床に爪を立て抵抗した。口の端を切って爪が剥がれかけ血だらけになって漸く、
「ヤダッ!何してんのよ!一護」
そりゃお前らだろ、俺は少し霊圧が乱れるのを自覚した。一護の方はこのスキを突いて女共から逃げ、隊長の中で一番デケェ狛村に飛び付き肩の上によじ登りしきりに威嚇している。
「おい、お前らいい加減にしとけよ」
俺が口をはさむと、
「す、すいません更木隊長!」
と言って出て行った。相変わらず狛村の上で丸くなって震えている一護の指先からは血が流れて狛村の隊長羽織に染みを作っていった。しばらくして落ち着いたのか自分の手を舐め始めた。血が止まると尻尾も舐め始めた。
完全に落ち着くと尻尾をパタンパタンと揺らし俺の方を見てきた。頭の鈴が気になるらしい。手を伸ばして触ろうとする。
「ニャア」
手が届かない事にイラ立っているのか狛村の上で仰向けになってまで手を伸ばしてくる。やっと手が届いてチリンチリンと音を立てると満足そうに笑った。それから狛村の耳で遊んだりしていた。
隊首会が終わって卯ノ花が一護の治療をしようとしてたが、他の女共の匂いを感じたのか、
「ギニャア!」
と鳴いて狛村の懐に潜り込んでガタガタ震え出した。あいつらに何されたんだお前?卯ノ花が優しい声で話し掛けるとまだ怯える顔を少し覗かせた。まだ震えてやがる。俺はだんだんイライラしてきた。やっと治療されると狛村が懐から一護を出そうとした。
「イニャー」
と間延びした声で鳴いていやがった。よほど居心地が良いらしい。
「眠いと言っておる。昨日から追いかけ回されて疲れておるのだろう」
目は半眼になり尻尾をゆらゆらさせていた。
「クア」
と欠伸を一つしてまた狛村の懐にもそもそ潜り込んだ。俺は内心舌打ちして自分の隊舎に帰って縁側で昼寝した。

 暫らくして何やら胸のあたりに温かい息がかかっているのに気付いて目が覚めた。見ると一護が俺の腹のあたりに丸まって尻尾を俺の足に絡ませて寝てやがった。いつの間に。俺が起きて胡坐をかくと目を覚まし、
「ニャー」
と鳴いてコチラを見る。
「文句あんのかよ」
頭を撫でると足に頭を乗せて来た。気持ち良さげに目を細めている。その内俺の指を舐め始めた。仰向けになって尻尾をパタンパタンとさせながらペロペロ舐めてきた。
「くすぐってぇ」
と手を引くと今度は体を乗り出して足の間に収まると、鎖骨に吸い付いた。まるで乳でも飲むみてぇにチュッチュッと音をさせて吸っていた。時折甘く噛んできた。そこに弓親と一角が来たが気にする風でもなく一心不乱に吸っていた。
「何やってんスか隊長」
「見ての通りだよ」
「ふふ、可愛いですね、まるで仔猫だ」
親子みたいですよと言われた。
「お腹すいてるんですかね?」
一護の頬に触りながら聞く。
「俺が知るか」
半ば強引に引き離すと又、
「ニャー」
と鳴いてくる。
「俺は手前ぇの親じゃねえんだよ」
そう言うと立ち上がり歩き出す。
「隊長、どこへ?」
「俺の勝手だろ」
そう言って一護を置いて隊舎を後にした。
その後一護はキョトンとして、しばらくしてから隊舎の中を剣八を探し始め居ないと分かるとすごい勢いで鳴き始めた。
「ニャアァ、ニャアァ、ニャアァ」
それはまるで親を探す仔猫そのものだった。その内涙が溢れ出した。滝の様にボロボロ零れるそれを手の甲で拭いながらまだ鳴いていた。
「ニャアァ、ニャアァ、ニャアァ」
「どうすんだよ、コレ」
「鳴きやむまで待つしかないんじゃない?」
一護の頭を撫でて弓親が言った。その鳴き声を聞きつけて又、女性死神協会のメンバーが集まった。
「あら一護、どうしたの泣いちゃって」
我先にと全員が触ろうと手を伸ばしてきたので一護はもっとパニクった。手を避けようとして後ろの障子に顔をぶつけ、イヤイヤをする様に頭を振って逃げまどう。腰が抜けたのか立て無いみたいで、さらに泣き叫ぶ。
「ニャー!ニャー!ニャー!」
その内しゃっくりが出始め、弓親がヤバいと思い始めた。このままの調子で泣き続けると吐くかもしれない。
「一角、ちょっと桶持って来といて」
「お、おう」
一角が桶を持ってくると、やはり一護は吐きそうになっていた。
「ホラ、一護君ここに吐きな」
そう言って一護の傍に行って桶を差し出すと、すぐに吐いた。朝から何も食べて無いので出るのは胃液ばかりだった。
「勇音さん、一護君を診てあげて」
弓親に呼ばれ一護に近付いたが、
「イニャー!」
と激しい拒絶にあってしまった。泣きながら、もう何も吐く物などないだろうに、桶に縋ってまだ鳴いていた。
「僕達じゃ何言ってるか分かんないから誰か狛村隊長呼んで来て、このままじゃ気の毒だ」
別の手桶に水と手ぬぐいを入れて持ってきた弓親が一護の口元を拭ってやりながら言った。

 呼ばれた狛村隊長に今までの経緯を耳打ちする。
「なるほど、それで儂が呼ばれた訳か」
「申し訳ありません」
頭を下げる弓親。
「しかし何ゆえ黒崎は、彼女達に怯えるのだ?」
「そう言えば、君たち昨日も一護君を追いかけ回してたよね?」
詳しく聴くと昨日一護に無理矢理着替えさせたり、飾り付けたりして遊んでたら嫌がって(当たり前)逃げた一護に縛道をかけ、動けなくしてもみくちゃにしたのだそうだ。
「そりゃ怯えるよ、ただでさえ子供に戻ってる様なものなのにそんな事されたら尚更だよ」
縛道をかけられ、足元から彼女達を見上げた時、一護はどれ程の恐怖を感じただろう。
弓親が話してるうちに狛村隊長によっていくらか落ち着いた一護は尚も鳴いていた。
「なんて言ってるんですか?」
「うむ、しきりに更木を呼んでおる。何ぞ更木の着物でも与えてやると良いのではないか?匂いで少しは安心するだろう、その間に本人を探すしかあるまい」
そう言われて剣八の死覇装に包まれると落ち着きを取り戻した一護は縁側で丸くなっている。
「更木を待つならいつもいる隊首室のほうが良いのでは?」
「いえ、先程までここにいらしてたのでココに帰ってくると思って待っているんじゃないでしょうか?」
「なるほど」
丸まっている一護の顔は眉間の皺も深く、沈んでいた。
「ねぇ君たち、ここに居ても一護君を怯えさすだけだから手分けしてウチの隊長探してきてくれるかな?」
口調は穏やかだが弓親の目は笑っていない。弓親は自分の尊敬する隊長の恋人である一護の様子に心を痛め、内心怒っている。
「あ、はい!」
やちるを除く全員がその場から消えた。やちるは、
「いっちー本当に剣ちゃんのことが好きなんだね」
と少し嬉しそうに言うと一護の頭を撫でた。一護は嫌がる風でも無くその手を受け入れた。

暫らくして剣八が隊舎に戻ってきた。メンバーの一人の姿が後ろに見えた。
「なんで狛村がここにいる?」
「僕が呼んで来て頂いたんです、僕らじゃ言葉が分からなかったので」
「ふーん、でどんな様子だったんだ?」
「泣きじゃくって、吐きました。今は落ち着きましたがひどかったですよ」
剣八が縁側に近づくと、丸まっていた一護が頭をこちらに向けて剣八を見ていた。剣八が手を差し出すと顔を寄せてペロリと一舐めすると、上目遣いに見上げて来た。
「どうした?大人しいな」
「更木よ、黒崎はお主に置いて行かれた事で傷ついておる。どうして良いか自分でも分からんのだ」
「ミィ・・・」
今までで一番か細い鳴き声に剣八は、
「しょうがねえな」
と呟いて一護を胡坐をかいた足の上に納めた。他のメンバー等も狛村隊長も帰っていった。弓親は狛村に礼を言い、人払いをして二人きりにさせた。
一護はずっと剣八の胸の中で動かずにいた。剣八はずっと一護の髪を梳いていた。
するとずっと動かなかった一護が顔を上げ、剣八の顔を舐め始めた。唇の傷跡が気になるのかずっとそこを舐め続ける。
剣八がおもむろに口を開け一護の舌を舐めあげた。
「んなぁん」
気持ち良かったのかそんな声をあげる一護は身体を擦り付けてくる。剣八の首筋に頭を何度も擦り寄せては、また唇を舐めてくる。剣八は一護の顎を掴むと口付けた。いつもより優しく舌を入れるとそろそろと歯茎と歯の境目に舌を這わせ、歯の合わせ目が緩むと舌を差し入れ絡め捕った。
「ん、んん、あぅ、ん」
お互いの唾液が混ざり合い、一護はそれを飲み下し、剣八は吸い取った。それでも飲み込み切れなかった唾液が口の端から
零れ、首筋まで伝っていった。
「なぁあん」
呼吸を乱し潤んだ目でこちらを見る一護。
(この眼に弱ぇよな)
一護を抱き上げて自室に向かう剣八。そこにはもう蒲団が敷かれてあった。
(弓親か・・・)
気の利く部下で助かるなと思いながら一護を蒲団に下ろし、啄むような口付けを与えながら着物を脱がし、自分も脱いで行く。
今気付いたが一護は尻尾が敏感なようで触られる度に声を上げた。根元から先の方へ手を滑らすとこちらまで蕩けそうな声で啼いた。
「ん、なあぁああんん」
ふるふると震える一護は、まだ触られてもないのに既に自身を硬くしていた。
「なんだ、触ってもねえのにこんなにしやがって。やらしいガキだな」
剣八は心底楽しそうに一護の耳元で囁いた。尻尾をくねくねさせながら、
「なぁぁん」
と鳴くと剣八の口に吸い付いた。自分の身体の熱をどうしていいか分からずに剣八に縋りついた。いつもならこんな事はしてこない。チュッチュッとまた仔猫のように吸い付いてくる一護に剣八は、人の悪い笑みで自身を指差して、
「そんなに吸い付きたきゃコッチにしとけ」
と言った。すると一護は言われた通りにソコに吸い付いた。チュッチュッと吸い付いていたかと思うとペロペロ舐め出した。
「いつもより大胆だな」
言いながら自分の指に指に唾液を絡ませた。自分の前で四つん這いになっている一護の後ろに指を這わすと後孔に押し当てゆっくりと入れていった。
「んなぁあん!」
一護は思わず顔を上げた。
「こら、途中でやめんな」
剣八に言われて舐めようとするが後ろの刺激が強すぎて続けられない。後ろから、はしたない音が聞こえて興奮するのか尻尾は剣八の腕に絡み付いていた。
「なぁ、あぁっ、ああん」
眦に涙を溜めて手は蒲団を握り締めていた。
「ホラ一護、一回イッとけ」
剣八はそのままの格好で一護の前立腺をクリクリと執拗に弄ると、
「うなぁあああんっ!」
と一護は一度も前に触れられないままに吐精した。
ぐったりと剣八に身を預ける一護に、
「クク、可愛いな一護、これで終わりじゃねえぞ」
力の入らない一護の身体を起こしさっきの名残を後ろに塗り込めた。
「やああん」
それだけで一護自身は硬さを少し取り戻した。剣八は腕に絡んだ尻尾を掴むと軽く噛んだ。一護はビクッと背を撓らせた。
「へえ、ここもえらく感度が良いな」
噛んだ後を舐めながら呟いた。一護を押し倒し熱く滾る自身を宛がうとそのまま腰を進めていった。
「あっ、あああん」
キュウキュウ締め付けてくる一護に剣八は、
「くっ、一護締め付け過ぎだ、動けねぇだろ」
髪を梳きながら言うと、はぁ、はぁ、と息の荒い一護が、投げ出していた腕を剣八の首筋に絡めて抱きついてきた。
「あぅ、ん、んなぁあん」
腰を擦りよせて来た。
「へっ、我慢できねえってか、一護」
剣八が腰を掴んで動き始めた。
「あっ、あっ、あう、ううん!」
もうすぐイくのか一護は剣八の肩に歯を立てた。
「イけよ、一護、まだ可愛がって、やるからよ」
「ん、なぁあん!」
「く!」
剣八も同時にイき、一護の中に熱を吐き出した。
「なぁん」
ヒクつく一護の中でまだ硬さを維持させている剣八は、一護の身体を反転させ後ろから一護の腰を引き寄せた。
「あううん」
尻尾を揺らし声を上げる。ふよふよと目の前を横切るそれに剣八は、
「邪魔だ、食い千切るぞ?」
と笑って少し強めに歯を立てると、
「はあぁん」
と甘い声を出した。剣八が噛んだ所を舐めてやると啼きながら誘うように腰を揺らした。剣八が、
「どこでそんな誘い方覚えたんだ?」
と覆い被さる様に耳元で囁いた。その所為でさらに奥まで突かれて一護は首を仰け反らせ声を上げた。剣八が項から耳まで舐めあげ、耳朶を噛んで舌を耳穴に差し入れた。
「ああっ、あっ、んん!ん!あっ!」
その行為で達した一護は上半身を蒲団に突っ伏した。
「こら、俺はまだイってねえだろうが」
そう言うと改めて腰を掴むと勢い良く腰を打ち付けた。
「あっ!あっ!なぁあ!ううん!あう!」
「は。いつもは、声、抑えるのに、必死に、なるくせに、今日は、素直だな!」
「ああっ!んっ!うああ!あっあーっ!」
獣のような声を上げ、獣のような格好で果てた一護は気を失った。
「くうっ!」
一護が果てる時の強い締め付けにより剣八も果て一護の中に自分の精を注ぎ込んだ。剣八は一護の中から自身を抜き取ると一護の横に移った。汗で張り付いた髪を掻きあげ、眠る一護の顔を見続けた。一護がぐずる様な声を出し近づいてきた。
剣八の胸にすり寄るとまたチュウと吸い付いた。
(こいつ起きてんじゃねえのか)
「おい一護、起きろ。風呂入るぞ」
頬をピタピタ叩いて起こす。
「んにゃぁ」
「にゃあ、じゃねえよホレ」
一護を抱き上げて風呂場に連れて行く。抱いたまま湯船まで近づくと尻尾を湯に浸けて何かを確かめる。
「大丈夫だ、ホレ早く処理すんぞ」
と言って剣八は一護の中のモノを吐き出させる。自分の中から出てくる感覚とソレが足を伝い落ちる感覚に一護は、
「なぁあん!」
と鳴いて剣八にしがみ付いた。剣八は笑いながら、
「初めてじゃねぇだろうが、あんま可愛い事してると此処でやっちまうぞ」
それでも一護の鳴き声は止まず表情は艶を増していった。
「やっぱもう一回ヤる」
そう呟いて一護を抱え直した。

 剣八が一護を後ろから抱いて二人で湯船に浸かっていると一護が剣八の頬を舐めてきた。よほど傷痕が気になるのか唇の端をずっと舐めてくる一護に苦笑しながら、頭を撫でてやり、
「痛くねぇから気にすんな」
と言うと漸く離れて微睡み始めた。湯船から出て身支度を整えてやり、寝床に連れて行く。やはりというべきか蒲団は新しい物に替えられていた。
蒲団に入ると一護は剣八にすり寄り安心したように眠った。剣八も腕の中に納まった一護を見て眠った。

翌日、縁側では日向ぼっこしながら昼寝する二人の姿があった。
一護の尻尾は剣八の足に絡まっていた。



08/09/03作 第14作目です。
一護が元の姿に戻ったのは後3日後くらいの予定です。関係無いか・・・。



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