題「100回のキス」
俺は剣八が好きだ。
剣八のキスも好きだ。優しいキスも激しいキスも好き。
セックスも好き。激しすぎる時もあるけど剣八だから好き。
だけど今日のは許せなかった。いきなり外でヤられた。川で涼んでたら、いきなり襲ってきやがった。
嫌だって言ったのにあれだけ抵抗してもやめないで、体中擦り傷だらけになって、いい様に泣かされた。だから終わった後で、
「もうお前は、お前から俺に触るな。ヤリたかったら100回キスした後だ!」
一方的に言い切って隊舎に帰った。約束なんかじゃないから、すぐに襲われるんだろうなと思った。
俺は剣八が好きだけどこんな風にされると不安になる。好きなのは俺だけじゃないかって・・・。
俺は16年しか生きてなくて、初めての相手が剣八で多分初恋なんじゃないかと思う。だけど剣八は違う、きっと何百年もの時間を生きて来て何人も抱いてる。俺なんかその内の一人にすぎないんじゃないかって思って泣きたくなった。
俺は剣八に好きって言うけど剣八から言われた事はない。だから余計不安になるんだ。形にして欲しくて・・・。


 泣かせちまったな。今日のはヤリ過ぎたか。
遠征から帰ってすぐに一護の気配を感じて行った先は小川だった。袴を膝まで上げて足を水につけて遊んでた。水面に反射した光で光ってやがった。
一緒にいた奴らはまだ気付いてなかったが、、やちると、一角、弓親が気付いた。一角が声を掛けようと口を開けたのを手で制して、
「お前らは先に帰ってろ」
と言った。それだけで全部察して、全員がその場から消えた。一護の口が、『早く逢いたいなぁ・・・』と動いて俺の理性の糸が切れた。一護の後ろに回って、
「誰に逢いたいんだ?」
と聞いてやったら耳まで赤くさせて、あたふたしだしたからその場で押し倒したら、嫌がって抵抗しやがった。
力ずくでコトに及んだが、よほど腹に据え兼ねたのか、涙目になりながら、『100回キスしないとやらせない』ときた。
何でキスなのか分かんねぇが可愛いったらねぇな。どっちが持つか根比べだな、一護。

 それから予想に反して剣八は俺に手を出して来なかった。
キスはして来るけどさ。俺からする時もあるし、人目の無いとこで、腰が抜けそうなキスもした。
なんでキスなのか分かるかなぁ。キスって色んな意味があるんだけど剣八は知らないだろーな。後何回残ってんのかな。

縁側でぼんやりしてたら、弓親が話し掛けてきた。
「ねぇ、隊長と何かあった?最近隊長の稽古が厳しいんだけど」
「え・・・とその」
俺は俯いてどうしようか迷った。相談しようかな。
「なぁ、弓親は、俺と剣八のこと知ってるよな?」
「うん。一角も知ってるよ」
「そか。剣八って俺の事どう思ってるのかな?」
「どういう意味?」
「俺は剣八が好きだけど、剣八は俺を好きなのかなって、解んなくなって」
「何で急にそう思うんだい?」
「この間、その、いきなり外で襲われた。俺は嫌がったのに聞いてくれなくて、そしたら何か急に自信なくなって・・・、俺じゃなくても良いんじゃないかって・・・、俺はまだ16年しか生きてないし、お前らみたいに何十年も一緒にいる訳じゃないし、」
「大丈夫だよ。あんなに他人に優しい隊長見た事ないもの」
「・・・本当か?」
「うん。だから早めに仲直りした方が良いよ?」
「う・・・、頑張る」
ぽんぽんと軽く頭を叩いて弓親は道場に戻った。そうなのかな?剣八は俺に甘いのかな?
思いを巡らしていると稽古を終えた剣八がコッチに来た。俺の後ろを通り過ぎる前に袴の裾を指で摘んで引き止める。剣八が横に座る。
「どうした?」
俺は剣八の唇に触れるだけのキスを一つした。剣八が動こうとしないので、頬や額、瞼、左目の傷跡にキスをする。
「後何回残ってるか、数えてるか?」
剣八に聞く。
「さぁな。数えてねぇよ」
と返って来た。剣八らしな。
「そうかよ」
と言って俺は剣八から離れる。本当は後、何回だって良いんだけど・・・。急に手を掴まれて、剣八に引き寄せられる。顎を掴まれて、口付けが降って来た。
「ん、ふ、んん」
息を乱して剣八を見ると鋭い目で俺を見てて少し怖かった。剣八が俺から離れて、風呂に行った。俺はその場でドキドキしてた。剣八はいつもあんな目で俺を見てたのか?あぁもう、キスよりも俺を抱いて欲しい。

 夜になって俺も風呂に入る。風呂から上がると一角に酒を飲まされた。あんまり飲めないって知ってるくせに、稽古がキツい腹いせか?案の定すぐ酔った俺はすぐ隊舎に帰らされた。
玄関で座ってると剣八が俺を抱いて俺の蒲団に寝かせる。そのまま出て行こうとするから、
「ヤんねぇの?」
って聞いたら、
「100回キスしなきゃ駄目なんだろ」
って出ていった。俺はおかしくなって、一人クスクス笑った。何とか一人で歩ける様になって剣八の部屋に行ったら、剣八は寝てた。俺はその耳元で、
「起きるなよ?剣八。好きだよ、剣八。キスって色んな意味あるんだ例えば唇は愛情、首は欲望」
言いながら俺は剣八の唇と首筋に吸い付いた。
「後何回かな・・・。剣八・・・、あんたの全部が欲しいよ・・・」
おやすみ、と部屋を出て行こうとしたら後ろから抱きつかれた。
「な!寝てたんじゃ!」
「ば〜か、あんな可愛いコト言われて寝てられっかよ」
あっという間に組み敷かれて一護は剣八を見る。
「さっきの・・・、全部聞いてた?」
「あぁ、全部な」
俺は真っ赤になって逃げようとしたけど無駄だった。剣八は逃がしてくれなかった。
「やっと此処まで来たな、一護。長かったぜ」
「全部計算かよ?」
「そうじゃねぇよ、どっちが持つか根比べしてたんだよ」
首筋に舌を這わせながら、剣八は言った。
「俺の全部が欲しいねぇ、そんなモン全部くれてやるよ。だからお前は俺から離れるな」
「そんなん、とっくに離れられないよ」
一護が言うと剣八は口付けをしてきた。上下の唇を啄む様なキスを繰り返し、今度は深いキスをしてきた。
「んん、ふ、ぁ」
お互いの唾液で濡れた唇が鈍く光っていた。いつの間にか着物を脱がされていた一護は、襦袢だけになっていた。
「ん、剣八ちょっと待って」
「なんだよ」
少しイラついた声。
「キス、これで100回目」
俺から剣八の頬を包むと優しく口付けた。100回目のキスが終わった俺は我慢出来なくて、
「あぁ、剣八早く俺を抱いて」
自分から剣八を誘った。剣八は口許に笑みを浮かべて、俺の身体を確かめる様に触ってくる。
「剣八・・・」
ずっと口を付いてでるのは、剣八の名前。もっと深く触って欲しい。剣八の手が一護の中心を触る。
「あっ!」
「なんだもう反応してんのか」
「は、んん!け、剣八だって!」
お互いに焦らされて、昂ってる中心に指を絡ませてくる剣八。
「あっ、はっ、あっ!んん!」
久し振りの愛撫に敏感になってる俺はあっけなく吐精した。そのまま手に付いた名残を後庭に塗り込んで慣らしてくる剣八は、いつもより余裕がないみたいに見えた。
「はぁ、あ、あ、剣八、も、良いから来て・・・」
俺は両腕を剣八に伸ばして、全身で剣八を求めた。
「いいのかよ、まだ早いんじゃねぇか」
「いい、早く剣八が欲しい」
剣八は自身を宛がうと、ゆっくりと腰を進めて来た。
「あ、あぁ、剣八、熱い、熱い」
「く、一護、全部入ったぞ」
顔にかかる剣八の髪を唇で食みながら、
「う、ん、剣八、好き」
って言った。
「あんま煽んなよ」
くっくっと俺の好きな低い声で笑った。剣八が身体を動かしてきて、俺はいつもみたいに泣かされた。
「あ!あ!剣八!いい、も、イ、く!」
俺がイクと剣八もすぐ後にイった。俺の中に熱いモノが出された。
「んあぁ!」
ひくひくと震える俺の身体を抱えて胡坐をかいた剣八の足の上に向かい合って座った。
「け、剣八、俺は・・・ひく、剣八、が、好きだよ。剣八は?」
「あぁ?何だ、いきなり」
「だって・・・、い、言われたコトない、俺にあるの、この傷痕だけだから」
みっともなく声が震えた。自分で胸の傷跡を指で触りながら、
「剣八に言われたい。剣八は俺の事好き、か?」
「・・・・・・」
剣八からの返答がない。
俺は傷痕に爪を立てて、自分で傷を新しく作って血を流す。聞かなきゃ良かった。
「ごめん、もう言わない・・・」
涙が零れる寸前に剣八の赤くて長い舌が伸びてきて傷痕の血を舐める。
「あっ、剣八!ヤメ!」
「やめねぇ」
後から後から出てくる血を舐めとる剣八。
「んん!く、あ」
剣八の頭を抱いて指に絡まる髪の感触を感じていると、
「・・・好きだ」
「え?今なんて、んあっ」
急に乳首を捏ねられ、声が上がる。
「好きだつったんだ!自分で強請って聞き逃すな」
「う・・・、ごめん剣八、もっと聞きたい」
「知るか」
ぶっきらぼうに言うと俺の身体を揺さぶった。
「あっ!あっ!ん!剣八、剣八!」
「もっと啼けよ、一護お前の声聞かせろ」
唇を俺の耳に押し当てて囁いて一層動きを激しくしてきた。
「ひっ、あっ、あぁっ!剣八!もう駄目!イクッ!あぁ!」
まるで捧げるように反らされた首に跡が付くほど喰らい付く剣八。
「いっ、ああ!」
一護が達した痙攣で剣八も一護の中に熱を放った。
「く!」
「んんあ!」
一護は達すると気を失った。眠っている一護を抱き締めながら、剣八は一護の髪を梳いていると、一護が目を覚ました。
「ん、剣八気持ち良い・・・」
剣八の胸に頭を擦り付けて微睡んでいると、
「一護・・・」
と声を掛けられた。
「ん・・・?」
「そんなに不安か?言葉にしねぇと」
俺は弾かれた様に剣八の顔を見た。剣八は真摯な、だけど優しい目で俺を見てた。
「う、不安って言うか、あの、こないだみたいなコトされると不安になる・・・」
「こないだ?」
「外で急に襲ってきただろ!ああいう事されると不安になる、俺ずっと剣八が帰って来るの待ってたんだぜ。なのにいきなり、嫌がったのに聞いてくれなかったし・・・」
「しょうがねぇだろ、あんな色っぽい姿見せられたんだ。我慢出来ねぇよ」
額にチュッとキスをしながら言ってきた。
「い、色っぽい?」
「あぁ、あんなに足出して、一護あん時のお前川面の光で光ってたぜ」
剣八は俺を抱き締める力を強めた。
「はっ、あ、剣八」
「一護」
「なんか、檻に閉じ込められたみてぇ」
「くっ、良いな、もしそうなったら一生外に出さねぇぜ」
「俺は100回のキスで、お前は一生かよ?」
「ワリィな、俺は貪欲なんだよ、お前を抱いて良いのは俺だけだし、お前と最後に斬り合いするのも俺だけだ。そのためには何でもするさ」
不敵に笑った。その顔を見てやっと俺は、どれだけ剣八に想われてるか分かった。
「剣八、愛してる」
俺は唇に音を立ててキスをした。急いで蒲団に潜り込んだけど、剣八に引きずり出されて今度は朝まで泣かされた。
あいつを煽るのはもう止めよう。身が持たねぇ。


08/08/28作 第13作目です。100番キリリクをみすずさんから頂きました。初めてのリクエスト、御要望に添えていると、
いいんですが・・・。
みすずさん、ありがとうございます。



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