「花言葉」後半 | |
その頃の一護は、いつもにも増して痛む体を引きずって、温泉に浸かっていた。 幾分楽になった、少なくとも歯型や鬱血は消えた。後は体中に残る倦怠感だけだ。日に日に大きくなる溜め息。 もうそろそろ、上がって部屋に戻って用意をしなければ、そう思い急いで体を拭き、着替えて帰路につく。 四番隊では、剣八が卯ノ花隊長に花の事を聞きに来たとちょっとした騒ぎになっていた。 「ねー卯ノ花隊長ー、このお花の名前知ってる?いっちーも知らないってゆーの」 「あら珍しいですね、それは、ほととぎすと言う花ですよ。この季節にもう咲いていたのですね」 「んー?違うよ。剣ちゃんの部屋にあったの」 「更木隊長の? まぁどんな女性からの贈り物かしら?きっと勇気がいったでしょうね」 と柔らかく笑って言った。 「あ?何でこんな地味な花一本でそんな大仰な」 「まぁ、更木隊長も花言葉があるという事は御存じでしょう?」 「ああ」 「この花の花言葉は“永遠にあなたのもの”という言葉なんですよ。きっと贈った方は想いの丈を花にこめたのですね」 と慈愛の眼差しで花を見つめた。 (花言葉?あいつが俺に?エイエンニアナタノモノ?何だそりゃ、そんな事一言も・・・) そこで昨日一護が、まだ何か言おうとしてた事と、要らないと言われた時の顔が脳裏に甦った。 「あの馬鹿!そうならそうと早く言え!」 言うや否や剣八は、一護の部屋に走った。 「ねぇ卯ノ花隊長、本当は誰があげたか知ってるでしょ」 やちるがいたずらな笑みで訊いてきた。 「もちろん、やちるさんも御存じでしょう?お邪魔は良くないですね、一緒にお茶でも?」 「やったー、金平糖ある?」 「ええ、もちろん」 剣八が一護の部屋に着くと、もぬけの殻だった。 「何処行きやがった、あいつ」 言いたい事、聞きたい事、謝る事、あまりに多すぎて訳が分からなくなってきた。 その頃一護は、温泉の帰り道でまた、あの花を見つけてしまい、げんなりしていた。その内、心の底のほうからどす黒いモノが込み上げてきて、その花を踏み躙っていた。 その事に一護が気付くのと、剣八が現れたのは、ほぼ同時だった。 「あ・・・」 「一護」 剣八が一護を呼ぶと、ビクッと体を竦め一護は後退った。怯えた様な顔でこちらを見ていた。剣八が近づくとまた、後退り、そのうち背を向けてその場から走って逃げていた。 (何で、何であそこにあいつが!) ドンッ!と何かにぶつかり、前を見ると剣八が立ち塞がっていた。踵を返し、また走ろうとする一護の腕を掴んで引き止めた。 「何処行く気だ、手前ぇ」 そこで剣八は、掴んだ腕の手首を見て、違和感を覚えた、先程まであんなにキツく縛っていたのに、擦り傷も、鬱血もない・・・。一護の体を引き寄せ、袷をはだけ確認した。さっきの歯型がもう無い。有り得ない、四番隊の誰かに治させたのか?いや、そこは今まで自分がいた所だ。一護の髪から水滴が落ちた。 「痛ぇよ、離せ・・・」 静かな声に剣八は、手を離す。一護は死覇装を正す。 「まだ何か用かよ?急ぐんだけど俺」 淡々と言葉を紡ぐ一護。 「何で跡が無ぇんだ?昨日のも、さっきのも」 違う、言うべき事はそんな事じゃねぇハズだ。頭でそう思っているのに口をついて出たのは、そんな言葉。 「ハァ?そんな気になんのかよ、変な奴だな。傷に良く効く温泉知ってから、ソコ行って来ただけだ。もういいか、早く戻りてぇんだけど?」 (肝心なキズは治んないけどな・・・) 心でそう呟いて一護は、その口許に自嘲の笑みを浮かべ、剣八から距離をとった。その動作と笑みに気付いて、 「ムカつくな」 と剣八は呟いていた。 「?、何か言ったか?」 一護が聞き返すと剣八は、長い腕を伸ばして一護の顎を掴んで、 「ムカつくつったんだ!いつもいつも、訳の分かんねぇ笑い方しやがって」 「何言って、離しやがれ!」 一護は必死に剣八の手を剥がそうともがいた。 「手前ぇ俺が気付いてねぇとでも思ってんのか、毎晩人の顔覗き込んで、髪の毛いじってんの」 「っ!」 「その後、必ずさっきみてぇな笑い方してんだろうがよ、それに何だ?花言葉だ?そんなもん、俺が知る訳ねぇだろうが、言いたい事があんならハッキリ言いやがれ!」 剣八は一護の顎を掴んでいた手の親指を一護の口に捩じ込んだ。剣八の話を聞いていた一護は、その指に思い切り、血が出る程噛み付いた。 「うるせえ!勝手な事ばっかり言いやがって、アンタは唯楽しめればいいんだろうが!俺じゃなくとも!誰でも良いんだろうが!最初の夜に理由を聞いたら、シたいからシたってハッキリ言ったじゃねぇか!俺がイヤがっても止めなかっただろうが!」 一気にまくし立て、息を乱して剣八を睨み付けた。視線が交差したまま、しばらくの沈黙の後、 「じゃあなんで、手前ぇは、毎晩俺に抱かれてんだ。逃げりゃいいじゃねぇか」 一護は、剣八から顔を逸らしたが顎を掴まれているので、ムリヤリ元に戻される。 「何とか言えよ・・・、じゃなきゃお前が俺に惚れてるって思っていいのか・・・?お前がその口で言ってくれよ」 親指で唇をなぞられ、聞いた事もない優しい声で囁かれて一護は、唇を震わせて、 「俺は お前 が 好き、だよ、 だから、 身体だけでも良いって 思って・・・」 知らず知らず涙が零れて剣八がそれを舐め取った。剣八はイラつきの原因が分かり、それが氷解して行くのを感じていた。 「俺ぁ、お前ぇだから抱いたんだ。言葉足らずで悪かったな。だからお前の体に跡を残してぇんだよ」 信じられない言葉が次から次へと降ってきて、 「なぁ剣八、キスしてぇ。してもいいか?」 初めて一護から口にしたセリフに、 「ああ、来いよ一護」 二人の唇が重なって、お互いの熱を感じた。ゆっくり舌を入れて絡めあい、口内を貪りあった。 「んっふぅ・・・はっ」 「可愛い声出してんじゃねぇよ一護、我慢がきかなくなるだろうが」 喉の奥で笑い声を押し殺して、自分の腰を一護に押し付けた。 「あっ・・・」 そこにある熱さと主張に顔を赤らめた。 「どうする一護、俺の部屋行くか?それとも帰るか?」 意地悪く耳元で熱い吐息と共に囁いた。 返事は決まっていた。 剣八の部屋で、口付けを交わす二人。 「はっ、ふぅ、ん」 鼻に掛かった甘い吐息を漏らし、潤んだ目で剣八を見る一護。 「今度は噛まなかったな」 言いながら。剣八はひたすら優しく、背中から腰を撫でさすっていた。まるで壊れやすい物を扱う様に・・・。 「どしたんだよ、いつもと違うじゃねぇか」 「さっきは酷かったからな、仕切り直しだ」 くしゃりと髪を撫で言った。 「馬鹿・・・」 赤くなって俯く一護の腰紐を解き袴を脱がせ、蒲団に押し倒した。 「んっ剣八重いよ・・・」 言葉と裏腹に今は、剣八の重さを感じていたかったから、背中に腕を回した。上から啄む様なキスが降ってきた。唇に、頬に、顔中に降って来た。 「ん・・・剣八・・・くすぐったい」 くすくす笑う一護。 もっと剣八の唇の熱を感じたかったから、背中にまわした手で剣八の顔を包んで、一護から唇を重ね深い口付けを求めた。 角度を変え交わされる口付け、やがて剣八の手が袷から入って来て、己の胸板をまさぐっているのに気付いた。 「ん・・・ふ・・・」 やがて唇が音を立てて離れると今度は首筋に顔を埋め、吸い付き舌を這わせた。 「あっあぁ、んん」 その間も手は、一護の胸をまさぐり、小さな突起を探し出し、指の腹でさするだけの愛撫を続けていた。 もどかしげに身体をくねらせていると、剣八が先程キツく噛んできた乳首をペロリと舐めた。 「ヒャッ」 一護は声をあげた。剣八は、まるでそこを慰撫するかの如く優しく、丁寧に舌を這わせいた。 「剣八・・・」 一護は名前を呼びながら、剣八の髪の鈴を外して髪を下ろした。その髪を手で梳きながら微笑んでいた。 「余裕だな一護、今にそんな顔、出来なくなるぜ?」 こちらも笑いながら言ってきた。一護の下穿きをはぎ取り、何の躊躇もなく一護のモノを口に含むと、残酷なほど優しく舌を動かし始めた。 その間も胸や脇腹への愛撫は同時に与えている。 「はぁっあっやっ剣八もう、イクッ」 あっけなく剣八の口中に吐き出した。剣八は一滴も零すことなく飲み下した。乱れた呼吸を整えたいのに、顔に血が集まってるのが分かる。 「馬鹿やろ、何てこと、してんだよ」 涙目で剣八を睨んで言った。口の端をペロリと舐め、事も無げに、 「別に、したいからしたんだよ」 笑いながら着ている物を脱ぎながらそう言った。一糸纏わぬ姿になり、もう袖しか身に着けてない一護の着物も脱がした。一護が身体を起こして、 「俺、も・・・」 と呟き、剣八の半勃ちのソレに手を添え、口付けた。 「おい一護ムリすんなよ」 「ムリじゃねぇ、したいからしてんだよ」 と返してやった。 初めてする行為にどうして良いか分からず、まじまじと剣八のモノを見ていると、 「おい人のモン、んなジロジロ見んな」 と言われ、先端に唇を合わせ、舌を這わせた。自分が感じる所に舌を這わせていると、知らず知らず、鼻に掛かった吐息が出た。 「んっふっ、はぁ」 そのうち剣八のモノが、大きく固さを増してきて、先端から粘り気のある蜜が溢れてきた。 一護はそれをチュッと音を立てて吸い取った。剣八は、思わず声を出した。 「くっ」 一護は顔を上げ、 「あ、気持ち良いか?」 「あぁ、初めてにしちゃ上出来だな、もう少し続けろ」 一護は先程の、拙いが懸命な舌戯を再開した。今度は咥えて括れた所を舐め、溢れた唾液を飲み込む為に、喉に溜まったモノを嚥下した刺激で、 剣八が吐精した。 「くうっ」 「んっ!あぁん」 流石に飲めはしなかったが、剣八が一護の口許を拭って、 「上等だ、ご褒美やらなきゃな」 と言って少し意地の悪い顔をして、一護を押し倒すと、膝裏を抱えて身体を折り曲げた。一護の蕾が露わになり、 「やっ、何する気っ」 抗議の声が終わる前に、そこに剣八の舌が触れていた。 「ひっ!やぁ、ヤメそんなトコ、あぁ!」 湿った音が響いて、一護の羞恥を煽る。ゆっくりと舌を動かして蕾をほぐし、舌を差し込んで唾液で濡らし、指を入れていった。 「はっ、あ、うぁ、あん剣八ぃ、もう、だめぇ」 そんな一護の懇願も聞き流し、指を増やしていった。 時折、指が前立腺を掠めると、一護の身体が跳ねる様に反応した。 「一護挿れてほしいか?」 漸く口を離し、一護に訊いて来た。 「早、く、お、願い、も、う・・・」 涙を零して、震えながら言った。剣八は、既に回復している自身を、あてがうと、ゆっくりと押し進めた。 「はっ、あぁあん!」 待っていたモノが漸く自分をみたしていくのを感じて、一護は嬌声を上げた。 全てを収めても、動かない剣八。 「ん・・剣八?ど、して」 そのうち足から手を外して、一護の背に回して、一護を抱きしめた。 「一護・・・、このまま繋がっててぇ」 「え・・・?剣八?」 それだけ言うと腰を動かし始めた。 「あっ、あぁ急に、そんな!んっあっやぁ、ああっ!」 先に一護がイッた。だが達した後も、抽挿は続けられ、敏感になっている身体は反応を示し、喘ぎ続けた。 「あっあ、剣八、剣八、またイクッ!」 「イッちまえ!俺もイク!」 一護がイクのとほぼ同時に剣八が一護の最奥に熱い精を解き放った。 「ああ!剣八、熱い・・・」 放った後もまだ固さを保ったモノを抜こうと、身体を動かした剣八の首に腕を伸ばし、 「抜いちゃヤダ・・・」 と一護が甘えた声で言って、抱き付いてきた。 「お前・・・手加減、出来なくなるだろうが」 苦しげに言う剣八のモノが、少し質量を増した。 「んっ、良いよ、もっと来て・・・、俺の身体にいっぱい跡付けて?お前の匂いも、俺の全部がお前のモノだって・・・」 言い終わる前に唇で口を塞ぎ、 「覚悟出来てんだろうな、気ぃ失ってもやめねぇからな!」 そう言うと一度抜いて、一護の身体を後ろに向けさせた。 「あぁ・・・」 名残惜しそうに呟くと、腰を持ち上げられ、まだヒクつく後孔に一気に入れられた。 「ああっ!」 予想を上回る質量に思わず声を上げ、締め付けた。 「おいキツいぞ、弛めろ一護」 剣八に言われ、口で息を吐き、弛めようとした。 「ハッ、ハッ、あっん剣八、大きい・・・」 「ハ!お前が可愛い事言うから、仕方がねぇだろ」 肩甲骨を甘咬みしながら言ってきた。 「は、アン」 腰を動かしながら、一護の中心を握り込み、ゆっくり扱き始めた。 「ん、ん、ぁあ、はっ」 蒲団を握り締め、声を押し殺す様に顔を埋めた。 「こら、声聞かせろよ一護」 空いている手の指で口を開けさせた。 「ん、ふ、あっ」 一護の中心から、粘り気のある液体が溢れて、湿った淫猥な音が響いていた。先端に爪先を食い込ませると、 「ああんっ!剣八、も、イク!」 一護の背が弓なりに反ったかと思うと吐精した。 「おい一護、俺はまだまだだぞ?」 蒲団に顔を沈めて、息を整えて、 「この格好やだ・・・剣八の顔、見えない・・・」 「じゃ、こっち向け」 一護が身体の向きを変える時に敏感な所が、抉られ声が上がり一護自身も少し固さを取り戻した。 「体力はまだあるみてぇだな一護、安心したぜ」 笑いながら剣八が、からかう様に言ってきた。一護の両腕を掴んで身体を引き起こした。 「んんっ」 身体のもっと深い所に剣八の楔が穿たれ、吐息と共に声が漏れた。 剣八の肩口に顔を埋めて、一休みしようと荒い息を整えていると、剣八の黒髪が目に映り、指で触る。 「くすぐってぇ、お前ぇは俺の髪がお気に入りみてぇだな」 「ん・・・」 「俺はお前ぇの橙の頭が好きだがな」 そう囁くと腰を少し揺らした。 「あっあぁん、剣八、もっときて」 情欲に濡れた目で、剣八を仰ぎみて言った。 「疲れた、お前ぇ自分で動いてみな」 突然剣八がそんな事を言って動きを止めた。急に刺激が止まってしまい、身体の奥が疼いて、一護は目に涙を溜め身体を震わせた。 「ん・・んぁ」 「ほら、どうした一護?動けよ・・・」 少し奥を突くと途端に甘い声で啼いてくる。 「あぁん、やぁ、剣八ぃ・・・」 それでも、剣八が動かないのが分かると、首に腕を絡ませ少し腰を浮かすと自分で沈める行為を続けた。 「あっ、あぁ、あっ剣八、んん!」 「そんなんじゃ、いつ迄経っても俺はイカねぇぞ?」 腰を急に掴まれ、抜けるギリギリまで持ち上げられ、奥まで貫かれた。 「っ!ああっ!」 それを何度も繰り返され一護は意識が飛びそうになった。閉じられる事がない口からは涎が、瞳からは、涙が流れていた。 首に絡ませた腕は、剣八の背中に爪を立てていた。 「あぁん、剣八ぃ、やぁっ、もうだめ・・・っ、いっくぅ!」 「ああ、イケよ一護、お前ぇは、俺のもんだ、永遠にな、その髪も涙も全部だ!」 最後に一際深く、打ち込むと同時に剣八は一護の中に熱い精を注ぎ込んだ。 「んぁっ!あぁんっ」 達すると同時に一護は意識を手放した。差し出された様に反らされた首筋に剣八が噛み付き、跡を付けた。 軋む体で、隣りの剣八を見つめながら、思い出して顔から火が出そうになった。 剣八の顔に張り付いた髪を梳きながら、一護の顔には、いつもとは違う、幸せな笑みが浮かんでいた。 「なぁに、また人の顔覗いてニヤニヤしてんだ一護?」 「起きてたのか・・・?」 「お前ぇが起きたのと同じぐらいにな。・・・で、何笑ってた?」 「別に、良いじゃねぇか、理由なんか」 「良くねぇ、お前ぇは俺のもんだからな、ちゃんと言う事聞け!」 「ただ自然に浮かんだんだよ、あんたの寝顔見てたら。そんだけだ」 赤くした顔を逸らしながら言った。剣八がそんな一護を凝視していると、 「なに、見てんだよ!いい加減に・・・」 言い終わる前に、剣八に抱きすくめられていた。 「剣八・・・?」 一護が問い掛けると、唇に触れるだけの口付けが降って来た。 「一護、コレお前ぇにやる。返すなよ」 そう言って、一護の手の平に乗せたのは一輪だけの、ほととぎすの花。 「なっ!コレお前・・・」 「うるせぇ、黙って貰え。花言葉、知ってんだろ」 ふん、と鼻を鳴らし背を向けて寝る剣八。 「剣八・・・」 「ありがとう、剣八」 一護は呟き、その花を大事に包むと、初めて剣八の隣りで眠った。 ほととぎす ユリ科多年草、花期は9月〜10月 花言葉は「永遠に貴方のもの」 終 08/04/13〜18に出来た第5作目。08/04/23に剣一同盟にup していただきました。涼市さん代理投稿ありがとうございます。 |
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