題「ペット達の災難」
「黒い金魚の罰ゲーム、何が良いかな?」
「ランダム整形とかは?」
「いや、ここはカリスマ美容師だろ?」
「あー・・・あれね」
「暁はあそこでツルッパゲになったんだよな、確か」
「・・・嫌なこと思い出させるな;」
「アフロとかリーゼントもあそこだったよな?」
「罰ゲームのランダムの定番だからな。あそこは」

天鎖が開けた包みのせいで経験値が減った兄弟達は、天鎖へのお仕置きとも言える罰ゲームの話題で盛り上がっていた。
この世界では大陸ごとに整形師や美容師が居て、髪型は勿論、顔や髪色、目の色、果ては肌の色まで変えられるのだ。
通常、髪型やその他を変える時には、変えたい髪形などをしてくれる店のチケットを買い目的の姿に変えて貰うのだが、何になるか分からない所謂「おまかせ」のチケットがある。それが「ランダムチケット」だ。カリスマ美容師というのはとにかくハズレ(変な髪形)多く出るため罰ゲーム的なことに良く利用されるのだった。
「おら!そこ!サボってないでさっさと片付ける!」
妖さんが未だ散らかったリビングを片付けながら怒鳴っていた。



「そういえば、お母さん。ショップに何買いに行ってたのさ?」
リビングの片付けをしながら兄弟の一人が妖さんに聞いてきた。
「んあ?ペットの装備だ。ペット書が溜まってきたからな、捨てるくらいならコイツ等に使ってやろうかと思ってな」
「あー・・あれ、売れないからね」
「俗に言う捨て書だもんね」
ペット書とは『ペットの強化書』と言い、ペットの移動速度やジャンプ力を上げるためのモノだ。強化書はアイテムに対して使うもので、この場合ペットの装備に使うのだ。ペットの装備はショップにしか売っておらず、しかも高額な上、期間限定品な為使う者が少ない。そういった需要が無く捨てられることが多い書のことを『捨て書」』というのだ。
「で?何買ったの?」
「苺には白い貝の髪飾り。白苺にはピンクのリボン。トコロ天には黒いベルトに金の鈴のチョーカーだ」
ほれ、と妖さんが買ってきたアイテムを出して見せた。
「・・・・デカイ鈴だな・・・」
兄弟の一人が呆れるほど大きな鈴だった。恐らく小玉スイカくらいはあるだろう。

一通り後片付けが済んだリビングに剣八とペットの3匹が呼ばれた。剣八達はリビングにまだ装備や書が残っていったため危険防止(というか天鎖のいたずら防止)の為、別室に隔離されていたのだ。
リビングに入ってきた3匹にいきなり装備を思いきり投げつけた妖さん。突然の事で避けることが出来なかった3匹に装備が装着された。
「痛ぁい・・・何これ?」
一護が頭を抱えながら妖さんに聞いてきた。頭には白い髪飾りが付いていた。
「それはおまいらの装備だ。ありがたく受け取っておけw」
「白い髪飾りか。お前の髪に映えて良く似合うぜ」
「そう?ならいいっか。ありがと、妖さん」
髪飾りを見ながら一護の頭を撫で剣八が褒めた。剣八に褒められてまんざらでもない一護。
「だあぁぁぁっ!?なんだ!?これはぁぁ!」
叫んでいるのは白。尾びれの付け根には目にも鮮やかなショッキングピンクの大きなリボン。
「なんだよ!このどぎついドピンクは!?リボンなら一護のほうが似合うだろうがぁぁぁ!」
「あほか!おまいの白い頭に白い髪飾りつけても目立たんだろうがぁっ!」
やはり、と言うかキレて怒鳴る白。負けじと妖さんも怒鳴り返す。
「それともあの鈴にするかっ!?」
ビシッ!と妖さんが指差した先には、鈴に顎を乗せ、寝そべってゆらゆらと身体を揺らしている天鎖が居た。こちらはかなり気に入ったようだ。
「・・・いや、アレは・・・・コッチで良い;」
天鎖の付けた小玉スイカ並みの鈴が付いたチョーカーを見て、白は渋々だがあっさり白旗を揚げた。



「さてと・・・・次は強化だが、ペット書はどこにある?」
装備が決まって、妖さんは早速ペット装備の強化に取り掛かろうとした。
「えっと、確かあそこだ」
巫女が積んであるアイテムの隅のほうへと行きペット書を探した。が・・・・
「うげ・・・・」
目的の書を見つけたようだが何故か固まってしまった。心なしか顔が引き攣っている。
「どうしたの?巫女?」
心配した暁が傍に寄ったが・・・
「うわー・・・・;」
巫女が見たモノを見て、やはり同じように固まってしまった。
「なになに?どうしたのさ?」
他の兄弟たちも寄ってきたが、やはり同じ反応をして固まった。
彼らが目にしたモノ。それは何か凄まじい色に染まって一塊になっている書の束だった。すぐ傍には『妖さん特製・怪しげな薬』の壷が、見るも無残に割れていた。
「誰だよ、ここにこんなもの置いた奴は!」
「お母さんが直接取引きに使うから出しておけと言ったからな」
「だからって、こんな危険なもんをこんな所においておくなよ;」
「俺達が被らなくて良かったな;」
どうやら先ほどの戦闘で壷が割れ、その中身を束ねてあった書が吸い取ったらしい。
「なんかさ・・・・文面変わってね?」
そう言われて、暁が恐る恐る覗き込んだ。見れば本来書かれているはずの文面と違っていた。
「・・・・10%の確立で、ペットにパペット機能が付きます・・・・」
「「「「・・・・・・・」」」」
思わず顔を見合わせる兄弟達。
「さすがお母さんの作った薬だな。とんでもない機能がついてるよ」
「でも、これはありえねぇだろ」
「因りによって・・・パペット・・・」
「う、わぁ・・・・使われたくねー・・・」
暁が読み上げた内容に兄弟達は引き攣った顔で囁きあっていた。

「面白そうだな。よし!これを使おう!」
変色し、一塊になった書の束を棒の先に引っ掛けると(流石に手で触る度胸は無かったらしい)、妖さんはそれを思いきり己の2匹のペット目がけて投げつけた。身の危険を感じ、とっさに躱す白。書の束はゆらゆら鈴と戯れている天鎖にクリーンヒットした。
一瞬、天鎖(正確にはチョーカー)から眩い光が発し、ぴろん♪と音がして紙が1枚舞い落ちた。
紙には『呪文書が発動してペットにパペット機能がつきました☆』と書かれていた。

「成功したようだな♪」
「成功しちゃったみたいだな;」
「よく10%書が張り付いたな。フツーは張り付かんぞ?」
「それもパペット・・・」
「終わったな、アイツの人生」
「南無南無南無・・・」
「・・あれって、絶対ランダム整形とかカリスマ美容師のほうがマシだよな」
「だな」
「俺ならぜってー嫌だよ・・・」
満足そうな妖さん。一方兄弟達は哀れむような目で天鎖を見ていた。


「ねぇ、ぱぺっとって何?」
「確か人形って意味じゃなかったか?」
「天鎖、人形になっちゃうの!?」
「あはは!面白そうじゃねぇか!」
「どっかの誰かと違って可愛げはありそうだな」
「んだとー!コノヤロウ!」
一方、一護達は状況が判らずただ騒いでいた。
「パペットと言うのは、3次弓職の召還だ」
そこに巫女が一護達に説明を入れてきた。回りの兄弟たちもフォローに入ってきた。
「3次になると各職それぞれに召還できるものがあるんだよ。パペットはその一つだ」
「タゲ取りされた弓士がパペット出すと代わりに攻撃を受けるんだ」
「タゲ取り?」
「モンスターは攻撃されると攻撃した相手をターゲット、つまり標的にするんだ。それをタゲ取りって言うんだ」
「モンスターを攻撃したらずっと追いかけてきただろ?あれだよ」
「パペットはタゲ取ったモンスターからの攻撃を自分の代わりに受けるんだよ」
「つーことは・・・」
「身代わり、つか・・・的?」
「えええええぇぇっ!?」
「そしてパペットはある程度ダメージを受けたら、壊れて消える」
「・・・・・天鎖;」
「哀れだな」
「流石、テンコ盛りって名前だけはあるな。いろんな意味でテンコ盛りだぜ」
「トラブルと災難のテンコ盛り、てか?」
約1名を除いた全員から、哀れみとも同情ともつかない視線を一身に浴びた本人は未だ鈴と戯れていた。



「うし!面白い強化が出来たから早速狩るか!」
「狩るのっ!?」
「当たり前だ。こんな楽し気な強化が出来たんだ。試さんでどーする!?」
「楽し気って・・・;」
「さ〜て、何処行こうかな♪」
天鎖のパペット機能を試したくて仕方が無い様子の妖さん。狩りに行く気満々だ。
「時計台は湧きが悪いし、深海はちょい飽きたし・・・・」
あれこれ狩場を考える妖さん。なかなか狩場が決まらないようだ。ちなみに深海とは藍染達と戦った狩場だ。
「よし!骨行こう!骨!」
どうやら狩場が決まったようだ。
「骨?」
一護がなんの事かと疑問を口にした。
「骨って言うのは、森林の奥の原野の狩場に居る竜の骨のモンスターだよ」
「森林って、豚とか狩った所か?」
暁の説明に剣八が聞いた。以前、豚を狩った所も森林だったからだ。
「いや、大陸が違ってもっと高Lvの狩場だよ。俺達はまだ行ったことが無いけどね」
「あそこは1番弱いモンスターでも70Lvだ。高Lv者の狩場だな」
「最強のボスが居る大陸の狩場の1つだよ」
「最強・・・そいつぁ遭ってみてぇな」
最強と言う言葉に反応する剣八。嬉々としている。自分のLvなど頭には無いようだ。
「あれは大ボスだから、Lv制限と前提クエがあるから行くことは出来ないよ?」
暁が釘を刺してきた。
「前提クエだぁ?」
「ボスにも3種類あってね。普通の狩場で時間ごとに湧く時間湧きボスと、特定のクエスト内のラスボス、条件付で狩場に入れる大ボスが居るんだ。大ボスは各大陸に1体ずついるんだよ」
「前提クエというのはその狩場に入る為にクリアしなければならない依頼の事だ。何段階かあってその全てをクリアしなければならないのだ。Lv制限と言うのは規定のLvに達していないと前提クエすら受けられないと言うことだ」
「ち・・・つまらねぇな」
暁に続いた巫女の説明に舌打ちする剣八。戦えずとも見るくらいはしたかった、とぼやいていた。



「んじゃ、行くぞ!」
「待って!俺達も行くから!」
兄弟の1人が妖さんに声をかけた。
「金魚のパペット見たいし、久々にお母さんの無謀な狩りが見たいn・・・」
「ほら!俺達まだ行けない狩場だから!」
「参考って奴?いいだろ?」
「まぁ、良いが・・・んじゃ行くぞ!」
意気揚々と狩場へ向かう妖さん達。白だけは行きたくないと騒いでいたが。そして船を乗り継いで目的の大陸に辿りついた。
「骨に着いたらドア出すからな。おまいらはそれまで此処で待ってろ」
「判ってるよ。早くしてね」
街で待つ剣八、一護、兄弟達。狩場に出たとたん接触死するしかないので大人しく待つ。途中妖さんが3回ほど街に飛ばされて来たが、すぐに狩場に飛び出して行った。
「なにやってんだ?あいつはよぉ」
「途中で墓ったんだろうね。狩場が遠いから」
何でも無い様に説明する暁。きっと予想の範囲内なのだろう。そうこうしている内に妖さんの出したドアが出て、皆はそこから狩場へと入っていった。


狩場は草木の無い岩場で骨だけになった竜がカタカタと歩き回っていた。一護達は狩場の中段左側の安置に出た。
「おまいらは此処で見てな。暁は一旦街に戻れ。あっちの安置で待機」
「判ったよ」
妖さんの指示でコーヒー牛乳を飲んで街に戻った暁。妖さんは一護達が居る安置とは反対側の安置に移動するとドアを出した。
「なんで暁さんだけあっちに行ったの?」
剣八に姫抱き状態に抱かれた一護が兄弟達に聞いてきた。
「多分、時計回りに回って狩るからだろ?あの足場に上がるときに無防備になるからな」
「そうなのか?」
剣八が暁の立つ場所を見れば、確かに足場はロープしかなかった。聖魔の回復は梯子やロープに捕まった状態ではかけられないのだ。
「ここの狩場だとあの足場から上がる回り方が1番効率が良いんだよ」
「ソロ狩りは効率悪いと赤字がでかくなるからな」
狩りにも効率があるのだと言う兄弟。どれだけ経験値が稼げても赤字ばかりでは薬代が無くなって狩ることすら出来なくなるのだ。
「4次聖魔の狩りはジェネ中心なんだけど、ジェネ狩りは赤字狩りだからな」
「ジェネの赤さはハンパ無ぇからな」
ちなみにジェネとは深海で藍染達と戦ったときに連発した光の柱を降らせた攻撃スキルだ。
攻撃職の複数攻撃は職にもよるが3〜6体がほとんどで、攻撃範囲もさほど広くは無いが霊力の消費も少ない。4次聖魔の複数範囲攻撃のジェネは最大15体を攻撃する超広域攻撃魔法だ。全職最大規模の攻撃で火力も大きいが、全職でも群を抜いて高い魔の霊力全てを使ってもせいぜい2〜3回しか使えない。それでもアンテッド以外には単体攻撃しか持たない聖魔のほとんど唯一の主力攻撃スキルなのだ。
ジェネは威力も高いがその分薬の消費も凄まじい。ジェネは狩り方も鬼畜なら薬代の消費も鬼畜なのだ。



「うっしゃあ!ペット共はしっかり働けぇ!アイテムは1つ残らず拾うんだぞっ!」
「お、おう!」
妖さんの異様なテンションに思わず返事をした白。『やる気』というものがあったらしい、と些か失礼なことを思っている白。態度には出さないが。
兄弟達は既に椅子に座って観戦モードに入っている。剣八も一護を膝に抱えて椅子に座った。
妖さんは赤いドラゴンを召還し、回復をかけながら狩場に躍り出た。
「お母さんの鬼畜狩りが始まるよ!」
空中に光がいくつも現れたかと思えばそこから一斉に光の柱が降り注いだ。光の柱はかなり広い範囲で降り注ぎ、骨の竜を襲う。2回3回と柱が降るとカシャンと音を立てて骨の竜の何体かが同時に消えていく。残るのはモンスターが落とした骨や薬といったアイテム。それを3匹のペット達がかき集めていた。
光の柱をひたすら降らせる妖さん。狩場のあちこちからカシャンカシャンと音がをたてて次々と消えていくモンスター。狩場の足元には拾いきれないアイテムが散らばっていた。
「だぁぁ!まだ拾ってねぇのに動くなよ!」
白が大声で叫んでいた。ペットが主人から離れていられる距離には制限がある。妖さんが移動すれば当然ペットも移動せざるを得ない。
「アイテムはすぐには消えん!次回ってきたら拾え!」
「次来たら増えてんだろーが!」
「ごちゃごちゃ煩いっ!装備と書は取りこぼすんじゃないぞ!」
「判ってるよ!・・・ぐえぇっ!」
結局、引き摺られるようにアイテムを拾いながら白は妖さんの後について行くしかなかった。
「流石に凄ぇな」
いつもは兄弟達と狩りをしていた剣八だが、アイテムを拾いきれないほどの狩をしたことは無い。まぁ兄弟達がそれぞれに拾っているせいもあるのだが。必死になってアイテムをかき集めている白を見ながら「まぁ頑張れや」と胸の内だけで声をかける剣八だった。ちなみに天鎖はマイペースでまったりとアイテムを拾っている。

「お母さん!レアモノが出たよ!」
暁が狩場の1箇所を指差して叫んだ。そこには見た事の無い箱が落ちていた。
「おお!お宝げっと!?取って来い!白玉団子!」
「おう!って名前違ってんぞ!誰が白玉団子だっ!」
「そこは突っ込まなくて良いから。白苺君、取ってきてあげて」
「ちっ!」
暁に促されて白は箱を取りに近寄ろうとするが・・・
「ち、近寄れねぇ;」
箱の周りには骨の竜が群がっていていた。近寄れば口からビームを吐いてくる。いくらペットの回避率が100%とはいえビームを吐くモンスターの群れの中に飛び込んでいくのは流石に怖い。
「さっさと取って来んか!3枚に下ろすぞっ!」
「メチャクチャ言ってんじゃねえぇぇ!」
どうあっても竜の群れの中へ箱を取りに行こうとしない白に、むー!とむくれる妖さん。その近くで相変わらずマイペースでアイテムを拾う天鎖。天鎖を見てにたりと妖さんが黒い笑みを浮かべた。
「テンコ盛り、ちょっとコッチに来い♪」
「んー?なぁに?」
ひらひらと妖さんの傍まで寄ってきた天鎖の尾びれを妖さんはむんずと掴んだ。
「パペット発動おぉぉ!」
妖さんの叫び声と共に天鎖の体が光に包まれた。そしてそのまま妖さんは力任せに天鎖をぶん投げた。
「行っけえぇぇーーー!パペットォォォォーーーー!!」
「いやああぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴と共に天鎖は群れる竜の少し離れた場所までふっ飛ばされた。
「きゃーーーーーー!」
パペット機能が発動した天鎖をターゲットにした竜達は箱から離れて、腰が抜けたのかその場から動けずにいる天鎖に襲い掛かっていった。その隙に箱を取りに行く白。しかし、白が箱を手にした瞬間・・・
「しろぉぉぉ!怖いよーーーーー!」
天鎖が白に物凄い勢いで抱きついた。
「わ!?馬鹿っ!来るんじゃねぇっ!」
白は天鎖を引き剥がそうと必死になるが、天鎖はしがみ付いて離れない。そしてそうこうしている内に2匹は竜の群れに飲み込まれていった。
「ああっ!白!天鎖!」
「おい!?危ねぇぞ!」
白達の所へ飛び出そうとした一護を剣八が慌てて止めた。
「剣八!離して!白達を助けなきゃ!」
「お前ぇが行っても危ねぇだけだっ!」
「剣八・・・!」
一護を羽負い締めにして止める剣八。一護はビタビタと尾びれで剣八を叩きながらもがいていた。
「苺君、あの2人なら心配ないよ」
「でもっ!」
「大丈夫だって!ペットは回避100%なんだから怪我なんてしないから!」
兄弟達も揃って一護を宥めた。
「まぁ、トラウマにはなるだろうケドね☆」
「・・・フォローになってねぇぞ・・・」
一言多い兄弟に思わず剣八がつっ込んだ。

「うわあぁぁぁぁん!いちごぉーー!怖いよおおぉぉぉー!」
やがて天鎖が白にしがみ付いたまま竜の群れから泣き叫びながら飛び出してきた。白はといえば箱を抱えたまま目を回していた。
「気絶しながらも箱を手放さなかったのは流石だな」
「すんげー根性だな」
「律儀つーか健気っつーか」
「単に箱取り損ねた時のお母さんの報復が怖かったと俺は見るがな」
「それ、洒落にならないよ?」
一護にすがり付いてえぐえぐ泣きじゃくる天鎖。兄弟達は目を回した白を介抱してやりながらも好き放題なコトを言っていた。
その後も妖さんの鬼畜狩りは続き、途中で再び箱が出た時には天鎖はやはりぶん投げられ、目を回していた白も叩き起こされて同じように箱の回収のためにぶん投げられていた。



2時間後、薬が無くなったため狩りを終えて街に戻った妖さん達。不要なアイテムを町の店で売ると、拠点であるリビングに帰って来た。狩場に行かなかった巫女が妖さんからアイテムを受け取ると、フリマに出すもの、兄弟達に配分するもの等を仕分けるとさっさと倉庫へと運んでいた。
リビングではぐったりとした白と天鎖を一護が介抱し、剣八はそれを見ていた。兄弟達はその傍で寛いでいた。
「いやぁ〜、流石ジェネ狩り。薬代がパネェわ」
「けど、お宝が2つも出たから赤字にはならなかったと思うぞ?」
「然したる黒字にもなってないと思うけどな」
「ジェネで2時間も狩ってりゃあな」
「しっかしテンコ盛りもアレだな。名前変えるか?トコロ天に」
「なんでトコロ天?」
「あ?押し出されたとたん刻まれるから」
ぶん投げられた先で即座にモンスターに袋叩きにされる様は、トコロ天がトコロ天突きから押し出されたときには細く刻まれているのに似ていなくも無い。
「あー・・・確かにな」
「もぉトコロ天で良いんじゃね?」
まったりと会話する兄弟達。妖さんもつっ込んでは来ない。むしろ納得しているようだ。
「トコロ天てのは止めといたほうが良いと思うがな」
そこへ剣八が口を挟んだ。
「なんでだ?海胆っ八」
「トコロ天てのには別の意味があるからな」
「別の意味?」
妖さんが怪訝な表情で聞いた。妖さんだけでなく兄弟達も一護も白も知らないらしく、剣八の顔を全員が見ている。
「あー・・・トコロ天てのは、男がナニしてるときに後ろだけでイかされるのをトコロ天って言うんだよ」
「「「「「・・・は?」」」」」
一瞬、剣八の言っていることの意味が判らなかった面々。
「なな・・・ナニって・・・ナニのこと、か?」
妖さんが珍しく顔を真っ赤にしてうろたえていた。
「まさか・・・う、後ろっていうのは・・・・」
「そりゃぁ・・・」
「だーーーーっ!!言わんで良いっ!言わんでっ!」
慌てて剣八の言葉を遮る妖さん。かなり動揺しているようだ。一護は剣八の言った意味が判ったのか真っ赤な顔で俯いてしまっている。兄弟達も引き攣った表情で目線を泳がせていた。白は引き攣ったまま固まっていた。
「ねーねー。何の話?」
そこへ全く意味が判っていないのか天鎖が無邪気に聞いてきた。
「何でもねぇよ。てめぇはどっかで鈴と遊んでろ」
剣八にぽい、とリビングの真ん中に放り出される天鎖。ぷぅと膨れたがすぐに鈴と戯れだしていた。
「あれが天然で良かった・・・」
話題がそこで途切れたことに心底安心した妖さんだった。



「一護、いつまで照れてんだ?誘ってんのか?」
「やっ!剣八のばか!」
「そんなに怒んな。ほれ、菓子だ」
剣八は照れて尾びれでビタビタ叩いてくる一護を膝に抱えると、出されていた菓子の一つを一護の口に放り込んだ。上目遣いで剣八を睨みながらも一護はおとなしく菓子を食べていった。
一方、未だ固まっている白を妖さんが突付いていた。
「いつまで固まってんだ?白苺。見かけによらずウブいなw」
「・・・!誰が初心だ!」
「白馬に乗った王子様を待ってる小娘か?おまいは」
「違うわ!てめぇだって焦ってただろうが!つか、なんで俺が王子様を待つんだ!俺は男だ!」
ちょっと呆れたように仲睦まじく菓子を食べる剣八と一護を指差す妖さん。
「お姫様はずっと王子様のもんだって夢みてたんだろ?王子様?」
「一護は俺のもんだ!誰にもやらねぇ!」
「はいはい。拗ねないイジケナイ不貞腐れない」
ぽんぽんと白の頭を撫でると無理やりお茶に付き合わせる妖さんだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき

天鎖の罰ゲームです
白も可哀想なことになってますがww
ランダムチケットには私も泣かされました
ちなみにメイポでパペット機能が書で張り付くことはありませんw

天鎖が投げられたのは、アレです
双極で一護がルキアを投げた時のコトを想像して頂ければww


無駄に長くなってしまいましたが
楽しんで頂けたでしょうか?

                     (H23.11.26)

by妖 



11/11/27に妖様より頂きました!金魚一護達の面白愉快な物語。まだまだ続きますよ〜!
天鎖の扱いがエライ事に(笑)
白のブラコンもねww



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