題「いざ、新世界へ!」 | |
天鎖の思わぬ行動のせいで異世界へ来てしまった一護達。妖さんの提案で冒険者とペットになり、異世界を冒険することになった。冒険には妖さんとその息子の暁が付いていく事になった。 「さて、出かけるか。行くぞ、海栗っ八」 「ん?どこへ行くんだ?」 「まずは初心者島だな。海栗っ八は0Lv初心者だからな」 「初心者島?何だ、それは?」 「冒険者は最初に初心者島で狩りの仕方やLvの上げ方なんかを学ぶんだよ」 「あ?そんなもん、おめぇらが教えてやりゃあ良いじゃねーか」 暁の説明に白が不満そうに言った。 「冒険は初心者島から始めるのがルールなんだ。こればっかりはすっ飛ばすわけにはいかないんだよ」 「ほら、分かったら行くぞ!」 意気揚々と港へと向かう妖さんと、仕方なくついて行く一護達。 港に着いくと大きな船が停泊していた。これで初心者島へ行くのだと言うだ・・・が。 「初心者島へは1度出たら戻れないんですよ!」 「んな事は解かってるんだよ!そこを何とかしてくれってば!」 妖さんと船員が揉めている。どうやら初心者島は1度出たら戻れないらしい。 「おんや?妖さんじゃねーか!どうしたんだい?」 「あ、船長!コイツを初心者島へ連れてってやりたいんだよ」 「あ?コイツを?」 船長と呼ばれた男が胡散気に剣八を見た。 「0Lv経験値0か。なんでそんなやつが此処に居るんだ?」 「ん〜〜〜。・・・・バグ?」 「バグって・・・;」 妖さんの返事に呆れたように答える船員。 「まぁ・・・・バグ落ちの妖さん絡みなら有り得るか?」 「何です?バグ落ちの妖さんって?」 船長の言葉に船員が疑問を口にした。一護達も気になって話しに聞き耳をたてる。 「管理されたこの世界から落ちるコトを『バグ落ち』って言うんだがな。大抵はそのまま闇に葬られるんだが、この妖さんは何度もバグ落ちしててな。一部では結構有名なんだぜ?」 「へ・・・へぇ・・」 「で?今回は結構長かったな。もう帰ってこないかと思ってたぜ?」 「嘘つけ!どうせまた賭けの対象にしてたんだろーが!」 「まぁな」 「人を賭けの対象にしてるんだ、少しくらい融通利かせろ!どうせ儲けたんだろ!?」 「あはは。まぁ、今回は俺の一人勝ちだったからな。稼がせてもらったぜ?」 「こんの悪徳船長が!」 この世界ではバグ落ち自体が非常に珍しいことなので、普通はいつバグ落ちがあるかの賭けになるのだが、妖さんの場合『今度は帰って来れるか、何時帰って来るか』の賭けになるらしい。しかもかなりの高額で。 「でも、なんでそんなに落ちるんです?普通は落ちること自体有り得ないでしょう?」 「・・・・・体質?」 船員の質問にきょとんと返事をする妖さん。嫌な体質だな、と誰もが思った。 「稼がせてもらった礼だ。今回だけは初心者島に送ってやるぜ」 「よ!太っ腹!善人の中の善人!あんたは船乗りの鏡だw」 「・・・さっき、悪徳船長って言ってなかったか?」 白がぼそりと突っ込んだ。 初心者島に着いた一護達。剣八は妖さんから剣と携帯電話を渡された。 「なんだぁ?この玩具みてぇな剣はよ」 「この世界の武器や防具はLvによって装備できるものが決まってんだ。OLv装備なんだから玩具だろーがゴミだろーがガマンしろ!それと携帯は連絡や、狩場や装備やモンスターの情報が確認が出来る。持ってないとここではやっていけん」 「伝令神機みたいなもんか」 「そー言えば、そっちにも似たもんがあったな」 簡単に使い方を教えてもらう剣八。使い方が似ているのでさほど難しくは無かった。 「私達は初心者島の中まではさすがに行けないからな。島の反対側にある街まで自力で行って、こいつの依頼を受けて椅子作ってもらって来い。此処での用事はそれだけだ」 携帯から依頼人の顔を確認する剣八。 「ああ?椅子なんか要るのかよ?」 「要るから言ってんだ。つべこべ言わずに行け!」 「へいへい」 「それとモンスターは倒さなくて良いからな。後で好きなだけ狩らせてやるから。あと途中で婆さんや娘や女が居るが、スルーして良いから」 「何でだよ?」 「めんどいから」 「・・・・そーかよ」 面倒事はもとよりやる気が無い剣八。やらなくて良いならやらないと決めている。 「・・・っと、苺。これ持ってろ」 これ、と一護は妖さんからリュックサックを渡された。 「何?これ」 「ペットの必需品だ。薬や装備や拾ったもんをこれに入れろ。中で圧縮されるから重さもでかさも変らんから安心しな」 「うん、わかった」 「おまいらもな」 白と天鎖にも同じようなリュックを渡される。一護が赤いリュック。白は黄色で天鎖は青だ。 「んじゃ、きりきり行って来い!」 叩き出されるように島の中へと放り出される剣八と一護。剣八は妖さんに言われたとおりに街へ行き、椅子を作って貰うことにした。 「なぁ、椅子ってそんなに重要なのか?」 残された白が暁に聞いてきた。妖さんが島の中に入れないのでペットである白も天鎖も居残り組なのだ。 「椅子は座っていると体力が回復するんだ。薬が無い時や薬を使いたくない時には役に立つよ」 「へぇ・・・便利なもんだな」 「回復量は決まってるんだけどね、結構重宝するよ」 「でも、なんでわざわざ此処で作るの?」 天鎖も聞いてくる。此処から始めなければならないルールなのは教えてもらったが、何もしないのに椅子だけ作る理由が解からなかった。此処では狩りの仕方を学ぶんじゃなかったろうか? 「椅子は此処でのみただで手に入るんだ。他は面倒臭い依頼で極たまーに貰えるか、高いお金払って買うしかないんだよ」 「そうなんだ・・・」 「普通はここで最初の転職ができるまでLvを上げるんだがな。海栗は転職しねーから此処でLv上げる必要はねーし」 何時の間にか椅子を出してカキ氷を食べながら寛いでいる妖さん。暁も椅子を出して座っていた。 「なんで此処でLv上げるの?」 「この世界でLvを上げるには、主にモンスターを倒して経験値を稼ぐんだよ。必要な経験値が溜まればLvアップするけど、死んだら経験値が減るんだよ」 「デスペナっつーってな。初心者島にはそれが無いんだ」 ちなみにこの世界で死ぬとは戦闘不能状態になることだという。本当の意味で死ぬ訳ではないらしい。 「死ぬとお墓が降ってきて幽霊になるんだ。だから死ぬコトを墓ドロとも言うんだよ」 「墓泥棒?」 「墓ドロップ」 「ふぅん」 死んだら墓が出来て幽霊になるとは、なんとも解かり易い。親切なのか厭味なのかは解からないが。 そうこうしているうちに剣八が椅子を持って帰ってきた。 「じゃぁ戻って、早速狩りに行くか!」 一護達は再び船に乗って初心者島を後にした。 「とりあえず、狩りの仕方を覚えるか」 最初の街に戻って、妖さんが狩りの仕方を教えてくれることになった。 「初心者には技もスキルも基本的には何も無いと思え。ただ殴るだけだ。で、モンスターを倒したら経験値が入る。一定の経験値が溜まればLvアップだ」 「殴るだけで良いんだな?」 「そ。つーか、それしか出来んし?」 「モンスターとぶつかってもダメージ受けるからね。死んだら経験値が減るから気をつけるんだよ?」 「は!誰が死ぬかよ!」 自分は戦闘部隊の隊長なのだ。そう簡単に死ぬものかと意気込む剣八。 「・・・自分が今、0Lv初心者だって事忘れないでね?」 暁が苦笑しながら忠告してきた。剣八は忘れていたが、剣八は冒険者成り立てなのだ。 「海栗はOLvだから、まずは1番弱いモンスターから始めっぞ」 「1番弱いヤツからかよ・・・」 「すぐにLv上がるから、ガマンしろ!」 「・・・死ななきゃね」 意味ありげ気に妖さんを見遣る暁。 「ここに死に捲くってLvが上がらない良い見本が居るからね」 「やかますいっ!」 半目になって怒鳴る妖さん。誰の事だか一目瞭然だな、と一護達は思った。 「街の中にはモンスターは居ない。モンスターは街から遠くなるほど強くなっていくからな。まずはこの街から出てすぐの狩場だ。ここが1番弱い」 「へいへい」 街を出ると、そこには赤や青や緑色の殻の大きなでんでん虫が何匹ものろのろと動いていた。 「まずはコイツからだ。せいぜい頑張れ?」 「・・・・わーったよ」 玩具のような剣を振り上げて勢い良く斬りつける剣八。 ぱこ なんとも間の抜ける音を立てる。かなりの力で殴ったはずなのに、でんでん虫はほとんどダメージを受けていない。 「なんだぁ?」 「まぁ、0Lvだからね。頑張って叩いてみてよ?そのうち倒れるから」 暁が説明をしてくれた。仕方なく再びでんでん虫に挑む剣八。 ぱこ ぱこ ぱこ ぱこ ぱこ ぱこ ・・・・ 20回ほど叩いただろうか、やっとでんでん虫がころんと殻を残して消えた。どうやらやっと倒せたようだ。 「苺。モンスターが落としたものを拾え。落ちるものは色々だが、とにかく拾え!」 「あ、うん。わかった!」 妖さんに言われて慌てて殻を拾う一護。一抱えもある殻をリュックの口に近付けると、すぽっと中に入った。リュックの大きさは変っていない。 「すげぇ・・・つか便利なもんだな」 あんなでかいモノがよく入ったものだと白が感心していた。 ひたすらでんでん虫を叩き続ける剣八。殻の色によって倒れるまでの回数が違っている。恐らく殻の色によって強さが違うのだろう。入ってくる経験値も違っていた。 「あれ?殻の他にもなんか落としたよ?これって薬?」 一護が赤い液体の入った瓶を拾い上げた。 「たまに薬や装備も落とすんだよ。何でもいいから拾っておけ」 「わかったー」 一護は返事をすると拾った瓶をリュックに入れた。その後も落ちてきたものをせっせと拾う一護。剣八はひたすらでんでん虫を叩き続けていた。どれだけ倒しただろうか、やがて剣八の体が光に包まれた。 「お?やっとLvが上がったか」 「やっとかよ・・・」 叩いても叩いてもなかなか倒れないでんでん虫に嫌気が差していた剣八がげんなりと返した。いい加減疲れたので、最初に作らされた椅子を出して座ってみる。意外と体力が回復していくのが判った。なるほど、これは便利だなと剣八は思った。妖さんは構わず話を続けた。 「んじゃ、ステ振りな?」 「すてふり?なんじゃ、そりゃ?」 「Lvが上がるとステータスを上げられるんだよ。ステータスは『力』『魔力』『素早さ』『幸運』の4つ。何を上げるかは職によって違うけど、攻撃力や何やらに関係して来るんだよ」 やっぱり暁が説明をしてくれた。 「海栗はとりあえず『力』上げとけ」 「おう・・・・」 妖さんに言われるまま携帯を弄って『力』を上げる剣八。 「あとはおんなじだから、頑張りな」 再びでんでん虫を倒す剣八。『力』を上げた為か攻撃力が上がり、先程より速いペースででんでん虫を倒していく。 なんLvか上げた所でLvが上がらなくなってきた。Lvが上がるほどに必要な経験値も増えるので、でんでん虫の経験値では追いつかなくなってきたのだ。 「そろそろ狩場を変えるか。一旦街に戻るぞー」 「おう」 街に戻り、拾ったものを店で売ってお金に換える。そしてタクシーに乗って別の街へと移動した。 そこは草原の中の長閑な街だった。その街から幾つか離れた狩場へ案内された一護達。 案内された狩場には緑色の傘のキノコがぴょんぴょんと跳ね回り、豚や赤いリボンをつけた豚が走り回っていた。でんでん虫とは違い明らかに動きが早い。 「ここはさっきよりLvが高いもんスターが居るからな。せいぜい死な無い様に頑張れ?」 「誰が死ぬかよ」 安置と言われるモンスターの来ない足場で椅子を出して寛ぐ妖さん達。剣八は一護と共にモンスターが居る場所へと飛び降りた。とたん・・・・ 「ぐえぇっ」 数匹の緑色のキノコに踏み潰された。そこへ豚が突進し、さらに赤いリボンをつけた豚に跳ね飛ばされてしまった。 ぴゅっ 妖さん達が寛いでいるすぐ脇を何かが落ちて行った。 「死んだな」 「死んだね」 「「え」」 妖さんと暁の言葉に白と天鎖が何事かと声を上げた。下を見れば剣八が居た所に墓があり、剣八はその前で幽霊姿になってぷかぷか浮いていた。 「・・・ざまぁみろ」 ぼそりと呟く白。 「わーーーーーっ!剣八ぃ〜〜〜!」 墓の前では一護が泣き叫んでいた。それを慰める剣八。いかにもバツが悪そうだ。 「しかしホントに墓が降ってきたな・・・」 「うん」 「でも、どっから降ってきたんだ?」 「・・・さぁ?」 白い雲が流れる青い空の、一体どこから墓が降ってきたのだろうか。ぼんやりと空を見上げる白。天鎖も同じように見上げていた。 「おーい、さっさと復活しろよー。復活したら街に戻るからな。ドア出すからドアで戻って来い」 死んで復活すれば、1番近い街で復活するのだという。そしてドアも1番近い街に出るのだという。つまりドアで狩場に戻って来いということだ。 「復活したばかりは体力が無いからね。ちゃんと回復してから戻って来るんだよ」 でないと、またすぐお墓が降るから、と暁が忠告してくれた。剣八は言われたとおりに復活して狩場に戻ってきた。 「いきなり墓ドロとはな。死んでばっかりだとLv上がらんぞ?」 「・・・誰かさんみたいにね」 「そこ!一言多い!」 ビシッっと暁を指差して叫ぶ妖さん。よほど死に捲くっているらしい。 「とにかく死ななきゃいいんだな?」 「そういうこと。まぁ、頑張ってよ。苺君も海栗っ八が死にそうになったら薬飲んであげて?」 「うん。そうする」 「別にいいじゃねーか。ホントに死ぬんじゃねーんだし」 「でも、それだと一護が泣いちゃうよ?」 天鎖の言い分に、いくらでも死ねばいいんだとぼやく白。どこまでも剣八が嫌いなブラコンな白だった。 気を取り直して狩場に下りる剣八。 「一護!あぶねぇ!」 突進してくるキノコや豚から、咄嗟に抱き寄せて一護を守る剣八。 「ありがと。剣八」 嬉しそうに礼を言う一護だったが・・・・ 「そこーーーーーっ!何ペット庇ってんだーーーーっ!!」 妖さん怒鳴り声が狩場に響き渡った。 「なに言ってやがるっ!一護が怪我したらどうすんだっ!?」 「じゃかましいっ!ペットの回避率は100%なんだっ!どんな敵の、どんな攻撃も当たらないんだよッ!」 「なんだと?」 「ペットは例えどんな敵にあっても絶対にダメージは受けねぇんだよ!イチイチ護るな!ボケェ!」 「この世界で回避率100%はペットだけだからね。心配要らないから狩りに専念しなよ」 怒り捲くる妖さんを宥めながら、暁が忠告してきた。 「本当だろうな?」 「本当だよ。だからこそ狩場でドロップ品拾ったり薬の補充が出来るんだからね」 「解かったらさっさと狩る!ペット庇ったりすんなよ!?」 「わーったよ!狩れば良いんだろ!?」 やけくそで返事をする剣八。 「剣八。俺は大丈夫だって言うから、剣八は狩りに専念して?俺も頑張って剣八が倒したモンスターが落としたもの拾ったり薬飲んだりするからさ」 「一護がそこまで言うんならな」 「うん、頑張って?剣八」 「ああ」 甘い雰囲気を撒き散らす2人に、ケッ!と唾を吐く白が居た。 その後も度々モンスターに突進されそうな一護を庇っては、妖さんに怒鳴られながら剣八の狩りは続いていった。 異世界の冒険はまだ始まったばかり。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あとがき 初心者剣八の狩場風景♪ 今回も説明多くてごめんなさい・・・ 弱い海栗が頑張ってますw お墓も降りましたw そして剣八に容赦ない白様www (H23.4.7) by妖 11/04/08アップ! つ、続きが気になるぜぇ〜! 今回金魚が手を入れたのは、「海胆」を「海栗」に書き換えただけです。こっちの方が剣八っぽかったので。 |
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