題「トンネルを抜けるとそこは別世界?」
 一護の毒の耐性が出来た剣八。東の魔女から貰った体力回復薬で弱っていた身体も力も元に戻った。今日も海の上で寄り添う2人。
「良かった、剣八の毒が消えて」
「ああ。これも一護のおかげだ。ありがとよ」
「ううん。妖さんの薬のおかげだよ」
「その妖さんてのは誰だ?」
「東の海に棲んでる魔女だよ。ちょっと・・・変ってるけど、良い魔女だったよ?」
「へぇ、礼を言わねぇとな。一護、そいつの所へ行けねぇか?」
「うん。でも海の中だよ?おまえ行けないだろ?」
「そうだな。なんとかならねぇもんかな」
今、一護とこうして居られるのはその魔女の薬のおかげだ。普段誰かに礼を言うことなど思いもしない剣八だったが、今度ばかりは礼が言いたい。どうしたもんかと思っていると。
「一護ーーー!居ねぇと思ったら、また人間の所に来てやがったのか!」
突然、2匹の人魚が現れた。怒鳴っているのは一護と瓜二つの、けれど髪も体も白く乳白色の鱗が虹色に反射する人魚。もう一人は黒髪の鱗が蒼い人魚だ。
「白ぉ〜〜〜、勝手に来ちゃハリベルに怒られる・・・」
「うるせぇ。嫌ならついてくるんじゃねぇよ!」
「白!?それに天鎖まで・・・?」
「なんだ?お前等」
殺気もばんばんに剣八を睨んでいる白い人魚と、その後ろに隠れるようにしている蒼い人魚。
「剣八。こっちの白いのが白。おれの双子の弟なんだ。もう一人はいとこの天鎖」
「お前、兄弟がいたのか」
「一護は俺のもんだ!人間はさっさと陸に帰りやがれ!」
しかもブラコンかよ・・・凄まじい独占欲を見せる白に若干呆れる剣八。
「そうだ。白。人間が海に居られる方法って無いかな?」
「あ?何でだよ?」
「うん。剣八が薬のお礼が言いたいって。魔女の所へ行きたいんだ」
「あんな危険な所へか!?巨大なサメがうようよしてるんだぞっ!?」
「そんなに危険なのか?だったら俺も行ったほうが良いんじゃねぇか?」
「おめぇにサメが殺れんのかよ?」
「ああ?俺は護廷十三隊の戦闘部隊の隊長だぜ?サメぐれぇどうってことはねぇよ」
そう言われて考え込む白。一護を1人で危険な深海に行かせるわけにはいかない。自分達もついていくつもりだがサメとは戦えない。ならばこいつを連れて行っても良いだろう。何となればこいつを盾に逃げれば良い。
「・・・わかった。人間が海に居られる薬をハリベルが持ってたはずだ。そいつを持ってきてやる」
「そんな薬があるのか?白」
そんな薬があるなど聞いたことが無い一護。
「時間制限付だがな。せいぜい5〜6時間ってとこか」
「でも、ハリベルがくれないよ。どうするのさ、白ぉ」
「んなもん、パクって来るに決まってんだろーが。行くぞ、天鎖!お前が囮になれ」
「ええええ〜〜〜!?」
「さっさと来やがれ。ウロコ剥がすぞ!」
「うえぇぇ〜〜〜ん;」
嫌がる天鎖を連れてその場を後にした白。やがて天鎖と共に薬を持って戻ってきた。




剣八に護られながら深海の洞窟に辿りついた一護達。だが、そこに人の居る気配は無かった。
「妖さん、どこに行ったのかな?」
「なんか変なもんばっかだな」
「白。勝手に触っちゃダメだって。あっ天鎖も!」
洞窟の中をあれこれ漁る白と天鎖。そのうち天鎖が洞窟の隅っこの床にある貼ってお札を見つけた。
「一護〜、白ぉ〜。なんか貼ってあるよ?」
「ホントだ」
「なんか胡散臭いな」
人魚3人が覗き込むそこには『剥がすな危険』の札が貼ってあった。
「おい、勝手に触るんじゃねぇぞ・・・」
剣八が言うか言わないかの隙に、お札を剥がす天鎖。とたんにお札の貼ってあった場所に黒い穴が開き、そこに引きずり込まれる天鎖。
「うわああぁぁっ!・・助けて!白!」
「わ!?馬鹿!掴むんじゃねぇっ!」
咄嗟に白の尾びれを掴んだ天鎖。掴まれた白も穴に引きずり込まれる。
「天鎖!?白っ!」
慌てた一護が白の手を掴んだが、同じように穴に引きずり込まれていく。
「ちっ!言ってる傍から!」
剣八も一護を抱えるようにして穴に飛び込んだ。

どれだけ落ちただろうか、やがて白い出口が見え、そこがら勢い良く外に吐き出された4人。思いきり地面に叩きつけられた。
「痛ぁい〜!」
「大丈夫か、天鎖!?」
「つ、潰れるっ!つかどけよ!人間!重いだろーがっ!」
「あ?悪りぃな」
そんな団子状態になっている4人に呆れるような声が聞こえた。
「なんか、出たな」
「出たね」
「出たねぇ」
「出たな」
見れば数人の少年や少女が呆れたようにこっちを見ていた。どうやらどこかのリビングのようで、彼等が寛いでいる所に出たようだ。いきなり見ず知らずの者が現れたというのに驚かないのは何故だろう?そう疑問に思う一護達。
「これ、何だと思う?」
「さぁ?どうせお母さん絡みでしょ?」
「なるほどね」
「つーか、またかよ」
げんなりした表情で一護達を見る少年達。



「あの・・・お母さんって?」
状況が判らず、とりあえず疑問を口にした一護。
「あれ?あんた、あん時のオレンジ色の半魚人じゃないか」
「あっ!妖さん!」
奥からバスタオルに赤い運動帽姿の妖さんがマグカップを抱えて出てきた。
「やっぱりお母さん絡みだったか」
「今度は何したのさ」
「てか、こいつら誰?」
「ん?前に落ちてた世界で世話になった金魚だ。他は知らない」
「知らないヤツまで巻き込んだのかよ」
「どーしようもねぇな」
「また変な物拾ってきたな」
どうでも良いような態度の少年達。一人を除いて。
「で、なんでその金魚がこっちの世界に居るのかな?」
黒髪に黒いローブを着た少年が米神に青筋を立てて、手にした杖で妖さんにグリグリしながら詰る。
「痛い痛い!暁(あかつき)、痛い!んなもん母にも解からん!」
「解からないじゃすまないだろ!管理者に知れたらどうするんだよッ!」
「痛い痛い痛い!やめれ〜〜〜!」
妖さんを母と言うからには彼等は子供達なのだろう。しかしその割には妖さんの扱いがヒドイと思うのは決して錯覚などではないだろう。他の少年達はグリグリされている妖さんには目もくれず寛いでいる。

「で、状況を整理しようか」
暁、と呼ばれた少年がテーブルについて一護達に話しかけてきた。
「えっと・・・妖さんから薬を貰ったお礼を言いに洞窟に行ったら、誰も居なくて」
「こいつが変な札剥がしたら穴が開いて、そこに落ちたんだ」
一護と白が説明する。こいつ、と言われた天鎖は白に尾びれを掴まれて涙目だ。
「お札?」
「ああ。剥がすな危険って書いてあったな、確か」
「・・・・それじゃ、剥がすよな。ふつー」
「だよな」
「てか、お母さんの薬、飲んだんだ・・・」
「勇気あんな。おまいら」
「勇者だ。勇者がここにおる」
「つか、馬鹿じゃね?」
「知らなかったんじゃないの?」
「知らぬが仏って、この事か。南無南無」
口々に好き勝手なコトを言う少年達。どこをどう突っ込んで良いのかわからない。
「お前等は黙ってろよ。話が進まないから。つまり、あんた達はお母さんに会いに来て、お母さんのトラップに引っかかったワケだ」
「トラップ違う!封印だ!」
暁の言葉に反論する妖さん。未だグリグリされている。
「如何にも剥がしてくださいってお札貼ってたら、意味無いだろ!現にこうして異世界の人間引き擦り込んでるんだからな!つか、ちゃんと封印して来いよ!どーすんだよ、これ!」
「そうだよな。異世界の人間が紛れ込んだって判ったら、管理者が黙ってないと思うよ?」
「あの、管理者って・・?」
「この世界を管理している人達だ」
「この世界は管理者によって全てが管理されているんだよ」
管理者とはこの世界の秩序やらなにやらを管理している神様のようなものらしい。
「その管理者って奴らに俺達のことがバレたらどーなるんだ?」
「チート扱いで闇に葬られるんじゃないの?」
思わず言葉に詰まる一護達。こんな所で死にたくは無い。
「要はバレなきゃいいんだろ?とりあえず住民登録して此処に居てもらうしかないだろーな」
「また、いい加減な・・・」
「仕方ないだろ?まぁ、転職しなきゃ問題はないんじゃね?」
「あの・・・良く分からないんだけど・・・」
妖さん達の話の内容が今もって解からない一護達。どうやらこの世界は自分達の世界とはかなり違うようだ。



「とりあえず、あんた達は住民登録をしてこの世界の住人になってもらう。どうせなら冒険者が良いだろう。此処にずっと居るなら冒険者にならなくても良いけどな」
ひょいひょいと床を指差す妖さん。此処、というのは今居るリビングの事だ。
「この世界にはいくつか大陸があって、それぞれに幾つもの街がある。街から出られるのは冒険者だけなんよ。街の外はモンスターがいるからな」
「冒険者って?」
「街から出られる人の事だよ。街の外でモンスターを倒したり、町の人たちの依頼を受けたりするんだ」
妖さん提案に暁が補足説明をしてくれた。
「まぁ、あんた達は転職できないだろうけどね」
「何でだよ?」
「転職したら本当にこの世界の住人になっちまう。そんなコトをしたら元の世界に帰れなくなるぞ?」
「転職って何だ?」
「冒険者はまず初心者から始まって、Lvが上がったら転職してそれぞれの職につくんだ。職には戦士・魔術師・盗賊・弓士・海賊とかある。転職したら他の職には変われない。後はそれぞれの特性に合わせて職位を上げていくんだよ」
「ま、初心者を極めるってのも良いけどな。で?どうする?冒険者になるか?」
「当たり前だ!誰がこんな所でじっとしていられるか!」
「俺もこいつに同感だな」
暁の説明と妖さんの誘いに白と剣八がすぐに返した。
「じゃあ、登録してくるな♪」
そう言うと妖さんは嬉々として部屋を出て行った。



「おい、冒険者ってのは強いのか?」
剣八が興味深げに暁に聞いてきた。戦闘部隊の隊長だけあって興味があるらしい。
「まぁ、職それぞれだけどね」
「職って言うのは何なんだ?どう違うんだ?」
「使う武器や戦い方が違うんだよ。あとスキルとかもね」
別の少年が説明してくれた。暁はそれに続いて更に説明をした。
「戦士は剣や鉾や槍や鈍器を使って戦う力任せの短・中距離の攻撃職。盗賊は短剣を使う接近攻撃の斬りと、手裏剣を使う中・遠距離の投げの素早さ重視の攻撃職。弓士は遠距離の攻撃職。魔術師は癒しと援護が主の回復魔と、火・毒、あるいは氷・雷を使う攻撃魔が居るよ。ちなみにお母さんと俺は聖魔だ」
「海賊ってのは?」
「殴りの接近攻撃と、銃を使う中・遠距離の攻撃職だな」
「銃は蹴りも出来るぜ?」
「でもアレはリーチ取りだろ?アレで狩りはしないだろう」
「まーな」
「他にもあるけど基本はそれくらいかな?他に質問は?」
「初心者ってのはどうなんだ?強いのか?」
「技や他のスキルが使えないからね。昔は高Lv初心者も居たらしいけど、今は居ないんじゃないかな?ただ殴るしか出来ないからね」
「ちっ、つまらねぇな」
「それじゃぁ転職する?戻れなくなるけどさ」
「そうそう、狩りは楽しいぜ?」
「煽るな、宵闇、黄昏。バレたら闇だぞ。初心者は確かに弱いけど、お前等は旅行者ってコトでこの世界を見て回るには十分だろ?」
「そりゃそうだがな」
強い敵が居るなら思いきり戦ってみたいと思う剣八。だが、元に居た世界に帰れなくなるのは困る。此処でじっとしているつもりもないので仕方が無いと諦めた。
「ねぇ。さっき妖さんをお母さんって呼んでたけど、此処に居るみんな、妖さんの子供なの?」
「ああ」
「随分と子沢山だな。全部で何人居るんだ?」
「さぁ?16〜7人は居たはずだけど?」
「・・・・・すげぇな・・・」
「別におなかを痛めて産むわけじゃないからね。この世界は・・・」
「それって、どういう・・・」
「おーーーーー!たらいもーーー!!」
一護と白の疑問を遮るように妖さんが機嫌よく帰ってきた。



「登録済ませてきたぞ。お前は今日から初心者だ。海栗(うに)っ八」
「何だ?その海栗っ八ってのはよ?」
「あんたの名前だ。聞いてなかったからな。その名前で登録してきた」
「ちなみに名前の変更は出来ないからね。諦めろ」
暁がくすくすと笑いながら付け足してきた。確かに髪形だけ見れば海栗にも見えなくは無い。
「そしてお前等はペットな」
「誰がペットだっ!殺されてぇか、てめぇっ!」
ペット、と言われて猛烈に怒る白。当然だろう。
「仕方ないだろ?冒険者になれるのは人間だけなんだから。それに所有権つけておかないと、狩られて売り飛ばされっぞ。おまいら」
「所有権?」
「この世界のモノには所有権があるんだよ。所有権がないものは誰のものにでもなるんだ。反対に所有権があれば誰かに取られることはないんだよ」
「売り飛ばされても良いんなら、ペットから外すけど?」
「売り飛ばされるなんて嫌だよ、俺。白も天鎖もペットでいいよな?」
「ちっ・・・売り飛ばされたくはねぇからな。ペットで我慢してやる」
「ところでペットって何するの・・・?」
天鎖がようやく口を開いた。今まで白に尾びれを掴まれて痛くて喋れなかったのだ。
「ペットってのは狩りでモンスターが落としたものを拾ったり、主人に代わって薬を飲んだりするんだよ」
「主人の代わりに?」
「回復薬の補充はペットの特殊能力の1つでな。後付の能力なんだが、ペットが飲んだ薬で主人の体力や魔力が回復すんだよ」
「狩りでアイテムを拾ったり薬飲んでる暇がないときには、ペットが命綱なんだ。特に聖魔はね」
ちなみに妖さんのペットはペンギンで、暁のペットは金色の豚だ。
「で?俺達はコイツのペットなのか?」
白が物凄く不満そうな顔で、剣八をさして聞いてきた。
「いんや。海栗のペットは苺だ。おまいらは私のペットだ」
「何でだよ?」
「ペットは普通1人1匹しか持てねーんだ。私は特別に3匹まで持てるからなw」
「・・・そーかよ」
「ペット1匹しか居ないのに、無駄に調教師の資格取ったからな」
暁が呆れたように言う。ペットの保有にも莫大な金が掛かるのだ。
「で、おまいらの名前なんだが、苺、白苺、テンコ盛りにしてきたから♪」
「なんでテンコ盛り!?俺だけおかしくない!??」
「あははっ!ぴったりじゃねーか。テンコ盛り♪」
「わーん!一護ぉ〜、白がひどい〜〜〜〜;」
「あー・・・よしよし・・・」
泣き付く天鎖をあやしてやる一護。それを見て「ウロコ剥がすぞ!」と引き離す白。白のブラコンここでも炸裂。
「じゃぁ、狩りは明日からって事で今日はもう寝るか」
こうして一護達の別世界での1日が幕を閉じた。明日からは見たこともない世界を見ることになるのだろう。



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あとがき

金魚達の世界旅行のはじまり、はじまり〜♪
まずは世界観からだねw
少しは妖さんワールドが解かっただろうか?
次からはいよいよ各街や狩場へと向かいますwww
剣八は始解すらしてないから設定的には初心者で丁度なんじゃないか?
ペットの活躍(?)も後々でて来ますよww
天ちゃんのキャラがおかしいのはキニシナイw
天ちゃんは一護に甘えん坊で白様の良いおもちゃですwww
(あ、エロい意味では無いよw)

白様と天ちゃんの色の表現、あれで良いか?
違ってたら訂正送って?直すから

でわでわ

                     (H23.3.30)

by妖  

11/04/08にアップ!
妖さんに頂いた人魚SS第3弾!これからどうなる!?わくわくww



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