題「北の支配者と東の魔女」 | |
一護の毒に当てられた藍染。北の海の支配者にして絶対者の藍染だったが、一護の毒には叶わなかった。 権力と力で集めた薬も効かず、解毒剤も作れなかった。日に日に衰弱していく藍染。 そんな中、藍染は一護と関係を持っている剣八が、一護の毒に対する耐性をつけたと報告を受けた。 一体どうやって・・・? 聞けば東の海に棲む魔女の助力を得たと言う。魔女などこの世界に要る筈が無い。調べてみれば断界と呼ばれる異次元の果てのある異世界から迷い込んだらしい。異世界の魔女ならば、一護の毒に対する耐性をつけるなど造作も無いのだろう。藍染はウルキオラ達に魔女について調べさせた。 「藍染様。魔女について幾ばくか調べがつきました」 「そうか。報告したまえ」 「はい。・・・魔女は東の海の深海の沈没船の傍の洞窟に棲みついているようです。癒しを主とした魔女で戦闘は不得手だとの事です」 「ほう。ならば力ずくでこちらの要求を飲ませることも可能だね」 「はい」 藍染は力に物を言わせて魔女に一護の毒に対する耐性をつけさせようと考え、ウルキオラ達を連れて東の海に向かった。 深海の沈没船の傍にある洞窟。入り口には如何にも立て付けの悪そうなドア。 「此処が魔女の棲みかなのかい?」 「そのはずです」 ウルキオラが返事をする。確認もとらずに中に入る藍染達。 「・・随分と小汚いところだね」 「かなり大雑把な性格らしいですね・・・」 「つか、ずぼらなんじゃねーのか?」 グリムジョーがうんざりした様子で言った。棲みかと言うにはあまりにも雑然としている。 広い洞窟内の壁には訳の判らない物や、奇妙な生物の死体や干物が無造作に積まれている。中には武器らしきものもあるが、やはり無造作に積まれていた。 生活用品など殆ど見つからない。やたら大きな鍋には奇妙な生物の頭や足、尻尾などが見える。こんなものを食べているのだろうか? 「堂々の不法侵入か?」 声がして振り向けば・・・・ 「「「うわぁああああああっ!?」」」 「うおぅ!?」 青い髪を振り乱し、梟のような顔に虎の毛皮を纏った小柄な人物がいた。手には何故か赤い鞭。 「・・・この世界の住人は人を見るなり叫ぶのが礼儀なのか?」 梟の仮面を外し、毛皮のマントを脱ぐ人物。髪を手櫛で整えれば、白い肌に赤い目の小柄な女性だった。話に聞く魔女らしい。 「君が東の海に棲むという魔女かい?」 「・・・あんた、誰よ?」 胡散臭そうに藍染達を睨む魔女。 「私は北の海の支配者、藍染惣右介だ」 「自己紹介、どーも。私は4次聖魔の妖の姫巫女だ」 「4次?」 「職にもランクがあってな、4次は最高位なんよ(4次でもLv低いんだけどな;)」 ちょっと目が泳いでる魔女。 「で?北の支配者が4次聖魔様に何の用だ?」 「君に頼みがあって来た」 「頼み?」 「君は一護君の毒の耐性をつけられるそうだね?それを私にもつけて貰いたい」 「・・・苺?」 「人魚の一護君だ。知っているだろう?」 「・・・・ああ!オレンジ色の半魚人!」 「半魚人ではなく、人魚だから;」 思い出した!と言う魔女に思わず突っ込む藍染。 「彼の毒の耐性を私にもつけたまえ。君にはそれが出来るのだろう?」 「・・・・随分と態度がでかいな。それが人に物を頼む態度か?」 「君に拒否権は無いよ」 「やーなこった。あんたみたいなヤツにはしてやんねぇ」 「ほう?嫌だと言うのかね?」 「そう言ったつもりなんだけど?」 「ならば力ずくで言う事を聞かせてあげよう。聞けば君は戦闘が苦手だそうじゃないか。痛い目を見る前に言う事を聞きたまえ」 「しつこいな。やだって言ってんだろー?」 「君のような小娘が私に敵うと思うのかい?」 「・・・・・小娘・・・?」 小娘、と言われて表情が変る魔女。にたり、と哂って「小娘・・・小娘・・」と呟いている。薄ら笑みを浮かべてどこか不気味だ。 「ウルキオラ、やってしまいなさい。ただし殺してはいけないよ」 「判りました」 藍染に命令されて魔女に攻撃を仕掛けるウルキオラ。 「うわぁっ!?」 突然の攻撃を受け、なんとかそれを受け流した魔女。吹っ飛ばされたがさほどのダメージは無かったようだ。 「いきなり何しやがる!?アブねーだろうがっ!」 防御魔法は金が掛かるんだぞっ!?と喚いている。魔力回復薬は高いのだ。 「貴様が大人しく藍染様の言う事を聞かないからだ」 「戦闘が苦手な癒しが得意の魔女が、俺達に敵うと思うなよ!」 グリムジョーまで参戦してきた。 「たっ・・・確かに!狩りが下っ手くそで、狩場で死に撒くって、経験値がたまらなくってLv上がらねーケドっ!グループ狩りにも誰からも誘ってもらえないアホ魔だけどなっ!!」 「・・・・自分で言ってて悲しくないか?」 「やかましいっ!」 突っ込みに涙目な魔女。自覚はあるらしい。 「小娘って言われたことは、めちゃくちゃ嬉しいけどっ・・・!」 ・・・・嬉しかったんだ・・・・ 変な所で感心する藍染達。 「4次聖魔を舐めるなっーーーー!!」 突然、魔女の姿が変った。 腕が4対ついた石造りの遺跡の顔のような兜、先程の梟のような仮面。口元は何故か犬の鼻。紫紺に文様の入ったマントにイヤリングや指輪、ネックレスなどの装飾品を身に着け、手には黒とオレンジの大きな杖を持っていた。何故空き缶を着ているのだろう・・・。 「・・魔女ってバケモノだったのかよ;」 「これは装備だっ!誰がバケモノか!」 グリムジョーのぼやきに突っ込む魔女。表情は判らないが、恐らく涙目なのだろう。声が上ずっている。 「クソ装備とはいえ、それなりの強化はしてあるんだ!舐めるんじゃねぇええええっ!!」 いきいなり杖で殴りかかる魔女。それを難なく躱し反撃するウルキオラ達。ダメージを受け、回復魔法で傷を回復する魔女。 「ぐ・・っ!?」 回復魔法が僅かとはいえ、ウルキオラ達にダメージを与えた。 「・・・・へぇ?アンデッドでもねぇのに回復が効くんだ?ナマモノのくせにな・・・」 にやりと哂う魔女。 「つーことは聖属性が弱点って事だな♪」 属性弱点はダメージが倍増するのだ。なので聖属性弱点は聖魔にとって有利なことこの上も無い。 魔女は洞窟を出て反対側にある洞窟へと向かう。藍染達もその後を追った。そこには見たことも無い深海が広がっていた。骨だけの魚が泳ぎ、何かの巣の様な岩の塊がある。 「此処は私の狩場のひとつだ。此処でやろうじゃねーの」 魔女はそう言うと杖を光の弓に変化させた。同時に赤い巨大なドラゴンが現れた。 「何だ、これは!?」 「召還魔法、バハムート。4次聖魔の召還獣だw」 説明が終わるや否やドラゴンが火を噴いた。魔女も光の弓で攻撃してくる。先程とは桁違いの破壊力がある。それを交わしながら応戦するウルキオラ達。 突然、骨だけの魚が凄まじい勢いでウルキオラ達にタックルしてきた。凄まじい攻撃力だった。 「気をつけな。そいつらのダメージも半端無いからなv」 ドラゴンの攻撃と魔女の弓。加えて骨だけの魚のタックル。ウルキオラ達は苦戦を強いられた。骨だけの魚は回復魔法にもダメージを受けている。此処は魔女に有利な場所らしい。 「コイツ!邪魔な岩だ!」 魔女が攻撃の死角となる岩をグリムジョーが破壊した。すると中から大きな小豆色のウナギのようなものがうようよと出てきた。どうやらこいつらの巣立ったようだ。巣を壊されたウナギもどきは執拗にグリムジョーを追い回す。ウナギもどきの攻撃力もかなりのものだった。 「あ〜あ。やっちゃったねぇ・・・・そいつらしつこいからな。倒すまで追いかけてくるぜ?」 したり顔で忠告してくる魔女。さすがに自分の狩場と言うだけあって地の利がある。 更なる邪魔者が増え、防戦一方になっていくウルキオラ達。しかも倒しても倒しても骨だけの魚は一向に減らないし、壊した巣も何時の間にか復活している。 「此処は湧きが良いからな♪」 「湧き、だと?」 「倒しても倒しても湧いて出てくるだろう?だから穴場の狩場なんだよ」 どこか楽しげな魔女。ダメージが大きいからきついんだけどな、付け加えている。 どれだけ戦っていただろう。壊しても復活する巣を魔女も壊したりするので、双方ウナギもどきに追われながらの乱戦となっていた。もう誰が敵だか分からない。 「だぁああああああああああああああっッ!!めんどくせぇーーーー!」 魔女が叫ぶと同時に、上方に幾つもの光源が現れ、そこから光の柱が降り注いだ。光の柱は無差別に降り注ぎ骨だけの魚やウナギもどきを一掃した。しかし一掃されればその分降って沸いてくる魚や岩。魔女は光の柱を立て続けに降らせに降らせ捲くった。 当然、光の柱はウルキオラ達にも容赦なく降り注いでいた。 やがて満身創痍のウルキオラ達と魔女が狩場を後に元の深海に戻ってきた。 魔女は狩りに飽きただけだったが(と言うか回復薬が切れた)、ウルキオラ達は魔女の後について逃げてきたのが実情だった。 「・・・・君は戦闘が苦手なんじゃなかったのかね?」 「狩りが下手なのは本当だぞ?」 「君は回復を特技とする魔女じゃなかったのかね・・・?」 「そりゃあ、4次してから攻撃スキルだけ上げたからな」 回復魔と言われる聖魔の能力の多くは、グループの仲間の回復やスキルアップ、経験値の増加、狩場での死者復活など援助能力が殆どだ。攻撃能力ははっきりいって無いに等しい。アンデッドを除けば。回復・援助魔法が主体の聖魔の主力攻撃魔法は4次になって漸く習得できるのだ。しかもそれは広範囲・複数攻撃の強力攻撃魔法なのだ。魔力消費は凄まじいが。 「私はソロでしか狩らないからな。援助魔法スキルは上げてねぇんだよ」 誘って貰えないからソロでしか狩れない、とは敢えて言わない。 回復を主体とする魔女にこれほどの攻撃能力があるとは思ってもいなかった藍染。力ずくで言いなりにさせるのは無理だと自分に言い聞かせる。 「・・・先程の無礼は詫びよう。改めて君にお願いする。姫巫女殿。一護君の毒の耐性をつけて貰えないだろうか?」 「・・・・・タダで?」 「姫巫女殿の願いを1つだけ叶えよう。それでどうだね?」 「その話乗った!私を元の世界に戻してくれれば、耐性がつく(かもしれない)薬をやるよ」 「交渉成立だね?」 「・・・・まぁね」 「薬の効果は・・・・」 如何にも怪しげな、埃を被った壷の裏のラベルを見る魔女。 「成功確立30%。10%の確立でアイテム撃破。失敗した場合50%の確立でランダム変化・・・」 「少し聞いても良いかね?」 「質問は3つまで」 「・・・・アイテム撃破、と言うのは?」 「アイテムに使えば、闇に消える。・・・まぁナマモノに使えば戦闘不能?」 「(何故に疑問系?)失敗した場合は?」 「効果無し?」 「・・・ランダム変化とは?」 「見た目が色んなモノに変るだけだ(と思う)。2〜3日で元の戻る(はず)」 間違っても死ぬようなことは無いから、と薬を渡される藍染。 「さ!薬は渡したんだ。さっさと私を元の世界に返してくれやw」 早く!早く!と急かす魔女。正直ウザイ。 魔女を元の世界に返し、魔女から受け取った「妖さん特製・怪しげな薬」をのんだ藍染。グリムジョーから「ヤバいんじゃないんですか?」と言われたが、一護の毒の耐性が欲しい一心の藍染はそれを無視した。 結果は・・・・・ 「おい!ウルキオラ!ミルクは何処だ!?藍染様がぐずってるんだよっ!」 「ミルクの時間にはまだ間がある。オムツじゃ無いのか?」 「だぁ!だったらオムツ持って来いよ!」 「判った。グリムジョー、待っていろ」 「早くしてくれよ!ウルキオラ!」 薬のランダム変化で幼児(乳児)化した藍染。しかも何故か、暫くすれば元に戻るはずの変化が元に戻らなくなっていた。毒の耐性は出来たのか毒による衰弱は治っていたが・・・ しかしウルキオラ達は子育てに追われる日々を送る羽目になってしまった。 無事に元の世界に戻った魔女。ふと藍染に渡した薬のコトを思い出した。 「そーいえば、あの薬・・・・賞味期限がかなり切れてたんじゃなかったっけかな?」 一護に渡した薬は新しい物だったが、藍染に渡したものはかなり以前に作ったものだ。しかも試作品。効果と言うか・・・副作用については予定の範疇外だ。 「腐ってるかもしれないけど、まぁいいかw」 どのみち死ぬような選択肢は無い。・・・・無い筈だ。多分。 自分は元の世界に帰れたのだし、死ぬような事にはならないのだから問題は無いと決め付ける魔女。今日も狩場で赤字と戦いながら狩りをするのであった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ はんぺんのその後 色ボケはんぺんと天然アホ魔とのやりとりですw 不憫なのはウルキオラ達ですよね? by妖 11/03/19に頂きました! 妖さんのプレゼント第2弾!まだ続くよ! 今回はほとんど手を入れてません。何これ、楽んのし〜いww |
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