題「捨て猫」4.お手伝い
 ○月5日 
剣八がどっかにいくので、そーっとついていく。みつからないようにしなきゃね。

その日の晩も、一護は気絶するまで抱かれて風呂に入れられていた。
蒲団に入れられた頃に目が覚め、出ていく剣八の背中を見た。
(やっぱり今日もどっか行くんだ・・・、どこに行くのか突きとめてやる・・・)
そっと蒲団から出ると上に着物を羽織り、気付かれないように後をつけた。

初めての夜の街。それも華やかな花街の灯りに目移りしていると、剣八を見失ってしまった。
「どうしよう・・・」
しゅんと項垂れていると、屋台できらきらと光る物が売られているのを見つけた。
「わあ、キレイ!おじさんこれなあに?」
「うん?これかい?これはね、ビードロというんだよ、何か買うかい?」
「え、え〜と、あ、これキレイ、剣八に似合いそう・・・!」
それは緑青色の根付だった。滴の形をして赤い紐が付いていた。
「あの・・・、これって幾らするの?」
おずおずと聞いてみた。
「これはねぇ、千と五百環だよ」
「わ、高価いんだ・・・。・・・ね、おじさんはずっとここでお仕事してるの?」
「そうだよ」
「じゃあ、あのねあのね、俺、お小遣い貯めてまた来るから、その、このビードロ買いに来るからね?取り置きって出来る?」
くりっと小首を傾げてお願いしてみる。
「う〜ん、本当はダメなんだけどねぇ、坊やには特別にそうしてあげよう!」
「ほんと!やったあ!ありがとう!おじさん」
透き通るビードロの根付を大事そうに元の場所に置くと、
「また来るからね、きっとだよ」
と言って帰った一護。
隊舎に帰ると誰にも見つからないように部屋に戻り、着替えて蒲団に潜り込んだ。
(ん〜、どうやってお小遣い貯めようかなぁ・・・、明日弓親に相談しようっと)
当初の目的はどこへやら。

○月5日 剣八どこいったのかわかんなかったけど、キレイなものみつけた。びーどろっていうんだって!剣八にあげたいな。


 翌朝起きるとやはり剣八は戻っていた。どこに行ってるのか調べるより楽しいコトが出来たので弓親に相談する一護。
「弓親ー!あのねあのね、俺欲しい物あってね、お金が欲しいんだけど、どうやったらいいのかな?」
「うん?何か買うのかい?」
「えっとね、内緒だよ?剣八にね、ビードロの根付っていうやつあげたいの。とってもキレイだったの!」
「へえ!いくらしてたんだい?」
「え〜と、千と五百環だって。高価いよね?どうしたらいいのかなぁ」
弓親は優しく微笑むと、
「じゃあね、お手伝いしてくれるかな?他の隊に書類を持っていったり、お掃除したり、お駄賃あげるよ、ね?」
「ほんと!俺頑張るよ!ありがとう弓親!」
ぎゅっ!抱きつくと、
「剣八には絶対に内緒ね!びっくりさせるんだ!」
「分かったよ、じゃあ早速お願いしようかな。これを十番隊に持って行ってくれるかい」
「わかった!」
弓親は書類とお駄賃の百環を渡した。
「こんなに?いいの?」
「今日一日分だもの。他にもお仕事はあるよ?」
「うん!じゃあ行ってきます!」

まずは十番隊の書類だった。
「こんにちは!書類持ってきました!」
「あらぁ!一護じゃないの、どうしたの?お手伝い?」
「うん!欲しい物があるからね、お手伝いしてお駄賃貰って買うんだよ!」
「へえ!欲しい物ってなぁに?教えて?」
「え〜、えっとねビードロの根付だよ。剣八にあげるの。内緒だよ」
「ふふ!分かったわ。いい子ね一護。・・・ね!あたしのお手伝いもしてくれない?お駄賃あげるわよ」
「良いよ!俺に出来る事ならやるよ!」
「ありがとう!簡単なことよ。書類配るのが終わったら来てくれるかしら?」
「うん!すぐに来るからね!」
それから弓親に頼まれた仕事を全て終え、乱菊の元へと訪れた。
「乱菊さん!来たよ!」
「あら、結構早かったわね、丁度良いけど」
「ね、お手伝いってなあに?俺にも出来る事?」
「簡単よ。この包みを卯ノ花隊長の所へ届けて欲しいのよ、はいお駄賃!」
と一護の手の平に百環を乗せた。
「こんなに!多いよ乱菊さん!」
「いいの!取っときなさい。さっ!早くお願いね!」
「う、うん」
戸惑いながらも、これなら早く根付が買えるかもと思い、少し嬉しくなった一護。

「卯ノ花さん、居ますか〜?」
「はい、なんでしょう?一護君」
「あのね、コレ乱菊さんから預かったの。届けてねって」
はい、と渡す。
「まあ、ありがとうございます。せっかくですからお茶でもいかがですか?」
「いいの?お仕事の邪魔にならない?」
「今は休憩中ですわ。さ、お菓子もありますよ」
「お菓子!」
お茶を飲みながら話をした一護。
「何故急にお手伝いなどを?」
「ん?あのねぇ、剣八には内緒にしてくれる?」
と悪戯っ子の様な顔で訊いて来た。
「もちろんです」
「あのね、剣八にね、ビードロの根付をあげたいの。とっても綺麗でね、似合うと思うんだ」
「ああ、なるほど。それを買うために頑張っているんですね」
「うん!ほんとに内緒だよ?」
「はい。指切りしましょうね」
「うん!」
「では一護君、この後なにも無いのでしたら、うちの庭の草むしりをお願いしたいのですが・・・」
「やるよ!頑張る!」
「ありがとうございます。最近は時間が無くて・・・。これはお駄賃です」
と百環を渡された。
「こんなに・・・、多くない?」
「普通ですよ、それにこちらがお願いしているのですから貰ってくださいな」
「うん、わかった。すごいや、今日だけで三百環も集まった!」
えへへ!と笑う一護。この後庭の草むしりをした。

広いとは言えないが狭いとも言えない庭の雑草を一生懸命抜いていく一護。
ふぅ、ふぅ、と額に汗し頑張った。
「一護君、もう良いですよ。ありがとうございます」
いつの間に居たのか卯ノ花隊長が声を掛けた。
「あ、卯ノ花さん。もう良いの?」
「ええ、おかげでキレイになりました。一護君はえらいですね、どんな仕事も頑張って」
「だって、約束したもんね!お駄賃も貰ったし!」
「うふふ、また明日おいでなさい。わたくしもお手伝いしていただきたいので」
「うん!分かったー!また明日ね!」
「ああ、ちょっと待ってください」
「?なあに?」
「手に切り傷が出来ていますね、きっと草で切れたんでしょう」
すっと手を包むと鬼道で治療した。
「わあ・・・、すごいねぇ」
「ふふ、可愛いですね、一護君は」
「? そう?じゃあまた明日ね!卯ノ花さん!」

○月6日
おだちん、たくさんもらった!これならすぐにかえるかも!剣八よろこんでくれるかな?

隊舎に帰ると今日貰ったお駄賃をカバンのチャックの付いたポケットに入れて明日も頑張ろうと思った一護だった。


第5話へ続く




10/01/08作 お手伝いする一護でした。まだほのぼの






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