慧と航河の間に挟まれて、はパニックになった頭の端でこれから何が起こるのかを想像した。
いつの間にか、気がついたら、2人の表情から冗談めいた笑みは消えていて
こちらの反応を楽しむような、誘うような男の目がを見つめている。

こんな2人をは知らない。
今更ながらに、仕事を抜きにして付き合うという事は、”男と女”として向き合うという事なんだと気がついた。
しかもそれが2人。
慧と航河の2人がいっぺんに、の知らない部分を見せつけ誘惑する。

ただ、には『逃げる』という回避が出来そうにない。
憧れの男性が、自分だけを見ている。
例えそれが異様な状況だとしても、彼らを嫌う事は不可能に近い。


「指先、震えてる。…大丈夫?」


の顎に当てられていた慧の手が、静かに下りての手を包み込む。
そして、キュッと握ってきたかと思うと、ゆっくりとの目の前まで持ち上げられて
慧はに見せつけるように震えた指へ、そっと口づけをした。

柔らかく温かいその感触に、心臓が警告音のようにドクドクと加速していく。
慧の行動に気を取られていると、不意に航河の唇がの耳に触れた。


「……っふ…ぁん!」


触れた場所から全身へ何かが走り、思わず声をあげてしまう。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、は手の甲で口を押さえつけて、うつむいた。

イヤらしい声だった。
自分は今そんな声を出した。
2人の唇が自分の体に軽く触れただけなのに、どうにかなってしまいそうで
は初めて起こった感覚に、安堵なんか出来ないくらい胸を震わせる。


「可愛い声…、もっと聞きたいな」

「隠す必要なんかない。手、どかせ」


戸惑いと緊張でおかしくなりそうなに追い討ちをかけるように2人が囁く。
口を押さえた手を、航河はグッと強い力でそこから引き剥がす。
次の瞬間、航河がスッと近づいて、つかまれた手ごと体を背もたれへと押し付けらた。
急な視界の変化に追いつけないでいると、の目の前に航河の顔が現れて、間もなく唇が塞がれた。

航河の唇の熱と感触に、はたまらず体を仰け反らせた。
けれど、逃がす事を許さないように、航河の唇がを追いかけて離さない。
触れるだけの口づけが、徐々に深いものに変化していく。

航河の舌がの唇をそっと撫で上げ、時折下唇に噛み付いたり。
体中が甘く痺れ、触れられた場所ではない部分までもが疼き出していく。
次第に力が抜け、の体は情けないくらいに翻弄される。

吐息に、艶めいた声が一緒に漏れて、航河の舌がの口内へと侵入した。
自分の舌が絡め取られ、交わる刺激に体が熱く溶けてしまいそうになる。
それを隣でじっと見つめてくる慧の存在が、余計にを敏感にさせた。

航河の口づけに翻弄されるの髪を、慧が優しく撫でているのだ。
触れられる事がこんなにも感じるなんて知らなくて、は抵抗する力もなく2人にされるがままになる。

唇がゆっくりと離れていくと、はいつの間にか乱れた呼吸を整えるように大きく息を吐いた。


「…気持ち良さそうな顔してるね。航河のキスはそんなに良かった?少し、妬けるな」

「お前、これだけで力抜けてんのか?…随分下手糞な男に当たったんだな」


2人の声が、キスのように体を刺激して聞こえてくる。
髪を撫でていた慧の指がそっと耳をなぞり、首筋へと移っていく。
それすらも敏感に感じ取っての体がビクンと跳ねると、ゆっくりと近づいてくる慧がクスリと笑って頬に口づけをした。


「待って…くださ…私、こんなつもりじゃ…」

「そうだね。でも、それならもう少し危機感を持つべきだった、ね?」

「そんな…だって…」

「君はいつも僕らを見つめてきた、憧れとか好意の目で。…そんな目で見つめられた男は、どうなると思う?」

「でも、…私なんか、が…」

「それは詭弁だよ。僕らが君を欲しくならない訳がない」


追いつめられ言葉を失う。
そんなの唇を指先でそっとなぞり、慧は優しい微笑みを浮かべ再び口を開いた。


「…ねぇ。今、どんな気分?」

「……胸が、…苦、しい…です」

「苦しい…だけ?」

「…心臓…壊れちゃいそうで、…もう、」


もう、これ以上は…
そう慧に訴えようとした途中、会話を中断させるように航河の手が背中に回される。
プツリと、突然の体を締め付けていたブラジャーのホックがはずれた。
航河の指が器用なまでに、シャツの上からそのラインを探り当てたのだ。

あるべきでない突然の開放感には羞恥で言葉を続けられなかった。
背中に留まる航河の指が、の背中をゆっくりと撫でる。
そして、もう片方の手が前へ回り、のシャツのボタンへとかかった。


「なっ、中沢さん…何、を」

「苦しいんだろ?」

「ち、違…っ」

「違わない」


鋭い目つきで航河はの言葉を遮ると、ひとつ、またひとつとボタンを外していく。
はたまらず、その行為を止めさせようと航河を押さえつけようとした。
自分とは全く違う大きく骨張った手に、指先が触れただけで敵いそうにないと感じてしまう。


「こっちを見て、…。今、君は、僕と話をしているんだ」


その声には思わず体を固めた。
凍りつきそうな程の低い慧の声。
今まで名字でしか呼ばれた事のなかった自分を『』と呼んだ。
そのくせ、まるで嫉妬のように熱をもった視線が、突き刺さる。

は思わず慧を見上げて後悔した。
伏し目がちの、切なげな慧の目と目が重なって、動けなくなる。
まだ航河の手を押さえつけている自分の手が、ボタンを外していく航河の手の動きを傍らで読み取ってしまう。
ゆっくりと慧が顔を近づけてきて、高ぶった感情の所為で涙が目の前をにじませた。


「…そう、そういう顔だよ。僕を、…おかしくさせる」


そう呟くと、慧はゆっくりとの唇に口づけた。
味わうように、舌で唇をなぞっては、啄ばむような口づけを繰り返す。

溶けてしまいそうなのだけれど、航河の深く激しいキスとは違い、曖昧さが胸を焦らす。
慧の唇はそれ以上を求める事はなく、ただ優しいだけの熱を与えてくる。
は、無意識のうちに唇をなぞる慧の舌にすがるよう、自らの舌を差し出した。

やっと触れた舌先の感触に恍惚となると同時に、は自分のした事に気がついて体を熱くした。


「…やらしいな、舌なんか出して。…もっと、して欲しいの?」


してやったりという表情を見せると、慧は表情とは裏腹にを責めるような言葉を浴びせる。
こうなる事を予想しての慧の行動に、は恥ずかしさで壊れてしまいそうになる。
あまりのショックに呆然としているに、慧は微笑みながら優しくの髪を撫でた。

そして、再び慧はの唇を塞いだ。
羞恥心をひとつひとつ剥がすように、今度は深く舌を絡めていく。

恥ずかしくもそれを待ち望んでしまっていたの体は、気持ちのよさに力を奪われていく。


「…ふっ…あ…ん……っ…ん」

「…っ…そう、…もっと、…素直、に…なって」


まるで呪文のように呟く慧の言葉に、は従ってしまいそうになる。

次の瞬間、スカートの中にしまってあるシャツの裾が引き出されたかと思うと、航河が最後のシャツのボタンを外した。
驚きに航河の手を強く握ると、航河がの手のひらに手のひらを重ね指を絡ませてきた。
ギュッと握ってくる感触に、航河の存在を感じ取ってしまうけれど
それを許さないといったように、慧の口づけが激しさを増していく。

慧の唇に舌に全身の力が抜け、絡めていた航河と自分の指にすらもう意識が向けられない。
航河はスルリと絡めた指をほどき、触れていたの手から離れていく。
すると、シャツを広げより胸元を露にさせ、ブラジャーの肩ひもを肩から落とした。
航河の指が膨らみを楽しむように、そのラインをなぞっていく。


「…んっ…はぁ…っん!…あぁ…っ…ん」

「…お前のここ、まだ大して触れてもないのに…かたく、なってる」


航河の言葉に反応しようにも、慧の深い口づけが止まらなくては必死にその快感に耐えようとする。
けれど、胸に触れる航河の手は次第にイヤらしい動きに変わっていく。
興奮した胸の先端を指先で弄ってみたり、胸の膨らみを揉みしだいたり。

思わず口からこぼれてしまう嬌声が抑えられなくなる。
今までに感じた事のない程の快感に、逃れようと体を仰け反らせても2人が追いかけてくる。
体の中心に感じる、『疼き』が攻め立てられて、もう、まだ触れらてもいない部分が既に果ててしまいそうだった。

は今の2人の行為だけで、過去のセックスがどれだけ不本意なものだったかを思い知る。
快感を貪られる事はあっても、快感に追い立てられるなんて事はなかった。

触れた慧の唇がゆっくりと離れると、朦朧とした視界の中に男らしくも妖艶な慧の微笑みが映る。
航河の愛撫が、それと同時に名残惜しそうに止んだ。


「どう?…"よくなかった"のはどっちだったのか、わかった?」

「え、…?…あっ…そ、それは…」


離れても尚、触れられた場所がジンジンと快感の後を痺れさせて
は慧の言葉が一瞬理解できずに呆けてしまう。
けれど、自分が不感症なのかもしれないと言った事を思い出し体を熱くした。


「まあ、相性っていうのもあるだろうけどね。……僕と航河、どっちと相性がいいかな?」

「も、もう本当に…わかりました…大丈夫、です」


あくまでも、は自分が感じるかの実験だという事を強調して言葉を吐き出した。
これ以上されたら本当に自分は取り返しがつかなくなりそうだと思ったから。
2人が今止まらなければ、そのまま流されてしまいそうだった。


「大丈夫な訳ないだろ。それに今までのが演技っていう可能性もある」

「…なるほど、航河の言う通りだ。もしそうなら凄く悔しいな」


「そんな事…!だって私、本当に…もう、っ…」


イってしまいそうだったなんて…言えない。
2人は自分がどれだけ感じていたか本当はわかっているのだと、はそう思えてならない。
もしかしたら、自分自身がどこかでこれ以上を望んでしまっているのかもしれない。
もう、頭の中には2人の事しか思い浮かばない。


「それにまだ、1番大事な部分を確かめてないしね…」

「…中途半端なままじゃ、解決にはならないからな」


の口実に付き合うように言葉を返す2人は、白々しく逃げ道を塞いでくる。

慧の視線がの胸へと落ち、指先が柔らかい肌を撫でた。


「……こんなに先を尖らせて、下の方はどうなっているのかな?」

「あっ…ん…っはぁ……」

「ねぇ、見せてくれる?の、君の…もっとイヤらしいところ」


そう呟くと慧の指がゆっくりと下がって、太腿を撫で上げながらスカートの中へと侵入してきた。

反射的に足を閉じると、突然航河がの首へ噛み付くような口づけを落とす。
そして航河の手までもがの太腿へと異動したかと思うと、強引といえる力で閉じた太腿を開かせた。


「あっ…や…ぁ…だ、め……」

「お前の匂い、声も…近すぎて、狂いそうだ…っ…


慧の行動を手助けするように、航河の手がの足を押さえつけて
首筋への口づけが鎖骨から胸元へと順々に移動してくる。

慧の指がショーツの中へ入り込み、の中心に触れた。
ぬるりとした滑らかな慧の指の感触が、幾度となくの敏感になっている蕾へと触れ刺激する。
本当に自分はおかしくなってしまうんじゃないかと言うほどの快感を
同時に与えられる衝撃に、は羞恥など考えられないほどの快感に声を上げた。


「……ああ、本当に、凄いな。思った以上に…濡れてるよ、航河」

「加賀見さん、…あんまり煽らないでくれ。…これでも我慢してるんだ」


拗ねた子供のように慧を睨みつける航河に、慧は笑う。


「怒るなよ航河。俺だって似たようなもんだ」

「……じゃあ、今度は俺が煽ってやりますよ」


そんな会話がの耳へと入って、胸を焦がした。
自分を想って2人が欲情しているのなら、もう、どうなってもかまわない。
彼らにメチャクチャにされてもいいかもしれないと思えてくる。
いつも仕事という名目以上に見つめてきた2人なのだ。

航河が、艶めいた目をしたの体から、1枚また1枚と服や下着を剥ぎ取っていく。
小さく震えるには、もう抵抗する力は残っていない。
目の前で航河が自身のベルトに手をかけているのに気がついて、はゴクリと息をのんだ。

慧が、の耳元で優しく囁いてくる。


「…航河は、君のイヤらしい姿にもう我慢できないんだって」


先程、航河にされたように、慧がの膝へ触れると思いもよらない強い力でそこを開かせた。
もう何も身につけていないの体が、航河の目の前で露になる。


「……の"ここ"にね、…こうやって、自分のを…入れて、繋がりたいんだって」


言葉と同時に慧は、の中へ指をあてがうと、イヤらしい水音を奏でながら浅く出し入れを繰り返した。
浅い指の動きなのに、航河の視線が、これから航河がしようとしている事が
の脳裏に駆け巡り、体を捩りながら声を漏らす。

ジリリとファスナーを下ろし、航河は興奮し屹立した自身をあらわにした。
中を弄る慧の指が、その瞬間スッと退いて、全身がブルっと震える。
ソファーに座るの両膝を、航河が改めてつかみ広げていく。
ゆっくりと体を近づけて、航河は快感に溺れそうなの顔を見て薄く笑い、自身をの中心へと宛がった。

触れた航河の熱だけで、はまた眉間にしわを寄せながら嬌声を上げる。
そんな声をもっと引き出したくて、航河はの中へ自身を押し進めた。


「ひっ…いっ…だめぇ!…はぁ…っ、こんな…大きい、の…入らな…っ…」

「ダメなわけ、ないだろ?…っく…、お前のここは、グショグショに濡れて…はぁ、俺のに吸い付いてくる…っ」


久しぶりという事もあるのか、は航河の興奮したそれが押し入ってくるのに痛みに似た衝撃を受ける。
それでも、艶めいた息を吐く航河の、挿入は止まる事はなく、最奥まで到達した。
ニヤリと笑う航河は、の膝の裏を持ち上げ、更に自身を根元まで突き刺した。
あまりに強いその圧力に、は苦しみに似た表情で、声をあげる。


「随分…禁欲的だったんだな。…すぐ良くなるから、少し…我慢しろよ」


そう言うと、航河はゆっくりと自信を引き抜いては、再びの中へと、それをおさめていく。
航河の動きに合わせて、接合した部分から恥ずかしいほどの水音が聞こえ、興奮を煽った。
中を擦る航河のその輪郭さえも鮮明で、は次第にその行為に快感を覚えていった。

不意に、隣でそれを見ている慧が、の耳元でそっと囁いてくる。


「ああ、凄いな。…は今、誰に何を、…されてるの?」

「あっ…ひっ…っ…ぁん…」


慧の言葉には、羞恥心を煽られる。
いつの間にか閉じてしまっていた目を開けば、目の前には真剣な眼差しをした航河の姿。

『航河の興奮した硬くて熱いそれが、奥までいやらしく突き上げてくるの』

頭の中でそんな答えを出せば、余計に体中が快感に包まれ、はたまらず航河の腕へしがみつく。


「…っ…お前、…キツすぎ、だ。なに…っく…考えてる?」

「はぁ…っ、加賀見さ…んが、言うから…」


「僕?…何か、想像しちゃったの?」

「…やぁ…っ…、そんな…言えな…ぁあっ…」

「へぇ…言えないような事、想像しちゃったんだ。…悪い子だね」


慧はそう凍りつくような口調で呟くと、の耳へそっと噛み付いた。
そして、の体がビクンと仰け反るのと同時に、胸を少し強引なくらいに弄び先端を指先で転がされる。
グラリと意識が飛びそうな感覚に陥ったかと思うと
慧の愛撫の所為で、の中心が航河を締め付け、感覚がより鋭敏になっていく。
そして、声を抑える事に意識を持っていけなくなるほどの快感が押し寄せ
それでも止まない2人の行為に、は堪えきれず体を震わせ果てた。


「イッた時の顔も、可愛いね。…もしかして、本当はこうなる事期待してくれてたのかな?」

「確かに、こんなに簡単にイクんだもんな。…それに、お前の中凄い喜んでるぞ」


あまりの快感に、は荒い呼吸を繰り返すだけで、言葉が形にならない。

これが、イクという事なのか。
朦朧とした意識の中ではただ、深く突き刺されたままの航河のそれと、快感の名残に体を震わせた。

もしかしたら、自分は本当に2人の言うように望んでいたのかもしれない、なんて思えてくる。
例え望んでいなかったとしても、今2人に愛される事は決して嫌ではないのだ。
もう、建前なんてどうでもいい。
2人のモノになってしまいたいと、寸前で切望していた。


「ああ、まずいな。そろそろ僕も我慢の限界」


その言葉に航河はの中から自身をゆっくりと引き抜いた。
そんな動きでさえ、は敏感に感じ取って小さくため息を吐いた。

力の抜けたの体を航河はそっと背もたれから起こすと
慧の方へ足を向かせるように、の体をソファーへと寝かせる。


「じゃあ、俺のは今度こっちで、…してくれるよな?」


横になったの目の前で、航河は軽く膝をついてそう呟いた。
は唇をそっとなぞってくる航河の指に、うっとりと目を潤ませながら躊躇いがちに頷いた。
体中が快感におかされて、2人の望みならば、もうどうなってもかまわないとさえ思えた。

はそのままの体制で顔を少し横へ向け、先程自分を快感の頂点へ連れて行った航河のそれを
目の前で、まだ欲情したまま張り詰めた航河へとそっと手を伸ばす。
触れた瞬間、今まで崩れる事のなかった航河の眉間に一瞬シワが寄ったのが見えた。

思った以上の熱と反り立つ強さに、がどうしたらいいのかと戸惑っていると
次の瞬間、膝の裏を持ち上げられたかと思うと、再びの中へ進入する強い衝撃が走った。

まだ快感の残る敏感なそこへ、躊躇する事なく慧のそれが最奥まで一気に押し入ってきたのだ。


「やっ…あぁっ…か、がみさ…ダメ…っ…」

「…ダメなの?っはぁ…どうして?航河はいいのに僕のはダメなんて、酷いな」


慧は自身を根元まで押し込めたまま、の中で留まり続け、そう吐き捨てる。
あくまで自身を引き抜く事は一切せず、そのままの体制でゆっくりと中をかき回すように腰を動かしていく。
その先程までとは違う動きが、また別の快感をの中で生み出そうとしてくる。


「あっ…はぁっ…だって…私…もう…イッ…」

「大丈夫。…女性の体はね、愛し方次第で何度でも気持ちよくなれるんだよ?」


航河と引けを取らない圧迫感が、の中を占領したままで
曖昧に揺れる慧の腰の動きが、快感を覚えた体を疼かせて、の欲情を誘ってくる。
視線を慧へと向ければ、こちらを見つめる慧と目が合い、いつものあの優しい微笑みが映った。

けれど、その微笑みはすぐに真剣なものに変わり
もう奥には入らないというくらい入っているというのに、それでも慧は体ごと自身をよりの中へと押し付けてくる。
体にかかる圧力が増し、はより慧の興奮し欲情したそれの感覚が研ぎ澄まされていった。


「んんっ…かっ…加賀見さ…んっ…す…ごい…ああっ…」

「…っ、うん…わかるよ、君の中…はぁ…凄く締まってヒクついてる。…もっと、して欲しい?」


艶めいた慧の言葉が、の頭の中までも刺激して、は懇願するように小さく頷く。
すると、慧は諭すように『きちんと言わなきゃ、ダメだよ?』そう呟くと
今まで押し込めていた自身を一気に引き抜いたかと思うと、再びの最奥を貫きそこでまた留まった。
は突然の衝撃に、たまらず声を上げる。
けれど、待ち望んでいた慧の動きに体が狂喜したのも一瞬で、そのまま動かなくなった慧を欲してたまらず腰を浮かした。


「…ほら、。言って、どうして欲しいの?」

「やぁ…もっと…いっぱい、して…あぁ…ん…」


はもう我慢できないといったように、瞳を潤ませせがんだ。
すると、慧はニッコリと満足気に笑って、再び自身を引き抜いてみせる。


「ああ、本当に可愛いな…。じゃあ、航河のもそのイヤらしい事を言う口で、…気持ちよくしてあげようか?」


そう呟きながら慧は自身の先端を浅く、の中で出し入れを繰り返し煽る。
中途半端な快感に体を捩らせながら、はコクコクと必死に頷きながら
今にも泣きそうな表情で航河へと視線を移した。

そっと触れていた航河のそこは、慧とのやり取りを目の当たりにしていた所為か、より熱く興奮しているようだった。
は反り立つ航河のそれをそっと握り、口元へと誘う。
その誘いに乗るように、航河は体をへと近づけてその瞬間を待った。

はそっと口を開いて、航河のそれを舌で丹念に舐めていく。
航河のため息が聞こえてきたと同時に、航河の大きな手がの髪に指を絡ませるように頭を撫でた。
その優しい指先に、どこか安堵を覚えれば、はより大胆に航河のそれを口に咥えた。

は自分に出来る限り、必死に深く浅くを繰り返しながら届かない部分を丁寧に手で愛撫した。
頭を撫でる航河の指先にグッと力が込められ、熱い息がこぼれた事がをより従順にさせていく。
もっと、もっと気持ちよくなって欲しいと一心に行為を繰り返せば
溢れた唾液が航河のそこへ絡みついて、の口からも手からもイヤらしい水音が聞こえてくる。


「…っ…お前…っく…本当にヤラシイな。ピットにいる時とは全然…っ違う」


一生懸命航河のそこを咥えているの頭上から、航河の声が聞こえ、はふと見上げる。
そこには、視線を逸らすことなく、ジッと熱い目でを見下ろす航河がいて、目があった途端は急に恥ずかしくなった。


「航河、でも、一生懸命で可愛いのは変わらない、だろ?」


航河の言葉に、少し笑いながら慧はそう答える。
そして、散々焦らしたの中へ、熱く屹立したそれを挿入した。


「ふっ…ぁあっ…あぁっん…!」


待ち焦がれた慧のそれが、の奥をなぞれば、は堪らず航河のそこから口をはがし声をあげた。


「ああ、…ダメだよ?そんなすぐイッちゃいそうな声出して…」

「はぁっ…ん…、だっ…て、…こんな…だ…めぇ…」

「散々焦らされてから…っていうのも、っく…いいでしょ?」

「…やっ…ぁ…こわ…れ…はぁ…ん!」

「…でも、っはぁ…止めていいなんて誰も言ってないよ?見ててあげるから…っ、咥えてごらん」


ギリギリまで引き抜いては、根元まで何度も強く打ち付けてくる慧の動きが激しすぎて、は言葉を返せずにいた。
いつの間にか閉じていた目を、朦朧とした意識で開くと、そこには自分の手が握り締めたままの航河のそれ。
『…あ』と小さく息を漏らせば、航河は我慢できない様子で、自身をの唇へと押しつけた。


「…ほら、続けろよ。…加賀見さんのが、そんなにいいのか?」


少し怒った口調でそう問う航河に、が言葉を紡ごうとした瞬間、の口内へと航河のそれが押し入ってきた。
眉間にシワを寄せ苦悶の表情を浮かべるを余所に、航河はゆっくりと腰を律動させる。
航河の動きに合わせて、舌を唇を使っては途切れてしまいそうな意識の中、必死にそれを続ける。
の愛撫に応えるように、航河のそれは先程以上に質量も硬さもを増していく。

2人からいっぺんに欲望を押し付けられて、慧がの中を出し入れする度、航河のそれを口内で愛撫する度に
接合部からイヤらしい音が響き渡り、まるで犯されているような錯覚に陥るくらい、は興奮した。


「…はっ…妬けるな。航河の咥えると、余計気持ちいいの?ここ…っ…もっと締まって、きたよ」

、…お前、俺と加賀見さんにこうやって無理やりされるのがいいんだな」


2人の言葉に、残った意識までも犯されるようで、は羞恥で顔を熱くした。
航河のそこを口に含んだまま、うめきに似た声で否定の意を表して顔を横に振れば、目から堪った涙がこぼれた。


「本当に可愛いな。…はぁっ…君の気持ちいい場所…航河より沢山…っ…突いて、あげる」

「っく…俺の方が…いいだろ?…っく、ぁ…俺の方がいいって言うまで何度でもやってやる」

「僕も…、君が僕のほうがいい、って言うまで…止めてあげない、…どうする?


熱のこもった視線のまま口元だけで意地悪く笑う2人に、は困惑し許しを請うように首を振った。
2人の言葉と2人の愛撫が、全身を駆け巡る。
頭がおかしくなりそうで、このまま壊れてしまいそうな恐ろしさに駆られ、は必死に意識を集中させた。


「まあ、どっちみち俺達からはもう逃げられないからな。これからじっくり答えを出してもらうのも悪くない」

「ああそうだな。でも、本当にまずいな。…繋がれば…っく、繋がるほど…君が…はぁ…欲しくなる」


「…っく…、、好きだ」

「僕も…はぁ…っ、好き、だよ」


切なげに囁く2人の告白が、の気持ちを高ぶらせていく。
憧れていた2人にこんなふうに愛されるなんて、さっきまでの自分では思いもよらなくて
は、泣きたいくらいの溢れる愛に体を熱くした。

すると、の頭を押さえる航河の指先に力がこもり、腫れ上がる航河のその先端がより膨張し限界を知らせてくる。
荒くなる航河の呼吸に、はその輪郭を丁寧に唇で吸い付いてなぞっていく。
そして、濡れそぼった手で航河の動きに合わせて擦ると、航河のもう片方の空いた手がの胸を揉みしだいた。


「ふぅっ…ん…んっ…ふっ…」

「っ…本当に、…お前、最高…だ…っく…はぁ…」


航河はそう呟くと、より強くの頭を押さえつけ腰を揺らした。
そしての口内で、限界ギリギリまで膨張し張り詰めたそこを引き抜くと
航河は頭を押さえていた手を、自身を握るの手に重ねて、
数回上下へと擦ると、の手を先端へ導き覆わせると、ドクン、ドクンと自身を脈打たせ果てた。


「あぁ…っ…中沢さ…ん…熱…い…はぁ…ん」


いまだ、慧に貫かれ翻弄されるは、手のひらに溢れ出る航河の欲望を感じて無意識にそうこぼした。
深く息を吸い込んで吐き出す航河が、の言葉にまるで少年のように笑ってみせた。

ユラユラとした意識の中で、はその航河の笑顔を可愛いと思ってしまった。


「それじゃ、…にご褒美あげなくちゃね」


慧はそう言うや否や、繋がった部分のすぐ上にある、の蕾を器用に指で撫でてきた。

より強い快感には声を上げ、逃げるように体を捩らせる。
けれど、床に膝をついた航河がの唇を塞いで、体を押さえつけるようにまた胸を揉みしだいた。

上半身を航河に押さえつけられ、下半身を慧に押さえつけられ
逃げ場を失ったの体が、意識を飛びそうなくらい容赦なく快感を与え続けられた。
恐ろしいくらいの快楽を2人から与えられ、息をするのも忘れてしまいそうだった。


「ああ、っ…っく…すごい、よ。…ねぇ…イキそうなの?もう、僕のに…はぁ…吸い付いて…っく…離そうとしない」

「…、…さっきみたいにお願いしてみたらどうだ?」

「ふ…っう…ん…やぁっ…そん、な…私もうっ…ひっ…ぃ、あぁっ…」

「じゃあ、…止めて欲しいのかな?そんな事…っく…ぁ…ない、よね?」


先程の果てる寸前の航河のそれのように、慧のそこは今にも破裂しそうなほど腫れあがっているというのに
慧は余裕のない口調であるものの、自身をの中から引き抜いて先端だけをイタズラに宛がってくる。
この状態で焦らされるなんて、もう耐えられなくて、は駄々をこねる小さな女の子のようにイヤイヤと繰り返した。


「やぁっ…お願い、加賀見さん…お、…奥まで…はぁ…ん…突い、て…くださ…っ」

「ああ、やっぱり僕も、もう限界だ…っく…我慢できないよ」


の言葉に、慧はすかさず出し入れを始めた。
航河の指がの髪を撫で、胸の先端をつまみ転がし快感を助長させる。
航河と視線が重なって、逸らせば慧とまた視線が重なって
は2人に見つめられながら、2人の愛撫にどんどんと高みへと連れて行かれる。

もう何かにつかまっていなければ怖くて、は再び口づけを繰り返す航河の背中にしがみついた。
体中が硬直し、全神経が快感のみを感じ取り、の中心を締め付けていく。


「ああっ…もう、ダメ…っ…んんっ…イッちゃ…はぁっ…ん!」


きつく硬直したの中を、それでも容赦なく突き上げて、はひときわ高い声をあげて果てた。

快感に仰け反り泣き叫ぶような嬌声を上げ、果てたの中で数回体を揺すれば
慧は寸前で自身を引き抜き、熱いと息と共にの腹部へと欲望を吐き出した。




全てを放出しきってしまったように、は力なくソファーへ寝転んだまま目を閉じていた。
慧だろうか、腹部にかかった欲望を丁寧に拭き取ってくれる感触をは感じていた。
拭き取る処理が終わると同時にタイミングよく、の体の上にフワリと何かがかけられた。
頭の付近に誰かが静かに座る気配がしたと思うと、優しく髪を梳いてくる。
きっと航河だろう、そう思いながらは、ゆっくりとまぶたを開ける。

あまりの脱力ぶりにまぶたを開けることさえも辛いなんて、はなんとも言えない気持ちであたりを見回した。
まどろんだままの意識の中、は思わず笑顔をこぼした。
想像していた通りに、慧は床に膝をつきながらの事を見つめ
航河はソファーにゆったりと腰掛けて、の髪を梳きながら見つめていたのだ。


「…なに、笑ってるんだ?」

「あ、…加賀見さんはここに、中沢さんはここにいるんだろうなって感じて目を開けたら本当にいたから」

「……でも、笑ってくれてよかった。僕たちの事、…嫌いになってないって思ってもいい?」


少し不安げに、切なげな視線を向ける慧と航河に、はコクンと頷いた。

いつの間にか2人は下だけきっちりはいていて、裸のままなのは自分だけで恥ずかしいと思ったけれど
それを見越しての事か、体が冷えないようにという優しさからか、の体には毛布がかけられていた。
そんなところにも、二人の優しさが垣間見えて、さっきまであれだけ攻撃的で意地悪で
何かしら反論しようとしていたは、帳消しにしてしまおうかと思えてしまう。

嫌いになれるわけなんかない。
むしろ、今まで以上に2人を愛しく感じてしまっている事に気がついて、静かにうつむいた。


「今夜はもう遅いから、ここで休んでいくといいよ」

「……はい」

「どうしたの?疲れちゃったかな?」

「あ、いえ…その…」


セックスの最中ではあるものの、2人は自分に対して好きだと告白した。
はそれに今見つけた答えを2人にぶつけ傷つける事が恐ろしかった。
2人ともが愛しいなんて、誰から見てもきっと卑怯だ。


「もしかして、…気にしてるのか?」

「僕たちの事、…嫌、ではないんだよね?」


「だって…私、むしろ逆だから…」


2人を好きだって思ってしまうなんて、今の自分の発言だって甘えや狡さから来るものだと思う。
それでもは、無理に突き放す事が出来ない。
いや、離れたくないと願ってしまう。

捻じ曲がった道を真っ直ぐに直す事も歩く事も、この部屋に入り込んだときからもうできなくなってしまったのかもしれない。
親しくなりたいと夢見ていた幻想が、狂喜しそうな現実に姿を変えていた。

ひとつ息を吐き出すと航河は、呆れたように笑って慧を見た。
慧は航河に向かって小さく笑い、目と目で会話をするように視線を重ねると、静かに頷いた。
2人の視線がへと移る。


「自分を責めるなよ、そう仕向けたのは俺たちなんだ」

「そうだよ。むしろ嬉しいよ。ずっと望んでたんだ。君の目に僕らが男として映る事」


自分の不純さに、は自責の念にかられる。
けれどそれ以上に、2人を諦められない未練が心に押し寄せて、2人の言葉に甘えてしまいたくなる。

気持ちに正直でいる事だけが正しい事だなんて、思っているわけじゃない。
けれど、例えそれが間違っていようとも、これだけの愛を跳ね除けたら一生心に残るだろう。

『…君を、最高に感じさせてあげる。…ただし、僕ら以外の男に何も感じなくなるくらい、ね』
あの時、慧が言ったように、この先誰とセックスしようともきっと、2人を思わずにはいられなくなるだろう。
は今更ながら、その言葉の威力を思い知った。


「…それに、こうなったのは成り行きなんかじゃない、俺達は最後の賭けに出たんだ」

「今夜が決行の日。君との仕事が最後の日…、君の寂しさを利用しようとした」

「まんまとお前は俺たちの罠にかかった。ひとりじゃ、…怖かったんだ」

「そう、君がどちらかに心を許してしまって、自分が残されたらと思うと狂気じみてたよ。だから、…結束したんだ」


切なげな目がを見つめる。
慧は床に膝をつけたまま、想いを伝えるようにの手を両手でギュッと握った。
ソファーに腰掛ける航河も、同じように優しくの髪を撫でた。

の気持ちがぐらぐらと揺れる。
本当はどうしたいのかなんて、2人と繋がった時からもうわかってる。
2人の手にギュッと力が込められて、熱がまるで溶け出した2人の感情のようにの中へと入り込んできた。

は意を決したように、息を吸い言葉を吐き出した。
もう、嘘は吐けなかった。


「……好きです。こんな気持ち持っちゃいけないと思ってた。けど、…私、加賀見さんと中沢さんの気持ちに応えたい」


安堵したような、燃え上がるような、でも力の抜けたような、とにかく嬉しそうな2人の表情を見れば
本当の気持ちを吐き出せば、より感情が高ぶって、目じりから涙がこぼれた。
それでも、はこの贅沢なまでの幸福に笑顔を見せた。

少し呆れながら子供をあやすように、航河はの流した涙の跡を優しく指で拭う。
それを優しく見つめながら、慧はそっと握り締めたの指先へ口づけを落とした。

もう、後戻りができないとわかれば、気持ちがはっきりと決まれば、の心は解き放たれたように2人を想った。
『よかった』そう2人が呟いて、笑顔をこぼす。


「ひとつだけごめん、さっき僕は嘘をついたかもしれない」


不意に、慧はそう困ったように笑いながら呟いた。
と航河は、不思議そうにその言葉の続きを待てば、慧が少し照れたように言葉を続ける。


「今夜はここで休むといいって言ったけど、…休めないかもしれない」


と航河は、一瞬ポカンとしていたけれど
次の瞬間にはは顔を赤くさせて、とにかくありったけの否定の言葉を慧へとぶつけ
航河は珍しく口を開けて、楽しそうに笑い声を上げた。


「お前がとんでもない告白するからだ」

「そうだよ、責任とってもらわないと」

「べっ…別にお2人ほどとんでもない事なんて!」

「俺らにとっては大事件だ」

「うん、どうやら君は本気で僕たちを狂わせちゃったみたいだ」


「これから先も、お前は…」

「ずっと、…僕らだけのもの、だよ」


慧と航河はお互いの顔を見合わせてニヤリと笑った。


「さあ、ベッドに行こうか」

「たっぷり可愛がってやる」


その笑顔はとても美しく恐ろしく、はゆっくりと手を差し出す2人に言葉を失った――。















あとがき
最後遅くなってしまいすみません&読んで頂きありがとうございました^^
某お方からのリクエスト、たっぷりと妄想させていただきました。ご馳走様です。
いつもは、3人でモニャモニャしてちゃんを苛め抜いちゃうけれど
隙あらばちゃんを独り占めしてモニャモニャしちゃおうとコッソリ企てている2人であって欲しいです。
そして、2人ともそれぞれに実行しちゃえばいいと思います。もう本当に背徳感たっぷりですね(´Д`;)ハァハァ

「ねぇ、こんな事2人でしてるなんて航河にばれちゃったら…どうしようか?」

「…はぁ…っ、たまにはお前を俺だけのものにしたかったんだ、なぁ、お前だってそうだろ?」

なんてなんてなんてなんてー、ちゃん小悪魔すぎっ(´Д`;)ハァハァ
以後お好きな方で皆様の脳内で補完なさっちゃってくださいませ。

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