耳に念仏!













「カズさん!何してるの!?」

「え…あ、さん。ちょっと書類の整理をして…。」

「そうじゃなくて!」

「あれ…、何か…怒ってる?」

「……カズさんは、何のためにここにいるんですか。」

「え?えーと、……あ。」

「……あ、じゃないでしょ?」

「あはは…、つい。」

「徹夜続きで熱出して、休むために戻ってきた家で仕事してたら意味ないじゃない。」

「……はい、ごもっともです。」





「カズさん、私の話聞いてる?」

「うん、聞いてるよ。」

「私の言ってる事、分かってる?」

「うん、分かってます。」

「じゃあ、どうしていつもそうなの?」

「……どうしてだろうね。」

「なんで、いつも実行に移してくれないの?」

「……なんでだろうね。」





「休める時くらい…ゆっくり休んで欲しいのに…。」

「でも、大丈夫だよ。熱ももう下がってるし。」

「……ちゃんと、…………しいのに。」

「……さん?」

「…無理しすぎるカズさんが怖くて、気が気じゃないの。」

「無理なんて……。」

「倒れたらどうしようとか、苦しんでたらどうしようとか。」

「……………………。」

「いつも、一緒にいられるわけじゃないんだから……。」

さん……。」

「…いつも、ちゃんと、…元気でいて欲しいの。」

「……ごめん。」

「うん…だから、少し休んで。」









「でも、その前に、……抱きしめてもいいかな?」

「……え、…あ、……うん。」

「ごめんね、いつも心配させちゃって。」

「カズさんの…せいじゃない。」

「…さん。」

「……ん?」

「あったかいね。」

「うん、カズさんもあったかい。」



「……キス、してもいい?」

「………うん。」



「ありがとう、いつも心配してくれて。」

「当たり前だよ…、好き…だから。」



「…ああもう、さんこそ僕の気持ち…分かってる?」

「……えっ?」

「そういう事、言われたら押さえが利かなくなるでしょう?」





「……っん、…はぁっ…待って…カズ…さ……やぁっ…ん。」

「……待ってもいいけど、止める気は…ないよ?」

「なっ…なんで、……こんな…。」

「…なんでだろうね?」

「ちょっ、や…はぁん…。服、めくらないで…、首筋も…ダメ…んんっ。」

「…………。」

「カズさんっ、……聞いてる?」

「……ちゃんと聞いてるよ、さんの可愛い声。」

「んんっ…、そんな事じゃ…な…い…。」





「そうだ、じゃあ、…こうしようか。」

「……な、に?」

「僕のお願い聞いてくれたら、僕もさんの言う事聞くよ。」

「だっ…ダメ、そんなのズルイよ。」

「ごめんね、ずるくて。」

「そんな笑顔で謝られても、説得力ない…。」

「それで…、どうしようか。」

「…………。」

さんの選択で、僕がきちんと休めるか決まっちゃうよ。」






「……本当に?」

「ん?」

「本当に、休んでくれる?」

「もちろん、さんに嘘なんかつかないよ。」

「……じゃあ、…あんまり無理とかしないで…、その…、後でちゃんと休んでくれるなら…。」

「休んでくれるなら?」

「………い、言わせないで。」

さんの事食べちゃっても、いい?」

「そっ…、な…、……。」

「可愛い、…さん。」

「…ふっ…ん…、カズ…さん。」

「それじゃあ、いただきまーす。」

「……もう、カズさんの…意地悪。」

「……さんにだけ、だよ。」













――さてここで問題です。二人の本音と策略はどこからどこまででしょう?













あとがき
カウンタ15555を踏んでくださったハーミットさんに捧げます。
カズさんはいくらお説教しても反省してくれず、逆に喜んじゃうというお話。
カズさんの「ごめんね」は、時々策略を感じずにはいられないミステリオ。
いや、本当は純粋で親身になって想ってくれているんでしょうけど。
…………気をつけて!(´Д`;)

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