ひとみちゃーん!」









ひとみの耳にそう届いたのは、疾斗が浴室に入ってすぐの事。
着替えの心配でもしているのだろうと、ひとみは用意した服を持って浴室前へ向かった。







「疾斗?着替えなら今持っ…。」

ひとみ、シャワーがでてこない。」

「…へ?」

「蛇口からしかでない。」

「えー?」

「なんでぇ?」


こっちが何でか聞きたい。
そんな気持ちを胸に抱きながら、ひとみは『開けるよ?』そう言って遠慮がちに扉を開ける。

そこで待ち受けていたのは、腰にタオルを巻いただけの疾斗の姿。

原因を探るべくひとみは水栓部分を見て、ため息をひとつ。


「…疾斗君、切り替えって…知ってるよね?」

「え~?わかんなーい。ひとみやって。」


のんきにケラケラと笑う疾斗は、甘えるようにそう言うと体を端に避けひとみを浴室へと招いた。

疾斗の首筋から肩から、引き締まった胸も腹部も、ひとみにとって目の毒だった。
だからこそ、ひとみはこの状況を終わらせたい一心で足を踏み入れる。


「……もう、しょうがないなぁ。」


気を紛らわすために文句を口にしてみるけれど、鏡越しに見つめてくる疾斗の視線と目が合って一瞬立ちすくむ。

それが、よくなかった…のかもしれない。

次の瞬間、ニッコリと笑顔の疾斗は後ろ手に扉を閉めて、ひとみの前に立ちはだかった。

疾斗の行動にぎょっとして、ひとみは素早くシャワーに切り替えるとこの場から離れようとする。


「き、切り替えといたから、後はひとりで…。」

「わかんない。ひとみも一緒に入ろうよ。」

「なっ…何を…もう、酔ってるんだから早くしないとのぼせるよ。」


「…酔ってないもん。」

「はいはい、酔ってる人は皆そう言う。」

「なんだよ、信用ねーな。」


後ずさりするひとみの背中に洗面台が当たった。
疾斗はそんな、もう後が無いとおろおろするひとみを捕まえて唇を奪う。

腰をしっかりと抱き寄せて逃げられないように
もう片方で戸惑うひとみの後頭部を押さえつけて
疾斗は深く何度も角度を変えながらひとみの口内を掻き回していく。



「ふっ…ん……んっ…はや…と…っ。」

「…じゃあ、酔ってないって…証明してやる。」


鼻先をかすめる距離でそう切なげに呟き、疾斗はひとみの耳へ、首筋へと口付けを落としていく。
唇の熱に惑わされそうになりながら、ひとみは疾斗を押し返そうと無意識に肩に触れると
直に感じる疾斗の肌と熱に、胸が壊れてしまいそうなくらい震えた。

そんな小さな抵抗が余計に火をつけて、疾斗はひとみのシャツの中へ手を差し入れて胸の膨らみに触れた。
次の瞬間聞こえてくる甘い声に、疾斗はたまらずひとみのシャツをたくし上げ膨らみに口付けをする。


「…ひとみ、ブラが邪魔、はずして?」

「やっ…疾斗っ…こんな所で…ふっ…ん…イ…ヤ。」

「こんな所だからいいんじゃーん。ってか…もう我慢できない。」

「バカ…っ…もう…あ…っ…ん…。」

「……今すぐここでしたい。」


唇を胸に当てるように喋りながら、疾斗はひとみの背中へと手を回しそのホックを外す。
締め付けの無くなった胸をすかさず疾斗の両手が包み込んで、手の動きとともに膨らみは形を変えていく。

快感に力の抜けそうなひとみは思わず疾斗の頭に抱きついて、その刺激にさえ声をあげてしまう。


「こっ…ん…な…はぁっ…でん…き…けし…て…。」

「そんな事したら…危ないだろ?」

「声…ひびい…て…恥ずか…しい…よ…ぁ…んっ…。」

「…じゃあ、こうすれば気になんない…だろ?」


ひとみの抵抗に疾斗は予防線を張っていたかのように、すぐに言葉を返していく。
そして胸の愛撫を中断させて、蛇口を勢いよく回して見せた。

その途端シャワーの口から溢れ出す水が、大きな音を立てて浴槽の中へ打ちつけていった。
ひとみはそのしぶきを体に受け始め、だんだんと水から暖かいお湯へと変化するのを感じた。
もう敵わない、そう観念したひとみの唇に、疾斗は再び唇を重ねる。

室内に立ち上る湯気が湿度を増して、どんどんと二人の体にまとわりついた。




「…はや…と…服…濡れちゃう…。」

「…マジ?どれどれ…。」


楽しそうに笑顔を見せる疾斗は、その言葉を聞いてひとみの太腿を撫で上げる。
ビクンと反応するひとみを満足そうに見つめながら、スカートの中へと手を差し入れた。


「ホントだ…ひとみのここ…スゲー熱くて……。」


下着の上からそっとなぞる指を、更に中へと進入させると疾斗はそう言って刺激し始める。


「やっ…は…やと…そうじゃ…な…。」

「……ひとみ、もうこんなに感じてんの?」

「はぁぁっ…ん…ちがっ…ん…。」

「……嘘つき。」


愛撫の手を止め、疾斗はひとみの下着を太腿まで下げた。
するとひとみの足からいとも自然にストンと、床へと落ちていく。

うつむくひとみを余所に、疾斗は興奮した様子でシャツを脱がし、スカートに手を掛けた。

簡単に足元へと落ちていくそれの所為で、ひとみはあっという間に全身の肌が露になる。
恥ずかしさのあまりひとみは両腕で胸を覆うようにして、体を背けてしまう。


「……なんで、隠すの?」


うつむいたひとみの髪がしなやかな背に揺れるのを目の当たりにし、疾斗は堪らずひとみの背中を抱き締めた。
首筋から肩までを疾斗の唇が這うのを、鏡越しに見つめひとみはより熱い息をこぼす。

抱き締めた疾斗の腕は、柔らかな体のラインをなぞってそれぞれの目的地へ到達させた。
胸を隠す両腕を洗面台の縁へと導いて、片手を胸の膨らみへと戻し自由に弄ぶ。

ひとみの熱を帯びた声と鏡に映る表情に気を良くした疾斗は、もう片方の手をひとみの足のつけ根へと滑らせる。


「…太ももの方まで…すげー…溢れてる。」

「やっ…言わな…いで…はぁ…ん…疾斗の…せい…なんだから…。」

「マジで?じゃ、責任とらなくちゃな。だから…足、もっと開いて?」

「やっ…ん…疾斗の…バカ…ふ…ああっ…。」


疾斗は半ば強引にひとみの足を開かせると、濡れたひとみの蕾を指で絡め優しく愛撫した。
快感のあまり膝が抜けるひとみを、疾斗は胸を弄んでいた腕で支える。


「どうせバカですよ。つーか…ひとみ、ちゃんと体…手で支えろよ。」

「…だ…って…足…が…はぁ…んっ…こんなの…。」


泣いてしまいそうに震えるひとみの甘さを含んだ声に、欲望を煽られて疾斗はひとみの中心へと指を挿し入れた。
そしてその指は休むことなくひとみの内部を掻き回して、ひとみは嬌声を上げることしか出来なくなった。

シャワーの音に紛れて喘ぐひとみの声と、秘部を掻き回すたびに絡みつく熱が疾斗を急きたてる。




「…もっとお前の感じるとこ見たい。ずっと体中触れてたい。」


崩れそうな体を必死に支えているうちにひとみの体は、前のめりになる。
洗面台に手をついて震える全身をなんとか保っているというのに、疾斗はひとみの背中に唇を落とす。

音を立てて何度も繰り返すその行為に、ひとみは背中を弓なりに反らして声をあげた。


「お前の…ひとみの中に入ってメチャクチャに啼かせたい。」

「はっ…やぁっん…はぁ。」

「いや、じゃねぇだろ?…すげぇ濡れてる…今すぐ入れたい。」


ひとみから指を抜いた疾斗は自らの腰に巻いたタオルを剥ぐ。
そこから現れた大きく屹立した自身を、疾斗はひとみの中心へとあてがう。


「大事にしてぇのに…メチャクチャに壊したくなる…こうやって…っく…。」

「はぁぁぁん…ああっ…。」


疾斗はそう言うと切なげな表情で躊躇うことなく、後ろからひとみを貫いた。

その圧力と熱に、ひとみは洗面台についた手に力を強めた。
それでも耐えられない刺激にひとみの足が力なく震えると、疾斗はひとみの腰を両手で支えそのまま最奥まで押し進める。

電気が走ったかのように次の瞬間ひとみは頭の中が真っ白になる。
互いに理性も建前も吹き飛んで。

このまま快感を呼び起こして、やがては達するものだとひとみは体を任せるが
ギリギリまで自身を引き抜いた疾斗は、それだけじゃ満足できないようにその動きを止めてひとみに囁きかける。



「…ひとみの中に…俺のが入っていくの…よく見えるぜ…?」

「あっ…はぁん…はや…とぉ…。」


意地悪そうに先端を擦り付けるだけの疾斗に、ひとみは先程の快感が欲しくてたまらない。
鏡越しに訴えてはみるものの、疾斗はきっと言わせたいのだと羞恥に襲われる。



「…どうして欲しい?…ひとみ。」



「はぁ…おね…がい…もっと……あぁんっ…入れ…て…。」



なけなしの理性が羞恥を煽って、ひとみは思わず目を閉じた。
望んだ言葉に望んだ表情、疾斗は満たされそして我慢の限界に達して再びひとみの中に自身を突き刺した。



まるで興奮剤のようなひとみの喘ぎに、疾斗は静止する事なく抜き差しを繰り返す。





「すっげ…熱くて…っく…お前の中…溶けそうだ。」





濡れそぼるひとみの中は、疾斗が激しく出入りするたびに高みへと上り詰めていく。

その引き攣り疾斗を締め上げてくる状態が、疾斗の快感をより呼び起こし行為を加速させていく。





「…いっ…はや…と…すご…すぎて…ああっ…ん…。」


「…ふっ…凄すぎる?…っく…嬉しい事…言うなよ…はぁっ…もう止まんねぇ…。」


「ひっ…やぁぁんっ…私…も…う…これ以上…され…た…ら…ふぅんんっ。」


「っく…こら…ひとみ…お前、締めすぎ…だ。」



既に限界に達しそうなひとみは、疾斗をきつく締め上げて
無意識のうちに切望する腰が、疾斗の動きに合わせるよう動き出した。

疾斗は切なげな表情で歯を食いしばり、ひとみの体を見つめる。
首筋も肩も、背中も、疾斗が口付けした部分全てにその名残が残されていて疾斗の興奮を誘う。



ひとみは…全部…俺の…っく…はぁっ…。」

「…ああっ…ダメ…もうっ…イッ…ぁ…はぁぁんっ!」



より甲高く啼き叫ぶひとみは、疾斗に最奥を貫かれたと同時に頂点へと達した。

その声に、そのひくつき締め上げてくるひとみの中に、疾斗も最奥へと貫いたと同時に限界に達し欲望を放った。












乱れた呼吸を整える息遣いと、変わらず流れ続けるシャワーの音。

疾斗は満足気に自身をひとみから抜き取ると、シャワーの蛇口をひねってそれを止めてみせる。

抜き取られる刺激にひとみが小さく声を漏らすのを聞いて、疾斗は立っているのがやっとのひとみの体を抱き上げた。



「なっ?酔ってなかっただろ?」


まだ熱を帯びた口調で疾斗は自信ありげに、そう言って笑う。
朦朧とする意識の中、ひとみは『…参りました』と小さくこぼし、笑う疾斗の胸で意識を濁した。



器用に浴室のドアを開けたはいいが、ひとみを抱いたままではタオルを取り出す事は困難で




「ま、いっか。…どーせ、まだ汗かくだろーしぃ。」



疾斗は悪戯っぽくそう独り言を呟くと、そのまま脱力したひとみをベッドへと寝かせる。


そして、ひとみの隣へ入り込む疾斗は、横になりながら頬杖をつきひとみの寝顔を眺め微笑む。







「……カワイイよ、ひとみ。」







そう言って顔を近づける疾斗はそっとひとみの額に口付けて、愛しい恋人が目覚めるのを待った。




























あとがき
初の疾斗、いかがでしたでしょうか?
お酒を飲むと大脳皮質が麻痺され、言葉や精神状態が開放的になるそう。
つまり理性が吹っ飛んじゃうという事ですね(´Д`;)ハァハァ
アルコールを摂取する事はストレス発散にもなるとか。でも飲み過ぎにはご注意を。
……疾斗は本気で酔っ払うと物凄く絡んできそうですよね(笑)。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

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