独りで待つのが怖くなくなったのは、貴方が本音をぶつけてくれたから。


二人分の食事の準備が楽しいのは、貴方が喜びも悲しみも分かち合ってくれるから。








I wanna be... of secret








約束通り、和浩は夜になっての元へと訪れ
『遅くにごめんね』と優しく微笑む和浩に、嬉しさを隠しきれない表情では部屋に招く。

幸せの時間の始まりを、胸の中で甘く痺れるような感覚で味わって
二人は、ゆったりした時間を夕食に費やした。


「おいしかったよ。ご馳走様。」


それからしばらくすると、心なしかいつもより和浩の言葉に、表情に扇情的なものが見え隠れする。
それは自身にとっても同じ事で、これから起こる情事を待ち受けていないわけではない。

ただ、あからさまにそれを見せ合うことをまだ理性が阻んで
羞恥という壁によって互いの距離を縮められずにいる。


「紅茶…作ってあるから持って来るね?冷たいほうがいいよね。」

「うん、ありがとう。」


テーブルに両手を突いて立ち上がると
は不安定な感情を誤魔化すようにキッチンへと向かう。
静まり返った部屋に、カチンとグラスの触れ合う音が聞こえ
それに静かに注がれた紅茶をトレーに乗せてすぐに戻ってきた。


和浩は座っているソファーを右に詰め、隣にスペースを作ると
左手でポンポンとその場所を軽く叩いて、ニッコリと微笑んだ。

さっきまで向かい合って座っていたから
いざ隣に座るとなると、抵抗が生まれる。

嫌なわけじゃないけれど、恥ずかしいのか怖いのか
はその場に立ち尽くしてしまう。


「ほら、おいでよ。」


そんなを見て眉を下げて笑う和浩は、両膝をついて立つと
トレーごと冷えた紅茶を受け取ってテーブルに置いた。

静かに座りなおす和浩の言葉に従うように、はなんとか勇気を振り絞って隣に腰を下ろす。
破裂しそうな胸を抑えるのに必死で、カチカチに固まった体がまるで置物みたいだ。


「ありがとう。」

「へっ?…な、なに、が?」

「…紅茶持ってきてくれて、だよ。ふふっ。」

「……あ、……そう。」


そんな態度をとられたら、余計にからかいたくなると思いながら
の反応を楽しむように口を開いて、和浩は隣り合った小さく細い手に自分の手を重ねた。
それだけで、壊れてしまいそうな自身を必死で保っているのに
和浩は重ねた手から離れ、そのままの背中に腕を回す。


「そういえば、せっかく作ってくれたケーキほとんど疾斗の奴に食べられちゃったね。」

「うん…、そうだよね…ごめんね?」

「フフッ、そうだな、じゃあ、デザートはさんで……、なんてね。」

「……あ、あは、あはは…。」

「…緊張してる?」


優しく囁かれる声に、しみわたってくる体温に、
理性が、羞恥が、パキッと音を立てるようにひび割れていく。


「……少し、怖い…かも。」


真っ直ぐと見つめる瞳から逃げるように、はうつむく。


「…僕が、怖い?」

「ううん、私が、私じゃなくなっちゃいそうで…。」


回した腕により力を込めた和浩が、空いている右手をの頬へ添えて優しく自分の方へ顔を向かせた。
それは、の高鳴る胸が、震える心が奪われた瞬間。


「そっか、よかった。でも、…それ、見てみたいなぁ。」

「…………だ、だって。」

「言ったでしょ?僕はさんと楽しいだけの時間を過ごすつもりはないよ。」

「う、…うん。」

「悲しい事も辛い事も全部、分かりたい…。だから、自分で怖いと思ってる姿も僕に見せて?」

「……だって。」


それ以上言葉が出ないを、愛しそうに見つめる和浩は
優しい表情を崩すことなくの唇に吸い込まれるように近づいていく。
互いの息遣いが分かるほどの距離で和浩の唇が言葉を紡ぐ。


「今度は、…大人のキス、しようか。」


和浩の言わんとすることを想像するだけで、の体は熱を増す。
そして、返事をする事もできず、ただピットで交わした優しい口付けを脳裏によぎらせて小さく頷いた。
触れた瞬間割って入ってきた和浩の舌が、ゆっくりとの中を掻き混ぜて
動くその度に交わる唾液の音が、イヤらしく部屋に響く。

優しく重ねられる唇が、いくら角度を変えようとも離される事はなくて

激しさがない分、今自分がしている事がはっきりと理解できての体の芯が異常に痺れだす。


「んっ…はぁ…っ、カ、ズ……さ…ぁん。」


必死に自分の体にしがみ付くの姿が和浩の欲望を煽り立て

全てが欲しい

それ以外、考える事が出来なくなっていた。


唇を離してもなお、名残惜しそうな透明の糸が二人を繋ぐ。
そのウットリとした表情のが堪らなくて、和浩は強く抱きしめて腕の中に閉じ込めた。


「…したくなっちゃった。」


柔らかな髪を手で優しくすきながら、もう逃げ場のないにそう呟く。
和浩は緩めた腕を前に移して、の胸に優しく触れた。
快感に歪む顔を恥ずかしそうに逸らされて、その代わりにあらわになった首筋に口付けをする。
シャツのボタンを外し、そこから背中に手を回すとブラのホックに手を掛けると
和浩はの体をソファーに沈め、胸に顔を埋めた。


「やっ…、あ…っんん……。」


ダイレクトに感じる和浩の這い回る唇と大きな手に、は嬌声をあげる。
自分の声に羞恥心を煽られ、唇を噛み手をそれに押し当てた。
そんなの態度を可愛らしく感じながら、和浩は微笑を浮かべ
スカートとショーツを一気に剥ぎ取った。
恥ずかしさで身を捩じらせるの中心に手を差し入れて
和浩は熱く潤んだ秘所を丁寧に愛撫し少しずつ支配していく。




「……、大丈夫?」


虚ろな目をして熱い息をこぼすに軽く口付けをすると、和浩は満足そうに笑ってみせた。
けれど小さく頷くは、不安そうに和浩を見つめ口を開く。


「……なんか、私ばっかりカズさんにしてもらってる。」

「気にしなくていいのに。そんなを見てるのが楽しいんだから。」

「う……。でも、誕生日なんだし…今日は…。」

「何か、すごい事でもしてくれるの? ふふっ。」

「へっ!?えっと…あの…そんな…。」

「冗談だよ。でも、…一つお願いしちゃおうかな?」


愛しそうにの頬に口付けをして、悪戯っぽく笑みを浮かべる和浩が
いつもよりも近い場所にいて、いつもよりも扇情的に見えた。


「お、お願いって…?」

「僕に、言葉をちょうだい?」


甘えるように『ちょうだい』と言いながら首を傾ける和浩の姿に、胸がきゅんとなる。
もっとすごい事を言われるのではないかと思っていたは、安堵しながら
和浩のおねだりをするような態度が可愛らしくて、何も考えずに首を縦に振った。


「言葉って、なぁに?」

「そうだな…。まず、僕が欲しいって言ってみて?」


……しまった、と思った。
優しい笑顔を絶やす事のない和浩から目を逸らすと、は自分の顔に熱が集中していくのを感じた。
そんなの頬に、耳に、和浩は何度も口付けを繰り返してせがんでみせる。


「んっ……で、でも…。」

「僕の…誕生日、なんだよね?」




「カ…、カズさんが…欲しい。」

「ありがとう。じゃあ次は、…自分で足を広げて、僕のが欲しいって言って?」

「えぇっ……!?」

「……ダメ?」


再び、あの甘えるような声に哀愁を漂わせて和浩は首を傾ける。

分かっていてやっているんじゃないか。
は甘く痺れる頭の中でそう考えたけれど、その態度に弱っている自分に変わりはなく
今ここでそれを拒もうものなら、先へ進めない気がした。
それこそ辛いものはない、体がそう訴えてきて心が完全に折れる。
震える足を立ててゆっくりと開いていくと、和浩の手が同じようにゆっくりと中心を目指して進んでいく。
その指が中心へ到達したと同時にはかすれた声でその言葉を告げた。


「んんっ…カズさんの、欲しいの……、い、いれ…て。」

「…可愛い。、声、出すと…マズイ?」

「はぁ…んっ…な、に?」

「……声、もっと出して。」

「やっ…、恥ずかしいもん…。」

「我慢しなくていいのに…。じゃあ、…そんな事考えられないくらいしてあげる。」


和浩はそう言い放つと、の開かれた足の間に入り込んで
熱く高ぶった自身を取り出して、を貫いた。


「ひゃぁ…っん!」

「次は…、…っく、僕の名前を…呼んで、気持ちいい…って…言って?」


緩急などつけることなく、ただ必死に快感をむさぼる和浩の姿が
彼自身我慢の限界だった事を示していて、はその言葉に溺れていく。


「はぁ…っん…。カズ…さ…ん、気持ち…い…い。」

「…恥ずかしい?…の中、今すごい締まった。」

「あぁ…ん…、だっ…て……、カ、ズ…さん…が…。」

「…ねぇ、もっと聞かせて。っはぁ…、すごい興奮する。」


ギリギリまで引き抜いて最奥まで突き上げる行為を何度も繰り返し
今、自分達がどこにいるのかさえも忘れて、早さを増していく。


「ダッ…メ…、カズさんっ!…そんな…こと…、もう…わたし…。」


の腰を押さえつけていた和浩の腕を掴んで、達してしまいそうな事を訴えると
和浩はその手に引き寄せられるように、覆いかぶさるようにを強く抱きしめて深い口付けを交わす。

角度の変わった和浩が新たな快感を導いて、は和浩の腕の中で体を硬直させ
果てた事を確認すると安心したように、和浩は力の抜けたの中で数回動いて自らも達した。










「そろそろ、出ておいでよ。」


いつの間にかベッドに寝かされていたは、目を開いたと同時に映された和浩の笑顔に
恥ずかしさのあまりシーツに包まって、無意義な抵抗を見せた。
そのシーツの塊を愛しそうに見つめ、寝転がりながら頬杖をついておかしそうに再び口を開く。


さ〜ん。そんな態度とられると、僕、勘違いしちゃうよ?」

「……だって、…私。」

「すごく、可愛くて、…良かったけどなぁ。」

「……カズさんのエッチ。」

「ごめんね?でも、本当に止まらなくなっちゃうんだもん。」


まるで駄々をこねる小さい子をあやすような優しい口調にそそのかされて
はひょっこりと顔を半分だけ出して、様子をうかがう。



「いろんなさんが見たいし、それをちゃんと受け止めたいんだ。…さんは違う?」

「……違わない…けど。」

「じゃあ、そのシェルターから出ておいでよ。」


クスクスと笑いながら和浩はを待ち続けている。
けれどシーツを剥がせば一糸まとわぬ姿になってしまう
散々考え込んだ挙句、胸元から下をシーツで隠すように和浩に抱きついた。

そんなの姿を見つめた和浩は、咎め立てる事もなく優しく受け入れて髪を撫で
二人は嬉しそうに顔を合わせて微笑む。

そして、弱い磁石がゆっくりと互いを引き寄せあうように

ゆっくりと、でも着実に二人は近づいて

再び唇を重ねた――。












あとがき
なんていうか…もう…本当に難産でした(´Д`;)
テーマは、言葉攻め…じゃなくて、『深い愛』ですよ!…たぶん(汗)。
最後まで読んくださりありがとうございました。

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