慌てて戻ってきた理性は後悔を呼び起こす。
「もう。暴力反対ー」
むい、とビス子は俺様の頬を抓った。「そんなにあの男が大切かい?」
俺様はもう何とも答えられなかった。そうだ、俺様は、あの男が大切だ。そう自覚する以外、もう何も考えられるような気がしなかった。其れはとうに結論が出ていたことだったのかもしれない、俺様はあの男が、片倉一弥が、大切なのだ。
あの笑顔、俺様に向けられたあの笑顔を、見てしまった。
俺様に会えて嬉しいと言った、あの声。
「俺よりも、大切かい?」
ビス子は笑顔で訊く。俺様の目の前で、弟は俺様にちっとも似ていないけれど、それはそれは愛らしく心蕩かす微笑みで訊く。俺様は頭の中をその指でかきまわされてしまったように、考えが、言おうとしていたことが、まるで纏まらなくなる。
「お兄ちゃん?」
何も言えないままの俺様に、ビス子はふう、と息を吐いた。
「今日は、もう寝よ。ね」
何を考えたって無駄なのかもしれない。俺様がどんなにあいつを心配して、守ってやりたいなどと大それた事を考えたって、俺様に出来るのはせいぜいあいつが傷付いたときに、この指を咥えさせてやることぐらい、思い切ってキスをしてやるのが関の山。あいつの心臓まで癒してやるは逆立ちしたって出来ないのだ。
「もう、あの人の処には行っちゃダメだよ。お兄ちゃんが傷付くことになるんだから。お兄ちゃんだって、死ぬのは嫌でしょ?」
……ああ、そうなのだ、俺様は気付いてしまった、俺様は、死にたくはないのだ。
逆の言い方をすれば、俺様は片倉一弥という男に、息の根を止めて欲しかった。
俺様たち、「砂糖菓子」という生物の特性上、一人の人間と深い交流を持つということは、そのまま命を止めることと密接に関わる。相手を深く愛していけば、この若い身体に欲が生じることは避けられない。「愛されたい」と思っても、それは命と引き換えにしか叶わぬ願いなのだ。
「だけど、……俺様は、……」
「うん、……俺はあなたがそんな風に思い悩むところだって見たくはなかった」
ビス子は悲しそうに言う。
「あなたにはそんな思いして欲しくなかった」
母親のように言う。
「あなたがあの人の側に居れば、居た分だけ悲しい思いをしなきゃいけなくなっちゃうから」
言葉の、心の、何も纏まらないまま、俺様は低い唸るような声で、言っていた。「こんな……、理不尽なことが在るか。あいつは、ガキの頃からあんだけ苦しんで、あんだけ悩んで、今も苦しんで悩んで、自分の身体に不安抱えて、だけど、……頑張って生きてる」
「頑張って生きてるのはあの人だけじゃないし、理不尽な苦しみに悩むのもあの人だけじゃない」
「ああ、判ってるさ、そんなことお前のほうが詳しいだろうな。だけどな、俺様はッ……、俺様はもう……」
がりがりと俺様は頭を掻き毟る。髪を束ねるピンが飛んだ。
片倉一弥は家に帰りたくない。
片倉一弥は心臓を病んでいる。
片倉一弥は金を持っていない。
片倉一弥は。
「俺様はっ……」
片倉一弥のことが、好きなのだ。
「俺様は……ッ……」
二十七年間生きてきて、初めて生まれた痛みが、俺様の胃の腑の中で跳ね廻る。
ビス子の持つ正しさが、俺様の全てを否定する。第一に一弥を思うことが俺様のしてはいけないこと、するべきではないことだ。
戒めとしての「死」が其処には在るから。
俺とあの男とどっちが大事?
ビス子の問いに、一瞬でも答えを逡巡してしまった時点で、俺様は間違っている。自分は砂糖菓子であり、その仕事をずっと、ずっとずっと、これからも続けていかなければならない。其れは俺様の生存証明だ。俺様は人間ではない、人を愛することは許されない。
「忘れようよ」
ビス子は言った。
「だってほら、……何も無かったことにしちゃえば、お兄ちゃんも楽だし、俺も楽。片倉一弥は家に帰るんだ、そしてその後のことは俺たちの関与することじゃない、していいことじゃない。辛いだろうけどさ、其れを乗り越えられなきゃ、もっと辛いことになるんだよ」
判ってる。
「心臓が悪いって言うなら、じゃあ尚のこと、今のままじゃダメだよね? 貧乏で病院にも行けないって言うんなら、実家に帰らせて、ちゃんとした治療受けさせなきゃ」
判ってる。
「お兄ちゃんの好きになった人なら、……お兄ちゃんが全身全霊で励ましたなら、きっと危ないことはしないよ。きっと前向きに頑張れる」
判ってる。
判っているけれど。
判っているけれど。
「……そうだ、お前は、全て正しい」
俺様は、右の掌を頬に眼に当てて、言った。
「俺様が間違っている、……こんな気持ちを抱くことじたい、間違っているんだ。……判ってる」
だけどな。
……正しいとか間違ってるとかじゃなくて、そしてその結果どうなるとかではなくて。ああ、いっそ全て間違ってると前提を設けようか、俺様は全て片ッ端から間違っていて、それでもいい。
一弥が愛しい。
咽喉元に刃を押し当てられて、何か言えばそれがそのまま俺様の咽喉を割いて、この身に流れる青い血が噴出すことを知っていて、
「……俺様は、一弥が、好きだ」
言うのだ。
何が俺様をこうまで駆り立てるのか―単に興奮しているだけなのか、冷静になれば馬鹿なことと自分でも笑えるのだろうか―判らないまま、俺様は言うのだ。誤った勇敢さを何と呼ぼうか、
「それは死ぬってことだよ?」
ビス子は真っ直ぐに言う。
「俺と久一以外の誰かを愛するってことは、お兄ちゃん、死ぬってことだよ?」
この出っ張りの無い咽喉元に押し当てられた刃に、力が篭る。
俺様の前、ビス子の前、ずっと遡って、一体何人の砂糖菓子が居たのだろう。一人当たりどれほどの時間を生きてきたのだろうか? 皆いつか誰かを愛し、やがて死を選んだのだろうか。「今」をその時と呼ぶことは俺様には出来ない。しかし、何時がその時となるのかは、永遠に判らない。
俺様が死ぬということは、単にそのまま俺様が一人死ぬということだけを意味するのではない。愛しい弟を一人残して逝くということだ。弟がどれほど俺様のことを好いてくれているかぐらい、判らぬ俺様ではない。……愚かだった、何故ビス子がルール違反を犯してまで一弥の元へ行ったのか、館町歩という一弥の弟に必要以上に肩入れをするのか、理由を今になるまで気付かなかった。
弟は俺様に傍に居て欲しくてそうしているのだ。
俺とあの人とどっちが大事?
「……俺たちは、今のままで居ればいいんだと思うよ」
静かな声でビス子は言う。もう俺様の尖った耳は、奥底にある彼女の絶望的なまでの寂しさを聴き分けてしまう。
選んではいけないのだ、……そんな選択肢を念頭に置くことすら、傲慢に過ぎる。ほんの一度の、本当につまらない、些細な物思いと、片付けなければならないもの。
「不幸な偶然だったんだよ」
ビス子が、断定した。
「お兄ちゃんが若い人に呼ばれたのも、そしてその人のこと好きになっちゃったのも、本来あるはずもなかったこと、……呼ばれたのが俺だったら良かったのにね、あたしだったら簡単に遣り過ごせたし、お兄ちゃんがそんなに苦しんだりすることもなかった」
ビス子は俺様の胸の中に入って抱き付くというやり方で、俺様を抱き締める。
「どうしてあんな男を好きになっちまったんだろうな、俺様は」
「え……?」
「確かにお前の言う通りだ、不幸な偶然、……そう言っちまうほかないよな。だって、……なあ?本当に、……どうしてだろうね」
「one of them」だと思っていた。一弥は、……言ってしまえば明之でも良かったし竜次でもよかった、さとみでも良かったし恵美でもよかった、……要するに誰でもいいはずだった。
それが、……どうして「一弥」だった?
何故、一弥だった?
理由は判らない。判らない。けれど、それこそが俺様の苦しみを生んでいる。
しかし「出会わなければ良かった」なんて、思いたくもない。
俺様は全く判らなくなっていた。何がしたいのかも、何をするべきなのかも。
あいつの心臓が悪いと知った今、……そして其れが彼の苦しみの原因の一つであり、俺様の甘味では到底排除出来ぬものだと知ってしまった今、俺様は彼のためにできることなんてもう何一つないと判ってしまったのだ。
あいつの思い通りにさせてやりたい、「家族」という悲しみから逃がしてやりたい。
しかし、其れが本当にあいつのためになるのかどうかと問われれば、答えは明快にノーだ。あいつの心臓がどれほどいいのか悪いのか素人である俺様に判るはずも無いし、判らないからこそ怖い。せめて病院に行って医師の診察でも受けさせてやれれば。そのためには金が要る、一弥は金を持っていない。
家に帰れば?
彼の父親は、一弥がどれほど呪わしく思っていようとも、一弥を遥かに上回る収入を得ている。息子の肉体が問題を抱えていると知れば、弟も母も居る以上、渋りはしないだろう。
一弥が其れを痛みとしか感じなかったとしても、いつかは許すことができるかもしれない。ビス子が言っていたとおりに。
そして、一弥の帰還は弟の歩まで救うことになるのだ。
一弥自身がそのナイフを鞘から出さないままで、全てを成し遂げることは出来るだろうか? ……あいつを見くびる訳ではないが、恐らく、……無理だろう。幼い頃から積み重なったあいつの苦しみ、俺様一人分だけの隙間を残して胸を埋めていたあの刃を、俺様は見た。俺様以外の全ての者に向けられる害意は、自制心によって辛うじて押し止められている。俺様の甘味によって今少しの猶予もあるだろうし、無くっては俺様としても立つ瀬が無いのだけれど、この期に及んで自ら苦悩の中に飛び込むような真似をすれば、暴発は避けられまい。
一弥を救いたいと、俺様は思う。いや、それはもうほとんど、祈りの域に在る。
あいつを苦しみから、痛みから、悲しみから、悩みから、救ってやりたい。
砂糖菓子としての職掌から大幅に逸脱すると判っていながら、俺様は極めて個人的な欲求として、そう考えている。これは肚の底から突き上げるような思いであって、溜め息の何度かでは到底消し去れないし、久一にどんなに唇を吸われたって俺様の中から逃れることはない。腫瘍のように俺様の中に生まれた痛みの塊は、俺様の青い血に乗って力を得て、身体の隅々に破片を埋め込み、やがて俺様を支配する。ひょっとしたらもう支配されきっているのかもしれない。こんな苦しみを、どうやって遣り過ごそう。俺様は心底自分の弟を尊敬したいような気になった。
「one of them」だと思っていた。他の誰とも変わらない相手、たまたま何かの間違いで若い男だったというだけだと。きっかけは確かにそうだったのかもしれない、性質の悪い偶然と、俺様が一人納得していればそれでお終いのアクシデント。しかし一弥に呼ばれ、俺様が彼の前に降り立った、……正確には転んだあの瞬間に、俺の中に其れは生まれた。
あいつが死んでしまうかもしれない、あいつが刃を振るってしまうかも知れない、そのどちらも、俺様には耐えられる自信がなかった。
俺様は、一弥が愛しい。
もうそれを否定する術は無かった。
今こうしている間にも、またあいつは、弟の手紙に苦しんでいるのかもしれない、身の中に隠したナイフを持て余しているのかもしれない。膚の中に埋め込まれたそのナイフ、これ以上抱えるのが苦痛ならばいっそ抜き取って、自分にこれほどの痛みを与えたものに押し付けてしまったほうが楽だと……。
そんな想像すら、俺様を震わせる。膚がカッと熱くなって、そのくせ心は冷え切って、温度差によって生まれた空気の空白に、身体がぎゅっと小さく小さくなってしまうような錯覚に陥る。
「俺様は……」
微かに、俺様は震えていた。この言葉が壊すものの大きさを知っているが故の、圧倒的な躊躇、恐怖心、唇を湿してもなお、言わぬまま終わらせてしまう方法が何処かにあるのではないか、見つけられないのは単に俺様が怠惰なだけなのではないか、そんな思いが幾度も幾度も幾度も過る。
だけど俺様には、もう何かを選べるだけの力も残っていないような気がした。少なくとも確かに言えるのは、俺様は一弥と俺様を呼ぶ誰かを比べてしまうということだ。
そんな俺様にはもう、
「……砂糖菓子、これ以上、やっていけない」
理不尽な苦しみに嘆く全ての老人子供のためではなく、たった一人の人間のために在りたいと願う俺様には、資格だってない。空を駆け、心を読む、この人ならぬ身に宿した力、そして命そのものと引き換えに、俺様は。
片倉一弥に惚れるのだ。
「あいつの……、力になりたい。一過性の頓服薬じゃなくて、俺様が与えられる最高の甘味を……、あいつの力に変えて」
頬が、熱くなる。音を聴いたのは少し遅れて。
「裏切者」
ビス子が、言う。うん、と俺様は頷いた。どんな言葉だって痛みだって、ビス子には齎されていいと思った。
「自分だけ逃げるのかよ、たった一回、誰かのこと好きになったからって、逃げるのかよ、俺たちのこと捨てて、あんな、よりにもよってあんな男のところに行くのかよ!」
俺様には何も言えない。
口を噤んだまま、弟の叫ぶ声を俺様は聴いているだけだった。
「ずるいよ、……そんなのおかしいよ! 俺には居なかった、俺は誰のことも好きになったりなんかしなかった、誰からも、お兄ちゃんみたいに好かれたりしなかった、だから……、だから、俺にはあんたしか居ないのに!」
ビス子の言葉の破片は俺様の膚を焼き焦がす。圧倒的な正しさの前に、俺様の矮小なるエゴイズムは妥当性の無さを露にし、俺様は何処までも醜くなる。
醜いまま生きていこうとも思っては居ない。内側から俺様を吸い込まんとする物思いのままに、俺様は死ぬのだ。弟を置いて死ぬのだ。それはたった一つ厳然と存在する事実であり、そんなやり方しか選べない自分は極めて情けなく、また虚しい存在だと思う。
だが仮に、今から終わりの始まりへ戻って消し潰したいかと問われて、俺様はやはり頷けない。
「……一人先には、逝かせない」
ビス子が呻く。俺様の腕に爪を立てて、額を俺様の心臓に当てたまま、
「約束は、破らせない」
言う。弟は俺様にしがみ付いたまま、しばらく黙って、俺様の薄っぺらい少年の胸板に唇を当てる。そして顔を上げて。
ビス子は笑っていた。
「俺があの子……、歩のところ、どうして行ってたか判るよね?」
それは無邪気な、無毒な、ものだった。
「最初はね、……片倉一弥が憎らしくってさ、それだけじゃない、お兄ちゃんに嫉妬してたんだ。あんなさ、いい大人の男がだよ? ガキみたいに、お兄ちゃんに癒された、救われたって喜んで、……絵に描いた。俺は誰からもそんなことされたことない、……もちろん感謝されたことが無いわけじゃないけど、それだって言葉だけのことで、だからあんな風にしてもらったこと、なかった。それをさ、ほんとだったら俺が行くような男の処に間違って呼ばれたお兄ちゃんなのに、……うらやましいなって、思ったんだ」
俺様はまだ何も言えないまま、弟が間近で馨らすヴァニラの匂いを、もう嗅ぐことは出来ないのだと思って、微量の後悔と共に嗅いでいた。
「でも今は、……歩のことも嫌いじゃないかな。あの子がずっと一弥のことをさ、お兄ちゃんお兄ちゃんって思ってるの見てて、何かその気持ち、すっげえよく判るし、だから、うん」
ビス子の両眼を見詰めた。二重瞼の、きらきらと瞬くそれは、甘く優しい、優秀な砂糖菓子、見て居るだけで俺様の気持ちまで緩ませるような。この弟は、俺様の側に少女のように美しい姿をして生まれた。俺様はこの弟の側に、悪魔のような少年の姿をして生まれた。全く似たところは無いけれど、この閉塞した空間でたった二人の兄弟として、二十七年間過ごしてきた。結論は初めから此処に在った顔をして、しかし俺様の心を竦ませる。
「俺も遅かれ早かれ、お兄ちゃんのこと置いてくつもりだったのかもしんないね。大体ホラ、……約束通りにしたってさ、先に逝くのは俺のほうだしさ」
ビス子がす、と俺様から離れる。Tシャツを脱ぎ、スパッツを脱ぎ、俺様の前に裸を晒す。
見慣れたはずの弟の裸身が、恐ろしいほどの光の塊となって其処に在る。俺様は眼を少し細めないわけには行かなかった。
「今夜初めて君の『女』だ」
ビス子はちょっとおどけて言った。ただ眩さばかり感じる俺様は、それでも彼が微かに震えているのをはっきりと感じ取っている。
「そして僕は、君に抱かれるために生きてきたんだ」
ビス子、と俺様は言っただろうか。何度も何度も間近で見てきた弟の顔は、これまで見た全ての表情よりも神々しく、美しく、俺様の胸を烈しく揺さぶる。光を前にした俺様は、熱い熱いビス子の膚に手を触れることさえ憚られて、呆然としていた。ビス子は俺様の手を取って、生温かい体温の在る胸へ導く。俺様はビス子の指が頬を撫ぜて、初めて自分が泣いていることを知る。
「そんな顔しちゃダメ」
唇を重ねて彼は言う。「君は得意げに笑ってるのが一番カッコいいんだから」
キスを、……何度も、何度も、何度も、繰り返す。その一つひとつが最後から数えて、……あと何回?
ごめんな、ごめん。ごめんなさい。
全てを飲み込んでビス子が笑う。
「これが夢だったのかもしれないよ?」
横たえた身体は、生命の熱を帯びて、俺様を包み込む。
ビス子は笑っていた。
「……黙ってたけどさ、これまで、やばかったこと何度も在ったんだ。やばかっていうのはつまり、……してやってる最中に、男にさ、がばって押し倒されて、入れられそうになったことが。怖くて怖くて、力も抜けちゃいそうで、でも僕は、君にこうしてもらうために生まれてきたんだ。だから、火事場の馬鹿力ってやつでさ、いっつも逃げてた。……だってさ、どんなカッコいい奴だって、……君には敵わない」
大好きでした、ビス子が俺様の耳に言葉を滑り込ませる。
君とこうするのが、僕の幸せだったなら、僕を苦しみから解放するのがあなただ。
ビス子は、そう言った。
生々しい声で、そう言った。
「顔、見して」
ぼろぼろでぐずぐずの顔、ビス子が「お兄ちゃんの泣き虫」と笑った。