大サービス

 重たい。

 しかし重たいのはいつものことである。ラムザはしばしばまだ夢の中のディリータに寂しがって、小型軽量とはいえ四十前後はある体重でディリータの身体に圧し掛かる。その体重は決して不快なものではなくて、寧ろ、ディリータにとってはいちばん馴染みのある重さであるため、ゆっくりぼんやり、ああ、ラムザだ、ラムザだ、そうだ俺はラムザと一緒に寝ていたんだ、徐々に頭に染み渡り、冬の朝であっても幸福な目覚めを迎えることが出来るのである。

 多くの場合、夢にラムザが出てくる。昼間にあれだけ顔を突き合わせ、考えているのにも関わらず、夢にも現れるとはどういうことかディリータには判らなかったが、夢の中にもラムザが出てきてくれるのならばそれはとても嬉しい。重さを与えているラムザが、ディリータに微笑みかける、「朝だよ」、ぎゅっとすがり付いて、「起きて。今日もいっしょに遊ぼう?」。そんなラムザの姿が時折、眠る前と同じ、裸体だったりする。そういうときには、覚醒状態に至っても勃起していて、雪崩れ込むようにそのまま朝からセックスをしてしまう。

 今朝の夢のラムザも、裸でディリータに乗っかっていた。「ディリータ、おはよう。朝だよ」、男の子なのにこんなに可愛くっていいんだろうか、嫉妬深いヴィーナスに叱られてしまうんじゃないか。ホントに世界一可愛いなあラムザは。寝ぼけながらそんな風に褒め称え、徐々に瞼の裏のラムザの顔が消えて行くに連れ、覚醒が近いことを感じる。大丈夫、目を開けばすぐそこにラムザがいるさ。

「……ん……」

 それにしても、今日の夢のラムザはまたいやらしい。裸、その上、自分に性器をなすりつけて来る。恐らくは、先に起きたラムザがディリータの元気なものを見つけて早くも欲情し、悪戯をしているのだろう。このままいつまでも夢にしがみついていては可哀想、それに、夢精してしまう可能性もある、ディリータは、意識を覚醒側に運び始める。

「……う……、う、ひゃあ!?」

 それが、突如として世界が引っくり返ったかのように、目が見開かれた。下半身に与えられていた快感が、突如として強まったのである、

 そして、目の前にあるのは、

「ふえ!?」

 菊の花?

 ラムザの尻。……当然顔がそこにあるものだと思っていたディリータは、心底驚いて声を上げた。恐慌状態になりながら、何とか理論的に思考しようとするが、上手く行かない。ただ、下半身には強い快感がある。

 その快感が一瞬遠のいたとき、ようやく理解できた。

「……起きた?」

 ラムザが、悪戯が決まって嬉しいらしい笑みを含んだ声で、自身の股下に顔を覗かせた。

「お前……、何、やってるんだ?」

「んー、おちんちんしゃぶってた」

「……そう、……じゃなくって、何、朝っぱらから、お前……」

「気持ちいいでしょ?」

「……」

 そりゃ、いいけども。

 そうではなくて。ディリータは黙って流されるのを潔しとはしない。ラムザが淫乱で悪い子、だけど自分はいい子だから何とか修正をしようとして、だけど結果的に流されてしまってああ……というのがディリータの理想。しかし、そんなことを考える上に、ラムザの言葉一つにぴくんと震えてしまうディリータは、十分すぎるほどに変態だ。

「は……はしたないとか思わないのか、こんな、朝っぱらから人の顔の上にお尻乗っけて……」

「思わないよ」

 そうだろうな。

「ちょっとは思おうよ、少しは恥ずかしがらなきゃダメだよ」

「でも、ディリータのおちんちんが硬くなっててさ、気持ち良くしてあげたいなあって思ったんだよ。かちんこちんになったまま放っておくのって、気持ち悪いでしょ? だから、すっきりさせてあげたかったの」

 素直に一言で言うならば「嬉しい」のだが。ディリータにはディリータなりの、正常への憧れがあって、その上やはり性行為に対する罪悪感も人相応に備わっているから、戸惑う。事実、立ちっぱなしは辛いし、ラムザがしてくれるというのならば喜んで甘えたいところではあるのだが。

「……ラムザのえっち」

 内心に葛藤、言えたのは、そんな言葉。逆さまにディリータの顔を覗くラムザは、くすっと笑って、

「でもねえ、僕もいろいろ考えてるんだよ? ただえっちがしたいだけじゃないんだ」

「……?」

「うん。あのね、……きのうもおとといも、今年になってからずっとお天気悪かったじゃない?」

 確かにラムザの言う通り、イグーロス城周辺地域、一昨日は年始早々ご出勤の雪の精霊の活躍によって雪が積もり、昨日もその雪雲が居座り、天気は良くなかった。そして、今朝もどうやら、カーテンの隙間から見える雲の色から察するに、晴れてはいないようである。

「……だから?」

「ん、だから、ほら、初日の出」

「……え?」

「お尻の穴、太陽、ね、ほら、見ようによっては見えるでしょ?」

 自分の言っていることが下品だなどとはちっとも思っていない、寧ろ可愛らしい冗談のように思っているのだろう、ラムザは屈託なく笑い、股下に手を入れて、ふざけて自分の菊門を、指でくいと広げてみせる。

「……ラムザ」

「大サービス。ね、ディリータにもお年玉、ふたっつ」

「……ラムザ……」

「だから、ディリータのも頂戴、お年玉。ついでに、新しい筆で書き初めもして?」

「……ああ……」

 神様、どうか、どうかどうかこの子を許してやってください。この子に悪気はないんです、ただちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、普通の子より、えっちなだけなんです。そして、普通の子より、何倍も、俺のことが好きなだけなんです。それだけ。他には悪いことなんて何にも、ですから、どうかどうか、神様……。

 この馬鹿な子を、そして流される馬鹿な俺を、お許しください。

「お正月の、初日の出。ね、ディリータ、きっとごりやくあるよ」

「……」

 あるのだろう。

 それはつまり、お前がこうしてくれる大サービスが何よりものご利益と言うことだ。手を合わせるくらいの価値はあるだろう。今年も一年、いいことがあるように。

 ラムザの、形のいい可愛らしいそれでもそこは排泄出口、である肛門をじいっと見ながら、ディリータは今年も年頭から成長のない自分たちであることを、少し恥じる。しかし、ラムザは成長しようがしなかろうが、結局可愛いし、自分は好きなのだから、いいのだ。

「ね、ディリータ、お尻にキスして? お尻の穴、舐めてよ」

 尻の穴、「お年玉」、勃起した幼根を経て、向こう側に自分のペニスをしっかり握ったラムザの顔がある。色いろな意味で悩ましいこの光景を、独り占めする贅沢さ。といっても、いつでも独り占めには変わりないが、時期が時期だからか、申し訳ないくらいありがたく贅沢に思えるディリータである。そんな贅沢をさせてくれるラムザのお願いだから、もちろんよろこんで聞いてしまう、というか、いつ舐めたらいいのだろうとそればかり考えていた。が、自分から行動を起こすのはどうしても恥ずかしいディリータでもある。ラムザの請願は渡りに舟だった。

「ああん」

 尻を抱え寄せて、まずキスをする。それからラムザの引き締まった菊門の肉の皺の寄り具合の瑞々しさを舌先で楽しむ。ぐっと中へ押し入れようとすると、反射的にきゅきゅっと締まり、欲しいものを払い除けようとするのも贅沢に感じられる今朝だ。

「ねえ、ディリータ、もっと、中も舐めてよぉ」

 とラムザは乞い、再び指で広げてみせる。ピンク色の内側に、ディリータは舌先で突っつく。

「あっ……、ん、いい……、……っ、あっ……、ダメ……」

「……どっちだよ」

 ディリータは舌を外して笑った。

「……ん、だ、って……、もう、いっちゃいそうだったんだもん……」

「もう? これだけで?」

 相変わらず股下から覗き込むラムザは目を潤ませて、「だって」と言い訳する。

「だって……、ディリータが起きる前から、ずっと僕、したかったんだもん。ディリータが起きてくれるのずっと待ってたの」

「だったら、もう出したほうが楽なんじゃないのか?」

「んん、やだ。ガマンする」

 無理にしてもらわなくてもいいディリータは苦笑した。

「どうして?」

「だって……、お正月だから、ディリータにサービスするの。いっぱい気持ちよくなってもらうの」

 朝の起き抜けに、こちらの都合も聞かず、こんな卑猥なことをし始めて。それがディリータのことを幸せにするのかといえば、それは大正解。結局のところディリータも変態であることは、少しも揺らがないのである。

 ラムザは、少し快感が落ち着いたらしく、

「ね? だから、僕にさせて? ディリータ、先に気持ちよくなって?」

 と、微笑んで言った。ディリータは勝手にしろよと、ラムザの尻から手を離した。気持ち良くしてもらえるなら、順番に拘りはないし、やり方にも。どうせ最後に繋がりあえるのは判っているのだし、それがいちばん気持ちいいのも判っている、けれど、ラムザの口は嬉しい。

「ディリータの、見れば見るほど美味しそう」

 こんな淫悪なことをいうラムザに、しかし影など何処にもない。それは、股の下、尻の穴にまで光を差し込ませているからである。

 ラムザは大きく口を開けて、再びディリータのものに舌を這わせた。

 いつもの事ながら、ディリータは感心してしまう。よくもまあ、そんなに上手に出来るものだと。

 同じ行為であるはずなのに、ディリータとラムザのそれは、技術において大きな差があることを、ディリータは認める。ディリータの、明らかに拙い舌でラムザが射精に至るのは、ラムザが非常に早漏であるということ、ただそれだけの理由である。一方、ラムザよりも遥かに至るのに時間のかかるディリータが、ラムザの口と舌によって、時によってはその体内で出すのと同じ程の速さで射精してしまうのは、最早悪魔的と言って構わないようなラムザの舌技によるところは明らかである。

 左手でディリータのペニスを握り、扱いたり、少し下方へ優しく引いてみたり。亀頭には舌が這う。器用に動き回る舌先はその亀頭に字を画くように、或いは円や螺旋やメビウスを画くように動き回る。時折そのペニスを手前に傾け、裏筋を幾度も舌先で上下に、左右に、往復したり、袋に納められた宝珠の一つひとつを愛撫する。それらのプロセスを経て、カリ首を丁寧に舌で一周する頃には、ディリータの鈴口には熱そうに澄んだ蜜が浮かぶ。ラムザはそれを見つけたのを合図に、もちろんその蜜を舐めて味わってから、口にぱくんと咥える。手で扱く動きを加えながら、頭を動かし、口の中で不安定ながら舌も動かし、激しく快感を与える。

 ディリータを喜ばせるこれら一連の口淫のテクニックは、一等高級な娼婦にも匹敵するものとディリータは勝手に考えている。これでいかないのは余程の遅漏か、もしくは男でないかだ。

「ラムザ……」

 ディリータは漏れ出そうになるものを堪え、声を殺した。

「……ん……」

「……出るよ……、ラムザ、出る」

「……ん、ん……ん……、ふっ、……んん」

 口の中でディリータのものが痙攣し、勢いよく精液が放出される、その粘っこく青臭いものが口の中に広がるのを、ラムザは悦んで受け止める。何万もの精子、ディリータの種子を、自分が飲み込み、独り占めするのだという欲深い悦びに満たされているのだ。だからラムザは一滴だって無駄にするまいと、残らず吸い、舐め尽くす。放出後の敏感な状態に、更に舌を貰うから、ディリータはいつも声を上げそうになってしまう。

「……んん……、おいしかったぁ」

 ラムザは自分の口臭がディリータのペニスの匂いになったことを嬉しく思っている。ディリータはくったりと、ラムザの尻の穴がひくひく蠢いているのを、ぼんやりと見上げている。

「ディリータ、気持ちよかった?」

「……」

「ディリータ?」

「あ……、ああ……、すごく、気持ちよかったよ。ラムザ……、お前、口でするの上手すぎだよ」

 ラムザはにっこり笑って、後残りの汁を溢れさせるディリータのものに、またキスをした。

「だって、僕ディリータのおちんちん大好きだもの。大好きだから、愛したいって思うんだ」

 そうして……、また、それを口に含む。ディリータはビクンと震え、手加減された刺激にも、激しく身悶えるような快感を覚える。淫乱なるラムザは今の言葉が正直なものだったということを証明するように、本当に心から美味しい飴をしゃぶるように、ディリータのペニスを頬張る。ディリータは快感の納まる暇もなく、ただ翻弄される。

「ちょ……、っ、ラムザ、す、ストップ……、ストップってば……」

 はじめはほんの悪戯のつもりだったのだろうが、ディリータがそんな声を出すにいたって、調子に乗ってしまったらしいラムザは、口の動きをエスカレートさせる。

「んっ、あ……ラムザ、ラムザって……っ、ラムザ!」

「ひゃん!」

 たまらずディリータは、ラムザの肛門を指でぐりっと刺した。

「やぁん、まだ入れちゃダメだよぉ」

「お、お前な、もうちょっと、考えてやってくれよ……、判るだろ、今みたいに……いったばっかりのときにされたら、どうなるか……なあ」

「わかるよ、おしっこもれちゃいそうになるよね」

「判ってるならやめてくれよ」

「ディリータのおしっこなら飲むの平気だもん僕」

「だからって……ちょ、こら」

「にゃ!」

「と、とにかく……、俺のはちょっと、一旦、しばらくはいいから。俺、お前みたいに回復早くないんだよ……」

 ラムザは少し休憩を取れば、すぐ次の交合に入れる。ディリータはそうではない、数分のインターバルを要する。当然ディリータの方が一般的である。同い年の二人ではあるが、性能力にはこれほどの差がある。その分、ラムザは非常に早漏である。繋がりあって、ディリータが一回いくまでに、ラムザは二回、多いときであれば三回、四回といってしまうときもある。しかもそういうときは、仮に射精したとしても「やだっ、やめちゃやだよぉ、ディリータ、もっと、もっとしてよぅ」と強請る、そして、今しがたラムザが言ったように、失禁してシーツを濡らしたりしてみせる。ディリータは困りながらも、そんなラムザが可愛いのである。

「だらしないのー」

 ラムザの言葉に、なんだか悪いのは自分のような気になってしまう。

「しょうがないなあ。じゃあ、……ねえ、ディリータ」

「ん?」

「……ん……」

 求められていることが判って、ディリータはそうした。もう一度、ラムザの蕾に舌を当て、舐めて濡らす。

「ん、……あん……っ」

「もう、いつでもいっていいんだろ?」

「ん、ん……、きもちいぃ……」

 たっぷりと濡らされた尻の穴から滴る唾液が淫嚢まで伝う。その様子を見つつ、ディリータはラムザの先端で指を濡らし、押し当て、そっと差し入れた。

「ふあ……」

 ふるりと一つからだが震える。ラムザの中は狭苦しい、が、奥のほうへと誘われているかのような肉の動きをディリータはリアルに感じた。これはペニスを挿入するときにも感じることだ。ラムザの欲深さが凝縮されているのだといつも思う。

 どんなにいやらしいといってもまだ十代の前半、ましてやラムザは細く小さい体をしていて、非常に弱々しい。ある面ではとてもタフだが、きっと無理が強いられる部分もあると、ディリータは思っている。だからラムザのいうところの「太陽」を弄るときには慎重になる。指の一本が、さほどの抵抗なく奥まで飲み込まれ、前後往復運動の際にラムザの上げる声が、痛みではなく悦びのみを含んだ声になったなら、それはもう準備万端の合図。指を増やすと、ラムザの声は一層嬉しげになる。そして。

「あっ……あん! んっ、ん!」

 ラムザはディリータの腹の上に精液を撒き散らした。ディリータはラムザが「ずっと待ってたの」と言っていたことを思い出し、なるほどなと納得した。かなりの量の粘液が、ディリータの腹部を濡らしている。生暖かく、流れようとするそれをディリータは指で掬い取り、舐めてみる。はっきりと自己主張するような味だなどと思う。それがラムザらしい。

「は……っ、ん、うぅ……」

 ディリータの指が抜かれたラムザは腰をヒクヒク震わせて、ディリータの下半身に顔を埋めるように崩れた。ディリータはそんなラムザの尻に手のひらを乗せて、円を描くように撫ぜる。

「ん、やっ……」

「もうおしまいか?」

「んん、まだ……」

 とりあえず一度いってしまえば、誰だっていつだって終りに出来るのだが、ラムザはそれを拒む。終りにできるものを終わらせたくなくて、いつまでもこの罪に縋り付いていたがるのだ。

 そもそも、今終わりにすると言われてしまったらディリータは困る。ラムザの尻に施しているうちに、当然若い性器は再び硬くなる。

「……ディリータだって、したいんでしょ?」

「……そりゃ、まあ……な」

 言い当てられると、少し恥ずかしい。

「……ん」

 ラムザはディリータの身体からようやく降りて、そこに広がる精液に少し気まずそうな顔になる。

「舐めてよ」

「……」

 慣れきらない。ラムザは仕方なく、散らしてしまった精液を一つひとつ舐めとって、飲み込んでいく。そうしているうちに、あっという間にまた硬くなってしまうラムザの性器。

 全部舐め、飲み込んで、再び興奮したラムザはディリータを見る、ディリータの性器を見る。ディリータの性器も硬くなっていて、ラムザは嬉しくなる。同じ立場であれば、ラムザのほうが気の強い分、イニシアティブを取れる。

「……ディリータ、僕におちんちん入れたい?」

「……ん?」

「僕のお尻に、入れたい? 中で出したい?」

「……そりゃあ。……っていうか、お前だってして欲しいだろ?」

「うん。だけどね、たまには、君から欲しがってくれてもいいんじゃないかなあ」

 ラムザは少し意地悪な笑みを浮かべてそう言った。

「いつもは僕が欲しいから、僕からするよね? それでディリータも満足するの。でも、たまにはね、ディリータが僕のこと欲しくて欲しくてしょうがないってこと、教えて欲しいなあ」

「そんなの……」

 ディリータは少し顔を赤らめる。ラムザに比べれば遥かに純粋さが残っている。

「……俺の、これ、見れば判るだろう」

「判るけど、そこに言葉はないよね。僕は言葉が欲しいの」

 ラムザは再びディリータに、今度は正面から抱き乗って、その袋を手のひらで揉む。

「ね、ディリータ。言って?」

「……いやだ」

「言ってよ。言わないなら、このまま僕の手でいかせちゃうよ? 僕は自分の手でいっちゃうからいいもん」

 本当はラムザだってそんなのは嫌だ。自分でなんて寂しい、「相手が欲しい」その気持ちはラムザのほうが数倍に決まっている。しかし、自分のほうがそんなに強いというのが、ある点において悔しいとも思えるのだ。相手にも欲しがられたいと思うのは人情と言うもので。

「……言って? ね、ディリータ」

 ラムザはディリータの耳を舐める。ディリータの身体が、ひくりと震える。

「……判ったよ、言えばいいんだな?」

 ディリータは観念したらしい。ラムザはディリータの身体から降りた。

「……じゃあ、言って? 聞かせて?」

 ディリータは少し顔を赤らめ、わざとらしい溜め息混じりに、

「ラムザのことが欲しいよ」

 と不貞腐れたように呟いた。

「それだけ?」

 ラムザはまるで満足しないというように聞いた。

「……それだけって……、そ、そうだろ、俺は……、お前が、欲しいんだ」

「……それだけなの?」

「……他に何がある」

 はぁっ、とラムザは溜め息を吐く。

「お正月なのに。ディリータはサービス精神が旺盛じゃないんだね」

 そして、ディリータの右足を肩に載せて……、

「ひゃ!」

「ディリータいじわるだから、僕もディリータにいじわるする。お尻に入れる」

「やっ、ちょ、それは……ひぃ」

「じゃあ、ちゃんと言う? 僕に聞かせてくれる?」

「言う言う、言うから、それだけはやめてよ」

「約束する?」

「す、するから、な、舐めちゃやだよっ」

 ラムザが股の間から顔を出したので、ようやく息を整えて、

「……俺は、ラムザに、……入れたい」

「どこに?」

「……ラムザの……お尻、に……」

「なにを?」

「……こ、これ、を」

「これってなに?」

「何って、……見れば、判るだろ……、これだよ」

「わかんない。ちゃんと言ってくれなきゃまた意地悪するよ」

「……! ……、……、……」

「んー?」

 ディリータは真赤になる、真赤になって、憎たらしいラムザのことを、しかしちっとも憎くは思えない自分に少し腹が立つ。

「なあに?」

「……、お、……お」

「お?」

「……俺の、おちんちんを、ラムザのお尻に、入れたい、です」

 そう言うとラムザはにっこり、にっこりと笑って、

「ディリータ大好き。僕もディリータのおちんちん、お尻に入れて欲しいよ」

 愚かなる遠回り、無駄な回り道、しかし、ラムザはそれを楽しむ術を知っていた。もちろん、ディリータも普段はラムザにこう言うことを言わせて楽しんでいるのだから、同罪だ。そして、二人とも同じ罪なのであれば、それは相殺される、罪ではなくなる。

 ディリータは恥ずかしそうに俯いている、しかし、下半身は相変わらず元気だ。ラムザはディリータの頬に優しくキスをして、元気なものの上に、腰を落す。

「ん、……はっ……、おっきい……」

「……ん」

「……全部、入ったよ、ディリータ。気持ちいい?」

「……ん」

「ふふ……、元気出してよ、ディリータ。愛してる」

 ちゅっ、ちゅっ、とごまかしのようなキスを幾度かして、ディリータが顔を上げたら、唇にキス。ディリータが返事をするようにキスを返したから、内心ではかなり安心をする。

「……愛してるよ、ディリータ」

「ああ……、うん、俺もだよ」

「ちゃんと言って」

「……愛してる、ラムザ」

 あとのことは書く必要も。

 数十分後、ラムザはディリータの腕枕で、満足げな微笑を浮かべて、ディリータの胸を撫ぜていた。ディリータはいささか疲れた表情で、ぼんやりと天井を見上げている。

 それからふと気付いたように、

「……あのさ、ラムザ、……ちょっといいかな」

「なあに?」

「……うん……あのさ、ラムザがサービス精神旺盛なのは俺、すごく嬉しいんだけど」

「うん」

「だけど……、この三日間、全部同じことしてるよ俺たち。『初日の出』も、同じモノを俺、きのうもおとといも見てるし」

「んー……、そうだっけ? ……でも、お日様だって、去年と今年と、違うものが上がってくるわけじゃないんだしさ」

 ようするにね、ラムザは悪びれもせずに言った、

「きっかけがほしかっただけだよ。ディリータとえっちするための。それに、朝起きて目を開けたときに、目の前に僕のお尻の穴があるなんて、ちょっと新鮮でしょ?」

「……」

 こんなことを考える恋人がいて、同じ一年を今年も過ごせるなら、それはそれでいいではないか。……しかし、朝置きぬけにいきなり恋人の肛門を拝むことが、果たしてそんなに幸せなことだったろうかと、ディリータは自分の事ながら今更、訝しく思う。


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