昴星と流斗のブリーフを見分けるのは容易である。六年生と四年生であるから、単純に、サイズが大きいのが昴星、小さいのが流斗、ということになる。
では、サイズを見ないで二枚を見分ける方法はあるだろうか。これもまた簡単で、汚れがしっかり付いている方が昴星、薄い方が流斗のである。
また、色合いにおいても、昴星が青や水色や黒のように男の子らしい色のものを好む一方、緑色や黄色、ピンクといった春めいた色を持っているのが流斗である。とはいえ、二人の引き出しに入っているブリーフの大半は、やはり白一色、色が入っている部分があったとしてもウエストゴムぐらいというものであるらしいが。
余談だが才斗は、数枚ながらトランクスやボクサーブリーフも持っているし、実際にそれを着用することもあるのだと言う。が、ブリーフ好きの恋人が望むままに、六年生に上がってからブリーフに回帰せざるを得なくなったという複雑な事情を持つ。昴星も一時的にボクサーブリーフを穿いたことがあると言っていたが、「やっぱブリーフがいい!」とブリーフに還ったとちつ経緯を持つ。
ブリーフへの偏愛。昴星と流斗が持つ、各種の特殊な性嗜好の背景にあるのがそういったものであるということを、ぼくはこの二日間で思い知ることとなった。そしてこの二日間は、ぼくにとってこれまでの人生において最も幸福で、今後を考えても恐らくそうはやって来ないであろう時間であることを言い添えておく。
すっかり草臥れて、夕日差し込むぼくの部屋の真ん中、パンツ一丁大の字で眠る二人の少年を眺めつつ、ぼくは窓の外を余韻のように舞う赤トンボを眺めていた。
「……はい」
牧坂流斗のご両親からの着信を受けるのは、いつでも少しばかり緊張する。普段、ぼくは流斗とあれだけの付き合い方をしているわけだが、流斗のご両親はそんなことつゆほども知らず、ぼくを「一人息子の面倒を見てくれる無害なお兄さん」であると思ってくれているのだ。毎週のように「才兄ちゃんのとこ遊びに行ってくる」と出掛ける息子がその半分ほどの時間をぼくとともに過ごし、聴かせたら包丁持って押しかけて来そうな「遊び」に興じていることを、ご両親はご存知ない。
「いつもお世話になっております、流斗の母でございます。……あの、不躾なお願いであることは承知で申し上げるんですけど……」
勤務中、電話に出たぼくに、お母さんはごく恐縮した口調で次のようなことをおっしゃった。
「明後日からの三連休なんですが、『先生』のご予定を教えていただきたいのですが……」
このところ、流斗の勉強を見てあげることが多くなった。といっても家庭教師ではなく、プリントを作ってあげて、それを解かせて、添削してあげるという流れ。だから通信教育だ。そんな次第でご両親はぼくのことを「先生」と呼ぶ。
「明後日からの、三連休……、ですか?」
十月ともなれば、もうすっかり秋である。ぼくはスポーツにはあまり興味がなく、ただ電気代の嵩むクーラーを使わずに済むようになった平穏な日々を有難く享受するばかり。カレンダーを見れば、確かに月曜の祝日まで合わせて三連休である。体育の日が「十月第二月曜日」に改まってずいぶん経つはずだけど、いまだに慣れない。
取り立てて予定、というものはない。まあ、どこかの一日、昴星か流斗と会えたらいいなとは思っていたけれど、まだ連絡を取り合ってはいない。
そう答えたぼくに、安堵半分、二倍の恐縮がもう半分という複雑な声で、
「もし先生が宜しければ……、なんですけど」と前置きして、「土日の二日間、流斗の面倒を見ていただくわけには参りませんでしょうか?」
「はっ?」
勤務中である、オフィスで周囲を憚り声を潜めて喋っていたのに、ぼくの声は不意の申し出に跳ねた。慌てて元のトーンに戻して、「あの、どういうことでしょうか……?」と気を落ち着けながら訊き返した。
こういうことらしい。
流斗のご両親は、不在がちな昴星たちのご両親とは異なりごく普通のサラリーマンと専業主婦であり、カレンダーに基づいた生活をしている。この週末は三連休ということもあって、家族で温泉にでも出かけようという話をしていたのだそうだ。それを流斗も楽しみにしていたらしい。
しかし、昨晩のことであるが、流斗からしたら大伯母さんに当たる方が事故に遭われた。命に別状はないとのことだが、一族の惣領とでも言うべき方であり、見舞いに行かないという手はない。のだが、その大伯母さんが住んでおられるのが、北海道。と言うわけで、大慌てでチケットを手配したのだが、完売キャンセル待ち。急遽金曜夜の寝台特急に切り替えたものの、こちらも生憎二人分しか入手出来なかったのだという。行楽シーズンであるから、三連休とは言え北海道に向かう観光客は多いのだ。
そういった次第で、温泉旅行が宙に浮いてしまった。チケットのキャンセルも今からではずいぶん取られてしまうし、何より流斗が残念がるのが可哀想。
「先生にはいつも流斗がお世話になっておりますし、もし先生が宜しければ、あの子と一緒に温泉に行って来ていただけないでしょうか?」
「はあ、あの、ええ、それは……」
流斗と二人で温泉旅行!
イメージするだけで、ぼくは頬が綻んできてしまうのを止められない。事実として、心臓がどくんと高鳴ったのを隣席の同僚に聴かれやしなかったか心配になったほど。
「で、ですが、……三人、というと」
「ええ、それは、先生のご友人の方でもよろしいですし……」
……「三人目」が誰になるかということについては、今更検討するまでもない。ぼくは電話を切ってから席を立ち、まず(いま、丁度中休みの時間であろう)才斗に、昼休みになったら電話をくれるようメールをした。才斗はきちんと電話を鳴らしてくれて、ぼくが一連の状況について半分も話さないうちに、
「いいですよ」
とため息交じりに言った。「どうせ、今度の土日はおれもばあちゃんのところに行きます。あいつは一人です」
そういう訳で、ぼくは放課後の時間を見計らって昴星の携帯に、その旨をメールした。
流斗と昴星から相次いでメールが届き、流斗は金曜の夜から、昴星は土曜の朝にぼくの部屋に来て、ぼくは美少年二人を連れての温泉旅行(しかも、交通宿泊の費用は全て流斗のご両親持ちだ!)に出掛けることになったのである。
夢ではなかろうかと金曜の夜までぼくは信じられなかったが、仕事を終えて大急ぎで帰った家の前で、リュックサックを背負った流斗が昴星と才斗に連れられて立っているのを見たとき、それが現実であることを確認するためにほおをつねった。
流斗はぼくを見ると、すぐに走って来て、ぼくの腰に抱きついた。
「わかってると思いますけど」
と才斗は無表情で言う。「あんまり無茶なことはしないでください」
「うん、わかってるよ。約束する」
だって、ぼくはこれからもそばにいたい。
「いーなー、流。今夜いっぱいおにーさんと遊ぶんだろ?」
「えへへ」
流斗は羨ましそうな昴星に、嬉しさを素直に表現する。「明日になったら三人一緒だよ」
「まーなー。おまえんとこの切符で温泉行けるんだし、いいけどさ」
昴星と才斗を見送り、ぼくは流斗と一緒に部屋に入った。普段なら一人でぼんやり過ごす部屋に灯りをつけると、靴を脱いで上がる少年の姿があって、
「お兄ちゃん、おかえりなさい。お仕事おつかれさま」
と振り返って言う。こんな幸せが、この世にはあるのか。ぼくはしばしぼんやりしてしまったが、慌てて「うん、ただいま」と、ぼくに背伸びをする流斗を抱きしめ、彼が望むままキスをした。
「流斗、ご飯まだだよね?」
「んっと、さっき昴兄ちゃんたちとお菓子食べたけど、おなかすいた。あ、そうだ」
リュックサックの中から、封筒を取り出して差し出す。中には、お金。……思わず居住まいを正したくなるぐらいの額が入っている。「今日の晩ごはんのお金も入ってるんだって」
「そう……、こんなに……」
ぼくは大急ぎで計算する。宿代については幾らか聴いてある。差し引き、一食当たりどれぐらいか、という計算。
ぼくは普段、余程疲れていない限り自炊する。ぼくの作るものが口に合うかどうかは判らないが、ハンバーグでも作って食べさせてあげようと思っていたのだけど、そんな安くあげてはいけないような計算になる。もちろん、余った分は返せばいいのだけど、それにしても。
「……じゃ、じゃあ、お外に食べに行こうか?」
うん! と流斗は嬉しそうに頷く。それから「あのね」とぼくのお腹にくっついて見上げた。
「帰りに、温泉じゃないお風呂行きたいな」
「温泉じゃないお風呂?」
「うん。前にね、昴兄ちゃんたちが連れてってくれたの、駅の向こうにある……」
ああ、と合点がいった。スーパー銭湯のことを言っているのだ。
ご飯を外で食べるとなれば、どのみち駅の方まで出なければいけない。
「いいよ、じゃあご飯を食べて、ついでにお風呂にも入って来ようか」
流斗はいそいそとリュックサックの中からタオルと替えのパンツを取り出す。どんな下着を持って来たのだろうと興味を持って覗くと、「あ、まだダメー、ぼくが穿くとき見せてあげるの」と手で隠す。確かに洗濯したブリーフよりそっちの方が魅力的だ。
「でもね、いま穿いてるのは見ていいよ」
流斗はにっこりと微笑んで立ち上がり、半ズボンのボタンを外し、ジッパーを下ろし、左右に開いた。
小さな膨らみをしっかりと支える、白い少年らしい色のブリーフだった。
正直、そんな風に見せられるだけでぼくの心拍数は上がる。
そんなぼくのことを、流斗は見逃しはしない。
「おちんちんも見たい?」
いたずらっぽい笑みとともに、少年はそう訊く。ぼくはバカみたいに素直に頷いた。
「えへへ、お兄ちゃん、えっち」
と言いながら、流斗は下着の窓を開けて細い陰茎を引っ張り出した。
「あのね、今日ぼくね、お兄ちゃんにいろんなパンツ見せてあげようと思って、たくさんパンツ持ってきてるんだよ。おかあさんがしたくしてくれたのとは別に」
ぼくは跪いて、流斗の可愛らしいおちんちんを指で撫ぜた。夏は遠くに去り、汗の匂いはない。しかし、その分だけ淡いオシッコの匂いが際立っているように思える。
「そうなの……? ぼくがまだ見たことないパンツ?」
「うん、いっぱい。そうしたらお兄ちゃんも嬉しいし、お兄ちゃんがえっちだとぼくも嬉しいな」
ぼくの指先で流斗のおちんちんは少しずつ硬くなってくる。
こういうことをするのは、お風呂に行ってからでも遅くはない。そう頭では理解しているのだけど、お互い、身体が言うことを聞かない。
「お兄ちゃんはどんなパンツ穿いてるの?」
「……見たいの?」
「うん、大人の人のパンツ見たい」
ぼくは身体の上に流斗を載せて、枕を頭に当てて流斗が夕べから穿いたままのブリーフの足の間に顔を埋めた。しっとりとした流斗の匂いに包まれる。
「お兄ちゃんのパンツ、黒くてかっこいいね。……おちんちん、もう硬くなってる」
流斗は下着の上からぼくのペニスを手のひらで包む。しばらくそうしてから、ウエストゴムからぼく自身の熱を取り出して、
「一日頑張ったお兄ちゃんのおちんちん、おりこうさんでした」
と、愛らしい口付けを落とした。ぼくのそれはぼくの意志とは関係なく、喜びの震えを流斗の唇に返す。
流斗は魔法の言葉のように、引き続きぼくのペニスに向けてささやきかける。「……ぼくと一緒にいるあいだは、おりこうさんじゃなくていいからね? いっぱいいっぱい悪い子になって、そしたらぼくが、いーっぱい気持ちよくしてあげるんだから……」
それは、心とろける天使のささやき。その言葉が貰えるならば、ウィークデーの肉体精神疲労など、何と軽微なものであろうかとさえ思われてくる。なるほど、「恋人が欲しい」とここ何年も思わずに生きてきたけれど、久し振りにそういう気持ちを抱いた。誰かに思いやられることは、身心にとってこんなにも栄養となるのだ。
とは言え、恋人はいらない。流斗と昴星、可愛い年下の友達二人が居てくれれば、そんなものいるものか。
流斗の小振りだが、骨ばったところの少しもないブリーフ越しのお尻を顔面で味わっているところに、流斗がぼくのペニスを美味しそうに舐めはじめた。これからお風呂に入るんだけどな……、と思ったけれど敢えて止めもしないで、ブリーフを脱がせ、もうすっかり勃起した流斗のおちんちんの下、まんまるく皺を寄せたタマタマの裏側に唇を当てる。汗の匂いはほとんどしなかったけれど、僅かに甘酸っぱい。流斗はお尻をふりふりと揺らし、ぼくにもっと刺激的な愛撫をねだっているみたいだった。
「あん……」
お望み通りにおちんちんの皮を剥いてキスをしたら、途端、そんな可愛い声を上げる。やはりそこはオシッコの匂いが強く、しょっぱい。空腹時である、とりわけ食欲を刺激されるような味わいだ。
「流斗、おちんちん美味しいよ」
ぼくが声をかけると、足の間を覗いてとろんと微笑む。「お兄ちゃんの、おちんちんもおいしい……。ぼく、お兄ちゃんのおちんちん大好き」
「ありがとう、ぼくも流斗のおちんちんが大好きだよ」
きゅう、と可愛らしい鳴き声を流斗のお腹が立てた。流斗は照れ臭そうに笑って、
「お兄ちゃんのせーし、お腹いっぱいのみたいな。今日とあしたとあさってで、いーっぱい飲ませてね?」
そう言って、再びぼくのペニスへの愛撫に戻る。
ぼくも、飲みたい。……明日からは、昴星の分も飲むのだ。二人の少年の精液、一体この身にどんな活力を与えてくれるだろう……。
流斗の脆弱な亀頭を優しく舐めて、滲み出る腺液の味を愉しみつつ、同じものをあげていると思うとそれだけで幸せだ。けれど流斗は間もなくその潮の味だけでは満足出来なくなったらしい、フェラチオは積極性を増した。お腹が空いているのも事実であるし、ここでそんなに長引かせるまでもなく、ぼくらの夜はまだまだ長い。
「んふ、んっ、んっ……! んんッ!」
舌を絡めた流斗のおちんちんが堪えようなく震え、弾み、ぼくの舌へと甘美な精液をもたらした。ぼくはそれを味わいながら少年の小さくて柔らかい口へと、少年たちにとってだけ美味しければいい精液を流し込む。
流斗は喉を鳴らしてそれを飲み込んでから、ちゅ、ちゅと音を立てて、キスをしてくれる。
「オシッコしないでえっちするの、はじめてかも」
ぼくの身体から降りて、流斗はえへへと笑う。ぼくがティッシュでおちんちんを拭いてあげると、「ぼくも」と優しい手でぼくのを丁寧に拭き清めた。
「いっぱい、遊ぼうね、いっぱい、しようね? タマタマの中、からっぽになっちゃうぐらい、いっぱい」
ぼくの膝に甘えるように乗って、頬に口付けて、流斗が言った。
誓いをこめて、ぼくは頷いた。
夕飯は、駅前のファミリーレストランで食べた。流斗はハンバーグ、ぼくは鶏肉のステーキ。自分のお金でないと思っても、やはり少々抵抗があったのは事実だ。
「おかあさんたちは、お兄ちゃんのこと、『すごくいいひと』って言ってたよ。ぼくもそう思うから、お兄ちゃんのことおかあさんたちも好きになってくれたの、すごくうれしいな」
そんなことを、食後のパフェを食べながら流斗は言った。ぼくとしては自分自身そんな風に思っていただけるような人間でないという自覚をしっかり持っているので恐縮するばかりだが、実際、頑張らなきゃな、という気持ちを忘れたことはない。流斗の幸せのためにぼくが出来ることは、何だってしなきゃいけない。
食後、予定の通りに流斗とぼくは駅の向こうにあるスーパー銭湯へと向かった。三連休を控えて道行く人の顔にはどことなく浮ついた余裕があるように見受けられるが、とりわけぼくは幸福を噛み締めているように映るのではなかろうか。ぼくの右腕にはタオルと替えのパンツを入れた袋を大きく揺らす流斗が実っている。天使と共にある幸福、……そんなことを、ぼくは思いつつ、大人六百円、小学生三百円也を払ってスーパー銭湯に入場した。連休前とあって、結構混んでいる。
ところでこのスーパー銭湯、ぼくはこれまで何度か利用したことがある。入湯料は、安いとは思わないけれど、自宅の近くでゆったり足を伸ばして入浴出来るというのは大きい。しかしそれ以上の理由がある。
要するにまあ、自分の欲を満たす目的である。一定程度の年齢に至るまで、男の子は腰にタオルを巻かずに洗い場をうろうろする。つまり、小さくて可愛いおちんちんを何本も見ることが出来るのである。……と、自分で思い返してみて全くもって救いようのない変態であるとは思うのだけど、当然ながら声をかけたり悪戯をしたりといった悪事を働いたことはない。あくまで、「見る」に留めている。それも、あんまりジロジロ見ては保護者に危険視されるおそれがあるし、ばれないようにチラチラ、だけど。
いま流斗と一緒にやって来て、……脱衣所で何人かの子供の裸を見ても、ぼくはさほど其れに執着するということはないようである。だって、視線を緩めればそこに、そんじょそこらの男の子なんかよりずっと可愛い少年がいるのだ。前をもちろん隠したりしないで、「お兄ちゃん、早く行こうよ」って、ふりんふりんとおちんちんを揺らして。
ハタから見ても、ぼくたちは仲の良い従兄弟のように映るだろう。
「ほら、流斗。ちゃんと身体洗ってからじゃないとダメだよ」
「えー、じゃあお兄ちゃん、ぼくの背中洗ってよ。そしたらぼくもお兄ちゃんの背中洗ってあげる」
そんな甘ったるいやり取りをしながら、周囲に視線を巡らせれば、この間のショッピングセンターの盗撮おっさんと同類の人種の視線を感じる。ぼくがかつてそうであったように、瑞々しい少年の裸体見たさにスーパー銭湯へ足を運ぶ不埒者が当然居るのだ。ぼくとしては可愛い流斗に「お兄ちゃん」と呼ばれる自分の立場を誇らしく思う一方、そういう連中に流斗の裸を見せたくないという狭い心もないではなくて、なかなかに心中は複雑である。とは言え、流斗は人におちんちんを見られるのが嬉しくて仕方のない子であるから、腰にタオルを巻きなさいとも言えない。
実際、人の視線を捉えて離さない魅力が流斗にはある。こればっかりは仕方のないことであるのだ。
お互いの身体と頭を洗い終えて、「露天風呂に行こうか」とぼくが手を引く。羨ましげな視線を浴びながらひんやりとした露天に移動したが、わざわざ付いてくる男も数人。……まあいいさ、見たいだけ見るがいい、この子に触れられるのはぼくだけだ。そんな思いを内心に抱きながら露天風呂に浸かって、ぼくだけの天使はぼくの腕にもたれて「あったかくて気持ちいいねえ」とくつろいだ表情を浮かべる。内風呂から移動してきた連中は無遠慮な視線をぼくと流斗に向けてくるが、ぼくは其れら一切を無視することにした。
と。
「やあ、ユーイチくんじゃないか」
聴き覚えのある声に驚いて顔を上げて、ぼくは思わず「あっ」と声を出した。さすがに腰を上げることはしなかったけれど、
「これは、その、……こんばんは」
などと口ごもる。胸毛の生えた、威風堂々たる体型のおっさん、……制服を脱いでも身に纏う刑法が迫力となる、あの交番の、
「あ、おまわりさん」
である。流斗は愛想良くご挨拶する。流斗の声を聴いて同じ浴槽に浸かっていた数人の男がそそくさと立ち上がって逃げるように出て行った。
おまわりさんはサウナ上がりらしくほこほこと身体から湯気を立てている。
「隣、いいかい?」
「え、ええ、どうぞ、もちろん」
ぼくは、堂々としていればいいのだ。だって、流斗のご両親に依頼されて一緒にいるのだから。
「君はこの間の坊やか」
流斗を思い出したらしく、おまわりさんは気安く流斗の濡れ髪を撫ぜる。流斗がにこにこ微笑んで、
「お兄ちゃんにお願いして連れて来てもらったんだよ」
と屈託なく答えるのに、ぼくは「ご両親が急用で家をあけなければならなくなりまして、私がお世話することになったんです」と付け加える。
「ほう、そうなの」
「あれからね、お兄ちゃんと仲良しになったんだよ。お勉強見てもらったり、おうちに遊びに来たこともあるんだよ」
おまわりさんのぼくを見る目は、シンプルな「感心」に彩られていた。ぼくと流斗の言葉は全て事実だ、それだけに、力を持っているのだろう。
「ここへはよく来られるんですか?」
ぼくの問いに、「まあ、時々ね」と気持ちよさそうに顔を湯で洗っておまわりさんは答える。
「ほら、ここは子供もよく利用するだろう。……まあ、大概は親が一緒だから心配いらないとは思うけどね、たまに子供らだけで来るのもいるから。先日の声掛け事案もあったことだし、多少はね」
濁した言い方ではあるけれど、おまわりさんの示唆するところは判る。ぼくは温かなお湯の中にいながら、ひやりとするものを感じた。
「ほら、ああやって子供だけで来たりする。もう九時を回るのに」
とおまわりさんが視線を向けた先、曇りガラスの向こう側から確かに内風呂から二人連れの少年が喋りながらやってくる姿が見える。壁の時計を見れば九時は大きく過ぎている。
ぼくもまた、最近の子供たちが宵っ張り傾向にあるのを好ましくは思っていない一人である。とは言え今夜と明日の夜は多分、夜更かしをしてしまう。夢の中でさえも会えない天使と布団に入るのだから仕方がない。
そんなことを思いながら、露天風呂へとつながる引き戸を開けた少年の姿を見て、「あ」「あっ」とぼくも流斗も揃って声を上げた。
「昴兄ちゃんと才兄ちゃん!」
波を立てて立ち上がり、流斗が手を降る。二人もすぐにぼくらの存在に気付いた。
「知り合いかね?」
「はい、あの……、先日の件があったとき、流斗を送り届けた先の子です」
二人は同時に、ぼくが一緒にいるおまわりさんに不審げな視線を送った。更に同時に起こったことはと言えば、まだ執念深く流斗の裸を狙うために露天風呂に残っていた男たちの視線が腰にタオルを巻いた昴星と才斗の身体に集まった。流斗も美少年だが、昴星と才斗もまた違った趣の美しさを纏っているわけで、ショタコンとしては当然の反応と言える。
「おにーさんたちも来てたんだ?」
「こちらは、ええと、坂倉交番のおまわりさん」
とぼくが照会すると「あー」と昴星は合点の行ったような顔をし、才斗は少しばかり緊張を催したようだ。昴星は何の躊躇いもなく腰タオルを外して短くて小さなおちんちんを男たちの目に披露して湯船に浸かり、才斗は周囲を憚りながら前を手で隠す。
「この二人は、あそこの小学校の子供たちです。ご両親は不在がちで……」
とぼくが解説を加えると「ははあ」とおまわりさんは納得したような顔で頷く、
「流、明日から温泉なのにこんなとこ来なくてもいいのに」
「だってぼくお風呂大好きだもん、だからお兄ちゃんに連れてってってお願いしたの」
ぼくの左隣に流斗、その向こうに昴星、更に隣に才斗が座る。ぼくの視線は自然と才斗の、まだ見ぬ場所へと誘われたが、そこはきっちりとガードされていて伺うことは出来なかった。
「あんまり遅くまで遊んでいてはいけないよ」とおまわりさんは二人に声をかけてから立ち上がり、「じゃあ、私はお先に」と子供たちをぼくに託した。ぼくは頭を下げて、おまわりさんの熊のように毛深い背中が内風呂の方へ消えるのを見送った。
やっと、緊張がほどける。それは周囲の男たちも同じだったようで、寝湯や打たせ湯に避難していた連中が徐々にぼくらの浸かる浴槽へと戻ってくる。
「あちー」
と昴星が早くも汗びっしょりになって、岩畳状の風呂脇に仰向けになった。もちろんおちんちんを隠そうとはしない。ショタコン男どもには格好の観察対象となるが、昴星はまるで関心を向けない。そのことに気付いたらしく、流斗も「ぼくも暑くなっちゃった」と縁に足を広げて座る。そういう二人を、才斗は咎めずに黙っている。
「……冷や汗かいたんじゃないですか」
額に浮かんだ汗を掌で拭って、無表情のまま才斗に問われた。ぼくは素直に「うん」と頷く。
「あの人は、あなたがそういう人だってこと、全然気付いてないみたいだった」
才斗はぶつりと呟き、浴槽を見回す。
「あー、涼しくて超きもちー」
仰向けの昴星はへらへら笑いながらお腹に手を当てている。おちんちんをあらゆる角度から見せびらかしているのだが、どうせ減るもんじゃねーしと思っているに違いない。
才斗は溜め息を吐いた。
「……周りに、あなたみたいなのがたくさんいるのに」
流斗が耳ざとく、「でも、お兄ちゃんだけはいい人だよ。ね?」と言葉の最後にはぼくに微笑みかけた。
また新しい子供、今度は父親に連れられた流斗よりももっと幼い子が入ってきた。それぐらいの子供が好きな男は、昴星からそちらへ視線を送る。
「才兄ちゃんたちは、この後どうするの?」
「どうするって……、帰って寝るだけだ。明日の朝はおれもそんな寝坊出来ないし、昴星だってそうだからな」
流斗は「そうなんだ。ちょっと残念」と言う。「才兄ちゃんたちもお兄ちゃんとこに泊まればよかったのに」
「二人で過ごす時間も必要だよ」
ぼくは先回りした。才斗にじろりと睨まれたが、きっと事実だったろう。
「とにかく……」
才斗も立ち上がる。きっちりと前を隠している。昴星の肩を揺すって「こんなとこで寝るな」と起こしてから、
「明日からは……、本当に気を付けて行って来てください。あなたはこいつらの『保護者』なんですから」
タオルを巻き直し、厳しい目でぼくに言った。ぼくは「はい」と素直に頷く。そうなのだ、楽しんでばかりではいけない。大好きな誰かと一緒に過ごせる時間は。とても大切で壊れやすいもの。それだけに、慎重さを欠いてはいけないのだ。
あのおまわりさんは事情を知らないから良いとして、才斗は全てを知った上でぼくを信頼してくれているのだ。昴星が心から愛し、流斗の尊敬するこの少年を裏切ってはならないと、ぼくは自分の肝に命じた。
「ちょっと寒くなっちゃったな。才斗、サウナ行こうぜ」
肩にタオルを掛けた昴星が才斗の手を引っ張る。「おまえすぐ『暑い出る』って言うだろ……」と言いつつ、足を上げて風呂から出る才斗は、当人が思っている以上に昴星への愛情がにじみ出ているように見える。
それなのに、昴星は流斗にちらちら目配せしている。
「スキあり!」
流斗が声とともに、ずっと隠されていた才斗の下半身が露わになる。ぼくの目と鼻の先、ふるん、と揺れたのは、その年の男の子の平均値を少し上回っているであろう、肌色の陰茎だ。まだ皮は剥けていない、毛も生えていない。昴星や流斗よりもずっと大きいけれど、ぼくの目にはとても可愛く映る、才斗のおちんちん。
初めて見た。
「こっ、こらバカ!」
慌ててタオルを取り戻そうとするけれど、流斗はひょいと昴星にそれをパスする。「いーじゃん、毛ぇ生えてねーんだからフルチンでさー」
くるくるとタオルを回しながら、いっそ鼻唄でも奏でそうなぐらい軽やかな足取りで、正々堂々ふりちんの昴星はサウナに向かう。才斗は「……本当に、気を付けてくださいよ」と赤い顔で言い捨てて、慌てて昴星を追って行った。
スーパー銭湯からの帰り道、流斗は寄り道をしたがった。もちろんそれは想像していたし、楽しみにもしていた。どうせ部屋に帰ってからもう一度お風呂に入ることになるだろうとは思っていたし。
普段以上に周囲に気を配りながら、ぼくらは城址公園へと向かった。十時を過ぎて、もう全く人けがない。街全体が眠りに就いているかのようだ。ぼくと流斗にとってはお誂え向きの時間である。
ところで城址公園はその名の通り、この街をかつて拠点としていた地方の小武将の城跡を山頂に備えた小山である。ここが取り立てて観光名所にはなっていないのは、その武将が歴史の行間にさえ名前の現れないごく小さな存在であったからで、この公園にしたってやってくる人は少ない。鬱蒼とした幾つかの散策路の他には、森の中にブランコやシーソーなどがあるぐらい。だから昴星たちもここを「秘密基地」にして思う存分遊ぶことが出来るのである。
ぼくが昴星と、そして流斗と出会ったのもこの公園の中だ。
「ね、お兄ちゃん」
頼りない灯りが一つ点るだけのブランコの側で、背中を屈めてキスをしたぼくに流斗が甘えた声を出す。
「ぼく、ここでおちんちん出しちゃダメ?」
露出好きの少年が、いよいよ本領を発揮しようとしていた。きっとスーパー銭湯でおちんちんを見せびらかして、火がついてしまったのだろう。
ぼくがいいよと頷くと、嬉しそうに半ズボンのチャックを開けてパンツを覗かせる。
「撮って」
流斗がぼくのためにたくさん用意してくれた、替えのパンツの一枚目は、鮮やかな黄色のカラーブリーフだ。ゴム部分はブルーで縁取られた、なかなかおしゃれな一枚である。
流斗はブランコに座って、社会の窓を大きく開く。ぼくはカバンからカメラを取り出した。ディスプレイで確認したが、フラッシュを焚かなくてもはっきり写りそうだ。
三枚、パンツの写真を撮らせた流斗はすぐにおちんちんを引っ張り出した。もうすでに普段より一回りほど大きくなっているのが判る。
せっかくの、美少年の野外露出ショーだ。ぼくはすぐ動画撮影に切り替えた。それに気付いた流斗は、ゆっくりとブランコを漕ぎながら、
「いっつもね、ひとりのとき、誰もいない公園でこうやっておちんちん出してみるんだ。誰かに見つかったらどうしようって思うんだけど、どきどきして、すぐこんな風に大きくなっちゃうんだ」
と滑らかな声で語り始める。
「一人のとき、他にはどんなことしてるの?」
「んっと……、オモラシしたり。でもオモラシして帰るとおかあさんに怒られちゃうから、ちゃんとズボンとパンツぬいでするときもあるよ。あのね」
ひょい、とブランコから下りて、流斗はズボンのボタンを外すと、どちらも足元まで下ろしてしまった。
「おトイレで、こうやってね、お尻出してオシッコするの。みんなに見られながらオシッコするとすごく気持ちよくって、すっきりするんだよ」
そう、ぼくに教えてくれながら、流斗は思いついたように薄手のセーターとシャツも脱いでしまった。靴下と靴を履いている以外は、一糸纏わぬ全裸である。
「えへへ、お外ですっぽんぽんになっちゃった」
嬉しそうに、流斗は笑う。
「昼間は、流斗とおんなじくらいの子がちゃんと服着て遊ぶ場所なのにね?」
「うん。ダメだよね、こんなとこで大きくなったおちんちん出したりしたら、おまわりさんに怒られちゃう」
そう言いながらも、流斗はブランコに立ち上がる。斜め上を向いたおちんちんを誇らしく見せつけるように、勢いを付けるたび腰を突き出して。
「楽しい?」
ぼくの問いに、大きくブランコを漕ぎながら流斗は答える。「うん! 真っ暗だから、空飛んでるみたい!」
なるほど、それは言い得て妙であるが、「手離しちゃダメだよ」
慌ててぼくは言った。昔ぼくはブランコから手を離してアイキャンフライして、大怪我したことがあるのだ。
流斗の振り子に合わせてカメラを動かしながら、焦点はずっと流斗のおちんちんに合わせている。十往復ぐらいしただろうか、不意に、斜め上を向いたおちんちんから、暗くてもはっきりと濃い金色をしていると判るオシッコが放物線が噴き出した。
「あはは、お兄ちゃん、見てみて、オシッコ、すごーい」
前から後ろに身体が引かれるときは、流斗の描く軌跡を追うようにオシッコが滴となって下土に散らばる。
しかし、後ろから前に漕ぎ出すときには、流斗は自分自身の身体でオシッコを浴びることになる。慣性の法則である。もっとも、流斗がそういう言葉を習うのはもっと先のことだし、流斗は自分の膝頭やお腹を濡らす液体をちっとも嫌がってはいないようだ。
緩やかに速度を落とすブランコの、きい、きい、鳴く音と、まだ続く流斗の放尿音が虫の声ばかりの秋の公園にしばらく響いていた。運動を停めたブランコの上にたったまま、すっぽんぽんの流斗はまだオシッコをして、最後にぶるっと震えた。
「えへへ、いっぱいオシッコしちゃった」
「すっきりした?」
「うん、えっとね、半分、……じゃなくて、三分の一くらいすっきりしたよ」
三分の一? ぼくが訊き返すより先に、ぼくの腰にくっついて、「もっと他のも出しちゃダメ?」流斗は甘える。
なるほど。
「いいけど、ここじゃダメだよ。みんなが遊ぶところだからね、犬だってお散歩のときにうんちしたら、飼い主が片付けなきゃいけないんだし」
「じゃあ、……ぼくたちが初めて会ったとこ、行こうよ」
言うなれば思い出の場所、あのトイレだ。
「そこまで、すっぽんぽんで行っちゃダメ?」
一瞬、判断に迷う。いや、ダメに決まってるんだけど、……流斗としてはせっかくのチャンス、そうしたいに違いないのだ。
誰かに見られでもしたらぼくは一体どうなる。
しかし、ここが安全というわけでもない、それはあのトイレにしたって同じこと。安全地帯はぼくの部屋しかないのだ。
「ぼくの後ろを歩くんだよ。誰か来たら合図するから、すぐに草むらの中に隠れて……」
「うん、じゃあそこでうんちしてる。そしたら誰かに見られても『おトイレまで間に合わなかったから』って言えば大丈夫だよね?」
そうだろうか。
そうだと言うなら、そう信じるほかない。幸い流斗は演技派だ。罪のないつぶらな視線と共に発される言葉には、信憑性があるはず。
ぼくは緊張しながら、流斗の二メートルほど先を歩いた。後ろから誰かが来るかも知れないと四方に警戒の網を張り巡らせながら、入り組んだ山路の階段を降りて行く。
「お兄ちゃん」
と、時々流斗がぼくを呼ぶ。流斗はずっと勃起したままで、ぼくに写真を撮ってと強請る。ぼくは緊張と興奮の両方で胸がいっぱい、息苦しささえ感じながら、夢中になってシャッターを切った。暗闇の中に佇む全裸の美少年の微笑には、倒錯という言葉では括りきれないほどの暗黒のパワーがあるように思われる。正面から、横を向いて、そしてお尻を向けて顔だけこっちに向けて……、様々なポーズの写真を、ぼくは撮ったし、流斗も自分の美を惜しげもなくさらしていた。
ブランコの広場から、普通に歩けば五分ほどで着くトイレまで、途中の寄り道があったとは言え三倍近い時間を要した。ぼくたちはどうやら誰にも見つかることなく辿り着いた無人のトイレの個室で一度キスをした。
「お兄ちゃん、さっき撮った写真見せて」
流斗が言うから、ディスプレイをアルバムモードにして渡す。もう二十枚近く撮影してしまった。この分だとあと二日で一体何枚撮ることになるのだろう?
「あ、ちゃんと写ってる」
「いいカメラだからね。暗いところでも流斗のことちゃんと撮れるように……」
「んーん、そうじゃなくって、ここ」
流斗が指差して見せるのは、少し開けた場所で撮影した一枚。立木に右手を当ててお尻を向け、振り向いた流斗を捉えた写真だ。可愛らしい自分のお尻を、流斗は嬉しそうに指差した。
「おっきくできる?」
「大きく……、うん」
二倍、五倍と拡大して行ったところで、「お……」と思わず声が漏れた。
桃のような流斗のお尻から、黒いものが顔を覗かせている。
「……いつの間に……」
流斗はえへへと少し得意げに笑った。
「お外でうんちしてるとこ見たら、お兄ちゃんもどきどきするでしょ? ずっと一緒にはいられないけど、お兄ちゃんが一人のときにもさみしくないといいなって」
優しい子であることはずっと前から知っていたのに、いま改めて確認させられる。こんなぼくに、こんな優しさを送ってくれる流斗を見て、いとおしさが溢れる。
事実、不意を打たれてぼくのペニスはジーンズの中でガチガチに硬くなっている。
「ぼくがうんちしたら、お兄ちゃんのおちんちんちょうだい」
流斗はぼくの思いを見透かすように言って、ぼくにお尻を向けて便器を跨ぐ。広がったお尻の穴の周囲には、確かに先程の排便の余韻がこびりついていた。
ぼくはすぐに動画撮影を開始する。もちろん流斗はそれに気付いていて、
「ぼくねえ、ちゃんとこういうおトイレでも上手にうんちできるんだよー」
初めてのとき、和式は苦手と嘘をついていた。あの子は「りょうた」と自称していたけれど、いまぼくの目の前にいる「流斗」と同じくらいに愛らしくて魅力的な男の子だった。
お尻から、
「出てきたね……、いつもより少し柔らかいかな」
「うん、ごはんたくさん食べたもん」
それでも形崩れのない便を垂らしながら、流斗は言い、ロールペーパーを左手に取る。長く垂れ下がったそれを掬い取るように掌に乗せ、お尻と左手の両方を慎重に動かして、初めての日にして見せてくれたのと同じ、「手のひらにソフトクリーム」をして見せようと言うのだろう。
「あ……、上手にできそう……」
流斗が集中と便を切らさないように、少しずつ成形して行く様を、途方もない気持ちになりながら見ているぼくはいますぐにでも自分だけでも気持ちよくなってしまいたい衝動に駆られている。
自分で言うのも何だけど、……こういう流斗に興奮するのは多分、ぼくだけだろう。スーパー銭湯にはあれだけのショタコンがいて、みんな流斗の下半身に興味津々ではあったけど、ではこの美少年が自分の手のひらに巻糞を作るのに神経を使うような、ちょっと(かどうかは判らないが)変わった性癖を持っていると知って、魅力が減じないと思う男がどれぐらいいるだろう?
ぼくだけでいい、と思う。ぼくだけこんな風に萌えていればいい!
「んー……、んっ、と……」
流斗がお尻の穴を引き締めて、長く繋がった便を切った。
「どうかな、できたかな……」
手のひらに載っているものが宝石であるかのようにそっと足の間から、自分の視界までそれを運ぶ。後ろから見ていたぼくには流斗の作り出したものの完成度についてはもうわかっていたけれど、何も言わなかった。
「わあ……、ねえ、お兄ちゃん、すごいのできた!」
嬉しそうに掲げる、小山のようなそれは、流斗の努力の甲斐あって、見事なとぐろを巻いていた。
「うん、すごい上手に出来たね」
「すこしやらかいほうがいいのかなあ? でも、いつものよりくさいね」
えへへ、と笑ってその「臭い」ものを手のひらに載せたままピースサインを送る。それから形を崩さないように、そっと便器の中に置いた。こちらを向いた流斗のおちんちんからは、待ちわびていたようにオシッコが噴き出す。ぼくのジーンズが危うく濡れかけるところ、流斗は砲身を自らの身体にぴったりとくっつけて、お風呂に入ったばかりの身体を三十六度ほどのぬるま湯で濡らしてしまう。「汚れた」なんて思わないのは、やっぱり多分、ぼくだけだろう。
「いっつもうんちするとオシッコもいっしょに出ちゃうの、お兄ちゃんもいっしょ?」
「うん、昴星もそうだよね」
「そうだっけ……、じゃあ明日は昴兄ちゃんのうんちするとこ見せてもらおうよ」
そう言いながら、流斗は丁度目の高さにあるぼくのジーンズの股間に手を伸ばす。
「えへへ……、ズボンの上からでもお兄ちゃんのおちんちんあったかいのわかるよ」
上手にベルトを緩め、ぼくのトランクスからペニスを取り出す。カメラ目線でキスして、「いただきまーす」と咥え込んだ。
「……おいしい?」
訊くと、微笑みが帰ってくる。右手を添えて、紅い舌で亀頭をちろちろと舐める流斗の足の間から、またぬちぬちと生産の音が個室の中に響き始めた。
同時に、流斗は左手でやや不器用に自分の勃起を弄り始めている。
「おちんちんもガマンできなくなっちゃった? まだうんちしてるのに」
「んへ……、らって」
唾液に塗れたぼくのペニスにうっとりと頬ずりしながら、
「お兄ちゃんのおちんちん、おいしいし、いっぱいえっちなことしてたらガマンできなくなっちゃうの、しょうがないよ……」
おちんちんがピクピクするから、あれだけ長いものを一度に出して見せた流斗の肛門も一緒に力が篭って、便器の中にはぶつ切りになった茶色い便がぽとぽとと落ちる。
ガマンは身体によくない、天使のように愛らしい見目をした流斗だから病魔にまで好かれてしまっては困る、……などとぼくはバカなことを考えて、だったら流斗の好きなようにオシッコだってうんちだって出してしまえばいいなどという結論に至る。
もちろん、精液まで含めて。
少年のオナニーはいとおしい魅力に満ち溢れている。それはたとえ排便中であるからと言って、少しも減じることはない。
「流斗、飲みたい?」
「ん……、のみたい」
ぶっ、とガスの音が挟まる。そしてまた、ぬちぬちと音が聴こえて来る。たくさん食べていたから、たくさん出て来るのが自然、溜め込まないほうがいい。ぼくにしたってそれは同じで……、どういうことかと言えば、今日は既に一回流斗に飲んでもらってはいるけれど、それからお風呂で、昴星と才斗のおちんちんまで見てしまった、流斗と二人で「大冒険」もした。それだけに溜まっているものがあるので。
「んんっ……!」
その唇に包まれた亀頭からぼくの発射した粘液の味を感じて、流斗の身体がぶるっと震える。ずっと動いていた右手は自分のおちんちんを包み込むように握り締めて、
「ん、んふぅ……ン……ん……んん」
うんちを一旦停めて、ぼくの精液を味わいながら射精しているのだと思う。
「んく」
流斗が喉を鳴らした。呑み込んでくれたのだ。ありがとうねとぼくが髪を撫でる手を嬉しそうに摺り寄せてから、
「お兄ちゃんも、ぼくのせーし飲みたい?」
と見上げて訊く。
立ち上がった流斗はおちんちんの皮の先っぽを摘まんでいた。自分の皮の中に、精液を閉じ込めていたのだ。指を離すと、本来ならオシッコが噴き出てくるその隙間からどろりと白濁した液が溢れ出す。
撮影も忘れて、ぼくはまだ硬いそこにしゃぶり付いた。思い切り吸い上げて、僅かに甘ささえ感じられるような精液を味わうぼくの耳に、緩んだ肛門から次々とうんちが便器に落ちる音が届いていた。
部屋に帰ったのはもう十一時で、明日の朝のことを考えればあまり夜更かしをするわけにも行かない。けれどもこのまま寝てしまうことはぼくにも流斗にも考えられない。流斗の身体も、先程のブランコでオシッコを浴びてしまったから洗わなければいけないし。
一休みの意味も籠めてゆったりと平和なバスタイム、そして流斗は二度目の着替え、三枚目のパンツに穿き替えるのかと思いきや、
「それまた穿くの?」
来たときに穿いて、スーパー銭湯で脱いだものを袋から出しておちんちんを隠す。
「うん、でもオモラシはしないよ。パンツびしょびしょにしちゃったらお兄ちゃんのお部屋オシッコくさくなっちゃうから」
それは、別にそれほど困ることではないけれども。
「それにね、一日穿いてちょっと黄色いパンツのほうがお兄ちゃん嬉しいかなって」
流斗はトランクス一枚のぼくのあぐらの中に座って言う。
「黄色いの?」
「うん。裏っかわ、見る?」
流斗は言って、ウエストゴムを引っ張って見せる。なるほど。
「かいでみてもいい?」
ぼくが訊くと、ひょいと布団の上に立ち上がる。お尻に手を回して表面から嗅ぐと、確かにひそやかなオシッコの匂い。脱がせて裏側をもう一度覗き込むときには、ぼくはもうこの数時間で二度射精した後だということも忘れて勃起している。
「不思議な感じだね。おちんちんは石鹸の匂いなのに」
まだ小さくて柔らかい幼茎に鼻を当てて嗅ぐ。包茎だが、洗ったばかりだからそこは甘い花の香りである。もとより昴星に比べてここがそれほど臭くならないのが流斗ではあるけれど。
「お兄ちゃんがきれいにしてくれたんだよ」
その通りで、ぼくは流斗の身体の隅々までを丁寧に洗った。少年の肌の素晴らしいまでの瑞々しさをぼくは知っていたはずなのに、改めて、弾かれた水が珠となって転がる様子に息を呑んだ。
まだほんのりと温かい身体を横たえて、ピンク色、でも昴星より少し赤みの濃いおっぱいにくちづけをした。
「お兄ちゃん、こっちもちゅーして」
流斗は柔らかな癖のある前髪を上げて、おちんちんの根っこを摘まんで揺らす。たっぷり余った皮がふるふると弾む様は、何だかいかにも甘いゼリーのお菓子みたいに見える。リクエストの通りにしてあげたら、「タマタマも」
とおちんちんをひっぱって普段よりだらしなく伸びた、薄皮白珠を晒す。もちろん、左右に一度ずつキスを落とす。
流斗はそれだけでは満足しなかった。ブリーフの引っかかった太腿を抱えて、足の間を全てぼくに見せる。
「うんちの穴も?」
「うん、お兄ちゃんがきれいにしてくれたとこだよ」
流斗はぼくがお尻を舐めてあげるととても喜ぶ。とはいえこれは昴星も同じで、ぼくとえっちな時間を繰り返し過ごしている間にこの子もまた、この場所が性感帯になってしまったのかもしれない。
さっきあれだけ大量の、少し柔らかめでそれだけに臭いうんちを落としていたとは思えないほど、ピンク色の孔は花の蕾のように清らかだった。
当然のことながら、舌を当てることへの抵抗は全くない。何より、求められていることがそこのひくつきでわかってしまうので。
「ん……、ありがと、お兄ちゃん……」
お安い御用とはこのためにあるかのような言葉である。流斗のお尻の穴を左右に広げて、丁寧に舐めてあげながら、いとおしさがどんどんとこみ上げる。この子のような可愛い男の子と肌を重ねる幸せを噛み締めるための奥歯を開き、ぼくはひたすら流斗の幸せだけを願って、狭い穴の入口から舌を差し込む。
やっぱり昴星とするようなことは出来ないだろう。けれどこの子との縁がこれからも続いたなら、ひょっとしたら。
「お兄ちゃん、今度はお兄ちゃんが横になって」
流斗が求めるまま、布団に仰向けになる。シックスナインの体勢はぼくらにとってもうお馴染みだ。そう思っていたけれど、流斗は横たわったぼくの腰に跨ると、「いっしょにきもちよくなろうね」とタマタマでぼくのペニスを撫でるように擦り付け始めた。
弾力のあるタマタマがふんわりと亀頭に加える愛撫は、不思議な幸福感があった。
「えへへ……、お兄ちゃんのおちんちん、あったかぁい……」
「そう? ……流斗のタマタマ、ぷにぷにしててすっごく可愛いね」
お風呂で温まってだらしなく弛んでいた場所は、快感を覚えて再び丸くなっている。ぴくん、ぴくんと上を向いたおちんちんの砲身は、先が少し濡れていた。
「お兄ちゃんのとぼくのと、形も大きさもぜんぜん違うねぇ。でもおんなじ男の子のおちんちんなんだよね……」
流斗はいとおしげにぼくの先端からも滲み出た淫液を指先で亀頭に塗り広げてから、自分の皮を剥き、ぼくに身を重ねるようにして、「見て、お兄ちゃん。おちんちんでちゅーしてるの……、お口でするみたいに糸ひいてて、すっごくえっち……」とうっとりと呟く。ぼくは流斗の乾き始めた髪をなぜながら、
「オモラシ、してもいいんだよ?」
と言った。
「え……、でも……」
「お風呂場でするのかなって思ってたら、しなかったから。ほんとはしたいんでしょう?」
流斗は少し恥ずかしそうにこくんと頷く。
「お風呂場に干しておけば、匂いもそんなに気にならないと思うし……、明日の朝には乾くと思う」
ぼくがそう背中を押すと、「お兄ちゃん大好き」とキスをくれて、脱いだばかりの黄色いブリーフに足を通した。
「黄色いパンツにオモラシしたらどんな風になるのかな」
ぼくが訊くと、「んっとね、あんまり色は目立たないの。でもにおいはちゃんとするよ」と、既に試したことがあるのか詳しく教えてくれる。
浴室は、まだ濡れている。流斗もそれは理解しているらしく、ぼくらは二人でトイレに入った。
「ねえお兄ちゃん、女の子って黄色いパンツ穿く?」
言わんとしていることはすぐわかった。
「普通に穿くと思うよ。いまの流斗の穿いてるみたいな可愛い色のパンツ」
「ほんと? じゃあ……、お兄ちゃん、ぼくのパンツ見てどきどきする?」
訊かずもがな、言わずもがな。流斗は勃起しっぱなしのぼくのペニスを見てにこりと笑うと、便座の上にさっきの公園のトイレでのように後ろ向きにしゃがんだ。
「ああ……、本当に可愛いね、流斗のお尻」
掌で引き締まったお尻を撫ぜて、股下に辿る。お尻の穴の窄まりのところで張り詰めた生地をくすぐりながら、後ろからおっぱいに手を回す。昴星のように柔らかくはない、けれど、小さな小さな乳首がぼくの指で捏ねられてツンと尖っている。
「あぁん……」
「感じる?」
「……感じる?」
「ええとね、気持ちよくなることを、『感じる』って言うんだよ」
流斗は一つ知識を蓄えて、
「ん……、すごく感じる……」
とぼくとキスをしながら答える。
「感じると、女の子はどうなっちゃうのかな?」
呼び水を出しながら、くしゅくしゅとお尻の穴を指先で撫ぜると、聡明な少年は自らの身体を少女のそれに変えて見せる。
「ん……、おまんこ……、ぬれてきちゃった……」
男の子のシンボルから噴き出すさらりとしたせせらぎがさっきぼく自身に擦り付けられていた部分を経て、ぼくの指の当たる場所に至った。
「こんなに濡らしちゃうんだ? 流斗はえっちな女の子だね」
「んん、だってお兄ちゃんの指、えっちなんだもん……」
「おまんここんなにビショビショにしちゃうってことは、クリトリスも大きくなっちゃってるんじゃないの?」
流斗はぼくの声に応えて便座の上に座り直す。ブリーフの前開きから、愛液に塗れた突起を引き出して覗かせる。
「ぼくのクリトリス、ぴくぴくしてる……、にゃっ」
美味しそうと思った次の瞬間にはもう、口の中にあった。
「やん、ダメっ、おに、ひゃっ、おひおふいひゃうっ」
流斗は、一度覚えたことは忘れないようだ。ぼくの与える快楽も、少しも漏らさず覚えていてくれたらいい。
「んあぁっ……」
とぷん、と流石に少なくなり始めた「潮」を流斗がぼくの口の中に弾ませる。流斗が震えた息を吐く唇に、そのまま唇を重ねて、二人で分け合う。こんなに美味しいものを独り占めしてはバチが当たってしまう。
流斗はブリーフを脱いで、再びお尻をぼくに向ける。まだ熱が収まらないようにお尻を揺らめかせて、
「お兄ちゃんの、せーし、ぼくのおまんこにちょうだい」
と愛らしく強請った。
ぼくの右手はもう動き始めている。
亀頭を愛液に塗れた流斗の「おまんこ」に押し当てて、我ながら浅ましいとしか思えない勢いで扱き、擦り付ける。
「ふあ……、お兄ちゃんのおちんちん、すっごくあったかい……」
流斗も余韻の去らぬクリトリスを握り締めて、お尻をぼくに擦り付けるようにしながら自慰に耽り始めた。
ぼくらのフィニッシュは、図ったわけでもないのに同じタイミングで訪れた。流斗のおまんこがキュッと窄まったところに、ぼくは自分の欲をそのまま破裂させる。
「あ、あっ、……お兄ちゃんのっ、お兄ちゃんのせーしおまんこでびゅくびゅくしてるっ……!」
……せっかくお風呂に(二回も)入ったのに、三回目が必要になった。
「でもぼく、お風呂入るの大好き。お兄ちゃんといっしょだともっとたのしいな」
流斗はそう言ってくれて、ぼくらは日付も変わろうかと言う頃、やっと布団に潜り込むこととなった。流斗はほかほかと温かくて純粋な意味でいい匂いのする身体を丸めてぼくにくっついて眠りに就く。
ぼくはその身体を優しく包み込んで、目を閉じた。幸せな夢が見られそうである。
慌ただしい朝になった。と言うのも、夜更かしをしたぼくと流斗、揃って一時間近く寝坊をしてしまって、旅支度をすっかり整えた昴星が部屋の呼び鈴を鳴らしたとき、ぼくらの頭にはまだ盛大な寝癖がついていた。
「どーせ夕べ超遅くまで遊んでたんだろー」
昴星は意地悪な微笑みを浮かべて言い、大急ぎで着替えをしてトーストを囓るぼくらをよそに、部屋のあちこちを探り始めた。前夜の余韻を見つけようというのだろう。
彼は早速浴室に干した流斗の黄色いブリーフを発見した。「すげー、黄色いので漏らすとこんな風になんだなー……」と感心したように眺める傍、ぼくはお皿を洗い、流斗はせっかく穿いた半ズボンを脱ぎ始める。
「あれ? 流、そんなパンツ持ってたっけ?」
夕べ寝る直前に流斗が穿き替えたのは白地に濃淡のグリーンが細いボーダーを描くもの。ボーダーのブリーフはおちんちんの輪郭が薄っすらと覗けて非常に愛らしいものだ。
「うん、おこづかいで買ったの。いっぱい汚してお兄ちゃんにあげようと思って」
お皿を洗う手元が狂いそうになる。
「いっぱい汚すって、それでオモラシすんの?」
「えへへ」
流斗は押入れを開けて、まだ大量に残っているオムツを引っ張り出す。
「これ着けてたくさんオモラシしたら、びちょびちょになるかなって」
昴星が「はー」と納得しつつも気圧されたように呟く。
「そうだ、昴兄ちゃんもいっしょにオムツしようよ! おそろいだよ」
昴星はこの間、まさしくそうやってオムツの中でブリーフをオシッコの海に漬け込んだ。皿洗いを終えたぼくは、「どっちにしても、オムツは持って行かなきゃいけないと思ってるんだ。その、……昴星、オネショしちゃうでしょ?」
言うと、昴星はこくんと頷く。
「旅館着くまで何回オモラシできるかなあ」
と言う流斗に、「それ、一回しか出来ないぞ。二回すると外にちょっと漏れて来ちゃうんだ」と先日あやうくクラスの女子にオモラシがバレかけた昴星が解説を加える。
「そしたらお兄ちゃんにみんなの見てる前でオムツ取り替えてもらうからいいもん」
流斗はどこまでも男らしい。昴星は「うーん……」とためらうが、結局押し切られる形で彼もブリーフの上から流斗の手でオムツを着けさせられてしまった。昴星が穿いていたのは、ゴムの部分まで白い普段着のブリーフであり、それも十分に愛らしい。
「そしたら、二人とも行こうか。電車の時間に間に合わなくなっちゃうから」
ここからバスでJRの駅に出て、特急で二時間。どこでもそこでも平気にオモラシをしてしまえる流斗を連れてそれだけの長い時間を移動することを考えれば、彼がオムツを着用してくれることはぼくにとってもまあ、ありがたい。さすがに電車の中でオモラシをされては、周囲の乗客の顰蹙を買うことになってしまう。
そういう次第で。
やや慌ただしいながら、ぼくら三人の一泊旅行が幕を開けた。オムツ着用の少年二人とショタコンの旅行である。どういったことになるのかということは、概ねご想像の通り。二時間の特急移動時間も退屈することはなかったのは、流斗と昴星がこの日一回目のオモラシをいつするのかということにぼくも含めてどきどきしていたからだ。正直ぼくは車窓に目を向ける余裕なんてほとんどなかったぐらいで。
ぼくらの席は指定席の四人掛けだったが、席を向かい合わせにしてもぼくらが目的の駅に着くまでとうとう四人目は乗って来なかった。「やっぱ才斗もいっしょに来りゃよかったんだよなー」と昴星が言った。ぼくは半分だけ同意する。彼が居てくれればよりこの旅行は安心なものになるはずだと思う。一方で、二人が思いっきり楽しむことは出来なくなるだろう。
流斗も昴星も、特急が一時間ほど走った辺りでそわそわし始めた。久しぶりに窓外に目をやれば、もう深い山の中で、特急は長い車体をくねらせながら疾走している。
「ここ、もう長野県?」
流斗が訊く。
「そうだね、もう山梨は過ぎた」
「ぼく、去年は山梨県でしたんだよ」
重要な部分は伏せても「何を」と問うまでもない。
「だから、長野県でするのはじめて」
「おれも」
昴星が頷いた。「……っていうか、電車ですんのがはじめてだ」
「ぼくは、わりといっつも。この間はバスの中だったし」
特急は、そのスピードを感じさせないぐらい静かだ。たたん、たたん、規則正しい音と、控え目な乗客の話し声だけが車内を流れている。三連休の初日ということもあって、席は九割がた埋まっていた。しかし少年たちの会話に耳を傾けている人は、多分いない。通路を挟んで向かいも、ぼくらの前後も眠っている様子だ。
「しー」
と流斗が指を唇に当てる。
ほんの小さな、……微かな音が、ぼくの隣から聴こえ始めた。規則正しい線路の継ぎ目の音をバックに、それは少年の秘め事の音色である。
ぞくぞくとした震えを催して、
「えへへ……」
流斗は笑って半ズボンの前を両手で抑える。
「出ちゃった」
その笑顔は、何度も言う、何度だって言うけれど、本当に無邪気な天使のごときもの。無垢である、オムツの中でおちんちんをオシッコの海に浸しているのに、これほど穢れのない笑顔でいられるって、本当にすごい。
「じゃー……、おれも……」
昴星はやや神経質にハーフパンツの前を摘み上げて行う。同じ音がその股間からしばらく響く間は、どうやらずいぶん前からしたかったらしい、安堵に緩んだ表情を浮かべている。
「大丈夫、かな……?」
ハーフパンツの中に手を入れて、オムツの表面を確かめたようだ。
「うん、大丈夫」
流斗もそれを真似る。流斗の場合はウエストのぴったりした半ズボンであるから、一度チャックを下ろすことになる。こちらとしては余計ハラハラしてしまうのだが。
「ね、お兄ちゃん、あとどれくらいで着くの?」
「あと、……えーと、三十分くらいかな」
「三十分あればもう一回出来るね」
え、と昴星は驚いたように向かいに座る流斗に顔を向ける。
「二回すると、外出てきちゃうんだぞ?」
「うん、だからするの。……おトイレの前で、ね?」
流斗は企みを抱いているとは思えないような透き通った笑顔をぼくに向ける。まあ、実際才斗がいたらこんなことも出来ないだろう。複雑なことではあるが、ぼくは黙って頷いた。
「おれは一回だけにしとこ。駅着いたらトイレで脱ぐ」
昴星は賢明にそう宣言したが、流斗がにこにこと微笑みながらその顔を見つめていることには気づかない様子だ。
山間を走り続けた特急がゆっくりと速度を緩め、温泉地の入り口の駅へ滑り込んだ。さすがに行楽シーズンの三連休とあって、大量の乗客を吐き出した特急は身軽な身体になって走り出す。
「ね、お兄ちゃん、おトイレ連れてって」
流斗がぼくの腕につかまってせがむ。「おトイレの入り口のとこで『二回目』するから」
ぼくは流斗の言葉の通り、トイレへと向かう。トイレは混んでいた。二人の少年の父親ぐらいの男性が多いが、それはつまり、二人と同世代の子供の姿も目立つことを意味する。列に加わるところで、
「お兄ちゃん」
と流斗が声を上げた。
その半ズボンの裾から、ポタポタと滴り落ちる液体。
「ああ……、間に合わなかったか……」
ぼくはあらかじめ用意していた言葉をそのまま口にした。
「ごめんなさい……」
しゅんと流斗は謝るが、男子トイレ中の視線を浴びるのはこの子にとってさぞかし気持ちいいことに違いない。
「しょうがない。……パンツ穿き替えよう。昴星、荷物持っててくれる?」
個室の方の列に並ぶ昴星に荷物を委ねて、ぼくは優しくその髪を撫ぜる。流斗は自分で半ズボンを下ろし、オムツの下半身を露出させる。奇異なものを見る視線がぼくらに集まっていた。
「せっかくオムツしてたのに、びしょびしょにしちゃった……」
「仕方ないよ。次から気をつけようね」
オムツの中にブリーフを穿いているのは益々怪しがられると思うから、オムツはブリーフごと脱がせることにした。小さなおちんちんを隠しもしない流斗の股間を、鞄の中から出したタオルで拭う。
冷静に見えるかもしれないが、内心ではどきどきしている。目の前の流斗のおちんちんにも鼓動は高鳴るが、なかなか進まない個室列の昴星にもぼくは緊張しているのだ。
特急の、最後の三十分、流斗と昴星はもう一杯お茶を飲んだ。というか、昴星は流斗にせがまれて、無理矢理に飲まされたと言った方がいい。流斗のおねだりに弱いのはぼくばかりではないようだ。
「どうする? このあと三十分バス乗るけど我慢出来る?」
流斗は心細そうな顔で首を振った。
「じゃあ、……しょうがないね」
外したオムツはブリーフと一緒にビニール袋に入れて口を縛る。新しいオムツを立ったまま着けさせるのに少し手間取っているぼくの耳に、個室列の方から小さなざわめきが聴こえてきた。
「昴星」
振り向いたところ、足元に水溜りを作って立ち尽くす昴星が居る。
ぼくは大きくため息を吐いて、周囲に「すみません」と頭を下げつつ、オムツ姿の流斗の側へと手を引いて連れて来た。
「流斗、駅員さんを読んで来られる? トイレを水浸しにしちゃったんだからね、掃除してもらわないと」
「うん」
頷いた流斗はぼくが止める暇もなく、オムツのままパタパタとトイレから出て行く。外から驚きの声が聴こえて来た。
昴星は真っ赤になって、震えて居る。想像していたとおりだが、やはり「二回目」をガマンすることが出来なかったのだ。意図的なオモラシはほとんど毎日のようにしているけれど、こんな風に本当にガマン出来なくてするオモラシはやはり恥ずかしいのだろう。
「もう六年生なんだからさ……」
昴星は唇を尖らせて何か言い訳をくちにしかけるが、それは止まった。何を言ったって仕方がないことを彼自身が一番理解しているのだろう。
ぼくは、オムツごと昴星のハーフパンツを引きずり下ろした。恥ずかしさに縮こまったおちんちんからは、二回分がすごい匂いとなって漂っている。年下の男の子が手を洗って、「すげーくせえ」とせせら笑ってトイレから出て行った。昴星は恥ずかしさを堪えながら両手でおちんちんを隠している。
「お兄ちゃん、駅員さん連れて来たよ」
「ああ……、すみません、ご迷惑をおかけしました」
ぼくは保護者として頭を下げる。ぼくの連れる二人の少年のもう一人が、どうやら駅員さんの想像よりも大きいので、呆れ、驚いているようだ。
トイレの外にも騒ぎを聴きつけた子供が集まっているようだ。女の子が何人も物見高く男子トイレであるに関わらず覗き込む。
「ほら、拭くから手をどけて」
「あ!」
ぼくは自分の中のサディズムを動員して昴星の手をどかす。たちまち短いおちんちんがふるんと揺れて手の中から零れる。
「お、にいさっ……」
ぼくは構わずタオルを動かして、「足も開いて。こっちもびしょ濡れじゃないか」などと言わずもがなのことを言いつつ足の間を拭く。
「お尻も拭くよ、後ろ向いて」
昴星の背後には、もう「大きい」のにオモラシをしてしまった少年への興味を隠そうともしない少女たちの視線がある。鏡ごしに見た限りでは、昴星と同世代の女の子もいるようだ。
「ほら」
「あっ」
キャ、と声が上がった。昴星はすぐに前を手で隠したが、ばっちり見られてしまったのだろう。
「男の子なんだから恥ずかしくないでしょう? それに、六年生にもなってオモラシしちゃったのが悪いんだよ」
六年生だって。うそー。などとさざめく声が昴星を包み込む。
それを羨ましく思ったのか、
「お兄ちゃん、ぼく、お尻まだなんかムズムズするよ……」
オムツ姿の流斗がそんなことを言い出した。
「ちゃんと拭けてなかったのかな……」
「うん……」
流斗は自らオムツを外してぼくにお尻を向ける。さらりと乾いたお尻を丁寧に拭いてあげる間、昴星はぎゅっと股間を握って俯いて、震えていた。
「昴星」
流斗のオムツを着け直して、再び声をかける。「ほら、昴星もこれ着けて」
ぼくの手のオムツに、真っ赤になって、
「お、おれはガマンできるよ!」
と声を上げる。
ぼくは譲らなかった。
「実際ガマン出来なかったんだよ? この後もバス乗るし、……それにね、どうせオネショするんだからオムツ一杯持って来てるし」
オネショ? 六年生なのに? ……ぼくが少女たちの耳目を意識してそういう言葉を発したのは言うまでもない。
先日、昴星が女子二人に辱めを受ける様子を盗み聴きしていたぼくとしては、少しずつ昴星に意地悪をするのが上手くなって来た自覚がある。元々流斗が極めて長けている分野のことで、二人と一緒に過ごす時間が増えれば自然と身につくものであるのかもしれない。
愛らしい顔立ちに反してとても男っぽい心根を持つ少年が、その実流斗よりも濃度の高いマゾヒスト気質を持っていて、しかも当人がそれに無自覚であるという、昴星のメンタルスペックは非常に甘美なものと言えるだろう。
「お、オネショなんてっ、しねーもん……」
「はいはい、いっつもそう言うね、昴星は」
ぼくはさっさと昴星にオムツを着けさせて、オシッコの付いていないハーフパンツを穿かせた。重要部分が隠匿されると女子たちは途端に興味を失ったように散らばって行く。駅員さんたちに三人揃って謝罪してトイレから出たところで、「可愛かったよ、二人とも」と囁いた。流斗は嬉しそうにぼくに擦り寄り、昴星は恨めしいような涙目で睨んだが、意地のぼろぼろになったその顔は大層愛らしいものだった。
それからしばらく昴星がご機嫌斜めだったのは言うまでもないが、その点のフォローは欠かさない。まず、事前にチェックを入れておいた美味しい和食ランチのお店でお腹いっぱい食べた。それから見晴らしのいい川沿いの道を、腹ごなしついでに散策した。これで七分程度は機嫌を直してくれたはずの上、送迎バスに乗って着いた宿が、
「えっ、ここ? えっ? マジで?」
と昴星が大きな目を何度も瞬かせるような、立派なものだったので。
「おれ、親と一緒に温泉行っても、こんなとこ泊まったことない」
部屋に通された昴星は呆然と呟く。八畳の和室に、洋間があり、各部屋にバスとトイレがあるのは当然ながら、渓流を見下ろせるテラスに露天の家族風呂まで設けられている。
紛う方なき、高級温泉旅館である。一泊二食幾らか、という具体的なことは、ぼくが自分の財布から支払うわけでもないことだし伏せておこう。
ただ、ぼくらの住む街からずいぶん東京寄りの街に持ち家を建てた牧坂家が裕福であることは疑う必要もない。昴星と才斗は郊外の団地住まいである。
「流は、いっつもここ来てんの……?」
「いつもじゃないよ、えっとね、ここは四回目かな? 海の方の高いホテルのときもあったよ。夏休みはそっちだったんだ」
流斗の言うホテルの「高い」のははたして階層なのか価格なのか(おそらく両方だろうが)いつも「お兄ちゃん」としてあれこれ教えてやる側の昴星は、流斗に圧倒されていた。
「夏は、昴星たちとも海に行ったんだよね?」
ぼくの問いに、「そうだよー」と頷く。
「だけど、あんときは……」
昴星と流斗が、才斗のご両親に連れられて行った先の海での投宿先は民宿だった。
ぼくが流斗とはじめて出会ったとき、少年のお尻に海水パンツの日焼け跡が付いていなかったのは、彼がすっぽんぽんで砂浜を闊歩した結果であるし、逆に昴星の肌に男の子としては大き過ぎる日焼け跡が残っていたのは彼か女の子の水着を纏っていたからだ。
「ぼくは、昴兄ちゃんたちと一緒に行った方が楽しかったよ。おさしみおいしかったし、たくさん遊べたし」
流斗はそう総括する。その理屈で行けば、今日もまた、流斗にとっては至福の空間が此処に形作られた訳だ。
ぼくも頑張らなくては。
「じゃあ、……どうしよう、お風呂入ろうか。せっかく温泉に来たんだし、ふやけるぐらいに入らないともったいないよね」
ぼくの言葉に、昴星はうんと頷く。「もったいない」という貧乏性感覚を、ぼくと昴星は共通して持っているらしかった。
「っていうか、早くオムツ外したいし」
昴星は唇を尖らせてハーフパンツを下ろし、自らの手でサイドテープを破る。ぶつぶつと、「おにーさんがあんなヘンタイだなんて思わなかった」と、唇を尖らせながら。
「ぼくはすごく楽しかったよー」
流斗はにこにこと微笑んだ。「知らない女の子たちにたくさんおちんちん見てもらったし、オムツも」
「そんなの……、それはさ、おまえがさ、見られんの好きだからだろ」
「昴兄ちゃんは見られるのきらいなの?」
「……だって、恥ずかしーじゃん」
流斗は昴星の持つマゾヒスト気質をすっかり見抜いているのだ。
ぼくは内心で意地悪な笑みを浮かべつつ、
「ひょっとしたら、知り合いの知り合いぐらいはいたりしてね?」
思い出したように言った。
「ほら、昴星たちぐらいの子は、塾とかで繋がってたりするでしょ? 案外、連休明けには昴星がオモラシしたこと、クラスで評判になってるかも知れないよ」
昴星が右のテープを外したまま凍りつく。
「ぼくは今更学校でオモラシしても、誰もびっくりしてくれないけど、昴兄ちゃんはずっとナイショにしてるから、きっとすっごいうわさになっちゃうね」
昴星の顔が青ざめ切るまで待ってから、ぼくは微笑んで言った。
「まあ、非現実的な確率だけどね。写真を撮られたりしたわけでもないし」
「それにお兄ちゃん、ぼくのことは『流斗』って読んでたけど、昴兄ちゃんのことは名前言わなかったよね」
聡く、敏感な子だ。ぼくは頷いた。
昴星は力が抜けたみたいにへなへなと「もー……!」と声を絞り出す。中途半端に引っかかっていたオムツがその拍子にハスのように花開いた。内側は、まあ当然だろうけどサラリと乾いている。
「ねえ、何で昴兄ちゃんおちんちんおおきくなってるの?」
目ざとく見付けて流斗が指摘する。
昴星自身も自覚していなかったのか、びっくりしたようにそれを手で隠した。
「クラスの女子にオモラシばれちゃうの想像して興奮したんだろ」
ぼくは微笑んでその髪に手を置く。じんわりと温かく感じられた。昴星は慌てて、
「ち、違えよっ」
と否定するが、その力は語勢ほど強くはない。
「それとも、昴兄ちゃんオシッコガマンしてるの? ぼくみたいにオムツの中でしちゃえばよかったのに」
流斗はにっこりとそう言って、半ズボンを下ろす。注意深く嗅ごうとしなければ判らないほど微かな匂いが、そこから漂っていた。何時の間にしていたのだ。
昴星は唇を尖らせて、勃起の理由については答えなかった。
「だって……、オムツん中でするのより、パンツでしたほうが気持ちいいし……」
「そうなの?」
その辺りの理屈は、ぼくには判らない。二人のそばにいる以上は知っておいた方がいいけれど、身を以って学ぶ必要はないだろう。
「ぼくは、どっちも好きだよ。オモラシで気持ちいいのだけじゃなくて、恥ずかしいのがうれしいから。もう四年生なのにオムツしてるってばれちゃうの、普通にオモラシするより恥ずかしいし」
「でも、オムツよりパンツ穿いてたほうがしっかり濡れておれは好きだけどなー……」
なるほど、それぞれに「こだわり」があるのだ。どんなことにせよ、繰り返し行っていくうちにそういうものが芽生えてくるのだという理屈はぼくも理解出来る。
「それにさ、……オムツはどうせ捨てちゃうけど、パンツは濡らしたら、おにーさんにあげられるしさ……」
「あ」
それもそうかと納得したように流斗は声を上げる。
「そっか。お兄ちゃん、ぼくらのパンツでいっぱい気持ちよくなれるもんね。ぼくもパンツはいてオモラシしよう」
流斗はオムツを外して、確かに黄色く濡れた内側をぼくに見せてからごそごそとカバンを漁りながら、
「昴兄ちゃんもパンツはいて、一緒にオモラシしようよ」
と、さっそく三人で「遊ぶ」段階へと心を踏み出す。
どのみちお風呂に入るのだ。汚れたって構わない。昴星がお尻を丸出しにしたまま覗き込んで、「おまえどんだけパンツ持ってきてるんだよ……」と少々飽きれたような声を漏らす。流斗はそれには答えず、緑色の生地の一枚に足を通したついでに、綺麗なデニムの半ズボンも取り出して「これもはいてしていい?」とぼくに問う。洗っておけばチェックアウトまでには乾くだろうとぼくは頷いた。
「昴兄ちゃんもズボン穿いてしよ?」
「うーん……」
昴星は普段、ブリーフだけ穿いてする。ハーフパンツを濡らすのには抵抗があるらしい。
「見てみたいな。二人がちゃんと服着てオモラシしちゃうところ」
ぼくが言葉で背中を押すと、「……おにーさん見たいなら……」とためらいがちに、彼も新しいハーフパンツを穿いた。宿の中では浴衣で過ごすのだし、問題はないだろう。
「昴兄ちゃんもパンツいっぱい持ってきてるんでしょ?」
流斗の言葉に、むう、と昴星は頷く。黒い生地に紅いウエストゴム、まだ見たことのない格好いいデザインのブリーフに足を通すとき、昴星のおちんちんはもう落ち着きを取り戻していた。
ここで改めて、……別に改まる必要もないのだけど、言おう。おさらいだ。
鮒原昴星は135センチ、体重が38キロ。その数値の通りどことなくぷにぷにしたところがありつつも、手足が細いからか全体的にはすらりとして見える。男の子らしい活力のようなものが端々から隠しきれない様子でありつつも、その相貌は少女のように整って可愛らしい。身体のラインを隠すゆったりとした紅いTシャツに白いパーカー、黒いスウェット地のハーフパンツと、それからいまは脱いでしまったけど黒いソックス。髪は長くて、……ぼくにはもう、短髪の昴星がどんなだか想像もできない。そのストレートヘアが美しいので、余計に女の子っぽく見えてしまうこともまた、昴星の外見的な魅力の一つであると思う。
一方で牧坂流斗は126センチ29キロの数字が表すとおり、四年生としても小さい。いま穿いているデニムの半ズボンは本当によく似合っているし、クリーム色のふんわりとしたセーターも愛らしい。緩い癖のある髪とあいまって、天使のようだと評するのに何のためらいもない。流斗もいまは裸足だが、白いソックスを履いていた。
部屋付の露天風呂に、そういう美少年が二人。ただでさえ可愛いのに、これからもっと可愛いところを見せてくれようと言う。
露天風呂は満々と湯で満ちる桶型の湯槽を囲むように、まさか檜や欅ではあるまいとは思うがすのこが八角形に巡らされている。慎重を期してぼくは上下左右の部屋の借り人たちからの視線を確認したが、しっかりと死角が確保されているし、耳を済ませても、案外大きく聴こえる川の流れる音の他には、何となく不明瞭なしゃべり声こそ聞こえてはくるものの会話の中身までは判然としない。ぼくらが此処で何をしているかは、誰にも知られないはずだ。
「じゃあ、いいよ」
ぼくはちゃっかりカメラを起動している。何となく恥ずかしそうな昴星と、ただただうきうきと嬉しそうな流斗の、オモラシ。これで見るのは何度目になるのか判らないけれど、いよいよそのときが近付くと思うたび、ぼくの胸はパブロフの犬のごとき忠実さで速く鳴るのだ。
「どっちからするの?」
ぼくは問う。二人の少年の綺麗な顔を順に撮りながら。
「んー」
「……おれ、わりともう出そうなんだけど」
昴星は黒いハーフパンツの前を少し神経質にいじりながら言う。人前ではそういう仕草はしないのが本当だろうし、昴星がそれだけ切羽詰まっている証拠でもある。
「ぼくもしたいな。昴兄ちゃん、一緒にしよ?」
「う、うん、わかっ……ひゃ!」
流斗が、どん、と昴星に抱き付いた。大きく彼の肩がぶれる。「あっ……」と溢れた声が何を証明しているかはすぐに判るし、そもそも流斗がそれを見越して抱き付いたのだということもまた明らかだ。
昴星のハーフパンツの裾から伸びる足を伝って、薄黄色のしたたりが流れていく。昴星は半ば惚けたような顔で、
「あー……ああ……、オシッコ……」
とうわごとのように唇から言葉を漏らしている。ズボンを穿いたままでのオモラシが昴星にとっては本当の意味での禁忌を犯す「失禁」であり、ほんの一枚の布と言えばそれまでのことながら、学校でガマンのすえに漏らしてしまったような取り返しのつかなさをその胸に味わわせるのかもしれない。
昴星の裸足を伝い、じわじわとすのこに広がり零れていく尿の匂いは、温泉が無臭であるだけに屋外であってもはっきり嗅ぐことができた。……相変わらず臭い、この匂いで周りに気付かれたりしないよな、と懸念はしないまでも。
流斗にくっつかれたまま全てを放出し終えた昴星はぶるっと震えて、僅かに情けないような顔で自分の作った水たまりを見下ろし、身体から剥がすようにハーフパンツを両手でつまんだ。
「ね、お兄ちゃん、ぼくも出るよー」
昴星を離し、流斗がセーターを捲りあげてほっそりとしたお腹とおへそを覗かせる。何度も裸を見ているのに、そんなことでドクンと身体が脈打つのを覚えた。
「ん……、出てきたぁ……」
温泉が掛け流される音とは異なる、細いせせらぎの響きは聴こえるが、デニムの生地はまだ濡れては来ないようだった。ガードの甘いハーフパンツの裾からすぐに流れ出した昴星のオシッコとは異なり、少年の下半身をぴっちりと覆う半ズボンは密着度が高く生地も厚い分だけ流斗のオシッコをしっかりと内側で吸い上げるようだ。
が、すぐに限界を迎えた。裾からポタポタと垂れ始める。同時に青いデニムの、ちょうどおちんちんが収まる膨らみの下あたりから濡れ染みが広がっていく。
「ふぅ……うん……」
ずっと足の間を閉めていた流斗が、そこを緩めた。
「えへへ……、出ちゃった」
はにかんだように微笑んで、お尻を向ける。「こっちも、濡れてる?」
「うん、お尻の方まで濡れてるよ」
「ほんと? えへへ」
流斗は湯槽の縁に手をついてふりふりと可愛い半ズボンのお尻を振って見せた。
「そしたら、昴兄ちゃん、一緒にズボンぬご?」
「うー」
しゃがみこんでいた昴星は立ち上がると、ハーフパンツを下ろす。ハーフパンツもブリーフも黒だから、あまり目立たない。それでも濡れていることははっきりと判るし、強調するような匂いが一気に破裂する。
流斗もボタンを外し、社会の窓摘まみ下ろしてから半ズボンを足元に落とした。こちらは若草色の生地の中央に大きく広がる染みが目立つ。
「さっき、オムツでもおんなじって言ったけど、やっぱりパンツでするほうが気持ちいいかも」
流斗は自分の濡れた股間に指を当てて言う。
「パンツがね、おちんちんとかお尻にぎゅってなってるの、気持ちいいな」
「ぎゅ?」
「なんか、吸い付くんだ」
オモラシにおいては「先輩」の昴星が解説を加える。
「ああ……、そういうこと」
確かに二人の穿いている、水を含んだブリーフは二人の肌にぴったりと張り付いて、まだ下を向いたおちんちんの膨らみを強調してくれているようにも見える。それぞれのサイズの差も一目瞭然だ。
「なー、まだ穿いてたほうがいいの?」
昴星はようやく少し、本領の意地悪で強気な微笑みを浮かべてぼくに訊く。
「脱ぎたい?」
「ってーか、おにーさんがちんこ見たいんじゃねーのかなって」
見たい。
けれど、
「ぼく、もうちょっとこのままがいいな。おちんちんはお風呂はいるときいっぱい見てもらえるし、……このかっこのままでお兄ちゃんとえっちするの、いいかなって」
あっさりとそう言う流斗は、ぼくの腰にまとわりついて「お兄ちゃんのおちんちん見たいなあ」と甘える。
「どーせもう勃起してんだろー」
昴星はニヤニヤ笑って言う。
「ほんと? ぼくたちのオモラシ見ておちんちんおっきくなっちゃったの?」
図星だ。流斗がぼくのベルトを外しにかかる。昴星も黒いブリーフを穿いたまま、チャックを下ろす。
「わあ……」
「もうこんななってんの……」
仕方ないと言うものだ。二人とも、可愛い。そして、こんなぼくと遊んでくれると言うのだから。
「ね、お兄ちゃん、横になって」
言われるがままに、ぼくはすのこの上に仰向けになった。差し込む秋の陽射しでほんのりと温まったすのこが、背中に硬い心地よさを与えた。
二人はカメラを止めたぼくの身体の左右にぺたんと座り、視線を交わす。昴星がぼくの顔にお尻を向けて跨り、流斗はぼくのペニスの上に股下を乗せる。じっとりと冷たい向こうから、流斗自身の体温が感じられた。
ぼくのペニスが弾んだことに、二人は気付いただろう。
「ひひ……、おにーさん、これ好きだなー」
昴星が意地悪をするようにぼくの鼻と口を股下でぐりぐりと押して言う。昴星らしい濃厚な黄色い匂いがぼくの頭まで浸食するようだ。
「……うん、好きだよ。幸せだと思う」
「しあわせ?」
腰を前後に揺らして、これは何と言うのか、素股とは呼ばないよな……、とにかくブリーフでぼくを刺激しながら流斗が問う。
「だってさ、……大好きな二人の可愛いところ、独り占めにしてるみたいな気になる」
「みたいな、じゃなくてさ」
昴星はぼくに身を重ねて、流斗が足の間で刺激するぼくの亀頭へ顔を近付ける。
「いまは、ほんとにひとりじめしてんじゃん、おれらのこと……」
ちろちろと舌が這う。ああ、確かにそうだ。ぼくはいま、二人を自分だけのものとして可愛がっている。
「えへへ……、うれしいな」
流斗が笑う。
「お兄ちゃんが、ぼくたち見ておちんちんきもちよくなるの……、ぼくたちもきもちよくなっちゃうよ……。ね?」
「おにーさん、見える?」
昴星が顔を上げ、股下に余白を作る。流斗がすっかり膨らませた股間を、ブリーフの上から指でいじっているのが見えた。
「流、おにーさんのちんこでオナニーしてんの」
ぼくは昴星の前部に指を這わせた。昴星にしたってもう勃起している。
「……この、パンツも、おにーさんにあげる」
昴星は息を震わせて、ぼくの口元へペニスの膨らみを寄せる。「な? いいよな? 流……」
「うん……、オシッコとせーし、両方つけたの、お兄ちゃんにあげる……」
こんな二人のことを、両手でいっぺんに抱きしめてあげられる人間が、一人ぐらいは居たっていいだろう。そして一人だけでいい、ぼくだけで。
昴星のくれる匂いと味と、流斗のくれる摩擦の快感を味わっているうちに、あっけないほど簡単にぼくの快感は満ちた。
「ぷあ」
「あはぁっ、お兄ちゃん、びくびくしてる……っ」
「ぶぇ……」
声から察するに、ぼくは昴星に顔射してしまったようだ。
昴星が身を起こし、流斗がぼくにかけていた体重をそらす。首の上あたりで、流斗が昴星の顔に撒き散らされた精液を舐め取り、キスをして二人で分け合う音が聴こえてくる。
「おいしかったぁ……」
昴星がぼくの顔から退く。流斗がとろりと微笑んで、ぼくを見下ろし、無意識のうちに唇を舐めた。
「……ごめんね、ぼくだけ先に」
「いいよ、な? そのつもりだったし」
「うん、お兄ちゃんきもちよくなってくれたの、うれしいよ」
二人は並んで言う。流斗の目は止まったままのカメラに向いていた。
「撮ってあげようか?」
流斗は首を振って、「ぼくが撮ってもいい?」と訊く。
「夕べからいっぱいお兄ちゃんに気持ちよくしてもらったから、こんどは昴兄ちゃんの番。お兄ちゃんが昴兄ちゃんのこときもちよくしてあげるとこ撮りたいな」
「ふえ」
昴星が意表を突かれたように声を上げる。
「ん、んな、おれは……」
おまえより年上のお兄ちゃんだし、という思いが、昴星自身のブレーキになっているようだ。
「ぼく、昴兄ちゃんのことかわいく撮ってあげられるよ?」
「で、でもさ、おれより流のほうがぜってーかわいいし、おにーさんもおまえにしたほうが……、わう!」
ぼくは起き上がり、昴星を抱き寄せる。「昴星も可愛いよ?」と髪をどけて小さな耳にキスをする。純情そうに紅くなったところが、ほんのり熱くて、実際とても可愛い。
ぼくは昴星を後ろから抱きかかえて膝に乗せる。流斗はもう、カメラを回し始めていた。
「昴兄ちゃん、オモラシパンツの中でおちんちんびんびん。撮られるのうれしいんだねえ、ぴくぴくしてて、すっごいかわいい」
流斗に可愛がられるのは不慣れなのだろう、昴星は「うう」とうめいて手で隠そうとするが、ぼくはそれを許さない。
「お兄ちゃん、昴兄ちゃんのおっぱい見せてー」
「だってさ、昴星」
「ヒャ」
リクエストにお答えして、昴星のTシャツを捲り上げる。柔和なラインのお腹と胸と、両方を晒して、「わあ、やっぱり昴兄ちゃんおっぱいおっきいねー」と笑う流斗のカメラをピンク色の乳首に寄せられる。
ぼくは後ろから昴星の脇の下から手を入れて、その男児としてはふくよかな部類に入る胸部を揉みしだいた。
「ん、んぁっ、おに、さっ、なにしてっ……」
普段なら「おにーさんエロいなー男の胸揉んで興奮してんのかー」と嗤われるところだが、流斗を前にするとそういうことは起こらない。
「あふ……!」
ほんのりと膨らんだ乳首を左右同時に摘まむと、それだけでビクンと震える。
「あはっ、昴兄ちゃんいまおちんちんすっごいびくびくしてた、おっぱいもまれてせーし出ちゃったの?」
「でっ、出てねえっ」
「ほんとにー? じゃあ見ちゃおうかなー」
流斗はくすくす笑いながら昴星のブリーフの紅いウエストゴムを引っ張って、内側を覗く。
「ほんとだ、出てないね。でも……、あ、また。お兄ちゃんがおっぱいいじるとぴくぴくして、すっごくかわいい」
流斗は下着の中に昴星をしまった。
「お兄ちゃん、ぼく、昴兄ちゃんのおっぱいしていい?」
左手を退けると、流斗はすぐにそこに吸い付いた。ピンク色した昴星の乳首を吸う自分の口元を上手に撮りながら、舌先でいやらしく転がす。
「あ、ッン、あんっ、流っ、ンな、したらやっ……」
年下の少年にこんな風に弄り回されながら、困惑しつつも感じ切った声を漏らす昴星は、やはりマゾヒストなのだろう。
「昴兄ちゃんのおちんちん、ずーっとびくびくしてる……、おっぱいしてもらうの、ほんとにうれしいんだねえ、……こんなかっこいいパンツはいてるのに、女の子みたい」
流斗が囁くだけで鼓動が壊れそうに跳ね、ぞくぞくとした震えが走るのが身を重ねるぼくにはよく判る。
「昴兄ちゃんのおちんちん触ってたら、ぼくもどきどきしてきちゃった……」
流斗は立ち上がり、ブリーフの窓から湿っぽいおちんちんを引き出す。摘まんで皮を剥き下ろし、「昴兄ちゃん、おちんちんして?」とカメラ越しに言う。いや、「言う」と言うより、命令に近い。事実として昴星に抗う余地は残されていないのだ。好きな匂い、味がそこにあるのだから。
「んぁ……、あむ……」
「んン……、きもちぃ……!」
ぼくに乳首を弄られながら弟のような流斗に強いられてフェラチオをする昴星の顔を、流斗は快感に耐えながら撮影し続けている。
「ぼくのおちんちんぺろぺろしてる昴兄ちゃんのお顔、すっごいえっち……」
後でぼくが見たときに嬉しいようにと、少女のような少年の淫らな顔を記録していくのだ。
そのまま射精まで行くつもりだと思っていたら、
「はい、おしまい」
と流斗は腰を引いた。「ふあ」と舌を伸ばしたまま、昴星は流斗を見上げる。
「だって、このまま出しちゃったらぼくのせーし、昴兄ちゃんのお口の中だもん。パンツの中で射精しなきゃいけないんだよ」
おちんちんを元の通りにしまって、流斗は一歩退く。
「昴兄ちゃんも、もうせーし出したいでしょ? ……お兄ちゃんにおっぱいいっぱいきもちよくしてもらってるんだもんね?」
「う、あ……」
「ぼくのおちんちんもしゃぶっちゃったし。昴兄ちゃんオシッコまみれのおちんちんしゃぶるの大好きだもんねえ」
なぶるような言葉に、昴星は恥ずかしさを堪えきれないように震えている、もちろんそれは、快感と共に。
「それに、オシッコでびちょびちょのはずかしいオモラシパンツのままだもんね、おちんちんがオシッコだけじゃなくてせーしもオモラシしたいって、ずーっとぴくぴくしてる」
流斗は笑顔で、しかし無慈悲に言う。
「おちんちん、自分でさわって」
命令だ。
「お兄ちゃんにおっぱいしてもらいながらオモラシパンツの中できもちよくなっちゃうところ、見せて」
流斗は昴星を、ぼくよりも、ひょっとしたら才斗よりも上手に操っていた。
「あ……あ……っ」
昴星は糸に引かれるように、右手を体温で再び生温かくなっているはずのブリーフのまえに当てる。
後は自動的に、布越しのオナニー。
「あ、あんっ……、んっ、ん……っ」
声も、遠慮なく散らしながら。
「きもちいい?」
「ん、んっ、しゅごいっ、ひもちぃ……っ」
ぼくも昴星の快楽の手助けをする。おっぱいを優しく揉み、ときおり乳首をきゅっとつねる。その度喉をそらして透き通った声を上げるのは、たまらなく愛らしい。到達が近いようだ。
「ねえ、昴兄ちゃん、これ撮ったら、セイラねえちゃんとチヒロねえちゃんに見せてあげようよ」
昴星はビクンと震える。
「昴兄ちゃんはオモラシしたパンツの中で射精しちゃう恥ずかしい子で、男の子なのにおっぱいもまれてきもちよくなっちゃうんだよって教えてあげようよ」
それをされると、ぼくも困る。けれどぼくの困ることを流斗がするわけがないと信じられるから、ぼくは黙って昴星のおっぱいを弄り続けていた。
わかっていないのは昴星だけだ。
「や、やだっ……」
「きっとおねえちゃんたちびっくりするよねえ、昴兄ちゃんがそんな恥ずかしい子だってこと、まだ知らないし。またオモラシしたことバレちゃったら、きっと笑われちゃうねえ」
言葉は的確に昴星の急所を突く。恐らくそれはタマタマに針のように刺さり、……昴星の魂を震わせる。
「や、やぁっ、やだぁあっ……」
昴星の右手は止まっていたはずなのに、その身体には一際強く鋭い震えが走った。
「恥ずかしい子」であることを自ら証明するように、昴星はブリーフの中で射精してしまったのだ。
「わー、すごいね昴兄ちゃん、黒いパンツなのにおちんちんのとこせーしでしろくなっちゃった」
「あ……う……」
肩越しに見下ろせば、流斗の言うとおり、昴星の黒いブリーフの尖りの先には内側だけでは吸い切れなかったらしい精液が滲み出している。青い匂いがオシッコに混じってそこから漂ってくるようだ。
しかし、その匂いをぼくの鼻が捉えていたのは一瞬だけ。
「あ」
「あ」
ぼくと流斗の声は重なり、せせらぎの音で塗り潰される。昴星のブリーフの表面には透明な液体が浮かび、勢いよく伝って行く。力を失った身体で唯一力を残していた部分の堰が壊れたように、膀胱が緩んで残っていた水分を残らず吐き出していくのだ。
「あはは、昴兄ちゃんきもちよすぎてまたオモラシしてる。今日だけで、えっといちにいさん、四回目だね。あ、オネショもしちゃってたら五回目かな?」
ぼくの太ももにまでそれは伝って生温かさを感じさせたが、不快ではない。
「お兄ちゃん、昴兄ちゃんのパンツ脱がせてあげて」
昴星の失禁が終わるのを待って、流斗が求めた。たっぷり水を吸って脱がせづらいブリーフを下ろすと、少しずつ力をなくしていくおちんちんがシロップのような精液をまとっているのが見えた。もちろん、裏返しになったブリーフのうちがわにも。よほど興奮したものと見えて、精液はずいぶんと濃く、また、大量だ。
「ぼくも……」
流斗はぼくにカメラを預け、股下の縫い目さえ見えるほどにしどけなく足を開き、手のひらでおちんちんをこすり始めた。正面から失禁ブリーフでのオナニーを眺めると、流斗がふんわりセーターを着ている、つまり少年らしい服装をいまだによく残した姿でオナニーという行為に耽っていることが、とてもいやらしいことのように見えてならない。
「ん……、んっ……」
ぐったりとけだるくぼくの胸に凭れて、ようやく意識らしい意識を取り戻しつつある昴星のお腹を撫でながら、ぼくは流斗を撮影している。流斗はぼくのカメラを十分に意識しながら、視線を送り、指先を膨らみに這わせ、……時折その指を紅い舌でぺろりと舐めて見せた。彼の見せるそうした一連の仕草は、確実にぼくの胸へと響くよう計算されてさえいるものだ。
「んへへ……、すっごいきもちいい……」
流斗はハチミツを思わせるような声で言う。実際、流斗のオシッコやその肌も昴星のそれほど臭くはないなりに、塩っぱいものであるのだけれど、こうして見ていると何やら甘さばかりをまとっているようにさえ映るのだから不思議だ。
流斗の視線が昴星のしどけなく開いた足の間に向いている。ぼくが同じ場所に目をやれば、失禁後から縮んでいたおちんちんが再び息を吹き返そうとしていた。
徐々に大きく育ち上がろうとするその場所に、ぼくはカメラを向ける。
ぴくん、ぴくん、震えを細かく繰り返し、昴星はすっかり勃起してしまった。昴星の目から見ても流斗の晒す姿は文句なく可愛らしく映るらしい。
「ひぁ」
ぼくが後ろから手を回すと、びっくりしたように震える。
「昴兄ちゃん、ぼく、えっち?」
流斗が首を傾げて訊く。その目元に浮かぶ笑みは、質問の内容を考えれば少しばかり意地悪なものであるはずだが、相変わらず天使のように甘ったるく清純なものである。
「あっ……」
ぼくは昴星の皮を下ろす。レンズはしっかりとその尿道口に浮かぶ透明な蜜を捉えていた。
「ガマン汁出てる。……さっきいったばっかりなのにね? 流斗のこと見てたらえっちな気持ちになっちゃったんだ?」
ぼくが握り込んで動かし始めても、昴星の身体は快感に対して従順そのものだった。
「えへへ……、うれしいな、昴兄ちゃんがぼくでおちんちん気持ちよくなっちゃうの……」
自らを性的な存在であるとはっきりと理解して、流斗は悦ぶ。
「ぼくも……、昴兄ちゃんのえっちなとこ見て、気持ちよくなっちゃおう……」
言ってみれば二人の少年による対面オナニーだ。ぼくは流斗の様子を注意深く伺いながら昴星を扱く。昴星の震えは波のように緩急を伴うものとなった。
「あ、んっ……んっ、んぅ……」
せつなげにぼくに身体を委ねて感じきる昴星と、
「あはぁ……、おちんちん……っ、オシッコのパンツですっごい……きもちぃ……!」
艶めかしく自慰を見せびらかす流斗と。
流斗のペースにそのまま合わせていたら、昴星の方が先に射精してしまうだろう。ぼくは扱くばかりではなく、陰嚢や乳首への愛撫で時間を稼ぎながら、流斗の声の高まりを待っていた。
「んぁっ、あっ、出ちゃうっ、出ちゃうっ!」
スタッカートを弾ませた流斗がブリーフから手を離し、股間を突き出した。布の向こう側で幼茎が悦びに脈打つのがはっきりと見えた。
「あ……、あっ、お、おれもっ、おれもでるっ……!」
昴星のおちんちんをスピーディーに扱く。表面張力で保たれていたような括約筋がぎゅっと引き絞られ、斜め前方、流斗を目指すように精液は高らかに打ち上げられた。
「あ……はぁん……、パンツ、どろどろにしちゃった……」
うっとりと、重ねて汚した自分のブリーフをいとおしげに撫ぜる流斗と、余韻の震えを催す昴星と。両方を収録して、……けれど、これで終わりにするわけにはいかない。
ぼくがまだ、全くもって終わっていないのである。
そのことに、ぴったりと濡れたお尻を押し当てている昴星はもちろん、流斗も気づいてくれて居る。流斗はブリーフを脱いで、笑顔で精液とオシッコに塗れたおちんちんを見せる。昴星はぼくから降りて振り返り、「うわ……、おにーさんの、すっげ……」と既に腺液を滴らせているぼくのペニスに感動したように声を漏らす。
「昴兄ちゃん、お兄ちゃんのおちんちんも気持ちよくしてあげなきゃね?」
「……うん」
昴星は頷き、「どうしたらいい? ちんこ、しゃぶる?」
「それよりも、ぼくいいこと考えちゃった。お口でするのぐらい気持ちいいかわかんないけど、すっごくえっちなやりかた」
昴星の耳元へ、こそこそと何事か囁いた。
「えー……? そんなん、うまく出来るかー……?」
昴星が驚き、ためらうような声で言う。
「だいじょぶだよ、きっとお兄ちゃんもうれしいよ」
「うーん……」
流斗がしたいと言うことを、矯めて止めるような昴星ではない。「おにーさん、こう、膝で座って」と、流斗の企みを実現すべくぼくに求める。
「膝で……?」
立て膝になったところで、「足はもっと広げてさ、……股つらい?」
「いや、大丈夫だけど」
運動神経はさほどよくもないが、柔軟性はそこそこある。肩幅以上に開いた膝で身体を支えることは、まあ、ちょっとばかり膝が痛くはあるけれどそれは仕方が無い。昴星はもちろん、発案した流斗にせよ、少々無理が生じることを判っているに違いない。
それにしても、二人より十歳以上年上で、仕方のないこととはいえ無駄な毛が生えているし、形にしたって二人のような美しさがない。それを「シャツめくってさ、ちゃんとおさえてて」と言われて晒すのは、あまりいいものではない。
既にブリーフを脱ぎ捨てている昴星と流斗が、ぼくと同じく膝立ちになる。二人の、ピンと反り立って欲深い輪郭になっても可愛らしさの方がずっと胸に響くおちんちんに見とれていると、二人は膝で歩いて、身体の下からおよそ三分の一ほどの高さにあって上を向いているそれの先っぽを、ぼくの亀頭に押し当てる。
「お……」
耳たぶのように可愛い感触の包皮がふにゅっと押し付けられる。実際のところ、二人とも精液がまだ付いているままだから、ぬるつく。
右に昴星、左に流斗。ぼくから見れば、だいたい百二十度ぐらいの角度で男性器を寄せ合っている状態だ。
「えへへ、みんなのおちんちんでちゅーしてるよ」
流斗は屈託なく笑い、
「すっげー……、なんか、すっげーエロい……」
昴星はぽかんと口を開けて圧倒されているようだ。
「あたりまえだけど、やっぱりお兄ちゃんのおちんちんが一番おっきいね。先っぽもぼくらのと違ってつるつるで、オシッコの出る穴もまるみえだし」
「ま、まあ……」
ぼくとしては、ぼくのが一番みにくいよなあと思ってしまうわけで、全面的に同意することは出来ない。
「お兄ちゃんのおちんちんとこうやって並べると、ぼくのと昴兄ちゃんおんなじくらいだね」
言外に意味するところが明らかなので、昴星はむーと唇を尖らせる。流斗は気の咎めるということは全くない様子でにこにこ微笑んで、「昴兄ちゃんともおちんちんのちゅー」と薄いピンク色の肉の先端を剥き出しにして、流斗がおちんちんを掲げる。唇を尖らせたまま昴星も同じようにして応じる。皮の剥ける広さに関しても、ほんのわずかばかりだが流斗の方が上回っているようだ。ぼくはぼんやりしていて撮影を忘れていた。慌ててカメラを構えて、二人のいかにも弱々しい亀頭をくっつけあって、ガマン汁かそれとも先ほどの余韻か判然としない透明な糸を引くところを撮影する。
「昴兄ちゃん」
と流斗が昴星の頬に手のひらを当てて、唇も重ねる。
「ん……、流……」
「えへ……」
舌がぴちゃぴちゃとなる。くっつけあったおちんちんがせつなげに震えている。何て美しい光景だろうか。思わず見とれてしまう。
「……って、違う」
昴星が慌てて顔と腰を離した。「おにーさんのちんこ、おれらで気持ちよくすんじゃねーのかよ」
「あ、そっか」
流斗も思い出したように言う。「ごめんね、お兄ちゃん」と、一度背中を丸める。
「おちんちん、ぬるぬるのほうがきもちいいよね?」
と、ぼくのペニスを舐める。昴星もそれを真似た。たっぷりと二人分の唾液を纏ったぼくのを見て、「すごーい、つやつやできれい」と。まだ洗ってもいないのに流斗は褒めてくれた。
流斗も昴星も、再びぼくに「キス」をする。
二人とも、オナニーをするときには(さっきみたいなブリーフごしの愛撫を例外として)基本的には皮オナである。包皮の上から激しく扱くことで皮は伸びてしまうし亀頭の発達も阻害されるから、皮オナはおちんちんの生育という観点から考えると好ましくはない。特におちんちんの発達が遅いらしい昴星にとっては余計にそうだ。
しかし、二人の親指と人差し指で作るミニサークルから余る皮がぼくの亀頭を擦る感触で生まれる心地よさは、決して小さいものではない。二人分の唾液で濡れた亀頭を、ぷにぷにとした皮で挟んで擦り付けてくれるたび、ぼくは不意の脈動を催す。
「んぅン……、すごい、すごいえっち……」
「んっ……、ちんこ、ずっと……キス、してる……っ」
二人がぼくを置いて射精してしまうことを、ぼくは少しも残念だなんて思わない。
「あ、あっ、出るっ……」
昴星がぶるぶると身を震わせて、ぼくの茎に薄まった精液をぶちまける。それはくちゅくちゅと音を立てて扱かれていた流斗のおちんちんも濡らして、その音に濁点を加えた。
「あんっ……!」
流斗の到達も早かった。男性器に擦り付けてのオナニーという状況に、普段以上の興奮を覚えていたのかもしれない。
何にせよ、ぼくのペニスは二人の唾液と精液でどろどろのぬるぬるである。
二人は呼吸を整えながら、ぺたんと座る。
どちらからともなく、自分の体液に塗れたぼくのペニスを舐め始めた。まだ収まらない声交じりの呼吸が、ほんのりとくすぐったくぼくの陰嚢へ伝う。言ってみればこれは「お掃除フェラ」というやつか。舌の動きは細かいところまで伝うとてもていねいなものだ。
「二人の精液かかってるから美味しいでしょ」
ぼくが聴くと、揃って頷く。
「ん……、っていうか、おにーさんのちんこ、もともとすげー、おいしいし……」
と言ったのは昴星で、
「昴兄ちゃんのせーしも、おいしいから、何倍もおいしいよ……」
淡い微笑みで言うのは流斗。
「……二人の顔にかけちゃってもいい?」
「おにーさん、もう出そう……?」
ぼくは素直に認める。この状況で長く我慢出来るような男はショタコンではない。
「ん……、お兄ちゃんの、せーし、いっぱいちょうだい……、っんッ」
二人の友情に甘えて、ぼくは射精した。
さっき出したばかりということも忘れるぐらい、爽快感さえ伴うような射精。二人は精液の飛沫を顔に浴びることに何の抵抗感もないらしい。
「えへへ……、お顔、べとべとになっちゃった」
「ん……、すっげーな、大人はこんなたくさん出せんだ……」
二人で、互いの顔に散った精液を舐め合ったところで、ようやくこの時間の一区切りを迎えるべきタイミングが訪れた。
立ち上がった二人を腕の中に収めて、幸せを噛み締めるための数秒を使ってから、
「じゃあ、お風呂入ろうか。……ズボンを洗ってから」
「あ」
「そっか、忘れてた……」
乾いてしまうと黄ばみが落ちなくなってしまう。ぼくは大急ぎで二人のズボンを室内の浴室へ放り込み、手洗い石鹸と一緒にお湯を注いで漬け洗い。すっぽんぽんになってぼくを待っていてくれる天使たちのところへ急いで戻った。
おさらいすると、ぼくらが投宿しているのは長野県のとある温泉地にある高級旅館。観光地からもほど近いが、わざわざ出かけて行こうという気は流斗にも昴星にもない。二人にとって何より愉しいのは、三人でたくさんえっちなことをして遊ぶことである、からだ。これはぼくとしても幸福なことである。
と言って、晩御飯まではまだずいぶん間がある。部屋付の温泉から上がって、さすがに少しくたびれて眠そうな二人と一緒に昼寝をしてから目を覚ましたところで、まだ三時半。ゆったりした時間は幸せなものだが、全てをえっちで塗りつぶす必要もない。
「ちょっと散歩に出かけようか」
というぼくの誘いに、二人も頷いた。
「あんま出してばっかだと、オシッコもせーしも出なくなっちゃうもんな」
とは昴星の言で、要はそういうことである。
昼寝のときには一応布団を敷いて、下着だけ身につけた格好だった。……後でお腹痛くなってもつまらないから、きちんと毛布もかぶった。昴星のハーフパンツも流斗の半ズボンも、もちろんまだ乾いていないから、ぼくらは三人揃って浴衣を身に纏うことになった。子供用サイズの浴衣もちゃんとあって、安い旅館にありがちなペラペラの記事ではない。帯も上等のものを使っているようだ。そんな次第で、きっちり決まってずいぶん粋ないでたちとなったぼくらはフロントに鍵を預けて、温泉街のそぞろ歩きに出ることとあいなった。
「お子様をお連れでしたら」
フロント係が教えてくれた。「当旅館から五分ほど歩かれますと、吊り橋がございますよ」
吊り橋か。二人の「お子様」を連れるぼくは、当然そこに向かうべきだろう。土産物屋を覗きながらぶらついた先に案内板があって、なるほど確かに宿のすぐそばを流れていた清流を跨ぐように古ぼけた吊り橋がかかっている。少し離れてはいるが、滝も見えるようで、観光客も多い。
「ね、お兄ちゃん、渡ってみようよ!」
早速流斗がはしゃいだ声を上げた。
吊り橋とは言っても、頑丈なつくりであるようだ。幅三メートル、長さ二十メートルほどの橋上には二十人近い観光客が居るが、緩やかな揺れを体感出来るぐらいで、さほど危なっかしさは感じない。
だが、
「わー、すごーい!」
結構スリリングな高さである。流斗は平気な顔で欄干に身を乗り出して足元を見下ろすが、それを見るぼくの足の間が嫌な感じにヒヤッとするぐらいに。
昴星も及び腰である。身体は小さくとも六年生である昴星にはこの高さへの正常な危機感が働くのだろう。一方で、流斗はまだ四年生だからなのか、まるで平気な顔である。ぼくは流斗の浴衣の帯をしっかり掴みつつ、ゆっくりと細い欄干から少年の身を引かせた。
「ね、お兄ちゃん、写真撮ってよ」
カメラはもちろん持って来ている。ぼくは二人を並ばせてシャッターを切った。考えてみると、家を出てからまだまともな写真なんて一枚も撮っていない。流斗のご両親に見せられる写真も撮っておくべきだと気付いて、遅れを取り戻すようにぼくは立て続けに何枚も昴星と流斗のポートレイトを撮影する。……改めて、二人とも本当に綺麗な顔をしている。溜め息を吐きたいような気持ちにぼくはなる。
「あっち、何があんのかなあ」
昴星が橋の向こうを眺めて言う。観光客はそちら側へ渡らず、大体は橋の向こうを見ては興味などないように戻ってくる。
そういうところにこそ、少年はかえって惹かれるのかもしれない。「行ってみようよ」と流斗が昴星の手を引っ張って行く後ろを、ぼくも付いていく。
川を左手に見下ろしながら、崖沿いの、もちろん未舗装の道が続いている。……結構な急坂である。ぼくらは三人とも旅館の玄関で借りた下駄履きだ。あまり急な道は足元に良くない。
しかし少年特有の勇敢さでもって、二人はずんずん歩いていく。崖淵の道から振り返ると、まだ吊り橋から百メートルも離れていないのに、人の声は全くしなくなった。
「なー、流斗、たんま」
昴星が先を行く流斗の背中に声をかけた。立ち止まった昴星に、ぼくも追いつく。
「あっち、行ってみねー?」
流斗がぱたぱたと戻ってくる。昴星の視線の先、ぼくらの地元の城址公園にもあるような木組みの階段が崖を斜めに上がるように組まれていて、先は森の中へ消えている。もう随分朽ち果てているが、「山ゆりの湯 二百メートル」と筆で書かれた看板が斜めにかしいで立っていた。
一眠りしたからか、流斗も昴星も元気良く足を広げてゆるくない階段をずんずんと上がって行く。ぼくも遅れずについて行きながら、……いやはや、保護者っていうのは大変だなあと思う。ぼくが人の親になる可能性は万に一つもないし、まだ二日一緒に過ごしただけだけど、昴星たちぐらいの子の親の気持ちは察するに余りある。とにかく身体の輪郭からはみ出そうなほどの元気を、少年たちは常に抱えて生きているのである。
森の中を、五分ほど上がった先、ようやく樹々が切れた。
広がっているのはぼんやりとした広さの台地である。煙突……、ではなさそうだ、排気管の突き出た小屋があり、どうやらそれが「山ゆりの湯」らしい。ドアが二つあって、どちらが男湯か女湯かも判然としない。
そして、ドアには鍵がかかっている。排気管から湯気が出ている気配もないし、恐らくはもう涸れてしまって久しいのだろう。
「……戻ろうか?」
さすがに息の切れた昴星が、ややしょんぼりと頷く。一応、ぼくが肩から提げるバッグの中には三人分のタオルが入っていて、良さそうな温泉を見つけたら入ろうと思っていたのだけれど。
確か、旅館までの送迎バスの車窓からは、旅館からほど近い場所に小さな共同浴場らしきものがあった。また階段を降りて吊り橋を渡り坂を下りて浸かったあと、また旅館まで上り坂をたどるのは少々億劫だが、……まあ、仕方がない。
そう思って、昴星を促して踵を返しかけたぼくを「ねえ、お兄ちゃん」と、何かを探すように風呂小屋の裏手に回っていた流斗が呼んだ。
「なに?」
「ここから入れそうだよ」
小屋の真裏の壁は、ぽかんとがらんどうだった。……二つ並んだ浴槽がはっきり覗ける。随分と乱暴ではあるが、間違いなく人と機械によって開けられた、大人一人が楽に通れる穴がある。温泉の匂いがした。あまり新しくはないが、タイルの浴槽には湯が満ちていて、湯気がふわふわと漂っている。
「……すげーな、なんか、無理矢理っぽい」
昴星が呆れたような笑みを浮かべて言う。
「多分、お風呂から外の景色が見られるようにしたんだろうね」
ぼくは言いつつ、無理矢理、という昴星の意見に同意する。確かに視界は開け、且つ屋根もあるから、半露天の趣である。中央には男湯と女湯を区切る壁が残っていて、一応はプライベートを残しているとは言えるだろうけれど。
昴星が浴槽の縁から手を湯に浸す。「ちょうどいいみたいだな」
「じゃあ、入ろう」
流斗はさっさと草の上で浴衣の帯を解き始める。嬉しそうに、「あっちのほうに誰かいたら、ぼくらのお風呂入ってるとこのぞかれちゃうね」などと言う。
けれど、見渡す限りの野原である。「山ゆり」と書かれていたから、ひょっとしたら時季を選べば素晴らしい景観が広がるのかもしれないが、今のところは秋の広々とした空と、山の稜線とが景色の主人公である。
すっぽんぽんになった流斗が「お兄ちゃん、撮って」とせがむ。
「せっかく誰もいないんだもん」
流斗は裸足になってぱたぱたと草の上を走る。
「ったく、流はほんとに露出狂だよなー」
昴星は苦笑する。ぼくも苦笑しつつ、草の上、秋空の下、全裸を晒す流斗にカメラを向けた。この写真はもちろん、ご両親には見せられない。
「昴兄ちゃんも一緒に撮ろうよ」
「うぇ」
帯をほどいた昴星が不意をつかれたようにそんな声を出した。「おれはー……、いいよ、誰か来るかもしれねーし……」
「だいじょぶだよー、一緒に撮ってもらおうよ」
昴星は、流斗にとことんまでに弱いし、甘い。
「えー……?」
「ぼくも見たいな」
ためらう背中に、ぼくは手のひらを当てた。「こんな広いところで裸になるチャンスなんてそうはないと思うよ?」
「そりゃ……、っていうかおれ、そんな、外で裸になんかなんねーし……」
流斗がぴょんぴょん跳ねて、
「はやくはやくー」
とせがむ。昴星は溜め息を吐き出して「……わかったよ」と浴衣を脱ぎ、ブリーフをおろし、少し危なっかしい足付きで流斗の元へと走り寄る。意識的に、おちんちんを隠しながら。
「どうせ誰も見てないのに。昴兄ちゃんのはずかしがり」
「……べ、別に恥ずかしいんじゃなくて」
「じゃあ、どうしておちんちんかくすの?」
「そ、それはー……」
ほぼ全角度オープンエア、恥ずかしくないはずがない。少なくとも昴星のように、流斗より少しはまともな神経を備えた子であれば。
「じゃあ昴兄ちゃんパンツはいたら? ぼくはおちんちん見せたいからすっぽんぽんでいいけど、昴兄ちゃん恥ずかしいならパンツだけはいてればいいよ」
昴星は迷っているみたいだった。まあ、当然だろう。自分より年下の流斗が男らしいふりちんで「恥ずかしくない」と堂々としている一方で、自分は女々しくブリーフを穿くという構図に抵抗があるのだろう。
けれど、「ほら、昴星」とぼくがブリーフを丸めてひょいと投げると、その白布の中に逃げ込むように穿いた。ちらりと見えたおちんちんには感情が素直に現れたように、愛らしく縮こまっている。……昴星のそこは表情豊かである。いつもにこにこして、ちょっとのことでは動じない流斗のおちんちんが悦び以外の表情を浮かべるのが稀であることを考えれば(もちろんそっちの方が明確に「どうかしている」のかもしれないけれど)差が現れる。
ともあれ、白いブリーフに秘部を隠した昴星はほっとしたような顔だ。説明が前後するが、この時間に昴星が穿いているのはウエストゴムまで含めてすべて白い、ごくノーマルなブリーフである。さっき入浴前にえっちをして、昼寝の前に穿き替えたものだ。ぼくも何度も見たことがあるタイプだし、昴星自身「外行くんならおしゃれじゃなくてもいいや」と思ったのだろう。
しかし、白いだけのブリーフ一枚身に着けて野晒しに立つ、ほんのりと肉付きのいい少年の姿というのは、隣で飛び交うトンボをおちんちんふるふるさせながら追う流斗に遜色ないぐらい淫靡なものに見える。
「昴星、流斗、こっち向いて」
浴槽を背にしつつ、入浴の支度は二人以上に整えないでぼくはカメラを構えた。立て続けにシャッターを切り、流斗が昴星に抱きついたところで、一つ案が浮かんだ。
普段、ぼくは二人に何かを提案するということはしない。
ぼくが何かを欲さなくとも、二人はぼくが思い付きもしない形で幸せを贈ってくれる。だからいつも二人に任せ切りにしていたのだ。それで何の不足もない。
「流斗、そこ、真っ正面に立って」
「ここ?」
「そう。……で、あっち、太陽の方向いてさ」
ポーズを指定しつつ、ぼくは流斗のサイドに回る。傾いて紅く世界を染め始めた太陽に、流斗は眩しそうに目を細める。その身体のフロント部分、白い肌は余すところなく紅く照らし出されている。
ぼくの口からは思わず溜め息が漏れた。
「ああ……、すごく綺麗だし、可愛い」
裸の流斗の姿は紅い光の中に降り立った天使のように見える。考えてみるに、天使は自分が裸であることに恥じらいを覚えていない。そういう意味では流斗は、していることは実際悪魔のようではあるけれど、純粋な心根も含めて「天使」の資質が生まれながらにして備わっているのかもしれないとさえ思われる。
「えへへ、お兄ちゃんがほめてくれるのうれしいな」
昴星の、ちょっと唇を尖らせている顔は視界のはしに入っている。
昴星は男らしい男の子である。顔がどんなに少女めいた美しさを纏っていたとしても、「可愛い」や「綺麗」といった言葉よりは、「格好いい」って言われたいと望んでいるはずだ。
そんな昴星でも、ぼくが流斗の写真ばっかり、それも「可愛いなあ」なんて言いながら撮っているのを見ると、ヤキモチを焼いてくれるのかもしれない。
ぼくは昴星の視線を意識しながら、流斗のおちんちんを指で弾いた。
「やん」
なんて、流斗は可愛らしいリアクション。
「オシッコ出る?」
「うん、見たいの?」
「見たいし、お風呂入る前にしておいた方がいいでしょう?」
そっか、と流斗は夕陽に向かって突き出したおちんちんから、ぼくがカメラを構えるのを待って解放感のありすぎる放尿を始めた。指先のようなおちんちんから噴き出す放物線は、キラキラと輝きながら野原へと撒き散らされる。流斗の細い太ももにオシッコの雫の影が散らばるのは、文句なく美しいもの光景であるように思えた。
「流斗、こっち向いて」
放尿を終えた流斗がにっこりと笑ってピースサインを送る。おちんちんが、オシッコの前よりほんの少し膨らんでいるように見えた。
「さ、次は昴星の可愛いとこ撮らせて」
むーと唇を尖らせた昴星は、へそを曲げたように「おれ、流みてーに可愛くねーからいいよ」なんて言う。ぼくは昴星の髪を撫でて、おでこに、きっと望まれているはずだと信じて唇を当てた。
「そんなことない、昴星もすごく可愛いよ、ね? 流斗もそう思うよね?」
「うん、昴兄ちゃんはすっごくかわいい」
昴星自身「可愛い」と信じる流斗にそう言われれば悪い気はしないらしい。
結局昴星も、光を浴びるパンツ一丁の姿を見せてくれた。周囲は全くの無人だが、誰か来ては困るときょろきょろ見回しながら。
「ほら、昴星こっち向いて」
「うん……、なー、ほんとにここ誰も来ねーよな……?」
普段は剛毅な少年が、いつになく不安そうである理由を少し考えて、すぐに思い至った。昼前、駅のトイレでのことがまだ頭に引っかかっているのだろう。
さすがに六年生の男子として、一日に二度も見ず知らずの人間(特に女子)におちんちんを見られるわけにはいかないという信念があるのだろう。
「誰か来そうな気配がある?」
流斗に訊いた。流斗は周りを見回して、「ぼくが見張ってるからだいじょぶだよ」
と昴星を勇気づけるように言う。
やっと納得したように昴星は頷いて、「……ちんこ、ここで出すのはなしだからな」となお用心深く言った、
「いいよ。パンツ穿いてても昴星は可愛いしね」
それは事実である。ことによっては、全裸以上に愛らしく、またいやらしいとさえ言えるかもしれない。
流斗が「天使」だったとすれば、ブリーフを穿いた昴星はそのままずばり、「人間」であると言っていいように思う。人間、……少年。理性と、恥の概念が備わっているから、パンツを脱げない。
「その代わり、オシッコするところ見せて欲しいな。さっき流斗も見せてくれたし」
む、と昴星はまた唇を尖らせた。「オシッコするってことは、けっきょくちんこ出すんじゃん……」
「出さなくてもいいよ」
我ながら、雑にさっぱりと言い放った。
「パンツ脱がなくてもオシッコは出せるよね?」
「出せるよー」
流斗が同意した。昴星はもちろん、もうぼくらの言葉の意味するところを理解している。顔が引きつった。
「オモラシするの、昴星好きでしょう? 誰も来ないし、こんな真っ昼前に、こんな広いお外でするのなんてそうそうないでしょ」
「でも昴兄ちゃんもお外でオモラシしたことあるんだよ、女の子の服着て」
流斗が教えてくれたところによれば、才斗と城址公園で昼間に「デート」した際に展望台で街を見下ろしてオモラシをしたのだと言う。
「へえ。昴星もすごいこと出来るんじゃないか。あそこの展望台の方がここよりよっぽど人が来るかもしれないのに」
「だっ、だってあんときはスカートはいてたしっ、スカートん中でパンツ濡れてたってバレねーし……」
なるほど、まあ、そりゃそうだけど。
それ以上に、才斗が一緒にいたというのが大きいのだろうとぼくは思う。昴星という男の子のことが段々分かって来ているぼくである。
流斗は昴星よりも度胸が据わっていて、より思い切ったことが出来るし、昴星にもそれを求めてくる。だから昴星は流斗に対して従の立場で居ることになる。
一方で才斗に対しては、……あの通り、才斗は慎重な少年であるから、昴星にとってはブレーキとなる。大好きな才斗とえっちで気持ちいいことをたくさんしたいと思うからこそ、昴星は才斗に対してはリードする立場となるんだろう。
こちらが引けば押して来るし、こちらが押すと困る、昴星はそういう姿勢の持ち主なのだ。
「ほら、早く済ませてお風呂に入ろうよ」
「ぼくも昴兄ちゃんのオモラシ見たいな。ね、お兄ちゃん、昴兄ちゃんのこんどのオモラシパンツ、ぼくもらってもいい?」
「ま、まだするなんて言ってねー!」
「流斗がして欲しいって言ってるんだから、してあげなきゃ。ねえ?」
ぼくと流斗は心を一つに揃えていた。
昴星は追い詰められたような顔をする。
そして結局、ぼくらの言葉に折れてしまう。不安げに今一度周囲を見渡して、「うー……」と困惑しきった顔で、
「あっ、オシッコ」
失禁を始めた。
白いだけのブリーフでのオモラシを見るのは、考えてみると久しぶりのことだ。部屋の露天風呂で見た黒いブリーフと比べると、当然のことながら、濡れ染みの広がり方などよりくっきりはっきり判る。オレンジの光に照らされながらパンツの中から溢れ出すその液体が、夕陽に負けないくらい鮮やかな金色をしていることも。
「あ……う……、はー……」
昴星は溜め息を吐き出して、またきょろきょろと辺りを見回す。ぼくは流斗と同じくらいの枚数を撮影して、「お疲れさま、すっきりしたでしょ」と笑った。
「……おにーさんのいじわる」
とオモラシパンツ姿で恨めしげに言う昴星をもう一枚撮影したら、流斗が「いっしょにとって」と昴星の元へ駆けて行って強請った。
天使のような少年と、あくまで人間の少年のツーショット、綺麗なものだ。
「じゃあ、お風呂に入ろうか」
脱衣所は、浴槽の向こうだ。
ぼくは持ってきたカバンにカメラをしまい、浴衣を脱ぐ。流斗よりは昴星寄りの感覚でいるぼくだから、やっぱり少々ぎこちない。既にすっぽんぽんの流斗はぼくを追い越して湯槽に浸かり「あったかーい」と浮かび、昴星は濡れて脱ぎづらいオモラシブリーフを外の岩に引っ掛けてから浸かった。
「うん、いい景色だ」
ちょっと解放的にすぎるけれど、夕陽に余すところなく照らされた原っぱののどかな景色は間違いなくいいもの。ぼくら三人は縁に肘をかけて、ゆったりとした気持ちを大いに味わう。
「旅館戻ったら、大きなのお風呂にも入ろうよ」
と流斗は言う。「あそこのお風呂もすごく広くて気持ちいいんだよ。ぼくお兄ちゃんの背中流してあげる」
ぼくは流斗の髪を撫ぜて、「昴星の背中はぼくが流してあげようか」と声をかける。昴星はこくんと頷く。
「でもって、ご飯食べたらまたいっぱい遊ぼうね?」
流斗はぼくにキスをして言ってから、昴星にもキスをする。ぼくも昴星とキスをした。
ぼくが幸せだと思うのは、ぼくがこうして幸せだと思うときって大好きな二人も同じくらいに幸せだと感じてくれていることが判るからだ。満悦という言葉が、たまらなくしっくりくる。
ぼくがそんなことを、のんきに考えていたときだ。
ぼくら三人の背中で、かちりとドアが空く音がした。
「……こっちは、女湯なんですけど」
反射的に振り向いたところ、無表情に立っている女の子の姿。
「えっ」
「男湯は、お隣です。それから、もう四時なので、お風呂はおしまいの時間です」
彼女はとても静かな声だった。ぼくら三人が裸であることに動じる気配もない。ただ昴星は大慌てで膝を抱えて裸を隠したし、ぼくも急いでそうした。
彼女は肩に白いタオルをかけ、手にその肩ほどまである長さのデッキブラシを持っていた。
こんな風に冷静に観察していることからも判るとおり、彼女は裸ではなかった。学校の水着を纏っているのだ。
ぼくが誰何するより先に、
「……ここのお風呂の、管理人です。……管理人の、娘です。今日はわたしが掃除の当番なので」
「か、管理人さん……」
彼女は洗い場を見回す。乾いたままのタイルを見て、「……お風呂に入る前には、ちゃんと体を洗ってください」と、相変わらず平板な、しかし、少し怒ったような声で言った。
「あ、ああ……、そう、だよね、ごめんね、もう、すぐ出るから」
彼女の視線は次に、壁の大穴の向こうに当てられた。
そこにあるのは、昴星の濡らしたパンツである。そのことに気づいたあとの昴星はびっくりするほど早かった。ふりちんのまま浴槽から表へ飛び出すと、背中にブリーフを隠す。しかしそのせいで、お湯でしわしわになって伸びたタマタマまで管理人の彼女に披露することになってしまった。
「……そんなに汚いのに、洗わないで入るなんて非常識です」
ぶっつり、彼女に言われて昴星は真っ赤になる。結局今日だけで二度、オモラシとふりちん姿を女の子に見られてしまった。
物怖じしないのは、流斗だけ。
「はじめまして」
浴槽から出て、「洗わないで入っちゃってごめんね。そっちのドア、あかないんだと思ったんだ」
と、冷静に言う。管理人の彼女も「鍵がかかっていました。壁の下の方に。明日からそれで開けてください」冷静に答える。
「ぼく、流斗。四年生」
そう自己紹介した流斗に、少しも表情を動かさずに、
「由利香。五年生です」
と答える。「じゃあ、ぼくのいっこ年上で、昴兄ちゃんのいっこ年下だね」
ああ、昴星が六年生にもなってオモラシしたことまでばれてしまった。「汚い」と言われた昴星は土の上でふりちんのまま、今更隠してどれほどのプライドを守れるのかもわからず、立ち尽くしている。
「ゆりねえちゃんは、男の子のおちんちん見てもびっくりしないね?」
流斗がいきなり物騒なことを訊く。
「見慣れていますから」
由利香は平静な声を少しも揺らさずに答える。「慣れてる?」とぼくが訊くと、こっくりと頷く。
「家も、温泉なのです。家のお風呂もわたしが掃除することもあって、……男の人の裸なんて、いつも見ています」
なるほど。
由利香は溜め息を吐いて、「外で待っています。出たら教えてください」とデッキブラシを置いた。
「あ、ああ、うん……」
ぼくが頷き、背後で昴星がほっと息をついたのが聴こえたのに、
「ゆりねえちゃんはお風呂に入らないの?」
流斗が首を傾げて訊いた。「こっち、女の子のお風呂なんでしょ?」
「……そうですけど」
「いつも、お掃除だけしに来るの? でも、それなら石鹸とかタオルはいらないよね?」
流斗の言葉に、彼女は初めて表情を動かす。彼女が首から下げたポシェットの中には、どうやら本当に石鹸が入っているらしい。
どうしたものか、とぼくは考える。
流斗は「ぼくら、すっぽんぽんでもいいよ。ゆりねえちゃんは、いっつも水着でお風呂に入るの?」と平喘と質問を重ねる。
「……このあと、男湯も洗うので……」
「じゃあ、ここで一緒にお風呂入ろうよ。……お兄ちゃんは恥ずかしい?」
昴星ではなく、ぼくに訊いた辺りに流斗の意図が伺えた。
……大丈夫だろうか、と懸念する気持ちも当然あるが。
「ぼくは、……別に」
結局は、そう言ってしまうことになる。
由利香はじっとぼくの顔を見ている。何を考えているのかを想像しづらい、希薄な顔のままだ。
何を考えているのか判らないという点で言えば、流斗も同じだ。いつでも柔らかな笑顔でいるから、思考の中身が読み取れない。そういう点では顔の形こそ違うが由利香と流斗は似ているのかもしれない。
「わかりました」
背後で昴星が顔を引きつらせるのを感じた。
「おじゃまします」
由利香はぺこりと頭を下げて、ぼくの向かいに浸かった。ぼくとしては、……昴星・流斗とほとんど変わらない歳の少女と一緒のお風呂に入ることなんてこれまでなかったから、もちろん緊張を催してはいるけれど、それ以上に、流斗が何かしでかすつもりなのではないかということに不安を覚えている。「恥ずかしいの大好き!」と言って憚らない少年であるからして。
一方で、いつまでも吹きさらしに裸で立っているのがいたたまれなくなったらしく、ぶつぶつ言いながらぼくの隣に浸かる昴星については心配していない。昴星の方が正常な羞恥心が働くのだ。
流斗は由利香の側の縁にお尻を乗せて、湯の中に足をゆらゆら泳がせている。
「由利香ちゃんは……」
ぼくは、沈黙から逃げるように訊いた。「いつも、こうして掃除のついでにお風呂に入って行くの?」
由利香はぼくに視線を向けもしなかったが、
「……身体や髪を洗うのは、家に帰ってからです。でも、わたしはこのお風呂が好きなので」
「いいお風呂だよね、ここ」
ぼくはお世辞でなく、言った。
「景色もすごくいいし、お湯も、……ぼくら、下の旅館に泊まってるんだけど、あっちより少し温度が高くて、でもその分しみるようなね」
由利香が顔を上げた。相変わらず表情はないが、少しその目が煌めいた気がする。
ただ、ふっと彼女は細い溜め息を吐いて、
「ご旅行で来られたんですか?」
と質問を投げる。
「うん、……ええと、ぼくらは……」
どう説明したものか。まあ、まさかね、「ショタコンのお兄さんと、えっちな遊びに付き合ってくれる男の子二人だよ」なんて言えないよね。
「おともだちなんだよ」
流斗があっさりと言ったが、「……おともだち?」と由利香はやや、怪訝そうな声を立てる。
仕方ない。
「そう、まあ、友達ではあるんだけど……。二人は、ぼくの地元の子供たちでね。本当は、そっちの、流斗、のお父さんとお母さんが来るはずだったんだけど、急に用事が入って、来られなくなってしまったものでね、ぼくが代わりに、この子、昴星も一緒に来たんだよ」
我ながら説明がぎこちないのは、この事象にいくつもの秘密が内包されているからに他ならない。
由利香は納得したのかしていないのか判らないような顔をして、少し考えて、ぼくに視線を向けて、
「あなたは、子供の相手するのが好きなのですね」
と、断定するような言い方をした。
「ああ……、まあ、うん。この子たちと遊ぶのは」遊びの内容はどうあれ「ぼくにとってもすごく楽しいことだよ」
適当な答えだ。それはドンピシャという意味でも適当だし、いい加減という意味でもある。
「ねえ、ゆりねえちゃんはいつも水着でお風呂にはいるの?」
すっぽんぽんの流斗はのどかな声で訊く。ちら、と流斗の顔を見上げて、「掃除のあと、着替えるのが面倒なので」と答える。流斗に対しても敬語を崩さないのは、彼女の癖なのか、それともぼくと昴星が居るからだろうか。
「……それに、ここ、こんな風に外から丸見えですから」
由利香はそう付け加える。「ですから、若い人は、……特に女の人はほとんど入りに来ません」
彼女の言葉の意味はすんなりと飲み込んだように、「ゆりねえちゃんは、誰かにのぞかれたことあるの?」とあっさりと訊いた。由利香は憮然と、頷いた。けれどそれを打ち消すような声で、「でも、わたしは別にいいです。男の人のほうが、困ってしまうと思うので」
それは、確かに。ぼくも由利香が裸で現れたなら「キャ」ぐらいの声はあげていたように思う。そういうケースでは往々にして、どんな事情があっても男のほうが悪いということになりがちだし。
「いつも、一人で掃除に来るの?」
ぼくの質問に、由利香が頷く。
「そう……、でも確かに男湯に人がいたりすると、きっとびっくりするよね」
「女湯に外から入った人たちがいるのを見てもびっくりします」
ぼくは肩を縮ませた。
「……男湯に」
昴星が久しぶりの発言をした。「男が入ってるときとか、どうすんだ?」
「外で待ちます。掃除するから出てくださいって言ってはいけないと、親に言われています」
「ふーん……」
冬など、きっと雪が積もる。そんな中で待つのは厳しいだろうから、多分女湯(つまりこっちだ)で温まりながら待つのだろう。仕事をするのは大変だろうけれど、それはなかなか贅沢なことであるように思われる。黄昏の雪見湯、大人でも憧れるようなシチュエーションを、十一歳ぐらいの女子が既に味わっているのだ。
「ときどき」
由利香はちょっと羨ましく思うぼくをよそに、言葉を継ぐ。「……一緒に入ろうって言われることが、あります」
「え?」
「うぇ?」
ぼくと昴星は揃って声を上げてしまった。
「男の人と一緒にお風呂に入るの?」
流斗だけは呑気な顔で訊く。
由利香は黙って頷いた。
「そ、それは、……水着を着てってことだよね? その、つまり」
「出来るだけ」
と由利香は無表情のまま答える。
「出来るだけって……」
そういう趣味嗜好を持った男の前で、とショタコンのぼくが言えた義理じゃないのかもしれないけれど……、こんな小さな女の子が裸を晒すという状態は、非常に危険である。
「ですから、わたしは男の人の裸を見ても何とも思いません」
いや、違うだろう。思わないようにしているというのが本当のはずだ。
「……嫌じゃねーの? そんなの……」
昴星が困惑しきったように訊く。由利香は固い表情のまま、「仕事ですから」とだけ答えた。
裸を晒すばかりでは、ないのかもしれない。ぼくは自分の考えたことが、ざらりとした触感を伴うことを自覚した。
また、沈黙がオレンジの光の中を塞いだ。ぼくはこの表情の色数が少ない少女が見ず知らずの男と入浴(あるいは、それ以上のこと)をしていることを、彼女の親たちが知っているのだろうかということを思った。……水着を着るよう言った、という時点て、どうも、知っているんではなかろうか、という気がする。
「一緒に風呂入って、どんなことすんだ……?」
昴星は膝を抱えて、上目遣いに訊く。
「お話をします」
「はなし?」
「……いつもは、その方がどこの旅館に泊まられているのかを訊きます。そして、次に来られるときにはわたしの家がしている旅館に泊まっていただけるように、お願いをします」
由利香の答えは、やっぱりたくさんのことを内包していたし、ぼくは自分の想像がある程度以上当たっていることを確信してしまった。
「それで……、そのお客さんは由利香ちゃんの旅館に来るの?」
浅く、由利香は頷いた。「……半分ぐらいの方は」
彼女に旅館の名前を聴いてみる。この近辺にも何軒か温泉宿はある、そのうちの、恐らく小規模と思われる宿の名前を彼女は答えた。
由利香の両親は、彼女に営業行為をさせているのだろう。
ぼくは何とも言えない嫌な気持ちになってしまった。「おしゃべりって、他にはどんなことするの?」という流斗の質問への答えで、それは益々厚く塗られる。
「背中を、……身体を、洗って差し上げたりします」
昴星も彼女の言葉の意味をはっきり読み取っただろう。膝を抱えて黙り込んでしまった。
由利香が、湯から上がってぼくに振り返った。
「……お兄さんは、そういうことをご存知なくてここへ来られたんですか?」
ぼくは、黙って頷いた。「この子たちが、こっちへ来てみようって言って……。だから、ここに温泉が湧いてることも知らなかったんだ」
流斗と並んで縁に腰掛けた彼女は、少し口を噤んでから、
「……またこの温泉に来られるときがあったら、もし良かったらわたしの旅館に泊まりにいらしてください」
と言った。
そういう日が来るとは思えなかったが、ぼくは「そうだね。こうしてここに浸かってるのも、きっと何かの縁だと思うし」とぎこちなく笑って答える。
由利香はじっとぼくを見つめて、
「……めずらしい方ですね」
と、なぜか感心したように言った。
「めずらしい?」
おうむ返しにしたぼくに、由利香はこっくりと頷く。
「お兄さんがここへ来られたのが、偶然だからかもしれませんけど。……ほとんどの男の人は、わたしに、……サービスをするようにおっしゃるので」
彼女は言葉を選ぶが、ぼくに伝わることは承知して居るらしい。
……ぼくはショタコンであって、女の子の身体にそう強い興味は持っていないのだ、……、というようなことは、当然喉の奥のでっぱったところに隠しておく。
「……大人の男が、そんなのばっかりって思われるのは……、ぼく自身、大人の男だから、ちょっと具合が悪いかな」
由利香ははっとしたように唇を開けて、少し俯いて「すみません」と呟く。小さな声の中に少女の含羞が響いた。
自分自身、危ういなと思うのは、……由利香が女の子でなかったら、つまり昴星や才斗のようにぼく好みの美少年であったなら、「じゃあよろこんで!」なんて言ってしまいかねないような自分だという自覚があるからだ。学校の水着だけ身に纏う少女と裸で話をしていてもぼくは自分が裸であるということにだけ、ちょびっとだけの緊張を覚えていれば良かった。
「お兄ちゃんはすごくやさしいんだよ」
流斗が脈絡なく言った、……脈絡なんて、全くないように聴こえた。
「だから、ゆりねえちゃんに大変なおしごとなんかさせたりしないよ」
由利香の「仕事」の内容について、流斗がどれほど認識しているのかということに関しては、……賢い子だ、そして必要以上の知識を備えてしまっている子であるから、まあ、ほぼ何もかも判っているのだろうと思う。ただ、そこまで判ってもまだぼくには流斗の意図が読めない。昴星を見れば、昴星も同じく判らないと言うように首を振る。
「ゆりねえちゃん、いっつも男の人の身体洗ってあげてるんでしょ? 今日はお兄ちゃんに身体洗ってもらいなよ」
「は?」
思わず声を上げたぼくの隣で、昴星は口を丸く開けたまま言葉もない。
「ね。お兄ちゃんはゆりねえちゃんに変なお仕事させたりしないよね?」
そりゃ、そうだけど……、そうだけどさ。
由利香の意見を無視してはいけない。ぼくがそっと彼女を伺うと、由利香は「でも、お客さんにそんなことをさせたりするのは」と不安げに口にする。
「大丈夫だよ、ぼくたちだけのナイショにしよう。ゆりねえちゃんのおとうさんたちにバレなきゃいいんだよ」
ね、と流斗は言う。
ぼくには、流斗の考えが全く判らない。
ただ、しばらく黙って考え込んでいた様子の由利香は、小さく、でも確かにこっくりと頷いて、湯槽から上がる。自分で腰掛けを持って来て、「……すみません、お兄さんが、嫌でなければ……」と頭を下げる。
流斗と昴星が見ている前で、彼女は自分の裸身を隠す水着を上から脱いで行く。その動きにはためらいがなくて、「ちょ、ちょっとっ……」と慌てて昴星が背を向けた。女の子の裸は、……確か、サクラとミズホという名前だったと思うけど、昴星も見たことがあるはずだけど、慣れているわけではないらしい。
「お、おれらいるんだぞ、女子が、そんな……!」
背中を向けたまま、珍しく純情な一面を覗かせる。
由利香は、裸のどこも隠さずに腰掛けに座り、「……慣れていますから」とだけ言う。
「ほら、お兄ちゃん。ゆりねえちゃんカゼひいちゃうよ」
「う、うん……」
女性の裸だ、……見たところ由利香の身体はまだ子供の色が濃い。が、水着越しにも判ったのは、その胸部が静謐な成長を始めているということ。だからこそ昴星も大慌てで背中を向けたのだ。
「……よろしくお願いします」
外気がふんだんに入ってくるからだろうか、由利香の前の鏡は全く曇っていない。つまりぼくには鏡ごしに彼女のバストがほとんど真正面に見えてしまうという状況だ。
「ええと、はい、こちらこそ……」
自分でこういうことを白状するのも恥ずかしいが、率直に言ってぼくは、異性の裸を自分の目で見たことがない。いや、そりゃもちろん、あのスーパー銭湯を始めとして男の子の裸を見たいと願って行動する過程で余禄的に女の子の裸を見たことはあったけれど、何となく「いやそれは目的と違う」「っていうか見ちゃダメだ」というような自制心が働いていた気がする。それは多分もう、小学校の四年の時だったと記憶しているけど、前年まで当たり前のように同じ教室で体育前後の着替えをしていた同級生女子たちが更衣室での着替えを行うようになり、それまでなんとなくアイマイだった男女の性差が厳格な担任の顔と共に明確化されて以来、ぼくという男の中に根付いた感覚とでも言えるかもしれない。
中学、高校、大学と、女性との付き合いはほとんどせずに来た。オナニーを覚えた中学ぐらいにはもう、ぼくは自分の性のベクトルを決して積極的ではないにせよ自覚するようになっていたから、同級生が次々とガールフレンドと仲良しになるのを見てもさほど羨ましくも思わなかったし、エロ本はまあ、何冊か、気散じに持ってはいたけれど、本腰を入れて読み込むということはなかった。
「……あんまり、力入れないようにするけど、痛かったら言ってね?」
目の前にある肩は、見慣れた少年二人に比べて明らかに華奢である。骨格そのものが違う生き物のそれだと自覚して、またどきりとさせられる。
「ゆっ……、由利香ちゃんは」
声が裏返りかけた。再び浴槽に沈み、縁に肘をかけてぼくらの様子を観察している流斗がクスッと笑うのが聴こえた。
「……ええと、お父さんと一緒にお風呂入ったりするの?」
泡だてたタオルで、そっと、もう、「洗う」というより「撫でる」と言った方が相応しいような力加減でもそもそやりながら訊く。あまり、気持ち良くないかもしれない。
「……おととしぐらいまでは、一緒に入っていました」
視線を感じて、そっと顔を上げたときに、ずっとうつむいていた自分に気付く。
「でも、……このお仕事をするようになってから、家のお風呂には一人で入りたくて……」
「そう……、なんだ」
そりゃそうだろう、仕事で日々、何の感情も抱かない(というか、まだ抱けるような歳でさえないだろう、この子は)男の身体を洗わされ、一緒に入浴をすることを求められ、……おうちでお風呂に入るときぐらいは男の裸から目を離してのんびりしたいはずだ。
「あの、……もういいですよ。前は、自分で洗います」
正直、ぼくはホッとした。異性の身体と真っ正面から対峙して、これ以上冷静でいられるとは思えなかった。
「ありがとうございました」
「い、いや、こちらこそ」
何が「こちらこそ」なのかは、判然としないけど。
「お兄ちゃん、背中洗うの上手でしょ。ぼくらもいっつもお兄ちゃんと一緒にお風呂のときにはいっぱいきれいにしてもらうんだよ」
自分の身体に飛んだ泡を落とし、逃げるように浴槽に沈み込んだぼくに、「気持ち良かったです」と、多分お世辞だろうけれど、由利香はそう言った。
「昴星……、大丈夫?」
「うー……」
のぼせてしまったのだろう、汗だく、顔も真っ赤である。
「一回上がろう」
「うー……、ちんこ見られんのヤダ……」
「さっきも見られたでしょ。それに彼女は……」
「見慣れてますし、別に好きこのんで見たりはしませんから」
由利香はぼくの言葉からつなげて言った。
「ね、ほら」
ぼくはまだ渋る昴星を抱っこして、浴槽の縁に横たえる。由利香は身体の前を洗い、昴星の方に視線を向けることはしない。
「ねえねえ、ゆりねえちゃんはこれまでおちんちん何本ぐらい見てきたの?」
流斗は自分の分の腰掛けを持ってきて由利香の隣に足を広げて座る。おちんちんの単位は「本」なのか……。まあ、わからないでもないけど。
「……そんなの、数えたこともありません」
「そうなの? じゃあ、すごくいっぱい見てきたんだねえ」
ぼくが冷水に浸したタオルを昴星のおでこに乗せる間も、流斗は楽しげに由利香と話をしている。
流斗は、由利香の裸に興味があるんだろうか。いや、きっとあるに違いない。サクラとミズホという友達二人の裸をいつでも見られるという立場に居たとしても、やっぱり自分とは違う「異性の裸」に興味を抱くのは、幼くとも男の子であれば当然のこと。
流斗は由利香が泡を流すまで待って、
「ね、お兄ちゃんが洗ってあげた分、ぼくのこと洗ってよ」
とねだった。おちんちんを両手で隠していた昴星がぴくんと震えて顔を向ける。ぼくは昴星のためにもう一枚、自分の腰に巻いていたタオルをその腰にかけてあげつつ、……何を始める気なのだ、流斗は。緊張が再び高まるのを思った。
由利香はぼくにちらりと視線を送るが、どういう意味なのかはわからなかった。
「……わかりました」
由利香は溜め息の混じったような声で言う。
「えへへ、うれしいなー、女の子に身体洗ってもらうのはじめてだよ」
流斗は微笑みながらひょいと立ち上がる。
「じゃあゆりねえちゃん、ぼくのおちんちんきれいにしてよ」
「んなっ」
昴星がおでこのタオルを落として起き上がった。
「りゅ、流おまえ、んなん……っ」
由利香は顔の真正面で揺れる流斗のペニスを見ても表情を変えない。
「ね? ゆりねえちゃん、いつも男の人のおちんちんきれいにしてあげてるんでしょ? ……ぼくもね、お兄ちゃんや昴兄ちゃんのおちんちんいっぱいきれいにしてあげるんだよー、でもって、きもちよくしてあげて、すっきりさせてあげるの」
「流斗っ」
ぼくも、慌てて大きな声をあげたが、由利香の目はぼくを真っ直ぐに捉えていた。
彼女は、理解してしまったはずだ。
納得してしまったはずだ。
「ナイショなんだよね? このお風呂でゆりねえちゃんがしてることも、お兄ちゃんとぼくたちが遊んでることも。もちろん、昴兄ちゃんがオモラシしたことも、だよ?」
流斗は恐ろしいほどスムーズに言う。
由利香が、黙ったまま頷く。
「……ナイショ、です」
ぼくらの中で一番年下の少年は、あっけないほど簡単に、由利香に秘密を共有させた。
「……お客さんと、一緒にお風呂に入ったり、……身体を洗ってさしあげたりするのも、ナイショです」
「うん、ぼくら、誰にも言わないよー」
流斗の言葉に納得したのか、由利香は石鹸を手の中で泡だてはじめた。ぼくに、
「いいんですか?」
と、咎めるような響きは一切感じさせない淡白な声で問う。
「……お兄さんが、いつもしてあげていることを、わたしが」
「い、いや、いいっていうか、その……、由利香ちゃんは……」
「わたしは」
由利香の泡を纏った両手が、流斗の股間に当てられた。
「……いつもしていることをするだけですし、それに……、あまり綺麗じゃない方の身体を洗うのは憂鬱ですけど、この子やあなたたちみたいに若い方の方が気持ちはずっと楽です。……いまのも、ナイショです」
由利香の言葉はぼくにも同意しやすい。ぼくだって、おばちゃん(ごめんなさい)の身体を洗うなら、由利香のような少女を洗いたい。
しかし、それにしたって……。
「えへへ……、ぬるぬるきもちいい。ぼくもこんどお兄ちゃんにしてあげようっと」
由利香は丁寧に流斗の性器を洗って行く。流斗の足の間にも彼女の指は入り、浴槽の縁に腰掛けて流斗のお尻を見ているぼくと昴星には、時折その指先が引き締まった流斗のお尻から顔を出すのが見える。
彼女にとっては当たり前の「仕事」なのかもしれないし、その手つきも慣れたものだけど、由利香が流斗と一つしか変わらない子供なのだということを忘れてはならない。
「流斗、くん。横になってください」
手を引いて、桶に湯を貯めて石畳の床に流した彼女は流斗にそう指示した。「はーい」と素直に仰向けになった流斗の石鹸だらけの下半身で、おちんちんは当然のようにもう鋭く勃起している。
「何を……、するの?」
やっとのことでぼくが訊くと、
「身体を、洗うんです」
きっぱり、由利香は言って、さっき洗ったばかりの身体のフロントにまた泡を纏わせていく。そしてぼくと昴星の視線を気にもせず、自らの身体を横たわる流斗に重ねた。
「わー、すごいぬるぬるする、ね、お兄ちゃん、あとで旅館戻ったらぼくもこれしてあげるね? 昴兄ちゃんといっしょにこれしたら、きっとお兄ちゃんうれしいよね」
そりゃ、嬉しいけどさ……。
「重たくないですか? 苦しかったら言ってください」
流斗に言いながら、由利香は自分の泡を塗り付けるように身体を動かし、流斗を「洗って」いく。……いつも自分の旅館に客を呼ぶためにこんなことをしているのか……。ぼくは由利香の覚悟というか責任感というか、背負っているものの大きさに気圧される。もちろんそれは、彼女が幼い身体で背負うには重過ぎるものだ。
「あはっ……、すっごい、女の子とこんなことするの、すっごいえっち……っひゃン!」
一回り大きな由利香の身体の下、流斗の身体がぶるっと震えた。
「痛かったら、言ってくださいね? 自分より小さい人にこういうことするの、はじめてなので……」
「ん、だいじょぶ。おちんちんキュッてされたからびっくりしちゃっただけ」
おちんちん、キュッ、って……。
そっと視線を由利香のお尻に向ければ、彼女が自分の足の間で流斗を挟むようにして愛撫しているのが見えた。
その、背徳的な行為。
ぼくは自分が、年の近い女の子に感じさせてもらっている流斗に興奮しているのか、それとも興味のなかったはずの少女の裸にどきどきしているのか、……自分の心臓が迷っているのを感じながらも、間違いなく、性欲が反応しはじめていることに戸惑っていた。
男の子相手にするだけでも罪深いことなのだ。けれどぼくはほとんど初めて見る「少女」の卑猥な姿に、より強い罪悪感を覚える。……男ならば判ると思うけど、罪の意識は性欲を収めるどころか煽るばかり。
「お兄ちゃんも、おちんちんおっきくなってるの?」
流斗が喉を反らしてずばり訊く。
「お兄ちゃんも、いっしょにしようよ。ね、ゆりねえちゃん、いいでしょ?」
こんなぼくにも、人間として当然持っているべき倫理観ぐらいあるんだ。本当ならば、流斗を止めなければならない。いや、そもそも由利香に「仕事」をやめさせなければならないところだ。
「……わたしは、……お兄さんがしたいなら、すればいいと思います」
由利香の頬は、ほんのり染まっているように見える。している行為を考えれば当たり前の現象だが、これまで平板な表情しか浮かべてこなかった彼女の頬を見たとき、ぼくは自分に火がついてしまったことを自覚する。
「お兄ちゃんと、こっち、ここ」
と流斗は身を重ねる自分と由利香の隣を指差す。
「いっつもね、お兄ちゃんと昴兄ちゃんと三人で、すっごいえっちなことたくさんしてるんだよ。男の子だけでもすっごくきもちよくなれるの」
流斗は自らのおちんちんを由利香のあそこに擦り付けるように動かしながら説明する。小さく幼い流斗のおちんちんであっても熱のこもった男の性器である以上、由利香の心に響くらしい、彼女はかすかな声を息に混じらせていた。
「ね、お兄ちゃん、どんなことしてるか教えてあげてもいい?」
ちっともよくないが、ぼくは勃起を隠したまま頷く。
「ぼくと昴兄ちゃん、オシッコもらして遊んでるんだよ」
ぴく、と由利香が動きを止めた。
「お兄ちゃん、ぼくたちのオモラシするとこ見るとすっごいおちんちんかたくしてくれるんだ。お兄ちゃんのおちんちん、おいしいんだよ。きっとゆりねえちゃんの知ってるどんなおちんちんより、一番おいしいよ」
由利香の視線に、……ぼくはこっくりと頷いた。「そうだよ、ぼくは……、そういう人間だから、君が裸になったのを見ても、びっくりしたけど、……その、君に『仕事』をさせるつもりは全然なかったんだ」
由利香はじっとぼくを見上げている。
その真っ直ぐな目は、ぼくに更に言い訳をさせる。
「でも、その、……由利香ちゃんも綺麗だと思うし、……ぼくは、女の子の裸を見たこともほとんどなくて、だから……」
自分でも、何を言ってるんだか判然としなくなっている。
ぼくはショタコンなのだ。でもちょっと待って、と誰に断る必要もないのだけど、……ショタコンであるということは間違いないにせよ、自分が欲情する対象はどんな男の子、どんなおちんちんでもいいというものでもなくって、やっぱりベストは昴星や流斗のような愛らしい美少年。「美」という要素が大事なら、由利香が少女として美しい見目をしていることもまた事実。
ぼくは自分が主に少年を愛しつつも、「美」なるものにはまっとうに反応する神経を持っていたことを初めて知る。一番好きなのは少年、でも、二番目があっちゃいけないとも思えない。
「オシッコなんて、きたないです」
由利香は紅い頬で、しかしはっきりと咎めるような声で言った。その言葉はまっすぐにぼくの胸に刺さる。
「ま、まあ……、そうなんだけど」
「……どうして男の人ってオシッコが好きなんですか?」
「オシッコはきたなくないし、いい匂いでおいしいよ」
流斗が由利香に言う。「ね、そう思うよね?」と同意を求められて、ぼくはこっくりと頷く。ぼくが元々執着していたのは何もオシッコだけじゃなかったけれど、いま二人の美少年と共に時間を過ごすときには、もうオシッコなしには考えられない。
「オシッコは、みんなするもの」
流斗は説明する。
「大人も子供も、男の人も女の人も、オシッコはみんなするよ。いまもたくさんの人がオシッコしてる。……ほとんどの人は、ただするだけ。でもぼくと昴兄ちゃんのオシッコは特別で、お兄ちゃんのことをいっぱいどきどきさせて、おちんちんかたくしてあげられるんだ。だからほかの人がぜんぜん考えもしないやり方でオシッコを役に立ててもいいんだって思うよ」
誰かの同意など、到底取り付けることのできないような意見ではあろうけれど、少なくともぼくと昴星は全面的に同意してしまえる。
「だから、ぼくはお兄ちゃんのためにオシッコするし、オモラシするし、それでぼくもいっぱいきもちよくなれるから、すごく幸せなんだよー」
由利香は純真無垢そのもので居ながら性欲を秘めた美少年の顔をじっと見つめている。
納得してもらえるはずもない。
そう思っていたが、彼女はぼくの手の甲へ視線を送って、言った。
「お兄さんは……、いいんですか?」
「え……?」
「……流斗くんの後で、洗ってさしあげます。お客さんに身体洗っていただいたのに、何もしないなんて、ダメですから」
「え」
由利香は無表情のままそう言い切ると、流斗の身体の上で身を起こす。……彼女のほんのりと膨らみを帯びたおっぱいの先、ピンク色の乳頭、まだ昴星たちと同じような粒状の乳首に絡むように、白い泡が流れて行く。滑らかな肌を辿って視線をおろして行けば、流斗のおちんちんを跨ぐところに女の子の一番隠しておかなければいけない場所がささやかな亀裂として、存在している。
泡が擦れ合う音に自分の声を隠しながら、由利香は献身的に流斗へ施す。
「ん、ん……、ゆりねえちゃんのおまんこ、きもちい……」
「お」
「おま……」
思わず流斗が漏らした声に、由利香と昴星が反応する。
「……そんなこと、男の子が言ってはいけません」
「えーどうして?」
「……どうしても、です」
由利香に叱られて、納得はしていない様子だが、「はあい」と流斗はきちんと返事をする。「男の子のときには言わないよ」と付け足したから、要するに「女の子」のモードのときにはいくらだって言うのだろうと思う。
「じゃあ……、えっと、ゆりねえちゃんのおまたでおちんちんぬるぬるしてもらうの、すっごいきもちいい。……これでいい?」
天使のような少年の見た目に騙されがちだが、大人顔負けの性欲と知識を持っている流斗であることを、由利香ももう気付いているだろう。
「で、えっと、おちんちんからせーし出ちゃいそうなの。ゆりねえちゃんのおまたで出しちゃっていい?」
小さな声で「はい」と由利香は返事をし、また「ぬるぬる」を再開する。
流斗は少女から受ける愛撫に身を委ねていた。
「あ……はぁ……ン、すっごい、きもちい……」
由利香の足の間、亀裂に挟まれて扱かれていた流斗のおちんちんが、愛らしさそのままに脈打つ。「んっ……」と声を震わせて、流斗は自分のお腹に精液を放った。
由利香はそっと腰を上げる。「わ……」と小さく声を漏らしたのは昴星で、少年の視線の先では流斗のおちんちんと由利香の「おまた」の間で、少女の快楽の証が薄っすらと糸を引いたのが見えたのだろう。
「ゆりねえちゃん、ありがとう。すっごいきもちよかったよー」
流斗は起き上がり、膝を揃えてぺこりと頭を下げる。由利香はシャワーからお湯を出して、泡と精液に濡れた流斗の身体を改めて濯いでいく。「気持ちよくなれたのでしたら、よかったです」
そして、彼女の目はぼくに向く。
「……お兄さんは、ずっと流斗くんや昴星くんのような、……男の子とばかりしてこられたんですか?」
「ば、ばかりっていうか……、ぼくはこの二人しか知らない……」
「……女の子の裸を見るのも、ほとんど初めてって、おっしゃってましたね。……昴星くんも?」
不意に言われて、昴星はびくんと跳ねる。
「……大人の女の方の方が、いいのかもしれないですけど」
彼女は自分の身体に湯を当て、泡を全て流してしまう。水滴が珠となって流れるつるりと美しい肌、余すところなくぼくと昴星の目にさらされる。
「お兄さんも、いまの、流斗くんみたいに横になってください」
由利香の求めに、ぼくが従わない理由はもうなかった。前を隠したまま仰向けになったぼくに、彼女は先程流斗にしたように身を重ねる。
「……わたしは、まだ子供だから」
ぼくの胸板の上で、由利香のおっぱいは明らかにほんのり柔らかい。「お兄さんの、お勉強にはならないかもしれません、けど……」
「お、勉強……?」
流斗が友達の少女たちにおちんちんをいじらせることを、流斗はそう呼んでいる。
ぼくも無垢なる少女と同じ扱いか……、まあ、男の子相手に童貞を捨てるまで長い年月を清い身体で生きてきてしまったわけだけど。
「……お兄さんは、優しい人みたいです」
由利香は、そっとぼくの唇に唇を重ねる。耳から蒸気を噴いたかもしれない。
「ぼ、ぼくが、……優しい?」
「でなければ、昴星くんと流斗くんが、……こんな風にお兄さんのそばに居たりはしないと思います」
そりゃ、ぼくは二人のためなら何だってしてあげたいって思ってるけど……!
ほんの少し、由利香が微笑んだ。
「サービス、です。……ナイショです」
由利香はぼくの唇にもう一度キスをくれる。呆気にとられるぼくの、首に肩に、胸にお腹に、順に唇を落として行く彼女を呆然の中で眺めながら、……きっとこんなこと、「お客さん」にはしないんじゃないか、そんなことをぼくは考える。好きでもないおっさんの身体なんて、普通に考えたら洗うのだってイヤに決まってる。
由利香の唇はぼくの下腹部にまで至っていた。ぼくは相変わらず、自分の其処を両手で隠している。
「恥ずかしいですか?」
もちろん。
「……じゃあ、……こうしたら、恥ずかしくないですか?」
由利香がぼくの身体から降りる。
すぐに彼女は、逆さまにぼくの身体に重なった。
「わ、わあ……!」
昴星の声が聴こえる。
「ぼくたちがいつもやってるのとおんなじだね」
流斗はいつも通りの声でいるようだ。
「ゆりねえちゃんのおまた、ぜんぶ見えちゃった」
流斗の言葉の通り、ぼくの眼前には由利香の股間がそのまま晒されている。遮るもののない其処には、……おちんちんも、タマタマもない。その代わり、前部から繋がる亀裂が走っていて、その谷を見下ろす左右の唇が肉感的にぷっくりと膨らんでいる。
まだ性毛の息吹さえ伺えない。
「あ……」
由利香がぼくの手を、そっと退かす。
「……大きいですね、お兄さんの」
「そ、そう……かな……」
「それに、綺麗です」
「きれいなだけじゃなくて、いい匂いがして、おいしいんだよー」
流斗が解説を加える。「だからぼく、お兄ちゃんのおちんちん大好き。きっとゆりねえちゃんも好きになると思うよ」
また、彼女は少しだけ笑う。足の間からぼくを覗く、頬は、……やっぱり、恥ずかしいんだろう、紅い。
「触っても、いいですよ」
「さわ、う……、いや」
彼女は濡れていた。先程、流斗を洗ったときからもちろん全身濡れていたわけだけど、それ以上に其処から滲み出るものがあって、男の子の腺液とは違う匂いがかすかに漂う。
昴星のお尻の穴を触るときにも当然緊張を催すけど、正直それ以上。
だけどぼくに、ためらう時間はもう与えられなかった。彼女の唇が、「大きい」と褒めてくれたぼくのペニスに当てられたから。
「……ん……」
ぼくは興味関心よりも、自分を心地よくしてくれる彼女に応えてあげなきゃという気持ちに基づいて、由利香の足の間の亀裂に指先を当てた。……やはり、濡れている。思っていた以上に柔らかい。
「お兄ちゃん、女の子のおまた見るの初めてだよね?」
ぼくの頭のすぐそばに座って、流斗が言う。
「やさしく撫ぜてあげると女の子はきもちいいんだよ、どんどんぬれてきて、ぬるぬるになったら、そうっとゆび入れてもだいじょぶ」
自分よりずっと年下の流斗にそんなことを教わる日が来るとは思っていなかった。いや、そもそも女の子とこんなことをするときが来るとは。
昴星と流斗に出会ってからというもの、ぼくの人生には想定外が多すぎる。
「あっ……」
由利香の口元から、震える声が聴こえて来る。ぼくの指は流斗の指示するままに、由利香の唇を左右に開き、鮮やかなピンク色の内肉の中央に空いたごく細い孔へと、そっと、入る。
温かい。
狭い肉の筒の中は滑らかに濡れていて、ほんの少し動かすだけで水音が鳴り、細かな泡が立つ。独特の匂いが一層華やいで広がるようだった。
「由利香……、痛くない? 大丈夫?」
ん、と彼女は答え、じゅぷっと音を立ててぼくのペニスを深々と咥え込み、舌を動かしている。そのフェラチオも、驚くほど心地よいものだ。「仕事」としてこれまで多くの男にそういうことをしてきた経験が動員されて、ぼくをどんどん気持ちよくしてくれる。
「女の子は舐めてあげるとうれしいんだよ」
また流斗のコーチングが入る。流斗はお手本を見せるように、ぺろりと由利香の亀裂に舌を這わせ、それから内側へと舌を差し込む。ぶるりと由利香の身体に走る震えが、その口を通じてぼくのペニスに響いてきた。舌を抜いた流斗はいたずらをするように、その場所の上部にあるお尻の穴をも舐める。
それはさすがに嫌がるんじゃないのかと思っていたら、
「あ!」
ぼくのペニスを弾くように口から抜いて、由利香の身体が跳ねた。
恨めしげに振り返り、「そこは、ダメです……!」と、目に涙を浮かべて言う。ほら、やっぱり嫌がった。
けれど流斗はクスクス笑いながら、「ゆりねえちゃん、ここきもちいいんだ?」からかうように訊く。
「ぼくも昴兄ちゃんもお尻してもらうのだいすきなんだ。きっとゆりねえちゃんも『お客さん』にここしてもらって好きになっちゃったんでしょ」
由利香は真っ赤になって口ごもる。
「それは……っ」
「指、はいるかな。お兄ちゃんゆりねえちゃんのおまんこなめてあげながらこっちもかわいがってあげなよ。いいよね?」
流斗は勝手なことを言い並べる。
「由利香……」
「……知りません……!」
彼女は再びぼくのペニスを口に含んだ。やけくそのような勢いでフェラチオをするから、ぼくにはまたも考える暇がなかった。「ほら、お兄ちゃん早く早くー」と言う流斗の声に従って、由利香の肉の隙間に舌を入れる。ほんのり酸っぱいようなしょっぱいような、男の子のガマン汁とは香りも異なるそれを味わいながら、恐る恐る流斗の唾液でぬるつく蕾に指先を、ほんの少し、挿し入れて見る。
「んんっ……!」
舌先で、由利香の幼い穴が痺れたように震えるのが判った。
流斗の観察が正しかったことが証明される。ぼくは徐々に快楽の頂点へと近づきながら、由利香の肛門に可能な限り優しく指を出し入れする。
「や、あっ、いやぁっ……」
由利香の身体がまた跳ねて、仰け反る。じわり、ぼくの舌に親しみのある味の液体が広がったかと思った次の瞬間には、ぼくの顔面は由利香の其処から迸る金色の飛沫を浴びることとなっていた。
「い、やぁ……あぁ……!」
由利香の身体からは力が抜け切っていた。上体をぺたんとぼくの腹部に押し当て、太腿を痙攣させながら大きく開いた足の間からぼくの顔へと温水のシャワーを降らせている。
「ゆりねえちゃん、きもちよくなりすぎちゃった?」
ぼくの顔をぺろりとひとなめした流斗がいたずらっぽく笑って意地悪を言う。「おいしいね、ゆりねえちゃんのオシッコ」
ぼくはうっかり頷いてしまった。昴星のそれと比べればもちろん、流斗と比べても色のわりに足が薄く、匂いも軽いのである。当然、個人差もあろうけれど。
恥ずかしさに、怒ったような顔で振り向いた由利香に、ぼくは慌てて言う。
「大丈夫だよ、その、ぼくはオシッコ飲むの、慣れてるから」
おい、それのどこが大丈夫なんだ。自問するが、今のぼくに言えることはそれぐらいしかない。
由利香は怒ったまま、泣きそうに目を潤ませて、「……お客さんの……、お顔に……、きたないものを……」と絞り出すように言う。
「オシッコは汚くない」
流斗のような言葉が口をついて出て来た。「それに、あの、ほら、ぼくは女の子とこんなことするの初めてだから……、ね、きっと、サービスしてくれたんでしょ? ナイショで……」
由利香はむっと唇を尖らせてぼくを睨む初対面からまだ半時間も経過していないが、ここへ至って彼女の表情が豊かになったことはシンプルに嬉しいし、由利香は可愛い顔をしているのだった。
由利香はむくれたままプイと顔を背けると、ぼくの顔にオモラシをしたばかりの場所を押し付ける。同時に再びぼくへのフェラチオを、それまで以上のペースで行う。
「ゆ、由利香……っ」
「わー、お兄ちゃんいいなあ、ゆりねえちゃんのおまんこすっごい近い」
舌を伸ばすことも出来なかった。ぼくの亀頭を器用に舐め回しながら添えた手で扱かれては、耐えることなど出来ない。
柔らかな少女の口の中へ、ぼくはそのまま射精するに至る。
こく、と彼女の喉が鳴る音を聴いた。
彼女は起き上がり、ぼくの顔から降りると、「……これで、おあいこです」と唇を尖らせて言った。
おあいこ。多分、オシッコと精液を飲み合ったことばかりをさして言うのではないだろう。彼女の得た快感に等しいものをぼくが味わったことを意味しているのだと理解したとき、ぼくはこの女の子がぼくの愛撫でいってしまったのだと知り、どくんと心臓が転びかけるのを感じた。
由利香の覚える恥ずかしさは、想像するに余りある。しかし彼女は気丈であるように見える。プロフェッショナルの自覚のなせるわざかもしれない。
何にせよ、女の子の口で射精してしまった。我が身に起きた現象であるとはいえ、ちょっとまだ、信じられない。フェラチオの気持ちよさには詳しくなっていたつもりでいたのだけど。
足の間を濯いだ由利香はぼくの前にぺたんと座り、「……ありがとうございました」と頭を下げる。
「いえあの。こちらこそ……」
ぼくもバカみたいに頭を下げて、彼女の用意した洗面器で顔を洗った。
ぼくも射精した。流斗も。そして、由利香も「射精」という形ではないにせよ、一つのピリオドを迎えた。
残る一人に、ぼくら三人の視線は自然と向けられる。
「おっ、おっ、おれはっ……」
昴星はまだ執念深くタオルを外さないでいた。けれどそのタオルが背の低いテントみたいに尖っていることを、ぼくらは三人とも知っている。
「昴兄ちゃんもきもちよくならなきゃダメです」
流斗が由利香の言葉遣いを真似した。
「昴兄ちゃんのおちんちん、ちょっとくさいけど、慣れるとすごくいい匂いになるよ。きっとゆりねえちゃんも好きになると思う」
逃げの一手を打ちかける昴星を、ぼくはひょいと抱き上げた。拍子に腰からもうほとんど乾いていたタオルが落ち、ぼくらの中で一番背が低くて丸っこいおちんちんが上を向いているさまを、由利香に披露することとなる。
ぼくは昴星を後ろから抱えて、隠すのを許さない。
「……昴星くんは、わたしのひとつ歳上なんですよね……?」
戸惑ったように、由利香が問う。確かに「昴星くん」のその場所は、由利香より年下の流斗のそれより、もう一回り小さく短い。勃起してもあまりサイズ的な勢いを感じさせないおちんちんを見られた恥ずかしさに破裂しそうなほど真っ赤になった昴星に、由利香はクスリと笑った。
「かわいい」
「かっ……」
「ねー、昴兄ちゃんのおちんちん、かわいいよね。ちっちゃくてまるくって、らっきょうみたい」
「らっ……!」
男児としては屈辱的な言葉を次々投げつけられて、昴星は震える。
「でも、ちゃんと大人っぽいことも出来る。……そうだよね? 昴星」
ぼくは慰めるように汗塗れでしょっぱい耳にキスをする。「や……っ」興奮し切った敏感な身体は、おちんちんが脈打つのをこらえることもできない。
「由利香の裸見て、こんなに硬くしてたんだね」
ぼくの言葉に昴星は首を振るが、由利香がにこりと微笑んで立ち上がり、ぼくらとは形の違う足の間を見せると、それだけでビクビクと昴星のおちんちんはまた強張った。
「……昴星くんの、かわいいおちんちん」と、単語を用いたところで我に返ったように由利香は紅くなったが、すぐに気を取り直したように繋げる。「わたしが、気持ちよくしてあげますね……」
流斗も昴星も、顔のタイプは違えどどちらも素直に「可愛い」という言葉が出て来てしまうのも無理ないような顔をしている。しかるに、ぼくの口から出るのと、年下の少女の口から発されるのとでは、心への響き方に大きな差があるんだと思う。
由利香の指が、昴星のおちんちんを摘まむ。勃起していてもしていなくても、昴星の丸いそれは、何となく昴星自身の体型に似ている、……背が低くて、ぽっちゃりしてる、という意味で。
「……不思議、です」
ぽかんと、由利香は言った。
「何が?」
ぷるぷると震えながら屈辱をどうにか逸らそうと虚しい努力を続ける昴星の代わりに、ぼくは訊く。
「その……、形も大きさもさっき見たときとほとんど変わらないのに、……ちゃんとかたくて、あつくなってます」
「だって昴兄ちゃん、こうゆうの大好きだもんね」
噛み付くような目を、可愛い「弟」に向けた気配がある。でも昴星はぼくの膝の上で動けないから、流斗はへっちゃらだ。「あのね、ゆりねえちゃんにはナイショで教えてあげる。昴兄ちゃんはぼくよりお兄ちゃんなのにまだオネショなおらないんだよ」
「流ッ……!」
昴星の恥ずかしい秘密がまた暴露された。こういうときの流斗はサディズムが目覚め、極端に意地悪になるらしい。ぼくもいじめられないように気をつけなきゃ。
「いっつもびちょびちょのオネショパンツの中でおちんちんかたくなってるんだよね。昴兄ちゃんオモラシ大好きだし、恥ずかしいのもっと好きだから、夢の中でもオモラシしちゃうんだよ」
「そう」
ぼくも、同意する。「女の子におちんちん見られるような恥ずかしい目に遭ってるのに、すごく興奮してる。……可愛いでしょう?」少しばかり、自慢も含まれる。
由利香はしばらくぽかんとしていたが、「じゃあ……、さっきのパンツは……」
「そうだよ。昴兄ちゃんがあっちでオモラシしたパンツ。ほんとはまだオシッコガマン出来たのに、オモラシして、……おちんちんもかたくなってたんだよー」
普通ならそんな子、どんな可愛い顔してたってドン引きだ。
けれど、由利香が拒絶の態度を取ることはなかった。
「変態なんですね、昴星くんは」
彼女は穏やかな声で昴星のおちんちんをいじりまわしているばかり。
「それに……、六年生でオネショが治らないなんて、ここ、ちょっとだらしないのかもしれませんね」
彼女は咎めるように「昴星くん」のおちんちんの先っぽにたっぷり余った皮をにゅっと摘まむ。
「小さくって、オシッコガマンできないなんて、赤ちゃんみたい」
ぼくに由利香の愛で方を教えたように、流斗は今度は彼女に昴星の慈しみ方を教え込んでしまった。大好きな「昴兄ちゃん」が不慣れな女の子相手でも気持ちよくなってくれることを願ってそうする流斗は、実はとても、優しい。「実は」も何も、そんなこと知ってたけどね。
「昴兄ちゃんが一番きもちいいの、教えてあげる」
そう言い残して、流斗は浴槽に飛び込むとじゃぶじゃぶと湯をかき分けてまだわずかに湿っぽい昴星のオモラシパンツをお湯で濡らさないように持って戻ってきた。近くにそれがあるだけで、オシッコの匂いがぷんと薫る。
「なっ、なにすんだよっ、バカっ……!」
「お兄ちゃん、昴兄ちゃんの足広げて」
ぼくは言われた通りにした。昴星の足に、流斗は汚れたパンツを順番に通し、……一定の抗いは当然あったものの、結局昴星は黄色く冷たいブリーフで勃起したおちんちんを隠すこととなった。
「これが……、昴星くんのオシッコの匂い……?」
昴星の股間を中心として漂う臭いに、由利香は当然ながら戸惑う。……これはもう一ヶ月以上昴星と親しくさせてもらっているぼくには、経験則としてよく判る。昴星から、流斗から、会うたびにぼくは下着を譲り受けているけれど、二人の下着を引き出しの同じ段にしまうということは絶対にしない。昴星のブリーフから放たれる臭いが、流斗の下着に染み込んだ繊細な香りを塗りつぶすように支配してしまうのだ。
そのままにしておいて虫が湧いても困る(率直に言って、そういう虫が好きそうなにおいではある)ので、ぼく以上に大量の「昴星ブリーフ」を所持している才斗に保管方法を訊いたら、「晴れた日に日干しをして、吸湿剤と一緒にフードコンテナとかチャック付き袋に入れておけばいいです」と教えてくれた。あの子もぼくも、昴星の側にいるとこういう幸せな苦労が耐えないのだ。閑話休題。
「すっごいくさいでしょ。でも、勇気だしてかいでみると、だんだんいいにおいになってくるし、昴兄ちゃんのおちんちんオモラシパンツの中でどんどん気持ちよくなっちゃうんだよー」
オモラシをしたブリーフから漂う黄色いにおいは、濡れているときと乾いているときとでは全く違う。濡れているときには何かこう、甘さを強く感じる。一方で布地が黄色く染まる頃になると、しょっぱさのほうが強くなる。ぼくは化学にはあまり詳しくはないのだけれど(初めて書くことだけど、ぼくの勤務先は一応「研究所」という名称である。といって、ぼく自身は科学者でも何でもない)まあ、臭いの原因物質となる粒子が状況の乾湿の差によって活性化したり沈静化したりするのだという道理は判る。
総括すると、まだ湿っぽい昴星のブリーフからは甘じょっぱい、いや、甘さのほうがやや強いか、そして、生乾きの布特有の臭いも漂っている。ただ、……もう山の陰に隠れてしまったけれど、オレンジ色した太陽の光を浴びていたからか、全体的に柔らかなあたたかみをかもしているようにも感じられるにおいには、少なくともぼくは「臭い」という感想を抱くことはなかったし、……ひょっとしたら、いまなら由利香だって否定論をぶつようなものではないかもしれない。
「それで……、これを、どうしたらいいんですか?」
由利香はオモラシパンツの股間を自分に晒し、泣きそうになりながらもテントの支柱を震わせる昴星、にこにこと楽しそうな流斗、そして昴星の下着の感覚をペニスに受けてまた勃起しつつあるぼくに訊いた。
「そうだねぇ……」
ぼくはとぼけた声で昴星の紅い耳に訊く。
「どうして欲しい? ……由利香は昴星のして欲しいこと、きっと何でもしてくれるよ?」
「なんでも、は、無理ですけど……」
そりゃ「うんこ食え」と言われたって無理だろう、ぼくがさせないし、そもそも昴星がそんなこと言うわけもない。
そもそも、昴星がこの状態で、どれほど射精を望んでいたとしても正直に白状できるはずもないことを判って訊いているのだから自分のことながら意地が悪いとは思う。けれど、普段強気にぼくに施してくれる昴星のマゾヒズムが発露しているいまは、昴星にとってはこの「いじわる」だって快楽の重要なスパイスになる。
「やだっ、やだっ見るなよぉっ」
昴星が首を振って泣き声を上げる。その声は本当に高く透き通っていて、女の子顔負けの可愛らしいものだ。流斗がクスクス笑いながら、「昴兄ちゃん、オシッコ出ちゃいそうなんだよ」と由利香に教えて、
「いいじゃん、昴兄ちゃん、ゆりねえちゃんにオモラシしちゃうとこ見てもらいなよ。六年生なのにオシッコガマンできなくってパンツびちょびちょにしちゃうとこ」
きっと、昴星の心はそれを望まない。年下の女子の前での失禁など、少年にとっては最も誇りを傷付けることだろうから。
けれど、身体がそれを望む。さっきのオモラシから経過した時間を考えれば、小さな膀胱にはまだ余裕があるはずとは思う。けれどその後にもたらされる快楽の大きさを知ってしまった身体は、誘惑を跳ね除けることが出来ないのだ。
「……いいんだよ、昴星」
耳へキスをして、言葉を差し込む。「ぼくらだけのナイショなんだから、何したって……」
「あっ」
ぼくが言い終えないうちに、ブリーフの尖りに湧き水が浮かんだ。だからいまの「あっ」は由利香の上げた声。
「本当に……、漏らしてる……」
ぼくの内腿にまで伝う、生温かい水を解き放ちながら、昴星は抗いを完全に止め、ぐったりと身体から力を抜いていた。括約筋の遮蔽をなくして自由になった昴星のオシッコが、ブリーフからどんどん溢れてくる。
「お風呂の床のお掃除、増えちゃったね。でもオシッコはお湯で流せばすぐきれいになるからきっとだいじょぶだよね」
流斗の言葉に、導かれるように由利香はこくんと頷き、一つ年上の少年の失禁という、多くの男を知るはずの彼女でも初めて目にするに違いない痴態を見入っている。
「今日だけで、もう七回目だよ、昴兄ちゃんオモラシするの」
流斗が教える。そうだったっけ? と記憶を辿ろうとすると、「電車の中でオムツしてたんだけど、その中で一回、その後に駅のおトイレで間に合わなくなっちゃってオムツからオシッコ溢れちゃったのがもう一回で、そのときは女の子に縮こまったおちんちん、ぼくも一緒に見られちゃった。それから旅館でもう一回して、そのときはかっこいい黒のパンツだったよ。オモラシパンツの中でせーし出しちゃって、それできもちよくなりすぎちゃってもう一回。で、さっきあっちの原っぱでして、いま」
「……一回、足りなくないですか?」
「今朝も昴兄ちゃん、きっとオネショしちゃったから、それ入れてぜんぶで七回だよ」
半分は意図的なものであったにせよ、……どんだけだらしないおちんちんをしているのだ、昴星は。
でも、だからこそ可愛いでしょう?
「男の子のパンツはね」
二回分の尿を吸い込んだブリーフの窓から、射精間近、元気いっぱいといった趣のペニスを流斗が再び取り出した。
「あ……っ」
と微かに昴星が声を漏らしたが、もうそれを止めることは出来ない。
「ここからこうやっておちんちん出すんだよー。ね? 昴兄ちゃんのおちんちん、さっきよりもっと元気になってるでしょ?」
由利香は、触れることをためらいはしなかった。オシッコにまみれた昴星のおちんちんを、恐る恐るつまんで、「……はい、さっきより、もっと……」素直に感想を述べる。ただ、首を傾げておずおずと、
「あの」
気弱な生徒が先生にするように、ぼくに問いかける。
「どうして、昴星くんはこんなにオシッコが、その、すごいにおいになってしまうんでしょう……」
「ああ、……うん、確かに不思議だよね」
その質問は、ぼくも才斗にぶつけたことがある。聡明な少年はむっとして、「そんなの、おれが知るわけないでしょう」とだけ答えてくれた。更にぼくが重ねて問いかけて把握出来たのは、「昔から昴星の身体からは、『昴星の匂い』がした。それは他の誰からも感じたことのない匂いで、髪とか服とか、ずっと嗅いでいたくなるくらい、不思議なもの」だということ。才斗のために大急ぎで付け足す必要があるのは、別に才斗は当初から昴星のオシッコのシミが付いたブリーフに拘泥していたわけではなくて、昴星の匂いならばなんでもところに、流星のように「オシッコの匂いでいっぱいの臭いブリーフ」が舞い降り、昴星自身がオモラシにハマってしまったことも重なりいまのごとき状況が出来上がるに至ったのである。昴星と才斗とどっちがより濃度の高い変態かということに関して言うならば、まあ、その判断を下すぼくも含めて「どっちもどっち」という答えが当然導き出されるが、発展させたのが昴星であることは間違いない。
で、由利香の質問に答えるのだとすれば、
「この匂いはね、昴星だけが持ってる、ぼくらにとっては宝物みたいなものなんだ。だから昴星は神様がぼくらを喜ばせるために降らせた流れ星みたいなものなんだよ」
答えになってない、けど、ぼくはそう信じている。
「由利香はこんな臭いオシッコ嗅いだことないでしょ?」
「……オシッコのにおい自体、あんまり嗅ぎません」
「それもそうか。でもこの匂いが特別だってことはわかるよね」
由利香は頷いた。そこには思いがこもっていた。
「ゆりねえちゃん、もうちょっと近くでかいでみなよ。近いとオシッコのにおいだけじゃなくって、もっといろんなにおいするのわかるよ」
流斗のそんなアドバイスに、由利香は素直に頷くと、やはりどこか恐る恐るの表情を消しきれないまま、それでも昴星の包茎の先に顔を近づける。
す、と彼女の鼻腔へ、昴星の匂いの粒子が吸い込まれる様子が見えるようだった。
「ん……っ!」
彼女の小さな声は、嗚咽をこらえるようでもある。しかし、……由利香の受けた衝撃がマイナス方面のものだとも、ぼくは思わない。
「どう?」
顔を上げて、しばし、目をぱちぱち瞬かせて、由利香は答える。
「びっくり、しました」
それはもう、本当に心から素直な感想だろう。それだけでも十分だったけど、
「……お部屋や、お風呂がこんな匂いだったら困ります」
「うう」と昴星が唸る。女の子に自分のおちんちんを見られながら、匂いの評定されるなんて。昴星が潜在的に求めて、しかし決して叶うことのない願いがいま叶っている。
「でも、ただ『臭い』とは違うよね?」
ぼくが問うと、由利香はきっぱりと意思を込めて頷いた。
「汚いもののにおい、ですけど、……ことばにすると『くさい』にしかならないかも、しれないです、自分のパンツがこんなにおいしてたら、はずかしいと思います」
昴星は見た目だけじゃなくて匂いまで「恥ずかしい」パンツを穿いてるってことになる。「でも……、イヤなにおいじゃ、ないです。このお仕事をしてて、ときどき、……すごくくさい人がいて、……どんなに洗ってもにおいがとれなくって、辛いことがあります」
彼女は当然「お仕事」であるから、自分の嫌悪感を押し殺してそういう男にも施すのだろう。偉い、とは思わないけれど、……でも、ぼくには他の言葉が浮かばなかった。
「でも、……昴星くんのおちんちんは……、ちがいます。くさいけど、イヤじゃありません」
由利香の言葉が昴星を救うのかそれとも更なる深みへ落とすのか、ぼくには判断が下せない。
確かなのは、もう昴星の心身共に限界に達しそうだということ。それに由利香のことをいつまでもここにとどめておいてはいけないのだということ。……もう、五時近くになっているだろう。
「由利香。昴星の匂いだけじゃなくてさ、味も、知ってみない?」
とりあえずは一つの休符に向けて、ぼくの語り掛けた声に由利香は頷く。「でもって、由利香にそんなサービスさせてばっかりじゃ申し訳ないから……、流斗、見てるだけじゃつまらないだろ」
「うん、ぼくずっとおちんちん上向いたまんまだよ」
「だよね。じゃあ、こうしよう」
ぼくは、昴星を仰向けにした。少年の身体にあって継続的な力を発揮できているのはおちんちんと括約筋だけだから容易だ。目が合った昴星は何をされるのか不安そうな顔でぼくを見上げる。「大丈夫だよ」と囁いてから、
「流斗、昴星の太腿に座って」
「んーと、こう?」
あいくるしい昴星と流斗のタマタマ、二つ、いや四つ重なって、いい感じだ。
「で、由利香。昴星もぼくとおんなじぐらい、女の子のことをまだ知らないんだ。この機会に教えてあげてもらえるかな」
由利香はすぐに理解した。「はい」と頷いて、
「わ、わっ、ちょっとっ……」
慌てる昴星の顔の上、自分の足の間、流斗風に言うならば「おまた」をさらけ出す。
「あはっ、昴兄ちゃんゆりねえちゃんのおまた見ておちんちんびくびくしてるー」
流斗が嬉しそうに自分のタマタマを「びくびく」の先端に擦り付ける。
「すっごい熱くってきもちぃ……。昴兄ちゃんのおちんちん、タマタマにひびいてくるよ……」
そのまま腰を動かして昴星を射精させかねない勢いだから、「昴星にも由利香のお口教えてあげなきゃ」とぼくは諌めた。
流斗が元の場所に腰を落ち着けると、黄色いブリーフから小さいなりに勇ましく突き上がるような昴星のペニスが再び由利香の顔の前に現れる。
「では、……失礼します」
と、姿勢並びに行為はどうあれ礼儀正しく言って、由利香は昴星を口に含む。
「んぁっ、あ、あっ……!」
呆気なかった。ほとんど舌の愛撫を施されもしないうちに、昴星の腰が弾む。由利香は目を閉じて、しばらくじっと口の中に出された液体の味を確かめているようだったが、やがてゆっくりと顔を上げ、「はぁ……」と息を漏らした。
「どうだった?」
ぼくの問いに、少し考えてから彼女は答える。
「オシッコの……、しょっぱい味がしました。でも、おつゆは、……あんまりしょっぱくなかったです」
「においは? せーしのにおい、わかった?」
由利香はこっくりと頷く。流斗はにっこりと笑って、「じゃあ、ぼくのもまたぺろぺろして。ゆりねえちゃんのお口、さっき、すごい気持ちよかった。……あ、でもちょっと待って」
流斗は何か(概ね、言葉は悪いが、ろくでもないことを)思いついたらしく、浴槽の向こうにある、ぼくの提げてきたカバンの元へと走る。カバンの中から引っ張ってきたのは、ここへ来るまで浴衣の下に穿いていた白のブリーフだ。まだ、さらりと乾いて、シミも付いていない。
流斗は腰回りと味をタオルで拭いて、再び昴星の太腿へと戻った。勃起したおちんちんは、もちろん全く収まっていない。何をするかは、ぼくにも由利香にもわかりきっていた。
「んん……」
綺麗だったブリーフの尖りの先から清流音とともに液体が染みの手のひらを広げて行く。
「ゆりねえちゃん、昴兄ちゃんのオシッコと、ぼくの、比べてみてよ……」
由利香はこくんと頷いて、雫を昴星のおちんちんへと降らせる流斗のブリーフに、もうほとんど戸惑うこともないまま口を付けた。数秒、目を閉じて、ゆっくりと吸い上げてから、こくんと彼女の喉が鳴った音が聴こえた。
「……やっぱり、しょっぱいです。でも、流斗くんのほうが、昴星くんのよりちょっぴり……、味がうすいと思います」
その感想は、ぼくがいつも抱くものと全く同じだ。
「あと、流斗くんのオシッコのほうが、においもうすいです。……どっちがいいっていうことではなくて……」
「ぼくは、どっちもいい匂いだと思う」
ぼくの言葉に、少しだけ微笑んで由利香は頷いた。
案外早く流斗の失禁は終わった。流斗はびしょ濡れのおちんちんを取り出して、由利香に見せる。其処へ由利香が口を近づけた途端に、
「キャ」
と小さく由利香が悲鳴をあげた。流斗の砲身の先から、再び金色の飛沫が噴き出したのだ。
「えへへ……、さっきのお兄ちゃんがしてもらったのの、おかえし」
由利香は怒らなかった。まだ一条を噴き上げる細身をそのまま口に含み、流斗のオシッコを上手に飲み下しながら、口の中では舌先での愛撫を行っている。
「ふぁ……っ、ゆりねえちゃんのおくち、やっぱりすごいきもちぃ……、すっごいえっちだよぉ……」
快感を覚えた流斗の腰がいつものように淫らなダンスを始めた。由利香は自分の口を一つの性器に換えて、流斗により強い快感を与えるために吸い付く音を立てる。
「ん、んっ、ゆりねえちゃん、でるよぉ……」
由利香は最後まで口を外さなかった。
顔を上げたときの感想は、「流斗くんのは、こっちのおつゆもうすいです」だった。
「朝からもう何回も射精したあとだからっていうのもあるかもしれないね。まあ、それでなくとも流斗のはいつもわりと味がさっぱりしてるけど」
とぼくは教える。
由利香は感心したように、「一人ひとり、みんな味が違うんですね」と呟く。
「いつも、そんなの気にしたことありませんでした。……お客さんのおつゆは、何も考えないようにして、飲むだけでしたから……」
「みんながみんな美味しいわけでもないだろうしね」
こくん、由利香は頷く。
「でも、二人のは美味しかったでしょ?」
今度は、首を振った。
「お兄さんのも、おいしかったです」
それは良かった。お世辞であっても嬉しいから、ぼくは由利香の黒髪を撫ぜた。
流斗のペニスの勢いは二度の射精によって収まりつつあったが、顔の前に女子のパンツの中をずっと見せられている「昴星くん」のおちんちんは相変わらず硬いままだ。ずっとオモラシパンツを穿いたままであることも影響しているかもしれない。
由利香はぼくの性器と、目の前の二人の性器とを見比べて、
「……質問があります」
とぼくを見上げる。
「二人のと、お兄さんのと、形がぜんぜん違うのは、どうしてですか?」
これまで何本も男性器と相対してきた少女の抱く疑問としては、ずいぶんとのんきなものだ。
「大人になると皮が剥けるんだよ。由利香は、そうだな、中学生ぐらいの子のおちんちんって見たことない?」
それぐらいの子になると、皮が剥け始めたり毛が生え始めたり、子供から大人になる過程が判りやすいのだけど。
「いつも、大人の人のばかりです。……同い年ぐらいの男の子のおちんちんを見るのって、これまでぜんぜんありませんでした」
「ぼくらのおちんちんもむけるんだよー」
流斗が自分の皮をつまんで剥き下ろして見せる。もちろん、すぐに行き止まりになってしまう。「お兄ちゃんのみたいに、くるんってむけるようになるのは、もっと大人になってから。ぼくのも昴兄ちゃんのも、まだ毛もはえてこないしちっちゃいし、子供のおちんちんだからふだんはこうやって」と指を離して、元の通りに先っぽを皮の中に隠す。
「しまってるの。おちんちんの先っぽ、そっとならきもちいいけど、あんまいじるとちょっと痛くてこわいの」
それは由利香には新鮮な知識だったらしく、「そうなんですか……」と驚いたような顔である。
「逆に、ぼくのも」
勃起しているから少々苦労するけれど、「こうやって、大人でもね、皮が被ることがある。大人になっても剥けない人もいるんだよ」
目を丸くして、ぼくのペニスを見る目は輝いていた。
「……わたし、みなさんのおかげで、いままで知らなかったこと、たくさん知ることが出来ました」
由利香は昴星の顔を跨いだまま身を起こして、「ありがとうございます」と頭を下げる。
「感謝されるようなことじゃないよ」
いや、本当に。
流斗が昴星から立ち上がり、
「ぼくたちも女の子のからだのお勉強いっぱいできたからおあいこだよ。ね? 昴兄ちゃん」
気安く由利香の足の間に手を伸ばす。由利香は「あっ……」と小さく声を上げて身を震わせたが、続けて流斗がピンク色のおっぱいの先にキスをしても、止めたり咎めたりすることはなかった。
「えへへ、ゆりねえちゃんのおっぱい、ちょびっとだけやらかいの、すごくえっち」
由利香は恥ずかしそうにうつむく。
「……わたしの、小さいです。もっと大きい子のほうが、いいです」
「でもぼく、ゆりねえちゃんのちっちゃいおっぱい、かわいいと思うし好きだよ。お兄ちゃんもそう思うよね?」
ぼくは全面的同意を込めて頷いた。由利香は機嫌を損ねたような顔をしたが、その目は流斗の指が粒のような彼女の乳首をつまむと途端、震え、とろけそうになる。
「ね、ゆりねえちゃん、いまパンツ持ってる?」
「……はい?」
「だって、お風呂のお掃除したあと、ぬれた水着でおうちまで帰るわけじゃないでしょ? きっと着替えも持ってきてるんだよね? たぶん、ここにはいてきたのと、帰るときにはくのと二枚」
由利香は、流斗の意図を読み取れないながらもこっくりと頷く。
流斗はにこりと笑って、「ゆりねえちゃんのパンツとぼくたちのパンツ、とりかえっこしようよ」と言った。彼女の全く想定していなかった言葉だったに違いないと、ぼくは思ったけれど、
「あげるのは、べつに、いいですけど……」
意外なことに、そう答えた。「……お客さんの中には、欲しがる方もいるんです。今度来るときに返すからって」
でも、ちゃんと彼女のもとへ返却されるケースは稀か、ないか。
「でも、お二人のパンツ、もらっても……」
「記念だよ」
流斗は笑顔で言った。
「ぼくたちも、なかなかあそびに来れないけど、でも今日こうやって四人で一緒にあそんだこと、ぼくたちのパンツ見たらゆりねえちゃん思い出せるでしょ?」
それが、流斗なりの由利香への思いなのだと解釈するほかない。由利香は頬を赤らめて頷いた。あとで、二人の綺麗じゃないブリーフの保管方法をきちんと教えてあげようとぼくは思う。
「そしたら、ゆりねえちゃんのパンツもぼくたちのみたいにしてよ」
「二人のみたいに……? ……えっ」
流斗は微笑んで、「うん」と頷く。
「女の子のオモラシするとこ、見てみたいな」
恐らく彼女の感じた戸惑いはこれまでで最大級のものだったはずだ。五年生にもなって自分のオシッコでパンツを濡らすなんて、……目の前で六年生男子が失禁するのを見たとしても、ためらわないほうが嘘だ。
しかし、
「ダメ? みんなには言わない、ぼくたち四人だけのナイショだよ?」
「おちんちんの勉強」をした、ぼくの顔にオシッコの噴水を浴びせてしまった、そういう思いが彼女の中にはある。
だから、由利香は結局頷いてしまった。
「……わかりました」
彼女は昴星の顔から立ち上がり、
「うまく、出せるかわからないですけど……」
一旦更衣室に引っ込み、身体を拭いて、中からシンプルな白い下着を身に着けて戻ってきた。昴星はぼうっとした顔で、いまのいままで見ていた女の子のパンツの中身がいまだ目に焼き付いて離れないらしい。もちろん、おちんちんはずっと勃ったままだ。
「わー、かわいいね、ゆりねえちゃんのパンツ」
「……そう、ですか?」
「うん、やっぱり女の子のパンツもかわいくっていいなあ。ぼくね、おともだちの女の子にパンツ何枚かもらったんだけど、ゆりねえちゃんのパンツがいちばんかわいい! ね、お兄ちゃんもそう思うよね?」
ぼくは頷く。おへそのしたに小さなリボンがあしらわれ、生地自体は何と言うのだろう、縦縞に凹凸があり、ゴム部分は些細ながらレース。穿くときにきゅっとウエストを持ち上げたのか、隠されている「おまた」の亀裂が下着にも現れている。流斗のブリーフから出たままのおちんちんが嬉しそうにまたゆっくりと勃起していく。
「ねえ、あっちでしようよ」
流斗が指差したのは、大きな壁の穴の向こう。
もう太陽がすっかり山に隠れ、青ざめた外の原っぱだ。
「さっきの昴兄ちゃん、あっちでオモラシするときお兄ちゃんに写真とってもらったんだ。ぼくたちいつもオモラシするとき、お兄ちゃんにとってもらうんだよ。ゆりねえちゃんは写真恥ずかしい?」
由利香は、首を横に振る。
「……ときどき、撮らせてって言うお客さん、います」
「じゃあ、とろうよ。三人一緒にオモラシしよう。ぼくも昴兄ちゃんもまだまだオシッコ出せるよ。ぼくらのオシッコたっぷりのパンツとゆりねえちゃんのオモラシパンツ、とりかえっこしよ」
流斗が、どういう計算をしてこういう状況を作り出すのかは、ぼくにはわからない。ただ、この温泉に由利香が入ってきた瞬間からもう、この天使のような少年は頭の中で公式を組み立て、この答えを導き出していたのかもしれないとさえ思える。
さすがに裸では少し寒い。ぼくだけは腰にタオルを巻くことを許してもらって、温泉の建屋から漏れる光をバックに、草の上、パンツ一丁で立つ三人の少年少女にカメラを向けた。
常日頃、こういう機会に恵まれる。スタートを切れば加速度的に行為の深度は進み、現在ぼくはなんだか、保健の教科書の資料写真を撮っているような不思議な気持ちで下着一枚の三人を撮影している。細く幼い流斗、ぽっちゃりとした身体のラインの昴星の間に、幼さを残しながらちゃんと「女の子」の身体をした由利香が立つ。男女の性差をこうしてはっきりと見るとき、そもそも「どっちがいい」というものでもないのだとぼくは知った気になる。男の子が可愛いなら、当然のように女の子も可愛い。人間の身体はそういう風に造られている。
「あの……、立ったまま、するんですか?」
落ち着かない様子で由利香はぼくに訊く。
「そうか、女の子は立ったままはしないよね」
由利香は頷いて、「そんなことしたら、足元がびしょびしょになってしまいます」も答える。
「ぼくたちいつも立ったままするよ。ね、昴兄ちゃん」
こく、と昴星は頷く。唇を尖らせて「うんこのときは、しゃがんでするけど……」と言ったのに、
「ぼくは立ったままでも出来るよー」
流斗は得意がるべきことでもないのに平べったい胸を張り、「でもゆりねえちゃんのしやすいやりかたでいいよ」妙な優しさを見せる。
由利香は「すみません」と謝る必要もないのに謝って、二人に挟まれて屈んだ。女の子の下着は男の子のブリーフよりも股下の幅が狭いのだなあ、なんてことをぼくは思いながら、湯面に背を向けて、正面の由利香にピントを合わせる。シャッターを切ると、さすがに恥ずかしそうな顔になる。ぼくは動画に切り替えた。
「さいしょはうまく出すのむずかしいかも」
この件に関しては「先輩」にあたる流斗がそうアドバイスを送る。
「パンツよごすの、ふだんはしないから。でも、いまはいっぱい汚すためにするんだって思いながら力抜くと、少しずつ出てくるよ」
「目ぇつぶって……、いつも自分がオシッコしてるトイレのこと考えるんだ」
昴星も彼女の隣に膝をついて、優しい声で教える。表情からは、まだ何となく踏ん切りがつかないらしいことが伺えるけれど、流斗のために、そしてたぶん、ぼくのために、自分の役割を果たそうとしている昴星は健気でさえあるように思える。
足を広げ、膝に手を置き、昴星の言葉に従って目を閉じた由利香がゆっくりと溜め息を吐き出す。その息が、微かに震えているのが聴こえたその後に、ささやかなせせらぎの音が野原に響き始めた。
由利香の下着の股下から更に奥のお尻の膨らみにかけて、液体の作る絵が描かれ始めた。
「あ……、あ……」
由利香は濡れた下着の感触に、現実に引き戻されたように目を開ける。オシッコの匂いと共に微かに湯気を立てながら雨を降らせる自分の下着に視線を落とすとき、彼女の顔には恥じらいと罪の意識が浮かんでいる。
薄暗がりでも、下着が股間に張り付き、彼女の陰部の輪郭を透かして浮かび上がらせるのが判る。僅かに開かれた少女の亀裂から湧き出す清らかに澄んだ液体は、下着の表面を舐めるように伝って流れた。
彼女の身体がぞくりと震え、水の流れが収まる。
「ぼくたちもしよ?」
左の流斗が、右の昴星に向けて言う。昴星はこくんと頷いて、屈んだまま呆然とする由利香の左右で、ほとんど同時に膨らんだ股間から、まださほども溜まっていないはずのオシッコを放出し始める。
二人の身体が震え、それも止んだ。下着を汚した三人を形容する言葉は、ぼくには浮かばない。ただ三人が三人とも、それぞれ違う魅力的な匂いを振りまき、ぼくの鼻腔へ届けるのを感じるだけで、ぼくは痛いぐらいに強張った自分のペニスが脈打つのを覚えていた。
「由利香、大丈夫?」
ぼくの問いに、彼女はこくんと頷き、昴星と流斗の手を借りて立ち上がる。二人に手を引かれてぼくの元まで辿り着いた彼女の濡れた下着を、カメラを昴星に渡し、ぼくが脱がせる。ほんのりと甘い匂いさえ感じられる少女のオシッコを吸い込んだ下着を広げると、屈んで放尿したせいだろう……、いや、そもそも出る場所が男の子より下の方にあるから、染みはお尻の方により広がっていた。
「ぼくのオネショしたときのパンツみたい」
流斗の感想は的を射ていた。
由利香は再び異性の前で裸になった訳だが、濡れ汚れた下着よりこちらの方がましだと思うのか、ほっと溜め息を吐いた。
「あの……」
「ん?」
昴星からカメラを受け取り、濡れた下着は流斗に渡す。「昴兄ちゃん、女の子のにおいがするよ!」「……わかんね。フツーにオシッコのにおいじゃん」「昴兄ちゃんのよりやさしい匂いだよ」そんなことを言い合う二人を見て、由利香は困ったように「本当に、あんなもので、嬉しいんですか?」と訊く。
「嬉しいよ」ぼくは即答し、付け加える。「もちろん、ぼくも含めて。二人が嬉しいことはぼくにも嬉しいからね」
由利香は、どこか憧れるような顔でぼくを見て、ほんの少し微笑む。
「お兄さんたちみんな、幸せなら、わたしも嬉しいです。……頑張ってよかった」
ぼくは目の前に座った由利香の髪を撫でる。彼女も嬉しいなら、ぼくらの喜びはなお増える。
由利香の視線はぼくの足の間に向いていた。彼女は何も言わずに両手を添えて、優しい口付けを先端に落とす。ほんの少しくすぐったい、けれど、他のどこでも味わえない幸せな感覚がぼくの身体に走った。
「……撮っていいの?」
こく、と彼女はレンズを見上げて頷き、紅く濡れた舌をくるりと巡らせる。
「……流斗くんと昴星くんの言っていたこと、少し、わかる気がします」
「二人の言ってたこと……?」
「お兄さんが、わたしを見て興奮してくださるの、嬉しいです。二人みたいに可愛くないですけど、でも、こういう風になってくださるのを見ると、すごく幸せです。……いままでお客さんにするとき、こんなこと思ったこと、なかったです」
ぼくは何度も由利香の髪を撫ぜた。彼女は一生懸命になって、ぼくの茎にしゃぶりつき、快感をぼくに贈ろうとしていた。そんな彼女のお尻を、昴星と流斗が覗き込む。
「昴兄ちゃん、ゆりねえちゃんのおまんこまだ触ってないでしょ?」
「……ん、でも……、おれは……」
「いいですよ」
由利香は振り返って答える。
「昴星くんも、触ってください……。きもちよくなれます」
昴星は恐る恐る膝をついて、女の子の場所に改めて顔を近付ける。
「ゆりねえちゃんのオシッコのにおいだよ」と、もちろんわざわざ教わらなくても判っているに違いないことを流斗に囁かれると、昴星は操られるように彼女の尻に両手を乗せ、濡れた場所をくちゅくちゅ音を立てて舐め始めた。
「あんっ……!」
敏感に、由利香が顔を上げる。
才斗はオシッコやおちんちんの「匂い」が好きな一方、昴星が執着するのは「味」である。
女の子の「味」はどんなだい? 後で訊いてみようかなと思う。
「昴兄ちゃん、ぼくもー」
流斗が強請る声に我に帰って、昴星は譲る。頬はぼうっと紅くなっていて、口の周りはべっとりと濡れていた。由利香のフェラチオは再びおざなりになる。ぼくは構わないよと言う代わりに彼女の汗ばんだ髪を撫ぜて、それから思い立って、「流斗、ちょっと待って」と止めた。
「由利香、ぼくの膝の上においで」
彼女の身体を抱き上げて、太ももの上に乗せて二人の方へ向かせる。脚を抱え、大きく開いて、ぱっくりと口を開けた彼女の足の間を見せる。
「由利香は、……中は大丈夫?」
ぼくの言葉に、由利香は恥ずかしそうに頷いて、ぼくにだけ聴こえるほどの小さな声で「前も、後ろも、大丈夫です……」と答えた。
「昴星も流斗も、まだ女の子の中に入ったことないんだ。……入れさせてあげてもいい?」
由利香は、こくんと頷く。「昴星、カバンの中にゴムが入ってる。昴星は自分で着けられるよね? 流斗にも着けてあげて」
「え……」
「由利香は、昴星と流斗の、欲しいよね?」
彼女は頷く代わりに、両手で自分のその場所を広げる。「男の子の……、欲しいです。昴星くんと流斗くんの、おちんちん……」
ごく、と「昴星くん」のおちんちんが震えたように見える。昴星は慌てたようにぼくのカバンから小箱に入ったコンドームを取り出して、「流、こっち向け」「これなあに?」「ちんこに付けんの」「なんでー?」「付けねーと、子供出来る」……なんて話している声が聴こえて来る。
「お兄さんも……、わたしの後ろ、入れてください」
由利香はそう言い残すとぼくの太ももから下りて、「昴星くんも着けるのは初めてでしょう? わたしが着けてさしあげます」と慣れた手付きで昴星の勃起にくるりと着せる。当然のことではあるが、二人のペニスには緩い代物だ。
戻ってきた由利香はぼくに向かい合って、背中を丸めてキスをして来た。びっくりしたぼくに、彼女は微笑んでまた、後ろ向きに乗り直す。重なった彼女の手のひらの中には、少年二人が装着しているのと同じものが、もう一つ。
「お尻……、わたし、好きです」
「……そう、なの?」
「はじめのうちは、お尻でしかしなかったんです。……さっきお兄さんにお尻をしていただいたとき、その、すごくきもちよかったです。……わたし、お兄さんにもして欲しいんです」
わかったよ、とぼくは頷き、手早く自分のペニスにそれを被せ、彼女の小さなお尻の中央、前方の亀裂から溢れた蜜状の液体をたっぷりと塗りつける。それだけで彼女の身体が微かに震えるのが、ぼくにダイレクトに伝わってきた。
「指、入れるよ……?」
ぼくの言葉に、由利香が頷く。指先は、……男の子のお尻に比べると、ほんのりと柔らかい気がする。少し考えて、その理由に納得が行った。男の子のお尻とタマタマの間に空間がないのに対して、女の子にはもう一つ穴が空いているのだ。内部の「壁」……という言い方がふさわしいか判らないけど、余裕があると言うことが出来るのかもしれない。
前は前で、……これまでどんなことでも臆せずやってきた流斗が、もちろん童貞である。細身のおちんちんに緩いゴムを纏い、それが外れぬように後ろから根元を昴星に抑えてもらって、ほんのりと頬を染めて立っている。
「いいですよ……、流斗くん」
由利香はぼくに肛門をいじらせたまま、足を大きく開く。ぼくはやや苦労しながら背中を逸らし、由利香の座る(あまり座り心地のよくない)ソファをリクライニングさせる。由利香は再び指で唇の内側のピンク色を少年たちに見せた。
「ここ……、です」
流斗のおちんちんが強張る。少年はこれまでで一番無垢な表情を浮かべ、
「ゆりねえちゃんの、おまんこ……、すごいきれい」
と、優しい声で言う。由利香の表情はもちろんぼくには伺えないけれど、多分、小さく微笑んだのだろう。
繋がっているように見える流斗を、慎重に由利香の「入口」へと導いてやる昴星も昴星で、すごく優しい。……温かい心を持つ三人の少年少女の瑞々しい身体が至上の悦びに包まれることを、ぼくは心の底から祝福したい気になっていた。
ぼくの指は既に二本、由利香のお尻の中である程度の自由を手にしていた。その細いトンネルは由利香のおまんこがそう在るのと同じように、粘っこく濡れ、ときおり、ぎゅっと狭くなった。指を前後、あるいは上下に動かすたび、彼女の性穴から伝った蜜が彼女を辱めるような音を立てる。
「あ……っ、ん……」
「うわ……っ、すっごい……!」
指の背の当たる内壁が、これまでとは異なる、つっぱるような抗いを訴えてきた。それが流斗のおちんちんの圧力だと理解するのにほとんど時間は要らなかった。流斗の腰が拙いながらも本能的な往復を始めると、お尻の中にまで少年のリズムが響いてくるようだ。
「すっごい……、すっごいきもちぃよぉ……っ」
いつも余裕のある流斗が本当に気持ちよくなったときにだけ上げる声だとぼくは判る。流斗の声より控えめなボリュームで、由利香の声が堪らず溢れるのも、ぼくの耳には届いている。
「ん、っン……、りゅ、とくんのっ、おちんちんっ……!」
ぼくはそっと由利香の中から指を抜き去り、彼女の後ろに自分のペニスの先端を当てた。由利香は少しも怯むことなく、寧ろ流斗に突き入れられて揺れる勢いのままに、身体の中へぼくを収めて行く。
確かに、昴星の中より少しは余裕がある。
けれど、それは物の差じゃなくって、やっぱり窮屈であることに変わりはない。敢えて言うなら、昴星は才斗とぼくと、セックスをするにはするけれど、習慣と呼べるほど頻繁なものではないわけで、一方の由利香は此処に男の性器が侵入することに慣れているから力の抜き方を知っているという、そういう差を挙げることは出来るかもしれない。
「あ……はぁ……!」
由利香は右手で流斗を抱き締め、左手をおっぱいをいじるぼくの手に重ねた。ぼくはほとんど彼女はことを揺する必要はなく、流斗の腰の往復によって彼女の肛圧が強弱されるのを、愉しむばかりだ。実際、流斗のおちんちんが由利香の胎内を往復するのが不思議な心地よさとしてぼくにも伝わってくるのだから、動く必要もない。
「んぁっ、あっ……出るっ、おちんちんいっちゃうっ……!」
流斗の刻むリズムを受け止めながら、由利香は流斗に唇を重ねる。童貞であることが自然な年頃の少年による、少女の身体の中での射精……、流斗は幸せな震えを身体に走らせて、昴星の手によってゆっくりと腰を引く。細身のおちんちんを覆うゴムはきっちりと昴星に押さえられていて、内側に薄い精液が溜まっているのが見えた。
「……きもち、よかったですか……?」
流斗の頬に手を伸ばし、いとおしげに撫ぜながら由利香は訊く。流斗は少しだけぼうっとしていたが、すぐに「うん」と笑顔で頷いた。
「おちんちん、とけちゃいそうなぐらいきもちよかった……。ありがとう、ゆりねえちゃん」
ちゅ、ともう一度キスをして、流斗は昴星に場所を譲る。昴星がしたように、流斗は後ろから、太さという点では自分より秀でているものの、やっぱり短い昴星のペニスの根元を摘まむ。
昴星は緊張していた。しかしそれ以上に興奮していて、その視線は少女の顔と胸と足の間を何度も往復している。
「……昴星くんのおちんちんは、小さくなんてないと思います」
由利香は優しい声で言う。
「流斗くんのおちんちんもそうです。……わたし、二人のかわいいおちんちん、好きです」
その言葉に招かれるように、昴星は歩みを進め、……童貞を喪失する。
「昴星くんの……、オシッコのにおいも、味も……、お兄さんや流斗くんが、好きって言うの……、わたしにもわかります……」
昴星よりも由利香の方が、年は下だけどちょっと大人かもしれない。人のための言葉を彼女はとても用意に紡いでみせる。それは彼女がこれまで重ねて来た「客商売」の経験のなせるわざかも知れないし、そもそも全ての言葉が昴星を心から慈しむがゆえにもたらされるものである可能性をぼくは捨てきれない。
「う、ン……、んっ、んぅ……っ」
初めての、「女の子」の胎内に入った昴星は夢中になって腰を振り始めた。少年の視線は相変わらず由利香のどこを見て居るべきか判らず、結局全てを見ることを選んでいる。二人の接合部から立つ音を聴くぼくのペニスも徐々に高みへと登り詰め始める。流斗の細いおちんちんが由利香の胎内の壁を突くようにぼくにまで響かせたのとは対象的に、昴星の往復は、……多分、短くとも太さにおいてほんの少し上回って居るからだろう、重低音みたいにぼくの陰嚢を微かに震わせる。ぼくは少女と少年、二人がくれる快感に包まれているのだ。
いかんなあ、なんて思う。昴星から、流斗から、由利香から、ぼくは到底まかないきれないほどの量の幸せを結局もらってしまっている。どうやって返せばいいのかな。どれだけ三人を幸せにしてあげられるだろう? 特に由利香は、この時間、この瞬間だけしか一緒にいられないのに。
由利香の太腿を支えて揺さぶりながら、ぼくはもう、そんなことも考えられなくなりつつある。
「んぁ、あっ、も、おっ、もおでるっ、せーしでるっ」
昴星の可愛らしい声が窮まり、ぼくをも一緒に連れて行く。その小さく可愛らしくとも大人としての機能を持つおちんちんが由利香の胎内で脈打ったとき、由利香も限界を迎えたようにぼくのペニスを思い切り引き絞った。
「あっ……あ!」
細い喉を反らし髪を散らして、彼女の感じる快感の頂点を、ぼくも感じながら少女のアヌスの中で溜まり切った欲を解き放った。
昴星も由利香も、ぼくに体重を委ねて快楽の大波に身を任せている。ぼくが息を整えながら聴くのは、肛門を下から突き上げられ散々に弾まされた膀胱から、残っていた尿がしゅううと噴き出して昴星の下腹部を濡らす音だ。
彼女はまた羞恥に身体を震わせるけれど、その液体を汚いなどとは思わない昴星である。昴星も、その身の後ろから顔を覗かせる流斗も、興味深そうに由利香のオシッコの出てくるところを観察していた。
由利香のオシッコが終わったのを見計らって、彼女との接続を解き、ゆっくりと足元に下ろす。彼女はしゃがんだまま、「いまは、見ちゃダメです……」と泣きそうな声で言い、足の間を隠す。
そこから、他の何にもたとえようのない匂いが湯気となって漂い始めた。ぼくが広げたお尻の穴から、彼女のうんちが落ちているのだ。
「昴兄ちゃんも見せてあげなよ」
流斗が、昴星の腹具合に一切勘案することなく独善的に言う。そんなの、「しろ」と言われてできるようなものでもないだろうに。そう当然の考えを抱いたぼくの足の間にしゃがむ由利香の前、同じポーズを昴星は恥ずかしそうに取る。「え、出るの?」と、思わず訊いてしまったぼくにこっくり頷いた昴星は、昂りの収まったおちんちんの先っぽに精液の溜まったゴムを装着したままであることをすっかり忘れてしまっている。なぜって、少年の視線の先はただ由利香の足の間に集中していたから。
その状態でうんちを出そうとすれば、
「あっ……!」
装着したままのゴムの中でオシッコが迸ることとなる。
「あ、あっ、やべ、どうしよっ……」
焦った声を上げる間も出始めたオシッコはどんどんとゴム膜の中に満ち、さながら水風船のような趣だ。昴星の短いおちんちんの先に膨らんだそれは乳首みたいな精液溜まりの突起の輪郭はそのまま残して、薄ピンク色の膜の中に広がるオシッコの海に精液を泳がせている。
破裂はしないにしても、それが由利香の大事なところにかかるようなことは避けなければと立ち上がりかけたぼくの代わりに、向かいに屈む由利香の手が伸びた。
「一瞬だけ、止められますか……?」
「う、うん……」
由利香は慎重な手つきで、しかし素早く昴星のおちんちんの根元を摘み、ぱんぱんに膨らんだコンドームを引いて抜き取る。ゴムの中に溜まった尿の重さで、それは容易なことのようだった。昴星の開いた足の間にとくとくと中身が溢れ出し、由利香の放ったものより明らかに強い匂いが広がる。
「ま、また、でるっ……」
堪えていた尿が、再び皮の隙間を開くように噴き出した。昴星が慌てた声を上げたのは、まだそこに由利香の手があったからだ。
しかし由利香は昴星の体液を指に受けても嫌がる素振りを見せることはなかった。
昴星のオシッコが止むと同時に一つ長い吐息のような音が少年の開かれた足の間から伸びやかに放たれる。「あっ!」と自分のしてしまったガス放出音に思わず声を上げた昴星だが、由利香は小さくクスリと笑っただけ。
そして彼女はじっと昴星の足の間にムクムクと産み出されて行く物体に視線を奪われた。「すごい……」と、由利香の口からは感動さえ覚えたような呟きが零れた。
自分の排便を見せる昴星も呆然と由利香のお尻の穴から捻り出されるものを口を開けて見ていた。ぼくも、興味を持って流斗と一緒に見てみる。なるほど、こっちもすごい。ぼくのペニスによって拡げられてぱっくりと口を開けた由利香のピンク色のお尻の穴からは、驚くべきスムーズさで便が次々と滑り出してくるのだ。硬すぎず、柔らか過ぎず、焦茶色の昴星のものに比べれば色は明るい。
「撮って……いい?」
ほとんど無意識のうちに訊いていたぼくに、由利香は頬を染めて頷く。カメラのライトは彼女のお尻の穴を明るく照らし出し、太く盛られる少女のうんちとそこから立ち上る湯気を合わせて観察するのに不足はなかった。
昴星のおちんちんが再度の勃起を始めたのはぼくの視界に入っていた。流斗もさっきから勃起している。そしてぼくも再び昂ぶっている。
由利香にも、それはもう把握できている。
「みなさん……、わたしの、こんなにきたないのを見て、そんなにしないでください……」
一度、肛門が引き絞られて一段落着いたかに見えた排便だったが、「……あぁ……っ」と彼女が声交じりの溜め息を吐き出すと、再び蕾がほころぶように力の糸が抜かれて、顔を覗かせる。
「見たいよ、だって、女の子のうんち、はじめて見るもん」
昴星のかたわらに立ち、勃起したおちんちんを弄りながら流斗は興奮を隠せない声で言って、
「ね、ゆりねえちゃん、もっとうんちするとこ見せて」と
少女の左手を取って引っ張る。
「あっ……、だ、ダメですっ……」
無理矢理に立ち上がらされた由利香はバランスを崩しかけ、手頃な場所にある「支え」に手を当てた。……昴星の頭だ。「んぐ」と唸った昴星だが、目の前に女の子の割れ目を見せられて黙る。
ぽとっ、ぽとっ、と由利香の開いた蕾からは健康的な黄土色の塊が重力に従うようにまだ落ち続けている。
「すごいや……、ゆりねえちゃん、女の子なのにこんなたくさんうんち出るんだ……。昴兄ちゃんのよりやわらかくて、いっぱい……」
流斗は感動したように言いながら、元気さを失わないおちんちんを、多分無意識的にだろう、摘まんで弄り始めている。
「やっ、昴星くんっ……、ダメぇっ……」
由利香の身体に強い震えが走る。昴星が左手で由利香のお尻を抱くように掴んで、目の前にある少女の股間部位を舌で愛撫し始めたのだ。……昴星にとっても、こんな風に裸の女の子と接触することなんてこれまでになかったことで、今日は新鮮な体験をいくつも重ねてした。幸せな記憶に残る一日になればいい。
昴星はぴちゃぴちゃと、きっと女の子のオシッコの味がするはずの場所を一生懸命にねぶりながら、自らも排便中ながら大きく開いた足の間で反り立つものを扱いている。
ぼくはカメラを持っている。せっかく少年少女の美しい光景を収録しているのに手ブレしちゃったらもったいないから、ぼくも自分自身を浅ましく滾らせながら大人の理性として撮影を続けている。
「ねえ、ゆりねえちゃんっ……、ぼくでるっ……」
三人はセックスをしているわけではない。けれどそれぞれがそれぞれに、ごく自由な形で快感を求めて動いているのだ。
流斗は由利香の姿をオカズにオナニーをしているから、彼女はただ排便しているだけで流斗に幸せを与えるし、昴星は欲のままに由利香の股間を舐めることで彼女に快感を与えつつ、自らも悦びを貪っている。
優しさと評していいのかはわからないけど、純真な三人の少年少女の自由な発想が、彼らにしか作り出せない、この瞬間限定の幸せをどんどん膨らませて行く。
「おしりっ……ゆりねえちゃんのおしりっ出ちゃうっ」
はじめに鼓動を刻んだ流斗のおちんちんから噴き出した薄い精液は、ようやくお腹の中をからっぽにしたらしい由利香の、女の子らしく艶と張りのある双丘目掛けて飛び散り、淡いピンク色に染まった場所にシロップをかけるように伝う。
「あ……、あ……っ、そこぉ……っ」
続いては由利香だ。前触れもなく、ひきつけでも起こしたみたいに走った震えに遅れて、昴星の顔に、二度、三度、……断続的に、水鉄砲の引き金を引いたみたいに透き通った液体が飛び出す。危うくバランスや崩しかけた彼女が、その綺麗なお尻を自分の作り上げた山の上に落とさずに済んだのは、昴星が、流斗が、前後からしっかりと支えたからだ。
昴星は、由利香を支えるその間にも快感を追い続けていた。
彼らの本能が十二分に発揮されるからこそ、ここにかけがえのない幸福が生まれる。由利香のおまんこの味を愉しんでいた昴星も、……どうやらその間もずっと、例の太くて硬いものをお尻の穴からぶら下げていたままだったらしい。それをちょん切るような力とともに、由利香の足の間へ精液を放つ。それは由利香自身の作った恥じらいの小山の上に、とろけるように飛び散った。
「すっごいことしちゃったね……、ぼく、こんなドキドキしたの、はじめてだよ……」
人心地ついた流斗はぼくのカバンから箱のティッシュを取り出し、自分のおちんちんを丁寧に拭く。それは洗えばいい。寧ろ、昴星と由利香のお尻を拭いてあげなきゃ。
流斗が差し出した箱から二人は少し恥ずかしそうにお尻を拭いて、自分の作った山に落とす。それから由利香ははっとして、「……お風呂が、この臭いになってしまったらどうしましょう」と困惑し切った声で言う。
「あ、そっか……。ゆりねえちゃん、うんちいっぱい出しちゃったね。昴兄ちゃんも、硬いのたくさん」
ぼくが気付かなければいけなかったのだけど、少年少女の排便シーンに夢中になりすぎてしまったようだ。「もう少し乾いてからぼくが片付けるよ。幸い、昴星たちのパンツ持って帰るためにって、袋持ってきてる。それに入れて、あっちの叢にでも捨てれば大丈夫だろう」
「すみません……」
申し訳なさそうな由利香の髪を、ぼくは撫ぜた。
「気にしないで。ぼくも、すごいの見せてもらったし、最低限のことはしなきゃね。君の帰る時間も遅くなっちゃったし」
「お掃除、ぼくたちもお手伝いするよ。ね? 昴兄ちゃん」
流斗の申し出に、昴星もこくんと頷いた。
「山ゆりの湯」を四人で掃除し、由利香と「また会おうね」って約束の小指を結んでから宿に戻ると、もうすぐに夕食だった。夕食後はさすがに二人とも眠たそうな顔になっていたから、仲居さんに布団をのべてもらう。お風呂も、本当は入りたい気がするけれど、由利香との掃除のついでにシャワーを浴びたから今夜はもういい。明日の朝にも入る時間を作ることはできるだろう。
そう考えるぼくも、もうずいぶん眠くなっている。二人の睡眠のためにテレビを消すともうすることもなくて、歯を磨いて部屋の灯りを落とすと、ごく自然な流れで眠りに身体を委ねてしまって。
……どれくらい寝たのかな。夕べも睡眠時間はあまり長くとることができなかったし、今日は朝から色々なことをしてきた。さすがに体力を消耗してしまって、何事もなければ朝までぐっすりだったろうと思う。
要するに、ぼくは起こされた。
「……ん……?」
一番小さな灯りだけが照らす部屋で、ぼくを揺り起こしたのは昴星だった。「いま……、何時?」
「十一時」
「……どうしたの? ……ひょっとして、オネショしちゃった……?」
昴星は首を振って、「汗かいたから、お風呂行きたい」とぼくに求める。
半身を起こして、暗がりの中の昴星の表情を伺う。昴星は何だか真面目な顔でいる。
「……うん、いいよ。じゃあ行こうか」
流斗を一人部屋に置いて行っていいものかと、一つ考えたことは確かだ。けれど、すやすやと行儀のいい寝相でよく眠っている。鍵をかけておけば、お風呂に行って戻ってくるぐらい大丈夫だろう。
ぼくがそうっと布団から抜け出すとき、昴星はもうスリッパを履いて玄関に待っていた。二人分のタオルを支度して、ぼくらは部屋から廊下に出る。
風呂は旅館の一階。ロビーは二階にあって、其処から更にワンフロア下がったところになる。川をすぐそばで見られるように、ということらしい。ぼくと昴星は寝足りない目をこすりつつ、矢印の案内に従ってがらんと静けさの中に沈んだ旅館の中を抜け、露天風呂への道を辿った。源泉掛け流し二十四時間入浴可の風呂からは水音が響いていて、全くの無人だった。
昴星は脱衣所に着いても、浴衣の帯を解かなかった。ここまで昴星は全く口を開いていない。すたすたと脱衣所から内風呂へ、そして、幾つかの灯りを除けば夜の底に沈んだような露天風呂へと至ったところで、後を追ったぼくに振り返って、
「おにーさんは……、女子のほうがいい?」
不意に、訊いた。
眠たかった眼が、ぱっちりと開いた気がする。こんなに真剣な昴星の顔は、初めて見る。
「……どうしたの?」
昴星は答えない。僅かに怒っているようにも見える。
「……どっちの方がいいっていうことは……」
少年から投げかけられた質問の意味を吟味しつつ、ぼくはゆっくりと答えを選んだ。「ないよ。……その、昴星も知ってるとおり、ぼくはもともと、男の子の裸に興奮しちゃうような男だから、……女の子の裸をきちんと見たのも、今日の昼間が初めてだったから」
「でも、勃起してたじゃん」
「それは……、うん。正直言って、ドキドキしたことは事実だし、由利香とああいうことをしたのは、楽しかった」
言いながら、ぼくには昴星の質問の意味と意図が少しずつ理解出来はじめていた。
「でもね、……でも、それ以上に昴星たちが、初めて女の子とああいう風に遊べて、気持ち良くなれたことの方がぼくは嬉しいし、由利香に気持ちよくしてもらってる昴星や、反対に、由利香のこと気持ちよくしてあげようって頑張ってる昴星のこと、見てて、そっちの方がもっとドキドキした。……本当だよ」
昴星は、まだ信じてはいないような顔をしていた。……いや、信じたいと思ってはくれているのかも知れないが、何かが彼の心の中に生じていて、それを乗り越えることが出来ない……、そんな葛藤が、うっすら透けて見える。
答えは、昴星の言葉によってもたらされた。
「おれ、女子じゃねーし、流みてーにすっげーかわいいわけでもねーし……」
ああ、とぼくは思う。
昴星のことを、世界で一番「可愛い」と思っているのは間違いなく才斗だ。
けれど、ぼくだって昴星は、少年地震が「かわいい」と評する流斗と同じぐらいに可愛いと信じて疑わない。
「ぼくは、昴星のことを可愛いと思ってる。……ほんとだよ? 心の底から、そう思ってる」
昴星の表情が、僅かに動いた。
「昴星は、ぼくがこれまで考えたこともなかったぐらいに大きな幸せをくれたよ。ぼくなんかにはもったいなく思えるぐらいの。……だからぼくは、昴星のことを、才斗に許してもらえる限りは幸せにしてあげなきゃって思ってるんだ」
おいで、とぼくは昴星に手を広げて見せる。
一秒、二秒、ためらいの余白があった。でも昴星がぼくに再びの催促をさせることはなかった。昴星しか持ち得ない匂いが、ぼくの鼻を優しくくすぐる。
「おにーさんが悪いんだぞ」
昴星はぼくの胸に額を擦り付けて言う。「おにーさんが、由利香で、あんな興奮すんだもん……」
「ごめんね。……初めてだったから……」
「おれが飲むのより、いっぱい由利香に飲ませてた」
そこまで言って、昴星は自分の言葉を否定するように首を振った。「ちがう。……ほんとはおれだって、おにーさんが気持ちよくなんの、おにーさんがおれに思ってくれるみたいに、嬉しいって思わなきゃダメなんだ……」
ぼくが初めて出会ったのは、昴星だった。あの夜、城址公園の暗がりで。
唄の文句じゃないけれど、もし昴星に出会えなかったら。もし出会ったのが昴星じゃなかったら。ぼくは以前の通り、日々に取り立てて書くことのない生活を続けていたことだろう。
「一緒に遊ぼう」
ぼくは、昴星のさらさらの髪を繰り返し撫ぜて言った。「この時間は、二人きりで遊ぼう……、ね?」
昴星が、こくんと頷いた。
いつまでもお風呂場で裸で居るのはおかしい。けれど昴星は「ここだと、誰か来るかもしんねーし、おちつかない」と言う。結局お風呂には入らず、昴星に手を引かれて向かったのはロビー。フロント係がやや眠そうな顔で出てきた。
「ちょっと寝付かれなくて……、この子も。散歩に出たいんですけど」
フロント係は嫌な顔一つせずに鍵を開け、「戻られましたら、呼び鈴でお伝えください。どうぞお気を付けて」と頭を下げてぼくらを見送った。
通りは無人で、何軒かの旅館の窓もほとんどは暗く沈んで居る。「どこへ行こうか?」とぼくが訊くと、「こっち」と昴星は坂を登り、吊り橋を渡り、「山ゆりの湯」への道を辿り始めた。確かにあそこならば人はいない。ただ、道は真っ暗。あの木組階段を昇り降りするのも危険に思われる。
昴星は察しよく立ち止まると、「ここでいっか……」と呟いた。
昴星は浴衣の懐から自分の携帯を取り出してぼくに渡した。ぼくのは、部屋においたままだ。
「撮って欲しいの?」
昴星は、こっくりと頷く。「撮ったの、おにーさんに見てもらえんの嬉しいけど、でも、おれも、おにーさんに気持ちよくしてもらったの、後から見れたら嬉しいから……」
ぼくが昴星を可愛がった証。確かにぼくはたくさん持っているけれど、昴星は一つも持っていなかったはずだ。ブリーフにしてもそうだけど、ぼくは昴星からもらってばっかり。これじゃいけない。
昴星はぼくから少しだけ離れて、録画開始の音を聴いて帯を解く。
ほんのり柔らかく優しいカーブを描くお腹と、水色の、男の子色のブリーフが一度に露わになる。昴星の可愛らしさが詰まった姿だと思うから、
「可愛いね。パンツも昴星もすごく可愛い」
と素直に気持ちを表現すると、昴星は少しだけ、でも確かに、微笑んだ。
「ここで、オモラシしてくれるの?」
「するとこ、見たいの?」
「うん」
昴星の求める言葉を、ぼくは平気で口にしている。「すごく見たいな。……そのパンツ見せてくれるのは初めてだよね。暗いけど、綺麗な空色なの判るよ」
昴星は浴衣の裾を胸元で纏めて、「やっぱり、こういう色のの方が好きだな。流みたいな色の、可愛すぎておれ、似合わねーし……」
「そんなことないと思うよ。黄色やピンクのパンツも、昴星が穿いたらきっとすごく可愛い。それにほら、この間穿いて見せてくれた女の子のパンツもよく似合ってたよ。昴星は女の子にも負けないぐらい可愛いから」
ほんとに? 昴星は訊く。
「本当だよ。昴星には、そういう形のパンツがすごく似合う。……本当のこと言うとね、ぼくも昴星に会うまでは、男の子のパンツってトランクスの方がいいように思ってたんだけど、昴星の可愛いパンツ見せてもらうようになってからは、男の子にはブリーフが一番似合うんだってわかったんだよ」
昴星は、ぼくに影の無い笑顔を向けた。
「おにーさんが、こういうパンツ好きになってくれてよかった」
いつもの、「ひひひ」という、ちょっぴりクセのある笑い方が戻ってきてくれたのがぼくにも嬉しい。
「じゃあ、その可愛いパンツでオモラシするところ見せてもらおうかな」
「うん、おにーさんが見たいなら、見せてやる」
考えてみると、昴星は九時前には寝て、十二時に起きた。三時間だけではあるけれど、寝る前にトイレには行っていなかったはずだ。ぼくも疲れて油断していた。運が悪ければ旅館の布団を汚していたかも知れないのだ。
その分、いま昴星の柔らかなお腹の下の方にある膀胱にはたっぷりと溜まっているはず。
昴星が浴衣をめくり上げたまま下肢から力を抜くと、すぐに空がぽつりと黒い雲を作り、見る見るうちに覆い、雨が振り出した。……昴星の体温の、濃い黄色の雨だ。サンダル履きの足の間に、驟雨。
いや、秋の夜に降る雨。
オシッコを吸うことで、昴星の下着は一層魅力的なものとなる。しょっぱくて甘い薫りは、昴星ならではのもの。夜の葉と川の匂いよりなお強くぼくの鼻へと届かせてくれる。
「……ガマンしてた?」
「うん。ほんとは、ずっと……、起きたときから。でも、すんのはおにーさんの前でって思ってた」
昴星はオネショをしてしまうものだから、だらしない括約筋をしていると考えがちだ。でも実際のところは違う。一定時間のオシッコのガマンは、きちんと出来る。
「そっか、ぼくのためにガマンしてくれてたんだね。……いい匂いだ」
匂いが濃厚に感じられる距離に歩み寄り、昴星の髪を撫で、おでこに、唇にキスをしてから、しゃがんでよく観察する。
「ちんこ、たっちゃった」
ぼくが指摘するより先に昴星は言った。雨を降らせた雲がまだ居座る昴星の空色ブリーフは、その中に存在する欲求不満を証すように膨らんでいる。もちろん、中に入っているものの物理的なサイズに相応な大きさではあるけれど。
「オシッコしたばっかりの昴星のおちんちん、見せてくれる?」
「ん」
割り開いた窓から、ぴょこんと短い性器が顔を出した。昼間数えきれないほど射精したのに、一眠りしたからか、元気いっぱいだ。「おにーさんがさ、おれがちんこしゃぶるとき、撮るじゃん」
「ん? うん」
それはもちろん、一人のときに昴星に咥えてもらっているような気になれるからだ。
「あんな風にさ、おれも、……おにーさんがちんこしゃぶってるとこのムービー、欲しい」
「……ぼくの顔が映ってるのなんて、欲しいの?」
こく、と昴星は頷いて、「『なんか』ってことねーよ。流とよく、おにーさん背ぇ高くてカッコいいって話す。それに由利香だっておにーさんのこと好きになってたし」
ちょびっとだけ悔しそうに、言った。
背が人より高いのは事実。でも自分の顔を鏡に映して観察したところで、「面白みのない顔だなあ」という印象しか、ぼくは抱いたことがない……。
何より、男の子のおちんちんにしゃぶりついてる自分の顔の、麗しいはずもないのだけど。
でも、ぼくは決めたばっかりだ、……昴星のために。
カメラを持つ手を引いて、斜め上方を指きてわななく昴星の短い陰茎が画角の中央に収まる場所を見付ける。その位置で腕を固定したまま、
「ん……っ」
ちょっと難しい、けれど、昴星のしょっぱくて臭いおちんちんを、ぼくは口に含んだ。
「ひ、ひ……、やっぱ、おれ……、おにーさんにしゃぶってもらえんの、好き……」
「そう、なの……?」
「ん……、だってさ、おにーさん、すげーおいしそうに、おれのちんこしてくれんの、うれしい……」
実際、少年の「臭い」包茎おちんちんがぼくには美味しい。
まず間違いなく浅ましい顔になっている。けれど、それが昴星の「見たい」と思うものならば、ぼくには我慢できる。
左手の指で皮を剥き、より強い匂いを漂わせる亀頭にキスをし、男の子の恥ずかしい露を舌先で拭い、「昴星のおちんちん、美味しいね」とぼくは語り掛ける。
「すごいオシッコの匂いと味で、昴星がオモラシして感じちゃってオシッコと一緒にちびっちゃうガマン汁の味も一緒にして……、すごく美味しい」
昴星はもう軽口を言う余裕をなくしていた。ぼくの酷い言葉と共に、少年の感じる声が一緒に録れている。
「もうちょっとしたら、また違う味がしてくるんだよね? オシッコよりもトロトロの……」
「ん、んっ、もう……せーし出る……っ」
「判るよ。昴星のおちんちん、すっごいピクピクしてる……」
皮を剥いたまま、晒された脆弱な亀頭の先を吸った。途端、「はう……!」おちんちんは泣くように強張り、ぼくの唇へと、思っていたよりも濃い精液が滑り込んできた。口の中いっぱいに広がっていたオシッコの香味に比べるとずっと爽やかなそれ、でも、どっちが美味しいかは、比べられるものじゃない。
「うは……ぁあ……」
義理や礼儀以前の問題として、舌の上に放たれた精液を、ぼくは飲み込む。薄らしょっぱくて、喉にはピリッとした刺激がある。喉越しも、オシッコがビールのように軽やかに下って行くとすれば、どろどろとしてあまり良くない。
問題点を、こうしてさっさと幾つも挙げてしまえるのに、ぼくは精液が好きだ、と思う。昴星の匂いを、オシッコとはまた違った形に凝縮したような……。
「美味しかったよ……、昴星の精液。昴星のおちんちん出てくるものは何でも美味しいんだね」
皮を摘まんでいた手を離すと、亀頭はたちまち皮に隠れてしまった。
「昴星のおちんちんはほんとに可愛いなあ……、あんまり近くで見られるの恥ずかしがってるみたいだ」
すっぽりと先端まで覆うと、しわしわの包皮の先端は勃起の収まらないこの状況でも指で胴を弾くだけで遠心力が働いて震えるほどだ。口付けをして、何度もぼくは昴星のおちんちんを誉めた。……いや、ここだけじゃなくってね、昴星は本当にいいとこだらけだ、可愛くって可愛すぎて、ちょっと切なくなっちゃうぐらいだ。でもいまは、誰のここより可愛いねって、オシッコくさい場所を愛してあげなくちゃいけない。
何の苦もないことだ。
芯が抜けるように少しずつ力を失って柔らかく弾む場所に、いたずらみたいな、でも思いを込めたキスを繰り返していたところに、
「なー、おにーさん、今度おれ撮りたい」
と昴星が手を出す。
「おれ気持ちよくしてくれたから、今度はさ、おれがおにーさんのことする番。でもってさ、おにーさんが気持ちよくなるとこ、おれ撮りたい」
そういう形の撮影は、これまで流斗が何度かしてくれたことがある。「えへへ……、お兄ちゃんのおちんちんのおつゆ、おいしいよぉ……」って、自分がぼくのペニスを愛撫しつつカメラ目線で言ってくれる動画。流斗の、びっくりするぐらい上手でえっちな舌がぼくのペニスに這わせるというもの。
でも、あれが後でぼくが見るときのためのものだったとすれば(もちろん、何度も見たとも)昴星が撮りたいのは、昴星が自らの実用を優先したもの。
あまり撮られ慣れているわけではないけど。
「うん、……わかった。昴星のお口でしてもらえるのは、すごく嬉しいよ」
ひひ、と笑ってぼくを見上げる昴星の顔は、何度も言う何度でも言う、……とっても可愛い。大きな目には少年らしいイタズラっぽい光が煌めいているけれど、それでいて、少女である由利香に負けないぐらいの可愛らしさを備えている。
「おにーさんのちんこ、かたくなってんの?」
嬉しそうに昴星が訊いて、ぼくにカメラを見上げる。顔を撮られるのは正直なところ少々苦しく、気恥ずかしいことは否めないのだけど、昴星が見たいのならばこんな顔であるのはしょうがない。
「なってるよ。……昴星のオモラシ見たばっかりだからね」
「ひひ、おにーさんエロいな、アンド変態」
言いながら、昴星は今度はぼくの浴衣の帯を解き、トランクスを露わにする。
「おお……、ほんとだ、おにーさんのパンツ、ちんこでめちゃめちゃとがってる」
左手に携帯電話を持ち、右手でぼくのトランクスの上から三往復、布越しの体温を手のひらで味わうように撫ぜてから、ウエストゴムを引っ張って、下着の中からぼくの勃起したペニスを取り出した。
「ひひ、やっぱすげー、おにーさんのちんこ、超でけー」
指の腹で、くすぐるように裏筋から少年自身の晒せない亀頭を撫で回す。携帯電話のカメラの単眼はじぃっとぼくの怒張に視線を向けていて、「ビクビクしてる……、大人のちんこ、かっけーな……、毛ぇ生えてて、皮も剥けててさ、ちんこの先っぽ、……なんてゆうんだっけ」
「亀頭」
「そうそう、亀頭がつるつるしてんの、きれー。おれのもいつかこうなんのかなあ……」
「大丈夫だよ、大人になれば昴星のおちんちんも、ぼくみたいな形になる。毛もちゃんと生えるよ」
いや、ぼくとしては今のままの可愛い可愛い包茎おちんちんでも一向に構わないのだけどね。
「そうなのかなー……、なんかさ、おれのちんこさ、三年生ぐらいのときからぜんぜん大きさ変わってない気ぃする。才斗のはちゃんとおっきくなってんのにさ」
確かに、オネショは治らない、二つ年下の流斗の方が大きい。
「おちんちんって一人に一本ずつ生えてるものでしょう。男の子には」
「うん? うん」
「だから、一人一人違っていいと思うんだ、形も大きさも、それこそ匂いや味もね」
「んー……、そうなのかな」
「ぼくは昴星のおちんちん、好きだよ」
昴星は「おれもおにーさんのちんこ好き」と、にぃと笑って、ぼくの亀頭に唇を当てた。
「おにーさん、おれがちんこ触ったりキスしたりすんの嬉しい?」
何より昴星が嬉しそうだ。「もちろん。逆に触らせてもらうのも嬉しいし、……昴星と一緒にいると、本当に嬉しいことばっかりだよ」
ぼくが昴星の髪を撫ぜるときと同じように、優しい指先でぼくの亀頭を撫ぜる。
「ヌルヌルしてら……、携帯のライトで亀頭キラキラしてる」
昴星は人差し指の先でぼくの腺液を塗り広げる。昴星の言うとおり、ぼくの亀頭は粘液でぬらぬらと光って見える。昴星はそれを見て、これ以上ぼくのペニスに対してコメントを述べなかった。カメラはすぐ側からぼくのペニスを捉えたままで、
「ん」
舌先を、亀頭に巡らせる。
そこに纏ったぼくの腺液を、美味しそうに舐められれば、ぼくは当然の反応を昴星に見せることになる。男の脈動をカメラに捉えられていることを気にしないように心掛けながら、ぼくは素直に昴星の愛撫を受けることに集中する。
「んひひ……、すげー、ちんこビクビクしてんの、なんか可愛いや……」
「可愛い……?」
ぼくの目には、自分の陰茎のすぐそばにある昴星の顔が普段以上にきらめいて見えるぐらいに可愛らしく見える。自分のものの醜さが少年の愛らしい相貌を引き立たせているのだ。
「うん、でっかくて、大人の形したちんこだけど、おれはすげー可愛いと思うし、だから、可愛がる」
指先が、陰嚢を這い、下から持ち上げた。「ひひ……、やっぱちゃんとふたつ入ってんだなー」
「それは……、そうだよ、だって……」
「おれもおにーさんも男だもんな。ここが空っぽだったらせーし出てこねーし……、ひひ、こっちも可愛いや」
はむ、と咥え込み、イタズラをするみたいに舌の面で袋を舐めているうちに、昴星の舌がじんわりと温かくなってきたような感覚を抱く。本来的に「味」を嗜好し、その要素で欲情する少年は、舌そのものが「感覚器」として以上に反応するほど発達しているのかもしれない……。
「んはぁ……」
陰嚢から、再び茎を上がり、横咥えにしたりちろちろと舌を這わせたり。ぼくの性器が持ち合わせる全ての「味」を余すところなくカバーしたいと思っているみたいに、昴星は舐めるという行為自体に執着しているみたいだった。「おにーふぁん、の、ひんほ……、ふっげぇおいひ……」
気付けばその目もとろんとしている。カメラはちゃんと撮れているのかな。……まあ、ぼくは昴星を愛することに何のためらいもない。彼がそれを求めるとき、いつだって呼応することができるつもりだ。
だから、大丈夫、何にも心配することはない。ぼくは昴星が大好きで、可愛くって仕方がないのだから。
「昴星」
一番気持ちいいと知っている裏筋の弦をたっぷり濡れた舌と唇で愛してくれる昴星にぼくは言った。
「すっごい気持ちいいよ……、もう出してもいい?」
こく、と昴星は頷き、添えた左手で茎を握って扱きながら亀頭に舌先を当てて小刻みに動かす。くすぐったいような微妙な快感はすぐにぼくを追いたて始めた。少年の舌そのものが、新たな「味」を強く求めているのだろう。
「はぁ……」
ぼくは、震えているとはっきり自覚出来る息を吐き、ペニスに深々と吸い付きすぼまった昴星の、普段はみずみずしく柔らかな頬を指で撫ぜる。射精のタイミングはすぐそこにまで迫っていたけれど、
「気持ちいい……。昴星は本当にお口が上手だね、……大好きだよ」
少年が、ぼくにそう在ることを望むのなら、ぼくはどんな価値があるか判らなくてもそう言うことに躊躇いなんかない。震え揺れるぼくの声なんて、笑っちゃうぐらいに聞き苦しいものに違いないのだけど、後で聴いた昴星が、一パーセントでもいいから嬉しくなってくれるのならば。
「ん……ん、む、……」
搾るように尿道押して、吸い上げる。極めて貪欲な愛し方、昴星の身体から溢れたものが、匂いまで含めてぼくを幸せにしてくれるように、ぼくの身体から出たものが役に立っている……。
「ふひひ」
昴星は光と共にぼくを見上げる。「おにーさんのせーし、すっげーいっぱい出た。味も濃かったから……、昼間あんだけ出したのにまだ足りねーんだなー」
ふに、とぼくの玉袋を押す。幾らなんでも無限に湧き出してくるはずもないが、しかし昴星たちが一緒ならそれも可能なんではないか、という気がしてくる。それは何ら不思議なことではない。
「昴星が気持ちよくしてくれたからね……、嬉しかったから、たくさん出たんだよ」
昴星の髪を撫ぜる。昴星は嬉しそうに立ち上がり、ぼくに抱き付いた。昴星の濡れたブリーフ、もう冷えていたって不思議じゃない、のに、内側の体温をぼくに伝えた。
「あのさ、おにーさん」
「ん?」
「大好きだよ」
少しだけ照れ臭そうに、でもはっきりと昴星は言う。「才斗とどっちが」とは問わないし、
「ぼくも昴星のこと、大好きだよ」
「流斗とどっちが」と、昴星も問わない。ぼくらにとってそれはとても些細なこと。お互いがお互いを好きだと言い合える、それだけで十分過ぎる。
道に突き出した岩くれの上に、ぼくは浴衣を脱がせ濡れたブリーフ一丁になった昴星を膝に乗せる。
「昴星、お外なのに裸になっちゃったね」
恥ずかしそうに昴星は頷く。
「パンツからおちんちんも出てる。可愛くて、すごくえっちだよ」
当然のように、会話の途中に唇が重なる。
「……あのさ、質問」
昴星は濡れた下着から幼茎を覗かせたまま、急にじっとぼくの目を見て訊く。「おにーさんってさ、この、おれとか流とかのちんこのことさ、『おちんちん』ってゆうの、なんで?」
「ん? ……何でって……」
だって其処は、おちんちんでしょう。
「おれもさ、むかし、まだ二年生ぐらいのころは『ちんちん』って言ってた気ぃするんだけど、でも、ここんとこはずっと『ちんこ』って呼んでる」
「ああ……、確かにそうだね」
先日、オムツをして、「大きな赤ちゃん」になってしまったときには、昴星は自分のその場所のことを「ちんちん」と呼んでいたことを思い出す。
「才斗もさ、ずっと『ちんこ』ってゆってたし、そのさ、なんかさ、……『おちんちん』なんて言われると、なんかちっこい赤ん坊のちんこみたいで恥ずかしいっていうかさ……」
実際、赤ちゃんみたいに可愛いじゃないか、という言葉は喉元まで出かかった。
「おにーさんは自分のちんこも『おちんちん』って呼ぶのか?」
さて、どうであろうか。これまでにぼくは自分の「これ」のことを、どう表現してきたでしょうか?
「呼ばないね」
「なんで?」
「自分で『お』を付けるようなしろものじゃないと思うからね。……もちろん流斗みたいに可愛い男の子が自分のものを『おちんちん』って言うのか問題ない、むしろ、微笑ましいことだと思うけど、……ぼくはとっくの昔に『可愛い』って言葉が自分にふさわしくないってわかっちゃってるから……」
毛も生えてて、皮も剥けてて……。いまではまあ、昴星と流斗(それから、今日限定で由利香)がいるからまるっきり「無駄」とも思わないけれど、それでも不要に大きいもの。とてもじゃないけも、「おちんちん」なんて可愛い言い方の似合うようなものじゃないし、それはちっとも残念なことでもない。
「昴星は、ぼくが昴星のおちんちんのこと『おちんちん』って呼ぶの、あんまり好きじゃないのかな」
ぼくの問いに、うーん、と少し勢いの収まった場所に視線を落とす。
「好きじゃないってことはねーんだけどさ……、でもやっぱ、ちんこちっちゃいのがその言い方で少し目立つような気になるってゆーか……」
なら、やめようか。せめて「お」は除いて「ちんちん」って呼ぶことが、別にぼくにとって何か負担になるわけでもないんだから……。
「でも、いいや」
言いかけたぼくより先に、顔を上げた昴星が笑顔で言う。
「おにーさんおれのちんこ可愛いって、ちっちゃいからじゃなくて思ってくれてんの、わかるから。……それにさ、こないだオムツしたときもそうだったけど、おれ、おにーさんに『可愛い』って言ってもらえんの、恥ずかしいけど嬉しいんだ。流のほうがずっと可愛くって、由利香みてーに女子じゃないのに、おれのこと『可愛い』って言ってくれんの、すげー嬉しい」
ぼくと昴星の立場は概ね対等なものだと思う。それはこんな風に、お互いの思うところを理解し、尊重し合うということを、無意識のうちにしてしまえるから。
ぼくの手に携帯を渡して、ひょい、と昴星が膝から降りた。オシッコの匂いが、湿っぽく甘いものから、半ば乾いてしょっぱいものへと変わり始めている空色ブリーフを脱いで、ぼくに振り返り、そのブリーフを放る。
「外でフルチンになっちゃった」
多少の緊張があるのだろう、ついさっきまでブリーフの窓から元気に上を向いていた「おちんちん」は普段以上に縮んでふるふると揺れ、茎に比べると平均的なサイズの袋も恐れを抱いたようにすくんでいる。
勃起していなくとも、ぼくの目にはとてもえっちなものに見えるのは当然で、染まった頬に照れ隠しの笑みを浮かべて立つ少年は文句なく愛らしい。
「昼間はあんなに恥ずかしがってたのに」
「だって、夜だもん。誰も見てねーし、平気だよ」
強がりを言う少年を今すぐ抱き締めたい。けれど、ぐっと堪えてぼくはカメラを、自分の陰茎に向ける。
「昴星の裸見ると、すぐこんなになっちゃうんだ」
「おにーさん、またしたいの?」
「うん。……昴星がもしさせてくれるなら、したい」
普段は、あまり自ら口にすることのない欲をぼくは告白する。「昴星が大丈夫なら、昴星のお尻に挿れたい」
昴星は驚かなかった。「ひひ」と笑って、
「ヘンタイだなー。いけないんだぞ、男子の肛門にちんこ突っ込みたいなんて言ったら……」
それは、もう、本当にその通りでございます。
「んでもおれおにーさんのこと好きだから、いいよ。おにーさんのちんこがお尻に入んの好きだし、それに流のいる前じゃできねーもんな」
このことを流斗が知れば、……あの優しい子はまず間違いなく「ぼくに挿れて」って言うだろう。けれど、あの子の細い小さな身体のことを思えば、そんなことは許されない。昴星の身体でさえ、負担が軽い訳ではないのだから。
昴星は、そのことをきちんと理解している。きっと才斗からも口止めされているのだろうと思われる。昴星はときどき自分のことを「おれ、バカだから」なんて卑下するけれど、大事なところはちゃんと分かって居る。そういう子は決して、バカなんかじゃない。
「……そういえばさ」
昴星は思い出したように、「昼間、あのさ、おにーさん、由利香のお尻の穴んなか、ちんこ入れてた?」
やはり、気付いていたか。ぼくは素直に頷いた。昴星はじっとぼくの顔を見つめて、……やがて、「まー、おれもあいつの……、まんこにちんこ入れちゃったしな……」とため息交じりに言って、けれど、
「由利香のお尻とおれのと、どっちが気持ちよかった?」
と、妬んでしまう自分を止められない様子でぼくに訊く。
ぼくは簡単に、男子と女子の肛門の構造の差について昴星に教えた。例の、肉の「壁」のことだ。
「だから、狭いのは間違いなく昴星の方だよ。ぎゅってぼくのこと、その場所で抱き締めてくれてるみたいに感じる」
由利香の肛門を犯しながら、昴星のおちんちんが彼女の胎内を出入りする感触を覚えて、それもまたぼくにとっては快感を増幅させるものではあったわけだけど、それについては言及しなかった。
昴星は、男の子だから可愛いし、ぼくに気持ちよさをくれる。それが特別なことであるというだけのことだ。
「ちんこ、ギュッてされんの気持ちいい?」
「気持ちいいし、それにすごく嬉しいよ」
ひひ、と昴星は気を取り直したように笑う。
「じゃー、おれも嬉しいな。おにーさんのちんこがさ、おれのお尻んに中でさ、射精するときビクビクしてんのわかるし、それがおにーさん気持ちよくなってる証拠なんだって思うの、すげー幸せだよ」
そこまで言って、昴星はしゃがんでぼくを見上げる。ぼくらが一つに繋がるための儀式を始めるのだ。
「あーの、さ、おにーさん……?」
昴星はおずおずとぼくを見上げた。
「うんこ、するとこも撮んの……? それ、おれあとで自分で見るから、その……」
「昴星は自分のお尻からうんちが出てくるとこ見たことないでしょう?」
「そりゃー……、だって、見えないもん。流がするとこは、何度も見たことあるけど」
「一度自分で見てみるのもいいんじゃないかな。ぼくは昴星のうんちするとこ撮ったのを、何度も見返してる。すごい可愛い昴星が、お尻から太いうんちぶら下げてるとこ見て、何度もオナニーしてる」
事実であるから、恥ずかしくとも言葉はスムーズに出てきた。
「うー……」
考え込むように唸りながら、昴星は顔を手で覆ってしまった。大きく開かれた足の間、縮んで突き出された包茎の先から、チョロチョロとオシッコが流れ始める。遅れて、一度、長い放屁の音、そして、何時もながら太いものが顔を出す音まで、静かな夜の森に響く。
「あのさ、……あのさ、おにーさん」
ぬちぬちという音を隠すように、昴星は声を上げる。「由利香、さっき……、っん、お尻におにーさんのちんこ入れさす前にさ」
いきむ力が入るから、言葉は途切れ途切れだ。「……あいつ、うんこ、しなかったよね……?」
「うん。指でならして、それだけだったね」
「……あのさ、ひょっとしてさ、この、おれの、うんこするのって」
長い放屁の音が響いて、「その、あのさ、あの、あんまり要らなかったりすんのかな」慌ただしく、昴星は自分の言葉で塞ぐ。
微笑ましく思いながら、ぼくは昴星のあったかい頭を撫ぜる。手のひらを熱くなったほっぺたまで伝わせて、上を向かせて、キス。これで昴星はこの動画を消せなくなってしまった。
「その分、由利香は終わったあとたくさんうんちしてたよね? 先に出しておけば、繋がってからしたくなることもないだろうし、それにさ、ぼくも才斗も、昴星がうんちするとこ見るのは、好きだよ」
昴星の身体に篭っていた力が抜ける。どうやら全部出し切ったらしい。ぼくは浴衣の袖からティッシュを取り出し「立って」と促し、足の間から丁寧にお尻を拭いた。
「でも、おれのうんこ、くさいし……」
「うんちは誰のだって平等に臭いものだよ。由利香のだって臭かったでしょ?」
三枚使って拭き終えたところで、縮んだままのおちんちんを、「ひゃ……」タマタマごと口に入れる。
「だから、これからも昴星は昴星のやり方でいればいいと思うんだ。……たくさん出たね。スッキリしたでしょう?」
「だっ、だからうんこは撮んなくていいのっ」
昴星は自分のひり出したものから逃げるようにぼくの背中に回って懇願する。意地悪はしない夜だから、ぼくはもう一度、可愛らしいおちんちんにキスをして、
「じゃあ、昴星……、そうだな、そこの木に手をついて、こっちにお尻向けて」
素直にそうしながら、昴星は思い出したように「え、待ってよ、ローションとかゴムとか持ってんの……?」と不安そうに訊く。
「ゴムは、あるよ。いつも財布の中に入ってるから。……でも流石にローションはないから、その代わりにしっかり濡らさないとね?」
「ぬ、濡らすって、……ひっ」
むっちりとしたお尻の肉を割り開き、いましがたぼくが拭いたばかりの穴を携帯の光で覗き込む。……うん、綺麗だ。それだけ確かめられれば十分、ぼくは顔を寄せて、濡れた舌先を当てる。
「や、やらっ、うんこしたばっかっ……」
途端、きゅんと穴はすぼまった。
「ちゃんと拭いたから大丈夫だよ」
「でもぉ……んにゃっ」
「昴星、好きでしょ? オモラシして、オシッコでびしょびしょのおちんちんとかうんちしたばっかりのお尻の穴とか、恥ずかしいところ舐められるの……」
冷静になれば、「拭いたから何だ」とは思うんだ。けれどこれまでのところこうして昴星の排泄物の大なり小なりを舐めて、お腹がおかしくなったことは一度もない。だからきっと大丈夫だろうと思うし、そもそもいまは冷静になる必要なんてない。
昴星のお尻の穴は、太いうんちを出し終わったばかりだからか、敏感になっているみたいだ。ライトを当てて確認する限りは、蕾の皺も綺麗に揃っていて、健康そのものといった感じの肛門である。
股下から指を這わせてみれば、ついさっきまで縮み上がっていたおちんちんはまた上を向いている。「昴星、カメラ、自分で持ってて。昴星のおちんちんにも触ってたいから」昴星に携帯を持たせ、先っぽに余った皮の、マシュマロみたいな感触を指で楽しみながら、よく唾液で濡らした蕾の中央に、そっと指を忍ばせる。
「う……はぁ……!」
背中を弓なりに逸らして、昴星が感じる。太いものが出たばかりの場所へぼくの纏わせた唾液を塗りつけつつ、その肉壁の温度や圧力を、存分にぼくは感じた。
指を突っ込んで中で動かしながら、また舐める。昴星は失禁するような震えをぼくの舌先に何度もくれる。「お外」でこんな風に感じ切ることに、昴星は徐々に慣れ始めているのかもしれない。何せ今日は、由利香を含めたくさんの女の子に可愛いおちんちんを見られてしまったのだ。
「あ、あっ、おに、っさっ、もぉっ、ならすのいいよぉ……っ」
「もういいの?」
ぼくは小さく笑って、また、昴星のお尻の穴を舐めて、それから左右の双子の丘に一つずつ、キスをする。
「もっと可愛がってあげるつもりなんだけどな」
昴星はお尻を、流斗がおねだりをするときみたいに淫らに動かしている。ずっと摘まんで手触りを楽しんでいた包皮はもちろん我慢汁でぬるついていて、そっと皮を剥くと、びゅっ、とオシッコが飛び出した。流斗に「潮吹き」という言葉を教えてあげたことをぼくは思い出す。
「でもっ、もぉっ、ちんこむずむずすんのぉ……っ、せーし出したいよぉ……」
ほとんどもう、泣き声だ。
愛されることで少年の喉が発する声までも、昴星のカメラは捉えてしまっている。決して昴星の望むところではないのかもしれないけれど、……でも、確かにぼくが「可愛がった」証だ。
「昴星、カメラ貸して。こっち向いてごらん」
指を抜き去り、こちらを向くなり、昴星は力が抜けたようにずるずるとしゃがみ込んでしまった。しどけなく広げられた足の間、射精間近で放置されたおちんちんは、混乱しているようにちょろちょろとオシッコを漏らし、緩んだ肛門からは小刻みなガス放出を繰り返している。ほっぺたには涙の伝った跡がある。
「昴星の身体が、ぼくに可愛がられた証拠だよ」
自分のお腹にオシッコを引っ掛ける昴星の姿を、ぼくは丁寧に撮影していきながら、ぼくに出せると思う一番優しい声で語りかける。「昴星が感じて、こんなになるまで気持ちよくなった証拠……、後で見るとき、一人のときでも、ぼくが愛したからここまではしたなくなっちゃったって、思い出せるよね?」
昴星は、しゃくりあげながら、こく、こく、頷く。ぼくは精一杯の愛情をこめて、キスをしてから、浴衣を脱ぎ、「こっち、横になれる?」昴星は素直に這って、仰向けにぼくを見上げた。借り物を汚してしまうのはちょっと気がとがめるけれど、昴星の背中を汚すよりはマシだろう。
「おにーさんも、フルチン……」
昴星は少しだけ笑う。
「おれの、お尻ん中に、おにーさんの、でかいちんこ入るんだ……」
「うん。昴星と一つになるんだよ」
身を重ねる。もちろん、キスをする。大きく足を広げた昴星の、甘くしょっぱい身体の中心に、ぼくは自分をゆっくりと沈めて行く……。
「んぅン……っんあ! あ!」
厳しい圧縮があった。ぼくの下腹部にぴったりくっついていた昴星のおちんちんが弾み、そのまま其処へ、精液が吐き出される。ぼくは一つになったことを確かめながら、熱を帯びたままの昴星の身体をゆっくりと抱き起こし、膝の上に乗せる。
昴星はしっかりと腕を回し、抱きついたままでいた。
「……ごめん、ね? おにーさん……」
「ん……?」
「おれだけ、いっちゃった……」
乱れた髪を、撫ぜて、またキス。
「いいよ。……昴星のことをいっぱい幸せにするって決めたんだから」
まるで、本当の恋人みたいに甘ったるい時間だ。昴星は思い出したように、携帯を、自分のおちんちんとぼくの腹部に向ける。
「おれの……、ちんこから出たの、おにーさんにかけちゃった……」
「ぼくのが気持ち良かったからだよね?」
ぼくは指でそれを拭い、ペロリと舐めとって見せた。「美味しいよ、昴星のおちんちんから出た精液。すごくえっちな味がする」
「だって……、おにーさんがえっちなこと、いっぱいするから……」
もちろん、この会話の合間にも、キスは忘れない。昴星の舌に、昴星から出たえっちなミルクがどれだけ美味しいかを教えてあげるためにも。
「……ずっと勃起したままだね」
「ん……、だってさ、一番きもちいとこ、おにーさんのちんこ入りっぱなしだもん……」
確かに、深々とその身の中に収まったままのぼくのペニスは、昴星が腕でそうするように抱き締められ続けている。「……だから、ちんこ、そんなすぐに収まるもんか……」
おっぱいに触ったぼくの舌に、咎めるように歯を立てる。由利香の、張り詰めて少しだけ硬く思えた乳房乳首とは少し違う、小さいのにとてももちもちと柔らかい其処をそれでもぼくが弄ると、きゅ、きゅっと昴星のお尻はぼくを締め付けた。
「……そろそろ、ぼくもいきたいな。昴星のお尻の中で出していい?」
抱き付いた昴星は「ひひ」と笑う。「おにーさんの、ヘンタイ。うんこ出るとこにちんこつっこんで気持ちよくなってんだ……?」
「うん。……昴星は、変態に可愛がられるのは嫌?」
「んーん、おにーさんが気持ちよくなってくれんの、うれしいから、いいよ……」
ぼくらは同じ気持ちで肌を重ねている。秋の夜なのに、まるで寒くないのは、昴星の肌がしっとりと汗ばむぐらいにあったかいから。
大人として、……この子の保護者としての考えはいま、まるっきり捨ててしまっている。一分、いや、三十秒ぐらいはそれも許されるだろうとぼくは思う。だって終わったあとには、昴星の身体を再び浴衣で包み込んであげるのだから。
「あ、あっ、おにーさんっのっ、ちんこっ、どんどんでかくなってるっ……!」
今だけは、この淫らな体温に委ねよう。絡み合う舌と舌、絡み合う身体がそれだけで正当な言い訳になる。
昴星の中へぼくが思い切り射精すると同時に、昴星は全ての力を動員してぼくにしがみ付いて射精した。まるで本当に恋人同士になったみたいな、甘ったるい時間がハチミツみたいにとろとろ、肌を這い流れる……。
宿に戻ってから、もちろん、お風呂に入った。さっき昴星が浴衣のまま入った温泉に、今度はちゃんと裸になって。
「明日の朝は流も連れて来なきゃな」
と昴星は笑った。それは、確かにその通りで、部屋に戻ったときに、出掛ける前と同じ格好で穏やかな寝息を立てている流斗の髪を、眠気を堪えて昴星は優しさを籠めた手のひらで撫ぜる。甘い夢の中なら、ぼくも少し救われる。
そして、目を覚ましたのはモーニングコールを受けるはずの七時半よりずいぶん早い、朝の六時。
「おにーさん」
ぼくを起こしたのは、またも昴星だった。
「ん、……おはよう、早いね……」
夕べ二度目の床に就いたのは一時半を回っていたはずである。だから昴星もぼくも睡眠不足だが、それでも起こされた理由ははっきりしている。寝ぼけたぼくの鼻は、きちんと嗅ぎ分けた。
「ああ……、そうか……」
もともと、寝起きって実は一番頭の回転が鋭敏になっているらしい。目覚まし時計を五分刻みで設定し直したりする姑息さにもそれが現れているけど、やっぱり眠い物だからそれがきちんと働かないというのが現実らしいのだけど。
やれやれ、と身を起こす。
流斗ももう起きていた。
「どっち……?」
と訊きかけて、「二人とも?」と訊き直す。昴星は恥ずかしそうに、流斗は照れ臭そうに、……同じようだけど確かに違う表情で、同時にこくんと頷く。
「布団、ちゃんと用意してもらっておいてよかった……」
実は昨日のチェックインの際、二人がオネショするかもしれないということをフロントに伝えておいた。だから二人を寝かせる布団には、いわゆる「オネショシート」が設えられている。……けれどシーツやかぶっていた布団は、やっぱり多少汚れてしまっている。仕方ないことではあるけれど、フロントに電話をしなければ。
あくびをかみ殺しながらその用を済ませ、二人の汚した布団と浴衣を引き取ってもらう。すみません本当にすみませんと謝りつつ。本来なら寝る前に、少なくとも昴星には確実にオムツを着けさせなければいけなかったところなのに、眠さに負けてしまったぼくの責任だ。
「そしたら……、とりあえず、お風呂入ろうか。おちんちん、洗わないとね」
フロント係が持ってきた新しい浴衣を着る前にそれぞれブリーフを脱がせる。ちょっと匂いが気にはなるけれど、もうオシッコは乾き切っていた。
「お風呂って、そこの?」
夢の中でオシッコをしても目が覚めないくらい深い眠りで体力万全の流斗が部屋備え付けの露天風呂を指差すが、ぼくは首を振った。
「身体も洗いたいし……、下の大浴場にしようよ」
どのみち、流斗をそちらへ連れて行かなければいけないのだし。
「パンツの替えも支度して。……まだある?」
それぞれに、リュックサックの中をごそごそやり始める。昨日の朝からもう何枚もパンツを汚してきたわけだが、それでもまだ清潔なものが出てくるのだから恐れいる。昴星は、白地に水色のボーダーが入ったもの、そして流斗は薄緑のカラーブリーフ。
ぼくも自分の着替えを用意して、三人連れ立って温泉に降りた。さすがに寒い、息が白いほどだ。けれどその分、空気は澄み渡っていて、山並みは驚くほどくっきり、間近に見える。まだ太陽が登り切っていないから、透明な空気はどこまでも青い。
ただ、脱衣所に着いた段階で、ぼくらは少し、戸惑った。
ロッカーは100円玉で鍵のかかるタイプで、それが壁に並んでいる。ただロッカーの他にも、籐の脱衣籠が備え付けられた棚があって、そのうち二つが使用中なのだ。
「三人でお風呂のついでにえっち出来ると思ってたのになあ」
流斗はとても素直に言う。ぼくも、言葉には出さないが同じ気持ちだ。とにかく身体を洗いに中に入ると、内風呂は無人で、その代わり、さっき表現した通りの朝の露天風呂に、……男の子が二人、浸かっていた。それまでは喋っていたのに、ぼくらの姿をみとめると途端に黙り込む。
「おはよう……」
一応声をかけると、二人とも小さな声で「おはようございます」と答えた。
片方は、さっぱりと短い髪で、気の強そうな猫目、才斗ほどではないが、昴星より明らかに背が高い。
もう片方は、ふわりと耳にかかるほどの髪、少し気弱そうな目をしている。背は、昴星と同じぐらいか。
どちらも五年生か六年生か、昴星と同世代であろうと思われる。ぼくにのみならず、「ぼくら」三人に対して警戒心丸出しの視線を送って来るのが何とも落ち着かない空気を醸し出している。
宿泊客の子供だろう、別に(妙なことをしなければ)気にすることはないと自分に言い聞かせつつ、ぼくはぴったりと寄り添う二人から離れたところに、昴星と流斗を促して身を沈めた。あちらが黙りこくっているから、こちらも何となく気詰まりで、しゃべろうという気にならない。
「ね、お兄ちゃん、ぼく中のぶくぶくするお風呂行ってきてもいーい?」
早くも退屈したのか、流斗が立ち上がって言う。一人で、もちろんタオルも巻かずに内風呂の方へ行き、……五分もせずに戻って来るなり、
「ねえ、お兄ちゃんたち、この辺の子なの?」
臆することも一切なく、ぼくの隣から二人の少年に向けて訊く。ぼくも昴星も、完全に虚をつかれて、目と口を丸くして流斗を見るばかりだ。
「ぼくたち、東京から来たんだ。今日帰っちゃうけど」
二人も同じく面食らった様子である。突然、よく知らんどっかの子に話し掛けられたのだから、当然だ。
「……そう、だけど……」
思わず答えた、気弱な少年を、
「瑞希」
短く、活発そうな方が咎めるように声を発するが、
「へー、お兄ちゃん、瑞希くんってゆうんだ?」
すかさず、流斗が言って彼は口ごもる。頭のいい流斗である。
「お兄ちゃんはー?」
と活発な印象の彼に訊く。少しのためらいを見せたが、
「……陽介」
と、結局は流斗に流されるように答えてしまった。
「ぼくは流斗。こっちは昴星兄ちゃんで、こっちはね、ええと、ぼくと昴兄ちゃんのお兄ちゃんだよ」
あっさりと流斗はぼくたちのことまで紹介してしまった。本当に、ごくスムーズに。
流斗がまたよからぬ企みを抱いていることは確かだ。けれど、それがどのようなものなのか、ぼくらにはわからない。だから黙っているしかできない。
そもそも流斗はどうしてこの少年たちが「この辺の子」って判ったんだろう?
「瑞希兄ちゃんと陽介兄ちゃんはいくつ?」
相変わらず屈託なく笑顔で流斗は訊く。陽介と瑞希は顔を見合わせて、
「……六年生」
陽介が代表して答えた。
「じゃあ、昴兄ちゃんと同い年だね。ぼくは四年生だよ」
昴星ははっきりと緊張する。人見知りするタイプではないが、「同い年」という立場にあって、さっきオネショをしたばかりの子としては緊張しないわけには行かないんだろう。まして、流斗が一緒だ。
「……ねえ」
瑞希が困ったような顔で訊く。「どうして、ぼくらがこの辺に住んでるって判ったの……?」
にっこりと微笑んで、
「だって、靴があったもん」
と流斗は答える。……ぼくも昴星も、全く気付かなかった。
「泊まってる人なら、スリッパがあるでしょ? でも靴があったから、この辺の子なんだなーって」
「すげえ……」
と昴星が呟く。ぼくも感嘆する。
「それに、あのね、さっき着替えるとこの、カゴに二人の服あって、そんなはっきり見たわけじゃないけど、浴衣じゃなかったし、タオルもこの旅館のじゃないみたいだったから、そうなのかなって」
少量の材料しかなかったとしても、流斗の観察力と知性の前にはそれだけで十分ということらしい。
「この旅館はね、近所の人もお風呂は入りに来られるようになってるって、入り口のとこに書いてあったの見たよ。朝の早い時間は安いんだよ」
ね、と二人に流斗は微笑みかける。陽介も瑞希も、こっくりと頷いた。高級旅館ではあるが、その辺りは開放的らしい。「そういうお風呂、他の旅館もそうなんだって。せっかくだから帰る前にいろんなお風呂に入りたいな」と、これはぼくに向けて言う。
そこまでは、まあいい。当然の流れ、当然の言葉だとぼくは思う。ただ、その次の言葉が大問題。
「いろんなお風呂に入れば、たくさんの人におちんちん見てもらえるもんね」
ずる、と昴星がお尻を滑らせた。四十度以上のお湯が鼻に入って、昴星は盛大にむせる。ぼくは慌てて昴星を抱き起こすが、あっけに取られる少年二人に、「ねえねえ、ぼくのおちんちん見てー」と浴槽の中をひょいひょい歩いて近づく流斗を止めることは出来ない。
「りゅ、流斗、よしなさい、ちょっと!」
ぼくが声を上げても、流斗は止まらない。
「あのね、お兄ちゃんたち知ってる? おちんちんって大きくなったあとたくさんいじるとすっごくきもちよくなって、『せーし』っていう、白いおつゆがいっぱい出て来るんだよー」
年下の少年二人に、無垢な子供のふりをして、自分の知識をひけらかす。昨日は由利香とああいうことをしてしまったとはいえ、原則的に自分が「ショタコン」であることが誰かに知られるわけには行かないので、ぼくとしては何の考えもなく(少なくとも、何か深い考えがあって言っているようには見えないでしょう!)そんな物騒なことを言う流斗が怖くってたまらない。だって、まだ四年生の男の子がどうしてそんなこと知ってるのって思うに決まっている。そこから推測を進めて、ぼくらの普段していることまで陽介と瑞希が辿り着くのは、何も流斗ほどの頭の良さを備えていなくても容易なことだろう。
「……知ってるに、決まってんだろ、そんなの」
ぷいと顔をそらして、陽介は答えた。場合によっては「頭おかしい」と思われたって仕方のないような流斗の発言に対して、その態度は忌避を表すのか、それとも、年上としての矜恃を表現するのか、ぼくには判然としない。
そもそも……、流斗は何を考えてそんなことを言い出したのか。流斗の考えの中身など、ぼくのような凡人には到底理解出来ないとわかってはいるのだけれど……。
「流、もう、出ようぜ……」
ただならぬ危機感を抱いて、昴星が言っても、普段なら素直に「昴兄ちゃん」の言うことを聴く流斗はお尻をこちらに向けたまま平気で無視をする。
「お兄ちゃんたちは、もうせーし出せるの?」
「流っ……」
瑞希は真っ赤になって俯く。陽介は、はっきりと気分を害したように「うるせえな、なんでそんなこと答えなきゃなんねえんだよ」と尖った声を出した。
「お」ぼくは、喘ぐように言う「覚えたてだから、そういう話したくって仕方がないんだよ。ごめんね、変な話を……」
「えー。お兄ちゃんたち知らないなら、ぼくが教えてあげようと思ったのになあ。ぼく、一人でおちんちんからせーし出せるよ? 女の子に出してもらったことだって……」
あああ、何を言っているんだ! 事実だけに、最も危険なものを。
さすがに、怒ってでも止めなければならないか。声を上げかけたぼくより先に、
「あ、あの」
膝を抱えていた瑞希が言う。顔は、流斗に向いている。しかし言葉はぼくに向いた。「お兄さんたちは、東京から来たんですか……?」
質問は、思いのほか穏やかなものだった。ぼくはほっと息を吐き、顔中の汗を手のひらで拭って
「あ、ああ……、そうだよ。東京から……、一泊二日でここに泊まりに来たんだ。さっき流斗が言ったように、今日帰る」
「……じゃあ……」
何かを言いかけた瑞希を、制するように陽介が「上がるぞ」と絶対的な口調で言う。
「で、でも……」
「関係ねえだろ、おれたちには」
厳しい声でそう言い、陽介は瑞希の細い腕をぐいと引っ張る。少し痛そうに、けれど瑞希はそれに従う。二人は、緊迫感をまとっていた。
それなのに、
「わあ」
流斗は空気を一切読む気はないらしく、呑気な声を上げる。「すごーい、陽介兄ちゃん、おちんちんに毛ぇ生えてるー」
「んなっ、バッ……、なに見てんだよ!」
「だってだって、昴兄ちゃんおちんちんの毛生えてないもん、中学生にならなきゃ生えて来ないって言ってたけど、陽介兄ちゃんは六年生だけどちゃんと生えてるんだねえ」
「流っ!」
「おちんちんも昴兄ちゃんのよりおっきいや。……瑞希兄ちゃんは毛は生えてないけど、やっぱり昴兄ちゃんよりおっきいね」
ぼくだって、ショタコンであるからして、立ち上がった二人の少年の足の間にぶら下がるものに興味を込めた視線を送ってしまったことは事実だ。陽介は流斗が指摘したとおり、年のわりに立派な、やや剥けかけのおちんちんの根元に灰色の霞がかかったみたいに短く僅かな発毛が見られる。一方で瑞希のものは、発毛こそないものの、こちらも輪郭は徐々に大人びたものになろうとしているところ。
「ひ、人のちんちんなんてそんな見てんじゃねえよ!」
「えー、だってお兄ちゃんたちぼくのおちんちん見たじゃん」
「見たくて見たんじゃねえし! おまえが勝手に見せて来たんだろうがよ!」
朝っぱらからお風呂でなんて会話をしているのか。ぼくはもうどうしたらいいか判らないし、昴星もどんどんと自分のおちんちんの「小さい」ことをバラされてしまうし。
パニックになりそう。流斗の「保護者」という立場の大変さを、ぼくは改めて思い知る……。
「でも、もうぼっきしてないんだね?」
流斗が言ったその一言に、「は?」と声を上げたのは昴星。
二人の少年は、揃ってピタリと動きを止めた。すぐに「な、なにいってんだこいつ」と振り払うように言ったのは陽介で、「そ、そ、そうだよっ、ぼくたち、そんなの……」
「ね、お兄ちゃん」
流斗はぼくを振り返る。「おちんちん、上向いておっきくなるのって、『ぼっき』ってゆうんだよね?」
「え、あの、それは……、はい」
「さっきぼくたちが来たとき、このお兄ちゃんたちのおちんちん、お湯の中でおっきくなってたんだよー」
流斗はなんのためらいもなくそう言い放つ。
しかし……、頭をくらくらさせながらぼくは、恐らくそれは事実なのだろう、と悟る。二人の少年の態度が、何より雄弁に語っていた。
「な……、なんでだよ、なんでこんなとこでちんこでかくさしてんだよ……」
昴星はまだ訳が判らない様子であるが、ぼくはもう、辿り着いていた。
流斗は得意げに、
「お兄ちゃんたち、恋人同士なんだね」
と、断定する。
否定するだろう、……そう思ったけれど、
「悪ぃかよ!」
陽介は、怒鳴り返した。「そんなん、おまえに関係あんのかよ!」
「よ、陽介、声大きいよ……」
流斗はにっこりと、ぼくに微笑みを向ける。「そうだね、かんけいないね」ぼくは何となく、ごく曖昧に、頷いた。
「かんけいないから、ぼくたち、お兄ちゃんたちが男の子同士だけど好きって思うの、だれにも言わないよー。でもって、ぼくたち三人がおんなじように男の子同士だけどえっちなこといっぱいしてきもちよくなってるってことも関係ないよね?」
あが、と空いた口からそんな音が出た、ぼくも、昴星も。
「……お、おまえ、たちが……?」
陽介が丸裸の驚きを隠せない声で言えば、
「君は……、そんな小さいのに……」
呆然と、瑞希も言う。
「ちっちゃくないもん、昴兄ちゃんよりもちょびっとだけぼくのほうがおっきいんだよ」
気分を害したように唇を尖らせて、流斗は言い返すがそれに何の意味があるものか。また赤の他人にバラしてしまって、ぼくは首筋がじわじわと冷え始めるのを感じる。昴星は言葉もない。
瑞希は呟く。「東京……」と。
「ぼくはお兄ちゃんと昴兄ちゃんが大好き。だからいっぱいちゅーして、三人でいっぱい気持ちよくなるの。そのやりかたもたくさん知ってるんだ。……でも、二人には関係のないことだよね」
……流斗自身も自分の言葉が二人の年上の少年に対して何らかの効果を発揮していることは判っていても、それが一体なぜなのかということまでは判らなかった、と後でぼくは少年自身の口から聴くことになる。「でもあのお兄ちゃんたちがお風呂でおちんちんのいじりっこしてたのは、ほんとだよ」と流斗はぼくに教えた。「あの前に、中のお風呂に行く振りして、二人の着替え、見てみたの。そしたらね、シャツもセーターもズボンも別々なのに、パンツ……、ぼくらがはくみたいな、白いパンツだよ? お揃いだったんだ。六年生のお兄ちゃんが二人そろって白いパンツはくのかなあって思って、考えてみたんだ」……ほぼ一人で、脳内で、真実に近い答えに辿り着いてしまった訳だ。
「お兄ちゃん、ぼくたちさき上がろうよ。二人でえっちな遊びするののジャマになっちゃう。ぼくたちはお部屋で遊ぼう」
ただこのときは、よくもまあ恐れもなくそんなことをぼろぼろ言ってしまえるものだとぼくは気が遠くなりつつ聴いているばかりだったけれど。
「ね、ねえっ……」
高い声を、瑞希が発した。陽介が止めるより先に、
「君たちは……、お兄さんたちは、本当に、ゲイなんですか……?」
その単語はぼくの耳に妙になまなましく響いた。「ゲイ」の定義がシンプルに「男性の同性愛者」ということになるなら、まあ、概ねそうではあるけれども……、まだ由利香のお尻で一つになってから二十四時間経過していないのだ。
けれど、その呼称が昴星と流斗とぼくとを繋ぐなら、
「まあ、……うん……」
と頷くしかない。ぼくと流斗は自称で事足りるけれど、昴星に至っては事実として同性の「恋人」だっているのであるから、否定のしようがない。
その昴星は、
「おまえらも……」
と呟いて、慌てて口を噤む。
「昴兄ちゃんは、恋人がいるんだよ。ぼくのいとこの、才斗兄ちゃん。でもいまは、ぼくたち三人でなかよしなの」
陽介も瑞希も、毒気の抜けたような顔で昴星とぼくを順々に見る。
「……恋人が、いんのか? おまえ……」
昴星は「るせーな、ほっとけよ!」と怒っている。夕べは夕べで、ぼくと「恋人」みたいなことをし、今日もこの後どこかのタイミングで三人でそういうことをする昴星は、才斗という本命の恋人が容認しているとはいえ自分の行動に自信があるわけでもないらしい。
でも、陽介の言葉も、それに続いて、
「ねえ……、そのことは、みんな知ってるの……?」
訊く瑞希の声も、決して責めるようなものではない。寧ろ、単純な興味が二人の目には宿っている。
「みんななんて、知るわけねーだろそんなん! おにーさんと流ぐれーしか知らねーよ! ……だいたいおにーさんとのことだって周りにはナイショなんだからな、おにーさんに会えなくなったらやだし!」
優しい子だ。ぼくだって昴星に会えなくなるのはいやだよ。
「お兄ちゃんたちは、誰にもゆってないんだね」
ぼくらだってそうだけど。流斗の問いに、二人は揃って頷いて、……それから「あっ」と慌てる。流斗のペースに巻き込まれて、結局自分たちが同性愛者だということまで認めてしまったのだ。
「君たち二人は……、恋人同士なんだね?」
お互いの弱みを握り合った。ぼくが彼らの秘密を手放して得るものはないし、繰り返し流斗が言ったように「関係ない」のだ。自分に言い聞かせながら、ぼくは湯船をぐるり取り囲む岩に腰掛けた。「……瑞希くん、って言ったね。さっきから『東京』って地名がずいぶん気になっていたみたいだけど?」
陽介が「余計なこと言いやがって」とため息交じりに向かいの岩に腰掛ける。瑞希は前を隠して立ったまま、こっくりと頷いた。
「……二人で、東京に行こうって……、陽介とそう話してたんです……」
フン、と陽介はそっぽを向いて鼻息を吐く。
「どうして?」と流斗が訊く。
瑞希は、「東京に行けば、ぼくら、一緒に居ても、誰かに文句言われなくてもいいから……。東京には、この小さな街よりもずっといろんな人がいるだろうし、広いから、ぼくらの居場所だって、きっと……」
「え……、ちょっと待って」
二人が、お互いのおちんちんを愛撫し合いながら話して居たのって、「それは……、家出の相談って……、こと?」
「関係あんのかよ、そんなの!」
陽介がぼくに向けて怒鳴る。
「関係のあるなしは置いといて」
ぼくは一度彼に向けて頷いて、「……当然、親御さんには言ってないんだよね?」
「言えません。……こうやって二人で一緒にいることだって、知られたら何て言われるか……」
悲しそうに、瑞希は言った。
彼の教えてくれたところによれば……、二人は幼馴染、ずっと一緒にいるのが当たり前で、成長に連れて彼らの思いはより濃く、また艶を帯びるようになって行ったのだという。それを、周囲の子供たちに勘付かれて、……結論から言えば、二人の両親は彼らを引き剥がそうと躍起になった。
彼らの間を通い合う思いへの理解はなかったらしい。
「だから、……二人きりで会えるのは、こことか、他の温泉の、お風呂に入るときだけです。ここは朝早い時間からやってるから、毎週こうやって陽介と待ち合わせて……」
秘密の逢瀬を重ねていた。
「んなん、周りにバレたらやなこと言われんの当たり前じゃねーかよ」
皮肉めいた口調で昴星は言う。「おれだって、誰にも言ってねーし。そんなん、どこ行ったって同じだ。東京だってかわんねーよ」
それには、ぼくも同意する。昴星と才斗の場合、単に同性愛者であるのみならず、初めにお互いのオシッコありきな部分があるから余計に。
「……でも、かわいそう」
流斗は心底からの同情を感じさせる声で言った。「二人とも、相手のこと大好きなのに、一緒にいられないなんて……」
それにも、ぼくは同意する。考えてみれば二人の辛い立場は、昴星と才斗の場合どちらの両親も共働きで、同じ団地の中だから自由に行き来出来るから成立する関係なのだ。二人が知らない間にお互いのお尻とおちんちんでえっちなことをしているなんて知ったら、大抵の親なら……。
瑞希は、少しだけ微笑んで、
「ぼくらは、ずっと隠れているしかないんですね……」
痛みをこらえるように呟く。ぼくには言葉が探せない。もしお互いを求め合うならば、待つことが出来るだろう、とは思う。
けれど少年たちにとってその時間は、きっと果てしなく長く感じられるはずだ。
「大切な時間を、邪魔しちゃってごめんね」
ぼくの謝罪に、瑞希は小さく首を振る。「ぼくらと同じ人たちに会ったの、初めてです。だから、よかった。……そうだよね、陽介」
陽介はそっぽを向いたまま、黙っている。瑞希は付け加えるように「その、……お兄さんみたいに、子供に手を出す人って、もっと怖い人だって思ってました」と言う。ぼくは小さくなるほかないが、
「お兄ちゃんはやさしくっていいひとだよ」
「おにーさんはひどいことなんてしねーし、だいたいおれらが『して』って言うからしてくれんだぞ」
愛すべき二人は口々に言ってくれる。
「じゃあ……、昴星、流斗、部屋に戻ろうか」
二人の時間はあとどれぐらい残っているのだろう。出来れば、その時間の長からんことをぼくは望む。岩風呂から出ようとしたところで、
「待てよ」
つっけんどんな声が、背中を叩いた。
「……なあ、おまえら、どんなことしてんだよ」
相変わらず、そっぽを向いたままではある。けれど声は、その言葉遣いほどきつくはなくなっている。
「あん?」
小さいことがもうバレてしまっているおちんちんはきっちり隠しているものの、お尻は丸出しの昴星が浴槽の縁で振り返り、陽介を見下ろす。陽介の下半身はお湯の中だが、彼は隠そうともしない。
「どんなことしてんだって訊いてんだよ」
「それが人にもの訊く態度かよ」
昴星は毒っぽい笑みと共に意地悪く言う。そうなんだ、昴星は、心根の優しい、とてもいい子だけれど、ちょっぴり意地悪なところがあることも否定できない。えっちのとき、とりわけ露出のときはどうあれ、普段はとても男の子らしい気の強さがあって、それが魅力ではあるのだけど。
「普段してること」がバレるのは避けたいに違いない。オモラシ、露出……、恋人同士のプレイとしては、彼の年齢を考慮に入れるまでもなく、濃密過ぎる。
嫌なことを言われた陽介は「ケッ」と呟いて、ぷいとまた視線を逸らした。
「行こうぜ、おにーさん。……流」
流斗は何やら、背伸びして瑞希の耳元に囁いている。当然ながら、ろくなことではあるまいと思う。ただ、瑞希は驚いた表情を浮かべず、……その唇が「わかった」と動いたように見える。
「何やってんだよ、置いてくぞー」
「あー、待って待って」
流斗はすぐにぼくらに追い付いた。「早くお部屋戻って、三人であそぼ」とぼくの腰にまとわりつく。
可愛いは正義である。そして自由の力を生み出す。ぼくはそう信じている。それにしたって、冷や汗をしょっちゅうかかされる。……困った子だ。
だけどやっぱり、可愛い子だ。
部屋まで着て来た浴衣を、二人はすぐに脱ぐ。「お風呂でオシッコしたかったの、ずっとガマンしてたんだよー」と、まるでそれが偉いことのように誇って言った流斗は露天風呂に出るなり振り返って、明るい朝陽を浴びながら「昴兄ちゃんもいっしょにオシッコするとこ撮ってもらお」と昴星を誘う。足元には昨日使ったままの木桶が転がっている。
「これ、いまだけぼくたちのおトイレ」
「しょーがねーなー……」
と大義そうな態度を取りはするものの、満更でもないことは疑えない。二人はブリーフの窓から愛らしいおちんちんを引っ張り出して、木桶の中に黄色い噴水を注いで行く。じょぼぼぼ……、と泡立って、爽やかな朝の空気の中、湯気を漂わせる。
「流がおれたちのしてること、あいつらに言うんじゃねーかってヒヤヒヤした」
と言う昴星に、ぼくは頷く。「結局、ぼくがしてることも行っちゃうし……」
えへへ、と流斗は悪びれもせずに笑い、「だいじょぶだよ。あの二人はだれにも言わないよ」
と自信満々に言う。そうあってくれないと困るし、多分大丈夫だろうとは思っているのだけど。
流斗はよく水を切ってから、昴星はいつもの通りろくに振りもしないでブリーフの中におちんちんをしまう。じわりと尿を染み込ませて……、ちょっと量が多い。「ちびったみてーになっちゃった」と笑う。
「ちゃんと振らないから……」
「んでも、このパンツもおにーさんにあげるしさ、こっちの方がいいだろ?」
それはまあ、そうなのだけど。えーと、ぼくは東京に帰ったら二人合わせて何枚のブリーフを買わなきゃいけないんだ?
「んで? オシッコ集めてどうすんだ?」
ちょっとサイズが小さいのだろう。ウエストゴムを引っ張って、ぼりぼりと掻きながら昴星は訊く。買い与えるのには上々の機会だったのかもしれない。
「うん。……あのね、お兄ちゃん、あのぬるぬる持ってきてるよね」
「ぬるぬる……、ローションのこと?」
「うん、あれ、全部使っちゃってもいいでしょ?」
それって……、と昴星が呟く。うん、と流斗は笑顔で頷いて、
「前に、はじめてお兄ちゃんのおうちで遊んだとき、お風呂場でぬるぬるしたの、たのしかったから、あれ、またしたいなって。あのときはぼくと昴兄ちゃん二人でぬるぬるしたから、今度はお兄ちゃんもいっしょにぬるぬるしようよ」
少年のオシッコ配合ローション……、真っ当な神経を備えていれば……、とは思う。けれどそもそも、「ショタコン」という人種にそんなものを持ち合わせている者がどの程度いるだろう?
「わかった……、持ってくるよ」
昴星にカメラを任せて、カバンからボトルを取って戻ると、流斗は昴星に自分のおちんちんを撮らせていた。撮られることが嬉しいからか、それともこれからに期待をしているからか、もう上を向いている。
「持ってきたよ」
だって、使うことになるだろうと思っていたから、買ったばかり、未開封のものである。「これ、全部入れるの?」
二人分のオシッコで、だいたい500ミリリットルぐらいだろうか。そこに、350のローションが入る……。
しかしぼくは迷いなく蓋を開け、中蓋も引っ張って外して、そのままひっくり返した。
「すっげー……、もったいねー」
昴星の感想は素朴なもので、率直に言ってぼくも少し同じ気持ちになった。普段より少し大きめサイズのを買った、つまりその分、ちょっと高かったというのもある。
けれど、今更気にしていられない。もうローションは黄色い池の中にトロトロと注がれている。
「えへへ、すっごいきたないけど、たのしいね」
流斗ははしゃいだ声で言いながら、桶にためらいなく手を突っ込んでローションとオシッコとを混ぜ合わせて行く。
「これ……、で、どうするの?」
ボトルを押していないとトロトロは止まってしまう、だからぼくは両手で一生懸命にローションを絞り出していた。
「いいこと」
とだけ、流斗は答える。「すっげー……」と昴星は同じ言葉を繰り返すのみだ。
ようやく、ローションを全部絞り出した。さすがに手がだるくなってしまったけれど、ぼくは流斗が「脱いで。お兄ちゃんもぼくらもみんなすっぽんぽんだよ」と言うから、その通り、浴衣もトランクスも脱ぎ捨てた。昴星も流斗もブリーフを脱ぐ。ぼくと昴星は平常時のサイズだが、流斗はすっかり勃起していた。
「で?」
昴星が訊く。「どうすんの?」
「えへへー、こうするの!」
流斗は両手で、純粋なローションに比べれば粘性の緩い、しかし確かに糸を引く「オシッコ」を掬い取ると、それを自分のお腹に塗り広げる。もちろん、勃起したおちんちんにも。「お兄ちゃん、仰向けになって」という言葉に従ってすのこに寝ると、流斗はぼくの、まだ柔らかいペニスをそのぬるつく両手で包み込むように撫ぜて、同じように塗り広げていく。
「こうやってね、お兄ちゃんとぬるぬるするの、すっごいえっちだよ」
流斗がぼくに身体を重ねる。……すぐに流斗の意図はぼくに理解出来た。濃密な、二人分のオシッコの匂い、そしてローションの滑り……。流斗のおちんちんや足の間でこすられることで、ぼくのペニスはごく正直に反応しはじめた。
「……すごいね……」
ぼくの顔に顔を寄せて、オシッコまみれの美少年はうっとりと微笑み、ぼくにキスをしてから振り返り、「はやく、昴兄ちゃんもー」とねだった。昴星はまだ少しためらっていたが、可愛いおちんちんに、ふっくらとしたお腹に、そしてほんのり柔らかいおっぱいにまでオシッコローションをまとわせて、ぼくの身体のサイドにぴったりと密着した。その途端に、
「うわー……」
なんて、声を出す。
「すげー、オシッコくせー……」
「だって、ぼくと昴兄ちゃんで出したオシッコだもん、お兄ちゃんの大好きなにおいだよ」
流斗がちょっと身体を持ち上げる。薄い少年の身体とぼくの男の身体が黄色い糸でつながるのを見て、昴星も身体を不器用に滑らせる。脇腹に、ついさっきまでふにふにとマシュマロを押し付けるような感触を与えていたおちんちんが熱を帯び硬くなるのが伝わってくる。
「ね、お兄ちゃん、お兄ちゃんいまぼくと昴兄ちゃんのオシッコでぬるぬるしてるんだよー」
起き上がった流斗はタマタマをぼくのペニスに押し当てながら腰を前後に動かしている。空いた上半身には昴星が身を重ねて、同じく身体を緩やかに滑らせながら、唇を重ねてくる。
「すごい、えっちだと思うよ……。二人とも、すごいいい匂いだ……」
「……おにーさんだって、おんなじにおいになってんだぞ……、ひゃ!」
流斗が、昴星のお尻に両手を置いたのだ、昴星がぴくんと震え、同じようにぼくの腹に当たる突起が強張った。
「わー、昴兄ちゃんのお尻、ぷにぷにですっごいきもちい……、おっぱいみたい」
むちむちとしたお尻をそんな風に形容されて、昴星は紅くなる。流斗はにちゃにちゃと音を立てながら昴星のお尻を揉みしだいていたが、
「ね、昴兄ちゃんのお尻にいたずらしていーい?」
質問に、答えがもたらされるより先に「いたずら」をしはじめた。
「あ、あっ、ダメ、それっ、流……っ」
つぷ、と音がした。流斗が細い指の先を、昴星の肛門に挿入したのだ。
「あはは、うんちの穴に指入っちゃった」
流斗は無邪気に笑ってひとしきり昴星を喘がせてから、満足したように指を抜き、ぺろりと舐めてみる。「ちょっとにがいんだね。あと、うんちのにおい」
「か、かぐなよぉっ」
「平気だよ、うんちはぼくのだってくさいもん……。昴兄ちゃん起きて、こっち向いて」
「うー……、流に尻の穴いじられた……」
普段はぼくと才斗しかいじらない場所だ。昴星は気にするようにお尻を振り返るが、もちろん背中から肛門の様子は伺えない。でもぼくから見ても、てらてら光る肛門はほんのり赤いだけ、「大丈夫だよ」とぼくが言ってあげると、安心したように流斗と向かい合う。
「そしたらね、昴兄ちゃんとぼくとでお兄ちゃんのおちんちん、気持ちよくしてあげよ」
ぼくにはぼくの腹部に跨る昴星のお尻がよく観察出来る。一応筋肉質なぼくのお腹に乗ると、昴星のお尻は女の子のそれみたいにむっちりとしていて、すごくえっちな景色だ。ローションで濡れたように光っているのもいい。
「気持ちよくって……? このぬるぬるついてんのに舐めんの?」
「お口でするのは、あとででもできるよ。いまはぬるぬるでなきゃできないことしよ。おちんちんをね、こうやって……」
流斗の両手でぼくのペニスを掴む。ぬるん、と亀頭から根元までこすり上げられる、それだけで、十分過ぎるぐらい気持ちいいのだけど……。
けれど、双方向からぼくの亀頭に、熱いものが当てられて息を呑む。
「えへへ……、えっちでしょー……。三人でおちんちん、ちゅーしてるよ」
流斗は自分の背中で手のひらを拭いて、転がったままのカメラを持つ。
「すっげ、……これ、えろい……」
うっとりと呟きつつ、腰を前後に揺らしておちんちんの先っぽをぼくの亀頭にこすりつけている。伴う実際的な快感は、亀頭に小刻みなキスをもらうようなものであるけれど、している行為そのものは昴星の言葉の通り、とてもエロティックなものだ。
「ね、お兄ちゃんの、大好きな、ぼくたちのおちんちんで……、お兄ちゃんのおっきなおちんちん、ちゅっちゅしてるの……」
「うん……、すっごい、気持ちいいよ……」
流斗はカメラで、三本のペニスの淫らに絡み合う様子をきちんと収録している。フェラチオの動画もいいけど、これも、すごくいい。
「三人で、いっしょにきもちよくなろうね……」
「にゃ……!」
流斗がカメラを持っていない方の手で、ぼくと先端の重なる昴星のおちんちんを一緒に包んだ。
「昴兄ちゃんもー」
流斗と昴星、美少年の二つの手のひらが、三本のペニスの先端を纏めて包み込む。二人に支えられてほぼ垂直に勃ち上がるぼくの陰茎の、裏側には流斗が、手前側には昴星が、それぞれ上下に腰を振って挟み込む。
体温の高いのは流斗の方で、サイズも(昴星に比べれば)大きいから、男らしく情熱的な圧力をぼくに与えてくれる。一方で昴星は小さい、体温も、こうしてみると流斗より低い。……低体温なのだとしたら、それってオネショ癖となにか関係があるのかもしれないな……。
とは言え、そんなこと考えている余裕はすぐなくなる。ぼくは寝そべっているだけなのに、二人がどんどん幸せにしていってくれるのだから……。
「ん、あっ……」
切なげな声をあげたのは昴星だ。
「昴兄ちゃん、もう、いっちゃう……?」
「んンっ……、っちゃう……いっちゃうぅっ」
ぼくのペニスのこちら側にダイレクトに脈動を与えるとき、同時に向こう側でも同じ脈が弾けた。
「あ、っん、あんっ……んん……ンっ……」
とびきり可愛い声を上げて、流斗も射精した。
「ん……、ん、りゅ、うも……」
「んン、だって、しゅごい、えっちだもん……。お兄ちゃんのおちんちんも、昴兄ちゃんのおちんちんも、ぼくだいすきだもん……」
置いていかれてしまったけれど、残念ではない。
「……ごめんな、おれらだけ先いっちゃった……」
昴星は身体から降りて申し訳なさそうに言う。その身体に隠されていた自分のペニスを見れば、「謝ることなんてないよ」という言葉は自然とぼくの唇から溢れる。ぼくの赤黒く腫れたような肉茎には、昴星と流斗、二人分の精液がたっぷりと振り掛けられることとなっている。壮観と言っていい。それに加えてオシッコの匂いがツンと鼻に届く。自分の身体が幸せに包まれていることを思わされる。
その上、
「なー、流、おにーさんのちんこ、ちゃんと気持ちよくしてあげようぜ」
昴星が流斗に言う。「うん、いいよー。どんなのがいいかなあ」
「あのなー……」
ぼくのペニスを見ながら、流斗の耳にこそこそと内緒話をする。流斗はにっこり笑って「うん、いいよー」と快諾する。
二人のおちんちんは、収まりつつある。けど二人の其処から出たもの二種類とローションのミックスの塗り付けられたぼく自身は、相変わらず昂ぶっている。
「おにーさん、おれのお尻見える?」
強気になってくれる昴星は、ぼくの腰を跨いで膝で立つ。男の子のリアビュー、太腿からお尻、そして腰、センターから足の間、向こうまで抜けて、タマタマの裏側まで覗けるの、すごくいいなと思う。その向こうには座る流斗の、天使のおちんちんも見える。
「すごい、よく見える」
「お兄ちゃんのおちんちん、昴兄ちゃんのお尻見てピクンってしたよ。えっちなおちんちん」
流斗はくすくす笑いながらまた右手をぼくの砲身へとかける。昴星も同じようにした。
「したらー……」
僅かに、肛門に力が篭った。次の瞬間、ぼくのペニスに生ぬるい液体が振りかけられるのを感じる。
「ひひ……、おにーさんのちんこ、オシッコひっかけられてビクビクしてる……」
尿のシャワーを浴びるぼくのペニスを、二人の手が上下に扱き始める。ローションは未だ確かな粘性を保っていて、亀頭に浴びせられる飛沫と共にぼくをどんどん熱くして行く。
昴星のオシッコが亀頭をくすぐり、茎の根元は二人に扱き上げられて……。
すごい。
「……ッん……!」
「ひひひ、出た、おにーさんのせーし……」
概ね真上に射出された精液は、二人の腕に引っかかる。ぼくのバウンドが収まるまで扱き続け、精液を搾り出してくれた二人は、それぞれに腕に散った白濁を舐める。
「んひひ、やっぱすげーおいしいや、おにーさんのせーし」
「ね。なんでだろう、お兄ちゃんのって、他のひとのより味がはっきりしてる気がするよ」
精液にも、人それぞれ「個性」とでも呼ぶべきものがあるのだろうか。それとも単純に、ぼくが大人だからか。
「ぼく、もっとお兄ちゃんのせーし飲みたいな。おちんちんももう一回きもちよくなりたいし」
「おう、おれも。一回だけじゃ足りねーよなー」
ローションの粘性はまだしぶとく、文字通り粘っている。
ぼくはむくりと起き上がり、流斗からカメラを受け取る。とりあえず、昴星のものにレンズを寄せる。
「少しだけ勃起してきた?」
「んー。だってさ、おにーさんのせーし飲んだし、そしたらやっぱでかくなるじゃん?」
膨張率の低い昴星のおちんちんはそれほど「でかく」なってもいないのだけど、まあ、それは置いといて、九十度ぐらいのところでひくんと震えているのは確かだ。
「おにーさん、おれのちんこなんていっつも見てんのに」
「それはそうだけどね。でも、やっぱり可愛いし、こんな風におちんちんばっかり観察することってあんまりないしね」
指でつまんでみる、まだ、ほんのりと柔らかさを残している。粘っこさがあって、余り皮の縁に泡立って糸を引くのがとてもいやらしい。しかも、二人分のオシッコの匂いや先程出した精液の匂いも一緒に漂って、ぼくの鼻を刺激する。
「いいなー昴兄ちゃん、ぼくもおちんちん撮ってよー」
流斗がせがむから、ぼくは二人を膝立ちで向かい合わせて、左にすっかり立ち上がった昴星のおちんちん、右にはもうずいぶん前から勃起したままだったと思われる流斗のおちんちん……、「贅沢だなあ……」というつぶやきがぼくの口からは思わずこぼれた。
「二人とも、皮剥いて見せてくれる?」
「皮?」
「んーと……、こう?」
つまんで下ろされて、皮の隙間からそれぞれに覗かせる亀頭、いかにも敏感そうな粘膜からは、より強い匂いが解き放たれる。二人ともささやかな鈴口を腺液で濡らしているのが、たまらなくえっちだ。
「そのまんまさ、おちんちんでキスして見せて」
二人が視線を交わし、おずおずと腰を前に進める。太さも長さもそれぞれに違う、真性の皮に隠匿された亀頭粘膜が重なった瞬間、
「んぅ」
「……っふ」
声が重なる。
二人が「キス」したところでは、透明な粘液が微かな音を立てて混ざり合っていた。二人の間に隙間が出来るたびに伸びる糸が切れることを恐れるようにまた重なり、お互いの幼い亀頭を粘液に塗れさせる様子は、幼くとも確かな性欲を持ち、快楽の象徴であるお互いを求め合うかのようで、途方もなくエロティックである。
「なー……、おにーさんも、おれらのちんこ見て、かたくなってんのか……?」
頬を赤らめて昴星は訊く。
「お兄ちゃんも、さっきみたいにいっしょにおちんちんちゅーしようよ……」
流斗に誘われて……、ぼくは二人に桶状の湯槽を跨らせ、向かい合う二本の幼茎の間に挟み込むようにペニスをあてがう。さっき流斗が撮ってくれていたのと同じものだろうけれど、やはり、すごい。昴星と流斗の可愛らしいおちんちんと、ぼくの大人の性器、全く異なる印象の三本がくっついて、息を呑むほど鮮烈な印象だ。
「ぼくたち……」流斗がおちんちんをぴくぴくさせつつ、言う。「すっごい、仲良しだね。こんなふうにおちんちんくっつけあって、ちゅーして、……ぼく、昴兄ちゃんのこともお兄ちゃんのことも、ずっとずぅっと大好き……」
それぞれに、キスをする。昴星と流斗も。
「ぼくも、二人のこと大好きだよ。二人が気持ちよくなるためだったら、どんなことだってしてあげたい」
「んなん……、おれだって……」
ぼくらは、優しい。お互いのことを本当に大事に思い合って、幸せを願い合っている。理想的な関係だと思う。
「……昴星と流斗の、精液、飲みたいな」
ぼくは思いのおもむくままに欲を口にした。二人がこくんと頷いて足をより大きく広げ、ぴたりと先端をくっつけて、湯槽のお湯でていねいにローションを洗い流して、それぞれにまた皮を剥いた。カメラをすのこに下ろして、二本まとめて口に収める。
「うぁン……」
ぶるる、と震えたのは流斗で、
「んぅ……っ」
きゅ、と強張るのが昴星。似た二人でも、反応にはそれぞれ愛らしい個性がある。
「ん、んっ、おにーちゃ、ひた、えっちだよぉ……」
「おいしい、の? おれらの、ちんこ……」
ん。と答える。……オシッコは洗い流したばかりだから、味はないに等しい。それでも、二人の「肉」の味は、それじたい、そのものが、美味しいのだとぼくは知らされる。昴星の、ツンと強いオシッコの匂いが伴うしょっぱいおちんちんも、それに比べれば優しい味わいの流斗のおちんちんも、オモラシをしたりしなかったりのパンツを脱いですぐ味わうのが格別だと思うけど、こうして「素材」そのものにも魅力があるのだ……。
「おに、さん、おれっ、……もう、出そうっ……」
「ぼくもぉ……っ」
構わないよと言う代わりに、二人の性器に順番に舌を絡める。まずは、昴星より勃起していた時間の長かった流斗から。
「ひゃあンっ、んっ、んにゃっ、あっあ、あっ!」
口の中に、甘さすら感じるシロップ状の精液が零された。その脈動を感じた昴星に、
「あ、あっ……、流のちんこっ、ぴくぴく……ふぁっ」
すぐさま舌を絡める。洗ったばかりなのに腺液はまた滲み出ているらしく、もうしょっぱい。
それが、流斗の脈動に触発されたように昴星のおちんちんもビクビクと震えた。中から搾り出されるのは、流斗よりも味の濃いミルクゼリー。ぼくの舌は二人の味の差をはっきり舐め分けることが出来るが、喉の欲に抗えずに飲み込む。昴星の方が後に残る苦味があるのだ。
顔を上げると、昴星と流斗は仲良く手を繋いでキスをしていた。精液の味はどうあれ、なんと甘い光景であろうかとぼくは思う。少年二人のキス、それはもう、緩い癖毛の流斗のみならず、昴星も含めてさながら天使のようで、芸術的鑑賞に耐えうるだけの美を備えている。……少なくとも、ぼくの審美眼にはそう捉えられる。これは性欲のないときでも全く同じ印象を抱くはずである。
でもまあ、いまは性欲があるので、
「二人とも」
ぼくは二人のキスが一段落着くまで、自分のを洗ったりなどしつつ待って声をかけた。二人はすぐに浴槽からすのこの上に降りて、揃ってカメラを拾い上げたぼくを見上げる。
「ひひ……、おにーさんのちんこ、またガチガチになってる……」
昴星がぼくの熱い鉄幹に手を掛ける。「すっげーエロいの」
「うれしいな……、ぼくたちのおちんちんとせーしでこんなになってくれるんだもん」
流斗は裏筋を指でなぞり、袋を手のひらで包み込む。「お兄ちゃん、だいすきだよー」
そして二人はそれぞれにぼくの性器に手を掛け、思い思いに舐め始めた。
「……美味しい?」
「ん」
「んん」
昴星はぼくの茎を横咥えにしてれろれろと舌を動かし、流斗はぱくんと陰嚢を味わっている。ぼくの性器はごらんの通り醜いけれど、ぼくが二人の可愛らしいおちんちんをこの上なく美味なるものととらえるように、二人の舌にも同じく優しい味であってくれたら……、それ以上に望むことはなにもない。
「んは……」
流斗が袋から顔を上げて、昴星の真似をして茎へと口を移す。ぼくのペニスの左右をそれぞれの動き、それぞれの舌で愛撫して、先端で合流したとき、またキスをして見せてくれる。
「おつゆ、いっぱいでてる……」
流斗がそれを細い指先で亀頭全体に塗り広げる。
「おにーさんのちんこ、ヘンタイだなー……、おれらでこんななってんだもん……」
しゅくしゅくと扱いて、その露をもっと分泌させようとしながら昴星は笑う。言葉は毒っぽくとも、優しい声、優しい響き。「でも、おれも大好きだよ、おにーさんの、ヘンタイちんこ」
どっちが先にする? 訊き交わすように視線のやり取りがあって、二人の舌が揃ってぼくの亀頭を這い始めた。
思うに……、いまぼくが撮影して、自らの身で味わっているごときこの状況を再現出来るのはこの世にぼくだけだろう。子供にこんなことさせちゃいけない。けど、子供たち自身がそれを望むなら? 無害な大人がそばにいる可能性はそう高くない。
ぼくは、自分自身胸張って「健全」とはとても言えない男ではあるけれど、少なくとも二人に害なす存在になることは決してない。
それだけがぼくの取り柄である、と言ってもいいかもしれない。
「ん……、お兄ちゃん、はやくせーしちょうらい……」
「おれにもぉ……」
二人は一生懸命に半分ずつのフェラチオをしながら、それぞれ片手に自分の性器をとらえ、今朝だけで早くも三度目となる射精に向けての運動を始めている。
「えっちな子たち……、大好きだよ」
ぼくは二人の舌に思いを委ね切った。
「わぷ」
「あはぁ……っ」
飛び出した精液が、二人の口の周りを汚す。だけど、ぼくは二人の顔をていねいに洗うし、このあとはいっしょにお風呂に入る。そういうところまでしっかり出来てこそ、二人に「大好き」という、甘く幸せな言葉を贈られるに至るのだ。
二度目の朝風呂を浴びて、……せっかく浴衣を着られる機会なのに、考えてみるとあんまり二人の浴衣姿を撮影していなかった。きっちりと帯を締めさせて、畳の上、何枚も「楽しく遊んできました」的無難スナップを撮っていたのだけど、二人はだんだんとエスカレートしてきて、裾を捲り上げてパンツを見せたり、ノーパンになってお尻を見せたり……。朝食前にもう一度ということになるのは自然の成り行きで、お腹が膨れたあとは一眠りが必要になってしまった。何にせよ、早起きしてしまったのだからちょうどいい。時間が短かったから、昴星も流斗もオネショはせずに済んだ。
たっぷり遊んだあとは、名残惜しいが部屋を後にすることになる。二人が汚したたくさんのパンツを家から持ってきたジップ付きポリ袋に一枚ずつしまう。それを見ているだけで勃起してしまいそうだ。もちろん、これらも帰ってから使う。忘れ物をしては大変だ、何度も隅々までチェックしているときに思ったのは「でも、子供が汚したパンツなんだよな……」それを忘れたからって、まあ流斗のご両親に連絡が行って、流斗がオネショを怒られることになる以外、避ける理由はないのかもしれない……、いやいや、流斗が(事実としてオモラシとオネショをしたとはいえ)叱られるのはかわいそうだし、貴重なパンツ一枚、もったいない。
そんなわけで、綺麗に部屋を片付けて、宿を出たのは十時前。ぼくらは流斗のリクエスト通り、温泉街にいくつかある共同浴場にちびちびと入って回った。混浴のところもあったし、二人と同じ世代の男の子、もうちょっと下の女の子もいた。流斗はたくさんの相手にぷるぷる揺れるおちんちんを見せて回って大いに満足したようだが、三つ目の浴場を出たところで「えっちしたい」とぼくの耳に囁いた。浴場で欲情というくだらないダジャレがぼくの頭に浮かんだ。
「きのうの、ゆりねえちゃんとこ行こうよ。きっとあそこならだいじょぶだよ。ゆりねえちゃんもいるかもしれないし」
この温泉街、どこが安全かと問われれば、やはりあの場所ということになるだろう。ぼくらはまた、あの木組の階段を昇って「山ゆりの湯」へ。あらかじめ壁の方から確かめてみたけど、やはり浴槽は二つとも無人だった。今日は脱衣所から入らないとね、とドアに鍵をさそうとしたぼくを制して、流斗がノブをひねる。
鍵は、かかっていなかった。「え」と昴星が声を上げる。
「おまたせ」
ドアを開けるなり、流斗は笑顔で挨拶をした。
中にいたのは、……陽介と瑞希、今朝の少年二人である。
ぼくも昴星も、あっけに取られるほかない。
「どう……、どうしておまえらがいんだよ!」
昴星がやっとのことで不平を言えば、
「知るかよ! おまえらこそ、なんで……」
陽介が、それに応戦する。強気な男の子二人による少年らしいやり取りは見応えがあるものの、悠長に観察している場合じゃない。
そう思ったぼくより先に、
「待って、昴兄ちゃん」
「陽介、落ち着いて」
流斗と瑞希、おとなしい二人が止めに入る。
「ぼくが呼んだんだよ」
なんでもないことのように、流斗は言う。「今朝、瑞希兄ちゃんにね、この時間に二人でおいでよって。……電車の時間は二時半だよね? それまで、ぼくたちが男の子同士で楽しくていっぱいきもちよくなれるやりかた、おしえてあげるよって」
誘う方も誘う方だが、それに応じて来てしまう方も来てしまう方だよ……。陽介もぼくと同じ感想を抱いたらしいが、
「陽介、聴いて」
彼の腕をそれぞれの手で抑えて、瑞希は恋人を間近に見上げる。
「ぼく、……もっと頑張りたいんだ。陽介と一緒にいられる時間は限られてるから、その間だけでも、陽介のことを、もっと、少しでも、幸せにしてあげたいから……」
恋人の、そういう、純粋な思い。
「……んなの……」
陽介の反論を封じ込めてしまう、あっけないほど、あっさりと。
「おにーさん……」
困惑したように昴星がぼくの袖を引く。ぼくは、どうとも答えられない。だって……、流斗の知ってる「きもちいいこと」って……。
「もちろん、ただじゃないよ」
もう、パンツ一丁になって流斗は言う。天使のような穢れない微笑みを浮かべて。今朝から穿いたままのブリーフも汚れていない。
「ぼくたちのお兄ちゃんが、ぼくたちみたいに男の子のおちんちん見るの好きって、今朝言ったよね? 陽介兄ちゃんと瑞希兄ちゃんがお兄ちゃんにおちんちん見せてくれたら、だよ?」
「なっ……」
ぼくも、陽介も流斗を見た。
陽介と瑞希の、おちんちん。
……普段、昴星と流斗のものをひたすら見せてもらっている。今朝昴星にも言われたけれど、全く飽きずに。それだけぼくは、二人のおちんちんを可愛いと思っている。他のどんな少年のものよりも……。
なのだけど、そこは、なんていうか、ショタコンとしての悲しい性とでも言おうか。合法的に男の子のおちんちんを見られそうなシチュエーション(そう、それはつまり、今日何箇所か巡った温泉のような)であれば視界の端っこにしっかり収め、形状、特徴、もろちんのその他もろもろをもちろん把握してしまう。ひどい話だけど、ほとんど本能だ。
「ぼくは……」
瑞希がら強い光を目に宿してぼくを見る。決して体は大きくないし、気も弱そう、心の優しさが表情のあちらこちらにうかがえるけれど、いまは凛と冴え渡るものがある。「できます。……お兄さん、悪い人じゃなさそうだし……」
「ま、待てよ、瑞希ッ、こんなヘンタイ男に、そんな……」
ひどい。けど、また事実だ。
しかし瑞希は首を振る。毅然とした信念が少年の心の中で暑くなっているらしい。
「ただのヘンタイだったら……、この子たちがこんなになついたりしないと思う」
流斗が「そうだよ」とぼくの腰にまとわりつく。「お兄ちゃんはいい人だもん。えっちだけど、おちんちんが好きなだけで悪口言われたりするなら、ぼくがお兄ちゃんのこと守ってあげるんだ」
「そ、そうだぞ、おにーさんは……、ヘンタイだけどっ、悪いやつじゃねーし、頭もいいし、背もたけーし!」
昴星も声を上げるが、現実的にさほど価値のあることは言っていないようだ。ぼくを好きと思ってくれる気持ちだけは伝わるし、それで十分なのだけど。
「……陽介は、嫌なんだよね? 大丈夫だよ、ぼくが見せて、その代わり、ちゃんとやり方、教えてもらうから」
ぐっ、と陽介が言葉に詰まる。おちんちんを見られるのは恥ずかしい(あたりまえだ!)……けれど、恋人の裸をこんなよくわからん男に見せるのもまた、彼には憚られるに決まっている。
流斗としては、ぼくを喜ばせようとして(もちろん、ついでに自分も喜んじゃおうとして)持ち出した交換条件なのだろうけれど、あまりにもぼくに得過ぎる。それに、陽介がかわいそうでもある。
だから、いいよ、そんなの……、惜しい気持ちがないではないのだけれど、大人として引こうと思ったところに、
「お風呂に入るんだから、どっちにしたってみんなすっぽんぽんだよ」
流斗が言う。
「でもって、瑞希兄ちゃんはまだ脱がないで。ぼくと陽介兄ちゃんだけすっぽんぽん。昴兄ちゃんもパンツはまだはいてて」
陽介と瑞希には、流斗の命令が不可解に思えただろう。けれど昴星はわかっている。
「やだ! おれも脱ぐっ」
そう言い張るが、フルチンになった流斗が「ダメ。昴兄ちゃんがお手本見せてあげないと、きっと瑞希兄ちゃんできないし、……お兄ちゃんも見たいよね?」
「いやあの、それは……」
見たいさ、そりゃ、何度だって見たいさ。見飽きられるならとっくの昔に。
「じゃあ、準備してみんなでお風呂行こうよ」
場の支配者たる流斗はあっさりとそう結論付ける。陽介は唇を尖らせながらも、シャツとジーンズを脱ぎ、引き締まった身体にばっちりと似合っているブリーフに指をかける。ウエストゴムは紺色で、身体つきとあいまって精悍な印象を与える。
ひと呼吸挟んで意を決し、下ろして露わになるのは今朝ちらりと見た通り、昴星と同い年とは思えないほど太さも長さもしっかりとした、大人びたおちんちんだ。皮はまだ先まで被っているが、根元にうっすら生えた性毛が、流斗のつるりとしたものと比べて男性的なアピールとなっている。
そこに手のひらをあてがおうとした陽介を、
「かくしちゃダメ」
流斗は制する。「このあと、いいよって言うまでかくしちゃダメ。男の子どうしだよ? お兄ちゃんにだって形はちがうけどおんなじおちんちん付いてるんだから、恥ずかしがるほうが恥ずかしいよ」
「べ、別に恥ずかしくなんかねえし」
とは言うが、陽介の浅黒い頬はほんのりと紅い。
「ぼくは、脱がなくてもいいの……?」
瑞希はまだ困惑したように流斗に訊く。
「うん、でもこのあとで瑞希兄ちゃんもすっぽんぽんにならなきゃダメだよ。はずかしい?」
少しだけ考えて、瑞希はこくんと頷く。「……でも、教えてもらうためなら、我慢するよ……」
「なあ……」
昴星は泣きそうな顔で流斗に言うが、流斗は聴こえないふりをして、お尻丸出しのまま洗い場に行き、せっせと腰掛けを三つ並べた。
「お兄ちゃん真ん中、陽介兄ちゃんと瑞希兄ちゃんと座って」
流斗は忙しくぼくのカバンを勝手に開けて、中からカメラを取り出す。
「な、なに撮んだよ!」
ぎょっとして、陽介が声を上げる。
「おちんちん。ぼくと昴兄ちゃんも撮ってもらうし、陽介兄ちゃんたちのも」
さすがに、それは瑞希も嫌じゃないのか。でも、ぐっと堪えて黙っている。流斗はさっさとぼくのカメラを陽介の股間に向け、撮影を始めてしまった。
「陽介兄ちゃん、おやくそくだよ、おちんちんかくしちゃダメ」
「う……」
「かくしたら、教えてあげないけど?」
ピクリと反応した手のひらをぎゅっと握ることで、陽介はどうにか堪えて、レンズの前に誇るべき立派なおちんちんをさらけ出す。陽介に腰掛けに座るよう促した流斗は、そのままぼくと瑞希も座らせ、しばらく陽介のおちんちんを撮影することに決めたらしかった。
「おっきいねえ、陽介兄ちゃんのおちんちん。もう毛も生えてて、大人のおちんちんみたい」
「んなん……、別に、こんぐらい普通だろ……」
「ふつう、かなあ……?」
ちら、とぼくを見て、含みのある笑みを浮かべる。
ぼくも裸で陽介の隣に座っているのだが、ぼくはあまり陽介のペニスを見ないことにしていた。ここで勃起したら、それこそあやしいおっさんだ。
「陽介兄ちゃん、おちんちんの皮剥けるの? 剥いて見せてよ」
「……っ」
「恥ずかしいなら、お兄ちゃんに剥いてもらう?」
ぶるぶると首を横に振って、陽介は自分の陰茎に指をかけた。……思わず視界に入れてしまう。陽介の包皮は手前に引く指に応じてスムーズに剥き下ろされ、やがて、あっさりと亀頭をすべてあらわにした。まだ粘膜質ではあるけれど、きちんと根元まで捲れる。
「わー、すごいすごい、お兄ちゃんのおちんちんみたい」
流斗は同世代のものとしては素晴らしく大人っぽいおちんちんにはしゃぐ。もっとも、指を離すとじわじわと元に戻ってしまうが。
「昴兄ちゃん、早くおいでよ」
流斗に請われても、パンツ一丁の昴星はまだ脱衣所の扉のところに立ち尽くしている。これから自分がしなければならないことをわかっているがゆえに、彼は困惑しているのだ。
「女の子に見せてあげたこともあるんだから、いまさら男の子に見せるのはずかしがってもしょうがないでしょ」
「女の子に、って……」
瑞希が驚く。「……昴星くんは、女の子に……、その、見せたことがあるの?」
「うん。ぼくも、何度もあるよ」
流斗の微笑みは透明なのに、瑞希にも陽介にも、何も覗くことは出来ないだろう。だってそんなの、ぼくらだって出来ない。
「ぼくね、お兄ちゃんたちとお外で遊ぶのだいすき。誰か来るかもしれないところでおちんちんだして、きもちよくなるんだ。だから、朝言ったでしょ?」
はっとして、「おちんちん、見てもらいたいって……」瑞希が呟いた声に、うん、と頷く。
「お風呂入るときとか、お外のおトイレでオシッコするときとか、いっつも誰かに見て欲しくって、……オシッコするときもね、パンツとズボンおひざまでおろしてするんだよー。ね、お兄ちゃん」
ぼくは頷かざるを得ないのだけど、二人の「唖然」はごく正しい反応だ。
「んなこと……、してんのかよ……」
自分の恋人にも負けず劣らず可愛い年下の流斗がすらすら紡ぐ言葉に、陽介はドン引きである。瑞希はおずおずと昴星に目を向けて、「君も……?」
「ち、違うっ、おれは見せんのなんか好きじゃねー!」
くす、と笑って、流斗がいつまでも脱衣所に立ったままの昴星の手を引いて、こちらへ連れて来る。抗いはするものの、力づくで振りほどくことは出来ないし、昴星がそうしないことは流斗にもわかっているに違いなかった。
「ぼくにきもちいいこといっぱい教えてくれたのは、昴兄ちゃんなんだよ」
二人に向けて、振ってフルチンの昴星はパンツ一丁の「昴兄ちゃん」をそう紹介する。
「昴兄ちゃんはぼくのいとこの才斗兄ちゃんと恋人どうしで、ぼくにたくさんきもちいいこと教えてくれたの。ぼくはね、教えてもらったのをそのまんましたり、もっときもちいいこと探して、誰かにおちんちん見てもらうのうれしいなって思ったから、するようになったんだよー」
流斗は笑顔で言う自分の欲が、他者からどう捉えられているかをよくわかっている。少し前の話ではあるけれど、セイラとチヒロ、女子二人におちんちんを見せてあげるという「サービス」をしていたが、あれにしたって自分が変に思われるリスクを計算に入れた上で、リターンの大きさを導くために選択している。流斗にはそういう、底知れない計算能力が備わっている。
今朝からいままで、この子はずっとこういう時間を組み立てていた。知り合ったばかりの年上の二人が同性愛者だと知った瞬間から、こういうレクリエーションタイムをイメージしていたのだろう……。
「でね、二人とも、昴兄ちゃんのパンツ見て」
ぼくも含め、視線は昴星の、ウエストゴムまで含めて白いブリーフに集まる。
「み、見んなっ」
声を上げる昴星の手を流斗がしっかり掴むと、魔法のように昴星の身動きは奪われる。滑りやすい浴室の床、無理に解こうとして流斗が転倒することを、昴星は自分のパンツの恥ずかしい部分を見られることよりも恐れるような優しい少年だ。
「……きったねえ」
陽介が嘲笑する。今朝からまだ三時間ほどしか穿いていないし、その間にオモラシもしていないのだけれど、そこに浮き上がるのは正体のはっきりした汚れだ。そういう体質なのか、昴星のオシッコの色は大抵いつも濃くて、白いブリーフのとき、それはとりわけ、よく目立つ。
「昴兄ちゃんはいっつもこんなふうにパンツの前が黄色いんだよ。……瑞希兄ちゃんのも、内側は黄色いのかもしれないけど、ここから見るとまっしろだね。陽介兄ちゃんのも白かった」
流斗に後ろへ回られて、昴星は真っ赤になってうつむくばかりだ。陽介に比べてずっと幼く中性的であり、瑞希によりも背が低いのに、ふっくらとした体型。手足はほっそりと長いのに、全体としてぽっちゃりと見せてしまうのが昴星の身体である。
「トイレのあと……、ちゃんと振るか、個室でして紙で拭けば、そんなに汚れないよ……?」
心優しい少年であるらしい瑞希が、励ますようにそう教える。
「そんなの、知ってるよね、昴兄ちゃん。……昴兄ちゃんがこんなパンツ穿いてるのって、わざとだもん」
「流っ……もうっ」
「昴兄ちゃんのオシッコのついたパンツはね、たからものなんだよ。お兄ちゃんの、才斗兄ちゃんの、ぼくの、……みんなの」
ね、と流斗はぼくに同意を求める。自然、左右の二人の視線はぼくに集まった。
「……たくさん、もらったよ。昴星の、そういう、パンツを」
「昴兄ちゃんのオシッコって、すごくいい匂いがするから」と、流斗はぼくの言葉に補足を加える。「……元々昴兄ちゃんの匂いが好きになったのは才兄ちゃん。でも、いまはぼくもだいすきだし、お兄ちゃんもだいすき。ぼくたちいつもいっしょにはいられないから、はなれてても側にいられるようにって、パンツの取り替えっこするんだ。だいすきな昴兄ちゃんのいいにおいのパンツかいでおちんちんしこしこするの、きもちいいんだよー」
「……んなん、『臭い』の間違いじゃねえのか……」
真っ当な感性の持ち主らしい陽介の言葉を、「ちがう」と流斗はすぐに否定する。
「ぼくもさいしょは、オシッコってきたなくってくさいって思ったけど、でも、だいすきな昴兄ちゃんのオシッコだって思うと、どんどんいい匂いになってきたよ。いまはその匂いが大好きだし、味もだいすき」
「あ、じ……?」
呆然と瑞希が繰り返す。
「うん。昴兄ちゃんのオシッコもおちんちんもすっごくおいしいの。……おちんちんとオシッコがおいしいって教えてくれたのも昴兄ちゃんだよ。昴兄ちゃんは才兄ちゃんの『味』がだいすきなの」
二人は言葉を失っていた。
そのリアクションから想像するに……、この子たちはとてもまともなやり方で愛し合っているに違いない。多分、フェラチオぐらいはもうしているのだろう。けれど、その前にはちゃんとお互い、綺麗にしているに違いない。汚いものを相手に舐めさせるのは、失礼だと思って。
だけどぼくら……、昴星と才斗、流斗、そしてぼくにとっては違う。
昴星や流斗のおちんちんがオシッコまみれで臭かったとしても、むしろそれを嬉しく思うような感性を、ぼくらは備えている。
「そんなの、……そんなの、して……、お腹こわしたりしたら……」
瑞希の懸念も当然と言えるが、
「これまでのところ、一度もそういうことはない」
のである。「……時間が経ったあとは、安全とは言えないけれど……、オシッコって、出たばかりの状態ではほぼ無菌状態だからね、衛生的にはさほど問題はないはずだよ」
だからといって舐めるというのは、また別問題、だけどぼくは瑞希にそう解説した。
「総じてぼくたちは、そういう感覚でいるんだ。……つまりね、お互いのおちんちんっていうものが持つ、あまり、綺麗でないかもしれないような部分まで含めて、大事にし合うっていう。もちろん最初は抵抗があるかもしれないよ? 実際、ぼくもないわけじゃなかったし。でもね、昴星と流斗のこと、ぼくは好きだからさ。あばたもえくぼって言葉、知ってるかもしれないけど、そういうもので、可愛い子たちのものなら匂いだって味だって可愛がらなきゃ損だって思っちゃうんだ」
ぼくの説明は、大人としてはちっとも合理的なものではない。理性的ですらない。でも、誰かを「好き」って思う人間の抱く気持ちとしては、これほどしっくり来るものもないんじゃないかって、自負している。
「陽介は、瑞希のおちんちんを汚いって思う?」
陽介はむっとした顔で、「ちゃんと洗ってるから、汚くなんかねえし。……パンツだって、あいつのみてえに汚れてねえし」と答える。
「じゃあ、瑞希は陽介のパンツが何かの間違いで黄色かったとして、そういうとき、陽介のおちんちんを愛してあげるのは、嫌?」
瑞希は、一瞬言葉に詰まる。
けれど、「……でも」と、何にかかる言葉なのかははっきりわかる接続詞を口にして、
「陽介が、して欲しいって言うなら、……します」
と答えた。
ぼくは頷いて「そういうものだと思う。たぶん、二人きりのときにはそれが正解なんだよ。……昴星」
後ろをがっちりと流斗に抑えられて立ち尽くす昴星に視線を送る。
「二人に見せてあげて。昴星が気持ちよくなるやり方。……ぼくらが普段、昴星のことを気持ちよくしてあげてるやり方」
昴星は泣きそうな顔でぼくを見ている。ぼくは流斗ほど純粋ではないにしても、能う限り綺麗に、微笑んで見せる。
昴星は、震える息を吐き出した。
その丸いお腹に、僅かに力がこもる。
それでも少し時間がかかった。けれど、白いブリーフの黄色い汚れがついた場所に、スポットがはっきりと浮かび上がる。
「え、うそ……」
瑞希が信じられないものを見るように呟き、震える。同い年として、その行為がどれだけ信じがたいことかは、ぼくにもわかる。いたたまれないような気持ちになるのだろう、目を背けたくなるのだろう。
でも、
「ああ。すごく可愛いよ、昴星」
ぼくは椅子から立ち上がり、カメラを流斗から受け取り、少年の失禁の様子を撮影する。いつも平気な顔でして見せる。でもいまは、同い年の少年たちの前で、真っ赤になって恥ずかしそうにしている。その姿は、「可愛い」としか表現出来ない一方で、そんな単純な言葉でくくれるようなものではない。資格と嗅覚と聴覚に、場合によってはぼくの五感すべてに、訴えかけてくるほどのものだ。
「お、にぃ、さっ……」
ガクガクと膝を笑わせながらの、昴星の失禁はずいぶんと長く続く。ここへ来ると決まった段階で昴星はこうするつもりだったのだろう。陽介と瑞希が居たから「開始」まで余計に時間を要して、それだけにガマンも長引いてしまった。猛烈な、と形容してしまっていいようなオシッコの匂いが立ち込める。流斗が手をほどいても、昴星はもう、いまさら雨を降らせるブリーフを隠すことを思いつきもしないらしかった。
「すっげえ……くせえ……」
気分悪そうに顔をしかめて陽介が呟く。
「これが瑞希の匂いだったとしても、陽介はそう思う?」
すかさず、ぼくは訊いた。陽介は怒ったように「瑞希はこんなことしねえし、したとしてもこんな臭くねえよ!」とぼくに向けて怒鳴る。
「オシッコは、誰のだってくさいよ」
昴星の後ろから姿を現した流斗は、微笑みを浮かべて言う。「でも、好きなひとのだったらいいにおいになるんだよ。だから、瑞希兄ちゃんのオシッコのにおい、きっと陽介兄ちゃんすごい好きになっちゃうんだと思う」
カメラを流斗に返し、ぼくは全て出し切って、真っ赤になっている昴星の髪を撫ぜて、キスをする。「お、おにぃ、さっ……」
「大丈夫。ここだけの秘密だから。……たくさん出たね、おりこうさんだったよ」
こく、と頷いて、昴星はぼくに抱きつく。間接的にはぼくのためだと思うからこそ、こんな羞恥の伴う行為を耐えてくれた。ご褒美はあとで、たくさんあげなきゃいけない。
ぼくの股間では、もちろん昴星の姿と匂いに反応したものが勃ち上がっている。「うわ」と陽介も声を出し、瑞希も驚いた様子だった。大人だから当然だけど、大きい陽介のものより、ぼくのはもっと、ずっと大きい。
「昴星、説明できる?」
ぼくに甘えていた昴星は、ためらいながら、こくんと頷いた。
「お、おれ、……オネショ、なおんなくて……」
「マジかよ」
陽介は笑わない。みっともない姿をさらしながら恥を告白する昴星に、ある種の迫力を感じているのかもしれない。
「でも、……才斗が、おれの、オシッコのにおい、好きだって……、言って、だから、おれ、才斗が喜んで、くれたら嬉しいから、……だから……」
「でも、そうやってオモラシしてるうちに、オモラシするの好きになっちゃったんだよね?」
流斗の補足に、こくんと頷き、そのままうつむいてしまった。
「昴星がオモラシしてくれるのは、ぼくにとっても嬉しいことだよ」
ぼくは昴星のサラサラの髪を撫ぜて言う。「こんなになるぐらいにね」
「全然わかんねえ……」
「だから、ぼくたちが教えてあげるんだよ。ね、お兄ちゃん」
ぼくと流斗の視線は、瑞希に注がれた。具体的には、瑞希の細い体の大事な部分を包む、ほとんど汚れの付着していない白ブリーフへと。
「ま、まさかおまえら……っ、瑞希にもしろってのかよ!」
瑞希は一瞬青ざめて、すぐにぼっと紅くなる。よりビビッドなリアクションをして見せたのは陽介で、まあ、当然だろうなとも思う。
「いやなの? 昴兄ちゃんのオモラシ見せてあげたのに」
「んなんっ、そっちが勝手にしたんじゃねえか! おれたちは関係ねえし!」
「でも、瑞希兄ちゃんのはきもちいいやり方知りたくってきたんだよね? 陽介兄ちゃんがもっとどきどきしてくれたらうれしいから」
ぴく、と瑞希の肩が震える。
「それに、陽介兄ちゃんのおちんちん、もうお兄ちゃんのカメラでとっちゃったよねえ?」
多分、とぼくは頷く。
「ぼくたち、女の子のおともだちもいるよ。東京に帰ったらたくさん。だから、陽介兄ちゃんのおちんちんみんなに見てもらっちゃおうかなー。それか、ネットに上げてもっとたくさんの人に見てもらえるようにしてもいいよね」
性に目覚めたばかりの少年の心に、それがどれほどこたえることか、……そういう感覚を備えてはいなくとも、流斗はわかりきった上で言う。
「……ぼく、するよ、陽介……」
瑞希が、緊張した声で言う。
「その代わり……、その、撮ったの、誰にも見せないでください……。内緒にしてください、ぼくたち、だけの……」
うん、とぼくは約束する。どのみち、ネットに上げようなんて思ったことは一度もない。そんな恐ろしいこと。
「じゃあ、瑞希兄ちゃんがする前に、昴兄ちゃん、おちんちん見せてあげなよ」
昴星の作った水たまりに足の指先を付けて、流斗がするんとブリーフを下ろして、昴星が止める間もなく、オシッコまみれのおちんちんを披露する。
「ちっちゃ……」
「小せえ……」
二人の言葉は、昴星を深く傷つけたはずだ。
「でも、……え? 昴星くん、それ……、勃って、るの?」
ほとんど平常時とサイズは変わらず、ただ角度だけは鋭く上を向いた昴星の包茎を、大事そうに流斗は手に包む。
「ちっちゃくても、ぼくは昴兄ちゃんのおちんちんがだいすき。おいしくって、いい匂いがして、……こうやってるだけでおちんちんぴくぴくしちゃうくらい……」
流斗はうっとりと昴星のおちんちんに顔を寄せて、匂いを愉しみ、膝を広げてこちらにお尻の穴を見せながら、オナニーを始めた。
「ん、あっ……、流っ……」
「んふぁ……、おいひぃ、こうにいひゃの、おひんひん……、しゅき……」
撮られているのみならず、見られていることを意識しているからだろう、流斗はいつも以上に興奮しているみたいだった。貪欲な舌の音が、ぼくらのところまで聴こえて来る。
「い、いつも、こんな……、あんなこと、してんのかよ……」
「うん、まあ……、今日はこれでもおとなしい方だよ」
苦笑が浮かぶ。
「あれより、すごいって……」
まだ穢れを知らない二人が想像するのは難しいだろう。オムツをしたり、うんちをしたり、……そういう話になるとまた逃げ出そうとするだろうから。
「んん」
ぽん、と流斗は口を外して、ぴたん、お尻を床に付き、開脚し、こちらへ屹立したおちんちんを見せる。
「ね、……昴兄ちゃん、いっしょに、見せてあげよ……? ぼくらの、きもちよくなるとこ……」
流斗は皮の隙間に指を当て、そこに引く糸を見せて微笑んでから、おちんちんを急速に扱き始めた。それに導かれるように、昴星も立ったまま、短い陰茎をいじめ始めた。
「四年生の子が……、オナニーしてる……」
「瑞希はしなかった?」
「だ、だって……」
「四年のときなんて、まだこんなことしてねえし」
もじもじと口ごもる瑞希に代わって陽介が教えてくれた。「おれたちがこういうことするようになったの、まだ、今年に入ってからだ……。最初のうちはこいつ、出せなかったし……」
「そうなんだ。……流斗は三年生のときから出せてたらしいし、昴星も去年からだから、……サイズはあの子たち小さいけど、機能に限って言えば早く大人になったって言えるかもね。いや……、オネショしちゃうから、まだ子供かもしれないけど」
実際、昴星も流斗も、子供の身体に無邪気な心を宿して居ながら、その考え方はどこか大人びている。バランスが悪いと言い換えることもできるかもしれないけれど、むしろ絶妙なバランスだと言うことも出来そうだ。
「あ、はぁんっ、い、っちゃうっ、せぇし出ちゃうぅっ」
思い切り声を響かせて、流斗が精液を放つと同時に、昴星が「あぅんっ」と声を跳ねさせる。二人の噴き出させた精液は観衆であらぼくらのすぐそばにまで飛んできた。全く、天真爛漫、元気いっぱいだ。
「あ、うぅ……」
よろよろと、膝にブリーフを引っ掛けたまま昴星がお尻を水たまりに落とした。
「昴兄ちゃん……、きもちよかったね。見られながらおちんちんいっぱいきもちよくなっちゃったね……?」
インフルエンザに侵されたみたいな顔で、昴星はこくんと頷く。そして、しどけなく広げた足と足の間をいまさら、申し訳のように隠した。
「出来る?」
ぼくの問いに、注射の順番が巡ってきたように、瑞希は緊張を顔にみなぎらせる。
「いいよ、瑞希、あんなのしなくっても、おまえ、いつも十分がんばってんじゃねえか……」
恋人の抑制に、瑞希は首を振った。自らのためらいをかなぐり捨てるように、ぶんぶん。
「ぼく、決めたんだ……。一緒にいる時間は全力で陽介の恋人でいるって」
「オモラシしたら、パンツも陽介兄ちゃんにあげなよ。そしたら陽介兄ちゃん、いっしょにいられないときでもさみしくないよ」
昴星のブリーフを脱がせ、蛇口に干したその足でシャワーのお湯を床にかけてオシッコを洗う。昨日、由利香の掃除を手伝ったからこの小さな無人浴場に愛着が湧いているのかもしれない。
瑞希が立ち上がって、ぼくの前を通り過ぎ、恋人に向かい合う。
「みず、き……」
瑞希は頬をぎこちなく微笑ませて、「陽介に……、はじめて、ちんちん見せたとき、ぼく、恥ずかしくって死んじゃうかと思った」恋人の伸ばした手を両手で取る。
「でもって、……陽介にぼくのちんちん舐められたとき、も、恥ずかしくって、おかしくなりそうだった……」
下着姿の恋人を前にしているからだろう、陽介の男らしいおちんちんに、僅かに力がこもり始めた。引き締まった腹筋の下で、震えながら上を目指す陽介のおちんちんは、シンプルに男らしくて凛々しい。
「でもね、ぼくは、生きてるし、おかしくなってもいない。……だから、大丈夫だと思うんだ……」
ぎゅっと、握り合った手は恋人の証だ。
すっぽんぽんで身体を流斗に洗ってもらった昴星が、瑞希の座っていた腰掛けに濡れたお尻を落とし、緊張が伝播したようにぼくの腕に掴まる。流斗もやってきて、「わー、すごいおっきい……」と陽介の股間に驚く。
「目ぇ、閉じんだ」
昴星が、瑞希に言った。「目ぇ開けてると、自分がいまいるとことか、おれらがいることとか考えちゃってできなくなる。だから、目ぇつぶって、……おまえ、お風呂ん中でオシッコしたことあるか?」
昴星の言葉に従って瞑目した瑞希が、一瞬ためらってから頷く。「んなん、誰だってあんだろ……」と陽介が恋人をかばった。
「そんときみてーにさ、力抜いて、……パンツのことなんて考えなくっていいんだ。身体の力抜いて、フツーにオシッコすることだけ考えて……」
……なるほど。昴星だって、いまは「マスター」と言っていいぐらいオモラシを抵抗なくして見せてくれるけれど、才斗相手であったとしても、やっぱり最初は羞恥心や抵抗が大きかったに違いない。
瑞希の痩せたお腹に、不自然にこもっていた力がふわりと抜けた、ように見えた。
「あう……っ」
か細い声が震える。同時に、控え目な水音がブリーフの中から響き始めた。
「……あ、……あ、オシッコ……出てる……」
そろそろと、瑞希が目を開けた。彼の目が最初に見るのは、どんどんと濡れていく自分の下着を、口を開けて見ている陽介の顔であり、次に見るのは恋人の下半身で脈打つ勃起が、自分の醜態を目の当たりにしても全く収まらないという、事実である。
「陽介……、陽介、大好きだよ……、大好き……」
愛の言葉を繰り返し繰り返し口にしながら、瑞希は大量の尿を太ももに伝わせ、足元に大きな水たまりを作っていく。その水たまりは陽介の足をも濡らすが、恋人の体液から足を避けるようなことを、陽介はしなかった。
ただ、初めて目にする瑞希のオモラシに、心を奪われている。
「瑞希……」
言葉につまり、彼は一度、唾を飲み込む。「……おれも、大好きだよ……」
潤んだ目で、にこりと瑞希は微笑んで、身体に震えを走らせた。放尿は終わったのだ。独特の匂い、間近にいるぼくも流斗も、はっきりと嗅いでいる。
「……臭く、ない? あ……、ごめんね、陽介の足に……」
陽介は答えられない。というか、彼は身体の一部分を除けば、反応すら出来ない。
「瑞希兄ちゃん、オモラシどうだった?」
流斗の問いに、瑞希は困ったように首をかしげる。「……やっぱり、恥ずかしいよ……、お尻の方まで、冷たいし……」
「でも、いい匂いだよ。ぼくもどきどきしてきちゃったもん。陽介兄ちゃんはぼくよりもっとどきどきしてるよ」
「しっ、してねえし」
年下にそんなことを指摘されるのはやはり癪に障るのか、我に帰ったように陽介は声を上げる。
「おまえ、横になれよ」
昴星が言い放つ。「そっちの、乾いてるとこでいいから、仰向けになれ」
言葉遣いはきわめて横柄なものだが、ぼくには昴星が優しく見える。自分たちのいる世界に足を踏み入れようとする彼らへ、先輩として送るアドバイスだ。
「昴星の言ったとおりにしてごらん」
「ぼく、お兄ちゃんといっしょにお手本見せてあげるよ」
流斗が言う。単純に流斗は瑞希の失禁を見てまた興奮してしまったのだろうけれど、それもまた、優しさという理由付けは可能だろうか。
昴星にカメラを渡し、ぼくが横たわった隣に、戸惑いながら陽介も横たわる。
「あの、……ぼく、まだパンツはいてなきゃダメなの……?」
脱衣所から自分のパンツを穿いて戻ってきた流斗が「ダメなの」とあっさり答える。
「だって、瑞希兄ちゃんがいまはいてるパンツは、陽介兄ちゃんにとっては宝物なんだよ? だからまだダメ。からだ洗うのも、もっとずっとあとだよ」
「……かゆくなったり、しない? それに、やっぱり、臭い……」
「めんどくせーな」
ぐい、と昴星が瑞希の腕を引っ張る。「おまえはこいつの上に、流みてーにすりゃいーんだよ」
「わ!」
ぼくの視界は既に流斗の白いブリーフで塞がれている。
同じように、陽介の顔の上、瑞希の、未だ滴りのあるオモラシブリーフが乗った。「あ、あっ、オシッコ垂れちゃうっ、陽介の顔にっ……!」
「いいの、それが大事なんだから」
と言う流斗の声と共に、流水音がぼくの耳に届き始める。ぼくの顔面に、流斗が降らせる雨、……ぼくは流斗のお尻を撫ぜながら、タマタマの膨らみに口を当ててそれを飲んで見せた。
「えへへ、お兄ちゃん、おいしい? いっぱい出すからねー」
言葉の通り、瑞々しい勢いで広がる尿の味、過分なくらいに美味しい、黄色い迸りはぼくの喉を潤し満たす。
陽介は途中から、それを見てはいなかったはずだ。
でも、
「ひゃん!」
無意識的にか、 陽介はぼくの真似をしていた。
「ひゃ、あっ、あっ、やぁ……っ、よぉすけっ、お、おひっこっなめひゃっやぁっ……!」
「ひひ、女みてーな声出してら」
「きづいてないのかもしれないけど、昴兄ちゃんの声はもっと女の子だよ」
流斗がごく的確な指摘をし、昴星は言い返せない。流斗に口で敵うわけもないとわかっているのか、昴星は夢中になって恋人の失禁ブリーフの、小さなお尻の浅い谷間に鼻と口を埋める陽介に、「おいしーだろ」と笑う。
「ほら、瑞希兄ちゃん、陽介兄ちゃんのおちんちん、すっごいビクビクしてるよ。きもちよくしてあげなきゃ。……こうやって」
オシッコを出し切った流斗がぼくの張り詰めたペニスを咥えこむなり、激しい勢いで頭を動かし始めた。先輩としての意識がそうさせるのか、舌使いも含め、普段以上に気合が乗っているように感じられる……、気持ちいい。
「う、は……っ、みず、きっ……」
瑞希もまた、一生懸命に恋人へ愛撫を施しているらしい。ぼくからは、残念ながらその様子を伺うことは出来ないが、堪えるような陽介の息遣いを聴けば、そして流斗に負けないぐらい、じゅっぷじゅっぷと立つ音を聴けば、手に取るも同然だ。
「なに一人できもちよくなってんだよ、おまえの恋人だろ、おにーさんがしてるみてーにちんこいじったりとかしてやれよなー」
オモラシやら、ちっちゃいおちんちんやら、見せてしまったことなどもう忘れたかのように昴星はああだこうだと口を出す。「ちげーよ、パンツの上からすんの。でもってちゃんと顔でさ、鼻とか口とかで恋人のオシッコ味わうんだよ」
立ち直りが早いのはいいことだ、とは思った。
「んふぁあ……!」
昴星の指示通り、ブリーフの前を掴んで擦る陽介の手に、瑞希が身をのけぞらせる。
「がんばって」
励ましの言葉を贈るのは流斗だ。「瑞希兄ちゃんがきもちよくなるのとおんなじぐらい、陽介兄ちゃんもきもちいいんだよ。だから、いっぱい、いっぱいきもちよくなって、陽介兄ちゃんのことも、きもちよくしてあげなくちゃ……、っやん!」
殊勝な態度を推奨する流斗が背中を弓なりに逸らしたのは、ぼくがお尻の穴をパンツの上から押したからだ。
「んもぉ……、そんなのしたらダメぇ……」
気持ち良くなった分だけ返すという約束の通り、
「お兄ちゃんのだって……、いっぱいしちゃうんだから……!」
流斗はぼくのペニスを掴んで上下に激しく扱きつつ亀頭は小刻みな舌の動きで追い込んで行く。
ぼくのフィニッシュも近い。
瑞希は懸命にフェラチオをしていたようだが、
「ん、あっ、よぉすけっ、でちゃ、うっ、いっちゃうっ!」
恋人の手がブリーフの前で器用に動くせいで、もう辛抱出来なくなったようだ。高い声を上げるとき、唇から陽介の性器が零れた。
と、同時に、「ふあ……!」陽介も極まった声を発する。
「あ、あっ、陽介っ、ようすけっ……!」
恐らくは顔中に恋人の精液を浴びることになったはずだ、瑞希の穿いているブリーフの中から、にちゃにちゃと粘液の音が響く……。
「ん、おにいちゃ……、ぼくたちも……、いっしょにいこ……」
流斗が息継ぎの間に言う。ぼくは答える暇もなく、流斗のお尻の谷間に鼻を突っ込みながらおちんちんを扱く。後はオートメーションに、流斗がぼくを、至らせる。
「んんんにゅっ!」
流斗はお尻の穴をぼくに擦り付けるようにしながらブリーフの中へ射精した。もちろん同時に、ぼくも、柔らかな流斗の口の中へと。
「すげーな、四人とも射精した」
いつのまにかカメラを瑞希から流斗に向け変えていた昴星が感心したように言う、確かにすごいことだ。
しばらく、ぼくら四人は動かない、というか、動けない。
「どうだよ。これでもオシッコきたねーって思うか?」
よろよろと瑞希は身体から降り、陽介はぼうっとしている。流斗は口元を拭い(当然のように、ぼくの出したものは飲み込んでくれた)体の向きを変えて、キスをねだる。
「……はじめて、陽介、ぼくでいってくれた……」
まだブリーフを脱ぐことも思い付けないらしい瑞希は、ぽつりと言って、それから小さくしゃくりあげ始めた。
「お、おい……」
昴星も、さすがにそれには面食らった様子だ。流斗もじっと顔を向けている。
「はじめて、って……?」
昴星の問いに、少し聞き取りづらい声で、
「いままで、ぼく、頑張っても……、下手だから、……陽介のこと、口で、気持ちよく、できなかった、から……っ」
陽介が起き上がるなり、瑞希は恋人の胸に飛び込んだ。
嬉しいのだろう。
ぼくは瑞希の気持ちを思って、心が暖かくなるのを感じた。自分の愛情が形として届くというのは、何物にも変え難い喜びが伴うに決まっていた。陽介は優しい腕で、大事そうに自分の恋人の髪を何度も何度も撫ぜていた。
「いいこと、したね」
流斗は微笑んでまたぼくにキスをする。
はじめはどうなることかと思ってどきどきしたけれど、でも、この子の主導によってぼくらは一組の恋人を確かに幸せにしたのだから、ぼくだって安堵の伴う喜びを覚える。
「……なーおにーさん、おれって上手いの?」
抱き合う二人を見ながら黙って何を考えていたのかと思えば……。
「うーんと……、昴星は才斗も流斗もぼくも簡単にいかせちゃうからねえ……。ただ、その、……流斗や才斗はまだ子供だし、ぼくもそんな我慢強い方じゃないって思うし……」
「そうなのかー……」
残念そうだ。ひょっとして昴星、「おれは背ぇちっちゃくて丸っこくてちんこも短いけどそのぶん口ですんのはすげー上手いんだぞ!」って思っていたのかもしれない。
別におちんちん小さいことなんて気にしなくていいのになあ、とは思うし、背が低いこともお腹がぷにぷにしていることも、昴星の「愛らしさ」を増幅させこそすれ、減らすことなどあり得ないのだけど、少年の心は中々に複雑なものである。
「じゃあ、昴兄ちゃんが教えてあげたらいいんじゃない?」
え? とぼくら四人一斉に流斗を見る。
「おちんちんきもちよくするしゃぶりかた、昴兄ちゃんが瑞希兄ちゃんに教えてあげれば、瑞希兄ちゃんも陽介兄ちゃんもうれしいよね」
「んな、なに勝手なこと言ってんだ! おれはいまのままの瑞希でいいんだ、ぜんぜん足りねえことなんてねえし!」
「えーでも瑞希兄ちゃんはもっと上手になりたいんだよね?」
鼻をすすって、瑞希はこっくりと頷いた。
恋人の決意を前にして、男は弱い。
手の甲で涙のあとをこすって、
「でも、……上手になんて、なれるの? ぼく、これまで一年以上陽介にしてきたけど、今日まで一度も……」
鼻声で瑞希は訊く。こすっちゃダメだよと、ぼくはタオルを取ってきた。ありがとうございます、と瑞希はきちんとお礼を言う。
「瑞希は滑舌も悪くないし、……まあ、滑舌の良し悪しとそういうことの上手い下手はあまり関係ないのかもしれないけど……」
実際、昴星も滑舌はいい方ではない。早口で喋ることが多いが、舌を噛みそうな危なっかしさがある。流斗は舌ったらずだし。
「そもそも昴星だって誰かに習って上手くなったわけじゃないんだよね?」
う、と昴星は口ごもる。「そ、そりゃ、だっておにーさんとするようになるまでは、才斗と流の、子供のちんこしかしゃぶってこなかったしさ、別にやり方そんな知ってるわけじゃねーけどさ……。でも、それでもおにーさんおれでも流でもいくじゃん」
「そ、それはそうだけど……」
おれは別にどうだっていいし、と陽介は一人呟いたが、聴いたのはぼくだけだったかもしれない。
「お兄ちゃんで試してみたらいいんじゃない?」
各方面に向けて、いろんな意味でなかなかショックの大きい提案を流斗はして、「なんでびっくりするの?」と首を傾げる。
「だって、お兄ちゃんのおちんちんは陽介兄ちゃんと大きさは違うけどおんなじ形だよ? 昴兄ちゃんと瑞希兄ちゃんのやり方比べられるのって、お兄ちゃんしかいないと思うな」
確かに昴星と流斗と瑞希は包茎だ。陽介のおちんちんは勃起すると綺麗に亀頭が露出する。
「だからね、昴兄ちゃんがどんな風にお兄ちゃんのこときもちよくしてるかよーく見て瑞希兄ちゃんお勉強したらいいんじゃないかなって思うんだ。さっき瑞希兄ちゃん、ぼくがとなりでしてたの見てなかったでしょ?」
「だ、だって……」
そんな余裕もなかっただろう、無理もないよね。初めてオモラシして、そのままシックスナインだもの。
「お兄ちゃん、立って」
場を采配する流斗の振るうタクトに従って、ぼくは立ち上がる。「昴兄ちゃんは、お兄ちゃんの前すわって、で、瑞希兄ちゃんもいっしょにちゃんと見るんだよ」
「あの……、ぼくまだパンツ脱いじゃダメなの……?」
かゆくなっちゃうんじゃないのかと心配になるものの、昴星にしろ流斗にしろ敏感ゾーンに三十分でも一時間でもおちんちんを委ねている。
だから、
「ダメー。もっとはいてなきゃ。ほら早く」
結局瑞希もぼくの前に跪いた。フルチンの昴星と、オモラシパンツの瑞希、ぼくは昴星の方が好きだけれど、繊細そうな瑞希を見て、彼を選ぶショタコンも多かろうと思う。何しろ自分のペニスをじろじろ見られているのだから、ぼくとしては落ち着かないのでそんなことを考えて気を紛らわせたくもなるのだ。
「したら、おまえ、やってみろよ」
昴星は先輩風を吹かせる。「え」と瑞希のみならず、陽介も声を上げる。昴星は動じることなく「当たり前だろ、おまえがやってみて、おかしなとこあったらおれがアドバイスして直してやるんだから」
「で、でも、……瑞希はぼくのなんかしたくないんじゃない? 陽介だって嫌だよきっと」
「んなん当たり前だろ! なんで瑞希がおれ以外のやつの……!」
「じゃーおまえはおれにおまえのちんこ舐めろっつってんのか? あ?」
じろり、昴星が幼い顔ながらそれなりに迫力のある視線を向ける。「文句ばっか言ってんじゃねーや、おれらは教えてやってんだぞ」
「陽介、ぼく、平気だよ」
瑞希が陽介の反駁を遮る。
「汚いのだったら、嫌だけど……、このお兄さんのちんちん、綺麗だと思うし……、ぼく、上手になりたいよ」
意志を込めて瑞希は言い、「よろしくお願いします」と、ぺこり、お辞儀をする。
陽介が、視界に入れるのを拒むように顔を背けた。
「したら、いつもあいつにやるみてーにやってみ」
「う、うん……」
形状の特色は愛する陽介のものと代わりはないにしても、やっぱりぼくは大人であるから、瑞希の指はこわごわとしたもの。まだ垂れたままのぼくのペニスを慎重な手つきで包み込むと、皮膚化した亀頭に、そっと唇を当て、……遠慮がちに舌を当てる。
ぼくとしては……、昴星流斗以外の誰か(まあ、昨日は由利香にしてもらったけれど)に自分の性器を委ねる、というのは、何て言えばいいか、昴星たちにせよ「特別」なのだけど、それ以上に緊張してしまう。
「ん、っ……ん……は」
見下ろしたところには、一生懸命にぼくを舌で愛撫する瑞希の顔と、やたらマジメにそれを観察している昴星の顔があるので、余計に落ち着かない気持ちになる。
けれども、その分だけ快感に対して貪欲ではない自分に気付く。だからある程度冷静に……、ぼくはヒントを見つけた。
「瑞希は、口の中がかわくほう?」
舌で舐められているのだけど、昴星や流斗がしてくれるみたいな、ぬめぬめ、ぬるぬるした感じはあまりないのだ。その分、瑞希の舌はぎこちなく感じられる。
瑞希はちょっと困ったような顔で、
「だって、その……、ちんちん、よだれでビショビショにしちゃったら、いけないし……」
と答える。
「あのなー、ちんこはよだれでビショビショにするためにあるんだぞ」
昴星が呆れ顔で言ったが、……それはどうだろう。それを言ったら、唾液は本来、消化液であって、口にした食物を歯と舌と共に小さくし、味わうために働くものだ。
と、ここまでぼくの思いが至ったところで、はたと閃いたことがあった。
「そうか……」
「ん?」
「昴星と流斗は、……その、おちんちんしゃぶるの、好きだよね?」
「うん」
「だいすき!」
昴星が元々才斗の「味」に執着する少年であることは、先ほど流斗の口から語られたとおり。そして流斗は昴星と才斗のフェチズムを両方受け継ぐ存在だ。生身の男性器を「美味しい」と思うような、特殊な舌を持っている。
でも、いまぼくは「特殊」と言ったけど、本当にそう言えるものだろうか? 昴星たちのおちんちんが、オモラシしたパンツの中にずっとあって蒸れてすごい匂いになっていたとして、……それを口にしてぼくは、「美味しい」と感じる。
つまりそれは、昴星たちがそれだけいとおしいと思うから。
もっとも、オモラシするのも今日がはじめてという瑞希の真っ当さを考えれば、彼がまだ陽介のおちんちんを「美味しい」とは思っていなくとも、それは仕方が無い。
「……さっき、君の恋人は、君のそのパンツを美味しそうに嗅いでたよね」
美味しく嗅ぐ、という言い回しのぎこちなさはひとまず置いといて。
「ぼくらもそうだけど、……恋人の身体の味は美味しいものだ、舐められる方もね、自分の身体が相手に喜びを与えてるんだって思うと、普段以上に幸せに感じられるものだよ。……ぼくもさ、初めて昴星にしゃぶってもらったとき、『ああこんなに汚いのに』って申し訳ない気持ちになったけど、昴星が美味しそうにしてくれるから、救われたような気持ちになってね。ぼくのこんなものでも、可愛い子のこと幸せにしてあげられるんだって。……陽介だって同じ気持ちのはずだよ」
陽介はぼくの声にも顔を向けない。ただ、彼の思いは、……大好きな相手にペニスを口にしてもらえる立場にあるものとして、ぼくが十分に理解できるものであろうと思う。
「ぼくは、昴星と流斗のおちんちんを美味しいって思う。陽介のおちんちんのことを、瑞希は同じように思ってるんだよね?」
瑞希はこくんと頷く。
そして、まだ乾いたままのぼくのペニスに目を向ける。
「美味しいものは、たっぷり食べなきゃね? それこそ、マナーなんて気にしないでさ」
意を決したように、瑞希はぼくのペニスに両手を添えた。
口を開けて、……再び包まれたぼくのペニスは、瑞希の口の中に包まれたとたん、少年の滑らかな舌の上でぬるんと滑った。たっぷりと濡れた舌がぎこちなくぼくの茎にまとわりつく。
「うん、……そうだよ、それでいい」
髪を撫ぜてあげたい気持ちになったけれど、それはぼくのするべきことじゃない。
「そうやって咥えるだけじゃなくってさ」
昴星が顔を寄せて言う。「例えば、……えーと、ちょっとかしてみ」
ものじゃないんだけどな。まあ、細かい言い回しはいい。瑞希の口が外れて、少年の唾液まみれになったぼくのペニスの前に代わって昴星が座る。
「例えばな、ちんこの、ここんとこ」
びちょびちょのぼくの茎に左手を当ててペニスの背部を晒すと、裏筋の弦に舌を当て、左右に小刻みに動かして見せる。ぼくがそこを脈打たせたのは、瑞希にも見えたはずだ。
「こことかー、あと、キンタマ」
唇を下ろし、左右の袋を一つずつ口に含み、飴玉のように口の中で転がす。
「こうやってしたりとかー、あとな」
今度はいま舐めた袋を左の手のひらで包み込み右手で茎を扱きながら、先端に細かなキスと舌での愛撫。
昴星の持つフェラチオスキルを一つひとつ丁寧に教えて行く。瑞希は真面目な顔で、じっと昴星の口元を観察していた。
「やっぱり昴兄ちゃんはお口上手だなあ。お兄ちゃんのおちんちんすっごくぴくぴくしててきもちよさそう」
「ちんこってさ、すげーおいしいもんじゃん。だからさ、ちんこそのものの味とか、ちんこから出てくるもんの味、もっと欲しいって思うんだよな。だからもっとおれの口で気持ちよくなって欲しいって思うし、もっとおいしいもんくれって思うんだ」
それが一般論かどうかは置いといて、そういう気持ちで施される以上、こちらも「おいしいもん」をあげなきゃって思うのである。
「今度はおれが手伝ってやるからさ、もう一回おにーさんの、しゃぶってみ」
オネショの止まらない「先生」の言葉に、瑞希は素直にこくんと頷き、再びぼくのペニスに向き合う。
ぬるんと口に収められ、ぎこちないなりに舌が動き始める。自分のペニスの味がどうかは(当然、自分でしゃぶったこともないわけで)わからないけれど、昴星たちのおちんちんはすごい美味しいわけで、……男の性器の持つ味として根底にあるのはそう差異はないはず。瑞希の舌が男性器を「美味しい」と思えるようになるまで、そんなに苦労はしないだろう。
「そう、そんな感じ。……おにーさんのちんこがぴくぴくしてんのわかるよな?」
ぼくの陰嚢を下から持ち上げるようにして、瑞希のサポートをする昴星が訊く。「ん」と瑞希はぼくを口に含んだまま昴星に目顔で頷いて見せる。
「ね、陽介兄ちゃん」
瑞希がぼくの身体を実験台にしてフェラチオのお勉強をしているかたわら、ずっと不貞腐れている陽介の前に流斗がぺたんと座った。
「瑞希兄ちゃんがお勉強したあとは、陽介兄ちゃんもお勉強だよ」
「んな……、おれはいらねえよ!」
「いらなくないよー、だって瑞希兄ちゃんは陽介兄ちゃんがきもちよくなれるようにってがんばってお勉強してるんだよ? 陽介兄ちゃんだって瑞希兄ちゃんのこといっぱい幸せにしてあげなくちゃダメ。恋人なんでしょ?」
大きなお世話だ、と言われても仕方なかろうが、ついさっき、流斗並びに昴星から瑞希が習って汚したブリーフの匂いで射精まで至ってしまった分だけ、年下の流斗が相手でも陽介の立場は弱い。
「ぼくのおちんちん、きもちよくしてみてよ」
座る陽介の前に腰に手を当てて流斗は立ち上がる。小さいなりにピンと上を向いて、はっきりと快感を訴えているおちんちんを前に、陽介が困惑を覚えるのは当然であろうと思う。
「……おまえ、恥ずかしくねえのかよ? こんなちんちん、見せびらかして……」
「ぜんぜん」
流斗はいつもの通り、平然としている。
「だってきもちよくなれることなのに、恥ずかしがってそれしないなんてもったいないよ。だからぼくいろんなとこでおちんちん見せてるよ、ぼく、おちんちんみられるときもちよくなれるんだ」
得意げに言うようなことでは決してないのだが、まあ、いまさらそんなことを指摘する必要はないだろう。
「ね、陽介兄ちゃんおちんちんいじって」
陽介の憮然とした顔が、ぼくにはたやすく想像出来た。美少年とはいえ、恋人でもない流斗のおちんちんを「いじる」ことにはためらいがあるのかもしれない。
ぺた、とまた流斗が座った気配がある。
「お、おいこら」
戸惑った声にちょっと目をやれば、流斗は陽介のあぐらの中に座っていた。
「おちんちんと、あとおっぱいもいじってよ」
「お、おっぱい……?」
「男の子だっておっぱいきもちいいんだよ、きっと瑞希兄ちゃんも」
なるほど。流斗は自らの身体を使って陽介にも教えるつもりなのだ。
「はやくはやくっ。はやくしないと陽介兄ちゃんのおちんちん、ぼくがしゃぶっちゃうよー?」
ピク、とぼくを咥える瑞希が反応するのがわかる。陽介が短く何事か毒づき、
「んん、もっとやさしくしてくれなきゃダメだよぉ」
面倒臭がりながら流斗の薄い胸板に指先を当てたのがわかる。きっと陽介はまだ、恋人の乳首に触ったこともないのだろう。というか、男の子の身体のそこが「性感帯」だという意識すら持ったことがないはずだ、……かくいうぼくも、もともとそうだったし。
「ふぁ……、そうだよ、やさしくつまんで……」
結果的に、瑞希の上達したフェラチオに昴星の愛撫、更に甘えんぼ流斗の可愛い声も加わってぼくを追い詰めることとなる。
「瑞希、……もうすぐ、出るけど……」
口を外してくれて構わない。昴星に代わったほうが、君も陽介も気持ち的には楽だろう。
しかし、「そのまんま、しろよ。でもっておにーさんのせーし飲め」昴星は命じる。
鬼教官、……ではない。昴星のお腹の中には、いま、黄色く染まったブリーフを穿いて自分と同じく同性愛の(それも、かなり深い方面へ進んだ)道を辿り始めた少年に対しての、「愛情」とさえ呼べるような思いが詰まっている。瑞希が陽介と、より以上幸せになれるようにと、彼は自分の知識と技術を授けるのだから、それは文句なく「優しい」ものに決まっている。
昴星や流斗よりも不器用に、しかし、一生懸命動く舌に、ぼくはごく素直に射精した。
「んッ」
と小さく呻いて、瑞希は舌を止める。
「一滴残らず飲めよ。おまえの口でおにーさんが気持ちよくなった証拠だ。……今度はおんなじように気持ちよくしてやるんだ、おまえの恋人のことを」
昴星は最後まで真面目な顔で言った。ひょっとしたら、本当は自分が飲みたかったのかもしれないぼくの精液を、知り合ったばかりの少年に譲る昴星は間違いなく優しいとぼくは評する。何のためらいもなく。
こく、と瑞希の喉が動いた。「よし、口外していいぞ」という昴星の言葉に、瑞希はそろそろとそうした。
「んーなまずいもんじゃねーだろ?」
そう訊く昴星に、瑞希はこっくりと頷くが、その目には涙が滲んでいた。かわいそうなことしちゃったな……、と今更のようにぼくの胸には後悔が湧いて来たけれど、
「きっと、おまえにとったらおにーさんのの何倍もあいつのの方がおいしいんだろうな。……おれはおにーさんのが好きだけど」
「そしたら」
陽介の、戸惑いながらの愛撫からでも上手に快感を選り分けて勃起し善がっていた流斗がその腕からひょいと立ち上がって言う。
「陽介兄ちゃんも男の子のやりかたちゃんとお勉強したし、今度は一番大事な瑞希兄ちゃんがしてもらうといいよ。ぼくと昴兄ちゃんはお兄ちゃんにしてもらうから」
ね、お兄ちゃん。見上げる流斗の愛らしさは、瑞希の口に射精したばかりであることさえぼくに忘れさせる。ぼくを欲しがってくれるというだけで、それに応えなきゃ、応えたい、気持ちを身体が形にして表現するのだ。
「お兄ちゃん、座って。……ほら、昴兄ちゃんもいっしょだよ」
昴星も呼ばれて、やや窮屈ながら二人はぼくのあぐらに収まる。昴星も勃起していた。
「うらやましかったんでしょ、瑞希兄ちゃんのこと」
昴星はむうと唇を尖らせはしたけれど、結局こくんと頷いた。
右に流斗の、左に昴星の、やっぱり小さい陰茎を収める。昴星の下半身からは乾いたオシッコの匂いがふわりと漂い、ぼくと流斗の鼻を好ましく刺激する。
「ね、お兄ちゃん、ぼくまたオシッコしたくなっちゃった。してもいい?」
流斗はぼくの肩に甘えて言う。細いおちんちんの先は斜め上、昴星のお腹あたりを指差している。
「……したいなら、ガマンするのはあまりよくないよ。……そうだよね? 昴星」
昴星は、自分が流斗の尿を浴びることまで受け入れてこっくり頷いた。
「えへへ。じゃあしちゃうね」
ちょろろ、とはじめは流斗自身の細茎に伝って、間もなく高らかに射ちあがる黄色い放物線は単色の虹のようだ。弧を描いて、そのまま昴星のふっくらとしたお腹におっぱいまでビチャビチャと濡らして行く、もちろん彼を抱くぼくの腹部にも、それは伝った。
「流の……、オシッコ、あったけー……」
ぼんやりと呟く昴星に、流斗はくすりと微笑み角度を変えて顔を狙った。昴星は動じることなく口を開き、飛沫をそのまま受け止め、「ん……っ、っん……」喉を鳴らして飲み込んで行く。
ちらりと向かいの恋人たちを見る。「すごい……」と瑞希は呆気にとられ、陽介は言葉もない。ただ彼は失禁ブリーフを穿いた恋人をきちんと膝の中に収めていた。
「昴兄ちゃん、オシッコのんですっごいおちんちんかたくなってる」
流斗の言葉の通り、ぼくの指の間、昴星の小さなおちんちんはたまらない震えを催している。さすがに「だって……」とはずかしそうに抗いの言葉を濡れた口で発しようとするが、ぼくの指が動き始めるとそれも止まった。
「ぼくもお手伝いしてあげる。昴兄ちゃんのきもちよくなるとこ、瑞希兄ちゃんたちに見てもらおうね……」流斗の唇が彼自身の尿を浴びた胸の先のピンク色に当てられ、その味ごと吸い上げられただけで、
「ひ、やんっ」
昴星の腰は敏感に震える。
瑞希と陽介がそれを見ている。
陽介の指が、流斗に対してするときよりも積極的で、確固たる意志の篭った動きで瑞希の、昴星と同じく小さな粒状突起に当てられた。
「あっ……」
思わぬ快感が身に走ったのだろう、瑞希は自分の声を、慌てて塞ごうと口に手を当てた。
陽介は構わず指を動かす。微かに息を震わせつつ、恋人の乳首を弄り始めた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「ぼくたちも、瑞希兄ちゃんたちも、すっごいえっちだね」
うん、ぼくは頷く。本当にそうだ。こんなえっちなの、そうそうない。
「ぼく、えっちなの大好き」
言って、昴星のおっぱいをまた強く吸い上げる。
「ひぃン……っ」
短く悲鳴のような声を上げて、昴星がぼくの指の中でおちんちんを痙攣させた。精液はぼくの指に絡みつき、流斗のお腹へ飛び散る。流斗は大いに嬉しそうに、昴星に何度も、オシッコの味のキスをする。
「あ……っ、あっ、よぉすけっ……」
陽介の手は、瑞希の黄色いブリーフの窓からおちんちんを引き出していた。恋人の耳を唇で食みながら、陽介は其処を扱く。瑞希が、ぼくと流斗によって昴星が感じたのと同じぐらい強い快感に包まれていることは傍目にも明らかで、瑞希は後ろ手に恋人へ縋り付きながら、無理な体勢でもかまわずキスを強請る。それを受け止めるように陽介は瑞希を仰向けに横たえると、情熱のほとばしりに任せるようなキスを、深々と。
窓から出た瑞希のおちんちんに、自分のおちんちんを擦り付けるように腰を振りながら。
「ん、ぅ、うっンっ……ぷぁ、はぁあンっ」
間もなく瑞希が腰を弾ませるように、自らの胸へと快感の証を噴き出させた。快感に抗うことなく解き放った恋人に、酔いしれたような目で陽介は身を起こす。自らを射精へと追い込もうと動かす右手を、射精の余韻に浸ることを自らに禁じて瑞希が止めた。
「お……っ」
身を起こし、陽介のおちんちんを引っ張り自分の口に導く。
「ん……、よぉふけの、ひんひん……、ひもひよふふるのぉ……」
見下ろしたところにあるのは、彼の最愛の恋人が自分の性器を舌で愛する顔。
大人のぼくだって耐えられない幸せだ、いわんや、子供の陽介がやり過ごせるはずもない。
ぼくだって幸せだ。ぼくの顔の上には流斗の足の間があり、お尻の穴の欲深いひくつきを見せ付けながら積極的なフェラチオをしてくれる。ぼくの足の間では、射精直後でありながら昴星がオナニーの声を漏らしながら袋を咥えている。
ぼくは流斗のお尻に舌をねじ込む。先日、お外で一緒に遊んだときに、この子の肛門が潜在的性感帯の素質を秘めていることは了解済み、だから散々に舐めて、指先をそっと差し込んでから指ほどの大きさで震える幼い勃起を摘まんで扱けば、流斗の精液がぼくの胸にぱたぱたと散るまでさほどの時間もかからない。
幸せを散らす。
ぼくは流斗の口へ注ぎ込んだ精液を、流斗と昴星がキスで半分こする音を聴きながらそんなことを思った。
ぼくは間違いなく変態だし、存在自体が大問題をはらむ、ショタコンだ。
だけど、ぼくが居ることで誰かが不幸になることだけは避けたい。……そう思い続けて日々を生きている。
結果として、……陽介と瑞希はより深い絆で結ばれあった。そう思うのだけど、どうだろう。
昨日は、由利香に楽しい思いをさせてあげられた。
そして、もちろん、昴星にも流斗にも、幸せな思いでをあげられたはずだ。
だからぼくは生きている、そう思う。
そのために生きている、って。
予定の特急に乗って我が街に戻ってきたのが三時過ぎ。電車の中では(想像していたとおり)二人ともばたんきゅうの形で寝入り、駅に着いてどうにか昴星を起こしはしたものの流斗は起きる気配なし、そんな次第でおんぶをして一旦ぼくの部屋まで来て、流斗をあんまりに眠そうな昴星ともども横たえてお昼寝の時間。電車の中では二人ともオネショはしなかったけど、この分だと……、昴星はまず間違いなくしちゃうんだろうなあ、と思ったから、ハーフパンツは脱がせて、布団にはオネショシートを敷いた。
旅装を解いて、少しの間だけぼくもうたたねをした。目を覚ましたのは、流斗が起き上がるささやかな物音がしたからだ。
「あれ……、お兄ちゃんのおうち……?」
ずっと寝ていたから、瞬間移動したような心持ちがしたのだろう、ちょっとの間、ぼんやりとして、……それからすぐに、起き上がったぼくの膝に乗って「おつかれさま、お兄ちゃん」とほっぺたにキスをくれた。
「お兄ちゃんがおんぶしてくれたの? おもたくなかった?」
子供をおんぶすることには慣れていない、けれど、流斗の身体はびっくりするぐらい軽くて、ぼくの背中にフィットしていた。
「大丈夫だよ。……流斗も、たくさんがんばったね」
えへへ、と愛らしい笑顔をぼくに見せて、流斗はぎゅうとぼくに抱きついた。
「すっごくたのしかった。えっちなこと、いっぱいできて、うれしかったよ。お兄ちゃん、ありがとう」
起き抜けでも、昴星ほど早起きしたわけでもないから流斗は比較的回復している。壁の時計を見て、「まだ、時間だいじょぶだねー」と企みを秘めた笑みを浮かべた。
「また、したいの?」
うん、と素直に頷く。素直さは、それがどんなベクトルであってもうるわしいものだろう。
「起きたばっかりだから、オシッコしたいな。……きっとすごく黄色いのが出るよ」
言いながら、早くも立ち上がった流斗は半ズボンを下ろす。昼間、「山ゆりの湯」で穿き替えたパンツは、ウエストゴムと縫い目は紺色で、記事の白をぐっと引き締めて見せる。流斗は仰向け、ほとんど大の字になってシートの右半分を占める昴星の足の間に立って、「お兄ちゃん」とぼくを誘う。
「黄色いオシッコ、いっぱい出すからね、見ててね」
ほんのりとした清潔な膨らみの奥から、何のためらいもなくスムーズに液温が生じ、白い布にイラストを描き始めた。濃い匂いがじわじわと広がる染みと股下から滴る雨だれとともに漂う。
おいしそうだ、と素直に思う。だからぼくはそこに口を当てた。
「んん……、お兄ちゃんのえっちぃ……」
流斗の濃いオシッコが、ぼくの口の中を濯ぐ。さっぱりとしょっぱくて、爽やかに匂う。同時に流斗のおちんちんがブリーフの向こうからぼくの舌へ、硬さを届かせ始める。吸い上げるようにして味わってから改めてみ 見れば、乾けばさぞかし、と思わせる濃さの染みが前面に大きく広がり、その中央ではおちんちんの輪郭がくっきりと浮かび上がっていた。
「すごいね、本当に、真っ黄色だ」
「えへへ。だって起きていちばんのオシッコだもん。学校でオシッコの検査で出すのもこんなふうだよ。ぼくのオシッコおいしかった?」
もちろん、ぼくは頷く。濃厚な匂いと味と。まさしく「一番搾り」と呼ぶにふさわしい。
流斗はぺたんと膝で座ると、オシッコを口にしたぼくの唇に、平気で唇を重ねる。
「ほんとだ……、いつもよりしょっぱい。この味でお兄ちゃんがおちんちんかたくしてるって思うと、ぼくもどきどきする……」
いつもながら、天使みたいな笑みでそう言って、ちらり、昴星を振り返る。
「ね、お兄ちゃん、昴兄ちゃん、おちんちんだけ起きてる」
再び立ち上がった流斗の足の間から覗けば、確かに昴星のゴムの部分を含めてすべて白いブリーフの中央がぽっくりと膨らんでいる。硬くなって向きが変わるばかり、ほとんどサイズ的な変化を見せないとはいえ、勃起していることは明らかだ。
「きっと、もうすぐオネショしちゃうんだよ。ね、昴兄ちゃんのオネショするとこナイショでビデオにとっちゃおうよ」
流斗は何とも恐ろしいことを口にする。しかし、……六年生男子の、オネショの決定的瞬間……。ぼくはすぐにビデオを回し始めた。
一分ほど、ぼくも流斗も息を飲んで膨らみを凝視していた。昴星はぼうっと口を開けて、静かに寝ている。
わずかに、
「んんー……」
眉間に皺が寄って、寝言とも呼べないほど短く、昴星が唸った。
まるでそれがスイッチであったかのように、膨らみを中心に「しゅううう」と細道を水が駆け出す音が響き始めた。ブリーフの表面に、流斗同様、いや流斗以上に濃い色のオシッコが、噴水みたいに湧き出してどんどんと純白だったブリーフを濡らして行く。伴って、普段よりももっと濃い、いっそ強烈と言っていいほどのオシッコ臭さが部屋の中に立ち込め始めた。
「わあ……、すごい……」
感動したように流斗が呟く。昴星の盛大な放尿はブリーフをぐっしょり濡らしてもまだ続く。膀胱に溜め込んでいた大量のオシッコが出終えるまでには、たっぷり三十秒ほどの時間がかかった。
撮影されていることにも気付かず水溜りのにお尻を浸して眠る昴星は、全く起きる気配もない。やはり眠りがとても深いのだ。これではオネショが治らないことも頷ける。
おちんちんはびしょ濡れブリーフの中で落ち着きを取り戻していた。
流斗は手を伸ばして、窓から濡れたおちんちんをそっと引っ張り出す。摘まんでふるふると揺らしても、昴星は安らかな寝息を乱さない。
「……きっと、すごくいい夢見てるんだね。こんなにオシッコしたから、すっきりして……。昴兄ちゃん」
流斗が昴星の肩を揺すった。
少しうるさそうに唸って、……それからピクンと震えた昴星は恐る恐る目を開ける。ぼくは撮影を止めて、ビデオを脇に押しやった。
「うお……」
と自らの失態に気付いて、昴星はばつの悪そうな顔をする。けれど、自分がオネショシートの上に寝ていることに気付いて、ほっと安心したように息を吐き出した。
「おはよ、昴兄ちゃん」
「お、おお……、すげ、いっぱい出てる……」
昴星はすぐに、流斗のブリーフも同じように濡れていることに気づいた。
「おまえも、オネショしたの?」
「ううん、ぼくはオモラシ。お兄ちゃんに見てもらったんだよー。ほら、お尻のほうはそんなぬれてないでしょ?」
流斗は昴星にお尻を見せる。立ったままの失禁だったから、確かにお尻の方はさほど浸食されていない。一方で昴星は、前といい後ろといい、真っ黄色というかかすかに橙色にさえ見える染みで染め上げている。
「一日に二回もオネショしちゃったね、昴星」
ぼくが笑ってサラサラの髪を撫でると「だって、眠かったんだもん……」と唇を尖らせる。
「おにーさんだって、おれのオネショだまって見てたんだろ?」
「まあ、ね。流斗と二人で」
「ね、せっかくパンツびしょびしょにしたんだから、お兄ちゃんに気持ちよくしてもらおうよ」
流斗はそう言って、上を脱ぐ。昴星もすぐにそれに応えるようにパンツ一丁になった。
「お兄ちゃんも脱がないと、服にオシッコついちゃうよ」
言われて、ぼくもすぐに裸になった。二人がどんなことをしてくれるのかわからないけど、そうしなければいけないのは明らかだ。
「おにーさん、横になってよ」
昴星に従って、畳の上に仰向けになる。ぼくの視界はすぐに、フレッシュな尿の匂いの昴星のブリーフに覆われた。
「ひひ、もう立ってんの、おにーさんやっぱすげーヘンタイだなー」
嬉しそうにぼくを詰りながら、股間の縫い目でぼくの鼻と口を塞ぐ。極端に臭く、しょっぱく、しかし奥に甘さがある……。クラクラするような匂いと味だ。
「ぼくのもー」
と、流斗が胸に跨った。昴星の強い匂いの前では形無しだけど、それでもほんのり薫るのは、やっぱり強いオシッコの匂い、芯を感じられて、何となくこくがある。開けられたぼくの口めがけて、流斗が少量のオシッコを注ぎ込んで、口の中に再び甘やかな潮が満ちた。
「おれも、もうちょっと出るかな……」
代わって昴星がぼくの口の上でオモラシを始める。ほんのわずかだけど、それでもより強い味が舌の上に滴る。
「ん……、すごいね、二人とも……、本当にオシッコ、しょっぱい」
「ちんこもしょっぱいよ、だってオシッコに浸かってんだもん」
昴星が顔から下りて、ブリーフの窓からおちんちんを覗かせる。流斗も出したままだ。二人とも、徐々に角度を変え始めている。
「ね、お兄ちゃん、ぼくと昴兄ちゃんのおちんちん、二本いっしょにできる? 今朝のすごくえっちでどきどきしたから、またしてほしいな」
ぼくの口元におちんちんの先っぽを近付けて、流斗はそんなことを言う。
昴星も、流斗の真似をしていましがた二回目のオモラシをしたばかりのおちんちんを窓から取り出す。ぱたぱたとぼくの頬に温かい雫が散った。
「やってみようか?」
ぼくは起き上がり、二人の濡れたブリーフのお尻を両手に掴んで、長さも大きさも違う「二本」を正面から重ねさせた。興奮して斜め上を向いた二本を一度に愛撫しようと思うなら、それが一番好都合だ。
「んふぁ」
「んんっ……」
右に流斗のほそっこいおちんちん、左に昴星の短く丸いおちんちん、二人のオシッコの味が、より濃厚にこびりつく茎を一度に口に含むと舌の上でじわっと広がり、混ざり合う。ショタコンとしてこれ以上幸せなことがあるだろうか。一本だって貴重なおちんちんを、こんな風に二本同時に……、しかも二人とも、疑いなく美少年。
「んはぁ……、すげー、エロい……っ、流の、ちんこ、コリコリしてんの……」
「んん、おにいちゃんのひた、にゅるにゅるしてるの、きもちぃ……っ」
二人揃って快感を覚えてくれているなら、ぼくの幸せはもう一回り大きくなる。短い昴星の皮の隙間からはオシッコのより更に塩辛い汁が湧き出したし、流斗からはとろみの強さの割にまろやかな味の潮がもたらされる。二人が無意識のうちに腰を振ることで、ぼくの舌はもっとも敏感な粘膜に触れ、そこを小刻みに動かし、片方から漏れ出した腺液と、皮の中で熟成された残尿をもう片方にまとわせるように愛してあげるうちに、ぎゅ、と二人が強張るのを感じる。
「あんっ」
「んあっ、おにぃさっ……」
ぼくは二人のオモラシパンツのお尻に、同時に手を回した。そうしてあげることが二人の幸せだと思い出したからだ。……自らの、恥ずかしい失敗の証拠をぼくの手のひらによってより強く感じさせる。
「あっ、あ……、おにーさっ、でるっせーしっでるっ、でるぅ」
「ぼ、くもっ、おちんちんいっちゃうぅっ」
昴星のむっちりやわらかなお尻と、流斗の小ぶりなお尻、どちらもが、きゅうっと引き締まった。粘膜をこすり合わせながら、二人がぼくの舌に最も甘美な蜜を漏らし、ぼくはそれを、可能な限り零さず飲み込むだけ。
「んはぁあ……」
ぺたん、と流斗が窓から覗かせたおちんちんを見せびらかすように足を開いて尻もちをついた。昴星も、ひくひく震えながら足をしどけなく広げて畳にお尻を落とす。
この二日間(流斗は三日間)で一体何度目の射精になることやら。しかし、幼い性欲は尽きることを知らないし、彼ら自身のオシッコによっていくらでも再興するのだ。
じっくりと味わってから、二人分を飲み込む。ふと自分の性器を見下ろせば、……ぼくもまだまだ若いのだという自覚を抱くに至る。
「昴兄ちゃん、お兄ちゃんのおちんちん……」
「うわ……、すっげええ……、超勃起してる、アンド濡れてる……」
二人に口々にそう評されると、なんだか気恥ずかしい。……だって、ねえ。可愛い二人を嗅いで味わってってしてたら、こうなるに決まってる。
「すっごいおいしそう……。ね、昴兄ちゃん、おつゆ、半分こしよ」
流斗が誘う。昴星もすぐにとなりに座って、ぼくのに触れて、すんすんと嗅いだ。
「すげー……、エロいにおい」
流斗も、それを真似する。
「ん……、ぼく、このにおい大好き。お兄ちゃんのおちんちんのにおい……」
うっとりと呟いて、……二人揃って、ぼくの亀頭の先端に浮かんだ露に、舌を伸ばした。二人の舌に包まれて、ぼくのペニスは快楽に震える。
「ふぁ……、すっげ……、おいひぃ……」
「んぅ……」
幼い性欲が枯れることってあるんだろうか。足元で二人のおちんちんはまだまだ元気いっぱい。でもぼくのだってそうだ。この二人がいてくれるなら、ぼくだって枯れることなんてないように思う。
そんなことを思いながら二人の舌先の愛撫を愉しんでいると、ふと思いついたように流斗が、「昴兄ちゃん」と耳元で何か囁く。
「……ん?」
「だからね……」
流斗の提案に、少し昴星が考え込む。「えー……、そんなのおにーさん嬉しいかなー……」と首を傾げる。また何か流斗が、一般的には「ろくでもない」と言われ、だけどぼくには嬉しく思えることを考え付いたに違いない。
黙って立っているぼくの前で、流斗が立ち上がった。すぐに昴星もそれに倣う。そして二人して、濃厚なオシッコを吸い込んでまだびしょ濡れのブリーフを少し苦労して脱ぐ。
「お兄ちゃん、ぼくたちのオモラシパンツ、好きだよね?」
そりゃあ、もちろん。二人から貰ったブリーフの枚数はもう数え切れないほどになっているけれど、そのブリーフを使ってぼくがオナニーした回数はそれ以上に計り知れない。
「いっつもぼくたちのパンツでえっちなことしてるのの、ほんもの、させてあげる」
「本物……? って」
ぴちゃ、と不意にペニスが冷たくなった。何かと思ってみれば、流斗がぼくの亀頭にびちょびちょのブリーフを被せているのだ。
「ほら、昴兄ちゃんも」
「ん。こうか?」
「ちょ、ちょっと……」
二枚目。
ぼくの陰茎をまるで物干し竿代わりにでもするように、二人はそれぞれのブリーフを引っ掛けた。流斗はにこにこ微笑んで、昴星は口をぽかんと開けて。
「すげー……、おにーさんのちんこ、パンツ二枚かけても全然平気なんだなー。重たくない?」
「まあ……、それは平気だけど……」
「どんなきもち?」
流斗が両手でブリーフの上からぼくのペニスを包み込むようにして、訊く。
「ぼくと昴兄ちゃんのオシッコでお兄ちゃんのおちんちん、びちょびちょになってるんだよ?」
そう、考えると……、
「……ドキドキ、するよ」
他の誰かの汚れブリーフだったら悲鳴を上げて振り払うような状況ではある。
けれど、大好きな二人のものなのだ。鼻に届く匂いも、冷たい感触も、全部二人がぼくのためにくれるものなのだ……。
「おちんちんも『うれしい』って言ってるね。お兄ちゃんがうれしいなら、ぼくたちもうれしいよ。ね? 昴兄ちゃん」
「んー。考えてみたらおにーさんいっつもおれらのオシッコついたパンツでオナニーしてんだもんな。そんとき、こんな風にさ、おにーさんのちんこがビクビクしてんだなーって思うと、やっぱうれしいや」
昴星もにぃと笑って、ぼくの砲身に手を当てた。
「お兄ちゃん、一人のときはどんなふうにぼくたちのパンツつかうの?」
「どんな、風にって……」
「やっぱり匂い嗅いだりすんだろ」
「……それは、まあ……」
「へえぇ。ぼくも昴兄ちゃんにもらったパンツでおちんちんいじるとき、においかぐよ。あと、穿いたままオモラシして、昴兄ちゃんのオシッコとぼくのオシッコいっしょになってるきもちになって、パンツの中でせーしも出しちゃったこともあるよ。昴兄ちゃんのパンツの中できもちよくなっちゃうの」
「おにーさんはそういうこともすんの?」
質問攻めだ。自分のペニスを物干し竿にしながら。
「……あり、ます」
「へー。じゃー、おれのパンツに射精したの?」
「……昴星の、にも、流斗のにも……」
そうなのだ。いまさら自分の変態性を隠したところでどうなるもんでもないだろうから、白状する。
いまぼくのペニスに引っ掛かっているような、昴星と流斗の、オモラシの証拠がくっきり付いたブリーフ。そういうものが、ぼくの押し入れの中にはたくさんあるわけだ。それらはとてもかけがえのないものではあるのだけど、……一枚や二枚ぐらいなら、汚してしまったっていいだろう、と魔が差すときがあるわけで。
自分の砲身の上からブリーフを被せて、二人の黄色い染みに射精したことがある。
とても罪深いことのように思えて、絶対的に後悔する。しかしその一方で無垢な二人のブリーフに射精するという行為は、二人の下着を深い意味で穢すことのように思えて、どうしようもなく興奮を催してしまうのだ。
「ね、お兄ちゃん、そういうパンツ、どうするの? すてちゃうの?」
ぼくは首を振った。自分の精液が付いたものだから汚い、とは思う。しかし、二人の心づくしの贈り物を無碍に扱うわけには行かず、……結局元の通りジップ付きバッグに入れて、汚れていない二人のオモラシパンツとは別の場所に眠らせてあるのだ。
「どこ?」
流斗は早速押し入れを覗きこむ。自分たちのオモラシブリーフが何処に補完されているかということはもう知っていて、その場所を開いて覗き込む。そこは昴星の段。
「……そこじゃなくて、……一番下だよ」
流斗が背中を丸めて覗き込む。足も開いているせいで、ピンク色のアナルが丸見えだ。思わずピクンと弾ませてしまったぼくの物干し竿を見て、「おにーさん、ほんとにヘンタイだ」と昴星が笑った。
「あ、あった。これかな?」
流斗が二袋見つけて戻ってきた。「こっちが昴兄ちゃんので、ぼくのはこっちだね」と、それぞれを開く。昴星の手には昴星の、流斗の手には流斗の。早速引っ繰り返して内側を見た昴星が、「うお、ほんとだ、パリパリになってる」と黄ばみの中心で受け止められたぼくの精液を見て、驚いたような声を上げる。
「これ、アマネくんと会ったときのだ。なつかしいなー、あんときまだ暑かったよな」
「ぼくのは昴兄ちゃんと三人でサクラちゃんの水着着たときのだね。すごいねえ、まだオシッコのにおい、こんなにするんだぁ……。でもせーしの匂いはあんまりしないね」
「だって、せーしはもともとそんな臭くねーじゃん」
「あ、そっか……。でも、やっぱりドキドキするよ。ぼくのオシッコのにおいだけど、お兄ちゃんがここにせーしだしてくれたんだなあって思うと、おちんちんまたおっきくなっちゃう……」
あ、と。流斗が呟く。そういう顔をするときは、何かを思いついたときと相場が決まっている。
「いいこと考えちゃった。ぼくもお兄ちゃんみたくパンツにせーしだしちゃおうっと」
「ん? パンツに?」
「うん。お兄ちゃん、きもちよくなるのちょびっとだけ後になっちゃうけど、待っててね? ちゃんとせーしいっぱいださせてあげるから」
首を傾げる昴星に、流斗は「物干し竿」から抜き出した彼のブリーフを渡し、自分のものを今までぼくにしていたみたいに、おちんちんに引っ掛ける。もちろん、ぼくのように穴で通して引っ掛けるということは出来ないけれど。
「オシッコも、ちょびっとだけど……」
そう、いきんで、乾き始めていたフロントに雫を浮かべてシートの上に垂らしてから、ブリーフごと右手でおちんちんを扱き始めた。
「んふ……、ん、お兄ちゃん……の」
「うぇ……」
昴星が呆れたような顔になる。すごいすごいとは思っていたけれど、本当にすごいなとぼくも、感心……、ではないけれど、改めて驚かされる。だってこの子、……ぼくの精液でオナニーしてるんだ、っていうか、自分のオモラシパンツの匂いを嗅ぎながら。
ちろ、と昴星に目をやって、「昴兄ちゃんも、しなきゃダメ」と命じる。
「えーでも……、おまえのはそんな臭くねーかもしんねーけどさ……」
昴星はいかにも汚いものだということを自覚するように、ウエストゴムを摘んで自分のブリーフを見る。
「おれの、すげーくせーし……」
時が経てばそれだけ匂いは減っていくものだけれど、昴星のそれは相変わらず大したものだという形容以外思いつかないような臭いを発している。気合を入れておかないと、ぼくだってちょっと、クラッとくるぐらいの。
「ぼく、どんなのだってへいきだもん、お兄ちゃんがドキドキしてくれるためだったら、どんなえっちなことだってできるよぉ……」
おちんちんを音を立てて扱きながら、流斗は言う。ぼくのペニスが一つ脈打ったのを、昴星は見たのだろう。
「それにね……、ぼくの、このオシッコのにおいでお兄ちゃんがいっぱいえっちなことしてくれたんだって思うと……、ぼくにとってもえっちなにおいだもん……」
流斗は、「ね?」とぼくの顔の前にブリーフをぶら下げる。。……鼻に届く匂いは、確かにぼくにとっては魅力的過ぎるものだ。ぼくのペニスの震えを見た昴星が、言い掛けた言葉を止めて、流斗と同じようにした。より強い匂いを贈られて、ぼくはもちろん、同様の反応を示す。
「おにーさん、おれのオシッコのにおい、好き?」
今更の問いだ、これまでだって何度だって、そう言ってきた。
だけど答えを惜しむようなことはしない。「好きだよ」とぼくは答える。
昴星は一つ頷き、納得したようにおちんちんに手を伸ばす。そしてややおそるおそるの趣ではあるけれど、濃密な尿臭を放つ自分のブリーフを、そっと顔に近付けた。
昴星自身、一瞬身を強張らせてしまうぐらいの臭い。
しかし昴星はおちんちんを掴んだ右手を動かしながら、「おにーさんの、好きなにおい……っ、おれの、オシッコの……っ」うわごとのように呟きながら、火の付いてしまった身体を解放するためのオナニーを始めた。
「はうぅんっ……!」
流斗の身体がびりびりと震える。同時に流斗はぼくのペニスにおちんちんの先っぽをくっつけて、鼓動を教えるようにそこを脈打たせて、ぼくの性器にたっぷりと精液を放つ。生温かい少年の愛の蜜を浴びて、ぼくのペニスはいっそう盛り立つ。
「え、へへ……、おにーちゃんに、せーしかけちゃった……、すっごい、おにいちゃんのおちんちんえっち……」
ねっころがって、と流斗はぼくにねだった。言うとおりにすると、流斗はすぐにぼくの顔を跨いでお尻の穴を見せびらかしながら、少年自身の精液に塗れたぼくのペニスを湿ったブリーフで包み込む。
そして布の上から両手を動かし始めた。
「どう……? お兄ちゃん、ぼくのオシッコとせーしと、きいろいパンツでおちんちんこするの、きもちいい?」
言うまでもなく、精液は濡れた布の内側でぬるつく。柔らかなブリーフの生地はその粘液で滑り、擦れる。気持ちいい、と同時に、新鮮な感覚である。
「うん……」
尋常ではない、と今更のように思う。だって、そりゃ普段から男の子のパンツでオナニーするのだってさ、常軌を逸した変態性だということは判ってるけど、こんな風に、そのパンツを穿いてた少年自身の手によって……。
「えへへ、お兄ちゃんのおちんちんでパンツあったかくなってきちゃったよぉ……?」
流斗は自分のブリーフを被せたぼくのペニスを撫ぜる手を時折緩めて反応を愉しんでいる。もちろん少年はぼくが目の前にある小さな穴を見ても興奮するのだということは判っているに違いない。肛門がきゅう、きゅう、動くのは流斗が意識して見せているのだとは判るけれど、その巧んだ趣向がぼくをどんどん苦しくしていく。
「りゅっ……」
絞られるようにブリーフの締め付けがきつくなった。ぼくが流斗の細い太腿の間から見るのは、黄色く濡れたブリーフごと、流斗がぼくのペニスを口に含んでいる顎の下だ。
「んふぅ……ン」
じゅっ、と吸われる感触、当然、流斗の口には少年自身の尿と精液の味も大いに這入るはずで。
でも、流斗はぼくを覗いて唇をぺろっと舐めて微笑む。
「早く、出して、お兄ちゃん。ぼくのパンツ、お兄ちゃんのせーしでべとべとにして?」
どうしたらその歳でそんな妖艶に微笑むことが出来る。
流斗、という存在自体、ぼくが計り知れると思うことが間違いだ。天使って超人的なものだろう、元々。
「っんッ……」
「あはっ、お兄ちゃんのせーし出てる、ぼくのパンツの中でいっぱい……」
腰が痺れた。ぼくは自分の性器が流斗のブリーフに包まれたまま何度も何度もバウンドするのを途方もない快楽と共に覚えるだけだ。流斗はしばらくぼくの精液を自分のブリーフの中で行き詰まらせてから、ゆっくりと其れを外す。
「ほら、お兄ちゃん、ぼくのパンツの中にこんないっぱい出てるよ?」
「あ……、ああ……」
引っ繰り返して裏の晒されたブリーフ、確かに股間の部分には流斗が出したものよりもどうやら量の多い精液がべっとり。
「えへへ、うれしいな、お兄ちゃんとぼくのせーし、いっしょになったの。このパンツだけは持ってかえっていい? ぼくもひとりのときにこのパンツつかっておちんちんきもちよくなりたいな」
ああ、もう、そんなもので悦んでくれるなら、ぼくが止める理由は何一つないだろう。
「昴兄ちゃんも、準備できた?」
流斗のくれる視界と快楽だけに酔い痴れていたものだから、ぼくは昴星が射精したことに気付かなかった。ぺたんと畳にお尻を落として、自分のおちんちんにブリーフを被せたままぼうっとしていた昴星が「ふぁ」と顔を上げた。
「ちょ、ちょっと待って流斗、その、ぼくも昴星もいったばっかりだし……」
流斗はひょいとぼくの身体から下りて、「だいじょぶだよ。ね? 昴兄ちゃんもパンツにお兄ちゃんのせーし欲しいでしょ? お兄ちゃんだって昴兄ちゃんのパンツでしこしこされたらきっとすぐ気持ちよくなっちゃうし」
流斗はひょいと昴星の手からブリーフを奪い、
「ほらお兄ちゃん、昴兄ちゃんもこんなたくさん出しちゃった。昴兄ちゃんがオシッコもせーしもオモラシしたパンツで、これから気持ちよくなるんだよ?」
内側をぼくに見せながら言う。
「あは、お兄ちゃんのおちんちん、やっぱり元気なままだねえ。昴兄ちゃんのオシッコすごくくさいもんねぇ」
「く、くさいって言うなよ……」
昴星はそう抗弁するが、事実としてそうなのだ。そしてその強い匂いに呼応するようにぼくが勢いを抑えられないもまた「事実」である。
流斗は昴星の精液が付着した部分を先端に宛がう前に、「ぼくの、きれいにするね。昴兄ちゃんのせーしだけのほうが、昴兄ちゃんもお兄ちゃんもうれしいよね」ぼくの足の間に座り、其処にまとわり付いたぼくと流斗の精液を丁寧に舐め取る。……そんなことされたら、やっぱりすぐ態勢は整ってしまうじゃないか。
「はい、昴兄ちゃん、準備できたよ。昴兄ちゃんもお兄ちゃんのせーしいっぱいもらおう?」
流斗はご丁寧に昴星のブリーフをぼくに被せて、場所を譲る。
昴星はほんのり紅い頬をして、「……わ、わかったよ」と頷いて、
「おにーさん……、そのまんま寝てて。おれ、……流とは違うやり方でする……、っていうか、やっぱおれのオシッコ、くせーし……」
しゃぶるのには、抵抗がある。それは仕方がない。
「でも、さっき昴兄ちゃん自分のオモラシパンツでおちんちんきもちよくなったのに」
「それはっ……、さっきは、さっきだろ、いまは……、やっぱくさいの!」
じゃあ、どうするの? 訊いた流斗に、昴星はむっつりと黙ったまま、向かい合わせにぼくの腰を跨ぐ。
膝で身体を支えて、そのままぼくのペニスに降りるのは、昴星の足の間、もっと具体的に言うなら、お尻の窪みだ。
「流が、……おにーさんにお尻の穴、見せてたから、おれ……、お尻のかわりに、おにーさんにちんこ見せる。おにーさんおれたちのちんこ好きだろ? だから……」
言いながら、もう昴星の腰は前後に動き始めている。
「わぁ……」
流斗が感心したように溜め息混じりの声を漏らした。……お尻の穴でぼくと昴星がつながっていることは、流斗にはナイショだ。だからそうするわけには行かない、その代わりに……。
それにしても昴星、お尻して欲しかったのか。
「ん、……ッン、……はぁ……あん……」
ゆらり、ゆらり、ぎこちなく腰を動かし、お尻の穴を引き締めながらブリーフの布をぼくの亀頭に擦り付ける。手と口でしてくれた流斗の器用さと比べてはいけないけれど、その分、昴星の淫らな腰振りと、昴星の目論見通りぼくの「大好き」なおちんちんがふわりふわりと揺れる様を見ることが出来るのは、着実にぼくの中へ力を蓄積させていく。
「おに、さん、……きもちぃ? ちゃんと、気持ちよく、なってる……?」
昴星は? と効き返さなくても、見れば判る。
「気持ちいいよ。……昴星、すごくえっちだ」
「ん……ひひ、よかった……」
きちんとぼくが贈り物を受け取っていることが判ったからだろう、昴星はずっと勃起したまま触らずにいたおちんちんを、きゅっと摘んで控え目に動かし始めた。途端、ヒクヒクと肛門が蠢いたのがブリーフ越しに伝わってくる。
「昴兄ちゃん、お尻きもちいいの?」
流斗がさっきみたいにぼくの顔を跨いで訊く。
「ん……、きもちぃ……っ」
「昴兄ちゃんもお尻好きなんだね。ぼくもお尻好きだよ」
ぼくを見下ろして、「お兄ちゃんにもぼくのお尻好きになってもらえたらうれしいな。……きゅー」また、肛門を窄めて見せる。流斗のお尻だって大好きだ、昴星のだって。お尻が嫌いな男なんていないはずだ。好きな子が黄ばませたパンツを汚く思う男がいないように。
「あとで、ぼくのお尻にイタズラしてね?」
流斗はそう言ってから、ぼくの顔から下りた。昴星はちくちくと泡を立てながら肛門を擦り付けることで、ぼくと「つながっている」感触を愉しんでいたが、
「ふぁ……っ、や、べ、これ……っ、おれ、もういっちゃいそう……」
摘んだ右の指を引き剥がすように左手で掴んで胸元に当てる。おちんちんの震えは切なさをそのまま表現していた。
「あ、あっ、お尻っ……すっげぇ、すっげぇきもちぃっ……」
指の外された短茎が、腰振りと連動してぴこぴこと上下に動き、時折ぼくの下腹部に当たる。
限界を告げる代わりに、
「あ、やっ、やぁっ、おにぃさっ、ダメっダメだよっ」
弾んで揺れるその茎を、ぼくは摘んだ。びりびりと、電気が走る。指を当てていたぼくも一緒に感電する。
「うぁっ、あっ……はっ、はぁっ……、はあぁ……、あぁ……」
昴星が背を反らして、ぼくの胸に少量の精液を零す。そのままバランスを崩して重なる身体を、ぼくはどうにか支えて、「ありがとう」と息を震わせて囁く。昴星はこくんと頷いて、ぼくの頬にキスをくれた。連続の射精でさすがに気だるく、……はたしてまだ続く時間に身体がもつかどうか、ちょっと心配になってきた。流斗のお尻にも「イタズラ」しなきゃいけないわけだ。
その流斗が、「あー」と昴星のお尻の下、まだぼくのペニスに被さったままのブリーフを見て声を上げた。
「……どう、したの?」
ぼくは昴星を身に乗せたままだから、流斗が何を見たのかは判らない。ただ、ブリーフを退かした流斗を振り返った昴星が、弟分の摘み上げたものを目にした途端、
「げっ」
そんな声を出した。
「いけないんだぁ、昴兄ちゃん、パンツこんなによごしちゃってるの」
「ばっ、バカ、あんま見んな!」
「ほらほら、お兄ちゃん、昴兄ちゃんいけないんだよー」
「みっ、見ちゃダメっ、ダメだったら!」
昴星は真っ赤になって流斗から自分の下着を取り戻そうと手を伸ばした。しかし、結局ぼくの目には其れが飛び込んできてしまった。
「……パンツ、前後ろ逆に穿いたみたいになってるね」
「前と後ろだけじゃなくって、表とうらもさかさまだよ」
あ、そうか、確かに。
「だ、だ、だって、しょうがねーだろっ、こんなん、するなんて思ってなかったしっ……」
昴星が自分の肛門を何度も何度も、何度も何度も何度も擦り付けていた部分は、失禁したブリーフだからもちろん黄色く汚れているわけだけど、縦にアクセントラインまで追加されている。
「ううう……」
ブリーフの前はどんなに黄ばませようとも、後ろというか足の間というかはいつもあまり汚さない昴星である。オモラシが恥ずかしくないのにどうしてそんなことが恥ずかしいのと考えると不思議な気がしないではない。でも、意図的にかそうではないかという差だと思えば、納得も出来る。
「はい、昴兄ちゃん。……お外はこんなだけど、中はちゃんとお兄ちゃんのせーしついてるから、ちゃんと持って帰ってね?」
「……ん、なのっ……」
「あれー? いらないの? ならぼくもらっちゃおうかな、お兄ちゃんのせーしついてるのうれしいし、昴兄ちゃんの恥ずかしいのもうれしいし」
「い、いいっ、自分で持って帰るっ」
もっとも、昴星としては扱いに困る荷物だろう。だって自分のオシッコの匂い、うんちの汚れ……。いくらぼくの精液の汚れが欲しくてしたにしても、考えてみれば流斗のように自分の汚れブリーフに顔を埋めてオナニーをするようなことはないだろう。
そもそも、して欲しいときには才斗に頼めばいいし、家が近所なのだからぼくのところへ来たっていい。
「お風呂に入ろうか。二人ともオモラシしちゃったし、ぼくも割りと身体ベタベタだ。温泉ほど広くはないけど……」
「うん」
「いいよ」
もとよりすっぽんぽんでいるのだから、お湯さえ溜めればいつでもこのまま入れる。二人がタオルを支度している間、ぼくは浴槽に湯を溜め始める音を聴いて、……ああ、我が家に帰って来たなあ、そんな感慨を抱く。旅館の部屋風呂や露天風呂、「山ゆりの湯」とは比べ物にならないほど狭い、月六万、決して新しくもないアパートの浴室。一応こまめに掃除しているからタイルの目地にカビが生えてるとか、排水溝に髪の毛が詰まってるとか、そういう醜さはないのだけれど。
「たまった?」
昴星と流斗が覗きに来た。
「そんなすぐには溜まらないよ」
二人とも、すっぽんぽん、ぼくもだから、お風呂には相応しい格好である。西日が差し込む中を、どどどどと音を立ててお湯が湯気をきらきら漂わせる。
「お兄ちゃんの背中、ぼく、洗ってあげたいな」
「おれも。でもってさ、おにーさんはおれらのちんこきれいにしてよ」
それは、もちろんそうしてあげなくちゃ。だってこの二日間、本当にたくさんいじらせてもらったし、オシッコの中に溺れさせたコトだって何回あったことやら。責任を持ってぼくがその場所の衛生を護らなくてはならない。もし洗っているときに、恐らくこの三日間で最後の「機会」が訪れたとしたなら、それについてもぼくは責任を取る。
「わかった、二人のことはちゃんとぼくがきれいにしてあげるし、ぼくは二人にきれいにしてもらおう」
二人の少年が顔を見合わせて微笑んだ。
「じゃあ、お兄ちゃんにきれいにしてもらうまえに」
流斗が浴槽の鏡の前、排水口に向けて細身のおちんちんを突き出す。
「まだ出るの? そんなに水飲んだわけじゃないよね?」
「うん。あのね、ぼくね、お兄ちゃんといっしょのときは、お腹の中のスイッチがはいって、いっぱいオシッコできるのかもしれないよ。三日間ずっといっしょだったから、おちんちんがお兄ちゃんにうれしいようになったのかも」
そんなはずがあるわけないのだけど、本当にそうなんじゃないか……、実際、そうだとしたらぼくも素敵だと思う。
「おれも」
昴星も並んで短く小さくコロンとしたおちんちんを突き出した。
「おれは、まー、わりと普段からよく出るし。でも、オネショ治んないのとかもさ、おにーさんが喜んでくれんなら、悪くねーなって思う」
意図せざる放尿は、その学年を考えたならそろそろ卒業したっていいとは思う。けれどついさっきにしたって、少年のオネショする瞬間をリアルで見ることが出来たわけだから、……まあ、昴星に任せることにする。
「流、出る?」
「ん、いっしょに出そ?」
昴星と流斗が手を繋ぐ。鏡に映った二人の、愛くるしいとしか言いようのない小さな包茎から、揃って薄黄色のオシッコが滴り始めた。すぐにはっきりとした勢いを持って、匂いとともに注がれていく。
ああ、もう、何度目だろうこれを見るのは。
しかし、何度見たって見飽きないんだ。元々可愛い昴星と流斗、オシッコをしているだけでもっと可愛くなる。その姿を惜しむことなくぼくに見せてくれるという時点で、限界は易々と突破する。
確かにこの浴室は狭ッ苦しい。けれど、ぼくがこの二人と一緒に居られるというだけで、どんなに豪華な温泉旅館を凌駕する。二人が一緒に居てくれるなら、背景なんてどんなであっても構わない。
「ん、すっきりした」
先に放尿を終えた流斗が、おちんちんを振らずに振り返った。白い皮の先にあって、黄色いことがすぐ判る雫がきらりと光る。
「ね、お兄ちゃん、きれいにして?」
「おれも、ぜんぶ出た」
昴星も振り返る。指で摘んで、皮を剥いて中を見せる。ほんの少し垢の付いた亀頭はもちろん濡れている。流斗もすぐそれを真似した。まだピンク色にすらなっていない粘膜、この三日間でたくさんのオシッコと精液をぼくに嗅がせ、味わわせてくれた尿道口を潤ませているさまを、見せてくれる。
腰掛に座って、両手に二人のものを触れる。まだ、ぷにぷにと柔らかい。それぞれ鼻を寄せる。流斗のは、何だかこれはすごくいい匂いなんじゃないかと思うほど優しいオシッコの匂い。昴星のは、顔を近づけただけでツンと鼻の奥を衝く、尖った潮っぱい臭い。出したばかりのものと皮の中に溜まっていたものとが交じり合って、昴星にしか発揮出来ないような臭いと言っていい。
けれども、どっちがいいということではない。
どっちもいい、んだ。
「ひひ、おにーさんもうちんこでかくしてんの」
「ほんとだぁ……、お兄ちゃんの、おいしそう」
やっぱりこうなる、わかっていた。けれど後悔なんてあるはずがない。流斗がさっき言って、昴星が同意したように、ぼくも同意しよう、……二人が居ればぼくの精液だって枯れることはない。
「ひゃんっ……」
流斗の、まろやかな味のオシッコを、細くて吸いやすいおちんちんを。
「ふぁあ……!」
昴星の、塩味が濃くて刺激的な臭いのオシッコを、ペコロスみたいに丸っこいおちんちんを。
順に口に含み、それぞれを吸い上げ、「きれい」にする。二人がこれから同じようにぼくを「きれい」にしてくれる頃には、お風呂のお湯も溢れてしまうかもしれない。
ぼくたちはこの幸せな三日間のピリオドを、もう少し先延ばしにすることに決めた。