おにーさんだからこんなとこ見せるんだからな
-鮒原昴星取扱説明書(土)-

 ぼくの手元に「鮒原昴星取扱説明書」なる文書がある。

 手渡された封筒から取り出したA4の紙に、明朝体の几帳面な文字で打たれた三枚綴りのそれはビジネス文書のようにも思われるが、才斗が、つまり小学六年生の少年が作成したものだ。誰よりも深く昴星のことを知る「恋人」であるからして、その取り扱いに関しても当然ながら誰より詳しいのだということは、なるほど間違いない。

「えーと、……これは?」

「わかんね。才斗がおにーさんに読んでもらえってさ。何書いてあんの?」

 一行目に「鮒原昴星閲覧禁止」と太字で書かれていることに気付き、慌ててぼくは覗き込もうとする昴星からそれを庇う。「……ぼく宛ての手紙だからね」と言えば、少し不満そうながら納得して、ぼくの部屋に来る途中の自販機で買ったらしいジュースをぐびりと飲む。

 こういう特殊な少年の取り扱い説明書である。才斗がどのような気持ちでこれを打ち込んだかは、想像するに余りある。可哀想なことをしているなとも思う反面、読み進めて行って辿り着いた「昴星があなたのご迷惑にならないように」という文言に、何とも言えない気持ちになる。才斗は自分の恋人の性状をよく理解しているがゆえに、この子を腕の中に独り占めしておくことなど到底叶わないのだということも判ってしまうのだ。

情報としては、いままで昴星についてぼくが学んできたことに大きく補足する要素というのが一点あった。

「(4)昴星の性癖について、昴星自身の考え方」という項に、それは書かれていた。

 曰く、昴星は「本質的にはオモラシという行為を恥ずかしいと考えて」いる。流斗が極めて積極的に恥ずかしい思いを、それこそどこでも平気でおちんちんを見せびらかすようなことをするのに対し、「二年生のとき、教室でオモラシをして恥をかいたことがあるため、今でも自分がオネショをすることは絶対に秘密」であり、「同じ学校の人間には決して知られてはいけないということは理解している」のだということ。

 しかしその項に併せて書かれているのは、「昴星はマゾヒストであり、流斗が失禁を見られることによって快感を味わうのを傍で見ながら、自分も同じ思いをすることを望む気持ちがあるのではないか」という才斗の仮説である。もちろん同じ学校の誰かに見られる訳には行かないながら、「屋外(城址公園など)での行為の際には、昴星は室内に比べて興奮の度合いが激しくなる」のだと言う。

 流斗が既に、恐らくは極めて楽々と飛び越してしまった「誰かに見られちゃったらどうしよう」という部分に対し、かつて教室での意図せざるオモラシによって恥を味わった昴星は正常な羞恥心、或いは恐怖がある。しかし、いかにしてそれを実現するかということを、きっと昴星は考え続けているのだ。……そうだ、とぼくは思い出す。初めて昴星と出会ったあの夜だって、昴星はあの公園の何処かでオモラシをしていたのではなかったか。危険を冒してしか手に入れられない悦びのために。

「この点についてはいま少しの観察と検討が必要」であると才斗は言っている。同時に「鮒原昴星の取扱については」才斗自身にも「一筋縄で行ったためしがなく、今後は協力をお願いする可能性」を捨てさせないということだが、さて……。

「昴星、……才斗って学校で勉強よくできる方だよね?」

 待ちくたびれて携帯電話を弄っていた昴星は目を丸くして、「んー? そうだよ、クラスで一番か二番くらいに頭いいよ」と答える。特殊な、……昴星のような少年と嗜好を合致させるにしても、少年自身は極めて優秀な人格者なのである。ルックスもいいし、さぞかし女の子にも人気があることと思われる。

 よく考えて見ると、容姿が良くて社交的な性格なのは昴星にも流斗にも共通している要素だ。ひょっとして、美し過ぎる少年たちはみんな何らかの、妙な性癖を隠し持っていたりして。……もしそうならこの世は意外と素敵なつくりなのかもしれない。

「なー、おにーさん先週つまんなかった?」

 昴星は断りもなくぼくのあぐらの上に向かい合わせに座って顔を覗き込む。

「そりゃあ、退屈だったよ」

 隠す必要もない、ぼくは素直に頷いた。先週は昴星が才斗との約束があって来られなかった。流斗も、そう毎週末昴星たちに会いに来られる訳でもなくて、ぼくは昴星と出会って以来初めて、一人きりで土日を過ごすこととなった。一人では、部屋の掃除や洗濯をするにしても暇を持て余して、結局二人のこれまで撮らせてくれたムービーや、置いて行ってくれたブリーフなどで何度もオナニーをして、寂しく疲れたばかりだった。

「じゃーさ、今日おれに会えんの、嬉しい?」

「そりゃあ、もちろん。一昨日ぐらいからずっと楽しみにしてたよ」

 そっかー、と昴星は嬉しそうに笑い、ぼくにぎゅっと抱き着く。二週間ぶりの昴星の匂いが、体温が、心を柔らかく温めてくれるのを感じる。

「じゃー、今日もいっぱいえっちなことすんの?」

「うん……、そうだね。昴星のこと、ぼくができる範囲でたくさん気持ちよくしてあげられたらいいなって思うよ」

 昴星にキスを強請られた。まだ唇を触れあわせるだけの、でも、友情の篭ったキス。

 ぼくは才斗から貰った文書の中身を反芻しつつ、今日のために用意していたものが昴星の願いを間接的にせよ叶えることが出来るかもしれないと考えを巡らせていた。

「今日はさ、……昴星にして欲しい格好があるんだけど」

 まだ何も知らない昴星はひひひと笑って「いいよー、どんなの?」と立ち上がる。

 ぼくは押入れから昨日の帰り、ドラッグストアに立ち寄って何食わぬ顔で購入したものを取り出す。

「これなんだけど」

「これ、……って」

 怪訝そうな顔でそれを見詰めて、「……ひょっとして、……ひょっとしなくても、オムツ?」

 ご名答。

 世の中には、小学校高学年でもオネショが治らない昴星や遍のような少年少女が少ないながらも存在し、そういった子どもを持つ親は常に対策に頭を悩ませている。結果として、もう大きい子のためのオムツがこうして販売されているのである。

「ズボンの下にこれを着けて、ぼくとデートして欲しいんだ」

 昴星のことだ、ぼくに会うための下準備として、たっぷりの水分をお腹の中に蓄えて、何度でもオモラシが出来るようにして来てくれているはずだ。

「デート……、デートって……、外でオモラシすんの?」

 嫌がられるだろうか。

 いや、才斗の分析に基づくならば、昴星が嫌がるとは考えづらい。

 けれど、ぼくと昴星との、そして才斗との約束は、

「……昴星が嫌ならやめようか。家の中でしてくれるところを見せてもらえるだけでぼくは嬉しいし」

 この子と問題のある関係を結んでしまっている以上は、ぼくの存在がこの子の負担になることは絶対にないように、と。

「えー……? 外って、……人の見てるとこってことだろー?」

 昴星は、もうオシッコがしたくて仕方ないに違いない。だから足元は落ち着かない。「周りにバレちゃったりしたらおれ、困るよ……」

「その点は問題ないと思うよ。何なら、ここを出る前に試してみてもいい」

 パッケージには「新素材で消臭効果アップ!」と書かれている。「超吸収ポリマー」という、何だか必殺技みたいなことも。

「考えたんだけどね」

 ぼくは出来る限り優しく微笑んで言った。「昴星のパンツの、オモラシのオシッコをいっぱい吸い込んだ匂いがぼくはすごく好きでさ。昴星はオモラシするのが好きでしょう? オムツで蓋をして、ずっと穿きっぱなしになった昴星のパンツはどんな風になっちゃうのかなって思ってさ。昴星もそんなに長いことオモラシしたパンツ穿いたままでいることってないでしょう?」

「それはー……、そうだけど……」

「昴星、いつか言ってたよね。オモラシして、オシッコでパンツの中があったかくなって、それがだんだん冷たくなって、じっとりして気持ち悪いのが好きって。オムツを使えば長い時間それを楽しめるんじゃないかな」

 じーっとぼくの目を見て、「……おにーさん、そんなことずっと考えてたのかよ」と溜息混じりに、やや呆れたように言う。けれどぼくが弁解する前に「おにーさんがしたいんなら、いいよ。おれもおにーさんと出掛けんの楽しいと思うし、……誰にもバレねーなら……」ぼくへの譲歩という形態を取り、きっと半分くらいは背徳的な興奮を感じながら、言った。

「ありがとう、昴星」

 ぼくは新品のブリーフを袋から出した。もちろんこれと、昨日の帰りに買ったものだ。「今穿いてるのでしたら、またノーパンになっちゃうからね、こっちに穿き替えてからオムツ着けよう」

「おにーさんそれ、自分で買ったの?」

 赤いゴムに、布地はピンク、模様はなし。先々週の流斗の「女の子色のパンツ」がとても可愛かったから、ぼくの中でこういうフェミニンな色のものを昴星に穿いて欲しい気持ちがすっかり育っていたのだ。

「ピンク色って、何か女子みてー……。でも、ちゃんとちんこ出す穴付いてるから男のパンツかー……」

 昴星は穿いて来た普段使いの白ブリーフを脱ぐと、ぼくの手から新品を受け取る。緊張していることは、昴星のペコロスみたいなおちんちんがより小さく縮こまっていることからも明らかだ。脱いだブリーフに付いた染みにも興味はあるけれど、ひとまず昴星にオムツを穿かせる。

「うー……、なんか変な感じ。これでズボンも穿くの?」

 ハーフパンツを引き上げる。元々ハーフパンツがゆったりしたつくりだから、多少オムツが膨らんでしまっても、ほとんど目立つことはない。

「オシッコ、出る?」

「ん、ガマンしてたから……」

 言葉の途中から、普段より多い隔たりの向こうから、微かなせせらぎの音が聴こえ始めた。普段は堂々と失禁して見せてくれる少年は、今日に限っては頬を赤らめて放尿している様子を見ているだけでぼくの興奮は募った。

「……出たよ」

 尿臭は全くしない。ハーフパンツを下ろして見てみるが、流石に「超吸収ポリマー」の活躍によって、全く水漏れの気配はない。ただ、指で押すとぐしゅっと鳴る。問題はなさそうだ。

 昴星はぼくの顔を見上げて、「あのさ、おにーさんさ」ちょっと躊躇ってから、言った。

「先々週の、日曜にさ、流と、遊んだ?」

 その目には、珍しく真面目な光が灯っているように見える。

「流斗に訊いたの?」と問えば、黙って頷いて、

「流と、……セックス、した?」

 と問いを重ねて来る。

「してないよ。えっちなことはたくさんしたけど、昴星としたようなことはしなかった」

 正直に言った。「流斗はまだ身体小さいから、ぼくが入ったら壊れちゃうよ」

 ぼくの答えにも、数秒昴星はぼくの目を覗き込んでいたが、「お」ぎゅっとぼくに抱き着いた。

「……外ですんの、恥ずかしいけど……」

「……うん」

「でも、バレねーなら……、それに、おにーさんが、したいなら、いいよ」

 昴星の中で、或いは流斗の中で、それぞれに「おにーさん」「お兄ちゃん」であるぼくを求め合っていてくれるのだとしたら、それはとても光栄なことだ。ぼくとしては、この身体に多少の無理が生じようとも、二人の可愛い「弟」のために出来ることは何でもしてあげたい。そしてもちろんそれは、二人に格差の生じないように。昴星との秘密、流斗との秘密、重ね合わせてはいけない。

「ありがとう。……ぼくも昴星が気持ちよくなれるように、頑張るからね」

 背中を丸めて、キスをする。昴星の頬はもうぼくの前で裸になって、感じ始めているときのように、ほんのりと赤い。

 

 

 昴星の膀胱の機能についてぼくが知っていることを書くならば以下の通りだ。まず、十二歳という年齢ながら、いまだにオネショの癖が治らない。ただそれは――才斗の作成した「説明書」に拠れば――寝る前にきちんとトイレに行く習慣がなくて、また夜遅い時間でも平気で水をがぶ飲みしてしまうからで、決してその容量や機能に特別な問題があるわけではないだろう。当人が努力を怠らなければ翌朝布団に大きな世界地図を描いているということにはならず、その点についてはつまり、二つ年上である遍の方が問題のある膀胱をしていることを意味する。

 ぼくと会うとき、あるいは才斗や流斗と遊ぶときに、驚くほど頻繁にオモラシすることが出来るのは、彼がその時間のために予め大量の水分を摂取するという涙ぐましいような努力あってこそだ。そうでなければそれこそ学校でのオモラシを繰り返しているはずだ。

 だから、通常であれば尿意の調節は一般的な少年と同等のものを持っている。一方で、意図的に膀胱を過敏化させて、頻尿状態に追い込むことが彼の愉楽に於いては重要である。

 実際のところ、昴星も流斗も、ぼくの見ている前ではびっくりするぐらいの回数、オシッコをする。二十分も我慢していないだろう。それは意図的に放出しようとしていることもあるだろうが、単純に過量の水分摂取によってお腹の中がたぷんたぷんになっているということだ。

 そしていまの昴星は、正しくそういう状態にある。

 デートと言っても、行く先を決めていたわけではない。けれどぼくは意図して、人気のない城址公園や軍山神社ではなく、昴星が才斗と共に通う学校、つまりぼくも卒業した学校の方向へ進んだ。ちらりと時計を見る。早くも家を出てから二十分が経過していた。

 昴星の足取りが普段よりもずいぶんぎこちないことには気付いている。やはり、ハーフパンツの中の「秘密」が気になるのだろう。時折ポケットに手を突っ込んで、濡れていないことを確かめている様子だ。何より、人と擦れ違うたびに緊張しているのが隣を歩いていてもはっきりと判る。口数は少なくて、大人しい。ただ、ほんのりと色付いた頬が彼の身体と心が混乱していることをぼくに告げている。

「オシッコ我慢してる?」

 ぼくは、そっと訊く。昴星ははっとした表情を浮かべて、それから恥ずかしそうに小さく頷いた。

「オムツしてるんだから、誰にもばれないよ」

 そう囁けば、昴星は「でも」と小さく呟く。すぐ傍を、自転車に乗った、昴星よりも少し年下と思われる男の子がちりちりとベルを鳴らしながら走り去っていった。「……こんなとこで、したことないよ」

「そう? でも、人がいるかいないかだけの差だよ。それに、普通にしてれば誰にも気付かれない。……いま通った子たちだって、まさか自分よりお兄ちゃんの昴星が赤ちゃんみたいにオムツしてるなんて思わないよ」

 けれど昴星にはまだ躊躇いが残っているらしい。赤い顔のまま、俯くばかりだ。

 ぼくは昴星を困らせたいのではない、断じてない。寧ろ昴星が悦ぶために、何が必要か、……才斗がぼくに教え、暗に依頼するのはそういうことだ。

「じゃあ、もう少し我慢して、ぼくの買い物に付き合ってもらおうかな」

「え、え? 買い物って……」

「うん、仕事に使うフラッシュメモリーをね。ほら、駅の裏手に最近電気屋が出来たでしょう。あそこ、いま安くなってるみたいだからさ」

 先週オープンしたばかりで、日替わりの開店セールは今週末まで催行している。ただ、フラッシュメモリーが安いかどうかは知らない。確かなのは、この東京都の外れに位置する街としては大規模な店が建ったことで、今日も混雑しているだろうということだ。

 混雑している人々の中での失禁、流斗なら尻尾を振って喜ぶのかも知れないが、あの子ほどそういう部分の発達していない昴星には無理な相談に決まっていた。限界に達し、今にも決壊しそうな膀胱、昴星の顔には明瞭な焦りが浮かんだ。

「ま、待って、ここでする、ここでするから……」

「そう? ぼくはどっちでもいいけど。せっかくなら人が多いところのほうがドキドキするんじゃない? どうせ誰にもばれないんだし」

「やだよ、ここのほうがいい、ここでしたい」

 昴星は泣きそうな顔でぼくのシャツを掴んで訴える。昴星の快楽のために心を鬼にしようと思ったって、その顔を見せられたのではぼくの決意は呆気なく鈍る。じゃあ、仕方ないね、此処でしてごらん。そう言い掛けたところだった。

「あ、鮒原だ」

「ほんとだ」

「なにしてんのー」

 学校の前を横切る道の向こうから、三人連れの少女が声を飛ばしてきた。ビクンと昴星が震え、怯えたように振り向いた先にいるのは、どうやら昴星の同級生らしい。

 いまの驚きで失禁してしまったかと思ったが、

「な、なんでもねーよ」

 昴星はぎりぎりのところで堪えたらしい、弱々しく声を張った。

 ぼくはにこりと微笑んで、「こんにちは」と少女たちに会釈をする。「ガールフレンドか?」と昴星に訊く。少女たちは当然のように、横断歩道を渡ってこちらへとやって来た。

「ち、ちがう……」

「そうなの? ……はじめまして」

 少女たちはぼくに警戒の目を向けることはなかった。昴星は今にもこの場から逃げ出しそうだ、そして逃げ出している最中で間違いなく失禁しそうだ。しっかりと肩に手を置いて、「ぼくは、……なんて言えば良いのかな」自己紹介に手間取る。

「知ってます。近所に住んでる、昴星の友達のお兄さんでしょ」

 少女の一人が言った。どうやら昴星はクラスでもぼくのことを話したらしい。一瞬ひやりとしたけれど、よく考えてみれば昴星や流斗を連れてこの辺りを歩くのはもう土日の日常になっているから、そういう風に判って貰えているほうがずっといい。

「あれでしょ? 流くんと渕脇とも知り合いなんでしょ?」

 少女たちは流斗のことも知っているらしい。流斗の名前が出るなり、「ねえ、鮒原ー、今日は流くん連れてきてないのー?」と昴星に訊く。

「……んな、しょっちゅう来るかよ」

 昴星はいよいよ真っ赤になって口を尖らせ、声を震わせている。もう漏れそうなのか、それとも少しずつ、漏れ出しているのか。少なくとも普段はこんなにひ弱なリアクションをする子ではないはずだ。女子たちとも対等に話をする、活発な男の子であろう。

「あれー? 鮒原、熱でもあんじゃないの? 顔真っ赤だし」

 少女の一人も、昴星の異変に気付いた。

「そういえば、……今日は何だかぼーっとしてるよな? 風邪っぽいならもう帰るか? 季節の変わり目だからな」

「鮒原が風邪なんてひくの?」

 クスクスと、少女のからかいの声も意に介さず、「帰る、具合悪い」と早口で言う。ぼくは昴星の額に手を当てる。確かにほんのりと熱いが、その理由はぼくと昴星の「秘密」だ。

「じゃあ、帰ろうか、……昴星?」

 トン、とその腰の辺りを、ぼくは掌で叩いた。

「う」

 ビクンと昴星の身体が強張った。僅かな、……ほんの僅かな、水の流れる音が、ぼくの耳にだけ届き始めた。

 昴星は口を開け、呆然と、虚空に視線を当てたまま硬直して動かない。

「ちょっと、鮒原マジで具合悪そう。だいじょぶなの?」

「寒いの? 震えてるし」

 少女の言葉の通り、昴星の身体には悪寒に嬲られたような震えが走った。その開いたままの唇から、「あ……あ……」と微かに声が漏れ、膝ははっきりと判るほど震えている。その顔を、首筋を、冷たい汗が伝っていくのが見える。

 ぼくにとっても想定外のことが起こったのは、そのときだ。

「え? ちょっと、鮒原」

 少女の一人が引き攣ったような声を上げた。

 昴星のハーフパンツの裾から伸びる、右足の内側から、つうと一筋、伝うものを彼女は見つけたのだ。

 オムツの許容範囲を、昴星のオシッコが超えてしまったのだ。

「すごい汗だ」

 ぼくはすぐさま言った。「汗びっしょりだ、……大丈夫か?」

 昴星はパニックに陥った猫のように硬直して、何も言わない。だから代わりにぼくは訊いた。「……あれ? オシッコ漏らしちゃったのか? 昴星」

 ビクンと昴星は我を取り戻したように震え、「ち、違うっ、これは……ッ」声を裏返して抗弁する。

 ぼくは苦笑して、

「そうだよな、オモラシしたらこんなじゃ済まない。……ああ、腋の下も首もすごい汗だ」

 ポケットからハンカチを取り出し、昴星の顔を拭く。実際、我慢の限界を突破していた昴星の身体は汗まみれだった。

 ぼくの言葉を受けて、少女たちは却って昴星が失禁したのではないと確信したようだ。だからこそ、「何だぁ、オモラシしたのかと思って超びっくりした」と、どこか安堵したように笑う。

「す、す、するわけねーだろっ馬鹿っ、こんな、六年にもなってオモラシなんて!」

「だってさー、濡れてるんだもん、オシッコかと思った!」

 ぼくは昴星の汗っぽい髪をくしゅくしゅ撫ぜて、少女に向き直る。

「昴星はオモラシなんかしないさ、ただ汗をかいただけ。……何なら、昴星、彼女たちに『オモラシしたんじゃない』って見てもらうか?」

「はっ?」

 昴星が素っ頓狂な声を上げた。

 少女たちが顔を見合わせる。結論が出る前に、「冗談だよ。こんなとこでそんなもの出すわけには行かないし、そもそも女性に見せちゃいけないものだ」と勝手に断じる。

「男子のそこ、流くんのなら見たことあります」

 女子の一人が苦笑して言った。「あの子、前に遊びに来たときオモラシしちゃって、それで、裸になって」

「でも鮒原のなんて見たってしょうがないよねー」

 流斗は何とも思い切った子である。恐らくそれは、昴星が見習う必要など全くない思い切りの良さだ。

「じゃあ、鮒原またね、お兄さんもさようなら」

「早く風邪治しなよー」

 手を振って、少女たちは背を向けて歩いていく。昴星はぎこちなく頷いただけ。

 彼女たちが角を折れてから、「あああー……」と昴星は屈みこんで、悲鳴のような声を上げた。それから赤い目元で、「バレたかと思ったー、マジで死ぬかと思ったー……」涙声でぼくに訴える。

「ぼくも、バレたかと思った」

 苦笑をして、昴星の髪を撫ぜる。「二回分ぐらいは大丈夫だと思ったんだけどな、それだけ昴星がガマンしてたってことだね」

 幸いだったのは、昴星のオシッコ特有の強い「臭い」がほとんどしなかったという点だ。あの臭いが少女たちの鼻に届いていたなら、まず間違いなくバレていた。頻尿状態になってオシッコが薄まっていたからこそ、「汗」と誤魔化すことが出来たのだ。

 ぼくの手に縋って立ち上がった昴星は、むうと唇を尖らせて、「あんないじわるなおにーさん、初めてだ」と不平を漏らす。

「でも、慣れてないからね」

 ゆっくりと、昴星の歩調に合わせて歩き出す。もう何処へも行く必要はない、ぼくの部屋に戻るだけだ。「なんとかボロ出さずに誤魔化せたけど。……興奮した?」

「し、してねーよ、するわけねーだろっ」

 その答えは少々意外だった。けれど、段階を踏んでいけばいい。到達点が、本当に少女たちの前で失禁することなのか、それとも別の何かなのかということは判らないけれど、とにかく一段ずつ確実にステップを踏みしめていくべきだ。

「じゃあ、帰ろうか」

「フラッシュメモリー、買わなくていいのか?」

「オムツがいっぱいいっぱいになってる状態で行くの?」

 昴星は慌てて首をぶるぶると振った。「明日にでも買いに行けばいいさ。それよりも昴星と遊ぶ方が楽しい」

 そもそもフラッシュメモリー云々だってでまかせだ。けれどそういうことは、わざわざ言うまでもない。

 

 

 部屋に戻って昴星のハーフパンツを脱がせて見れば、オムツの表面も何となくしっとりと湿っぽく、その裾からは歩くために足を動かすたびにじわじわと「汗」が溢れて伝った跡があった。昴星は微熱を帯びたような赤い顔をしている。少女たちの見ている前で失禁してしまうという、こういう行為に興じるようになってからは初体験を味わった興奮や動揺、トータルして「感動」と言ってしまっていいと思うけれど、それがまだまるで収まっていないものと思われる。

 ぼくはカメラを三脚に立てた。三脚も、あの電気量販店で安かったものだ。

 撮影が開始されたことに、Tシャツとオムツの姿で立つ昴星は気付く。普段ならば大いに乗り気で被写体になるのに、今日は戸惑ったような表情のままで居る。

「こっち向いて。……よかったね、女の子たちの前でオモラシしても、バレなくて」

 昴星はまだ少し心配そうに、こっくりと頷く。

「こうして見ると、オムツよく似合ってる。不思議だね、昴星はもう六年生なのに、こうやって見るとオシッコの我慢もちゃんと出来ない赤ちゃんみたいに見える」

 昴星はほんのり赤い頬のまま、「普段は、出来るもん」と不服そうに答える。

「そうなの? だけどさっきは女の子のそばでオモラシしちゃったんだよね? 赤ちゃんみたいにオシッコ我慢出来なくなってさ」

 昴星は唇を尖らせてぼくを睨む。ほんの少し、怒っているように見える。さてぼくとして悩むべき所は、才斗の示す道筋に従って何処まで昴星を追い込んだらいいのやらという点で、……要するに、あんまり怒らせて、昴星に嫌われて、もうこうやって遊んでもらえなくなってしまうのは困ってしまうのである。

「オムツ、自分で脱げる? それともぼくが手伝ってあげようか」

 カメラの此方側からぼくは訊く。昴星は憮然と「こんぐらい、自分で外せるよ」と言って、パンツタイプのウエストゴムを引っ張って、ぐいと下ろす。中から明らかになるのは、元々はピンク色だったはずの、ぐっしょり濡れたブリーフ。オシッコの海に溺れていたように、前部はもう何処を探しても濡れていない場所がないほどだ。なるほど、と思う。迸った尿はオムツの内側で吸いきられるより先に、まず昴星のブリーフをひとわたり濡らし、しかるのちブリーフの吸水限界を超えた量がオムツに吸い取られるという構造だ。「お尻のほうは?」

 昴星は恥ずかしそうに、足元にオムツを落としたままお尻を向ける。やはりお尻の半ばまで、丁度富士山みたいなシルエットで濡れ染みは広がっていて、昴星のむっちりしたお尻の割れ目に生地が食い込んでいる。

「すごいたくさん出したんだね。……出すとき気持ちよかったでしょ?」

 昴星はあまり乗り気ではないように、首を横に振る。不貞腐れているようにも見えるが、オモラシブリーフを穿いたままそんな顔をして見せても可愛いだけだし、

「もうちょっとこっち来てごらん」

 ぼくの言うことには、素直に応じる。昴星はオムツを足から抜いて、丁度腰の部分を重点的に狙う高さのカメラの前へとぎこちなく歩み寄った。昴星が一歩近付くに連れて、強い尿臭が鼻の奥へと響いてくるようだ。

「さっき彼女たちに見られなくてよかったね」

「え……?」

「昴星の、おちんちんさ。ズボン脱いだらオムツしてるってばれちゃうもんね?」

 こっくり、昴星は頷く。そればっかりは、本当に素直な気持ちだっただろう。

「じゃあさ、あの子たちに見せなかった昴星のおちんちん、見せてよ。こんなにいっぱいオモラシしちゃった昴星の」

「あ、あんまりオモラシって言うなよ……」

 おや珍しい。普段は「オモラシするよー」「おれのオモラシ撮って」と平気で言う子なのに。

 けれど昴星は、両手で窓を開けて中から縮こまったものを取り出す。普段から小さいのに、普段以上に竦み上がっている。冷たいプールに入った後みたいに、タマタマもころんと丸くなっているのが、どことなく可愛らしく、また滑稽でもある。どうやら緊張が強すぎて、快感を覚えるところまでは至らなかったらしい。

 それはまあ、次回以降への課題かな、と思う。

「あの子たちは昴星のおちんちん、一度も見たことないの?」

「ないよ、……あるわけねーじゃん、見せねーもん」

「そうなんだ? おちんちん見せるのは恥ずかしい?」

「……おにーさんとか、流とか才斗とかならいいけど、女子に見られんのはやだ」

 当然のことだ。けれどいまのぼくには、その言葉は昴星が自分自身に言い聞かせているかのように聴こえるのだ。

「昴星のおちんちん可愛いし、女の子たち見たら喜ぶと思うけどなあ」

「可愛いって……、っていうかさ、その……、おれ、ちんこちっちゃいし、……あいつら流のちんこ知ってるから、おれのがちっちゃいの、バレんのやだし……」

 ああ、そういうことをやっぱり気にするんだ。確かに小さくて臭いペコロス包茎は流斗のそれよりも小さい、今なら余計に。けれどぼくはそういう昴星のおちんちんだって心底から可愛いと思う。それこそ、オモラシの余韻をたっぷり含んで濡れたところを一口に咥え込んであげたくなるくらいに。

「そう。でももう昴星は女の子たちに見られちゃってるんだよ?」

 は? と昴星はとてもピュアなリアクションをした。

「うん、いま撮ってるこの動画さ、せっかくだから彼女たちに見てもらうのどうかなって思ってるんだけど」

 驚くほどの俊敏さで昴星は縮み上がったおちんちんをブリーフの中に仕舞った。と、同時に、その前部の膨らみの中で短く噴射音が響き、表面から数滴、畳の上へと滴った。同級生の女子たちにペニスを見られるという事態を想像して、思わずあらぬ力が篭もってしまったのだろう。

 昴星は慌てた様子でレンズを両手で塞いで、「じょ、冗談だよな? そんなの、しねーよな……?」と媚びるような笑いを浮かべて縋るような視線を向けた。うん、もちろん冗談だ。ぼくにとってそれは、自殺行為に等しい。こんな風に男の子にオムツ穿かせてオモラシさせて、その上おちんちんを撮影していることを人に告げることなんて出来るはずがない。

 のだけれど、動顚した昴星にはそう判断できるだけの冷静さは残っていないらしい。ぼくは黙って昴星の手首を掴み、レンズから剥がす。ブリーフに吸い付くような膨らみから、ポタポタ、ポタポタ、垂れ流しのようになっているオシッコが滴り落ち続けている。

「またオモラシしてるんだ? それも女の子たちに見られちゃう……、年下の流斗よりちっちゃい昴星のおちんちんが可愛いパンツの中で何度もオシッコ我慢出来なくなっちゃうところまで」

 畳が多少汚れたところで、今更気にするようなぼくではない。唖然とぼくの顔を見る昴星の背後に回り、「もうちょっと後ろ下がろうか。昴星の顔も見えた方がさ、見応えあるだろうしね」ブリーフを引き下げて、三度目の失禁を終えたおちんちんを露出させる。側に寄ると蒸れたオシッコの匂いが一層強く感じられる。この子へのいとおしさが破裂しそうになるが、

「や……、やだ、やだぁ……」

 膝をガクガク震わせて、ぼくは掌の中に昴星のびっしょり濡れたおちんちんを収める。

「どうして嫌なの? 昴星のおちんちんはちっちゃくなんかないって、ちゃんと立派に男の子のおちんちんなんだってことをさ、あの子たちに見せてあげようよ」

 茎というよりは豆と言ってしまったほうがいいようなものを、指で揉みしだく。昴星は本当に匂いの塊のようだ。一般的には「臭い」と切って捨てられるこの子のオシッコの匂いがこんなにいとおしい。ぼくも才斗と同じ気持ちになれる。

 くにゅくにゅと繰り返し揉み込んでいるうちに、徐々に反応が帰ってくるようになる。

 この子は比較的、玉袋が大きい。おちんちんそのもののサイズが小さいから余計そう見えるだけか。けれど比較的茎と袋のバランスがいい流斗に比べるとそう思える。昴星はこの袋で気持ちよくなれたりするのだろうかという興味を抱くが、一先ずは確実に、勃起させること。

 でも、そんなに気を使う必要もなかった。

「ほら、……みんな見えるかな? 昴星のおちんちんはこんなに立派になるんだよ」

 昴星の身体を腕ごと拘束して、カメラの前に上を向いた幼茎を晒す。勃起しても「短茎」と言っていい。皮も剥けないし、サイズとして大きく変化したようにも見えない。

「昴星、ぼくは思うんだけど」

 髪に隠れて、けれど仄かな熱を持て余している耳に、ぼくは囁きかける。カメラに拾われない程度の、小さな声で。「昴星は、本当は女の子たちにオモラシするところや、オモラシしちゃう恥ずかしいおちんちん見られたいんじゃないのかな」

 残尿を出し切ったようにぶるると昴星の身が震える。「違う、違うよ……、そんなの……」

「そう? でも昴星、みんなに見られてるのにおちんちんこんなに大きくしちゃったんだよ。それにオモラシするって、判ってると思うけどすごく恥ずかしいことだ。潜在的に、……潜在的って判るかな。昴星自身も意識してないくらい深いところで、恥ずかしいところみんなに見て欲しいって思ってるんだよ。それこそ、流斗みたいにね」

 必死に否定するように昴星は首を横に振る。ぼくは構わず右手で握りこんだ昴星のおちんちんの内側で跳ねる鼓動の感触を愉しみながら、愛撫を再開した。引っ張っても余った皮はなかなか剥けないけれど、それでも昴星の先っぽが、オシッコではない液体でぬるつきはじめているのは判る。

 押し止めようとしているけれど、それでも昴星の唇からは甘さを含んだ声が息と一緒に溢れ始めている。

「ほら、気持ちよくなってきた」

 心の否定に身体が追い付かない。「さっき女の子たちの側でオモラシしてるときのこと思い出して、もっと気持ちよくなるといいよ。ね、さっき、あんな恥ずかしいことしてることバレちゃった方がもっとドキドキしたかもしれないね」

 呼応するように昴星のペニスが脈打つ。ぼくは右の指で摘んだ昴星のペニスをリズミカルに扱いてやりながら、「もう出ちゃう? いいんだよ、幾らだって好きなだけ出すといい、同じクラスの女の子たちの前で可愛いオモラシおちんちんから精子出すところ一杯見てもらってさ、男の子の身体の勉強に役立ててもらえばいい」

 我ながら口からでまかせによく此処まで並べられるものだ、と口にしつつ驚くが、ぼくの言葉は昴星の心へと、希硫酸のごとくしみる液体として滴下され、理性の欠片まで内部崩壊させてゆく。

「い、やぁあっ、やだあぁっ」

 悲痛な叫びを上げて首を打ち振るいながら、昴星のペニスがぼくの手の中で弾んだ。短い性器からはこれまで見たこの子のどの射精よりも多量の精液が、まるでオシッコみたいに勢いよく飛び出し、畳の上に散る。ぼくは昴星がそのまま、啜り泣くまで後ろから抱き締めて、

「怒らないで聴いてね、昴星」

 そっと、囁いた。

「カメラ、録画してない」

 ぴく、と昴星の身体が震える。

 泣かせてしまったことを心から詫びつつ、ぼくはゆっくりと昴星を抱いたまま座った。「スイッチ、入ってない。ただ三脚に立ててるだけだよ」

 ひく、ひく、震えていた昴星の下半身から、しゃあああとせせらぎが流れ始めた。「あっ……」と昴星が気付いたときにはもう遅い。畳の上には水溜りが、じわじわと流れて広がって行く。

「ごめんよ。さっき女の子たちの前でオシッコ我慢して困ってる昴星見てたら、すごく可愛くて、ちょっと意地悪したくなっちゃって」

「ひ、ひでえよ……っ、おれ、マジでっ……、ちんこ、女子に見られたって……」

 昴星のオシッコは、止める方法を忘れてしまったかのように湧き出し畳に水溜りを広げていく。ちょろちょろと流れる音が耳に涼やかだ。

 ぼくは昴星が泣き止むまで抱き締めて、何度もキスをして落ち着かせてから、ようやく雑巾を持ってきて昴星の作った水溜り二箇所を拭く。それから換気だ。人の家の畳に放尿してしまったことに罪悪感を覚え始めたらしい昴星は「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にしたけれど、種を撒いたのはぼくだ。水を注いだのが昴星、そのうち何かの芽が出てくるかもしれない。

「大丈夫だよ、気にしないで」

 除菌スプレーを振り掛けて、ぼくは微笑む。「驚かせちゃって、本当にごめんね。お詫びになるか判らないけどさ、今日はこの後、昴星のして欲しいこと何でもしてあげるから」

「……おれの、して欲しいこと……」

「うん、ぼくに出来ることがあるなら、何でもするよ」

 寧ろ、何だってさせていただきたい。昴星の「したいこと」はぼくにとって、悦びでしかないわけだから。

「……ほんとに?」

 びしょ濡れのピンク色ブリーフは徐々に乾き始め、変色を始めていた。こういうものは表に干すわけには行かないので、いつも洗面所に干している。これで昴星から貰ったブリーフは、……ええと、何枚目だろう?

 洗面所から振り返ったら、Tシャツの上を脱いですっぽんぽんになった昴星は、まだぼくの意地悪が尾を引いているようにどこかもじもじと恥ずかしそうな顔で居る。強気な昴星が可愛いのは言うまでもないが、こうして見ると、本当に気の弱い女の子のように見えて、また違った愛らしさが尿臭とともに漂っている。

 少年の視線が、自分の二回分のオシッコを吸い取ったオムツへ向いている。

 薬局で購入する際、ぼくは思わず「もっと小さいのないんですかね、こんなにたくさんは要らないんですけど」と通りがかった店員さんに訊きそうになってしまった。学童用の商品は三十二枚入りのみ取り扱いで、それより少量のパックとなると乳児用のものしか用意されていなかった。或いは、頼めば倉庫から在庫を出して貰えたのかもしれないけれど、さすがに其処までは出来かねて、ぼくは自分の弟に買うのだこれは頼まれものなのだという顔で、決して安いわけではない上にやたら嵩張る三十二枚入りを購入したのだ。

「またオムツ、してみたい?」

 ぼくが問うと、はっとしたように顔を上げる。

「赤ちゃんみたいにオモラシするの、楽しかった?」

「そ……、んなの……」

「いいよ。本当に誰にもナイショでさ、いっぱい気持ちよくなる方法を色々試してみるのもいいね」

 昴星は、それが心底からのものではないということがはっきり判るためらいの色でその頬を染めた。ぼくはさっさとパックから二枚目を取り出して、「どうせ、まだいっぱい出るんでしょ? それにオムツしてれば部屋の中でしても平気だしさ」昴星に差し出す。

「……おにーさんは、おれの、オムツしてるとこ見たいの?」

 ぼくは微笑んで頷いた。「うん、見せて欲しいな。すごく可愛いと思ったから」どうぞ、それを理由にするといい。流斗ほど気の強くない昴星のために、ぼくは責任を負う。流斗だったら「してみたい! したい!」って喜んで言うに決まっていた。

 昴星はオムツと自分のおちんちんとを見比べて、まだなおためらっていたが、結局パンツを穿くようにそれを身に付けた。パンツ一丁ならぬ「オムツ一丁」で、恥ずかしいところが隠れているのに、却ってこっちの方が恥ずかしい。

 布団の上に、昴星を招いた。昴星はぼくの膝の上に座る。六年生にしては小さい身体だけど、「大きな赤ちゃん」だ。抱き締めると、昴星も応じて抱き付き返す。いつもの通り、肉付きのよくて柔らかい身体は本当にいとおしいもので、さっきの緊張でかいた汗が乾いてとても芳しい。ぼくたちはまるで恋人同士みたいにぴったりと身を重ねて、何度もキスをする。かさこそと鳴るオムツの音が、不思議といまの昴星には似合っているように思われた。

「おにーさんって、変態」

 ぼくの肩にほっぺたをくっつけて、昴星は言った。咎めるような言葉は、とても甘い声で齎された。

「知ってたんじゃなかった?」

「知ってたけど、……今日、すげー思った。だってさ、ちんことかお尻の穴とか見たいのって、男だったら当たり前じゃん」……まあ、ショタコンの男だったら当たり前だろう。「でも、そんだけじゃなくってさ、おれにオムツ着けさせたりとか、外でオモラシさせたりとか」

「オモラシするの好きな昴星は変態じゃないの?」

 む、と昴星は言葉に詰まる。

「……おれは、流斗ほど変態じゃねーもん。それにおれがオモラシするのだって、……そりゃ、ちょっとぐらいはおれが好きなのもあるけど、元々は才斗がおれのオシッコの味好きだって言ったからだし」

 じゃあ、そういうことにしておこうか。というか、この少年自身はそう自覚しているのだろうし。

「でも、おにーさんの方が変態だよ。フツー、おれみたいなのがオムツ着けたって嬉しくなんかないに決まってる」

「まあ……、ぼくは自分が『フツー』じゃないって自覚してるからね」

「……おれ、おにーさんみたいな人のこと、よく知らないけどさ」

 昴星はぼくの膝の上からぼくの顔を覗きこんで訊く。「その……、ショタコンっていうの? そういう人たちにも、好みっていうか、そういうの、あんじゃねーのかなって」

「好み?」

「うん……。あのな、例えばさ、流は、女子たちにすげー人気なんだ。それはあいつがちんこ見せたからじゃなくって、きれいな顔してて、性格もかわいいから」

 顔がきれいなのも、性格がかわいいのも、昴星だって共通して持っているところだ。それにさっき見た限りでは、昴星も女子たちからずいぶんと親しく接して貰えている様子である。

 ただ、ぼくは黙って昴星に続きを促した。

「でもって、才斗も、女子にはすげーもてる。バレンタインとか、あいつチョコいっぱい貰ってるし、そもそもあいつ、頭いいし、カッコいいし」

 その言葉には、さほどの妬みもない。ただ自分の恋人がそういう存在であるということを嬉しがっているばかりだし、また才斗が彼を取り巻く女子ではなく男子である「おれ」を選んでくれたことへの悦びが伺えた。

「でさ、流とか、才斗とか、ああいう見た目のやつにおにーさんみたいな人たちがいたずらしたいって思うのは判るんだ。そりゃ、ぶさいくでデブなやつと流とさ、二人並んでどっちか裸にしたいって思ったら、百人が百人流のこと選ぶに決まってるし……」

 まあ、一人ぐらいは、特殊嗜好な人間も居るかもしれない。ショタコンだって特殊嗜好だ。

「でさ、……おれは、たまたまおにーさんと、流より先に知り合ってさ、おにーさん、おれらぐらいの男子が好きで、……ちんこ見せたり、ちんこしゃぶったり、そういうの、出来る相手だったら、もっとかわいいやつの方がいいのかなって……」

 昴星の言葉をそれ以上続けさせる必要はなかった。柔らかなほっぺたに指を当てて顔を上げさせて、キスをする。

「ぼくは昴星と出会えてよかったなって思ってるよ。いまこんな風にね、昴星を膝の上に乗っけて、『おにーさん』って呼んでもらえるの、すごく幸せだ」

「……でも、おれ、かわいくないし、オシッコ漏らすの好きな変態だし」

「だったら、ぼくは昴星みたいな子が好きな変態でいいよ」

 昴星は、昴星が思っているよりもずっと可愛い。

 確かに流斗も可愛い。才斗は、格好いい。昴星の眼には鏡に映る自分の顔よりも二人の方が魅力的に見えるのだろう。それはまあ、仕方のないことだし、「おれのほうがかわいい!」って思っているより、ずっと奥床しくて評価するべきことだ。

「……おにーさん、おれの、パンツとか、ちんこのムービーとか見て、オナニーいっぱいしてる?」

 数え切れないほど、している。ぼくは頷いた。

「……おれの、……オムツしてるとことかも、撮ったら、後で見て、オナニーすんのに使うの?」

「ああ……、うん、たくさん使うことになるだろうね。昴星ぐらいの男の子がオムツ着けてるとこなんて、これまで見たことなかったし。いまだってドキドキしてるよ」

 昴星はじっとぼくの目の中を覗きこんでいた。それから、キスを一つ、して、「……じゃあ、撮ってもいいよ」と恥ずかしそうに言う。きっと、撮って欲しいのだ。

 昴星を膝の上から下ろして、カメラを三脚に乗せたまま録画のボタンを押した。

「もう、撮ってるの?」

 まだ湿っぽい畳の上に立つ昴星に頷く。「これから、どうするの?」とぼくが訊くと、昴星はぼくの目とカメラのレンズとを交互に見てから、いつもより恥ずかしそうに「オモラシ」と答える。

「赤ちゃんみたいだね。でもオムツよく似合ってる。すっごく可愛いよ」

「そう……、かな。だったら、いいな。おにーさんが、見て、興奮してくれんなら……。でも、誰にもナイショだよ? おにーさんだからこんなとこ見せるんだからな?」

 昴星の、ぽっちゃりとした身体の腰回りをガードする白いプラスティック・パンツ、その姿そのものが、奇妙なアンバランスさを醸し、不思議と魅力的に映る。太腿を落ち着かない様子で擦り合わせて、「おにーさん、もう、オシッコ出そう」と少しばかり心細げにぼくに言う。

「いいよ、いつでも。オムツしてれば濡れないしね」

 こくん、と頷いた昴星の、お腹に微かな力が入る。

「はあぁ……」

 唇から零れる生甘い声に混じって、無機質なオムツの中で噴き出す昴星の清流が響く。自分のオムツに右手を当てた昴星の眉間には浅い皺が寄り、どこか切なげで、儚い表情を浮かべる。安堵と、恍惚と。昴星のオモラシ姿は、いつ見たって、やっぱり美しいものだ。

 ぶるっと強い震えが走り、その身体から無駄な力が抜けた。

「全部出ちゃった?」

 微かに息を弾ませて、昴星がこくんと頷く。「そっか。じゃあ、オモラシしたままじゃ気持ち悪いよね。外してあげようか」

 今度は、首を振った。そして、ぺたんと座ると、「……ミルク、欲しい」と強請る。

「ミルク?」

「ん……、オシッコしたから、こんど、ミルク」

 言っている意味が判らないほど馬鹿じゃない。オムツ姿でオモラシをして、昴星はすっかり赤ん坊のようだ。もっともこんな類のミルクを欲しがるような赤ん坊じゃ困るけれど。

 ぼくは苦笑して、カメラの前に立ち、ジーンズからすっかり勃起したペニスを取り出す。昴星は手を使って這って、ぼくの前に跪いた。予定では、カメラはちょうど昴星が愛撫する顔を綺麗に収めるはずだ。

「んん」

 ぼくのペニスに、昴星はすぐにしゃぶり付いた。それは本当に赤子が母親のおっぱいに本能のまま吸い付くかのようだ。柔らかく滑らかな頬肉と舌が絡みつく感触、昴星はうっとりとぼくのペニスを味わっている。

「おいしい?」

 訊けば「んふ」と答える。

「そっか。……昴星の好きなミルクも、もうすぐ出るよ」

 ぼくの言葉は昴星の中で響いた。もとより器用で淫らな舌は、一層激しく動き、自分ではまだ晒すことも出来ない場所もぼくが気持ちよくなれているのだと悟るや、集中的に攻め立てる。

「いい子」

 ぼくは昴星の髪をさらりと撫ぜて、一生懸命な奉仕のご褒美に、その口が一番欲しがる液体を注ぎ込んだ。

「ッん!」

 昴星は深々と咥えこんだまま、弾むぼくの性器にまだ舌を絡みつけ、一滴も零すまいと吸い上げて、ぼくのをそっと口から抜くと、こくんと喉を鳴らして飲み込む。

「美味しかった?」

「……ん、おにーさんの、ミルク、すっげーおいしかった……」

 蕩けたように微笑んで、「……おれが、オシッコすると、おにーさんいっつもいっぱいおいしいのくれるから……、おにーさんのためならもっと、いっぱいオシッコする……」

 昴星はよろりと立ち上がって、「ひひ」と笑う。オムツの前が尖っていた。昴星のことだから、フェラチオをしている最中からしてもう勃起しているだろうなということは、ぼくの想像の範疇だった。

「まだオシッコ出るの? もうすぐ大人のおちんちんになっちゃうんじゃない?」

 大人のおちんちん、というぼくの言葉を理解して、「ん、でも、まだ、オムツしてるから赤ちゃんのちんちんだよ……」と答える。おや、と思った。昴星はいつも性器を「ちんこ」と呼ぶ。けれどいまは、「ちんちん」と、普段と違う呼び方をした。

「おれが、もっとオシッコしたら、おにーさんもちんちんのミルク、もっとちょうだい?」

 また「ちんちん」って言った。

 恐らく……、「ちんこ」ではなく「ちんちん」と呼ぶことで、昴星が赤ちゃんに相応しく在ろうとしているのだろう。一文字返るだけで何が違うのかと思うけれど、昴星の心が蕩けてぐずぐずになっていることの証拠になるだろう。

 可愛いな、と、ぼくはシンプルに思っていればいい。

「じゃあ、昴星はもうオシッコ出ちゃうんだ?」

 こくん、とぼくが三脚から外したカメラに向き直り、頷く。

「でも、おトイレまで我慢出来ないんだね」

「ん……、ガマンできない、もう漏れちゃう……」

 とろんとした目で言いながら、昴星は既に一回分のオシッコを吸収しているオムツに、二回目を注ぎ始める。……やはり、間もなくオムツは吸水量の限界に達する。じわじわと昴星の両の太腿から伝うオシッコの量は、先程よりも多くて、そうやって自分で洪水を起こしていることに昴星は一層興奮するらしい。はっ、はっ、と浅い呼吸を繰り返しつつ、お腹に手を当てて自分のオムツと、足に伝うオシッコとを見詰めている。

「またオモラシしちゃったね」

 ぼくが声を掛けると、「ひひ……」と恥ずかしそうに笑う。それから「ごめんなさい、濡らしちゃった……」と足を伝って畳に生じた水溜りを見て謝る。

「しょうがないよ。昴星は赤ちゃんだからね」

 ぼくの掌が髪を撫ぜると、心地良さそうに目を細める。表情も、普段以上に幼くなったようだ。

「そしたら、……オムツ、取り替えてあげようね。ずっとオシッコでびしょびしょにしてたら良くないから」

 昴星はこくんと頷き、ぼくの手に従って布団の上に仰向けになった。「オムツの交換」なんて、ぼくだってしたことないし、昴星だってまさか記憶の中にあるとは思えない。昴星は少し緊張したように、自分の太腿を抱えた。

 サイドテープを剥がして、既に裾までしっかりと濡れてしまったオムツを脱がせると、内側からは想像していたよりも濃い匂いが漂った。

「いっぱい出たね」

 もちろん、昴星のおちんちんは狂おしいほど硬くなり、不意の脈動を繰り返している。

「ねえ、おれ、うんこも出ちゃいそう」

 太腿を抱えたままの格好で、昴星は言った。見ると、確かに濡れそぼった肛門は何かを訴えるようにヒクヒク震えている。

「そっか……、じゃあ、トイレに行こうか?」

 昴星はふるふると首を振って、「ガマンできないよ」と甘える。

「うーん……」

 オムツに包まれていた昴星の股間からは、強烈な尿臭が漂っている。しかしながら、いまのぼくにとってその臭いがどんな花の香りよりも魅力的なものであるということは、今更言い添える必要もないだろう。

「……もうちょっとだけ、我慢して。お尻の穴きゅってしてさ。ぼくも昴星のミルク、飲みたいんだ」

 昴星はほんのり赤らんだ頬で、こくんと頷く。トイレまで我慢できないと言うくせに、射精までは耐えられるというのもおかしいけれど、

「ひ、あっ……」

 ぼくの言葉の通り、素直に括約筋を引き締めた昴星の肛門に舌先を当てた。雑味のないオシッコの味が、ぼくの舌を喜ばせる。

「んん、そこ、ミルクでないよぉ……」

 昴星は駄々を捏ねるように首を振る。カメラでどれだけ撮れているかは不明だが、いまは味と匂いに集中したい。蠢く肛門をくるくると舐めてから、足の付け根にキスを落として、……思い出した、昴星がタマタマでどんな反応を示すか見なくてはいけない。

「んぅ……、く、しゅぐったい……」

 丸く竦んだ無毛の玉袋の皺一つひとつに、オシッコが染み込んでいる。ざらざらとした舌触りに味と香りが乗って、ぼくの舌の圧力だけでぷにぷにと弾む。そんな愛らしい場所を舐められて、「くすぐったい」と言う割に、昴星のおちんちんは何度もぴくぴく震えた。どうやら才斗や流斗に此処を責められたことはないらしい。

「美味しいよ、昴星のタマタマ。すっごく可愛い。ぼくが舐めるとおちんちんピクピクしちゃうんだ?」

「わ、かんにゃ……っひゃ」

 おちんちんのサイズに比して大きめの袋を一口に含んで吸ったとたんに、

「や、あっ、やっ、それ、っ、やらぁっ」

 昴星自身も予測していなかった快感に襲われたらしい。口の中で二つの珠の存在を意識しながら舐め回してやると、昴星の声はますます昂ぶる。どうやらここも、昴星にとっては立派な性感帯であるらしい。才斗のくれた説明書には書かれていなかった、つまり、ぼくが発見したのだ。

「もぉ、もぉっ、おかひくなるっ……」

 口を外して見れば、昴星は目をうるうるさせてぼくを見上げた。「もぉ……、ミルク、だしたいよぉ、ガマンできない……」

 可愛い、から、

「でも、うんちも出ちゃいそうなんじゃないの?」

 意地悪をしたくもなってしまう。昴星はふるふると首を振って、「ガマンするっ、ガマンするからぁ……」涙声でぼくに強請る。

 そもそもぼく自身が、誰かに意地悪をすることに耐え得るほど強い精神力を持っているわけではないので。

「そう、じゃあしょうがないね」

 呆気なくその可愛さの前に屈してしまう。

「はぁん……!」

 咥え込んだ昴星のおちんちんはいつものオモラシのとき同様、しょっぱいオシッコに塗れている。吸い上げると余り皮の隙間に潜み、平常時でもブリーフの染みの原因になってしまう残尿が口の中にじわりと広がり、そこに僅かな腺液のとろみが加わった。

「あ、あっ、でるっ、ちんちんのミルクでるよぉっ」

 喉から鼻に抜ける匂いをゆったり愉しむだけの時間もなかった。ぼくは袋に手を添えて優しく揉んでやりながら、上顎をノックするようにおちんちんが震え、ゼラチン質に思えるほど質感の濃く、もちろん味も匂いも強い大量の精液が口の中を満たすのを覚えた。

 そうっと口から抜く。昴星ははぁはぁと浅い呼吸を繰り返して、

「おにー、さ、……おれの、ちんちんの、ミルク……」

 と朦朧の声で呟く。

 可愛い。

 ぼくの口の中にはたっぷりと零された昴星の「ミルク」がまだ残っていた。ぼくはそのまま昴星に唇を重ねる。

「んん!」

 と声を上げて拒んだのは一瞬だけ。

 ぼくが舌を絡め、口の中の昴星の精液を伝わせると、昴星はビクビク震えながら両手でぼくにしがみ付いて、夢中になって自分の精液を味わい始めた。「んぁ、あっ、ひ、ん、……ひんひんぉ、みぅく……」

 全部あげてしまうのは残念なので、途中で頭を引いて半分を飲み込む。濡れた唇の端に泡を付けて、昴星は自分の出した精液の味に酔い痴れていた。

「美味しいね、おちんちんのミルク」

 ぼくが声を掛けると、にこぉと微笑んで頷く。それから、ぶるると身体を震わせて、……ぼくと重ねた身体はガス放出の音を立てた。

「こっちも、もう出ちゃう?」

「ん……、でちゃう……」

「そっか。……判る? 昴星。昴星のおなら、すっごく臭い」

 てひひ、と昴星は恥ずかしそうに笑う。ぼくが再びカメラを構えると、仰向けに寝転がったまま、シーツを握っていきみ始めた。ぼくは昴星の肛門にカメラを近づける。このまま出されても、オムツを広げているから問題ない。まあ、さすがにそんな大量には出されないものと思う。

 ピンク色の蕾が蠢いて、もう一度短いガス放出があって、「ああ、出て来た。すっごい汚い昴星のうんち」が顔を出す。日常の食生活に気を使い、整腸剤も飲んでいると言っていたのを聴いたことがある。この子は下痢の悩みとは無縁だろう。

 昴星の外見を褒めようとしたら、そりゃあ何処だって褒めるべきところだらけなのだけれど、お腹の中まで褒められる身体って、なかなかない。

 もちろん、性格だっていい。

「昴星はたくさんミルク飲むから、立派なうんちが出来るんだろうね」

 ぼくの言葉は全て昴星の賞賛に費やされる。昴星はひひひと笑って、曲げた足を大きく開き、広げたオムツの中にゆっくりとその健康な腸に溜まっていたものを排出していく。その表情は誇らしげでもあった。

 僅かに力の緩んで、お腹に寝そべったおちんちんから勢いよく噴水が上がった。

「また出てきちゃったね」

 お腹を、おっぱいを、どんどん濡らしていく。カメラの前で自分の尿を浴びているという状況すら、「赤ちゃん」の昴星には愉しくて仕方がないのかもしれない。

「んん、まだ、いっぱい出せるもん……」

 ぼくは手を伸ばし、昴星のおちんちんを摘んで、角度を変えた。

「お口開けて。昴星のおちんちんから出たジュース、きっと美味しいよ」

 ぼくの言葉にも昴星は妄信的と思えるほどに従う。指先で元気に尿を噴射する昴星の幼茎は見る見るうちに硬くなって、ぼくの指を離しても放物線はその口でじょぼじょぼと音を立てる。もちろんその間も、開ききった肛門からは太い便をひり出し続けていた。

「昴星、カメラ見て。撮ってるよ」

 昴星は自分のオシッコを飲んだことがあるんだろうか。

 恍惚の表情で昴星はとろんと微笑んで、カメラに向かってピースサインを送る。

 排泄物の匂いを全身に纏った昴星は、世界で一番汚い子かも知れない。

 けれどその笑顔はどうしたって愛らしいし、いまはぼくの鼻に、「悪臭」であるはずのそれらの要素は全て正負の記号を逆転させてしまう。オシッコの勢いが次第に弱まり、んく、と昴星は口の中に注がれたジュースを飲み込んだ後には、にち、にち、と長く伸びて盛り上がってなお続く排便の音が残った。それも、間もなく終わる。

「オシッコ、おしまい?」

「ん、おひまい……」

「うんちも全部出たね。……お尻拭いてあげるから、またさっきみたいに足持って」

 自分の太腿を抱えて、僅かに茶色い汚れの付着した肛門をぼくに、カメラに見せ付ける。ぱっくりと口を開けた其処からは、暗い闇の奥まで覗くことが出来た、すっきりと、もう何もない。

 けれどティッシュを取って拭き取ろうとしたところで、括約筋に外向きの力が入った。昴星の勃起の先から、ちょろ、ちょろ、幾度か短く、また放尿があった。

 昴星はそれを自らの口で受け止める。

「まだ飲み足りなかった?」

 オシッコまみれの顔で、昴星はこくんと頷く。ぼくが汚れを拭き取る間も、肛門は落ち着きなく蠢き続けていた。

「んん、ほんとはね、もっと、うんこしたい」

 お尻を両指で広げて、昴星は言う。「でも、もう出てこないから、オシッコ、いっぱい飲んだら、おなか痛くなって、またうんこしたくなるかも、しれないって」

「うんちするの、昴星好き?」

 こく、と恥ずかしそうに頷く。

「だってさ、だって、うんこするとき、お尻、あつくなって、じんじんすんの、好き。それに、おにーさん、おれのうんこ、いっぱいほめてくれるから……」

 オシッコを浴びて湿っぽくなった髪を撫ぜて、ぼくは昴星を抱き起こした。「そりゃあね、これだけ立派なの出して見せてくれたら、褒めたくもなっちゃうよ。……ほら見て。これ全部昴星が出したんだよ」

 オムツの中に横たわった便を見て、「すげえ……」と、昴星は感動したように呟く。

「こんなにたくさん。すっごい臭いけど、でも、昴星の身体から出たものだよ」

 汚くないわけではない。けれど、嫌悪感がないのだ。そういう心の構造を、ぼくは知る。

「おにーさんは、おれの、うんこするとこ、好き?」

 ぎゅっと抱き付いて、甘えるように訊く。

「うん、好きだよ。あとでまた見せてくれる?」

「ん、きっと、またうんこしたくなったら」

 しょっぱいキスを幾度も繰り返す。考えてみればオシッコを浴びた昴星の身体は、途方もなく美味なるものであるはずだ。ぼくは再び昴星を横たえて、自分自身の尿を飲んだ口の中を貪り、首に耳にキスをし、ぷっくりとしたおっぱいを吸い上げた。「んやぁ」と昴星は愛らしく身を捩る。「おれ、そっちからミルクでないってばぁ」

「知ってるよ。でも、昴星のおっぱい、ミルク出てきちゃいそうなぐらいやらかいし、ジュースいっぱいかぶったからしょっぱくて美味しい」

「ひん」

 それから、おへそ、やわらかなお腹。

 どこもかしこも、こんなに美味しい。

「説明書」に拠れば、昴星は才斗の味に偏執的な欲情反応を示すのだという。けれど、……どうだろう。昴星自身がこんなに美味しい生き物なのだとしたら、匂いにしか感じないという才斗は昴星の「味」にもあの冷静な態度を崩さざるを得なくなるのかもしれない。

 タマタマだけじゃなくて、おっぱいも昴星にとっては弄られると感じてしまう場所らしい。いや、こっちの方が「男の子なのに」という恥ずかしさも手伝って、余計に敏感な反応を示しているように思える。昴星のおちんちんは「ミルク」を出したばっかりなのにもうすっかり硬くなって、愛撫を求めるように震えている。

「ねえ……、おにーさん?」

 射精したいのかと思って身を起こす。またしゃぶってあげてもいい、後ろから抱き締めて扱いてあげてもいい。昴星が気持ちよくなれるなら何でもいい。

 けれど昴星は、先程のようにもう一度、自分の太腿を抱えて、太いものを出した穴を露出させた。もう穴は閉じているけれど、むず痒いようにひくひくと蠢いている。皺の整った、愛らしい穴だ。

「おれの……、ここ、きたない?」

「ん? ……拭いたばっかりだからね、きれいなピンク色だよ」

「……んと、じゃあ……、おれの、ここ、くさい?」

 鼻を寄せて嗅ぐ。オシッコの匂いがするばかりだ。「大丈夫だよ」

「……おにーさん、おれのここ、すんの、いや……?」

 入れろ、と言っているのかと思ったところで踏み止まる。そうじゃない。

「……舐めて欲しいんだ?」

 ん、と昴星は頷く。既に昴星の幼芯は、ぼくにそうされることを期待して強張っている。そこが強張れば、もちろんお尻の穴もきゅっと窄まる。

「いいよ。……そのかわり」

 少し痛いかも、と思いながら、ぐっと昴星のお尻を押し付ける。

 昴星の鼻に、昴星自身のおちんちんの先が当たった。「んぁ……」と昴星は驚いたように目を丸くするが、痛がる気配はない。身体が柔らかいのだろう。

「こっちはぼくがしてあげるから、おちんちんは昴星が自分でするんだよ」

 さっき、自分のオシッコを浴びている昴星の姿はとても魅力的なものだった。もう一度見たくて仕方がなくなって、……ぼくはぺろりと昴星のお尻の穴を舐める。うん、大丈夫。厳密に言えば――紙で拭いただけだ――汚くないはずはないけれど、昴星とこういうことをしてお腹を壊すのなら本望でさえある。

「オシッコ、また出る?」

 カメラを構えて訊くと、昴星はお尻の穴を見せびらかしたその体勢で、自分の顔に向けて少量の透き通った尿を注いで見せた。その露は、ぼくの目にも美味しそうに見える。実際美味しいってことを知っているからだけど、自分の尿を飲んでとろんとした目になる昴星がぼくの想像を補強するのだ。

 昴星はそのまま、自分の舌でおちんちんを愛撫し始めた。タマタマの裏もお尻の穴も見せびらかしながら、……こういうのを「セルフフェラ」って言うのかな。普通の神経をしていたら到底出来るはずもないようなことを、しかし今の昴星はで来てしまう。

「んぅ、おに、ひゃ、おひぃ」

 ああ、そうか。「忘れてないよ。約束だもんね」

 舌先をそっと当ててみる。……うん、そういうものの味――って、一度も口にしたことはないしこれからもするつもりはないけれど――はない。ただ赤らんだ昴星のお尻の穴に刻まれた皺が、ぷつぷつと舌に独特な舌触りを与えるばかりだ。これならば何をしたって構わないと、ぼくは両の親指で昴星の穴を左右に引き広げ、舌先を思い切り突っ込んだ。

「ふゃあ……」

 ぽん、と昴星の口から昴星自身のおちんちんが飛び出してしまった気配がある。ただ、気にせず昴星の望む愛撫をぼくは続行した。……段々と、昴星のお尻について詳しくなっている。昴星の、というか、誰にでも共通してついている場所だけれど。

 此処は尿道と同じく縦の亀裂なのだ。ペニスは概ね横に長い楕円の形をしているから、真っ直ぐ入ると痛いだろう、と既に入ったことのあるぼくは思い、少し反省する。けれどこの辺り、微妙なところだ。昴星は幸いにして痛がらないで居てくれたし、今後も昴星に任せるという方向性をぼくは取るつもりでいる。

「んふぅ……んむ、ん、……んぅ」

 ちゅ、ちゅ、と自分の陰茎にキスをする音が聴こえて来た。首を動かしたりすることはさすがに出来ないに決まっているが、それでも丁寧に舌を当てて、身体を丸めた昴星は貪欲にフェラチオをする。ぼくの突っ込んだ舌先は時々括約筋に締められ、外へと追い遣られる。そういうときには、丁寧に入口を舐めて、力の緩むタイミングを見計らってまた侵入するということを繰り返していた。時折舌遣いの音とは異なる「しゅ」という音が届くことにも気付いていた、それに伴って昴星の括約筋に外向きの力が篭もることにも。どうやら自分で自分のオシッコを飲むという変態的な行為に、昴星は相当に興奮を覚えてしまうらしい。

「おいしいよね、昴星のジュース」

 ぼくが覗くと、昴星は唇から自分の尿を溢れさせながらとろりと笑う。「でも、ミルクもすごく美味しいよ。昴星のお口の中に出したの、ぼくにもくれるよね?」

「んぅ」

 ぼくは肛門への愛撫を再開した。また舌を深く入れて、内壁を舐める。其処には少々それらしき味が残っていたけれど、まあ、仕方のないことだ。あとで正露丸でも飲んでおこう。

 そんなことを思っているうちに、

「ん! んっ、ん……んンっ」

 ぎゅうっとお尻の穴が締まり、魚類めいた動きで脈動した。それが収まるまで優しく昴星のお尻にクンニリングスを施してから、その腰を解放する。さすがに身体の負担は小さいものではなかったか、昴星は少し呻いたが、口の中にはまだミルクがたっぷりと入っている。

「ん」

 と両手でぼくの唇を求めた。すぐに重ねて舌を入れれば、しょっぱい精液を分け与えるように昴星が舌を絡めてくる。しょっぱい精液? と訝って、……ああそうか、お口の中のオシッコと混ぜたんだろうと合点が行く。

 こくん、と喉が鳴って唇を離すと、はぁ、と昴星は、昴星の匂いの溜め息を吐き出して、

「おいしかった……?」

 甘えるようにぼくの首に抱き付いて訊く。

「うん、美味しかったよ。昴星は本当にいろんなところが美味しくって、いい匂いだ。自分のおちんちんしゃぶってオシッコ飲んじゃう昴星、すごくえっちで可愛かった」

 ひひひ、と嬉しそうに微笑んで、「もっと、オシッコ出せるよ、もっと飲むとこ見たい?」

「そうだなあ……、撮って欲しいの?」

 ん、と昴星は頷いて、催促するようにまた自分の太腿を抱える。鼻、唇、すぐそばに自分の小さくなったおちんちんを震わせて、「おにーさんが見たいなら、どんなんだって、いくらだって、見せてあげる」

「これ以上どこ見たらいいのかな。おちんちんもお尻の穴も、タマタマの裏側も、他のみんなが見ないようなところ全部映っちゃってるし」

「んん、でも、いっぱい見て欲しい、おにーさんが気持ちよくなれんなら、それですっげえ、うれしいから……」

 カメラに向かって言う途中でちょろちょろと短く丸っこいおちんちんの皮の先から透明な液体が頼りなく垂れ始めた。昴星は恍惚の表情でそれを唇に浴びていたが、やがてうっとりと口を開け、自分の舌へ、喉の奥へ、注ぎ込んでいく。そうこうしているうちに昴星の小タマネギはまたわずかにふっくらと膨らみ、硬さを帯びた。もっとも、勃起していても大してサイズに変化を見せないのが昴星の此処なのだけれど。

 昴星はすんすんと自分のペニスから漂う濃厚な尿臭を嗅いでから、「おれね、いっぱいちんちんのジュース出しちゃったけど、そのぶんだけいっぱい飲んだから、まだいっぱい、ジュースでると思うよ」と得意げに言う。

「昴星は、いつもそうだね。オシッコしたくなると止まらなくなる。だから今日だけで、……ええと、もう四回か、オムツの中でオシッコしちゃったんだ」

 ひひ、と笑う少年を抱き起こす。「困っちゃうぐらい可愛い赤ちゃんだよ、昴星は。こんな可愛いのに、こんなにいっぱいうんちしちゃったんだ。片付けなきゃね。おりこうさんだから出来るかな?」

 ん、と異臭を放つ物体を乗せたオムツを、昴星は自ら零さないように持ち上げる。ぼくがトイレのドアを開けてあげると、そのたっぷりの排泄物を便器の中へ落とす。本当に、……改めて、すごい量だ。

 昴星は自分の恥ずかしいところを全てぼくに見られているということを十二分に意識して、相変わらずおちんちんをぴくぴくさせていた。

「昴星、まだ二回目のうんちは大丈夫?」

 ぼくが訊くと、オムツを持ったまま首をかしげて、頷く。

「そう。……じゃあ、昴星のお尻の中はいますごくすっきりしてるんだね。太いうんちが出たばっかりだから、お尻の穴、ずいぶん柔らかくなってたし」

 弾力のあるお尻に掌を当てる。肉付きが良くてむっちりしているとは言っても、これぐらいの歳の男の子らしい、身体に比して小さめの臀部はひんやりとしている。

「……お尻の穴、もっと広げたら、おれ、またいっぱいうんこできる?」

「そうだね……、浣腸があれば早いのかもしれないけど、持ってないからね」

 ちょっと待ってて、と言い置いて、……撮影する余裕はないな、カメラを置いて、代わりに押入れからローションとコンドームを抱えて持ってきた。昴星は嬉しそうに便座を下ろし、その上に膝を乗せてぼくを振り返る。ローションのキャップを開け、掌に取ろうとしたぼくにお尻を突き出して、「そのまんま、いれて」とタマタマの裏側を見せながらぼくに強請る。

「……このまんまって言うと……」

「カンチョーしたらうんこでやすくなるなら、カンチョーして。おにーさんの太いのの前にぬるぬるの入れて、それでうんこオモラシしないようにおにーさんのでフタして」

 考える余裕はなかった。慎重にローションの注ぎ口部分をぬるぬるにしてから、昴星が突き出すお尻に挿入して、……ボトルを握る手に力を篭める。

「う……はぁ……」

 しょおおお、とオシッコが噴き出した。五分もガマンしていなかったはずなのに、昴星のオシッコは本当に無尽蔵かと思わせる量が出続けている。締め切って蒸し暑いトイレの中で、自分でオムツから落としたうんちの上へ、昴星は気持ち良さそうにオシッコをしていた。

「ひひ……、ぬるぬる、つめたくって、オシッコもれちゃった」

 昴星は幼い笑みで振り返る。「どんくらい入ったの……?」

「うーんと……、コップの三分の一ぐらいは入ったかな。あんまり入れすぎても良くないだろうし。……っていうか、冷たかった? お腹壊しちゃわないかな……」

 昴星は首を振る。

「壊すぐらいでちょうどいいし、おにーさんのちんちん、すっげー熱いの知ってるから……」

 そして、便器の上で再びぼくにお尻を突き出す。緩んだお尻からは今にもローションが噴き出しそうに見える。ぼくは手早く服を脱ぎ、ゴムを装着した。

「おにーさん、入れて」

 きゅ、とお尻を締めて排便欲求を堪える昴星が言った。「でもって……、おにーさんのカンチョーで、おれのうんこ、いっぱい出したい。そのあとは、おにーさんのちんちん、またいっぱいしゃぶって、ミルクのみたい、おにーさんのジュースものみたい、そのあと、またカンチョーして……」

 贅沢な赤ちゃんだ。けれどその望みを一つひとつ叶えて行くことは、いまのぼくにとってはひたすらに幸福である。

「んぅ……んン!」

 ぼくがお尻の中に押し入ると同時に、昴星のお尻の穴から入れ違いのようにローションが泡立って溢れ出す。昴星の中は昴星の体温よりも少し冷たくて、驚くぐらいにぬるついていた。それで居て、ちっとも緩んでいるということはなくて、しっかりとした圧力でもってぼくを抱擁する。

「やっぱ……、おにーさんの、ちんちん、すっごい、おっきい……!」

「昴星の中も……、すっごく気持ち良いよ……」

 鼻を擽るのは、便器の中から漂う便臭、昴星の纏う尿臭、……背中に珠の汗を浮かべている、それもまた芳しい。

「あ……」

 昴星はビクンと震えて、振り返る。「うんこ……、出てる……?」

 ぼくが見下ろす限りでは、出ていない。ただ、ぶびゅ、と音を立ててローションが噴き出すばかりだ。

「大丈夫、まだ出てきてない」

「ほんとに……? ……あう」

 また下品な音を立てて、ローションの泡が弾け、ぼくの陰毛に纏わり付く。昴星は「あぁ……」と何だか情けないような困ったような声を漏らした。

 しかし、

「一旦抜こうか」

 ぼくが案じても、首を振る。ぞくぞくと身を震わせて、

「うんこ、漏らしてるみたい……、すっごい太くて、熱くて、かたいうんこ……」

 と陶然と呟く。昴星はまたオシッコをしていた。

「ぼくのおちんちんはうんちじゃないんだけどな……」

 苦笑して、でも昴星が気持ちよくなれるなら、ぼくは人間である必要もないとさえ思って、腰を動かし始めた。

「あ、あっ、あっ、すっげ、すっげぇ、おひりっ、ちんちんでたりはいったりしてんのっ、すっげえ、ひもちぃっ」

「太いうんちがいっぱい出てくるみたい?」

「ん、んっ」

「うんち漏らしながら気持ちよくなっちゃうんだ?」

「んぅっ」

「オモラシ好きな恥ずかしい子だもんね、昴星は」

「んぅ、おもらひ、好きっ、好きぃっ……、んっ、れもぉ……っ」

「ん?」

「うんこ、より、おにーさんのちんちん、っ、おにーさんのちんちんのほうが好きだよぉ……」

 それは良かった。うんちの方が好きと言われたら、やっぱりちょっと寂しいので。

「ひゃンっ」

 昴星の小さなぬるぬるおちんちんを掌の中に収め、揉み込むように愛撫する。ぼくの男根が往復するたびにだらしなく粘液を漏らしていた肛門がきゅんと引き締まる。

「やぁ、も、らめっ、また、おれ、もれひゃっ」

「いいよ、オシッコだったら幾らだって」

「ひがうぅ、みぅくっ、れるっ……」

「そう、……いいよ」

 ぼくも、昴星の中で漏れそうだから。

 一押しするごとに、腰に当たる昴星のお尻の弾力が愛らしい。そしてお尻の内側の壁は、柔らかく絡み付いて来るかのようだ。……昴星以外のお尻の中に入ったことがないくせに、この子はお尻がもっちりしているからお尻の内側も肉付きがいいのかな、なんてことを思う余裕が、射精直前とは言え二回目だからぼくにはある。

 それも、あっという間に押し流されてしまうのだけど。

「う、あぁっ、んぁあンっ」

 女の子めいた高い声を上げて、昴星が便器の中に詰まれた自分のうんちの上に精液を撒き散らす。ぼくのペニスは柔らかな肉壁に思い切り絞り上げられて、そのまま昴星の胎内に何度も何度も欲のリズムをバウンドさせた。ずっぽりと深く繋がっていたところからゆっくりと腰を引くと、真っ白な細かい泡に変わったローションがゴムにはたっぷりと纏わり付いていて、精液で膨らんだ先端と繋がる糸を引く。そこはいましばらく、口を開けたままで居た。

「ん……っ」

 昴星は便座の上で身体を支え、仰向けになる。精液の纏わりついたおちんちんはゆるやかに力を喪っていく。お尻の穴がぐにゅっと動いて窄まり、数秒、口を閉じた。

「ひひひ……、おにーさん、また撮って?」

 ぼくはまだゴムさえ外していないのだけれど、そうせがまれては仕方がない。慌てて置きっ放しのカメラを持って戻ってくると、昴星は両手でピースを作ってカメラに目線を送る。お尻の穴に篭もっていた内向きの力が、逆のベクトルを働かせるのが判った。

「ん、ひひ……」

 お世辞にも「綺麗」と言うことは出来ない。破裂音と濁音をぐちゃぐちゃに混ぜたような音が、さっきまでぼくのペニスが往復していた昴星の肛門から響く。「すっげぇ、おれのお尻、ぶびゅびゅって、恥ずかしい音いっぱい立ててる……」

 笑って言いながら、昴星はくたりと力の抜けたおちんちんを摘んで上に向ける。

「んひひ、オシッコ、また漏れちゃう……」

 言うが早いか、もう何度目になるのか判らない噴水が上がった。猛十分すぎるぐらい浴びたはずなのに昴星はまた自分の身体へと温水を撒き散らし、自分の口元へ矛先を向ける。先程までに比べて少し黄色さを取り戻したように見えるオシッコを口へと注ぎ込み、おいしそうに喉を鳴らして飲み込んでいく。もうすっかり、自分の尿を飲むことが好きになってしまったようだ。その間もお尻の穴からは下痢便のような濁ったローションをだらしなく噴き出し続けている。

 この子が此処まで完成した変態だとすれば、こういう子を見て勃起が収まらないぼくだって変態だ。それはもう自覚している。昴星のこういう可愛らしさにきちんと感応できる自分であることを、いっそ誇りにすら思う。

「美味しかった?」

「んぅ……、おいひかったぁ……」

「昴星の、えっちで恥ずかしいところいっぱい撮っちゃったよ。後で一緒に見ようか?」

 昴星は照れ臭そうにこくんと頷いて、自分の柔らかいおっぱいやお腹にオシッコの匂いを滲み込ませるように掌を這わせ、おちんちんにも塗りたくる。「おにーさん、おれ、おいしいよぉ?」

「うん、おいしそうだ。舐めていい?」

「ん、抱っこ」

 昴星が両手を伸ばして甘える。ぽっちゃりとした身体だけれど、そのオシッコでびしょ濡れの身体をぼくは易々と抱き上げる。「お布団つれてって。おれもおにーさんのちんちん、もっと舐めたい」

 既に黄色い染みが尋常ならざる大きさで付いてしまったシーツの上に再び横たえると、昴星は「いっつものと、逆で、おにーさんおれの上に来て、……で、いっぱい舐めて?」

 乾き始めたオシッコのせいで、昴星の身体はちょっとべとつく。けれどキスをする唇も舌も、首も、鎖骨も、ピンク色の乳首もふにふにと甘ったるく柔らかいお腹もしょっぱくて美味しい。昴星の身体をそうやって、普段とは逆向きに下りて行き、また力の入り始めたおちんちんに辿り着く、……美味しい。ちゅうっと吸い上げると中に残っていたフレッシュなオシッコが滲み出し、皮を剥き下ろして見れば粘膜質の亀頭からはツンと匂いが鼻を衝いたが、構わずしゃぶりつけばそれも美味しい。

 そうやってぼくが昴星の味で自分の口を満たしている間に、昴星はぼくのペニスからゴムを外す。「うはぁ……」と笑う声が、自分の股間からするというのは、普段と上下が違うというだけで、何だか妙な気持ちになるものだ。

「おにーさんの、ちんちん、ミルクの、すっげえにおい……」

 ふに、と当たったのは昴星の鼻だろう。少し涼しいのは、嗅がれているからだろう。ぼくは同じように、改めて昴星のおちんちんの匂いを嗅ぐ。どうしてこれを「臭い」なんて思う人が居るのだろうと不思議な気になるぐらい、いい匂いだ。似た匂いの染み込んだブリーフはもう何枚も貰っているし、それでぼくはこの二週間、何度も孤独を慰めてきたけれど、やはり「本物」の匂いに勝るものはない。

「あむ」

 昴星がぼくの亀頭を口に収めた。舌がびっくりするぐらい貪欲に動き回り、ぼくのペニスが纏った精液を舐め取って行く。

「んぅ……、んむ、ちゅ……っ、んっ」

 声を漏らしながらぼくの精液とペニスの味を愉しむ間も、昴星は自分のおちんちんを何度も何度もぴくぴくさせている。ぼくもお返しに、昴星の亀頭のところどころに付着した恥ずかしい汚れを舐め取って、尿道口に浮かぶのがオシッコなのかガマンのおつゆなのかを確かめるために吸い上げた。味はほぼオシッコだけど、とろみがあるから腺液も少し混じっているものと思われた。しかし、実際問題本当に終わったあとはお互いちゃんとお腹の薬を飲んでおかなければいけないだろう。

 とは言え、そういうことは終わってから気にすればいい。

 馬鹿になっているのだと思う。ぼくも、昴星も。どっちがどう、ということではなくて、二人で呼応しあって、どんどん頭がおかしくなっていく。これは一種の化学反応だ。昴星という失禁が趣味の少年、ぼくというショタコンの男、出会ったところから始まって、お互いがお互いを愉しませようとした結果で、此処まで頭おかしくなる。さっきまでオムツをしていた昴星はもはや赤ちゃんではないし、かといって六年生男子でもない、ただ淫らに自分の体液を浴びることさえ悦びに変わってしまった少年だし、ぼくはぼくで、そんな常軌を逸した昴星に尋常でないほど興奮するような男だ。才斗と昴星が、流斗と昴星が、二人で居るときにどんな風にして遊んでたくさん幸せになるかは判らない、が、確かに言えることとしては、ぼくと昴星が二人で遊ぶときにもまた、比較しようもなく特別な幸せがいっぱい生まれて産声を上げるのだということだ。

「んんッ……!」

 ぼくの到達を待たず、昴星の少量のミルクが口の中に零された。ぼくは一旦昴星から降り、余韻の震えを繰り返す昴星のおちんちんを眺める。昴星は休むこともなく起き上がると、布団の脇に置かれたままのカメラに目を向ける。

「撮って欲しいの?」

「ん……、おれの、おにーさんのちんちんしゃぶってるとこ」

「いいよ。すごく可愛いからね」

 ひひ、と昴星は嬉しそうにぼくの足の間に寝転んで、カメラを見上げる。「おにーさん、おれのこうゆうの見て、ちんちんいじってんの?」

「うん、まあ……」

「一人んときに、おれがしゃぶってあげてるみたいになるから?」

 その通りだ。昴星はぼくの構えたカメラを見詰めながら、もちろん既に腺液を浮かべているぼくのペニスに愛らしい音を立てて口付けて、「うれしいな」と呟く。

「おれで、おにーさんのちんちん、こんなかたくなってんの、すげーうれしい……」

 両手で茎を、しこしこ、動かしたり、茎を横咥えにして吸ったり、陰嚢をちろちろと舌で舐めたり……、ぼくの視線とカメラを意識してそういうことをしてくれているのだということが、ぼくには判る。

「おれ、おにーさんのちんちん大好き」

 ぼくの手は自然と昴星の髪に乗った。綺麗な髪だ。「おにーさんのちんちん、おっきくって、いいにおいして、おいしいから、すっげー好き……」

 ちゅ、と裏筋の弦にキスをしてから、紅い舌先が亀頭を這うところを見せる。汚らしい印象しかないぼくのペニスと一緒に映ると、昴星の少女めいた相貌は一層愛らしさを際立たせるようだ。カメラ目線で微笑みながらしていることを考えれば、これは筆舌に尽くし難い魅力を持った、明日からのぼくの慰めになる。

「あん……、む」

 大きく口を開けて、深々と咥え込む。口いっぱいにぼくの味と匂いを感じて、昴星の目はたちまちとろんと酔っ払ったみたいに潤んだ。咥えた口の中で舌が動くちゅぷちゅぷという音も、きっとカメラは拾えているはずだ。「んぉ……、おにぃ、ふぁ、ひんひん、ふっぇ、おいひ……」時折じゅぶっと泡の音が混じるのは、昴星のお尻からまだ吹き出すローションの音だろう。けれど昴星はそれに負けないように口元からもっと品のない音を立て始めた。もう、カメラに向けてサービスをする余裕はないようだ。貪欲な舌がその舌にだけ甘美であればいい乳液の味を求めて、頭の往復とともに動き回る。

 それでも、

「ぷぁ」

 ぼくの射精までの道筋がはっきりしたことを感じ取ったのだろう、口を外して、「いっぱい、出してね? おれの、口ン中、おにーさんの、せーし」とカメラ目線で言った。その言葉に呼応するように、一つ強く震えたぼくのペニスに愛しげなキスをして、また、フェラチオを再開する。お互い、もう遠慮はなかった。昴星は昴星自身の舌の求めるままに、ぼくはぼく自身の快感のために。

「ん……んんー……」

 昴星は眉間に皺も寄せずに、ぼくの精液を受け止めて口を外した。恐らくカメラは少し揺れたはずだ。昴星は何故だか上品に正座をして、太腿の間に勃起したおちんちんをひくつかせつつ、「ん」と、自分の口を指差す。そちらにカメラを向けてあげたところで「あー」と口を開けて、まだぼくの精液が飲み込まれずにそこにあるのを見せてから、こくんと、飲み干して、

「ひひ、おいしかった」

 と笑って言った。

「ねー、おにーさん、カメラ、まだ撮れる?」

「うーんと……、うん、まだ大丈夫みたいだよ」

「ほんと? だったらさ、おれ、もういっこ、撮ってほしいのあるんだけど……、ここだとあれだから、お風呂行こ?」

 何だって構わないと立ち上がったぼくを先導して、お尻を粘液でぬらした昴星が浴室に入る。「今日、いっぱいおれの恥ずかしいとこ撮ってもらったから、最後にすげーのも撮ってほしいなって」

 既に其れを想像して興奮しているのか、タイルの上に立った昴星のおちんちんは浅ましい震えを催している。

「いいよ。どんなのでも」

「ひひ……」

 昴星は浴槽の蓋の上に乗った洗面器を足の下に置く。もう、何をするかは判った。「おれのね、立ったままうんこするとこ、撮って」

「まだ出るの?」

「うん、さっきまでみたくどっさりは出ないかもしんないけど、まだ出せるからさ、おれ、カラダんなか空っぽにしたい」

 いったい、この子の膀胱と大腸、どんな具合に出来ているのだろうか。驚くし、少し呆れるし、……まあ、ぼくにとっては可愛い昴星だから、いいのだけれど。

 昴星はお尻をこっちに向ける。自分の両手で割り開いて穴を見せびらかしながら、照準を合わせるように少し前後に動く。

 納得する場所が見付かったのだろう、「ふーっ」と大きく息を吐いて、昴星は鏡に手を付いて、力み始めた。ぼくはカメラで、少年の臀部を斜め下から狙った。昴星が足を広げていてくれるから、肛門を撮影するのは容易だ。

 考えて見ると、昴星のお尻の穴も、そこから便が出てくるところも、これまで何度も見てきたけれど、この角度というのは初めてで新鮮だ。

「うー……、さっきいっぱい出しちゃったから、もうあんまでないかも……」

 昴星の肛門は生き物の口吻のようにむぐむぐと動く。こうして見ると肛門、とりわけ括約筋というのは魅力的な器官だ。肌の非常に薄いところにあるとともに、無自覚的に緩急の運動を強いているから、少年であっても非常に発達している。

 くすんだ薄ピンク色をして、皺が寄っているというのも可愛らしいと思いつつ、昴星が一生懸命にその場所に外向きの力を篭める様子を観察していたが、幾度かのガス放出以外なかなか出てこない。

「あんまり力むと痔になっちゃうよ」

 その場所を酷使させてしまっていることもあるから、少々心配になって声をかけた。はぁ、と息を吐いて、

「なんか、出そうな感じするんだけどさ……、かたいのが詰まってんのかなぁ……」

 首をかしげてお尻を振り向く。昴星の肛門は、ほんの少し赤らんでいた。一方で、鏡ごしにうかがえるおちんちんはしょんぼりしたように萎んでいる。

「……なにか、うんちが硬くなるようなものを食べたりした? あの、お腹のために飲んでるサプリメントのほかに」

「んー……、あ」

「ん?」

「関係あるかわかんないけど……、夕べ、親と焼肉食べに行った」

「ご両親がいたの?」

「うん、珍しく二人揃ったから、才斗も一緒にさ、四人で。そんで、肉いっぱい食べた」

「野菜は?」

 昴星はひひひと誤魔化すように笑う。「全然食べてない。だってさ、食べ放題だったから、野菜とか食べるのもったいないじゃん」

 聴けば、ご飯もサラダも食べずに、延々肉を食べていたのだそうだ。

「あと、今朝はあのサプリ飲むの忘れてた」

 通常、それぐらいで便秘になるということはありえない。いや、さっき立派なものをしたばかりだから、「便秘」という言葉もそもそも間違っている。ただ、昴星のお腹のリズムが、普段とは少し異なるのは事実であるようだ。

「もっかいおにーさんにちんちんでぐりぐりしてもらったらさ、お尻広がってうんこ出てこないかな」

 と思い付きをそのまま口にして、「あ、でもしてる最中に出てきちゃったらおにーさんのことうんこまみれにしちゃうか……」と思いなおす。

「ぼくのを挿れるかどうかは置いといて、すっきりしないのは困ったね」

 出そうで出ない、辛いのはくしゃみもそうだ。昴星もぼくに向き直って、少し考え込む。幾度か力んでみるけれど、洗面器の中に落ちるのは数滴のオシッコだけだ。

「……ちんちんが、ダメならさ、おにーさん」

 ぼくを見上げて昴星は強請る。「指で、ぐりぐりしてさ、ひっぱり出してよ。お腹ん中すっきりしねーのやだし、おにーさんのちんちん、やっぱりもう一回欲しいし……」

「うーん……」

 そりゃ、そう言われればぼくだって昴星の中にもう一回入りたい。実際のところ、昴星の硬いうんちを「引っ張り出す」ことが物理的に可能かどうかは判らないけれど、昴星のために出来る努力は何だってしなければならないのは事実だろう。

「……じゃあ、さ、昴星」

「ん?」

「立ったままうんちするのは、今度見せてもらうとして……、違うやり方で昴星のお腹の中をきれいにしてもいい?」

 昴星は首を傾げつつ、「違うやり方?」と訝ったが、あっさりと、

「いーよ、おにーさんがそれしたいなら」

 頷いた。ぼくはありがとうと昴星の髪を撫ぜてから、すぐに部屋へ取って返す。

 こういうことがあるとは思っていなかった。ただ、使うとしたらこの機をおいて他にない。昴星や流斗と、いわゆる「スカトロ」のジャンルに入るプレイをするようになって、二人の排便風景はぼくにとって魅力的なものとなった。けれど今日のように、昴星がうまく排便出来ないときには。

 便秘薬は腸に刺激を与えてしまう、痛がるところは見たくない。もう少し自然と排便を促せるものはないだろうかと考えれば、それはやっぱり、浣腸だ。

「うぇえ……?」

 昴星はぼくの摘む無花果型の物体を見て、形容し難いそんな声を出した。けれど、一連のオムツプレイで箍の外れた昴星に怖いものの在ろうはずがない。

「いたくなんない……?」

「ぼくのが入っても平気なお尻が、これぐらいので痛くはならないと思うよ?」

 説明書には目を通してある。ぼくは浣腸の先端を昴星のお尻の穴に挿入して、ゆっくりとチューブの中に溜まった軟膏状のものを押し込んだ。

「うへえ……」

 昴星は気持ち悪そうにそんな声を上げる。

「抜くよ。……ん、そしたらお尻締めて」

 きゅ、と昴星は素直に従う。指やペニスが入っても平気なお尻に、ほんの少量のグリセリンを注入されただけで何だか落ちつかない様子で、「これで、うんこ出んの……?」と不安そうにぼくに訊いた。

「浣腸すると滑りがよくなるんだよ、硬くなって詰まってるのもするんと出てくる、……らしい」

 実際にはぼくも自分の身体で使ったことはないのだ。

「うー……、何かヘンな感じ……」

「パッケージの説明には五分とか十分とかそれぐらいで出てくるようなことが書いてあったよ」

「そんな待つの? ……割りともう、すぐ出ちゃいそうなんだけど」

 そうすると薬液だけが先に出てしまって「本体」というか「本隊」というかを導き出すことが出来ないのだ、ということをぼくは説明して、

「それまで、のんびりと待とう」

 排便をガマンしている昴星に対して我ながら酷いと思いつつ告げた。

「うー……」

 昴星は早くも落ち着かない。柔らかなお腹を宥めるように撫ぜる手のひらから少し視線を下ろせば、おちんちんは可哀相に可愛らしく縮こまってしまっている。ぼくは再びカメラを回し、その縮み上がった陰茎を指で遊んだ。

「可愛いね、昴星のおちんちん。いっぱいオモラシしちゃう、赤ちゃんみたいなおちんちんだ」

 昴星は恥ずかしそうにぼくの指にされるがままだ。時折小さく震えるのは、塊が徐々に肛門近くへと辿り始めたからだろうか。

「おにーさん、……その、オシッコだけ、したらダメ?」

「ん?」

「その……、オシッコしたい」

「オシッコしたら、一緒にうんちも出てきちゃうんじゃない?」

「う……」

「オムツ着ける? そうしたらどっちもオムツの中で出せるし」

 昴星はぶるぶると首を振った。それが嫌なのはぼくにも判る。失禁と脱糞との間には、きっとこの子には――流斗にも――大きな隔たりがあるのだろう。

 昴星はしゃがみ込んで、苦しそうな呼吸を繰り返している。もう五分は経っただろうか。もう少し昴星が排便欲求と戦っている姿を見ていたい気もするけれど、可哀相なのはぼくだって嫌だ。

「じゃあ、そろそろいいかな」

 というぼくの言葉に顔を上げた昴星は、救われたような表情を浮かべていた。

 さっきは後ろを向いて穴を広げて見せてくれたけれど、もうそんな余裕もない。昴星はすぐに洗面器を足の間に置くと、下痢のときのような音を立てて泡っぽい放屁をすると、自由落下の勢いで排便を始めた。粘っこい液体に塗れた便がぼとぼとと洗面器の中に落ちる。

「あー……」

 同時に昴星は縮こまったおちんちんから放尿している。何度目か数えるのも無意味なオシッコを、さっきまでそれを飲むことに執着していたことも忘れたように呆然と洗面器の中へ零している。ぼくがおちんちんにカメラを寄せても、まるで意識の外にあるように呆けた顔で排泄をやめない。

 浴室の中は悪臭で満ちていた。全て出し切った昴星は泣きそうな顔で、

「ほんとに……、漏らしちゃうかと思った……」

 と震えた声で言う。実際、膝がガクガクと震えていて、ぼくが差し伸べた手によろよろと縋りつく。

「よく頑張ったね、いい子。オシッコはガマンできないけどうんちはちゃんと出来たじゃない」

 昴星は安堵しきったように微笑んで頷き、ぼくの腕に頬を寄せる。

「おれ……、うんこ、漏らさないもん」

「そうなの?」

「ん……、小学校入ってから漏らしてない。オシッコは、しょっちゅうだけど、うんこはちゃんとガマンできるもん……」

「そっか。えらいね。オシッコ漏らしちゃうのは赤ちゃんだからしょうがないけど、うんちガマンできるのはすごくえらい」

 ぼくは昴星の髪に、ほっぺたに、キスをして褒めてあげる。昴星の身体はどこを嗅いでもオシッコの匂いがするし、顔中しょっぱい。抱き寄せて、指四本でタマタマごとすっぽり収まってしまうほど縮こまったおちんちんを慰めるように撫ぜてあげながら、舌を絡めるキスをしているうちに、すぐに指先へ反応があった。昴星も応じるように、ぼくの勃ちっぱなしのペニスに指を這わせる。お互いの熱が熱を呼び合う。

 昴星がひょいとお尻を向けた。

「おにーさん、うんこ、きれいにして」

 茶色く濁ったグリセリン液が内腿に伝っている。ぬるめに調整したシャワーで濯いだついでに、柔らかいままの肛門に指を入れてみる。どうやら初めからぼくがそうすることを望んでいたらしい。中を擦るように撫ぜてあげれば、「んぅ……」と昴星はお尻をきゅっと引き締めて、嬉しそうな声を漏らした。

「おにーさん」

 シャワーを止めると、ぼくの指を受け容れたまま昴星は振り返って、微笑む。「約束だよ、……おれんなか、もっかい、おにーさんのちんちん」

「うん……、そうだね。昴星がうんちガマンできたご褒美あげないとね」

 カメラを置く。残念ながらこの光景を収録することは出来まい。

 ゴムを装着すると、昴星は腰掛にぼくを座らせて、「だっこ」と甘えたことを言う。もちろん、ぼくは思う存分昴星という愛らしい「赤ちゃん」を甘えさせてあげるのにためらいはない。昴星は大きく足を広げ、ぼくのペニスを指で支え、腕の力に従ってそろそろと腰を下ろしていく。

「んぁあ……!」

 二回目だから、接続はこれまでで最もスムーズだった。浣腸によって太くて硬いものが通り過ぎたばかりだからかも知れない。

 昴星も同じことを考えたらしい。

「ひひ……、これからさ、これ、するとき、おにーさん、いっつもカンチョーして、おれのお尻んなかのうんこ、ぜんぶ出してからすれば、楽だよ」

 ひょっとしたら昴星、浣腸されるのが気持ちよかったのか。あんなに辛そうにガマンしていたのに。そこまで思って、……ああそうか、だってこの子、マゾヒストだと「説明書」を思い出す。味わう羞恥や苦痛も、繋がる快感を知ってしまえばそれさえ含めて欲しくなってしまうのだ。

「そうだね。二人でこうするときは、いつもしようか」

 ぼくらはまるで恋人みたいに、何度もキスをする。おっぱいの先に指で悪戯をすると、昴星のお尻の穴は一際きつくぼくを抱き締めた。

「やっぱり……」

「ん?」

「……おにーさんのちんちん、あつくって、かたくって、すっげーきもちぃよ……、うんこより、ぜんぜんきもちぃ……」

 前にも同じ言葉を聴かされたけど、それは本当に良かった、と思う。昴星の排泄物だ、それはそれでかけがえのないものではあるけれど、排泄だけで満足されてしまったのではぼくがこうして側にいる意味がなくなってしまうから。

 昴星はほとんど無意識に腰を揺らしていた。それは流斗がよく見せてくれる淫らな動きで、少年の思いがそのまま顕れているかのようで、文句無く可愛らしいものだ。深い深いキスをもう一度したのは、昴星という少年が幼い身体に纏う匂い、味、……表情や仕草までをも含めて、全てを賛美したかったから。

「ひひ、おにーさん、大好き」

 ぼくの肩に額を擦り付けて言う。オシッコの匂いのする、ほんのりと柔らかい身体。ぼくもどうしようもなくいとおしく思えて、両手でお尻を支えてゆっくりと揺すり始めた。

「っン……んぅ、ん! んはぁ、す、っげ、おにーさっ、ちんちん、でっかくてっ……!」

 掴むように当てた手の、指と指の間にしっとりと感じる昴星のお尻の肉、ぼくの下腹部に押し当てられて、……いま、また少し、オシッコをちびった短いおちんちん、ぎゅうと抱き着く腕の力まで、ぼくにはいとおしい。再び深い口付けをして舌を絡め合ったら、今日のぼくらのピリオドはすぐそこだった。

 

 

 

 

「じゃーね、おにーさん、またね」

 玄関先ではなく、アパートの外の道まで見送りに出たぼくに、昴星は辺りをきょろりと見回して周囲に人の目がないことを確認してから背伸びをして、キスをする。可愛い可愛いぼくの、年下の友達。「さいごに、もっかいだけ見せてあげる」とハーフパンツのウエストゴムに指を入れ、ブリーフごと引っ張って小さなおちんちんを覗かせてくれた。あんまり見せられると、部屋に抱えて行ってもう一回可愛がってあげたくなってしまう。「ありがとう」とサラサラの髪を撫ぜると、シャンプーの匂いが秋の風の中を舞った。もちろん一緒に幸せになったあと、お風呂を沸かして、昴星の身体を隅々まで洗ってあげた。

 角を曲がって姿が見えなくなるまで見送って、……えーと、今日はどれぐらいのことをしたんだっけか、と指を折りながら思い返す。全体的にはオムツプレイと言っていいように思う。学校の女の子たちの前で危うくオモラシがバレかけてしまったが、そのことがかえって昴星の心に火をつけたのも確かだ。赤ちゃんみたいになって何度も自分のオシッコを飲んで見せてくれたし、排便も二回、うち一回は、浣腸付き。挿入も、二回もしてしまった。……これは、あまりしてはいけないな。あの子の身体のことを考えるならば、あの子のことが本当に可愛いと思うのならば。自分にそう言い聴かせて部屋の鍵を掛け、まだ尿臭と便臭がほんのり残る部屋でお湯を沸かし、お茶を入れたところで、ポケットの携帯が震えた。

 見知らぬメールアドレス。しかし、そういう前提に配慮してからは、タイトルには「渕脇才斗です」とある。

『こんにちは、メールアドレスのご登録をお願いします。

 いま昴星が帰って来ました。《説明書》はご覧いただけましたか。お兄さんのお役に立ちましたなら幸いです。』

 あの「説明書」にしてもそうだが、びっくりするほど大人びた文章。もちろん彼が心がけてそういう文章を綴っているのは判るが、それにしたって。……そう言えば、「才斗はすっげー頭いいし運動も出来るから女子に超モテる」と昴星が言っていたっけ。何分の一かは同じ血を引く流斗も頭はいいようだし、これで昴星のブリーフの匂い大好きな少年同性愛者でなければ本当に非の打ち所がないだろう。けれど人間は一つぐらい欠点を備えていてくれたほうが愛嬌がある。

 メールは簡潔に纏められた文章で、次のように続いていた。

『僕が今回《説明書》を製作した意図は、昴星という人間をお兄さんにもっと深く知っていただくことで、僕に協力して頂きたかったからです』

 協力? ……ぼくが才斗に協力できることなんてあるんだろうか。寧ろぼくのいまの生活全ては、才斗の「協力」ならぬ譲歩によって成立しているのだけれど。

『つきましては明日の朝七時に、僕の家にいらしてください。早い時間で申し訳在りませんが、昴星が起きてくる前に、お兄さんと二人でお話をさせて頂きたいのです。お忙しいとは思いますが、ご検討をお願いします。』

 日曜の朝七時……。いつもは八時か九時までゆったりと眠るところではあるけれど、他ならぬ才斗の頼みということであればぼくに断るという選択肢はない。彼が何を思い、ぼくに何を話すのかということに興味も在る。

 ぼくはすぐに返信を打ち始めた。

 


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