お礼に少しぐらいはなるかなって

 心地よい疲労感があった。「いいことをしたなあ」とは思わないし思えないけれど、一先ずぼくは一人の悩める少年の気持ちを立ち直らせるという仕事の一助を担う事ができたのだから、気持ちの悪かろうはずがない。遍が次の月曜日以降、胸を張って学校に通えるようになってくれることを、そして出来れば、あの子のオネショが早いうちに治ってくれる事を、ぼくは心から願っていた。

 ぼくはショタコンだ。だけど決して、少年に危害を与えるタイプの人種にはなりたくないと思っている。少年愛者という言葉にはネガティヴなイメージしかないけれど、せめてぼくだけは、少年の役に立つショタコンでいたいと切に願う。

 とはいえ、清い心でずっといられる訳じゃないことは、認めざるを得ない。才斗を先に帰し、流斗を駅まで送って、……家路を辿るぼくの隣には昴星がいた。ぼくと流斗と交わした、あの、悪戯の延長線上にあるようなキスが、昴星には思いのほか重たい意味があったらしい。もちろん、昴星とぼくの間にあるのは、どこまで行っても発展性のない、……そう、ぼくの願いがもし叶うなら、「ともだち」というものになるのだ。だから昴星も、自分が流斗に嫉妬してしまう精神の構造を持て余している。

 けれど、ぼくとしては、なんだか嬉しい気がする。こんなに可愛い年下の「ともだち」に、欲しがってもらえるだけの価値が自分にあるとも思えないのが情けないけれど。

 昴星は家に上がるなり、「ちょっと待っててね」と言い置いて洗面所に入って行った。鞄を、まだ下ろしていない。ということは、着替えをして出てくるということだ。あの鞄の中に――これまで見せてくれたのは、二種類の女の子の水着、それから、そのものずばりの女装服、そしてふんどしとなるガーゼ――またどんなものを仕込んでいるのだろう。想像するだけでぼくは胸を躍らせざるを得ない。衣擦れの音がしばらく響いた。

「いいよー、おにーさん、入ってきて」

 楽しげな声に、早速ぼくはカメラを手にドアを開ける。

 シャツ、ハーフパンツ、……ブリーフ、はない。さっきオモラシをしたので、ノーパンで此処に来たのだ、それらを足元に散らかしたまま、昴星は立っていた。

 襟ぐりと半袖の口が紺色のシャツ、そして、紺色の、水着のようなフォルムの下穿き。

「そんなの……、それも、知り合いの女の子に貰ったの?」

 ぼくはぽかんとして訊いた。昴星が身に纏っているのは、女子の体操服なのである。つまり穿いているのは、ブルマ。

「ひひ。上はおれが去年まで着てたやつ。下だけもらったんだよ」

「それ、ブルマの下はパンツ穿いてるの?」

「うん、穿いてるけど、まだ見ちゃダメ。あとでいっぱい見ていいからさ」

 なるほど、ブリーフ姿の昴星は本当に愛らしいけれど、女装のときには下着も女の子のを身に着けるというのは、彼のポリシーなのかもしれない。

「おにーさん、おれが女子のカッコすると、うれしい?」

 ぼくは心底から頷いた。二度。「すごく可愛いよ。本当に、どきどきするぐらい可愛い」

 昴星はぼくにぴったりと抱き付いて見上げて言う。「おれも、おにーさんが喜んでくれたら嬉しいな……」

 少しだけ、恥ずかしそう。だけどこの子の顔は本当に綺麗だ。何故って、……悦びを凛々しく求める少年の顔が綺麗じゃないはずがないでしょう。

 そして、こんな子がぼくの目に可愛く映らないはずがないでしょう。

「わがまま、ゆっていい?」

 昴星はぴったりと抱きついたまま、ぼくに言う。「……おにーさんのカメラ、まだ電池だいじょぶ?」

「うん、朝たっぷり充電しておいたから、まだ撮れるよ。……可愛い体操服姿、撮って欲しいの?」

 こくん、昴星は頷く。

「でもって……、その、おれで、後でさ、おれでおにーさんがちんこいじったりしてたら、嬉しいから」

 昴星の言葉に、ぼくも素直に頷く。そんなことを言ってくれる昴星と出会えたことが嬉しい。ぼくらは、お互いに嬉しさを重ね合わせて生きている。

「……オモラシしたいんだよね? その格好で」

 ぼくは浴室に昴星を導いた。

 昴星の女装を見るのは、最初のあの早朝から数えて四度目になる。愛らしい顔をした少年の特権だと言っていいと思うが、とにかくよく似合う。ちょっとキツ目のブルマの股間が目に入らなければ、「ああ、こういう女の子っているよねえ」と思ってしまうほどで、けれど股間に膨らみがあるからこそ、ぼくには余計に可愛らしく見えるのだ。

「おにーさん、勃起してんの?」

 ひひ、と笑って昴星はほんの少し意地悪に言う。ぼくはそう言う昴星が、実のところぼくの知る限り最も優しい部類に入る少年であることを知っている。だから、素直に頷くことが出来た。

「見してよ。おれのカッコ見ておにーさんがちんこ硬くしてんの見たい」

 ぼくは、ジーンズを脱ぎ、昴星に請われるままシャツも脱ぎ、結局女子体操服姿の昴星の前で全裸になってしまった。昴星はぼくの性器が上を向いているのをじろじろと見て、満足そうに微笑んで、

「ひひ、おれのこんなカッコ見て、そんな硬くするのなんて、おにーさんだけだ」

 と言う。

「……才斗は? あの子だって君の可愛い格好見たらこうなるんじゃないの?」

 意外にも、昴星は首を横に振った。

「あいつそんな女装興味ないんだって。それよかおれの匂い嗅ぐ方が好きみたいだなー。でも考えてみたらおれもさ、あいつの着てる服とかわりとどうでもいい。それよりあいつのちんこしゃぶる方が好きだなー」

 その辺り、大人びて見える才斗もまだ「侘びさび」を解する処までは至っていないのかもしれないとぼくは考える。

「おにーさん、射精すんのもうちょいガマン出来る?」

 昴星の内腿がほんの少しだけ緊張しているのが判る。ぼくにガマンを強いて、昴星自身がガマン出来ないのだろう。

「うん、……いいよ。撮っててあげようか?」

 そう言ってあげると、心の底から嬉しそうに「うん」と頷き、ぼくが向けるカメラに、愛らしく右手でピースサイン。

「したら、オモラシするよ。このカッコでさ、いっぱいオシッコするとこ見てて。でもってさ、おにーさん、後でおれのオモラシでいっぱいちんこいじってくれよな」

 とても危険で、えっちなことをしている。それなのに昴星の笑顔には少しの陰もなく、太陽のように晴れ晴れとしている。それが、ぼくにはとてもありがたく、嬉しいことのように思われてならない。……ぼくが一緒にいることで、もちろん才斗や流斗ほどではないにしても、その何割かぐらいは昴星のことを喜ばせることが出来ているということだから。

 昴星はお腹の前で手のひらを重ねて、一瞬だけ、躊躇うように力を込める。

 遅れて、二枚の布の向こうから密やかな湧き水の音が微かに漏れ聴こえてくる。ブリーフ一枚に比べて、その音が遠く聴こえるのが趣深いように思える。昴星は自分の穿くブルマからぼくにちらりと視線を向けて「聴こえる?」と囁くように訊いた。

 ぼくは無言で頷く。いつもよりずいぶん遅れて、オシッコがブルマの前にウェットスポットを作り、内腿から一筋、また一筋と流れ零れ出す。

 見た目にはまだ奥ゆかしいけれど、きっと内側の薄い下着はもう洪水に遭ったようになっているはずだ。ぼくの鼻には少しずつ、昴星だけだ醸し得る独特の濃厚な尿臭が届きつつあった。

「はじめて、だね」

 昴星は再びブルマに目を落とし、自分の足の裏から広がる水溜りを見ながら言う。

「おれの、さ、ほんとに、オモラシしてるとこ見せんの」

 ほんとに、オモラシ、という言葉の意味を理解するのに少し時間がかかってしまったが、すぐにぼくは頷いた。これまでは、基本としてパンツのみを穿いた状態での失禁だった、あとは水着か、ふんどし。それが、今回はブルマとはいえちゃんと穿くべきものを穿いている。だから、「ほんとに」昴星はオモラシをしているのだ。

 ぶる、ぶるる、昴星の身体が震える。そして、ほっと甘い息を穿いて、カメラに顔を上げた。

「ぜんぶ、出たよ……、すっげーくさいね、あんなたくさん出したのに、まだおれの、こんなくさいんだなー……」

 そりゃ、オシッコだもん、それに、昴星のだもん、仕方のないことだろう。

「したらさ、おにーさん、そこ座って?」

 昴星は隅っこの腰掛けを指差した。

 フェラチオをしてくれるんだ、と思った。ぼくが「ガマン」したご褒美をくれるつもりなんだ、と。

 けれど、違った。

 昴星はぼくが座ると、昼間、流斗がしたみたいにぼくの太腿に足を広げて跨る。ぼくの暑苦しく勃起したペニスに、じっとりとしたブルマを押し付けるようにして。……至近距離から強烈な尿の臭い、くらくらする。

 昴星が何をしたいか、ぼくには判るのだった。昴星は恥ずかしそうに頬を染め、笑顔も消していた。何と言い出すべきか困ったように、ぼくの目をじいっと見つめている。

「……しようか?」

 ぼくが助け舟を出すと、緊張したようにこくんと頷く。女装しての失禁という、クソ度胸なしじゃ到底できないようなことをしたばかりだと言うのにこのしおらしい顔。しかし、昴星とはこういう男の子なんだ。偽悪的に振る舞ってはいるけれど、実際には心の優しい、ことによっては流斗よりもっと純真無垢な男の子。

 ぼくはカメラを乾いたタイルの上に置き、昴星の、少し汗っぽい髪を撫ぜてから、抱き締めた。体操服の向こうから、流斗よりずっと肉付きのいい体が甘い手触りを寄越した。昴星も、ぼくの男の背中に腕を回す。そして、……勇気を振り絞るように、ぎゅっと目を閉じてぼくの唇にキスをした。

 可愛いな……、と思う。それ以外、何かを思う必要なんてないのかもしれない。

「ん、ふぁ……」

 唇を開け舌を出してみると、それを真似して、昴星も柔らかくて、この部屋にくる途中に買ってあげたスポーツドリンクの味を纏った舌で返してくる。

 互いの唾液を交換するような、濃厚なキスだ。

 ぼくは昼間、流斗としたのが人生最初のキスだったけれど、……でも、昴星を悦ばせてあげることぐらいは出来るらしい。昴星は時折声を漏らし、身体を震わせ、ぼくの舌に感じ切ってくれる。こうして身を重ねてみると、昴星は実際、歳以上に幼い少年なのだとぼくに教えてくるようだ。

 長い長いキスから顔を離すと、昴星はおずおずと目を開ける。ほんの少し、その目は潤んでいるように見えた。

 けれど、その目を微笑ませる。「ひひ」と笑う。

 そして、ぼくにぎゅっと抱き付いた。

「キスしちゃった、おにーさんと……」

 ぼくは繰り返し昴星の髪を撫ぜながら、嬉しそうな声に、同じように嬉しくなるのを感じる。昴星はどこか満ち足りたような顔をしていた。

 視線を、自分のオモラシブルマと重なるぼくのペニスへ向ける。

「おにーさん、ガマンしてくれてありがとな。おにーさんのちんこ、おれとキスしてるときびくびくしてて、すげー熱くなってんの、おれのキンタマに伝わってきて嬉しかったよ」

 ぼくとしてはこうして昴星の、見た目ほど重くない身体を乗せているのも悪くないと思ったけれど、……昴星はタイルに四つん這いになると、両手を彼自身のオシッコで少し濡れたぼくの男根に当て、「ここにも」とキスをする。紺色の、でも濡れているところと乾いているところが陰影となっている丸いお尻が、ぼくの目に麗しく見下ろせた。

「昴星も、出したいんじゃないの……?」

 ぼくのを口に含みかけていた昴星は顔を上げて、こくんと頷く。「……でも、もうちょっとだけ、このカッコでいさせて。おにーさん、おれのオモラシしたちんこの、すげーくさいの嗅いだら、せーし出した後でもすぐ硬くなってくれるだろ……?」

 ぼくは頷き、カメラを構え直す。昴星は微笑んでカメラを見上げながら、ぼくのペニスの先端をぱくんと口に含む。

「んひひ、……おいひい、おにーはんぉ、ひんほ……」

 ちゅるちゅると舌を動かしながら言う顔は、本当に、……いつもながら思うのだけど、こんな子がこの世に居ていいのかと思うぐらいに淫らで、何よりも可愛らしい。ぼくのペニスが強張ると、我が意を得たりと言うように一層勢い付いての口腔愛撫となる。カメラを意識しながら視線を送り、紅い舌で丁寧に男性器の曲線に這わせ、また深々と咥え込むと今度は激しく往復させる。ぼくへの友情を、昴星なりに表現してくれているんだと判る。

「昴星」

 ぼくがそう名を呼ぶだけで、昴星はきっと理解してくれたのだろう。片手をぼくの陰嚢に当てて、優しく揉みしだきながら最大級の器用さを発揮して、……ぼくを射精へと追い詰めた。

「ん……」

 昴星は頭の動きを止めて、ぼくを吸い上げてから顔を外す。それからカメラに向けて一度口を開けて、ぼくの出したものを舌に乗せて見せてから、飲み込んで、

「ひひ、すっげーおいしかった」

 屈託のない笑顔で言った。

「お礼を、しないとね」

 ぼくは呼吸を収めて言う。自分でも「優しい」と自覚出来る微笑みが、自然と頬に浮かんでいるのが判った。

「うん。……でもさ、その前に……」

 昴星は洗面器に目を向ける。「……うんこ、したくなっちゃった。……いい?」

 どうやら今撮っているこのムービーは、一本で二度三度のクライマックスを含むものになるようだ。ぼくは洗面器を引き寄せる。昴星は、やっぱり洪水を内側に吸い込ませたブルマと愛らしく白い女児パンツ、……を黄色く染め上げたものを膝まで下ろし、くっきりと上を向いて震える小振りのおちんちんを見せた。ぼくが嗅ごうとすると、「まだダメ」と止めて、下着だけを背伸びするおちんちんに引っ掛けるようにして被せる。その様子はまさしく「テント」だけど、可愛らしい下着とのギャップがすごい。

「オシッコさ、どーせまた、おれ、出ちゃうし……、このパンツもおにーさんにあげたいし……、さ」

 言いながら昴星はいきんで、早速その張り詰めた布に新しい染みを浮かべる。

 一つ、長い半濁点音が浴室内に響き渡った。昴星は笑って誤魔化したが、さすがに照れ臭そうだ。ぼくは後ろに回って、ブルマとパンツのシワあとが生々しいお尻にカメラを近付ける。

「出るよ、うんこ、たぶん……、太いの」

 言葉の通り、精一杯に外向きの力の入った昴星の肛門から顔を覗かせたものは、この少年が今日まで生み出して見せてくれた同種のかたまりの中で最も太い。お尻の穴、避けちゃうんじゃないか……、ぼくにそんな懸念を抱かしめるほどのもの。

 だけど、ぼくは、

「すごいね、……昴星のうんち、お尻の穴いっぱいに広げて、……立派なの出てきてるよ」

 賞賛の言葉を口にした。昴星が、ぼくにお尻を突き出して見せてくれているのなら、ぼくは一緒になってその価値を高めてあげなければいけない。

 実際、すごく臭い塊だ。昴星が食べたものが、一度昴星の身体を通過しただけだ、それも昴星はこんなに美少年なのだ、なのに、こんなに臭くなるというのは人体の不思議を思わずにはいられない。物体そのものに愛着はわかないけれど、昴星の姿そのものには、ぼくを夢中にさせるだけの魅力が匂い立っている。

 ぼくは排便に夢中になっている昴星に気付かれないように、洗面器のふちを持って少しずつ回し始める。流斗がはじめてのときに言っていたことを思い出したんだ。

「すごいね、切れないでまだ出てくるんだ?」

「ん……、ひひ、だって、おれ、うんこ、いっつもいっぱいするもん……」

 洗面器の中心から、ゆっくりと円を描かせる。一回り、それから、もう一回り……。昴星は自分が出した物がどういう形状になっているのか、気付いていない。

「んッ……、はぁ……」

 三回り目の中央に至ったところで、ようやくそれは昴星のお尻から途切れた。

 昴星はお尻の穴をまだ開けたままで、腰を上げて洗面器を覗き込む。

「おお……、すげー……」

 自分の、そしてぼくの、仕上げたものを見て、楽しそうに笑う。洗面器の中央に盛り上がったそれは、流斗があのとき言っていたように、チョコレートのソフトクリームみたいな様子だ。お尻の方まで伝ったオシッコが表面にかかって、すごく汚い、けれど、「見事」と言っていいくらいのボリューム感がある。

「ちょっともったいないけど、流しに行こうか?」

「うん」

 昴星は満足そうに立ち上がり、パンツを太腿まで下ろしたままで一緒にトイレに行く。ぼくに、まだ柔らかいお尻を拭かせてから、ロールペーパーを手に巻いてずっしりと重量感のあるそれを便器の中に押し落として、流した。

「おにーさんのちんこ、またガチガチだね」

 昴星はブルマを穿き直して微笑んで、ぼくのものに触れる。可愛くてしょうがない。ぼくが抱き上げると、嬉しそうに甘えて頬にキスをする。そのまま、昴星を部屋に運んですっぽんぽんにして、布団の上に横たえた。

「ちんこ、嗅ぎたい?」

 勃起したそこを両手の指で作った円で囲んで、昴星は訊く。

「うん。きっとすごく美味しそうな匂いがするんだよね? こんなパンツの中にずっとあったんだもの」

 ひひ、と笑ってぼくの摘み上げたオモラシパンツを見上げる。

「そのパンツも、おにーさんにあげるよ。それでいっぱい気持ちなれよ」

 ぼくは、約束する。昴星の言う「いっぱい」が何回を指すのか判らないけれど、まず間違いなく、次の土曜日までぼくの精神性を大いに豊かにしてくれるものと考えられる。

「でも、……こんなにたくさん貰っちゃうのは申し訳ない気がするな」

 昴星も流斗も、会うたびに下着をくれる。もう結構な枚数がぼくの引き出しには入っていて、いくら昴星たちが補充にとパンツを買いいれていたとしても限度と言うものがある。

 それで、ぼくは思い付いた。

「今度、ぼくが買ってあげようか?」

 実際にお店に行って男児用(あるいは、女児用の)パンツを対面購入するのはなかなかハードルが高いけれど、インターネット通販を使用すればいい。

「ほんとに? いいの?」

「いつももらってばっかりじゃ悪いし」

 昴星は起き上がり、「ありがと」とぼくにキスをくれた。「じゃー、おれもお礼にいっぱいオモラシしなきゃだなー」それは、本末転倒のような気もするけれど。

「せっかくだから、昴星がオモラシパンツ穿いてるとこ、もっと見てもいい?」

 布団濡れちゃわない? と昴星は一度だけ気にしたけれど、汚れたパンツに足を通すことには躊躇いがなかった。もうすっかり黄色くなった女児下着に再び覆われて、おちんちんはどこか誇らしげにツンと尖る。顔を寄せたぼくの鼻には強烈なまでのオシッコの匂いが届いていた。

「可愛いね、本当に、すごく可愛い。男の子のおちんちんなのに、こんな可愛い女の子のパンツ穿いて、硬くしてる」

 昴星は言葉に反応したようにもじもじと腰を動かして、……それから、そこに僅かに力を込めたようだ。ジワリとまた、中から湧き水が生じる、それは昴星からのプレゼントだ。ぼくは下着の上から、それを吸い上げる。

「ん……、ひひ……」

 昴星は嬉しげにぼくの口に、下着を押し付けた。

 ぼくはそのまま、昴星のお腹に、それから柔らかいおっぱいにたくさんのキスをしながら上がって行く。昴星のおっぱいは、やっぱりふんわりと膨らんでいて、ピンク色の乳首はほんのり甘い気がした。吸って、舐めてと愛撫しているうちに其処は小さな尖りに変わり、昴星自身と身体を震わせて感じ始めたようだ。ぼくの頭を抱えるようにして、声を微かに震わせる。

「おにーさん」

 昴星が甘える。「おれも、おにーさんにしてあげたい」

昴星の乞うままに仰向けになると、ぼくの体に身を重ねて昴星はまたキスをくれた。すっかり「キス」という行為を好きになってくれたらしかった。ぼくが少年の積極的な口付けを受けるという幸福を頂きながら、湿っぽいパンツの後ろに手のひらを当てて、そのぷにぷにとした手触りを愉しんでいると、顔を離した昴星は、今度はぼくの顔に仰向けに跨ると、そのまま触り心地のいいお尻を押し付けてきた。すっかり色の沈着した下着の、女の子のオシッコが出てくると思われるあたりに鼻を擦り付けながら左手でお尻を撫ぜ、右手でコロコロとした触感の小さな勃起を弄り回す。薄い布地を透かして昴星のガマンの露がぬめっているのが指先に伝わってくる。

「あはぁ……」

 昴星はぼくの顔面上で淫らな腰の動きを繰り返している。

「おれ、こんな、オモラシパンツで長いこといんの、はじめてかも……」

 ぼくの鼻に届く匂いは少しずつ、出したてのフレッシュなオシッコのそれから、乾き始めて熟成したものへと変わっていた。

「いい匂いだよ。昴星のオシッコの、すっごい臭い匂い、ぼく、好きだよ」

 それは、昴星の目にも、ぼくのペニスが勃起して震えていることで伝わっているはずだ。

「おにーさんと、ちんこのくっつけっこしてみたい……」

 ぼくにとっても歓迎すべき申し出だ。昴星は再びぼくに正対して身を重ねると、黄色く染みついた女児下着の中の少年シンボルをぼくのものに押し付けて、両手で身体を支えて擦り付け始めた。擦れる布は湿っぽく、それが少年の尿によるものであるという事実はぼくにとってはとても重たい。

「ん、はぁ……ン……、ん……」

 昴星はオモラシの証拠をそうやってぼくになすり付けていたが、やがてもっと貪欲に、ぼくのそれを股下にあてがうと、「大好き」と言っていたその場所の「オモラシパンツ」の感触をぼくの熱で味わいながら、腰を前後に振り、ぼくの構えるカメラの前でパンツの上からおちんちんを弄り始めた。

「いいよ、昴星」

 媚を含んだ目をカメラに向ける。「そのまま出しちゃいたいんでしょう?」

「撮って、る、の?」

「うん。昴星のオモラシパンツも、おちんちんいじってるとこも、全部」

 昴星はもう止まらなかった。

「ん、んっ、おれの、恥ずかしいとこ、全部っ……全部見てっ……」

 淫らな腰つきに拍車がかかる。……まあ、その、正直に言ってそこまで気持ちいいかというとそんなでもないの(もちろん肌触りのいい下着の触り心地、昴星のタマタマの瑞々しい弾み感、何より染み出しぼくに絡みつくオシッコは素晴らしいものだ)だけれど、何にせよ昴星は感じ切っている。自分のオシッコと、ぼくの勃起の熱によって。

「いくとこ、見せてね、昴星」

 ぼくが言うと、ガクガクと頷いて、ずっと下着の上から、ほとんどもう、握って至極ようにしていた手を離し、……腰を突き出す。

「うあぅ、ンっ、あ、っ、あ、あっ、せーしっ、出てるっ、おれっ、の、せぇしっ……」

 余程気持ち良かったのだろう、派手に声を上げて、昴星は下着の中のおちんちんをビクビクと何度も震わせて、射精した。いや、オモラシをしたのだ。その香しく何より臭い下着に、また新しい種類の匂いを染みつけてくれたんだ、……ぼくのために。

「あ……はぁ……」

 昴星は力を失ったようにぼくに身を委ねる。けれど母袋に落ちたカンガルーの赤ん坊が這って乳房に辿り着くように、ほとんど本能でぼくにキスを求めた。可愛いところいっぱい見せてくれてありがとうの気持ちを込めて、ぼくも心から返すのは当然のことだ。

「いっぱい出た?」

 こくん、昴星は頷く。

「じゃあ、そろそろ見せて。きっとすごい匂いになってるはずだよね?」

 ぼくの言葉に従って、昴星は身を起こし、ぼくの顔の隣に膝立ちする。ぼくも半身を起こして、びしょ濡れの下着に指をかけ、そっと覗き込む、……勃起の落ち着いたおちんちんがくたりと曲がって、黄色い布の内側で、オシッコと精液の海に溺れているようなありさまだ。むっとするような二種類の匂いがぼくの鼻腔に殺到する。

 下着を脱がせて、シーツの上に横たえた。濡れて縮こまったそこにカメラを近づけて、昴星の整った顔と一緒に映しこむと、なんだか恥ずかしさが振り返して来たみたいに頬を赤らめて顔を腕で隠そうとする。ぼくはそれを許さないで、

「匂いはカメラじゃ撮れないけど、……ビショビショのパンツを嗅げばいつでも判るね」

 と告げた。

 昴星の真性包茎はサイズを元に戻しつつあった。さすがに今日は、もうずいぶん射精を重ねて、そこも眠たくなっているのかもしれない、……指先で少しべたつくおちんちんを猫の鈴のように揺らして見せた。勃起が完全に収まってしまうと昴星の陰茎はその陰嚢よりも嵩がなく、心底から愛らしいものになった。

 せっかくなので、この小さな、いかにも少年らしいものをもう少し観察させてもらうことにしよう。昴星のおちんちん、ぼくが見るときには勃起していることの方が多いから、かえって新鮮に感じられる。

「昴星、皮、剥ける?」

「ん……、ちょっとだけしか剥けないけど……」

 昴星の細い指で摘まんで、そっと覗いた亀頭からは凄い匂いがする。もちろんオシッコと、精液の残滓にコーティングされていて、鈴口にも雫が残っている。

 ぼくは昴星のお尻に手を入れて、持ち上げた。昴星はおちんちんを摘まんだまま、びっくりして目を丸くする。

「オシッコ、まだ出る?」

「え……?」

「昴星のお腹とかおっぱいとか、全部オシッコの匂いにしてみようよ」

 ここからあの太いものが出たのか、そしてここで才斗を受け入れているのか……、そういうことが、ちょっと信じられないような小さな小さな肉の蕾が、キュッとすぼまった。短いシワも窪みも、オシッコが伝ってほどよく濡れているのが見える。

「オシッコ……?」

 昴星は困ったように、シーツに目をやる。「でも……」

「いいよ、洗えば落ちるし」

 というか、このあとコインランドリーに行って布団一式洗うつもりだ。土休日は昴星たちと遊ぶだけではなくて、平日の間サボりきりの家事もこなさなければならない。意外と忙しくもあるのだ。

 というか、

「ん……、わかった、やってみる……」

 自分の身体をオシッコまみれにすることには、やはり昴星は抵抗がないらしい。何と言う度胸、好奇心。改めてぼくは感嘆する。

 昴星のお腹の下でへたりと寝たおちんちんの先、僅かに開いた包皮の隙間から、ちょろちょろと透き通ったオシッコが溢れ出した。まだ出るのかという驚きより、どこか呆然としたような表情で自分の身体に自分の尿を伝わせていく少年の表情の方が、ぼくには大いにそそり、心を満たすものがあった。

「どんな気持ち?」

 ぼくが訊くと、自分のお腹からおっぱいにかけて濡らしていくせせらぎを見て、

「あったかい……」

 と呟くように言う。オシッコは、間もなく止まった。昴星はびしょ濡れの身体、相変わらず小さなままのおちんちんと、タマタマの裏を露出して、ぼくを見上げる。

 ぼくはそっと昴星のお尻をシーツに下ろして、

「ひゃン!」

 しょっぱいおっぱいに唇を当てた。……想像していたとおり、昴星のおっぱいは尿の味を纏うことによっていっそう美味なるものとなっている。舌で昴星の身体を降りて行き、おへそに溜まったものを吸い上げて、再び下半身に行き着いたときには、しょっぱいけれど甘美な露を零した昴星のその場所は、再びふんわりと輪郭を膨らませていた。

 放って置いたらまたすぐ勃起してしまうのだろう。だからぼくはすぐにその包茎を咥え込んだ、サイズが小さいから、それは本当に「一口」だ。

「ふ、あぁ……、おにーさん……!」

 感極まったように蕩けた声を昴星があげる。他のどこより味が濃く、臭く、そしてぬるりとした舌触りが魅力的だ。昴星のそこはぼくの口の中ですぐに硬くなったけれど、それでも柔らかい吸い心地を楽しむことは出来た。

「お、にーさんっ、たんまっ」

 昴星がぶるっと震えてぼくを制止する。

「……ん?」

 ぼくが顔を上げると、昴星は何かためらうように一度二度、口を開け閉てして、……それから意を決したように、自分の太股をしっかりと抱えて、先程までのように足の間をぼくに見せた。言葉は要らない。ぼくはまだ湿っぽいままの蕾に顔を近づけて、そこの匂いを確かめる。乾き始めたオシッコの刺すような匂いに、ちゃんと拭いたはずではあるけれど、ほんの微かにうんちの匂いも感じられる。けれどぼくは構わずに舌を当てた。……お腹壊したって、明日も休みだ。

「ひぁ……ああ……ン……!」

 舌先で昴星の一番プライベートな部分にこもる力の加減をぼくは知ることが出来た。潮の味の他に、ほんの少しほろ苦いような気もする。けれどぼくは全く構わずに、案外柔らかくも感じられる穴に舌を突っ込んだ。

 ぼくは昴星のうんちの穴を舐めている。

 あんなに太いものをしたから、いつもより緩んでいるのかもしれない。

「ッん、ん、はぁ! あっ……、すっげ、……すっげえきもちぃ……っ!」

 昴星がどこまでも嬉しそうなのが、ぼくにはとても、とてもとても嬉しい。

「昴星」

 ぼくは顔を上げて言った。「ぼくの上においで」

 要するに、ぼくもまた写生したくなったのだ。昴星はきちんと理解して、素直に頷く。しかしぼくが湿っぽいシーツに仰向けになると、昴星はすぐには顔に跨らない。その代わりに、

「……昴星?」

 ぼくの太股を挟むように、正対した。

 少年は左手の指を舐めて、

「おれね、いっつもちゃんと指の爪綺麗にしてんだよ……」

 と濡れたそこを見せる。

 その指を、後ろから自分の肛門に差し入れた。

 ぼくは口を開けたまま、少年がアヌスを弄り、おちんちんを震わせているのを見ている。

「……おれ、おにーさんのちんこ、お尻にいれてみたい……」

 昴星は差し入れた指を盛んに動かしながら言う。

「だっ……」

「ダメ……? でも、おにーさんの、ちんこがさ、おれん中でビクビクすんの、感じれたらさ、すげー嬉しいしさ、それに、いっぱい気持ちよくしてくれたのの、お礼に、ちょっとぐらいはなるかなって、思うから……」

 無茶を言う。……本当に無茶を言う。

 しかしぼくは何も言えないし、少年の無茶を止めることもできないまま、ただ少年が後孔でオナニーしているのを見て、自分のものを硬くして、震わせているばかりだ。そうこうしているうちに昴星の指は、二本、そして三本へと増えてしまう。

 昴星はぼくの身体から降りると、ハーフパンツまで這って行って、ポケットから取り出した財布から、ぼくでも正体がはっきりしている薄い個包を取り出して戻ってくる。

 今度こそ顔を跨ぎ、大事そうに何度か舐めたぼくのものにそのゴム膜を被せる。ぱっくりと空いた昴星の穴の奥は真っ暗だった。

「昴星、いいよ、そんなしてくれなくても……、痛いよ」

 ひひ、と足の間からぼくに視線を投げて、昴星は笑った。

「だいじょぶ。いつも才斗としてるし、……おにーさんのちんこ、才斗のよりおっきいけど、おれのうんこよりは細いよ」

 そりゃ、そうかもしれないけど……!

「それに、おれがしたいからすんだもん。おにーさんは、寝っ転がってるだけだよ」

 多分……、昴星は流斗より先に行きたいのだ。流斗とお揃いではなく、もっと凄いことを、ぼくとしたいと願ってくれているのだ……。

 膜をかぶったぼくのものを跨ごうとした腰を、止める。押入れから、つい昨日新しく買ったばかりのローションを取り出し、昴星の足の間とぼく自身にたっぷりと塗り付けた。

「ひひ」

 昴星の笑い声が、ぼくの心臓に直接響く。

 昴星の腰が、彼自身の指に支えられて上を向いたぼくのペニスへと沈められていく。

 ひたりと重なったぼくの先端と、昴星のお尻の穴の肉。それだけでぼくは射精出来るように思った。けれど昴星は止まらない。

「ん……っ、やっぱ……、才斗よりぜんぜんおっきぃ……!」

 昴星の唇から溢れる声は、しかし全く痛がるような響きではない。ぼくのペニスはそんなことを思っているうちにも、昴星の狭いトンネルの中へと侵入していく。すごく窮屈で、だけど温かくて、思っていたよりもずっと柔らかく弾力があるような昴星のお尻の中は、まるでそこ自体が独立した意志を持っているかのように、ぐにぐにと動いてぼくに絡みついてくる。

 ぐん、と昴星が腰を沈め切った。

「ひ……ひひ、入っちゃった……」

 昴星は肩越しに振り返って、……やっぱり嬉しそうなんだ、本当に心の底から嬉しそうに笑うんだ。「わかる? おにーさん、おれのお尻の中に、ちんこ入れてんだよ……?」

 嬉しい思いをたくさんさせてあげたくて側に居る、それが出来なかったら、側に居ることだけで罪になる。しかしこの子ときたら、ぼくが到底追いつかないうちに、ぼくのことをまた嬉しがらせてしまう……。

「いっぱい、出してくれよな……? おれ、がんばるから……」

 そう言って、昴星はぼくを跨いだ腰を上下させ始めた。

「う、わ……」

 繋がった場所から、ぐちゅぐちゅと音が鳴り、激しく泡立ったローションが昴星の内腿とぼくの腰とで糸を引いている。とまどうばかりの光景だけど、むっちりと厚みのある昴星のお尻の中に収められるたび、ぼくのペニスは三次元的な快感に包まれ、引きずりこまれ、揉みくちゃにされるようだ。

「こう、せっ……」

 ぼくの声は情けないぐらいに震えていた。

 今更のように、ぼくは昴星で童貞を喪ったのだということに気付く。

「んっ、ん、出してっおにーさんのせーしっ、ちんこのビクビクすんの、はやくっ」

 貪欲と言っていいほどの腰の振り方に、ぼくは屈する。

「う、はぁっ……あっす、っげっ、ビクビクしてるっおにーさんのちんこビクビクしてるっ……!」

 昴星が長い髪を振り乱して、背中を反らした。……これまで感じたどの快感よりも強い波が、ぼくを襲っていた。

「ひひ……」

 昴星が、ゆっくりと腰を上げてぼくを抜く。そこに一滴の血もなかったことは、朦朧の中にあるぼくを心から安堵させた。

「すげー……、おにーさんいっぱい出た」

 ぼくのペニスから手際良くゴムを外し、つまみ上げて微笑む。「気持ちよかったんだなー、いっぱいビクビクしてたし、おれもすげー気持ちよかったよ」

 しかし昴星はまだ射精していないのだ。ぼくの顔にふたたびあべこべに跨って、勃起したおちんちんを震わせて、口元に近付ける。

 側に寄るだけで強いオシッコの匂いがぼくを満たす。「おにーさん、オシッコ出る……?」

「ん……?」

「オシッコの、交換こ、しようよ」

 ぼくのオシッコを、先週、この子と流斗はそりゃもうおいしそうに、味わって飲んだ。ぼくという、あまり存在価値のない男から、更に切り離されて捨てられたものを、嬉しそうに笑って飲むという過ちを、ぼくはこの子の傍に居る以上修正させてあげられたらいいのだけど、

「ね、早く、しょっぱいのちょうだい、おれもう漏れちゃうよ」

 ぼくの鼻に口に矛先を当てて、……ぬるっとする。漏れそうなのはオシッコなのか精液なのか、……察するに、両方だろう。そして昴星はぼくと「交換こ」して、ぼくにオシッコを飲ませながら/ぼくのオシッコを飲みながら、快感を享けたいと思っている。

 ぼくのものに価値があるかどうかじゃない、昴星が幸せになるかどうかだ。ぼくは改めてそう思い直したし、ぼくだって昴星の味は欲しいと思う、そして昴星の口で射精するという結論を、何より求めていることは事実だ。

「んっ……」

 昴星が一瞬息を詰まらせた。でもぼくの腹部が濡れなかったということは、蛇口から飛び出た液体を彼は口できちんと捉えたということだ。

 ぼくも同じ。柔らかな皮を捩るようにして放出されたものは、零さずに口に収める。……当然だろう、こんな美少年のくれるもの、零したりしたら勿体無いし、何よりマナー違反だ。

「んぅ……ンく、ん、っん……」

 昴星がそうするように、ぼくも喉を鳴らして飲み込む。ぼくだって馬鹿じゃないから、徐々に学習するし、感覚の記憶だって働かせる。もう何度も口にした昴星の尿の味の、微細な変化にも気付けるようになった。昴星の膀胱は無限のように尿を吐き出してきたけど、そろそろストックがなくなってきたようだ。オシッコの味は煮詰まったように濃くなって、鼻に抜ける匂いもまた凄くなった。けれどいまのぼくには、それが本当に、本当に可愛らしいものとしてしか感じられなくなっている。だって、どんなに臭くたって息継ぎもなしに飲み干すことが出来るんだ。

 ぼくが放尿を終えるのを待って、昴星が舌を動かし始めた。間もなく、ぼくのペニスには確固たる力が篭もり始める。……これが今日、最後の射精になるだろう。どうせなら、一緒にいきたい。特にさっき、昴星のお尻の中で、ぼく一人だけ先にいってしまったばかりだから余計にそう思う。ぼくは昴星のおちんちんを口から抜いて、しわしわの袋を丁寧に舐める、お尻を撫ぜる。手を伸ばして両方のおっぱいを揉み、乳首を指先で擦る。ぼくに悦びをくれた昴星が、とろとろにとろけてしまうぐらいに、ぼくの与えられる最大級の悦びを与えて、……そして、一緒にいこう。

 昴星の肌から漂う、乾いたオシッコの匂いも残らず、いまはぼくのものだった。

「んぅ、おにー、さっ、……ちんこぉ」

 腰を動かして、どうにかぼくの口におちんちんを突っ込もうとする欲深さを諌めて、先端を舐める。口の中に収めて、オシッコの残りとガマンのおつゆを吸い上げる。昴星はそれだけで、身体をぶるぶると震わせた。そんな意地悪ももう必要ないくらい、ぼくのペニスも昴星の口の中で限界を迎えつつあった。

 とろりとしたおつゆを昴星のペニスに絡み付けるように舌を這わせ、幾度か吸い上げただけで、

「ん! ンッ……!」

 昴星が、今日最後の射精を終えた。舌に齎されるわずかな量の精液を搾り取りながら、ぼくも昴星の口へと精液を放つ。お互い、もうあんまり出すことは出来ない。それでも、それなりに、お互いを満足させることは十分に出来るはずの、一往復の射精、それはピリオドの形だ。

「おにーさん」

 ぼくに身体の重さをそのまま委ねて、昴星は胸に頬を摺り寄せる。漂う匂いは形容し難いものがあるけれど、ぼくたちはまるで愛し合う恋人のように見えるかもしれない。幸せな気持ちで――ぼくのものを咥えていた口だということを一旦脇に置いて――ぼくは昴星とキスをした。昴星は「ひひひ」と笑って、「また、さ、そのうち、ふたりっきりでさ、こういうことしようぜ」と甘える。ぼくは繰り返し昴星の髪を撫ぜつつ、罪に胸が僅かに捩れるのを覚えながら、それでも昴星のために、……昴星がきっと喜んでくれる、ぼく自身の幸せのために、しっかりと頷いた。

 

 

 

 

 昴星をお風呂に入れて、通りまで送るときにはもう、長い陽もすっかり沈みかかっていた。お風呂で洗ったブルマ――は、さすがに欲しいとは言わなかったし、昴星も「あげる」とは言わなかった。一着しかない貴重な女装服だ――はまだ乾いていなかったが、いずれにせよおうちに帰ってもう一度洗濯しなければいけない。来週は昴星は才斗と約束があるから来られないと言う。それはもちろん、仕方がない。昴星にとって「恋人」とは才斗であって、常に才斗を最優先してあげなくてはいけない。

 心地良いが、少し重たすぎる疲れを抱えて洗濯機を回しているうちに寝てしまって、……電話が鳴らなかったら、ぼくは明日の朝まで寝ていたかもしれない。そう考えると、電話が鳴ったことじたいは歓迎すべきだっただろうか? 九時から、テレビで見たい映画がやるのだ。

 けれど、

「……はーい」

 発信元を確かめもせずに電話に出て、凍りついたことを考えれば、やはり、歓迎できるものではないのだった。……大体、人が寝ているときに鳴る電話なんてろくなもんじゃない。会社からの急用だったりするわけだ。

「おそれいります」

 と、電話口の女性は切り出した。少し年配、少なくともぼくよりずっと年上の女性の声だということが判った。

「わたくし、牧坂と申します。……牧坂流斗の母でございます」

 寝たまま電話を受けたぼくは、文字通りに飛び起きた。

 流斗の、お母さん。

 ……が、なぜ、ぼくに電話を掛けてきたのだ。

 流斗と今日、先週、どんなことをしてきたのかということをぼくが理解していれば、落ち着いて喋ることなんて出来るはずもなかった。


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