いま世界で一番えっちなぼくたちを

 見事なまでに騙された、いやもう、おそれいりましたと言うしかないよね。

「こんにちは、お兄ちゃん」
 にっこり笑った天使のような少年、「りょうた」ではなく「流斗」と、昴星が仕組んだハニートラップ。流斗の隣でハーフパンツのポケットに手を突っ込んで、昴星はニヤニヤ笑っている。

 ぼくが夕べ、オモラシ処理のお手伝いにかこつけて、いろいろといかがわしい「イタズラ」をしてしまった少年。「りょうた」と名乗り、驚くべき好奇心で以って無意識の淫らさを存分に発揮してくれた、……天使のような。

 本名は、「牧坂流斗」というのだそうだ。夕べ彼が名乗った「りょうた」という名は、とっさに使った偽名。「流斗」と名乗られていたなら、目の前の少年が昴星の言っていた、「外で裸んぼになるのが平気な子」という子とぼくの中で繋がっていたはず。牧坂流斗は昴星の恋人である才斗の従弟に当たる少年なのだそうだ。

「流は、すっげー露出狂なんだ」

 昴星は教えてくれる。

「ずっとさ、『もっと思い切ったことしてみたい』って言ってたからさ。夕べ、こっち来る前にしてくればって。ほら、夕べさ、おにーさんとメールしたじゃん?」

 した。「いま仕事終わったの?」って訊いてきた昴星に、ぼくは「丁度駅に着いたところ」と答えた。城址公園がぼくの帰りの近道であることを流斗に教えてやれば、先回りしてオモラシをした格好で現れることは全く問題なく出来た訳だ。

 あとは、流斗の楽しいように、やればいいだけ。

 ……いやはや、参った。すっかり騙されてしまった、ぐうの音も出ない。いやいや、よく考えてみれば、自分のひり出した便を手に取って「ソフトクリーム」って笑うような子なんてこの世に居るわけがないだろう。

 ……しかしこれは優しい罠であるとも言える。だってそうだろう、ぼくは昴星の恋人でも何でもないけれど、昴星を「可愛い可愛い」言っていたくせに、機会が合った或いは在ったら別の少年に同じことを言い、同じことをしてしまった、言うなれば「浮気」である、けれど二人が結託して仕掛けた罠であったとしたら、ぼくの罪は半減するはずだ。

 いずれにせよ昴星も流斗も全く気にする素振りも見せずにぼくの部屋に上がり込み、ポケットから携帯を取り出し、「どうして気付かなかったのかなー、おにーさんニブ過ぎんじゃねーの?」太い物体の前に、勃起した陰茎を隠しもせずにピースサインしている「りょうた」改めて流斗の、昨日ぼくが撮った写真の中の一枚を見ている。

「フツーに考えたらさ、オモラシして困ってる、服洗って一緒に待っててあげるぐらいまでならアリだと思うけどさ、そいつがうんこするとこ撮ってーなんて言うのおかしいって気付くだろー」

 流斗は「えへへ」と笑って、

「でもぼくすごく楽しかったよー、あんな風にえっちなこといっぱいできて嬉しかった」優しいことを言う。

「ったくさー、流じゃなくてもっとフツーのやつだったらおにーさん今頃牢屋の中だぜ?」

 ぼくとしては恐縮するばかりだ。ただ昴星の寛大さをありがたく思うしかない。

「実際さー、ここんとこさ、この辺でおれらみたいな子供に手ぇ出すやつがうろついてて、子供に声掛けたりするとそれだけで通報されたりするようになってるからおにーさんマジで気ぃ付けた方がいいぜ」

 昴星との出会いがなければぼくだって流斗にあそこまで思い切ったことは出来なかった。しかし、素直に頷いて「すいません……」と小さな声で謝るばかりだ。
「まーいいや」
 昴星は前置きを切り捨てるように立ち上がって、鮮やかに紅いTシャツを脱ぎ捨てる。「遊ぼうぜ」

「うん!」

  流斗も嬉しそうに立ち上がる。

「おにーさん、おれらと遊びたいんだろ? 今日もそういうことするつもりで待ってたんだろ?」

 意地悪く見える、でも愛らしい微笑みで昴星はハーフパンツも下ろす。流斗もそれに倣った。二人とも男児ブリーフ。昴星の穿いているのは紺色のウエストゴムに白抜きの英字で、ええと……、「this fits only for the CHAMPION」と書いてあって、布地は青と白のボーダー。流斗は布地は白だがゴムの通っている部分はパステルグリーンに色付けされている。二人ともおしゃれなブリーフだ。

 二人とも、下着はブリーフが一番いいのだと言う。ぼくの常用しているようなトランクスはほとんど穿くことはないのだそうだ。

 ぼくのような大人が穿いたってどうしようもない見た目にしかならないだろう、でも昴星や流斗のような年代の男の子には、やっぱりブリーフが一番よく似合うと思う、……これは世間からも一定の支持を寄せてもらえる見解ではないかなあ。このところはブリーフも、いま流斗が穿いているようなおしゃれなものも増えているようだし。

 それに、概ね白色であることの多いブリーフには、オシッコの染みが目立つ。

 二人とも、今日穿いてきたブリーフには穿き古し感は皆無、布地はしっとりしているし、昴星の方にも黄ばみは表面にも現れていない。けれど前部分は布が二重構造になっているものであるから、……はたして内側はどうなっているだろうか。

 二人のパンツの中を見てみたい。

 目の前にパンツ一丁の男の子二人が居る、ぼくの部屋に居る。事ここに至って、ぼくはじわじわと嬉しさが身体の中から滲み出て来るのを覚える。ほとんどのショタコンが叶えられないような夢が、ぼくの部屋には在る。ぼくがそれを求めたからというより、夢が流れ星みたいに窓から飛び込んできたようなものだ。

「撮って……、いい?」

「うん」

「いいよー」

 二人を前にして、……次に会うときまでに、もっといいカメラを買おうとぼくは思い決める。

 髪の長い昴星は女の子みたいに可愛い顔で、まろやかなラインで描かれる、ちょっとぽっちゃりした身体付きがとても卑猥に映る。一方で流斗はちゃんと「男の子」であることのすぐ判る、細くて華奢な体型と、緩いウェーブのある髪、澄ましていればきっとびっくりするぐらい冷たい印象にもなってしまうのであろうスマートな顔立ち。

 二人とも、「美少年」だろう。……もちろん、贔屓目もあるかとは思うけれど。

 携帯のカメラを向けると昴星も流斗も嬉しそうにピースサインを送る。それから昴星は流斗を後ろから抱きしめて、大事そうにほっぺたにキスをする。流斗は照れ臭そうで、しかし嬉しそうだ。

「なー、せっかく撮んならさ、おれらが遊んでるとこ撮ってよ」

 昴星はカメラを見上げて強請る。

「あ、ああ、うん、いいよ。……そうか、二人だけで遊ぶこともあるんだったね」

 昴星が、恋人の従弟で在る流斗を実の弟のように可愛がっているらしいことは伝わってくる。

「そうだよ、夕べは才斗と三人で遊んだけど」

「才兄ちゃん、今日はプールの記録会なんだ。だから朝から夕方までいないの」

 なるほど、でも、

「二人は応援しに行ってあげなくていいの?」

 という点は、ちょっと気になる。
「記録会さ、行っても近くで観れるわけじゃねーし。それに才斗、泳ぐのすげー速いから、おれらが行かなくたって大丈夫だよ」

 うん、と流斗も頷く。だからこうして来てくれたという訳か。才斗には悪い気がするけれど、こうして遊びに来てくれるというのはありがたい話だ。

「じゃあ……、うん、二人の退屈しのぎに、自由に遊んでもらって……」

「ってーか、おにーさんも面白いだろ?」

 なあ? と昴星に同意を求められた流斗は「お兄ちゃんがいっぱい面白くなってくれたら、ぼくも嬉しいなあ」なんて可愛いことを言う。

「今日もさー、いろんな服持って来てんだぜー」

 ひひひと笑いながら昴星が鞄のチャックを開ける。中から出てくるのは先日此処へ来たときに着てくれていた女の子の服に、例の女子水着、それから体操服、替えのブリーフ、そして、何やらガーゼのような長い布、一本、もう一本。

「それはなに?」

 ぼくが訊けば、昴星は「ひひひ、何だと思う?」と取り出した其れを伸ばしてみせる。両手に掴んで垂らすと、二人の身長よりも長く、ぼくより少しだけ短く見える。ぼくの身長は百八十四センチ。流斗もそれを見るのは初めてらしく、きょとんとしている。

「これなー、ふんどし! つっても本物のじゃなくて、薬屋さんで買ったガーゼだけど」

 ふんどし。なるほど、六尺ふんどしというやつだろう。「ほら、流、覚えてないか? むかーしさ、まだおまえが二年だったときにさ、秋に遊びにきたとき、お祭で相撲とったろ」

 流斗は少し考えて、「うん、思い出したよ。……あのとき、ふんどし解けちゃって」

「そうそう。みんなの見てる前でフルチンになっちまったんだよなー。おまえ、あんときめそめそ泣いてたけどさ、いまだったらちんこでかくしちゃって大変だっただろうなー」

 その相撲大会に、昴星と才斗も出たのだという。昴星はすぐにころんと負けてしまったけれど、運動神経のある昴星の恋人はどんどん勝ち進んで、結局三位になって賞品を貰ったのだそうだ。

「あんときにさ、おれ、ふんどしの締め方習って、まだ覚えてるからさ。フツーのパンツもいいけど、たまにはこういうのもいいかなーってさ」

 ちなみに、ガーゼは五メートルのを買ったのだという。それをメジャーで計って、概ね六尺に切った二本。「パンツ買うより安かった」と昴星は笑う。

「昴星は、いつもパンツ自分で買うの?」

 うん、と昴星は頷く。「才斗に買ってもらうこともあるよ。でも、今日買ったのは、こないだ流と一緒にスーパーで買ったやつ」

「ぼくのこれ、ゴムのとこ色ついてるの可愛いなあって」

「おれのもさ、ここに英語書いてあんの、かっこいいだろ」

「ほかにもね、ぼく、しましまのと、青いの買ったんだよ」

「青いのはおれも買った。あとフツーの白いのの、ちょっと生地の厚いやつ。薄いのもあるけど、おれはしっかりしてるのが好き。この時期はちょっと暑いけどさ」

 ブリーフパンツに対しての並々ならぬ拘りが、この二人にはあるようだった。幼い頃からトランクスやボクサーブリーフを着用する少年が大勢を占めているであろうこの時代に、古式ゆかしきブリーフを好んで穿いてくれる美少年が少なくとも二人は居るのだということは、ぼくにとって心から歓迎するべきことであろう。

 けれど、ふんどしというのも非常に心躍るものがある。

 実は、昴星たちが参加したという祭の「子ども相撲大会」は、ぼくも観戦したことがある。ただ、流斗のふんどしが解けてしまったという二年前は観に行けなかったし、去年は風邪で寝込んでいた。そうこうしているうちに、今年はその祭で「相撲大会」は行われないことに決まってしまった。理由は、推して知るべし。三年前に散歩がてら観に行って、大小さまざまな少年たちの艶やかなお尻やきゅっと六尺ふんどしの食い込んだお尻を目の保養にしていたけれど、周囲には明らかに少年のお尻を狙う大仰なカメラを首から提げた男が居た。あるいは流斗のようなハプニングの時には血眼になってその股間の幼茎を撮影しようとするに違いない。……汚らわしい連中め、と当時もいまもぼくは思うけれど、彼らとぼくの差はカメラを用いるかこの目という印画紙に焼き付けようとしているか、それだけしかない。

「じゃあ、ふんどし締めるの?」と流斗が訊く。昴星は頷いて、「おまえの分もちゃんとあるし、おれが締めてやるよ」

 けれど、そんな風に奥床しく、且つ臆病で自制心の働くショタコンだったからだろうか。ぼくはこうして、ぼくにだけふんどし姿を見せてくれるという少年たちに出会えた。

「おにーさんも見たいだろ?」

 もちろん、とぼくは頷く。

「じゃーさ、えーと、トイレで締めて来るから待ってて」

 するん、昴星がブリーフを脱ぐ。流斗も同じように脱いだ。後で幾らだって見せてもらえるということが判っているのに、ふるりと揺れる小さな性器にはどうしても視線が呼ばれる。長い布を肩に掛けて、昴星と流斗はトイレに入った。

 ぼくは足元で脱ぎっぱなしのブリーフを覗き込む。まだ真新しく、細かなほつれも毛玉も一切なく、触り心地はすべすべだ。裏返すまでもなく明らかになっているのは、二人とも股間の内側に自分の所有物であることを証明するようにしるしを刻み付けていることで、その染みは同じぐらいの歳の、同じく男の子が付けたものでありながら、はっきりとそれぞれに個性が現れていることをぼくに教える。流斗の方が染みの色は薄いし、あまりサイズも大きくない。それに比べて昴星のものと来たら、濃い目のレモンジュースでも垂らしたのではないかと思うような色の染みがじんわり、だらしなく広範囲に染み渡っている。よく表面に汚れが滲み出なかったものだ。

 今日で会うのは三回目だが、昴星の穿くパンツは、いつでも大概汚れている。少年ゆえ真性包茎、しかも陰茎そのもののサイズが小さく皮がたっぷり余っているものだから、……毛細管現象と言っていいのかどうか判らないが、皮の中に尿が残り、それをきちんと振って払わなければパンツに斯様な汚れを作ってしまうのだろう。そういうからくりは判るのだが、六年生でこういうパンツというのは、正直もうちょっとどうにかしなくちゃダメだよなあ……、なんてことを考えながらぼくは二人が下ろしたばかりの可愛いブリーフを手に取り見比べ、ついでに鼻を近づけて臭いを確かめてみる。流斗のそれは色の通り薄く、真新しい生地の匂いと、恐らくこれはあの子の「体臭」ということになるのだろうけど、甘い、……蜂蜜とミルク飴みたいな匂いがする。それに包まれたオシッコの匂いは率直に言って「いい匂い」ということになる。夕べ、無垢で無毒な天使を装って見せたあの少年が普段穿いているパンツがこういう匂いだということには、何だかすんなりと納得が行く。ちょっと気になってお尻の方も観察してみたが、其処にも汚れは付いていない。「お尻拭くの苦手」と言っていたのは、あれも要するに演技だったのだ。昴星のものに負けず劣らず立派な、そして凄い臭いものをあの顔で産み出すというアンバランスさを思い出して、ぼくの鼓動は呆気なく落ち着きを失くす。

 昴星のものは、確かめるまでもない。顔を近付けただけで臭いの粒子の存在を認識できる。そのまま鼻を当てて嗅げば、ツンとした刺激がある。其れは間違いなく、オシッコであり、汗であり、少年の身体からあぶれてはみ出た老廃物の臭いである。昴星が教えてくれたのは、彼の恋人は昴星の「臭い」のが好き、ということだが。

 臭い、は臭い。しかし不思議と、「嫌な臭い」とは思わないのだ。これは本当に不思議なことである。可愛い顔をしているからという贔屓目も在るのかもしれない。しかし其れにしたって、はっきり鼻が「臭い」と認識するオシッコの臭いが「いいにおい」と思えてならないのはどうしてなのか。

「じゃーん」

 考え込んでいるうちに、トイレのドアが空いて二人の和風少年が姿を現した。「あ、お兄ちゃんぼくたちのパンツ見てる」

 流斗に指摘され、「んだよ、変態だなー」と昴星に笑われ、真っ赤になりつつもぼくは二人のふんどし姿に見惚れていた。

 昴星は足の付け根に水着の跡がくっきり付いている。その場所の白さが、昴星の地肌の色をぼくに教える。見るからにやわらかなお腹、胸、……トイレの中が熱かったのだろう、しっとりと肌に汗を浮かべて立つガーゼ製六尺ふんどしの少年が、女子水着、スカートといった女装をもこなすことを知っているぼくには、何やら危なっかしい姿で在るように思えた。多分、肉付きがいいせいで、成長途上の女の子みたいにおっぱいがふっくらして、乳首がツンと尖っているからだろう。似合っているかどうかは別として、可愛いことは間違いない。

 一方で流斗は、昴星に比べて身長こそ小さいが痩せていて、メリハリのある男の子らしい体付き。ああ、こういう子、昔は居たのかもしれないなあ、なんてことを無根拠にぼくに思わせる。

 そして、同時にぼくが気付くのは、シャツやハーフパンツの日焼け跡が付いた昴星に比べて、流斗は全身さらりと太陽に愛された証の色になっているということだ。夕べはトイレをはじめ、暗い場所でしかこの子の顔を見てこなかったから気付かなかったけれど、実は肌が浅黒かったのか。

「流斗は、日焼け跡付いてないね?」

 ぼくが訊くと、昴星が答える。「んー? ちゃんと付いてんじゃん、あっちこっち焦げてこんがりしてるだろ」

「でも、……その、ズボンの跡とかは」

 昴星の日焼けは特徴的で、一番色の濃淡がはっきりしているのが膝の上、いつも穿いていると言っていたお気に入りのハーフパンツの裾、そして上腕のTシャツのあたり。その内側に、夏に海で着たという女子水着の日焼け跡がある。これが目立たなくなるまでプールの授業は仮病を使って見学しているのだと言うが、このところずっと暇を見つけてはマンションの屋上で甲羅干しをして、よくよく観察しても、タンクトップの跡かなあぐらいにしか見えないようになった。

 しかし、流斗はふんどしで覗く足の付け根も膝小僧の上も、同じ色をしている。

「えへへ」

 流斗はもじもじとその辺りに掌を滑らせながらはにかんで笑う。

「ぼくね、夏に、昴兄ちゃんたちと海行ったとき、すっぽんぽんだったんだよ」

「……すっぽん、ぽん?」

「うん、あのね、みんながちゃんと水着着てる中で、一人だけおちんちん出してたらどんな気持ちかなあって」

「流は見せたがりの変態だからなー」

 昴星は笑いながら流斗の頭をくしゅくしゅ撫ぜる。

「ああう」

「フルチンでさ、大人も子供も、もちろん女子いっぱいいる中で一人だけ裸でさー。まー、流がそんなだったから、おれが女の水着でも怪しまれなかったのかもしんないけどさ」

 そりゃあ、誰だって男の子だか女の子だか判らないような顔の昴星が女子水着で居る傍に、幼いとはいえもう「大きい子」と言われたっていいような流斗がおちんちん丸出しでちょろちょろしていたら気を取られてしまうことだろう。

「はーあ……」

 ぼくの口からは驚き呆れ、そして圧倒され、ちょびっとくらいは、……ああ、その場に居合わたかったなあ、なんてことも思って、混ざり混ざった溜め息が溢れ出していた。「すごいね、流斗……」

 えへへ、と相変わらず流斗はほんのちょっぴり――あくまで「ほんのちょっぴり」だけ――恥ずかしそうに笑って、

「だって、ぼく、みんなに恥ずかしいとこ見られるの大好きなんだ」

 昴星は流斗の言葉を引き継いで教えてくれる。

 昴星が、恋人の才斗と二人きりで愉しんでいた失禁遊戯に、見目愛らしく心優しく、そして賢い流斗を巻き込んだとき、アクシデンタルにも流斗は同い年の女の子におちんちんを見られてしまったのだそうだ。

 それは流斗にとっては大いにショッキングなことであったに違いない。しかし昴星は持ち前の機転で、その女子たちをも巻き込んで、流斗に学習させたのだ。「ちんこ、こんな風に見られてさ、でも気持ちィだろ? おまえがそうやってオモラシした恥ずかしいちんこ見せびらかしてるとこ見て、こいつら喜んでんだぜ」と女子たちの見ている前で少年に初めての射精を経験させた。

 ただ、昴星が手を下したのはそれだけ。以降、離れた街に住む流斗は独自の成長をどんどんと遂げて行ったのだと言う。昴星が相変わらず恋人と失禁遊戯に興じている間、流斗は昴星がするような、密やかな室内での失禁のみならず、屋外――それも街中とか電車の中とか、とにかく人前での――失禁や、其れに乗じての露出までもするようになっていたらしい。

「だから、昨日はね、お兄ちゃんに遊んでもらえてすごく嬉しかったよ。あんな風に知らない人とえっちなことするの、初めてだったから」

「ずーっと流が『したい』って言っててさ、でも、相手が変な奴だったら流が危ない目に遭っちゃうし、どうしたらいいかなーってずっと考えてたら、おにーさんと友達になったからさ。おにーさんだったら大丈夫だろーって」

 信頼してもらえていたのなら、それに応えることが出来てよかったと思う。一方で、こんな自分で良いのかとも思う。何をいまさら。ぼくの目の前にはどんなに貪欲なショタコンが幾らお金を積んだって手に入らないような、ぼくのことを信じて、えっちな姿を見せてくれる男の子が二人も居るのだ。

「したら流、どんなことしよっか」

 昴星が流斗の両手を取って訊く。ぼくは改めてカメラを構え直す。

「んっと……、こうゆうの」

 流斗が、背伸びをして自分のふんどしの、……「前袋」って言うんだろうか、小さな膨らみを、昴星の膨らみに押し付ける。「お」と昴星は驚いたように目を丸くしたが、すぐに流斗の手を解き、背中に手を回す。

 ふんどし一丁の美少年が二人で抱き合っている。これは言うなれば、ボーイズラブだ。流斗は背伸びをして、昴星の唇にちゅっと音を立ててキスをする。

「ひひ、……流、可愛いなー」

 昴星はとても嬉しそうだ。「昴兄ちゃんも可愛いよ、ふんどし、すっごく似合ってる」と、流斗はまた昴星にキスをする。

 当然ながら、男の子同士のキスを見るのも初めてなぼくだ。同性愛者のつもりはないから、自分が男とキスをすることなんて想像するのも憚られる。大人の男同士の口付けだって、美しいとは思わない。けれど穢れを知らないように……、少なくとも、そういう風に見える昴星と流斗のキスの、何と美しいことか。しかも、二人ともふんどし。

 二人は畳の上に腰を下ろした。カメラの方をちらりと見た流斗が、

「ぼくの、昨日いっぱいおっきなうんちしたお尻だよー」

 四つん這いになってお尻を此方に向ける。捻られたガーゼが細まって、引き締まった小さなお尻にきゅっと食い込んでいる。「昴兄ちゃんもお尻見せよ?」と流斗に誘われるまま、昴星も同じポーズになった。二人で顔を見合わせて、クスクスと笑い交わしている。

 判っていたことだけど、やっぱり昴星の方がお尻は大きい。肉付きが良くて、むっちりとしている。其処に日焼け跡が加わって、何ともエロティックな魅力がある。感心するのは、昴星が締めてあげたのであろう流斗のふんどしが上手に巻けているのはまあ判るとして、昴星自身の手による昴星のふんどしも、しっかりと締まっているということだ。ぼくだってふんどしのちゃんとした締め方なんて判らない。

「撮れた?」

 振り返って昴星が訊く。ぼくが頷いて応えると、昴星はごろんと仰向けになって、「流、おいで」と身体の上に誘う。

 二人の股間、……二つのふんどしが唐竹に割る股下とお尻、締め付けの中でもふっくらと丸みを帯びて居るのが判る前袋とが重なる。陳腐な言い回しになるけれど、絶景である。

「えへへ、昴兄ちゃんと恋人みたい」

 流斗は嬉しそうに笑う。昴星は、きっと普段才斗にそうされているんだろう、優しい掌で流斗の髪を撫ぜ、今度は自分からキスをする音が立つ。其方にカメラを向ければ、二人は重ねるだけの可愛いキスを何度も繰り返していた。

「ねー、おにーさん」

 キスを止めて昴星が見上げる。「これだとさ、おれらのちんこ全然撮れないけどだいじょぶ?」

 それは、確かにちょっと残念なことである。昴星と流斗のおちんちんの大きさ、形の違い、同時に観察してみたいという気持ちが、ぼくにはあったから。……けれど、こんな風にふんどし姿の男の子二人がいちゃいちゃしている姿も、ぼくにとっては魅力的過ぎる。

 それに、前袋の膨らみ。昴星は結構しっかりと締めたらしい。薄いガーゼには、くっきりと二人のおちんちんが狭い空間で上を向いて収まっているのを見ることが出来るのだ。もう少し顔を寄せれば、色さえも少し透かして見えるかもしれない。

「……後で外して見せてくれるでしょ?」

 ぼくが問うと、「そりゃー、見せてあげるけどさ、……オシッコしたくなったらどうしたらいいの?」と訊き返す。

「……したいの?」

 昴星と流斗は顔を見合わせて、同時に頷いた。

「だって、昴兄ちゃん、お兄ちゃんとこだったらいっぱいオモラシしていいよって言ってたから、ぼく、ずっとガマンしてた」

「おれも、出てくる前に水いっぱい飲んだし、……おにーさん見たいだろーって思ったからさ」

 ブリーフではない、せっかく自分でこしらえたふんどしだから、あっさりオシッコで汚してしまうのが憚られるのかもしれない。

 だから、ぼくは言った。

「薬局で売ってるガーゼで作ったんだよね? 何なら、今度はぼくが買ってあげる。そうすれば、今日はそれを汚しちゃっても平気だよね?」

 昴星は、「あー」と納得したように言う。流斗が起き上がった。その目はキラキラ輝いている。

「ぼく、こういうのでオモラシするのはじめてだよ」

「そんなん、おれだってはじめてだよ。……ここじゃやばいんだよね? 流、お風呂行こ」

 昴星は流斗の手を引いて、浴室に入っていく。ぼくは携帯電話を構えたまま二人の後を追う。つくづく、新しい、ちゃんと動画を撮るのに適したカメラを買いたいなとぼくは思わないではいられない。

 三人で居ると、さすがに狭さを感じる。ぼくは乾いたバスタブの中に立って携帯電話を構えた。二人は手を繋いで、カメラと、互いの股間と、視線を落ち着きなくうろつかせている。

「ときどきさ、才斗いるときも、いないときも、二人で一緒にオモラシしたりするんだぜ」

 昴星が言う表情からは、自分のしている行為が間違っていると知っているがゆえの羞恥心と、快楽に負けてしまう情けなさと、隠しようもない気持ちの強さとが交じり合って、本人無自覚のいやらしさが漂っている。流斗は、……限界が近いのだろう、落ち着きなく前袋を握ったり、太腿をすり合わせたりしながら、「昴兄ちゃんとオモラシするの、好きだよ。一人でするのも好きだけど、一緒にオモラシすると、何倍も楽しくって、気持ちいいの」と言う。同じく恥ずかしそうだが、それは正当に働く羞恥心ではないように思う。単純に、「恥ずかしければ恥ずかしいほど気持ちいい」ということを学んだ身体が、より強い快感を求めるが故に沸き起こるものだろうとぼくは思った。

「じゃあ、……いいよ、カメラの前で、いっしょにしてごらん?」

 ぼくが言うと、二人は視線を絡めて、こくんと頷く。

 繋いだ手の、それぞれの指に、きゅっと力が篭もる。

「ん……」

「はぁ……」

 ほとんど同時に、二人のガーゼの前袋に染みが生じた。

 ブリーフのときとは違うのだろう、と思う。より通気性が良く、吸水性の悪い布地はあっという間に細かな格子模様の隙間から二人のオシッコを外に逃がしてしまうから、下着のときのようなタイムラグはないのだ。控え目なところのない水音に二人ともびっくりしたように自分の股間を見下ろす。前袋からはじょぼじょぼと勢い良く薄黄色の液体が溢れ出していた。もちろん、股間からも雨が降り注ぐ。二人の立つタイルの上には、見る見るうちに大きな水溜りが出来て行った。

「はぅ……っ」

 ぶるぶると身体に震えを走らせて、先に放尿を終えたのは流斗だった。昴星はいま少しの間、うっとりとした顔のままオモラシを続けたが、間もなく同じように震えた。二人は自分たちの、すっかり濡れた股間を見比べて、小さく笑う。まだ勃起していないが、水を吸ったガーゼはぴったりと吸い付くように肌に密着していて、二人の茎と袋の形状がはっきりと浮かび上がっている。

「いっつもね、昴兄ちゃんの方がオシッコいっぱい出るんだよ。いっせーのせで出しても」

「そりゃー、だっておれのほうが年上だもん」

「オネショのときお布団濡らすのも、昴兄ちゃんの方がおっきいんだよね」

「そりゃー、……まあ」

 色も、昴星の方が濃い。同じ「オシッコ」でありながら、鼻に届く匂いが二通りというのも面白い。もちろん、よりはっきり感じられるのは昴星のものだ。

 まだオネショの治らない昴星のシーツにいったいどれぐらい大きな「大陸」が描かれているのか、昴星の足元で流斗のものと交じり合う水溜りを見て想像するぼくの目の前で、流斗が再び甘えるように昴星に背伸びして抱き着く。昴星の腕も自然に恋人の従弟の背中へ回った。

「ね、昴兄ちゃん、お尻のほうあんまり濡れないよね」

 と昴星のむき出しのお尻に触って、流斗が言う。

「だって、やっぱり、オシッコどんどん流れてっちゃうんだもん。それにさ、ほら、パンツと違ってお尻んとこ布ないし」

「ぼくね、オモラシしたあとお尻びちょびちょになってるの好きだよ」

 流斗の言葉に、昴星も全面同意の首肯をした。

「あれ、気持ち悪くて気持ちいいんだよなー」

 流斗が昴星のふんどしの結び目に手をかけた。「いっしょに外して、すっぽんぽんになろ?」と誘えば、昴星も流斗のその場所に指を引っ掛ける。それからちらりと自分の背中を見て、「解けるか? おれ、けっこうきつく結んだけど」

「ん、たぶんだいじょぶ……、こうだよね?」

 流斗の指が動くと、昴星の結び目は徐々に緩んでいく。それを振り返って確かめた昴星も、同じように流斗のふんどしを解きに取り掛かった。「……こういうカッコでオシッコしたくなったときって、どうするのかな?」二人の股下が撓んだ。けれど真横から見ているぼくには、二人の大事な部分はまだ見えない。

「おれ、相撲出たときさ、負けたあとトイレ行きたくなったんだけど、そんときは係りの人が一緒について来てくれたよ。一旦フルチンになってさ、そのあと締めなおしてもらった」

「きっと間に合わなくってチビっちゃう子とか、いるよね」

「かもなー、おれらんときは居なかったけど」

 二人の掴む六尺ふんどしの端と、重ねあうおちんちんの膨らみと。そこ以外の布は既に垂れて解けた。ぼくの方を二人はちらりと見て、企み深い目で笑う。

「おにーさん、ちんこ見たそうな顔してんなー」

 昴星にずばりと言われて、けれどぼくは格好付けずに頷いた。

「ひひ、エロいの。なあ流、おにーさんおれたちのちんこ見たいんだって。オシッコまみれできたねーのになー」

 流斗もクスクスと笑う。「でも、昴兄ちゃんのおちんちん可愛いもん。ぼくも見たいよ」

「じゃー、いっせーのせで見せてやろうか」

「うん」

 濡れたふんどしを手にした二人は、同時にぼくに向き直った。

 ふんどし越しでも、ほとんど見えていたようなものだったけれど、やっぱりこうやってはっきり見えるというのは、素晴らしいことだ。

 昴星と流斗はそれぞれの手に自分の汚したふんどしを持ち、その黄色い染みが何処で出来たのかを見せびらかす。

「昴兄ちゃんの方が黄色いねえ」

 流斗がそれを覗き込み、「おまえのも黄色いじゃん」と昴星は流斗のものを手に取る。

「ここんとこにちんこ当たってたんだな。ここから広がってる」

「うん、びしょびしょ。乾かしたらすごく黄色くなるね」

 個性と呼ぶべきものが其処にはあるように思う。昴星の、我ながらこの喩えはどうかと思うけれど、やっぱりペコロスのように見える小さくて丸っこくて、短いものに対して、流斗の体型をそのまま反映させたような細いもの。同じオシッコをして、その色や匂いが違うように、その場所も性質は同じであっても形が違うのは自然なことのように思えるし、二人のおちんちんは二人の身体に良く似合っているとぼくは思った。

 カメラが交互にその場所を映していることに、二人は気付いた。「ちんこもっと見たいの?」という昴星の問いに、ぼくはあくまで素直だった。「じゃー、もっと近くで撮らしてあげる」と、二人はぼくの立つ浴槽の縁までやって来る。

「ほら、おれたちのちんこ」

 昴星と流斗の、濡れた陰茎がぼくの前に二つ並んだ。まだ柔らかく垂れたままだけど、それはそれだけで卑猥なものだ。考えてみると、……二人は当たり前のようにぼくにこうして裸を見せてくれるけれど、この状態だって普通に生きていたらありえない、ぼくのような嗜好を持つ人間にとっては天国のようなものだ。多くのショタコンがきっと、見たい見たいと強く願い、けれど叶わない夢を、ぼくはいま、叶えている。二人の性器の匂いさえ届く場所にいる。

「触ってもいい?」

 と訊けば、二人とも「うん」「いいよー」と気軽に応える。ぼくはまず、昴星のものに触れた。

 これで触らせてもらうのは三度目のことだけれど、やはり可愛いと思う。茎のサイズは、何度も言っては申し訳ないけれど小ぶり、だけれど、袋は平均的な大きさだと言っていいだろう。日焼の陰で真っ白な其処は、いま出したばかりのオシッコの臭いがかなり濃厚だが、そっと皮を向けば、より強い臭いが破裂したように漂ってくる。短いけれど根元を摘めばぷにぷにと拉げ、動かせば余り皮の先がふるりと揺れる。

「ね、お兄ちゃん、ぼくのおちんちんもー」

 催促するように、流斗は自分の細い茎をぷるぷると揺らして見せる。ぼくは昴星のおちんちんをもう少し触ってあげてから、流斗の細い、日向と日陰の境目が判然としないものを摘んだ。昴星よりも細いが、昴星よりも長い。それは余り皮の部分を含めなくてもそうで、皮の中の茎の手応えからも明らかだった。

 臭いは昴星に比べればずいぶんとマイルド。昴星と同じくらいにたっぷり余った皮を剥いてみたけれど、濡れたオシッコの穴もその周囲も比較的臭いは薄いようだった。

「ね、お兄ちゃん、きのうみたいにおちんちんしゃぶってよ」

 流斗が甘ったるい声で強請る。「きのうの、お兄ちゃんにしてもらったの、すっごく気持ちよかったんだ」

 昴星が「えー」と不平そうに声を上げる。

「おれもおにーさんにしてもらいたいよ、おにーさんのちんこしゃぶり気持ちいいんだもん。流ばっかずりーよ」

 自分のフェラチオが上手と褒められるのは複雑な気持ちだ。二人を気持ちよくしてあげられているのなら素直に喜ぶべきかも知れない、だから一生懸命にしてあげようとは思っているけれど、……多分、それだけじゃない。要するにぼくが男の子のおちんちんをしゃぶるのが好きな変態だからということだ。

「ええと……、じゃあ、順番にしてあげようか」

 携帯電話をポケットに突っ込んで、「まず、流斗から先に」ぼくは言った。

「嬉しい。でも昴兄ちゃんと一緒だと、もっと嬉しいな」

 流斗は昴星の股間を見て言う。

「一緒なんて、そんなの出来んの?」

「出来るよ、きっと」

 流斗が浴槽の縁を跨いで座る。「昴兄ちゃんも」と昴星を誘い、同じく跨がせると、流斗は両足を上げ、腿を昴星の腿に乗せ、その首に手を回す。二人のおちんちんの高さは揃い、ごく近くに接している。

「ね、これなら出来るよ」

 はー、と昴星が感心したように呟く。「よく考えんなー、流は……」

「これだと、昴兄ちゃんも気持ちぃし、おちんちんのくっつけっこしてるの、すごくえっちだよ」

 ぼくの鼻は至近距離にある二人の臭いをきちんと嗅ぎ分けている。恐らく大部分の人にとってはただ「臭い」と切って捨てられるようなものだろうし、嗅ぎ分けられるのはぼくの他には、昴星の恋人であり流斗の従兄である才斗しか居ないだろう。

 それにしても、二本の小さな陰茎に手を添えて、同時に口へ収めるのはやはり非常に難しい。何せ、二人とも小さいのだ。あまり皮を引っ張って痛がらせても可哀相だ。結局、二人のを交互に愛撫してあげるほかないかと思っていた矢先に、徐々に二人の陰茎の形状が変化し始めた。

「お、流、もう勃つのかよ」

 昴星がからかうように言うが、昴星のペニスも先程に比べるとずっとふっくらしている。

「だって、えっちなんだもん。昴兄ちゃんのおちんちんもおっきくなってきてるよ?」

 だって、えっちだし、と昴星は流斗と同じことを言った。

 目の前で刻々と勃起していく二本の少年性器。何と言うか、不思議な迫力がある。先に完全に勃ち上がったのは流斗の方で、包皮の先端には隙間が開き、オシッコの穴が僅かに覗ける。一方で昴星はころんと丸いものがそのまま上を向いたような塩梅で、あまりサイズに変化はないように思える。勃起してしまうと、もう、間違いなく流斗の方が大きい。

 そういうことを言わないでいたぼくの鼻先で、昴星が流斗のおちんちんを摘んで皮を剥き、自分の先端にくっ付ける。

「おにーさん、おれのも剥いてよ。くっつけたまんまでしゃぶって」

 言われたとおり、勃起した状態では流斗よりも余り皮のたっぷりある昴星の包皮をどうにか捲り下ろして、……と言っても、二人とも真性包茎だ、さすがに根元までは行かない。けれど外側よりも臭いの強い場所を露わにして二つくっつけ合わせれば、もちろん少し工夫は必要だけど、

「はぁんっ……」

「う、わ……、きもちぃ……!」

 二人の美少年の、二本の、匂いの種類は違えど、はっきり臭いオシッコに塗れたおちんちんを、ぼくは同時に口に含むことが出来るのだった。

 正直に言って、ぼくは幸せだ。口の中にじんわりと広がるのは二人のオシッコの潮の味であり、鼻に届くのはその匂い。耳には二人が感じている声が降って来る。少し口を外せば、愛らしい二本が震えているのも見える、……ぼくは五感全てで美少年二人を感じている。

「すっごい……、すっごい、おちんちん、きもちぃ……」

 流斗がうっとりと声を漏らせば、昴星も同意する。

「こんなの、はじめてだよ……、流と、ちんこ、いっしょに気持ちよくなってんの……、すっげえ……」

 さすがに一人ずつに愛撫を施すよりは快感は強まらないかもしれないと思ったけれど、二人はうっとりとぼくの愛撫を味わってくれている。多分、「同時に」されているということが予想よりも胸に堪えるのだろう。

 ぼくにとっても、強い興奮を覚える行為だ。歯を立てないように気を遣い、顎が疲れたときには二人の足の付け根にまだ残る尿臭尿味を愉しむ。再びおちんちんを纏めて咥えたときには、舌の先にぬるりと甘い潮の味が届いた。どちらのからだろう、きっと、二人とも。

「あぁん……、お兄ちゃん、もぉ、出ちゃいそうだよぉ」

 流斗がとびきり甘い声を上げる。昴星は、と思っていたら、

「んぅっ!」

 ビクンと、ぼくの頬肉を口の左半分を満たす性器が震えた。それは昴星の鼓動に違いなくて、間もなくぼくの口の中には尿とは異質の強い匂いを伴うゼラチン質の粘液が広がった。同じタイミングで愛撫を始めたと言うのに、昴星の方が先にいってしまったというわけだ。全く、おちんちんの性能において昴星はずいぶん流斗に劣っている。可愛いな。そんな風に思いながら、ぼくは昴星のを口の中に入れたまま、流斗のために頭を動かすことにした。

「んやっ、あっ、おにっ、さっ、いっ、いっひゃばっかだからっ」

 昴星がそんな甲高い泣き声を散らすが、構わない。「あ、はぁあっ、お兄ちゃんの、っ、お口っ、……きもちぃっ」流斗の甘い甘い声と昴星の酸っぱい声とが、浴室のタイルの中で反響する。

「んっ、んっ、おにいちゃっ、お口にオモラシしちゃうぅっ」

 流斗が、夕べを思い出させるようなことを言った。細い尿道から脈動と共に幼い精液が飛び出す「びゅくん」という音さえ、ぼくの耳は捉えた気がする。昴星の精液より薄く、量が少なく、どことなく甘いような精液をぼくがゆっくり味わう暇もなく、また新しい潮がぼくの左半分から溢れ始めたのを感じる。

「あ……、ああ、ああ……」

 昴星が、オシッコを漏らしているのだ。

 射精直後の強い快感に括約筋の鎖が緩んだと見える。そもそも、大量の水分を摂ってここへ来てくれているのだから、オシッコはまだ幾らだって出てくるのだろう。二本の性器を咥えているままではさすがに全て飲み切ることは出来ない。ぼくが口を外すと、上を向いたままの昴星のおちんちんから噴き出す元気な放物線はぷるんと乱れ、身を重ねる流斗の身体に掛かる。ぼくは口の中をいっぱいに満たす、流斗の精液と昴星の尿を味わってから、一気に飲み下した。

「あはっ……、昴兄ちゃんのオシッコ、あったかぁい」

 流斗は愉悦に蕩けた声で笑いながら、蛇口の向きを変えて、昴星の身体へと向ける。

「あ……っ」

 昴星は顔を背けるが、その柔らかな胸に腹に、自分の出すオシッコが流れていくのに対して無力なままだ。徐々に勢いを失っていく其れが流れて、締め切った浴槽の中はより濃厚な匂いに満たされる。

「すっごい、昴兄ちゃん、おっぱいまでオシッコでびちょびちょ、……美味しそう」

 流斗は太腿を下ろし、呆然とする昴星の胸の先にちゅっとキスをした。「う」と、……其れが性感によるものかどうかは判然としないが、昴星はピクンと震えた。

「わあ……、昴兄ちゃんのおっぱい、ぷにぷにしてて気持ちいい……。オシッコでくさくっておいしいし……」

 ちゅー、と流斗が唇を当て、昴星の実際問題男の子にしてはずいぶん柔らかい場所を吸い上げる。その吸引力で昴星の身体にぴくんと切ない震えが走るのがはっきりと判った。

「流っ……、そこ、あんますんなよぉ……」

 昴星の声は切なさに濡れている。射精と放尿を終えたばかりの場所はまだ熱の収まる気配はまるでない。昴星にとって、そしてぼくらにとって、あれはこの日「始めの一歩」に過ぎないことを、ぼくに思い知らせる。ぼくは再びカメラを回し、流斗におっぱいを吸われてぴくつくそこを、流斗の口が吸い上げてぽんと離れ、薄いピンク色をした乳首が明らかにぷっくり勃ち上がっている様を撮って行く。

 ふんどし姿も覆いに魅力的だったけれど。

「昴星、またあの水着を着て見せてくれる?」

 ぼくは着替えを要求した。「わあ、いいな、ぼくも女の子の昴兄ちゃん見たいな」

 昴星はおちんちんを勃起させたまま、「ふえ……?」とぼくを見た。

「あのね、ぼくも水着持ってるよ! おともだちの女の子から貰ったの。昴兄ちゃんの着る水着くれた子と、同じ子の」

 へえ、とぼくは思わず声を漏らす。「ぼくのは、昴兄ちゃんが持ってるのと違って、上と下ふたつに分かれてるのだけど」

 セパレートの水着ということか、なるほど、それもきっと可愛いだろう。

「今日は可愛い所、たくさん撮らせてくれるんだろ?」

 昴星は珍しく純情に頬を赤らめている。ぼくの口で流斗よりも先に射精してしまったこと、そのままオモラシをしてしまったこと、そしておっぱいで感じてしまったこと……、恥ずかしいと思うことはいくらだって在ったはずだ。けれど基本的には強気なこの少年が、自分の恥ずかしい姿を見られることに興奮を催す性質を持つ、……つまりは根本的には受身のマゾヒストであることを、ぼくは知っている。

「ね、昴兄ちゃん、いっぱい撮ってもらおうよ!」

 そして徐々に判ってきたのは、この「昴兄ちゃん」は流斗が可愛くて可愛くて仕方がない――実際、ぼくにとっても可愛くって可愛くって仕方がない――らしくて、恋人の従弟であるこの少年に甘えられると「嫌」とは言えないらしい、ということ。どうやら押しには滅法弱いようだ。

「わ、判ったよ、着る……」

 早く二度目の射精をしたい気持ちを堪えて、むう、と唇を尖らせて言う昴星だって、実際問題どうしようもなく可愛いのだった。

 

 

 

 

 携帯電話のカメラでは限界がある。滅多に使わない、けれどこういうときを逃してはいつ使えるかも判らないコンデジを引っ張り出す。その間に身体を洗い、勃起を収めた昴星と流斗は身体を拭いて、浴室で水着を纏っているはずだ。

「お兄ちゃーん、準備できたよー」

 流斗が嬉しそうに言う。ぼくがドアを開けると、浴室には愛らしい水着姿に着替えた、昴星と流斗。

 だけど、

「あれ?」

 思わず目を丸くしたのは、二人の格好が想定とは逆だったからだ。

 昴星がオレンジ色のセパレートの水着を、流斗が紺色のスクール水着を着ている。二人に水着を譲ってくれた少女は、流斗と同い年だったはずだ。だから昴星にはスクール水着が少し窮屈だったわけだけど、流斗は一方でジャストサイズ。

 そして布地面積がスクール水着に比べて狭いセパレートを身に纏う昴星は、一層際どい格好になっている。

「二人とも、よく似合ってるね」

 ぼくが褒めれば、流斗は「えへへ」と嬉しそうに笑い、昴星は恥ずかしそうに「流は似合ってるかもしんないけど……」と俯く。股間の膨らみのサイズは昴星の方が小さいことがはっきり判る。縮こまっているのだ。けれど、そんな小さな場所さえも苦しげに見える。はみ出さないように仕舞うためにはずいぶん苦労しただろう。

 それにしても、こうして見ると、昴星の方が幼児体型なのだなということがよく判る。

 ぽっちゃり、むっちり、痩せ型でいながら肉付きのいい体は少女の水着を身に着けることで全裸よりも強調される。流斗が「精悍」とまでは言わないけれど、凛として細く華奢な男の子らしい体型であるのとは対照的だ。

 身体を拭いてから着たらしい、湿ったタオルが壁に掛かっていた。だから水着はまださっぱりと乾いている。けれど、どのみちまた濡らすことになるのは目に見えている。「ちょっと待ってて」と言い残して、ぼくは押入れからローションのボトルを持って来た。これは別に、昴星とこういう行為をするために持っているものではなくて、寂しい一人の夜を慰める道具を用いるために。

 けれど、三人で愉しむのに使った方がずっと価値がある。

「それ、なあに?」

 流斗が首を傾げる。昴星は知っているに違いないが、黙っている。

「まあ、後で使うよ。とりあえず……、そうだな、二人の可愛い水着姿を撮らせて」

 デジカメに差し込んだSDカードはほとんど空っぽだ。会社の上司に奨められて買ったはいいけれど、休日もそうそう出掛けないのだからろくに写真も撮らない。この日のための開き領域だ。

 コンパクトといえども、デジタルカメラだからPCに取り込めば十分観賞に耐える写真を撮影することが出来るだろう。でもぼくは、次に二人に会えるのがいつになるかは判らないけれど、まだほとんど手付かずの夏のボーナスで、新しい一眼レフを買おう。ミラーレスでもいい。とにかく、二人の肌の滑らかさまできっちり捉えられるものを。

 湯気の残る浴室だとデジカメにも良くないし、何より蒸し暑い。ぼくは二人を六畳間に招き、シーツの上に座らせた。流斗はカメラを向ければにっこり笑ってポーズを取って、ピースサインなどして見せるが、昴星はいつになく恥ずかしそうだ。どうして? と訊けば、

「だって……、こんな、すっげー女の子みたいな水着着んの、はじめてだもん、フツーの女子の水着じゃなくって、こんな……、花柄のとか。それにおれ、流みてーに可愛くねーし……」

 と言う。天真爛漫な流斗も可愛いし、恥ずかしがる昴星も可愛い。カメラを向けても、不貞腐れたように顔を背ける。窮屈な布地の中で、おちんちんもまだ膨らんでいない。

「昴兄ちゃんも可愛いよー」

「わう」

 流斗が抱き付いて、そのまま布団の上に押し倒す。「ほら、お兄ちゃんに一緒に撮ってもらお? ぼくたちだけの、ないしょの写真、いっぱい」

 そう甘ったるく促されて、やっと昴星もはにかんだような笑顔を向けた。二人でほっぺたをくっつけ合ってピース、起き上がって、改めて抱き付いてピース。平和で、誰からも共感されるような可愛らしさがそこにはあった。

「じゃあ、一人ずつ撮ろうか。まず昴星から」

 流斗から撮り始めたら、多分この子、すぐに平気で裸になってしまうだろうという気がした。すっぽんぽんも可愛いけれど、出来ればもう少し、貴重な「少年の女子水着姿」をぼくは撮っていたいと思った。

 昴星を壁際に立たせる。恥ずかしさは少し緩和されたのか、ぼくが求めるまでもなくピースサインを送り、促すままに背中を向けて振り返り、頼めば壁に手を付いてお尻を突き出して見せてくれる。水着がお尻に食い込んで、Tバックのようにさえ見える。

 女の子の、こういう写真集とか映像とかが、普通に売っているらしい。男の子のものもひょっとしたら出ているのかな。流斗と同じぐらいの歳の女の子が、カメラの前で水着姿、本人も恐らく半ば意識しているのだろうけど、えっちなポーズを披露して見せるような代物。

 そういうものって、何だか罪深い気がして、見る気になれない。そもそもぼくがロリコンじゃなくて、女の子のそういうポーズにほとんど興奮しないからかもしれないけれど。

 だから、昴星の股間にぷっくりとした膨らみがあってくれることは、それがそもそもとんでもなく罪深いことではあるのだけど、ぼくにとっては有難く思えた。

 思い立って、流斗に携帯電話を持たせてムービーを撮らせながら撮影を続ける。こちら向きの昴星は畳にお尻を落とし、足を開いて座る。オレンジ色の花柄水着の中で、上向きに収納された昴星の「男の子」の証拠はその輪郭さえもはっきり判るようだ。四つん這いになってもらって、カメラを見上げてもらえば、ほんのり膨らんでまろやかなラインで描かれる胸部で、さっき流斗が吸い上げた乳首の存在もうっすらと見える。そのままお尻を上げ、甘える猫のようなポーズをとってもらえば、きわどく食い込むお尻も露わ、淫らな子猫になる。

「ありがとう、昴星。……お待たせ、流斗。昴星と携帯替わってもらって」

 流斗がぴょこんと立ち上がり、昴星に替わって壁際に立つ。撮られることの喜びを、この子はどうやら昴星よりも強く感じているらしい。

 幼いながらも凛々しい印象のスマートな身体を紺色女子水着に包んだ流斗はぼくがリクエストをするまでもなく次々に魅力的なポーズを撮って見せる。自分の何処がどういう風に見られ、見る者――ぼくだ――がどう喜ぶかまでをきちんと計算しているのかと思うほど、……片膝を立てて頬杖を付いたり、引き締まったお尻をこちらに向け、足の間から顔を覗かせたり、寝そべって股間の膨らみにさりげなく手を置いたり……。まだ流斗は裸になってもいないのに、裸同様の卑猥さをぼくは感じる。

 撮影を続けているうちに、ぼくは流斗の身体に微かな変化が現れたのを見つける。布団の上にうつ伏せて開いた足の間を撮ったあと、再び仰向けになってもらったときだ。

 紺色の水着の下半身、先程までは上向きに収まっているという状況だけが判るばかりだった場所の陰影がより濃くなった。

「なー、流、ちょっとちんこおっきくなってねー?」

 昴星がからかうように言う。

「えー、なってないよー」

 と、流斗は指先で自分の膨らみが、まだ柔らかいことを教えるように押してみせる。けれど指が触れる前と後とでは、そこがくっきりと形を変えたことは明らかだ。そろそろ流斗の気持ちがそういう方向へ向かい始めたのかもしれない。

「今度は二人で撮ろうか」

 ぼくは流斗単独の撮影を切り上げて、昴星から携帯電話を受け取る。ローションのボトルを流斗に手渡して、「これで、二人で遊んでるところ撮らせて」

 昴星は「えー」と声を上げる。「おにーさんの寝る布団、べちょべちょになっちゃうじゃん」

 本当は、そういうプレイ専用のマットでも使うべきなのだ。けれどまあ、六畳間のこんな部屋でスタジオ撮影みたいな真似が出来るはずもないわけだ。

「じゃあ、またお風呂場行こうよ」

 流斗は提案する。昴星も、うん、と頷いて同意した。「こういうの、すっげーぬるぬるするよ。洗うのも大変だろうし、使うならお風呂の方がいいに決まってる」

 子供二人の方がまだ真っ当な考えが巡るらしい。

 幸い浴室は換気扇を回していたお陰で湯気もオシッコの匂いも逃げた後で、二人の使った石鹸の香りが微かに余韻として残っていた。二人はひょいと浴槽の縁を跨いで、今度はぼくがタイルの上から二人を撮影することになる。

「わー、すごいぬるぬる……」

 流斗は勝手に蓋を開けて、ローションを手に乗せる。「石鹸みたい、だけど、もっとぬるぬるしてて、あんまり泡立たないんだねえ」

 右手にデジカメ、左手に携帯電話、二刀流で構えるぼくを見て、流斗はにやりと笑うと、自分のお腹から下へと両手を滑らせた。「あはっ、すごいすごい、へんなのー」自分の掌でしていることなのに、くすぐったそうに笑い声を上げる。濡れててらてらと光る粘液を纏った水着の生地が艶を帯びた中に浮き出た流斗のペニスの形は一層淫らなものとなる。

「んっとになー、どうやったらこんなぬるぬるの出来んのかなー」

 とぷー、と掌にたっぷりローションを垂らして、昴星は自分ではなく流斗のお腹の辺りに垂らす。「ひひ、流、ちんこの周りとかお腹んとことかビショビショでしょんべん漏らしたみてーに見える」

「えー、漏らしてないもん!」

 はしゃぎながら流斗は自分の腹を流れる粘液を掬い取り、昴星の股間に塗りつける。

「ほら、こうしたら昴兄ちゃんもオモラシ!」

「ぎゃあつめてえ!」

 仲のいい兄弟のようにも見えるし、幼馴染のようにも見える。それで居ながら、水着で「女装」しているという事実が非常に響く映像になっているのではないだろうか、とぼくは自分しか観ないこの動画並びに写真集を自己分析する。未だ性の花の開ききらない年頃であるがゆえに許される斯様にトランセクシャルな姿……、「ショタコン」という人種は人口が狭いくせに嗜好が細分化しているように思うけれど、いまのこの二人の姿は多くの支持を受けることが出来そうだ。言葉遣いが乱暴で居ながら、姿は流斗よりも少女っぽい昴星、男の子らしいスマートさを持ちながら、同時にビックリするぐらい綺麗な顔をした流斗、「男の子らしい男の子」が好きなショタコンはもちろん、「男の娘」が好きなショタコンにも受け入れられることだろう。

 昴星が尻を滑らせ浴槽の中に仰向けに横たわった、その身体の上に流斗が乗っかる。お腹にローションを垂らされ、冷たがるたび昴星の柔らかなお腹がひくんひくんと引き締まる。流斗の掌が太腿の間を這い回るに至っては、ずっと大人しかった昴星のその場所も、じんわりと膨らみ始めた。ぼくがその場所に二つのカメラを近づければ、流斗は両手の指で昴星のおちんちんの形を水着の上に浮かび上がらせる。

「ひ、やっ、流っ、くしゅぐったっ……!」

 昴星がひくひく震えながら甲高く、徐々に濡れ始めた声を上げる。

「えへへ、ぬるぬるするの、すっごい楽しい」

 流斗ははしゃぎながらまた自分のお腹にローションを垂らす。視線を招くように掌でお腹に塗り広げ、それから下腹部の縦長なふくらみを指で辿った。丁度先端に当たる部分で指を離す、……つう、とローションが糸を引くのが、リアルだった。

 ぼくに撮らせることに気を取られた流斗に、「隙あり!」と昴星が挽回を試みる。ぬるぬるして不安定な身体をぬるりと入れ替え、流斗を組み敷くと滑るその手でローションのボトルを奪い取り、流斗のまだ乾いたおっぱいの上にとぷとぷと遠慮なくたっぷり垂らす。

「ひゃんっ」

 極端すぎるくらい愛らしい声を流斗が上げる。だが、これがこの子の喘ぎ声の一つだということは、昨日この子にフェラチオをしてそういう類の声を散々上げさせたぼくはもう学んでいる。

 イメージ的な映像が、徐々にはっきりとえっちなものになりつつある。二人にスイッチが入ってしまったのだろう。しゅるしゅる、にちゃにちゃ、流斗のぺったんこのおっぱいを水着の上から撫ぜる昴星の手元から、そんな音が間断なく響く。流斗もおっぱいをそうやって弄られるのが気持ちいいらしい、「んぅ……」と眉間に皺を寄せた、甘ったるく切ない表情を浮かべ、ぼくがカメラを向けていることに気付くと濡れた目で見上げてくる。

「ひひ、おっぱいされんの気持ちいいのかよ、女子みてー」

 昴星は意地悪く笑って、ローション塗れになった流斗の身体を覆うように身を重ねる。それから僅かに身を剥がせば、二人の身体の狭間にはぬたーっと粘液が糸を引いている。二人の身体そのものが粘膜になっているようにも見えるし、お腹が離れてもくっ付いたままの股間ははっきりと卑猥だった。

「二人とも、起きられる?」

 声を掛けると、とにかくとらえどころのない身体になってしまった二人はそれでも苦労して身を起こした。ぼくはタオルを渡して、「これで、足拭いて、こっちに」おいでと言おうとしたが、……ぼくのそう高くもない鼻は、大好きな匂いを感じて、言葉を止める。二人の寝そべっていたところに、粘液とは明らかに違う、透き通って、ほのかに黄色く色付いた液体が現在進行形で広がっているのが見える。

 ぼくが気付いたことに、二人も気が付いた。

「……どっち?」

 と問えば、「流だよ」「昴兄ちゃんだよ」と二人とも正直に責任転嫁をした。

 ……臭いの強さが、昴星にしては薄いような気がする。けれど、流斗にしては、はっきりと濃い気もする。

 深く考えるまでもない。

「もう、こっち出て。お風呂の中オシッコでビショビショになってるじゃないか」

 浴槽の中を濡らしているのは主にローションだが、透明なはずの粘液は白い浴槽全体に薄っすら黄色く染まって広がっている。昴星と流斗の尿の混ざったそれを瓶に詰めて『特製ローション 美少年のオシッコ20%配合』なんてラベルを貼ってネットオークションで売り出したら。……一円から始めて幾らまで行くかな。そもそも、買う人が居るかな……。ぼくだって顔の見えない「美少年」が本当に昴星と流斗のような「美少年」であると無邪気に信じるほど愚かじゃない。実際、ネット通販とかで売っている(らしい、ぼくは買ったことがないから判らない)ような「女子高生使用済みパンツ・しみ付き」なんていうのは、何か別のものを染み込ませているそうだ。

 閑話休題。

「せっかく可愛い水着なのに、オシッコで汚しちゃったんだから、脱がなきゃね」

 ぼくが促すと、二人は顔を見合わせる。けれど、それぞれ別の方法で脱ぎ始める。……昴星はセパレートだから、下だけ脱げばそれでお終い。流斗はワンピースだから、ちょっと苦労して肩紐から腕を抜く。おへそまで降りたところで一枚写真を撮る。流斗が女の子だったら、この時点でもう大問題の伴う写真だけれど、男の子の証拠の膨らみが股間にある。そこが勃起していても、まだ露出してさえいなければ大丈夫という論理もおかしいと思うけど。

 流斗も水着を下ろし、足から抜いた。股間でぴんと上を向いたおちんちんを、もちろん隠しもせずに。

「はい、こっち向いて、笑って」

 二人の笑顔は相変わらず無垢である。失禁直後の勃起した自分の陰茎を人に見せるときに浮かべる表情として、相応しい物とは思えない。そのギャップが、ぼくを激しく興奮させる。求めなくてもピースサインを送る愛嬌が、なんともいとおしい。

「じゃあ、お風呂の中で続き撮らせて。もう裸になっちゃったから、どんなことしてもいいよ」

 ぼくが促すと、顔を見合わせて、昴星も流斗もはしゃいでぬるぬるの浴槽の中に入る。二人の身体に、まだボトルに半分ほど残ったローションを全て振り掛ける。流れちゃうともったいないと、流斗が栓をした。

「すっげー、超ぬるぬるしてる!」

  セパレートの上だけ身に着けておっぱいを隠す昴星は、両手で薄黄色のローションをすくい上げて笑った。すっぽんぽんの流斗はすんすんと鼻を鳴らして、「オシッコのにおいするね、でもオシッコはこんなぬるぬるにならないから、不思議な感じ」と感想を漏らす。

「そっか、そうだよなーオシッコはサラサラだからいっつも流れちゃうしすぐ乾いちゃうし……、っひゃ」

 流斗はぬるぬるのてのひらで、昴星のおちんちんを包み込む。

「こうすると、オモラシパンツ穿いてるのといっしょだよ、昴兄ちゃんのおちんちん、オモラシパンツの中でおっきくなってるの」

「ん、んなこと言ったら、おまえだってオシッコまみれでちんこでかくしてんじゃん」

 昴星も、お返しとばかりに流斗のおちんちんを掴む。「ね、昴兄ちゃん」と流斗が耳元でこしょこしょと囁いた。

「え……、う、うん、出来る……、けど」

「じゃー、しよー」

 流斗がぼくのカメラを見上げて、「これから、もっともっとオシッコするよー。ぼくと昴兄ちゃんのオシッコで、お風呂の中、プールみたくしちゃうの」と宣言する。

「……まだ出るの?」

 うん! と流斗は元気よく頷く。昴星も、こっくり頷いて、「だってさ、……おにーさん、いっぱい見たいだろうからって、此処来る前にたくさんお茶飲んだし」と答える。

 サービス精神の塊のようだ。いや、本人たちは自己の愉楽のためばかりでそうするのだろうけれど、二人の趣味を理解できるぼくにとっては其処に在るだけで幸福を齎してくれるもの、少年の姿をした神様二人からの、無限の寵愛を受けているような気にさえなる。

 ぬるぬるの中で向かい合った二人は苦労しながら膝で立ち、お互いのおちんちんの先っぽをくっつけ合う。粘っこい液を纏って勃起したものからは、薄いオシッコの匂いが漂っている。

「いっせーのせだよ? 昴兄ちゃん」

「んー、わかってるよ、いっせーの……」

「せっ」

 同じタイミングで、先程より色の薄まった放物線が、二人の身体の間で上がる。当然のようにお互いの尿を身体に浴びる、二人の表情は恍惚である。流斗が昴星のものに手を伸ばし、角度を変え、背中を丸めて直接口に注ぎ込む。

「お、おい、お風呂ん中、オシッコでいっぱいにすんじゃないのかよ」

 と昴星が驚いたような声を上げれば、流斗は口に出された液体を一口飲み込み、「れー」と残りを口から零してみせる。そうする間だけ止まっていた流斗の「蛇口」から再びちょろちょろと液体が溢れ出すのを見て、

「……じゃー、おれも……」

 と口を近付けて、昴星も一口飲み込んで、「やっぱ、味薄いな」と呟く。

「昴兄ちゃん、濃いのが好きだもんね」

「ん。だってさ、薄いとしょっぱいばっかになって、水みたいになるけど、濃いと……」

「こくがある」

「そう、薄いとさっぱり」

 ラーメンのスープみたいな評論を二人がしているうちに、虹の勢いが止まった。二人の足元のローションは先程よりも薄まったが、それでも十分な粘り気と滑りを保っているように見える。

 お互いの排泄水の混じったものを身体に塗りつけ合う少年二人というのは常軌を逸した光景である。が、それはもちろんいまに始まったものではない。

「ね、昴兄ちゃん、ぼくもうせーし出したいな……」

 昴星の指にペニスを弄らせていた流斗が甘くぬるつく声で強請る。

「ん……、っつーか、おれも出したい。おにーさん、せーし出していいでしょ?」

 てらてらとお腹から下を光らせて、昴星がぼくを見上げる。もちろん、もう十分、いい絵を撮らせてもらった。

「いいよ。最後は二人で射精する所、撮らせて」

 二人は身体をぼくの構えるカメラに向け、互いのおちんちんを手の中に収める。「すごいね、びんびんになってる。オシッコのローション、そんなに興奮した?」

 ぼくの問いに、顔を見合わせて、こくんと頷く。

「だって、こんなのはじめてだもん……、昴兄ちゃんのオシッコと、ぼくのオシッコと、一緒になってこんなぬるぬるするの、どきどきしないはずがないよ……」

 流斗が切なげな声で答える。既に昴星の手は動き始めていて、声にはローションよりももっととろとろした息が混じっている。流斗も、昴星への愛撫を開始している。

「ん……、すっげ、きもちぃ……」

 可愛らしい女の子の水着を上だけ着けていながら、勃起した性器を年下の、もう「義理の従弟」と言ってしまっていいはずの流斗に弄らせて、昴星が感じきった声を漏らす。そんな昴星に、ぼくは最後のリクエストをした。「昴星、水着ずらして、おっぱい見せて」

「ふえ……? おっぱい……?」

「うん。おちんちんだけじゃなくて、おっぱいも可愛いから撮らせてよ」

 昴星は、恥ずかしそうにこくんと頷くと、水着をたくし上げて僅かな膨らみを帯びたピンク色の乳首を晒して見せてくれた。

「……こっち、そんな可愛くねーよ、別に……」

「そんなことない。昴星のおっぱい、すごく可愛いよ」

「うん、可愛い」

 流斗も同意してくれる。

「昴兄ちゃんのおっぱい、サクラちゃんのおっぱいよりかちっちゃいけど、ぷにぷにで、さきっぽピンク色で、すっごく可愛いよー」

 つん、と指先で押して、流斗は笑う。それから企みを纏った目でカメラを見上げて、つるつる滑るローションの風呂の中で慎重に立ち上がる。壁に手を付きながら、流斗は膝で立ち、昴星のおっぱいに自分のおちんちんの先端を、くっ付ける。そこから――ほんのついさっき、いっぱい出したばっかりだというのに――オシッコを垂らす。さすがに量も少ないし勢いもない、が、昴星は義理の従弟に尿を垂らされる自分のおっぱいを、ぽかんと口を開けて見ている。

「えへへ……、ぼく、このまま昴兄ちゃんのおっぱいでいっちゃおうかな……」

「え……?」

 昴星は当然、戸惑う。

「いいんじゃない? 流斗のおちんちんで昴星のおっぱい気持ちよくしてあげればいい」

 ぼくの言葉は流斗を煽った。昴星は流斗のペニスの先で乳首をくりゅっと弄られて、

「うわ……」

 と困ったような声を上げる。同時に彼の股間で反り立つ物がぴくんと震えたのを、ぼくはちゃんと見逃さずにいた。こんなことされるのは初めてだろうし、戸惑いがあるのは判る。けど、昴星がそれ以上に戸惑うのは、其処を弄られて興奮してしまうということについてだろう。

「ん……、ぷにぷにしてる、昴兄ちゃんの、おっぱい……」

 右手で壁の手すり左手で浴槽の縁を掴んで身を支える流斗はひこひこと拙い動きでおちんちんの先を昴星に擦り付けることで不器用に快感を追いかけている。

 昴星は口を開けて、自分のおっぱいに押し付けられる流斗の陰茎を、呆けたように見詰めていたが、やがてそれがどんな質の物であれ、快感であることに気付いたように、間もなく細い声で喘ぎ始めた。

「あ……、あ……、おれ、の、おっぱい……」

「どう? 流斗のおちんちんでおっぱい揉まれてるんだよ、昴星。女の子になっちゃったみたいな気になるんじゃない?」

 ぼくの問いかけにも、答える言葉は出てこない。ただ呆然と見上げて、快楽に濡れそぼった顔で見上げるばかりだ。

「んぅン……、昴兄ちゃんの、おっぱい……っ、おっぱいっ……」

 いきそう? と訊くと、流斗はこくこくと頷く。とても男の子らしいやり方で快感を貪る少年のおちんちんの皮が捲れて、いかにも敏感そうな亀頭は時折昴星の乳首から離れるたび、微かに糸を引く。それはきっとローションではなくて、流斗自身の漏らす腺液なのだ。

 きゅっと持ち上がった袋の皺が、艶々とてかっている。

「あはぁ……、出るっせーしっ、おっぱいで出ちゃうっ……!」

 流斗が声を上げて、昴星の胸から上、顔にまでかかるほどの飛沫を散らす。昴星は愛らしい少年の元気一杯の精液を顔に浴びて、……彼の右手が動いていることも、ぼくはもちろんチェックしている。流斗からは、丁度死角になるところで。

「んきゅっ……」

 そんな声を上げて、昴星もおちんちんから薄い精液を射ち上げた。流斗同様に元気なそれは彼自身のおっぱいへと散って、……身体中、特製のオシッコローションまみれの昴星は、更に二人分の精液を浴びて、もうどろどろだ。

「う、はぁあ……、ぁあ……」

 流斗の身体がくずれて、二人はしばらく薄黄色のローションの海の中で身を重ねていた。流斗が「ぼくの……、せーし……」とうわごとのように呟きながら昴星の顔をぺろぺろと舐める。昴星は未だ陶然として、意識が薄らいでいるように見える。ぼくはそんな二人の様子をしばらく撮影してから、動画を止め、デジカメと携帯電話を洗面所に置いた。

 まったく……、すごいことだ、本当にこれは、とんでもないことだよ、……まったく。

「二人とも」

 少し休ませてから声を掛けてやって、こちらに向けた顔はまた元の通り。「身体、洗おうよ」

 粘液塗れの滑る身体は大層危なっかしいけれど、二人を抱きかかえるようにして粘液の中から救い出し、タイルの上に座らせる。昴星の水着も脱がせた。

「すごかったね……」

「うん、すごかったな……」

 お風呂の栓を抜き、シャワーのお湯を掛けてローションを流してあげる間、二人は一仕事終えたように言い合う。

「あのね、ぼくね」

 流斗が身体のぬるぬるを洗い流しながらぼくを見上げるその顔は、天使のように純真で、

「なんだか、すごくうれしかったよ」

 その言葉に嘘がないことを、ぼくに教える。

「うれしかった?」

「うん。だって、いま世界で一番えっちなぼくたちをお兄ちゃんに見てもらって、撮ってもらってって、すごくうれしい」

 昴星も、その言葉に同意したように頷く。

「おれもさー、ぶっちゃけ、ちょっと恥ずかしいのあってさ、でも恥ずかしいの、ほんとは好きだし、流の可愛いのの邪魔になっちゃったかもしんねーけど、一緒に撮ってもらえてうれしかった」

 ぼくは、そんな大それたことをしていたわけじゃない。ただ自分の思いつくままに二人のえっちな姿を、自分のために、撮っていたというだけのこと。

 だけど、二人にそんな風に喜んでもらえるのは、もちろん心の底から、ぼくだって嬉しいのだ。

 ぬるぬるを全て落とし終えた二人に一枚ずつタオルを渡す。二人の勃起は一旦収まっていて、それぞれ、ただひたすらに愛らしいだけの形になったものを股間に垂らしている。

「撮ってもらってる間、ずっとね、お兄ちゃん、ぼくたちのえっちなとこ見ておちんちん硬くしてるんだなあって思って、どきどきしたよ」

 拭いた手で、流斗がぼくのジーンズの前に触れた。「お」と思わず声が出たぼくを、ひひひと昴星が笑ってベルトに手を掛ける。

「おにーさんも全部脱いじゃえよ、こん中暑いだろ? それにどーせすっげーガチガチになってんだ、さっきからずっと」

「すっごい濃くってどろどろの大人のせーし、出したいんだよね?」

 そりゃそうだよ。昴星と流斗が幸せをいくつか掴んでいる間、ぼくは狂おしい気持ちになりながらずっとジーンズさえ脱がずにいたのだから、もうさっきから、破裂してしちゃいそうだ。

 我ながらみっともないと思うようなスピードで汗ばんだシャツを脱ぎ、ジーンズを下ろし、トランクスも脱ぎ捨てて洗面所に放り捨てた。勃起したぼくのペニスを見て、「わー、やっぱりすごい大きいね!」と流斗がはしゃいだ声を上げてくれる。

 二人はすぐにぼくの足元に並んで膝を付き、ぼくの肉茎に顔を寄せ、すんすんと嗅ぐ。

「汗くせー。けど、いい匂い」

 昴星が微笑めば、

「ぼく、この匂い大好き。昴兄ちゃんとも才兄ちゃんとも違う、大人のひとのおちんちんの匂い」

 流斗も微笑んで、

「ねえ、お兄ちゃん、オシッコ出る?」

 そんなことを言い出す。「お、オシッコ?」

「うん、あのね、お兄ちゃんのせーしはきのう飲ませてもらったけど、オシッコはまだ飲んでないよ」

「あ、それいいな! おれもおにーさんのオシッコ飲んでみたい! 

 そりゃそうだ。だって、飲ませようだなんて思わないもの。

 二人の美少年のオシッコと、ぼくみたいな大人の男のオシッコは質が全然違うものだろう。大人になれば人間、各種の器官が衰えてくるもので、認めたくはないけれど二十代半ばのぼくだって最近、「あれっ昔は汗かいてもこんな臭くならなかったのに!」なんてことを思わされることがしばしばある。おっさんの身体の老廃物が混じったオシッコと、体中ぴちぴちと音を立てるくらい若い男の子のオシッコとでは、印象的に林檎ジュースにおける清澄タイプと混濁タイプぐらいの差が在る。いや、林檎ジュースはどっちも美味しいけども。

「おにーさんだってオシッコ出るだろ? 勃起してたら出しづらいかもしんないけど、でもちょっとぐらいいーじゃん」

 昴星にせびられて、……悩みつつ、迷いも捨てきれないながらも、ぼくは結局頷いてしまった。だってさ、いまだって裸で、あれだけの姿を見せてくれているし、ぼくは二人のオシッコの味を知っている。しかもこの後、フェラチオをしてくれる、……そんな子たちの、こんなささやかなリクエストも聴いてあげられないというのは、大人としてどうなんだという気もする。いや、やってることがそもそも、人間としてどうなんだという気がするのはもちろんなのだけど。

「わかった……、じゃあ、うん、……するよ」

 やった、と二人が微笑む。こんなぼくの、よりによって排泄物などで二人を嬉しがらせることが出来るのなら、まあ、それはお安いものと思っていいのかもしれない。

 昴星の言った通り、勃起した状態で排尿するというのは、案外に困難なことだ。男ならば朝勃ちしているときの排尿の難儀さにわざわざ言及するまでもない。ぼくはまだ、一応、毎朝のように朝勃ちするから、それこそ毎朝困らされている。理想は朝顔形小便器だけども、モノと標的の距離が近い洋式便器ならばまだいい、問題は和式の便器に向けてするときで、恥ずかしい話だけど以前会社の研修で泊まった宿のトイレは和式しかなくて、思いっきり撒き散らしてしまったことがある。

 その点を考えれば、まあ、いま、ぼくの目の前に座る二人はずいぶん広い「便器」であると言える。お風呂であるし、気持ちの抵抗感さえ無視することが出来れば――それはとても難しいことだけど――何処を汚したって言い訳だ。

 息を整えて、茎を抑えて、お腹に力を入れて、……ぼくは自分の膀胱に溜まっていた体温の液体を放出する……。

「おお、出てきた出てきた!」

「すっごい黄色いね」

 ぼくの、大人の形をしたペニスから噴き出す排水に、二人が手をかざす。「すっげー、あつい」掌に掬い取った其れをすんすんと嗅いで、「匂いは、普通だね。大人のひとのオシッコもぼくたちのとおんなじなんだね」……昴星が流斗の、流斗が昴星の、オシッコに抱くような興味を同じように抱いている。しかしこの罪深さはどうしたことだ。昴星の手が伸びて、「蛇口」を自分の身体へと向ける。ぼくの放尿は止まらない、身体に浴びて「ひひひ、すっげー」と笑い、水勢をそのまま口に注ぎ込む。んく、と飲み込んで、

「おー……、しょっぺえ、こんなしょっぱいの久しぶりだ」

 と満足そうに言う。

「ぼくもー」

 流斗も同じようにぼくに手を伸ばし、綺麗なその身体に浴びせ、顔に飛沫を受けつつ、口中を満たす。ゆっくり味わうように、……ほんとにもう、どうなってんだ、この子たちは……、時間をかけて飲み干して「ぷぁ……、ほんとだー、しょっぱくって、でも、こくがあるね人のオシッコを、ワインか何かのように評するなんて……!

 とにもかくにも、恥ずかしく罪深いことこの上なしである。

 尿は徐々に勢いを失う。無意識のうちにずいぶん溜まっていたらしい、すっきりした……、ことは事実だけど、やっぱり何かこう、ぼくの汚水で汚してしまったことが、何だか申し訳なく思える。二人はぼくの思いをよそに、

「やっぱ大人も子供も出てくるもんは一緒なんだなー」

「誰のでもオシッコはおいしいのかな。でも、あんまりよく知らないひとのは美味しくなさそう……」

「そっか。おにーさんのだから美味しいのかもしんないな」

 そんな具合で語り合っている。「身体流すよ」と言うと、口々にそれを渋るけれど、其処は、どうかお願いします、二人が可愛いのは百も承知だけど、それでも二人の裸身からぼくのオシッコの臭いがする、というのはちょっと、耐え難いものがある。

 顔も身体も洗い流してやったぼくが、ほっと一息つくような余白はない。二人の求める第一の液体を齎したぼくの性器に、もう一つ、求めて二人が顔を近付ける。

「いただきまーす」

 と、まず流斗がぼくの陰茎の先端に、大きく口を開けてぱくんと吸い付く。

「じゃー、おれこっちいただきまーす」

 昴星はサイドに回って、茎を横咥えにした。

「二人とも……」

 ペニスだけでなく、心までもが脈打つ感じがする。二人の美少年の、二つの可愛いお口が、ぼくの、とても綺麗とは言えない印象の男根に吸い付いている。いや、吸い付いているだけじゃない、唇の中で、舌がちろちろと動いている。

「上手すぎるよ……、ほんとに……」

 いったいどうしたら、こんな小さな子がこんな上手にこんなこと。

「らって」

 流斗が口を外して、微笑と共に見上げて言う。「おちんちん、大好きだもん」

「おれも」

 昴星が流斗の代わりに先端をれろりと舐める。「……元々さ、ちんこの味、おれすっげー好きなんだ」

 ちゅ、ちゅ、と言葉の合間に、可愛らしい音のキスを立てながら。……流斗はぼくの陰嚢へと、くすぐるように舌を這わせる。

「才斗が匂い好きって言ってて、でもおれそんな匂い興味なかったんだけど」

 れー、と舌を引く。早くも滲み出したぼくのガマン汁が、昴星の紅い舌との間に繋がる。この子の唇が艶やかだということに、いまさらのようにぼくは気付かされる。そういう唇の印象もまた、この子の顔を少女のように魅力的に映し出す役に立っているのだと思った。

「いっぱい、ちんこしゃぶってるうちにさ、ちんこの『味』って、『匂い』なかったら意味ねーなーって気付いたんだ。いまの、おにーさんのならさ、オシッコしたばっかで、洗ってなくて、汗っぽい匂いとかして、……そうゆーのなかったら、ちんこ、こんな美味しくないだろーなーって」

 舌先に絡んだ腺液に昴星も気付いた。小指の先でにゅっと拭って、流斗の唇に塗りつける。「おいし……」とうっとり呟いた流斗も加わって、ぼくの亀頭を二人の舌先がちろちろと辿る。時折、思いついたように音を立てて、二人だけでキスをしてぼくを寂しがらせたり、その埋め合わせのように、裏筋を、陰嚢を、大事そうに舐めて回ったり。

「お兄ちゃん、いきそう?」

 ぼくの反応を見取って、何もかもを正確に読み抜くのだろうか、流斗に訊かれて、ぼくは「うう」と掠れた声で答えた。

「じゃー……、いっぱい出しちゃえよなー、おれたちの口にさ、おにーさんのせーし、いっぱい飲ませてくれよな、エロいのいっぱい見たから、溜まってんだろー?」

 ひひひと、昴星がぼくの陰嚢を揉む。

 二人は同時に舌先をぼくの先端に絡み付ける。頬を寄せ合って、……先端だけではない、裏筋、大人の男として一番気持ちのいい場所で二人の下がちゅぷちゅぷと絡み合っているのが見える。流斗がぼくの竿を扱き、昴星は陰嚢を大事そうに撫で擦る、……。

「昴星……っ、流斗ッ……!」

 右にストレートの昴星、左にウェーブの流斗、髪に手を置いて、ぼくは二人の顔を見下ろしながら、一気に引き金を引いた。

 煮立ったように熱い液体が固まりとなって重なる二人の舌へと弾き出されて、……思わず、声が漏れるぐらいの、強烈な解放感。

 愛らしい二人の顔を、ぼくはたっぷりの精液で汚していた。

「……すっげー……」

 顔中べとべとにした昴星が、呆気にとられた声で漏らす。

「すっげー……、超いっぱい出た……」

 ぺろ、と唇に付いた其れを舐める。流斗の喉もこくんと動いて、

「すごい、どろどろ……、濃くって、おいしい……」

 感想を、述べる。

 肩を上下させて、「はー……」ぼくはどうにか、腰掛けに尻を下ろした。「すごい……」と、ぼくの口からも二人と同じ言葉が出て来た。我ながら子供レベルの語彙しかないのかと情けなくなったけれど、でもね……、でも、これはちょっと、「すごい」以外に言いようがないよ。

「あー、マジで、超おいしかったー……」

 昴星と流斗は一頻りお互いの顔を舐め合って、ぼくの精液を残らず綺麗にお腹の中に収める。浴槽の縁に並んで腰掛けた二人の性器は、また勃起している。ぼくの性器の、精液の味が招いた結果だと思えば、ぼくはただ、ただ、嬉しい。ぼくのような者でも、二人に幸せを与えることが出来たのだ。それは、つまりそう、ぼくが、変態のショタコンだからこそ。

「あっ」

 流斗が思い出したように立ち上がった。拍子に下半身の細い茎がぴこんと揺れる。「忘れてた。ぼく、お兄ちゃんにプレゼント持って来てたんだった」

「プレゼント?」

 これだけのことをしてもらって、まだ何か貰えるというのか。

「ちょっと待っててね」

 流斗は裸足で部屋に戻って、鞄を何やら漁っている気配が在ると思ったら、すぐにまた戻ってきた。

 その手には、たっぷり黄ばみを吸い込んだブリーフがある。昴星が拍子抜けしたように、

「あー、なんだ……、何かと思った」

 と苦笑した。

 流斗はその下着を、「はい」と両手で広げて、ぼくに手渡す。

「昴兄ちゃんが、お兄ちゃんにパンツあげたって言ってたから、ぼくのもあげる。お兄ちゃんのとこにぼくが遊びにこられないとき、このパンツでぼくのこと思い出して、おちんちん気持ちよくなってくれたらうれしいな」

 ただ一日穿いて脱いだブリーフではないことは一目瞭然、もちろん、これを穿いてオモラシをしたのだろう。ごく薄いパステルグリーン、お尻にアルファベットのプリントが在る。ウエストゴムは布地よりも濃いグリーンで、そういう色付いた布でありながらも流斗の作った黄ばみの輪郭を辿ることは容易だ。

 どうやら流斗は緑色が好きらしい。

 けれど股下など、元の布の色がほとんどわからなくなっている。

「もっと変なの持ってくるのかと思った」

 昴星が言うと、流斗が「へんなの?」と訊き返す。

「うんこの瓶詰めとか」

「昴兄ちゃん、そういうの欲しいの?」

「いらねーよ、何に使うんだよ」

「お兄ちゃんは、欲しい?」

 ぼくは引き攣って首を横に振った。気持ちは嬉しいけれど、気持ち以外は嬉しくない。

「おれのパンツはこないだあげたばっかりだよなー。だから今日はいっか」

 言って、「でも、おれもなんかあげたい気ぃするなー……」と考え込む。

「いいよ、そんな、……こんな風に遊びに来てくれるだけで、ぼくは幸せだよ?」

 流斗のブリーフを胸に押し抱きながら、ぼくは言い、昴星の頭を撫ぜる。

 けれど、本当のところを言えば、……やっぱり貰えるもんは貰っておいた方が得だよ、とも思う。流斗のブリーフと昴星のブリーフと、何が違うって言われても困るのだけど、やっぱり「これは流斗の」っていう思いを抱くのもまた事実なのだ。

「よし! 決めた、おれもおにーさんにまたパンツやる」

 立ち上がって、昴星は自分が今日穿いて来たブリーフをもってくる。あの、水色と白のボーダーのものだ。ウエストゴムを引っ張って、びよんと開いて、「おにーさんさっき見てるとき、欲しそうな顔してたしさ」と言いながら穿く。

「でも、昴兄ちゃんそれあげちゃったら帰り……」

 ノーパンになってしまう、ということだ。

「いーよ、どーせ近所だし、ちょっとくらいだいじょぶ」

 ぱん、と昴星はブリーフを穿いて、お尻の裾に指を入れる。

 余談ながら、ブリーフはお尻のフォルムがぱっちりと現れるのがまた、愛らしいものだ。

「オモラシするの?」

 訊けば、「うん」と頷く。

「……でも、いいんだよ? 本当に。そのパンツ、まだ下ろしたてでしょ? 柄も可愛いし……」

「いいの!」

 昴星は陰のない笑顔で言う。「だって、おれがあげたいんだ。おにーさんにさ、今日、いっぱいエロいの撮ってもらったし、それにさ、あんなオシッコでぬるぬるすんのなんて初めてだったし、だから、おれのお礼。おにーさんの欲しいもの、あげられるもんなら何でもあげたいんだ」

 そんな言葉に感動してしまっていいのか。いや、多分よくない、ちっともよくない、全くよくない、問題だらけだ。

 だけどぼくの口からは「ありがとう……」という言葉が出ていた。

「じゃあ、ぼくもオモラシしようかな……。お兄ちゃん、そのパンツ貸して」

 ぼくが手渡すと、流斗は既に大きな染みのついたブリーフに足を通す。昴星がしたように、お尻の裾に指を入れて、布を張る。

 二人とも、ブリーフの中でおちんちんが大きくなっているせいで、其処に生じる陰影がいっそドラマチックだ。昴星のなんて、ボーダーの描く波によってその起伏がはっきり判る。

「したらさ、おにーさん、ちょっと冷たいかもしんないけど、仰向けになってよ」

「はい?」

「ちんこでかいまんまだし、一回だけじゃ終わんねーだろ? おれたちもさ、オモラシして気持ちよくなるから、一緒におにーさんもきもちよくなろうぜ」

 昴星が何をしようと言うのか、ぼくには想像も付かない。けれどとにかく、求めるままに仰向けになった。さっき流したお湯がすっかり冷たくなって、背中がひゃっとなる。

「おれこっち。流はそっちな」

「え?」

 ぼくの視界は、流斗のブリーフの黄色い股下で塞がれた。ふわり、昴星に比べれば優しく柔らかいオシッコの匂いが鼻先に漂う。流斗はそのまま意地悪をするように、ぼくの鼻に、ちょうどお尻の窪みを押し付けるように腰を振る。

「えへへ、お兄ちゃん、いい匂い?」

 ぼくは「ぶむ」と、……「うん」と言いたかったのだ。

 昴星がぼくの腰に跨った気配が在る。熱を帯びたぼくの其れの上に、ブリーフの股間を当てる。ふっくらとした玉の膨らみが、其処で柔らかく弾む。

「したらー、流、いっせーのせだぞ? すぐ出せるか?」

「うん、まだまだオシッコいっぱい出るよー」

「おれも。っていうか、流、ちょっと腰上げてさ、おにーさんに見せてあげてよ」

 昴星の求めに応じて流斗がぼくのために視界を開く。

 昴星のしましまブリーフの膨らみの一番上、短いペニスが尖ったところに、ぽつりと黒い濡れ染みが浮いているのが判る。昴星はひひひと照れ臭そうに笑って、「しゃがもうと思って力入れたらチビッちゃった」と白状する。

 流斗が足の間に顔を下ろす。「ぼくもー」と言う通り、オモラシの跡の付いたところに、点、それが、じわじわ広がって行く。

「あは……、もう出てきちゃう……」

「ん、おれも……っ」

 流斗のブリーフが再びぼくの視界を包み込んだ。鼻に押し付けられて乾いたオシッコの匂いを届ける布の奥から、せせらぎの音に混じってフレッシュな液体の匂いも伝ってくる。間もなくぼくの口は濡れて、流斗のオシッコが流れ込んでくる。味も匂いもそれほど濃くなくて、どことなく円やか、飲みやすい。

 股間もじわじわと濡れてくるのが判る。昴星が股間を預けるぼくの陰茎に、昴星が放尿する微かな鳴動が伝わってくるようだ。これだけ流斗の匂いを至近距離で嗅いでいてもなお、其れとは違った昴星の匂いが届いてくるという事実に圧倒される。

「はぁあ……、すっげ、ガマンしてたから、すっげーきもちぃ……」

 ガマンと言うけれど、もうこれで今日何度目のオシッコになるだろう。この二人は自分の膀胱を、失禁のためだけに膨らましているのだ。

 僕は顔と下半身をビショビショに濡らしながら、自分に密着して粗相をする二人を感じ切っていた。流斗がポタポタと股下から雫を垂らしながら立ち上がる。昴星はうっとりと感じきったような顔で、ブリーフの股下を使ってぼくのペニスに愛撫を加えてくれている。腰を前後に揺らして、右手ではブリーフの上から自分の膨らみを擦って、……当人が意識している以上に淫らな舞い踊りだ。

「昴兄ちゃん、ぼくもそれしたい……」

 流斗が言うと、名残惜しそうにもう二往復腰を揺らして、流斗に譲る。流斗はぼくにお尻を向けたまま、下腹部を跨ぐと、一度振り返って、「お兄ちゃん、ぼくと、セックスしよ」と笑う。

 え? と問い返すぼくのペニスを掴む。ぼくの視界は、今度は恥ずかしく濡れたブリーフの前部を近付ける昴星で塞がれた。

「おにーさん、ちんこ、して……?」

 間近に昴星のブリーフを見て気付かされるのは、今日穿いて来たこの下着、先週貰ったものよりサイズが少し大きいということだ。どうしてそれに気付けるかと言えば、濡れたブリーフの布が昴星のおちんちんに、先週以上にぴったり吸い付いているように見えるから。

 昴星の身長は百三十半ば、当人も認めるとおり、六年生の男の子としては小さいほうだ。後で確認すれば判るけれど、このブリーフ、多分、先週のものよりワンサイズ大きいものを買ったのだ、……六年生でカッコいいパンツを買ったのに、それをこんな風に濡らしてしまうという事実が、とってもいとおしい。

 ぼくの鼻先に、流斗よりもずっと濃くって深くて、……まあ、はっきり言ってしまえば「臭い」ものを、甘えるように擦り付けて来る。ぼくは求めるままに、水分の過量摂取によって大分薄くなっているはずなのに鋭くしょっぱい尿を含んだ先端を、布の上から口に含んだ。

「んぅン……」

 昴星の甘酸っぱい声に、

「あ、あ、いいな……」

 流斗が羨むような声を上げて、ぼくのものを両手で弄っている。何をしているのだろう、と思っているうちに、なにやら、……妙に突っ張って狭い空間の中に、ぼくのペニスが押し込まれる。其処は、生温かい湿り気を帯び、コリコリと硬く、……熱い。

「えへへ……、ぼくのパンツの中、お兄ちゃん入っちゃった」

 様子を伺うことは出来ないが……、こういうことだろう。ぼくの怒張は流斗のブリーフの孔の中に挿入されたのだ。其処でぶつかる熱は、流斗のおちんちんに違いない。もっとも、昴星よりもふた回り小さい流斗の穿くブリーフであるから、ぼくの其れはどうしてもウエストゴムからもはみ出してしまう。

「ん、……」

 ぽた、ぽた、とぼくの亀頭に何かが降って来た。其れが何か、……流斗が両手の指で大事そうに其処を撫ぜる。ぬるついて、むず痒いような快感が走った。唾液を垂らして塗り付けたのだと判る。

「いっしょに、気持ちよくなろうね? お兄ちゃん……」

 流斗が、腰を動かし始める。

 ぼくの目の前で昴星も腰を振っている。股下に、お尻に手を当てて、失禁の屈辱を味わうのが一番好きだということは、先週習ったばかりだ。

「どうする……?」

 ぼくは昴星のお腹に訊いた。ぷにぷにとやらかく、愛らしく、何より幼い昴星のお腹が、喘ぎ声のたびピクンピクンと震える。

「おちんちん、出す? それとも精子もオモラシしちゃう?」

 昴星は自分の股間に手を伸ばし、不器用に窓を開けようとする。替わってぼくが開いて、勃起してもたっぷり皮を余らせる幼く丸っこい茎を取り出してあげた。その作業は、ブリーフが緩い分、先週よりも容易だった。

「ちんこぉ……、おれの、オモラシした、ちんこ、おにーさん、いじめて……? おにーさんの、お口で……」

 可愛すぎて、「いじめる」なんて出来るか判らないけれど、

「了解」

 ぱくんと咥え込む。強い味が匂いが、ぼくの中に広がる。指で皮を剥いてやれば、一層強い香味が広がり、とろりとした舌触りのカウパーが潮っぱい、……「ひっ」と声を上げて、……まだ出るのか、澄んだおつゆが少量、ぼくの舌に零れた。

「あはっ、お兄ちゃんっ、おちんちんピクピクしてるっ……」

 腰を上下に揺らす流斗が声を上げた。

「もっともっとっ、ね、ぼくのっ、ぼくのオモラシパンツとおちんちんで、いっぱい気持ちよくなってっ」

 ウエストゴムが少々窮屈だけど、自分にぴったり寄り添っている熱が流斗のおちんちんであるという事実がぼくにはこの上なく嬉しい。流斗はゴムからはみ出すぼくの亀頭を垂らした唾液で撫ぜ擦りながら、自らも上下に腰を振って快感を追い求めている。

 あとで、痒くなりそうだけど……。

 いまはそんなことも考えないで、昴星のおちんちんを味わい、流斗と「セックス」をする。

「んぅっ、んっにぃっ、さっ、もぉ、っせーしっれっるぅっ……!」

「あ、あんっ……、おちんちんっ、おにいちゃんのぉっ、おにいちゃんのおちんちんンっ」

 二人の嬌声が浴室の中に響き渡る。

 しょっぱいけれど、甘美な時間……。流斗が射精したのがぼくのペニスに直接伝わってくる、本当にセックスをしたみたいに思えてくる。そして昴星は、腰でぼくの顔を覆うようにして、口の中にオシッコに比べれば甘くすら感じられる精液を零した。

 ぼくも、もう何の遠慮もなく流斗のお腹目掛けて精液をぶちまける。

 じっとしているだけで、むしむしと暑くて、汗が滲むようなお風呂の床で、ぼくたちはしばらくそうやって繋がったままでいた。……何処と言って特別な所なんて何一つないぼくの日常に、突然降って沸いたようなこの幸福な瞬間、いつまでも続けば良いとぼくは思う。

 だけど実際、そうは行かないだろうな……。そういう予感は、昴星と初めて会った先週の夜から消えていない。いつ何が在るか判らない世の中だし。

「ん……、はー」

 昴星がやっと起き上がった。流斗も、ブリーフからそうっとぼくを抜いて起き上がる。それぞれぼくの両サイドに膝を揃えて座り、ぼくのことを見ている。

「おにーさん、気持ちよくなれた?」

「いっぱいせーし出してくれて、ありがとう」

 二人してブリーフを脱ぎ、起き上がったぼくにそれを持たせる。まだ、ほんの少しだけど体温の残った二人の贈り物、……一生の宝物になるな、と思う。だからぼくも、言った。

「ありがとう、本当に」

 二人の髪を順に撫ぜて、嬉しそうに笑ってくれる顔を見ると、いまの今までしていた行為の内容はどうあれ、ぼくはやっぱり、シンプルにこの子たちのことが好きだなあって思う。「好き」っていう気持ちは、どうしたって性欲とは無関係には出来ないけれど、でも、ぼくはぼくに出来る限り、この子たちと一緒に居る時間、この子たちを喜ばせてあげたい、嬉しがらせてあげなくちゃ、そういう気持ちになる。

 まったく、あんなことをしといて、こんなことを思うんだから勝手なものだなあ……、自分でも呆れてしまうけれど。

「それじゃあ……、お風呂入ろうか。今度はローションもオシッコもない、普通の綺麗なお風呂で汗流そう」

 言うと、うん、と二人は頷いた。

 

 

 

 

 それから。

 三人でお風呂に浸かって、……まあ、予想はしていたけれど、二人の身体の中にはまだずいぶんな量の水分が残っていて、それはお風呂に浸かっている間の汗で流しきれるものでもないわけだから、二人のオシッコするところをぼくは何度も見せてもらった。そのうち一回は、「そういえばさ」昴星が思い出したようにお腹に触って、「まだうんこしてねーや。ずっとする気でいたのに、エロいことすんので頭いっぱいで忘れてた」と言い出したから、三人でトイレに入って、するところも見せてもらった。当然の成り行きとして、そのプロセスで昴星も流斗も、ぼくだって、おちんちんが硬くなってしまったわけで、それも含めて、全て出し切って。

 夕方近くになって、その日はバイバイ。

 二人がくれた「宝物」はすっかり乾いて、独特の匂いをぼくの部屋の中に篭もらせている。けれどぼくにとっては当然、いい匂いだ。

 寂しさを隠すためにぼくは笑って二人をアパートの下まで見送った。

「なー、おにーさん、来週もヒマ?」

 昴星――ブリーフをぼくにくれてしまったからノーパンである――が見上げて言う。

「来週に限らず、ぼくは大体休みの日はヒマだよ」

 実際、昴星と出会うまでの休日の、何とヒマで仕方ないことか。ヒマすぎて、却って疲れていたぐらいだ。

「じゃあ、ぼく、また遊びに来ていい?」

「うん、おれも。またさ、いっぱい遊ぼうぜ」

 ぼくは、感動しながら何度も頷いた。

「おいで、……うん、待ってる」

 半日ずっと、えっちなことをしていた。ぼくはええと、……四回、かな? 射精した。其れでいて、身体はとても元気だ。リフレッシュしている。明日からまた頑張ろうって気持ちになれている。この子たちから、元気を貰ったような気持ちだ。

 一週間分の愉しみを募らせるぼくに、

「あのさ、……あのね」

 昴星が辺りを憚るように、昴星が声を潜めた。「これ、……おれと流とで考えたんだけど」

 昴星が、ぼくの耳に背伸びをして、囁いた。

 その声に、ぼくは目を丸くする。「……それは……」

「ほんとなんだ。おれたちだけでどうにか出来ないかって思ってたんだけど、でも、ひょっとしたら変な奴だったらやだし」

 まあ、君がいま一緒に居る男も十分すぎるくらい「変な奴」だけどね。

 流斗も頷く。

「もうすぐ、お外ですっぽんぽんで遊べなくなっちゃうでしょ? だから、来週ぐらいでたぶん、水遊びするのも最後になるから……」

「うん、だからさ、もしおにーさんが良ければ、来週はさ」

 ぼくは、二人の顔を順に見て、頷いた。

「判った。……ぼくに協力できることなら手伝うよ。二人が……、才斗も含めて三人が、安心してお外で遊べないのはぼくも辛いからね」

 言うと、昴星はひひ、と微笑む。

「おにーさんとだって、外で遊びたいよ。な?」

「うん。だから来週はね、お外でいっぱいえっちなことしよ?」

 やくそく、と二人と結んだ小指は、ぼくにとって重たい意味を持つ。

 何度も振り返りながら遠ざかる二人の背中を見詰めながら、

「……そうか……」

 とぼくは独語する。昴星から聴かされたこと、昨日の夜、流斗からも、おまわりさんからも聴いたこと、そしていまの昴星からの依頼。ぼくは身の引き締まるような気持ちになった。

 罪滅ぼし、と言えばそうなるのかもしれない。人に知られれば陽の当たるところで、人間としては生きられなくなるこの身体である。

 ぼくはもう少しちゃんと生きていたい。だってさ、……自分の欲を、これまでずっと堪えて生きてきたから、こうしていま昴星と流斗、二人の可愛い男の子たちと知り合いになれた……、どころか、こんな風に遊べる関係になった。

 やるよ。

 ぼくは意志を篭めて、一人頷いた。


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