いつきと「またね」と言い合って別れて携帯電話を見たとき、ぼくは慌てた。三十分以上前に由利香から「終わりました」とのメールが届いていたし、その後二度の不在着信があったことに気付いたのである。大急ぎで旅館に向けて走りながら、由利香の電話を鳴らしてみたがつながらない。怒らせてしまっただろうか……。
「ああ、これはこれは、大変なご不便とご迷惑を……」
宿に飛び込んだぼくを、由利香のお母さんがひれ伏して出迎えた。ぼくはもどかしく「由利香は、どこでしょうか」と訊いたが、
「ついさっき、出掛けて行きましたが……?」
どこに、と訊いても首を傾げるばかり。ひょっとしてぼくを探しに行ったのだろうか。だとしたら、……山ゆりの湯である可能性が高い。電話がつながらないのは、服を脱いで携帯電話が離れたところに置いてあるからではないだろうか。
また、大慌てで取って返し、上り坂を急な階段を登ったところで、
「お兄ちゃんっ」
由利香の声が聴こえた。
「ああ……、ああ、由利香……、ごめんね……、電話……」
息を整える暇もなく、由利香はにこーっと微笑んで、
「浮気、したでしょ」
とぼくにしっかりしがみ付いて、見上げる。
細い両腕に腕ごと抱き着かれて、ぼくは言葉を失った。
「正直に言って? 由利香の学校の女子と、えっちなことしちゃったんでしょ?」
微笑んでいる。でもそのときの由利香の顔を、ちょっぴり「怖い」と思ってしまったぼくだ。背中の汗が急激に冷えて行くのを感じながら、
「……はい」
ぼくは、白状した。
「由利香、その子の名前当ててあげる。……砂原いつき」
ぼくの顔を、じいいっと見詰めている。指先まで冷え切ってしまったころ、
「……そう、そうだよ」
とぼくは頷いた。
何故こんなにもあっさりバレてしまったのか、全く理由が判らなかった。ぼくの思いを見透かしたように、由利香は「わかってたもん」と笑って、それから溜め息を吐いた。
「もう……。由利香が紹介しようと思ってたんだよ? お兄ちゃんに二人目の女の子……」
「え……?」
「いつきちゃん」
腕が解かれると同時に、茂みに向けて由利香が呼び掛けた。
あ、と声が漏れる。
砂原いつきが、……さっきぼくが愛した少女が、もじもじと恥ずかしそうに、茂みから姿を現した。
「い、いつき……」
「お兄さん……」
恥ずかしそうないつき、あっけにとられるぼく、……そして、悠然と階段を登り切ってぼくらを見下ろす由利香は余裕のある表情でいるのだった。
「いつきちゃん、また男湯に入っておちんちん見てたんでしょ?」
由利香の言葉に、いつきは「だ、だってー……」と唇を尖らせて言うが、……やがてこくんと頷いた。
「もうちょっとだけガマンしたら、ちゃんと見せてあげるって約束してたのに」
由利香といつきの間にあった、ごく少ない言葉から、ぼくはようやく……、間の抜けたことに、やっと、やっとのことで、事態を認識した。
「……じゃ、じゃあ……、由利香が夕べ言ってた、その、……『見たい』って思ってる女の子っていうのは……」
にこ、と由利香がぼくに微笑み掛けた。
全く持って間抜けな話だ。ぼくはいつきが男の子だと思っていた。男の子だと思っていた子とああいうことをしたことでずいぶん理性からはぐれ、その上「実は女の子でした」という展開を目の当たりにしてはもう、夕べ由利香とセックスしてる最中にした話なんてすっかり抜け落ちてしまっていたのだ。
「……そう……、そうだったの……」
これは、きっとぼくとしてはショックを受けるべき事態ではないと解釈していい。
「いつきちゃんは、ずっと由利香の仕事に興味持ってて、……昔ちょびっとだけお話したことがあるの。男の人のおちんちんに、そういうことをする仕事、……由利香にしかできない、由利香しかしちゃいけないことをしてるんだよって。でも、そしたらいつきちゃんはそれからずーっと、おちんちん見てみたい見てみたいってそればっかりで……」
「だ、だってっ、だってだって、……見たかったんだもん……」
いつきの抱いた素直で過激な欲求を、由利香はずっと押し留めてきたに違いない。二人は要するにかけがえのない友人同士の関係にある。由利香は、その時点では決して楽しいとは思っていない仕事に自分の大切ないつきを巻き込みたくはなかっただろう。一方で、いつきにそこまで理解するよう求めるのも酷なことであろう。いつきはいつきで、自分の興味を満たすために男湯への入浴を繰り返していた、そして。
由利香は、信頼する男(ありがたいことにそれは、ぼくだ)にいつきを紹介しようと思ったのだ。「危険ではない」男のペニスを、彼女の管理下に於いていつきの満足の行くまで。それがいつきのみならず、ぼくにとって幸福な状況であることをもちろん理解したうえで。
一方で、そんなことなど知らないいつきは?
あの川べりの温泉に入ろうとしたところでぼくと鉢合わせた。あの時点であの温泉にぼく以外の客はいなかった。いつきはすぐにそれを悟り、「山ゆりの湯」へと歩いて行くぼくを追ったのだろう。土曜日はあの温泉に人がいないことはもちろん彼女も確認済みだ。ぼくと二人きりになれば、……もしもぼくが、そういうことに対して寛容な男だったならば、思い切って頼んでみればいい……。
ぼくはぼくで、由利香の意志もいつきの意図も全く気付かぬまま、初対面の少女といかがわしい真似をしてしまった、という非常にみっともない状況である。
「お兄ちゃんがいつきちゃんのこと好きになるかなってこと、……好きにならないはずないって思ってたけど」
由利香はぼくにふたたびしっかり抱き着いて、にぃと微笑む。「大好きになっちゃった?」
「そ、それは……」
「いつきちゃんも、お兄ちゃんみたいな相手は初めてだもんね?」
「それはっ……、その……」
由利香がいつきを手招きする。いつきは戸惑いながらぼくの側まで寄り、
「ごめんなさいっ」
と頭を下げた。
「お兄さんが、その、ゆりっちの、そういう人だって、知らなかった、だけど、その、……ちんこっ、どうしても見てみたくってっ、触らせてほしくってっ……」
「お兄ちゃんが優しそうだったから、だよね?」
由利香がいつきの髪を優しい手つきで撫ぜて、言った。
「お兄ちゃんじゃなかったら、いつきちゃんどうなってたか判らないんだよ? 怖い人だったら、いつきちゃんが想像もしないようなひどいことされてたかも知れないんだよ?」
「……んっ……」
いつきは、少し泣いているようだ。由利香はぼくから離れて、いつきに顔を上げさせた。
「いっしょにしたいなって、お兄ちゃんと。……いつきちゃん、いい子だよ? すごくいい子だから、由利香とおんなじふうに、いつきちゃんのこと可愛がってくれたら、由利香もすごく嬉しいし、……でもって、由利香のこともちゃんと可愛がって欲しい……。お風呂の修理終わってお兄ちゃんに電話しても出ないから、すごく心配したんだよ?」
それについては、どれだけ責められたって仕方のないことだ。寧ろ、こんなぼくのことを完全に認めようとしてくれる。ぼくはそれだけで、この子のことを愛さなければならない、可愛がらなきゃいけない。
「うん、ごめん……。心配掛けちゃったね」
由利香はきれいな微笑みをぼくに向けて、背伸びをする。彼女が背伸びをするとき、同時にぼくが背中を丸める。そういう癖が、もうついている。小さな小さなキスを、ぼくたちはいつきの前でして見せた。
「いつきちゃん」
由利香が手を引く。いつきはまだ少し潤んだ目で、真っ赤になってぼくを見上げている。
「ええと……、いつきは、いいの? その……」
ぎゅっと目をつぶって、開いて、いつきはこっくりと頷いた。少年のような凛々しい顔立ち、さっぱりとした身体つき、でも彼女はもう、とても女の子らしい女の子だった。
ためらいがちに、背伸びをする。ぼくはしっかりと彼女を抱きしめて、彼女の唇に唇を重ねた。ほんの微かに震える身体は、まだまだとても初々しいものだった。
「ふつうは、こんなのなしなんだと思うけど……」
由利香が言う。
「でも、お兄ちゃんは特別な人だから。由利香たちだけじゃなくって、たくさんの人に愛されるのが普通な、そういう特別な人なんだと思う……。だから、これでいいって、由利香思う」
いつきを抱きしめるぼくを、いつきごと抱き締める。由利香は「お兄ちゃん大好き」と、嬉しい言葉をぼくに言う。そう言うときの由利香の声が、顔が、とても嬉しそうなものであることが、ぼくにとってはまた、何より嬉しかった。
「お兄さんは、……えっと、その……、ゆりっちみたく可愛くないのに、その、からだとか、その、男湯入ってもあたし、ばれないし……」
いつきは恥ずかしそうに、どこか申し訳なさそうに言った。どういう意味でそういうことを言っているのか、ぼくにはもちろんすぐ判る。
「いつきが可愛くない?」
「いつきちゃん可愛いよね?」
いつきは「でも」と強情に抗う。「あたし、こんな……、胸とかないし、ゆりっちみたく、きれいじゃない……」
由利香がぼくをちらりと見上げる。言葉を促しているのだと判る。
「いつきは、可愛いよ」
背中を丸めて、おでこにキスをした。「可愛い子だなあって。そう思ったからさっきみたいなことだってしたくなっちゃったんだ。可愛がってあげなきゃって気持ちになるんだ。いつきの方こそ、ぼくなんかでいいの? ぼくはこの通り、由利香と、……由利香だけじゃない、何人もの男の子たちとこういうことをしてる。変態だよ。たまたまいつきのことを傷つけたくないって、本気で可愛がらなきゃって思ってるだけで、こんなこと誰かに知られたら……、そういう人間なんだよ?」
いつきは、何か言いかけて、閉じて。
「……お兄さんが、いい」
言った。
「お兄さんと、……さっきみたいなこと、ゆりっちとお兄さんがいつもしてるみたいなこと、もっと……、したい……、です」
「うん、ぼくもいつきとしたい」
即答する。
「ぼくが変態だってことを許してくれるなら、いつきとああいうこと、もっとすごいこと、これからたくさんしていきたいと思う」
隣で由利香が「そんなに大変なこと、何にもないと思うよ」とぼくに言った。
「お兄ちゃんは自分のことヘンタイヘンタイって言うけど、由利香もっとヘンタイな男の人いっぱい見て来てる。お兄ちゃんはちょっとオシッコが好き過ぎるだけで、でもそれ以外は普通の男の人……、ううん、ふつうよりずっといい男の人だって思う」
だといいのだけど。
由利香がいつきの耳元に、ぽしょぽしょと何か、囁く。「え」といつきが驚いたように親友の顔を見た。
ぼくに向き直って、
「あのね、……由利香の家といつきちゃんの家、本当はあんまり仲良くしちゃいけないの」
由利香が言う。
「……ん?」
言葉を補足したのはいつきだ。
「あたしの家も昔、旅館だったんです。でも、あたしが三つのときに潰れちゃって……、お父さん、病気だったから」
少し苦しそうに二人が説明してくれたところによれば……。
いつきのお母さんという人は、もちろんこんな可愛い娘の母親であるからきちんとした人ではあるのだけど、自分の夫との死別と旅館の閉鎖という二つの悲劇の原因が、近所にある由利香の旅館にあると思うことで悲しみから逃れようとしたらしい。
由利香の旅館は、規模はとても小さいけれど、由利香という切り札がある。それゆえに客足が途絶えることはない。とはいえそれをいつきのお母さんが知るはずもなく。
そういう次第で、いつきは自分の母親が由利香に対していい感情を持っていないことを知っている。学校がいっしょなのは仕方がないにせよ、彼女と遊んでいることは、ましてや二人が親友であることは、決して知られてはいけないのだそうだ。
「そうだったのか……、知らなかった」
「だからね、いつきちゃんと由利香と、お兄ちゃんもいっしょに遊ぶってなったら、うちでもいつきちゃんちでもなくて、どこか別のとこじゃなきゃいけないの」
その「別のとこ」というのが、この階段を登り切った先、「山ゆりの湯」か。
そう思ったところで、
「でも、ほんとに大丈夫なのかな。誰かにばれちゃったら……」
いつきが心配そうに言う。由利香は少し強気に微笑んで、
「いつきちゃんだってもっとお兄ちゃんと遊びたいでしょ?」
早くもぼくの手を取り、階段を、降り始めた。それはぼくにとっては意外なことだった。いつきも、「……うん」とすぐ後ろに従った。
「え、ええと、どこへ行くの?」
「お兄ちゃんと三人で遊べるところ。あそこだったらだれも来なくて、きっと安心だから」
十分ほど歩いただろうか。
「ああ、いらっしゃい、……あら」
二人の少女に続いて、ぼくの姿を見止めたおばさんが目を丸くした。由利香が、「お客さんです」と屈託なく答え、いつきもこくこくと頷いた。
「あらそう……、どうぞごゆっくり」
おばさんは少しも疑問を抱いた様子もない。
ついさっき、「村立小学校」の校門を、ぼくの手を引いて由利香がするりと潜ったとき、
「ちょ、ちょっと待って! ここは……」
思わず声を上げてしまったぼくである。田舎の小学校らしい、広い校庭と古びた木造校舎の、のどかな小学校、……ぼくのような人間とは全く不似合い、というか、絶対入っちゃまずい場所だ。
しかし由利香も、そしていつきも落ち着いたものだ。
「うちの学校、資料館になってるとこがあるんです」
いつきが説明してくれた。「資料館って言っても、学校の空き教室を使ってて、どうせ誰も見に来ないですし……」
「資料館があるのは、一階の教室。由利香たちの六年生の教室は三階にあって、……お客さんの数じたいそんなにいないし、防犯カメラとかもないし」
由利香がそう補足する。実際由利香は、
「資料館見ていただいたあとで、お客さんに学校を案内してもいいですか?」
ということを受付のおばさんに訊いていた。おばさんは全く不審がる様子もなく、「ええ、どうぞ」と快諾する。手元には婦人雑誌があって、彼女の仕事はきっと大いに退屈なものなのだろう。
まさかこの学校の女子児童が「恋人」の大人の男を連れて来ていて、神聖なる学び舎でいかがわしい真似をするつもりであることなど、想像さえしないだろう……。
そんな次第で。
資料室、……小さいわりに、なかなか骨太な展示物が揃っているようではあったけれど、そこをくるっと小さく一巡するなり、来客用スリッパを履いたぼくは由利香といつきに導かれ、二階分の階段を上り、そして。
「お兄ちゃん、緊張してるの?」
この小学校の、六年生の教室で二人を一緒に抱き締めているのだった。
「そりゃあ……、こんな、ねえ……」
教室は、教室であるから教室らしい匂いがする。古い木の床特有の乾いて冷たい匂い、どんなに綺麗に拭き清めても消えないであろうチョークの粉の匂い。
しかしそれらよりも強く届く、由利香といつきの身体の匂いがぼくを高ぶらせるのにそれほど時間は要らない。二人の匂いはそれぞれ違う。けれどそれぞれ本当にいい匂いだ。
「いつきちゃんも?」
いつきはもう真っ赤になっている。それでも律儀に、いつきは言葉を用いて説明しようとする。
「だ、だって、こんな、学校に、学校で、誰かと、こんな……」
男に慣れていない、……いや、この歳で慣れてる必要なんて全くないんだけど、本当に慣れていないんだなあって思う。
「さっき、お兄さん、話しかけたときだって、すっごくどきどきしたし……」
「すっぽんぽんでいたのに」
リンゴのように甘酸っぱく紅くなっている頬を撫ぜて、「ぼくもどきどきしたよ、いまもしてる」と言うと、いつきは慰められたように少し、微笑む。
「お兄さん、優しい人なんだって思いました……。あたしも一応、さっきお兄さんに言われてみたいなこと、その……、ヘンな人だったら怖いことされるかもって思ってたので。でもあの、お兄さんだったらきっと平気って思って」
また言われた。……一体ぼくは子供たちにどんな風に見られているんだろう?
由利香が、ぼくを見る目で言葉を発する。音になっていなくても、ぼくには判るから、うん、と頷く。
「いつき」
くしゅくしゅ、短い髪を撫ぜてから、ひざまずく。デニムの半ズボンから伸びる脚は真っ白で、細い。全体的に見たとき、この子はパーツがそれぞれスマートに収まっていて、この子自身はそれが女の子らしさを減じさせているように思うのかも知れないけれど、「スレンダー」って言い換えればそれもまた大いなる魅力になる。
ぼくが緊張していたら、物怖じしていたらダメだ。だいたい、由利香にリードしてもらうのは男としてずいぶん情けない……。
「またぼくに、いつきの女の子のところ見せてくれない?」
「……あたしの……」
細いウエストにぴったりのデニムのボタンを外す。いつきはいまさらそれを嫌がりはしない。由利香は何か思いついたように、教室の、窓際、前から二列目、……自分の机らしき場所に向かって、巾着袋を持って戻って来た。
いつきは戸惑いながらも、ぼくがデニムを脱がせるのに任せていた。再びぼくの前に現れた白いショーツ。そのフロントのすっきりしたフォルムが、女の子特有のものである。
「やっぱ、すっごい恥ずかしいかも……、こんな、男の人にパンツ、思っきし見られてるの……」
いつきは少し笑って言った。笑顔が戻って来たのはいいことだ、と思う。いつきの笑顔は、とても眩い。
「お兄ちゃん以外に見せちゃダメだよ?」
隣で由利香が、ちょっとお姉ちゃんっぽく言う。きっと由利香は、平気で男湯に全裸で突入するいつきのことが心配で心配で仕方がなかったのだろう……。
いつきはこくんと頷いて、ちら、と由利香を伺う。
「ゆりっちは……、パンツ、見せないの?」
「んーと……」
今朝浴衣だった由利香はもちろん着替えていた。紺色のスパッツにショートを合わせている。寒い地方、冬ならなおさら。だから由利香はスパッツを愛用していると言っていた。男子にスカートの中を見せることも避けられるし。
けれど由利香は、「あとで。今はいつきちゃんの番だから」と肩を竦めた。由利香がどんなパンツを穿いているのかも見てみたいけれど、確かに今はいつきを可愛がりたい。
「いつき、パンツ脱がすよ?」
「う、……はい……」
ぼくが指をウエストに掛けると、照れくささを堪えるためにか、
「教室で、こんなことしちゃってるの、やばいよね……?」
いつきは由利香に訊く。
「うん。だからぜったいナイショ。……もうちょっとしたら、おトイレ行こ。あっちだったらここよりもっと安心だと思うし、……パンツ脱いでても普通だし」
いつきの白いショーツ、太腿まで降りた。白い肌の、まだ誰も入ったことのない場所の端緒たるスリットは、比較対象が由利香しかいないけれど細く清楚な印象だ。さっきそこからオシッコをするところを見せてくれた、ぼくのペニスと一緒にこすりあって気持ちよくなった。それがこの少女の、この場所なのだ……、やっぱりすごく、感慨深い。
「お兄さん、……あたしの、めっちゃ見てる……」
恥ずかしいのだろう。セーターの裾をぎゅうっと握って、隠したいのを堪えている。
「お兄ちゃん、いつきちゃんにおちんちん触らせてあげて」
顔をうずめて臭いを嗅いでしまいたい欲を抑えて立ち上がる。いつきはそろそろとぼくのジーンズの前に手を当てて、
「わっ……、すごい……、勃起してる……? お兄さん、あたしで……、勃起して、る……、んですか……?」
びっくりした声を上げる。とはいえそれは、好ましい驚きだったようだ。
「そうだよ。いつきの女の子のところ見て、こうなってる」
「お兄ちゃんの男の子のところが、いつきちゃんの女子のところですっごく興奮してるってこと」
由利香はくすくす笑いながら、いつきと一緒になってジーンズのふくらみに触れて来た。まだどこかたどたどしさの残るいつきの触り方とは違う。はっきりとぼくのいいところを判って、そこを責めてくる。いつきはもう、スリットを出しっぱなしにしていることも忘れてぼくのペニスがびくつくのを「すごーい……」口を開けて、観察している。
「お兄ちゃん、どんなことしたい? 由利香だけじゃないよ、いつきちゃんもいっしょ。女子二人いっしょなのは初めてだよね?」
まあ、そうだ。夕べの由有理ちゃんを含んだ状況はノーカウントってことでいいだろうし。
「どんな、こと……」
「さっきは、どんなことしたの?」
由利香に訊かれたいつきは、「さ、さっきはぁ」頬を再び純情に染めた。
「えっと……、お兄さんの、ちんこ、触らせてもらって、しゃぶらせてもらって、えーと、……射精、して、そのあとね、トイレ、……坂の上の、トイレ行って、そこで、お兄さんが見たいって言うから、しっこした……。あと……」
「セックスは? しなかったの?」
こんどはぼくに訊かれて、
「まだ無理かなって……。だから、くっつけて擦り合って、……うん」
「ふうん……。由利香が大丈夫なんだから、いつきちゃんだって大丈夫だと思うけど」
由利香は首を傾げて、それから不思議そうに、
「いつきちゃん、パンツにオシッコしなかったの?」
と訊いた。いつきにとってはその質問こそ極端すぎるぐらいに不思議なものと思われただろう。いつきから問いが向けられるより先に、
「お兄ちゃんは、オモラシするとこ見るの好きなの。だから由利香、いっつもお兄ちゃんといっしょのときはね、たくさんオシッコ出来るようにお水とかお茶とかいっぱい飲んで、……昨日の夜とおとといの夜で何回ぐらいしたかな、数えきれないぐらい……」
「しっこ、……もらすの?」
いつきは不安そうに自分の股間に手を当てた。
「いつきちゃんはオモラシとかオネショとかしない?」
「し、しないよー……。その、ほんとにやばくなったら、そのへんでしちゃうし……」
「しちゃうの」
「しちゃうの?」
思わず二人で訊いてしまった。いつきは真っ赤になって、「だ、だって、しょうがないじゃん、オモラシとか、もう五年生だし、出来ないです……」言い訳をするけれど、女の子である、そうそう立ちションなんて出来るはずもないから、相当無防備なことになっているに違いない。
「いつきは、最後にオモラシしたのいつ?」
いつきは少し考えを巡らせて、
「……あ、一年のときです。帰り道で、しちゃって……。超恥ずかしかったです」
「なるほど、だから外でしちゃった方がマシって思うようになったんだね」
こくん、いつきは頷く。
「今日ね、由利香、いつきちゃんにパンツ貸してあげる」
由利香はカバンから綺麗に丸めて畳んだ自分のショーツを引っ張り出して広げた。白くてリブ編み、ウエストのところにあしらわれたフリルがちょっと幼くて愛らしい。「だから、由利香といっしょにお兄ちゃんにオモラシ見せてあげようよ」
「えー……?」
ここへ来て、いつきは初めてはっきりと抵抗感をあらわにした。ぼくとしては、……まあ、見たいよ、そりゃ、いつきの初オモラシ、すごく見たい。けれどもまあ、それを無理強いするのが人間的にも道徳的にも間違っている。
「お兄ちゃん、すごく喜んでくれるよ? いっつも由利香、お兄ちゃんにオモラシ見せて、たくさんごほうびもらうの。……ね?」
「あ、……うん。素敵なもの見せてもらったんだから、その分ちゃんとお礼しないといけないって思うから」
もっとも、その「ごほうび」にしたってぼくが心から嬉しいと思うようなものばかりなのだけれど。
「いつきちゃん恥ずかしいなら、由利香がさきにお手本見せてあげよっか」
「おてほん……」
ぼくといつきの手を取って、「おトイレ行こ」由利香が言って引っ張る。
「ちょ、ちょっと待っ……、パンツっ」
まだお尻も丸出しのいつきは慌てて片手で下着を上げる。ぼくもそれを手伝った。ぼくといつきを導く由利香の足は、女子トイレの前を通り過ぎて、
「こ、こっち?」
男子トイレに入った。
「いつきちゃん、男子トイレ入ったことあるの?」
「ないよ! ゆりっちだってないでしょ」
「うん、だから入ってみたかったの。……ふーん、こんなふうなんだぁ……。個室四つしかないんだね、女子トイレだったら混んじゃって大変だね」
逆にぼくは女子トイレとは縁遠い。もっとも、実際に入ったことがあるという昴星たちから内部の構造を教えてもらったことがある。何より大きな違いは、壁やタイルに暖色系のものが使われているということ。それ以外はおおよそ、入ったことのない男の想像を大きく逸脱するものではない。
女の子の目からすれば、やっぱり朝顔型の小便器がずらり並んでいるのが新鮮に映るだろう。女の子たちだってそういう形の便器を見たことがないはずもない(さっきの山の公衆トイレがそうであったように、個室と小便器が併設された簡素なトイレなんて珍しくない)けど、ずらり並んでいるのはある意味で壮観に映るかもしれない。
「おトイレだから、オシッコしちゃってもいいよね」
由利香がぼくに訊く。ぼくは少し考えて、
「二人の学校の男の子たちも使うトイレだから、みんなに迷惑にならないようにしないとね」
と答えた。昨日みたいにぼくが大っぴらに清掃作業に従事できる訳でもないのだ。由利香はぼくの考えが手に取るように判るらしく、
「夕べは、由利香のところのおトイレでね、いっぱいオシッコしちゃった」
といつきに言う。いつきはまだいまいち由利香の言うことの意味まで辿り着くことが出来ないらしく、
「トイレなんだから、しっこするのは普通じゃないの……?」
と首を傾げる。
「由利香が夕べしたのは、……こっちのオシッコする方でしたりとか、あと、トイレの真ん中の、……ここにもあるね、排水口のところで立ったままオシッコしたりとか、そういうこと」
「へ」
いつきはやっぱり目を丸くした。「ゆりっちも立ったままオシッコするの?」
すぐにいつきは自分の口にした、……してしまったことに気付いて、慌てて口をふさぐが、もう遅い。
「いつきも、立ったままオシッコが出来るの?」
「あ、あーっ、いまの、今のなしっ」
「へええ、いつきちゃんもそういうことするんだ……」
「ち、違うっ、違うの! そのっ、外でするとき……」
さっきぼくはいつきの屋外オシッコについて、ちょっとその危うさについて考えを巡らせた訳だけども。
「……その、ほら……、座ってすると、女子だって、バレちゃうし、だから、その……、立ったまま、さっさとしちゃえば、例えばちょっと離れたとこから誰か見てても、男子が立ちションしてるって思われると、思ったから……」
「でも、いつきちゃん立ってオシッコするときパンツ脱ぐんだよね?」
いつきはふるふると首を横に振った。「え、じゃあオモラシしちゃうの?」ぶるぶるっと首を横に振った。
「こ、こうやってぇ……」
いつきは半ズボンの裾を右手の指でくいと引っ張る。しゃがめばパンチラになってしまうような、本当に男の子が穿くような半ズボンだ。
「男子が、……その、しっこのとき、ちんこ、ここから出すみたいに、引っ張って」
左手は、太腿に当てる。後ろから見ればなるほど、確かに男の子がズボンの裾からおちんちんを出して立ちションをしようとしている仕草にそっくりだ。ちょっと位置が下過ぎるきらいはあるけれど。
「それで、上手に出来るの? その、……女の子だから、太腿濡れちゃったりしない?
ぼくの問いに、頬を染めつつ、「平気です。だって、練習しました」答えるが、そんなこと「練習」してたんだ……、という思いは、ぼくだけでなく由利香も抱いたに違いない。
「そうなんだ……、いつきちゃん、ほんとに男の子になりたかったんだね……」
いつきはこくんと頷いて、
「だ、だって、男子になれば、ちんこ、もっとおおっぴらに見られるって思ったんだもん」
男性器に対する強い思いを吐露する。
「……いつきの側に流斗や諭良みたいな子がいたら、いつきはきっと幸せだっただろうねえ……」
つい、しみじみと呟いてしまった。男の子のおちんちん、男であるぼくだって「見たい」と長い間希求し続けてきたものだ。女子であり、そういうこととは縁遠かったからずっと男子風呂に入って観察することで自分を慰めてきた彼女の前に、もしも流斗のように自分のおちんちんを見せることを何とも思わない男の子がいたなら。あるいは諭良みたいに、見られることを心から悦びとするような子がいたなら。
でも、考えてみるともう彼女の夢を叶えてあげることは可能なのだ……。
と、そこまで考えたところで由利香が言っていたことをぼくは思い出した。
「そうか、由利香はだから……」
由利香はにこりと微笑んでこくんと頷いた。そして親友の手を取って、
「いつきちゃんの見たいおちんちん、……今日はお兄ちゃんのだけだけど、いまにたくさん見られるようになるよ。危ないことなんてしなくても、お兄ちゃんといっしょにいれば、必ず」
励ますように、慰めるように語り掛ける。
「……ほんと?」
「うん。お兄ちゃんみたいな大人のおちんちんだけじゃなくって、いろんなおちんちん。何本も」
おちんちんの単位は「本」で合ってるのだろうか。まあ、それはいい。実際これからいつきは流斗に諭良に昴星に、場合によってはルカとソラのおちんちんまで見ることが出来るようになるのだ。
いつきはぼくを見上げて、
「でも、あたしの最初のちんこがお兄さんのちんこでよかったかもって思います」
まっすぐな目で言った。
「あたし、その……、ゆりっちがね、ぜんぜん知らない男の人とそういうことするの、怖くないのかなって思ってました。でもって、お兄さんとしてみて思ったのは、……お兄さんじゃなかったらやっぱり超怖いなって」
「だって、お兄ちゃんは優しいもの」
「うん……、だから、お兄さんでよかったなって思います! いまも、……ほら、パンツでも、平気だし!」
いつきの笑顔が温かくて、ぼくも嬉しくなる。さっぱりした、「男の子みたい」に短い髪、でも触り心地がちゃんと女の子で、柔らかい、いい匂いがしそうだ。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。……いつきのパンツ、可愛いね」
「へへ。……ねえゆりっち、あたし今日生まれてからいちばん『可愛い』って言われてる」
嬉しそうに言ういつきの嬉しさを受け止めて、由利香が頷く。同じように嬉しく思っているに違いない。思うに「男の子みたい」ないつきのことを(性的な意味を一切省いて)一番「可愛い」って思っているのは由利香に違いない。
「じゃあ、もっと『可愛い』って言ってもらおうよ」
そんな大事な友達を、自分と一緒にぼくに委ねようとしている由利香の優しさにも胸を打たれる。
「もっと?」
「うん。……お兄ちゃん、えっと、そっちでしよ」
洋式の個室に目を向けて、由利香が言った。首を傾げるいつきに、するすると自分のスパッツを脱いで、「持ってて」と頼み、ぼくが洋式の便座に腰を下ろそうとしたところで「お兄ちゃん、ズボン濡れちゃうよ?」と言われて、ああそうか、慌てて脱いで下ろす。「わあ、やっぱすごい」って、いつきがまた改めてぼくのを見て声を上げた。
スカートをめくる。パンツ丸見え。由利香の、彼女自身に比べれば女性的に見えるお尻に目を奪われるいつきに振り返って、
「今から、由利香、オモラシする。お兄ちゃんにね、由利香のオモラシするところでいっぱいドキドキしてもらって、ごほうびたくさんもらうから、いつきちゃんも出来そうだったら由利香みたいにするといいよ」
由利香はそのままぼくの腿の上に跨った。両足を品なく広げて、パンツ丸見えという状況。
「いつき、おいで」
ぼくは手招きをして、スカートを胸元までめくり上げた由利香のパンツがよく見える場所までいつきを招く。ぼくの勃起した陰茎と、由利香が晒すショーツとのコントラストに、ちょっと言葉を喪っていた。
「これから、由利香がしてくれること、見ててご覧。……でもって、誰にも言っちゃダメだよ? 由利香といつきだけのヒミツにするんだ。いいね?」
いつきは、んく、と唾を飲んで頷いた。同級生の、しかも同性のパンツなんて、女の子にとっては当たり前の光景だろうけど、……でも、由利香がキスをねだってぼくの頬を包み、唇を舌で舐めるところを見たとき、その頬はあっけなく紅くなった。
「あ……、由利香、もう出る……」
由利香はぼくと手を繋ぎ違った。両手の指と指をしっかり絡めたところで、その指にきゅっと力が入る。
「あ!」
いつきが短く声を発した。由利香の純白の下着の、いちばん張りつめた女の子の場所に、染みが浮かんだのを見たのだ。
それは細い音を立てながら、面積を広げて行く。ぼくのペニスのすぐそばで、その可愛らしいせせらぎの音を立てる。由利香はもどかしげにぼくに腰を寄せ、下着の染みへとぼくのペニスを押し付ける。
いつきの目には、異常な光景として映るだろうか? その可能性をぼくは否定しない。ぼくの性器とくっついた由利香のショーツの奥からどんどん湧き出してくる薄黄色の液体はまぎれもなくいつきの親友のオシッコであり、彼女は彼女自身の清潔なはずの下着とぼくのペニスをごく積極的に自分の尿によって汚している。そしてぼくの性器は由利香の尿で濡らされることで、いっそう激しく高ぶっているのだ。
「……ふふ」
ぼくと指を解いた由利香は、まだオモラシの途中でありながらぼくのペニスに触れた。
「いつきちゃん、見て。お兄ちゃんね、由利香のオシッコでこんなにおちんちん硬くしてくれてるの。……お兄ちゃん、由利香のオシッコ好き?」
「うん……、好きだよ。あったかくって、すごくえっちだ」
「ふふ……、ね? 由利香お兄ちゃん大好き。オシッコとパンツの向こうから、お兄ちゃんのおちんちんすっごく硬くなってるのわかって、うれしい……」
両手の、柔らかな指で甘くマッサージするように愛撫する。濡れてよりリアルに見えるようになった自分のスリットとぼくのペニスの背を重ねて、その熱に彼女は震えた。
「いつきちゃん」
親友に、由利香は微笑みを向けた。
「いつきちゃんは、お兄ちゃんがおちんちん気持ちよくなるの、うれしいって思わない? 由利香はすっごく思う。お兄ちゃんが由利香でドキドキしてるって、心臓の音に耳すまさなくてもちゃんと判るもん、由利香のこと好きでいてくれるって、判るから」
由利香は、するりとぼくの膝から降りた。由利香の体温が離れると、濡れたペニスが急に寒く感じられる。温かいものが欲しい、と強く思った。
「で、も……」
いつきには、まだ抵抗がある。親友のものとはいえ、オシッコはまともな感性をしていればやっぱりいい臭いの液体ではないし、同い年の由利香がパンツを脱がずにオシッコをした景色には、相当の衝撃を受けていたって当然だ。
でも、
「由利香、いつきの分の着替えを持って来てるんだよね?」
「うん、カバンの中に、ちゃんと入ってる」
由利香がショーツを脱いだ。まだオシッコがぽたぽた滴る下着が、とても「美味しそうだ」と思って、思わずペニスにぐっと力が籠ってしまった。
「いつきちゃんがオモラシしたら、由利香といっしょにお兄ちゃんのこと気持ちよくしてあげよ? お兄ちゃんが気持ちよくなるとこ、もっと見たいでしょ?」
由利香の言葉が、いつきの心臓をきゅっと掴む様子を見たようだ。「むずかしいことなんてないよ。ふだん、おトイレでオシッコするときとおんなじ。それに、いつきちゃん、……お兄ちゃんのこと、好きでしょ?」
いつきはいつからか、シャツの裾を握っていた。ぼくと由利香を交互に見て、紅い、泣き出しそうな顔で、迷い、悩む。
「誰にも言わない、ぼくらだけのヒミツだよ。……ぼくはいつきがオシッコ漏らすところ見たいんだ」
由利香ほどの力もないであろうぼくの言葉が、どれほどいつきの心に届いたか判らない。
けれど、いつきは微かに震える脚でぼくの前まで歩み寄る。彼女の双眸はまっすぐぼくのペニスに向いていた。
「ほ、ほんとに、お兄さん、あたしが……、しっこ、もらしたら、その……、マジで」
ぼくは頷く。
「うん、すごく嬉しい。いつきがそうしてくれたら、ぼくもいつきにあげなきゃいけないものがあると思う」
おいで、と両手を開いた。いつきはゆっくり、でも吸い寄せられるように大股を開いてぼくに跨り、抱き着いた。いつきの身体は腫れたように熱い。でもいまのぼくには心地よい温度だった。
「いい子だね、いつき。すごく可愛いよ、……ぼくもいつきのことが好きだよ」
髪を撫ぜて抱きしめると、「にいさ……ん」いつきはぼくにしっかり抱き着いて、キスを求めるように顔を上げた。
一度、二度、静かに唇を重ねてそっと伺えば、
「……ん、へへ」
意外だった、いつきは少し笑っていた。
「お兄さん、……あたしの、……しっこ、なんか、ほんとに、欲しいの……?」
「うん。欲しいよ。いつきがぼくのこんなの欲しがってくれるのよりはずっと普通の感覚だと思うけど」
「そう、かなあ……?」
いつきが由利香を振り返る。由利香はくすっと笑って、「お兄ちゃんは気付いてないだけだよ。お兄ちゃんのおちんちんは由利香たちじゃなくたって欲しくなっちゃうよ?」
今度は、
「そうかなあ……」
その科白をぼくが言う番だった。
まあ、自分の価値は自分じゃ判らない。ぼくは精一杯、この子たちに減点されないように頑張っていればいい。この子たちは自然体でいるだけでいつだって百点満点だろう。
「その……、こんなの、はじめてだから、あんまし上手くいかないかも、だけど、……あたし、がんばります、がんばりたい、です。お兄さん、あたしにちんこくれたから……!」
ぼくは不慣れな体勢に戸惑ういつきの腰に手を回す。まだかすかに震えている。
いつきは、由利香の真似だろう。ぼくのペニスに触れて、自分の白い下着の、一番布が細くなっているところに押し当てた。
「あ、いつきちゃん積極的」
後ろから由利香が覗き込んだ。
「だ、だって、ゆりっちこうしてたから……」
「でも、由利香のオシッコかかってるんだよ?」
「あっ……」
いつきは一瞬びくりと震えたが、「由利香のなら汚くないよね?」ぼくが訊くと、励まされたようにこくっと頷いた。
「お兄ちゃんのおちんちんの先っぽ、光ってるの判る?」
「……ん、ガマン汁っていうやつ?」
「由利香がしたときよりも、たくさん出てる。お兄ちゃん、いつきちゃんでドキドキしてる証拠だよ」
「え……?」
いつきがぼくを見た。その目に求められるまでもなく、「そうだね。いつきのオモラシ見せてもらうの初めてだしね」応じた答えをぼくは口にする。
数秒、いつきが黙りこくった。けれど、
「……っん……」
小さな声が引き金となって、ぼくの陰茎には優しい温度のせせらぎが届き始める。
「そう、力抜いて、そうだよ……」
由利香が励ますように言う。もうぼくとくっつけているほど余裕もない。その代わりぼくは、いつきのショーツに浮かんだ由利香以上に濃い色の尿の染みが、どんどん広がり、滑り落ちるようにお尻へと回る様子をじっくり観察し、便器の中へ垂れて行く音に耳を澄ませる。
「ほら、いつきちゃん……」
由利香がいつきの手を取り、ぼくのペニスに重ねさせて、
「あ! あっ……お兄さんっ、お兄さんに……っ」
「いいんだよ、お兄ちゃんのおちんちんにもっともっとたくさんオシッコしてあげて」
そのままいつきの両手で包み、「オシッコ、たっぷり付けて、お兄ちゃんいつきちゃんのオシッコですっごく気持ちよくなっちゃうよ」放尿中につき拒む力もわいてこないいつきの手に、ぼくのペニスへ、いつき自身のオシッコを塗り付けさせる。ぼくの呼吸が上がったこと、濡れた布の向こうでぼくが感じていることに、いつきも気付いただろう。
「に、いさっ、ちんこ、ちんこにしっこ、されるの、きもちぃの……? あたしの、しっこで、感じて……っ」
いつきが、笑った。
「ん、ふふっ、お兄さん、すごい、ヘンタイだぁ……」
「そうだよ。お兄ちゃんは、世界でいちばん素敵なヘンタイ、世界でいちばんカッコいいヘンタイ。だから由利香はお兄ちゃんにいっぱい幸せにしてもらったし、これからはいつきちゃんもいっしょに幸せになるんだよ」
もう由利香の手が離れても、いつきは自分の意志で手を動かしていた。ひょっとしたら、こういう事態にならなくても尿意を催していたのかも知れない。いつきのオシッコは長く続いていたが、不意に収まった。慌ただしく左手で下着の裾をずらし、綺麗なスリットを覗かせると、ぼくのペニスに直接それを迸らせ始めた。
「お兄さん、お兄さん、ちんこ、気持ちいいですか? あたし、お兄さんのちんこ気持ちよく、してあげられてる……?」
「ああ……、すごいよ、いつきのオシッコ、最高だよ」
まともな人間ならば口にすることはない言葉を平気で発しながら、ぼくはいつきのことを抱き寄せ、唇を重ね、舌を入れてみる。いつきのオシッコがぶしゅっと跳ねたけれど気にしない。いつきもそういう種類のキスがあることは史っていたようで、恐る恐るながらそれに返してくる。
いつきのオシッコは、キスの最中に終わった。
「ぷはぁ……、ああっ」
放尿の余韻の震えをぼくに伝えてしまったことを、照れたように笑って、「わああ……」自分の下半身周りを見て、呆れたような困ったような声を上げる。実際、ぼくのシャツにも少しばかり飛び散ってしまった。もっともそれを気にするようなことはしないけれど。
「いつきちゃん、オシッコ漏らした感想は?」
由利香が嬉しそうに親友の顔を覗き込んで訊く。
「か、かんそうー……、かんそうはぁ……」
シャツの裾を持ち上げたまま、いつきは唇を尖らせて、「やっぱし、すっごい恥ずかしいよ……、お尻の方、つめたいし……」純朴な感想を口にした。
「お兄ちゃんにオシッコひっかけちゃったね」
「だって……、お兄さんそれ、うれしいかなって……。パンツぬぎたい」
ぼくも脱いでほしい。さっき垣間見せてもらったスリット、もっと見たいし。
由利香の手を借りてぼくから降りたいつきは、「ひゃあ……、びっちょびちょだぁ」と不器用に不慣れに脱いだショーツを摘まむ。由利香ももう、下半身は裸だ。ぼくの膝の上で、オシッコを漏らして見せた少女、……二人ともベクトルこそちがうけど「美少女」って言ってしまっていい、そんな二人の半裸に、ぼくは苦しさを覚えるほど興奮する。
「お兄ちゃん、もう射精したい?」
由利香がちょっと意地悪に言う。
「ああ……、うん、したい」
「ほんとに? ほんとにお兄さん、あたしたちのしっこで……」
いつきはまだ信じ切れないのかも知れない。由利香はちょっと得意げに、「お兄ちゃんは由利香たちのこと大好きでいてくれるんだもん、由利香たちのオシッコだって好きだよ」親友に説明し、
「お兄ちゃん、もうちょっと前に出て。由利香といつきちゃんが気持ちよくしてあげる」
とぼくに向けて言った。言われるままにやや尻を前にずらすと、ぼくの右膝を跨いで座る、湿っぽいあそこの感触を伝えてから、自分の尿が染み込んだ下着をぼくのペニスに被せて、両手で包み込む。
「ふふ……、お兄ちゃんのおちんちん、由利香たちのオシッコですっごい熱くなってる」
いつきは呆気に取られていた。そりゃそうだろう。親友が自分の失禁の下着を、男の勃起に被せたのだから。どうしてそうするのか判らないに決まっているし、それ以上に自分の尿に平気で触れられるのも判らないかもしれない。
由利香は左足のホールからぼくのペニスの先端を覗かせて、
「いつきちゃんも、いっしょにしよ。いつきちゃんが手伝ってくれたらお兄ちゃんすぐいっちゃうよ?」
妖しく微笑んで誘う。
「えー……、でも、しっこのとこ、触るの……?」
「お兄ちゃんのこと、気持ちよくしてあげたくないの?」
どうやら、いつきはぼくのことを気持ちよくしたいと本気で思ってくれているらしかった。
恥ずかしそうにぼくの膝を跨ぎ、「うー……、えいっ」ぼくの亀頭に、自分のオシッコで濡れたショーツを被せた。
反応しようと努めなくても、ぼくのペニスは呼応して震える。「あ……」といつきがぼくの顔とペニスを交互に見た。
「お兄ちゃんの、すっごい熱いでしょ?」
由利香が淡い力でマッサージしながら、片手をぼくの頬に当てていつきに言う。「お兄ちゃん、由利香たちのオシッコでこんなに興奮してるの。ね、……お兄ちゃん? 由利香、オシッコ好きでヘンタイのお兄ちゃん大好きだよ。お兄ちゃんの『恋人』にしてもらって、すごく幸せ」
そう甘ったるく囁きながら、由利香がぼくにキスをする。応えるために舌を絡ませたら、びっくりするぐらい積極的に、巧みに、ぼくに舌を絡みつけてきた。それは親友とはいえ既得権の半分を譲渡することへの抵抗感か、……ちょっとの嫉妬だろうか。もともとキスの上手い由利香なのに、ぼくの腰がじいんと痺れるほど、甘く、甘く、甘い……。
「ふふ、お兄ちゃん……、由利香とキスするだけでいっちゃいそう……。いつきちゃんは、いいの? お兄ちゃん、由利香がひとりじめしちゃうよ……?」
腰を揺らして、濡れたアソコをぼくの太腿にこすり付けながら由利香が意地悪を言う。
「いつき」
細い腰に手を回して、抱き寄せる。いつきはかあぁっと頬を染めて、思い切ったようにぼくの唇を由利香から奪い取った。
「ん、んふぅ、んっ、んふぁ、おに、ひゃっ……、おにいひゃん、おにいひゃっ……、ふぁあ、あ、たひのっ、……ひっこ……のっ」
不器用ではある、けれどそれだけに一生懸命さを感じさせる、失禁ショーツごしの愛撫。いつきは無我夢中だが、一方で由利香はサポートするようにぼくの陰嚢と陰茎の根元を扱いてくれながら、
「出して、お兄ちゃん、出して、……いつきちゃんのオシッコパンツに、せーし、いっぱい出して」
唇と舌で耳をくすぐりながら、罪深く囁く。
「……っ、いつき、いつき……、いくよ、いつきの、パンツに、出すっ……!」
右手に由利香左手にいつき、二人の少女を抱きしめて、二人の手によって、身体の奥底に未だ溜まっていた熱をそのまま替えたような粘液をぼくは放った。じめじめした少女の下着の、一番汚れたところへ向けて。……そこは言うまでもなくいつきという少女の女性器である。だからぼくはいつきにナカダシをしたのだと思った。
いつも美しく黄色く染め上げてもらって、あとあとまで記録し保存するための下着に自分の穢れた液を放つのは何とも言えない背徳感があった。
「ふふ……、お兄ちゃんすごい……」
いつきの黄ばんだショーツの上から、ぼくの亀頭を指で押す。ゼラチン質の精液の感触を、ぷにぷにと確かめるように。「由利香と夕べたくさんしたのに、いつきちゃんとさっきしたのに……、それなのにこんなにぷるぷるしてるの……?」
息を整えながら、
「だって……、だってさ」
ぼくは言い訳をする。「こんな……、女の子、二人……、なんて」
「いつもは男の子だもんね?」
由利香はちゅ、とぼくの頬にキスをして、「いつきちゃん、お兄ちゃんのおちんちんビクビクしたのわかった? お兄ちゃん、いつきちゃんですっごく気持ちよくなって、いつきちゃんのパンツに精子いっぱい出しちゃった」いつきに言う。
由利香の親友は、しばしぽかんと口を開けていたが、やがて、「……へへ」と笑って、
「おお兄さん、すっごい……、すっごい、ヘンタイなんだ」
ぼくに抱き着いた。
「やっとわかった、やっと、信じられました。あたしの……、その、しっこなんかで、ほんとに気持ちよくなる人いるんだって。なんか、恥ずかしいけどすっごい嬉しい……」
「ヘンタイなのに?」
ぼくは優しくいつきの腰に手を回して訊いた。
「だって、あたしだって男子のちんこ見たいって思うの、自分でヘンタイかもって思ってたし、だから、おあいこ!」
由利香が、うん、と納得し満足したように頷いた。
「由利香だって、男の人とたくさんえっちしてきたから、ヘンタイだよ? お兄ちゃんがヘンタイじゃなかったら、由利香とこんなことしたいって思ってもらえなかったと思うし。だから、お兄ちゃんも由利香もいつきちゃんもヘンタイ」
両手に花、という言葉がしっくりくるだろう。ぼくの左足に由利香が、右足にいつきが跨って、交互に頬にキスをくれる。二人の手によってぼくのペニスが再び愛らしい下着から露わになったとき、それは収まる暇もまるでなく勃起したままなのだ。
「いつきちゃん、お兄ちゃんの精液」
下着の内側にべっとりこびりついたものを指に絡めて、由利香が見せる。彼女はそれを何のためらいもなく口に入れた。親友のオシッコを口にするのは初めてだろう。
「ゆ、ゆりっち、あたしのしっこ付いてるのに……」
「ん、だってお兄ちゃんの精液好きだもん。それにいつきちゃんのオシッコもおいしいよ? 由利香ね、男子のオシッコはいっぱい知ってるけど、女子のオシッコ舐めたの初めて」
「そんないっぱい知ってるの? そ、その……、男子の、しっこ」
「うん。由利香ね、同い年くらいの男の子のオシッコいっぱい知ってる。お兄ちゃんといっしょに、たくさんしたんだよね?」
ぼくは頷く。いつきが一瞬でも確かに、うらやむような表情を浮かべたのはもちろん見逃さない。
「今度来るときは、男の子たち連れて来るよ。そのときいつき、たくさん見ればいい。あの子たちのおちんちんはそれぞれ違って、みんな可愛いから」
「ん、ん……、はい、わかりました」
興味を見透かされたことを恥じたように唇を尖らせて、いつきは頷いた。
「じゃあ……、そろそろ行かないとまずいかな?」
二人のオモラシの片付けも必要だ。あまり長いことぼくらが戻って来ないとなると、さすがに怪しまれる可能性も否定できない。
「え?」
いつきがぼくのペニスに目を落として意外そうに言った。
「もう、おしまい、ですか?」
「お兄ちゃんだけ気持ちよくなっちゃうの、ずるいよね?」
由利香も言う。ああ、まあ、それはそうだと判ってるんだけど、
「ここで、続きをする? それよりも……、もうちょっと安心できる場所の方が個人的にはいいかなって思うんだ。それにそっちの方が、由利香のこともいつきのことも、もっと可愛がってあげられるし」
由利香といつきが、しばらく顔を見合わせて、
「……じゃあ、あそこいこっか」
いつきが言った。「あそこだったら、人絶対来ないよ」
「あそこ……、そうだね。ちょっと歩くけど、お兄ちゃんへいき?」
あそこがどこを差すのか判らないけれど、ぼくは二人に任せるしかない。学校のトイレで女の子と、というのもなかなかに刺激的な体験ではある、けれど、……ヘタレと言われても仕方ないかもしれないけど、やっぱり安心に勝るものはないと考える。どうしてもぼくとしても、心配は心配なのである。
玄関まで戻ると、三人でとんでもないことをしていたことを知らない受付のおばさんは船を漕いでいた。由利香たちが声を掛けたところで慌てて起きて、ぼくは何度も頭を下げて学校を出る。緊張していたせいか、正直ちょっと疲れたというのが本音だ。
もちろん、由利香たちが濡らしてくれたパンツはぼくのカバンの中、しっかり密閉してしまってある。
「あそこ」と二人が言い交わしていた場所は、「やまゆりの湯」から更に十分ほど歩いた先の廃屋だった。廃屋、倉庫、……だったのだろう、もともとは。掘っ立て小屋程度のものであり、何年も放置されているに違いない、木造の小屋。
「お兄ちゃん、こっち」
がたぴしと鳴る戸を、二人がかりで開ける。「二人がかり」というのは二人分の力でという意味ではなくて、なんだか、引き戸を由利香がぐいっと肩で押しながら、いつきが横に引く。どうも立て付けが悪くなっていて、そうでもしないと開かないようだ。そうして出来た隙間にぼくは入り、由利香といつきが入ってから、また二人がかりで閉める。
がらんとした内部は、しかし案外に綺麗なのだ。少なくともホコリがとんでもない量溜まっているということはない。独特の冷たく湿っぽい臭いがするけれど、四方の壁で風はシャットアウトされている。
しかし、屋根はほとんどないに等しい。だから小屋の中の半分ほどは、雪に埋もれているのだった。
「やっぱ一昨日の雪ですごいことになってるねー」
逆に言えば、屋根がないからこの小屋は崩れないで済んでいるのかも知れない。中は畳敷きのようだが、そこに妙に清潔なタオルが何枚も敷かれていた。
「ここね、由利香たちの秘密基地。陽介たちがあっちこっちにそういう場所作ってて、由利香も羨ましいから連れてってって言ったんだけど、女子はダメって言うから、いつきちゃんと二人で作ったの」
してみると、そのタオルは二人が用意したものということなのだろう。
「ドア、二人でしないと開けられないから、外から誰も入って来らんないんです」
なるほど、確かにドアを開けるとき、由利香がドアを外から内へ押す一方で、いつきは横へずらすように力いっぱい引っ張っていた。立て付けが悪くなっているのだろう。
「だからここ、あたしとゆりっち以外誰も入れないです。お兄さんがさいしょのお客さん!」
誰も入れない、というのは確かに安心できる。ぼくは二人に促されるまま「秘密基地」に靴を脱いで上がって、黄色いタオルの上に座る。二人はすぐに、ぼくの側に寄って来た。由利香がぼくの右の頬にキスをする。それを真似るように、ほんのり遠慮がちに、いつきも小さくキスをした。
「お兄ちゃん、何して遊ぼっか?」
由利香はぼくのジーンズの前に触れて、いたずらっぽく訊く。「今日は、いつきちゃんもいっしょだよ、お兄ちゃんのしたいこと、何でも言って。……ね? いつきちゃんも平気だよね?」
「ん……、うん、恥ずかしいけど、がんばる」
昴星に流斗に諭良、ソラ、ルカ、そして由利香に、今日からいつき。天使たち。みんなよくそう言うけれど、そういうときにぼくは言葉を持たない。こうして一緒に居られるだけで十分とも思ってしまうので。
「二人は、何がしたいのかな」
ぼくがそう言うことを、由利香はもう判っていただろう。にぃと笑って、
「由利香はねえ、お兄ちゃんのおちんちん見たい」
と言う。それは確かに由利香の願いであり、いつきにとってもそうだ。
そして二人におおっぴらに自分のペニスを見せるということは、ぼくにとっても願いである。
「でも、ここだと寒いよ」
いつきが言った。冷静で優しい発言である。ぼくとしても二人を裸にしてしまいたい気持ちはあるけれど、風邪をひかせてはいけないという常識も当然備わっている。
「服着たままでも、二人は可愛いよ。ぼくのが見たいなら、ぼくはそれこそチャックから出しちゃえばいいんだし」
ぼくの提案は、二人にすんなりと受け入れられた。ぼくが立ち上がり、まだ、力のこもっていないペニスを取り出すと、すぐに二人して顔を寄せる。まだ見慣れないのか、いつきは頬をほんのり染めて、「すっごー……」と憧れるように呟く。
「触ってもいいよ」
いつきはぴくりと見上げて、指を当てた。「優しく、こうやって動かすとお兄ちゃんきもちいよ」と言う由利香のコーチに従って、いつきがぼくのペニスを扱き始めた。
「いつきちゃん、おちんちん好き?」
純真な手の中で徐々に熱を増していくぼくの陰茎を見詰めたまま、「好き……」といつきは素直に認める。
「由利香も。お兄ちゃんのおちんちん、すっごくカッコよくて、好き。お兄ちゃんのおちんちんで由利香、いっぱい気持ちよくなる……、いつきちゃんも気持ちよくなれるよ」
「ちんこで気持ちよく……、って」
びっくりしたようにぼくを、それから親友を、見る。「その……、セックス……?」
「いつきには、まだちょっと早いかもしれない」
いつきの髪を撫ぜて、ぼくは答える。「でも、それに近いことは……、さっきの擦り合わせるのだけじゃなくて、出来るかも知れない。……ただ、そのための準備はしなきゃいけないけど」
「準備……?」
「由利香も、由利香だけじゃなくてほかのみんな、お兄ちゃんのこと大好きな男の子も、みんなちゃんと準備したらお兄ちゃんとセックス出来るよ」
いつきには今一つ、由利香の言うところの「セックス」が判らないような顔をしていた。そもそも男同士でするのは「セックス」とは言わないだろう……、という認識なのかも知れない。
「由利香だって出来たし、男の子だって出来るんだよ? いつきちゃんも、お兄ちゃんのことが好きって思うなら、きっと出来るよ」
由利香は言って、すっかり勃起したぼくのペニスの先端に、柔らかな唇を当てた。反応して握った手の中の砲身が震えたから、いつきもそれを真似して、唇を当てる。二人の、まだ服を脱いでいない少女の口づけが、ぼくにとって性的な、そしてそれ以上の悦びであることは言うまでもない。
「お兄ちゃん、……今日は、撮らないの?」
とる? といつきが目を丸くする。「何を取るの?」恐らく違う意味に受け取ったのだろう。由利香は誤解をそのままに、「いつきちゃんもいっしょに撮ってもらお? 離れててもお兄ちゃんといっしょにいられる気がするから、由利香、お兄ちゃんに撮ってもらうの好き」と親友を誘い、ぼくのペニスから顔を離す。
「撮っていいなら、撮りたいよ。由利香のことはもちろん、いつきのことも。でも……、いつきはどうかな?」
由利香が鞄から、カメラを取り出す。今朝(どうせ後で取りに戻る、と思っていたから)部屋に置きっ放しにしていたものを、気を効かせて持って来てくれたらしい。
「と、『とる』って、その『撮る』なの? まじっすか?」
目を丸くして、……ようやく言葉の音と繋がる文字やその意味に思い至ったらしいいつきが声を上げた。由利香は「ここでいいかな?」と三脚を立てて、カメラを据え付ける。
「由利香ね、ほんとはずーっとお兄ちゃんといっしょにいたい。でも、お兄ちゃんは東京だし、由利香はこっちだし、お兄ちゃんには由利香以外にもたくさん大切な人がいるから……、由利香がお兄ちゃんを『気持ちよくしたいっ』て思ったときに、いつでも出来るわけじゃないから。だからその分ね、お兄ちゃんが由利香を見たいって思ってくれたとき、こうやって撮ったの見て、会えるようにしたいなって思ってるの」
していることの中身について目を瞑れば、由利香が言っていることはぼくに向けられるまっすぐな愛情だということが判る。その場に親友を連れて来たのも、ぼくを悦ばせたいと思ってくれるからだ。
「いつきちゃんもいっしょに撮ったら、いつきちゃんもいつでもお兄ちゃんと一緒にいるのと同じだよ? お兄ちゃんは絶対だれにも見せない、よね?」
それは、もちろん。そんなことは絶対にしない、しようと思ったこともない。
「えー……」
いつきは、困っている。そりゃまあ、当然のことだろう。由利香はいつきの傍に跪き、「いつきちゃんもお兄ちゃんのおちんちんの写真撮っちゃったらいいんじゃない? そうしたらいつきちゃん、いつでもお兄ちゃんといっしょだよ」
実際のところ、ぼくのこんなもののどの辺りに、少女たちが(もちろん、昴星をはじめとする「少年たち」も)惹き付けられるのかは全く判らない。それは判らないまま、ぼくに幸福をもたらすものとして存在し続けている。ぼくの身体のパーツとして、まずぼくに悦びを与える器官として……。
「……いい、の?」
いつきは由利香に、そしてぼくに、訊いた。
「まあ……、いつきが撮りたいって思うなら、ぼくは別にかまわないよ。もちろん、誰にも見せないって約束した上で、だけど」
いつきは、カメラを振り返る。まだ少しの躊躇いを、
「……あたし、欲しいです、お兄さんのちんこの写真、撮って……、見たいときいつでも見られるようにしたい……」
かなぐり捨てて、言った。
「じゃあ、由利香もいーい?」
由利香が見上げる。まあ、もう、「もちろん」と言うしかない。由利香に至ってはほとんど「いつでも」見ようと思えば見られる距離にあると言っていいはずなのに、そんなに執着したくなるものなのか。
もっとも、それはぼくにしても同じか。この二人の裸を、もっと見たい、いつでも見たい……。
由利香がカバンからスマートフォンを取りだすのを見て、慌てていつきがポケットから取り出したのは、同じ機種の同じ色、保護カバーも同じ。二人が親友である証と言っていいだろう。由利香が早速ぱしゃぱしゃと撮り始めるのを追い駆けるように、いつきも一心不乱にシャッターを切る。こんなの、何枚撮ったって同じだろうと思うけれど……、まあ、ぼくだって昴星たちのおちんちんに執着するから、その点はこの女の子二人、ぼくと同じ感覚を持っていると言ってもいいのかも知れない。
「あの、あの、お兄さん、……えっと、ちんこ、最初のときみたいにするのって、できますか」
頬を染めて、しかしはっきりと「撮影」という行為に夢中になっていつきが言う。
「最初の? って言うと?」
「だから、あの……、上向いてるのも、カッコいいです、けど、その……」
「おちんちんが、勃起する前のときってこと?」
由利香の助け舟に、こくこくと頷いて、「……その、やらかいのも、撮りたい……、って」認める。
「ああ……、そうだね、でも今、興奮してるから出来るかなあ……」
「お兄ちゃん、由利香たちにおちんちん見せて興奮してるの?」
クスクスと、ちょっぴり意地悪な笑みを浮かべて由利香が言った。そりゃあ、まあ……、無理もないよね。可愛い女の子に「見せる」という行為、……ぼくは諭良のような露出狂ではないと思うけれど、一種異様な状況にあって興奮するなというのはなかなかに酷だ。
「おちんちんって、一度勃起したらスッキリするまではなかなか元に戻らないんだよ。ね? お兄ちゃん」
時間さえかければ、精神的な興奮のレベルをゆっくり下げて、この勃起を収めることも可能だろう。ただ、
「あまり長いこと待たせちゃうのも良くない、か」
とも思う訳だ。
由利香が、ぼくのペニスに指を絡めた。「いつきちゃんも手伝って。お兄ちゃんのおちんちん、スッキリしたら最初の柔らかいおちんちんになるよ」言いながらもう片方の手でぼくのポケットからスマートフォンを取り出す。ロックを解除しないまま、カメラを起動して、そのままぼくに手渡した。
「手伝い……、えっと」
いつきの耳には、動画撮影開始の合図が聴こえたはずだ。しかし、紅くなりながらもぼくを見上げて、「……あの、フェラ……、チオ、っていうやつ……、すれば、いいの……?」ぼくに、そして由利香に訊く。
「由利香がこうやってしこしこしててあげる、いつきちゃんはお兄ちゃんの先っぽにたくさんキスしたり、ぺろぺろしたり……、そしたらお兄ちゃん、すごく気持ちよくなれるよ」
ほんとに? と訊くように見上げた彼女に、頷く。……実際、なれてしまうのだから問題だ、少女の指と、舌とで。
いつきが、小さな口から紅い舌を出す。ぼくを見上げたまま、ゆっくりとその舌をぼくの亀頭に宛てた。由利香の手はぼくを扱き続けている、少女がその舌に纏った唾液とぼくのペニスが重なり、生温かく柔らかい愛撫となる。
「いつきちゃん、お兄ちゃんのおちんちんおいしい?」
「……ん、んー……」
「さっき、お風呂でもっとしたんでしょ? お兄ちゃんのおちんちんいっぱい気持ちよくしてあげよ?」
由利香の指がぼくの砲身から離れ、陰嚢を包み込む。いつきはぱくんとぼくのペニスに咥え込み、反応を伺うようにじいっと見上げて来る。まだいつきは口の中での脈動がぼくの快感のサインだということには気づかないのかも知れない。指を髪に絡めて、「気持ちいいよ、上手だね、いつき」撫ぜる。
「由利香もお手伝いしちゃおうかな」
そう言って、由利香がいつきの隣に跪いた。「こうやってね、大きくお口開けて、そのまんま……」ぬるん、と由利香の口腔の中へ収められる……、由利香は、舌も使って来る、頬を窄め、内側の肉まで使って、立体的にぼくを追い立てる。そのやり方を目の当たりにして、「すっごい……」いつきが感動を覚えたように呟いた。
「……ぷは。だいじょぶ、いつきちゃんにも出来るよ。かんたんだよ、お兄ちゃんのおちんちんに歯を立てないようにして、大好き大好きって思ってすればいいんだもん。お口いっぱいに入るの苦しかったら、周りのとこ、先っぽとか、いっぱいしてあげるの」
いつきの親友、……同時に先輩であり先生でもある由利香は、そう言いながらぼくの陰嚢を優しく揉んでくれていた。こくんと頷いたいつきだけど、やはり咥えこむやり方が、由利香に比べて不慣れであることは否定しがたい。もっとも、言ってしまえば「拙い」やり方が却って初々しくて、いつきの良さであるという気もするけれど。
「はう」
やっぱり、すぐ苦しくなってしまうのだろう。
「休憩するかい?」
ぼくが訊くと、いつきは眉間に皺を寄せて、首を振る。
「もうちょっと……、頑張りたいっす。その、お兄さん、ちんこさせてくれてるのに、……あたし、それすごい嬉しいし、だから、お兄さんに気持ちよくなってもらえたら、それが一番のありがとうだと思うから」
少女としての愛らしさに、どこか、少年めいた凛々しさを備えていつきは言う。両手をぼくのペニスに当てがうと、紅い舌を覗かせて、
「……お兄さん……、大好き……」
由利香が言ったことを、彼女はそう解釈したらしい。唇を細かく当てて、舌を伸ばして這わせる、その隙間隙間に、
「大好き……、ん、らいすき……っ、んちゅ、……っ、好きっ……」
囁きかける。
「……いつきちゃん、お兄ちゃんの先っぽ」
「先っぽ……?」
「舐めてみて」
由利香の言うままに、舌をそっと、当てる。
「んぅ……、ひょっぱ……」
その味の意味は、いつきももう判っているようだ、びっくりしたようにぼくを見上げて、「お兄さん……、お兄さん、ちんこ、気持ちよくなってる……」それから、嬉しそうに微笑む。
「お兄ちゃん、もうちょっとで出ちゃうでしょ?」
それは、もう、……こんな少女に、そんな場所へ「大好き」って言葉を繰り返し掛けられれば。
「いつきちゃん、お兄ちゃんのために最後、もうちょっとだけお口でがんばろ?」
由利香に励まされて、「うん」と意志をこめていつきは頷く。それから両手を当てて、目を伏せて、
「……大好き」
祈るように誓うように、濡れた唇で亀頭に触れながら言って、先端を口に含んだ。
「根っこの方、由利香もお手伝いする。あんまり奥まで入れなくてもだいじょぶだから、お口の中でたくさんお兄ちゃんのおちんちん舐めてあげて……」
陰嚢と茎の裏側を小刻みに刺激しながら由利香が言った、従順ないつきは、その通りあったかい舌でぼくの裏筋を舐めている。
その健気で一生懸命なやり方に、思いが形となって込み上げてくるのを感じる。
「いつき、……気持ちいい。出すよ……」
自分の声が見っともなく震えていた。
「ん……? ん……っ!」
いつきが準備するだけの暇を与えてあげられたかどうかは、全く覚束ない。しかしいつきはぼくのを口に収めたまま、ぼくの射精を受け止めてくれた。その上顎を叩いて迸る液体を、少女が口から零すことはなかった。
「少女」として目の前にいるいつきに、初めてぼくが捧げた精液だ。
「……っん、はぁ……」
「ちゃんと飲めた? いつきちゃんえらいえらい」
由利香が先輩の余裕で親友の髪を撫ぜる。いつきは「てへへ」と笑って、ぼくを見上げる。
「お兄さん、ちんこ気持ちよくなってくれて、ありがとうございますっ」
言う笑顔には、爽やかささえ伴う。その分自分の汚らわしさが胸に堪えた……。とは言え、
「いや……、どういたしまして、っていうか、こちらこそ本当にありがとう」
射精直後のペニスを丸出しにしたままであっても、ぺこりと頭を下げるぐらいはしなければいけない。
「いつきちゃん、才能あるかも」
「さいのう?」
「うん、フェラチオの才能。由利香がね、前にしてたお仕事でフェラチオして、お客さんが射精してくれるようになったの、三か月ぐらいしてからだもん」
「そう、なのかなあ……。へへ、でも、ちょっとうれしいかも」
こうして話している顔は、ごく普通の少女、女子トークとも違うけれど、平凡な日常の一コマのようにさえ錯覚してしまう。由利香の持って来たタオルでペニスを丹念に拭かれる頃には、ぼくのペニスは落ち着きを取り戻し、
「あ、ちんこ普通になってる……、お兄さん、撮ってもいいですか?」
いつきの願いを叶えることになる。「その、……もしよかったら、お兄さん、服全部脱いで、すっぽんぽんになって欲しいっす。お風呂で見たお兄さんのハダカ、すごいカッコよかったから」
「ああ……、いいよ、こんなものでよければ」
一緒にお風呂に入る仲だ、言ってみればこれも裸の付き合い、ならば恥ずかしがる必要もあまりない。ちょっと寒いけれど、着ているものを全部脱いで見せた。いつきが「すごい、すごいすごい、超カッコいい」夢中になって何枚も撮る、だらしなく垂れ下がるその場所にも顔を寄せて、何枚も、何枚も。一緒になって、
「お兄ちゃんのハダカって、カッコいいって、由利香もいっつも思ってるよ」
由利香も撮ったところで、「いつきちゃん、お兄ちゃん、休憩しよ。由利香ね、お茶持って来たの」と鞄から水筒を撮り出す。コップは、残念ながら水筒の蓋しかない。けれどいい香りのする日本茶を、三人で回し飲みするのは楽しい。
「ゆりっちのとこのお茶、おいしい」
白い息を綻んだ唇から揺らしていつきが言う。うん、美味しい。さすがに高級旅館、出て来るお茶も上等なものに決まっている。香りも高く、立っている。裸のぼくの左に由利香、右にいつき、二人の少女はまだ服を脱いでいないが、二人とも可愛いのでちっとも寒くない……、お腹の底からあったまるような気持ちだ。
「……お兄さん、ちんこ……、触ってもいいっすか?」
いつきの眼は、すぐにぼくの下半身に向いてしまうようだ。もちろんそれは構わないのだけど……、
「まだ、だーめ」
由利香がその手を停めた。「お兄ちゃんのおちんちんばっかり見るのだと、不公平でしょ。お兄ちゃんにも由利香たちのこと見せてあげないと」
「あ……、そっか」
「いつきちゃん、お兄ちゃんといっしょにお風呂入ったでしょ? あのとき、すっぽんぽん見せるの平気だったでしょ? だから、撮るのも平気だよね?」
「んー……、うん。ゆりっちもいっしょに撮るんだよね?」
もちろん、と由利香が頷き、立ち上がる。「お兄ちゃんも、いつきちゃんと由利香と二人で撮るの、見たいでしょ?」
「見せてくれるなら、……もちろん見たいよ」
由利香のことだ、想像するだけで……、おとなしくなっていた場所がまたいつきの興味をそそるような反応を見せかねない。
「じゃあ、撮ろ、いつきちゃん。二人で、いつでも兄ちゃんといっしょにいられるようなの」
由利香がそう宣言し、いつきは少し緊張した顔で、頷いた。
二人の少女の愛らしさを考えれば、背景がちょっと雑然としすぎてはいる。積まれているのは主に木箱、それらには、……もう屋根のないボロ屋であるからだろう、青いビニールシートが被せられ、その上にはほんのりと雪が融け残っている。
「塚崎由利香です」
長い黒髪を、後ろで一つに縛った少女が微笑んで言う。
「す、砂原いつきです」
緊張からか、表情を少しく強張らせたもう一人の少女は、少年のように短い髪、僅かに耳を隠すほどだ、カメラに向かってぺこりと、挨拶するように頭を下げた。
由利香の方が、ほんの少し背が低い。二人の唇からは白い息が流れていた。コートは脱いでいるが、寒さを感じてはいない様子だ。由利香は身にぴったりとした灰色のワンピース、長いソックスは黒だ。対していつきは、白い膝までのソックスに、デニムの半ズボン、その上には黄緑色のパーカーを着ていて、胸元にはインに着た黄色いTシャツが見える。
「由利香といつきちゃんは、お兄ちゃんの、『恋人』です」
由利香が口にした言葉に、一瞬、いつきが驚いたような表情を浮かべた。しかし由利香が「ね?」と同意を促すと、いつきは真っ赤になって「ん」と頷いた。
「お兄ちゃんと、いつでもいっしょにいたい気持ち、由利香もいつきちゃんもいっしょだから、由利香たちが離れたところにいるときでも、お兄ちゃんがさみしくないように、由利香たちもさみしくないように、由利香たちのこと、お兄ちゃんにいっぱい、いーっぱい見てもらおうね」
由利香が言い、いつきのパーカーのジッパーに指を掛ける。「あたしだけ?」と、戸惑ったように小さくいつきが問うた。由利香が「じゅんばん。由利香も、すぐ」と答えると、納得したように由利香に任せる。
ワンピースの上からでも、ほんのりと胸部が膨らみ始め、怪しい女らしさを輪郭で表現している由利香に対して、パーカーを脱いで長袖のTシャツ一枚だけになったいつきのバストは未だ平坦だ。乳首の主張も、ほとんどない。由利香の手が、そんないつきの穿くデニムに至ったところで一瞬いつきが身じろぎをした。僅かに残る抵抗感、
「いつきちゃん?」
それを、後ろに回った由利香が指先で拭い去る。いつきはうつむき加減にしながら、恥ずかしそうに自分を見つめるカメラに目を向けて、すぐに視線を逸らした。
焦らすように、由利香がゆっくりとボタンを外す、それからジッパーを摘まんだ。……本当は、焦らすつもりなどなくて、ただ単に後ろから誰かのズボンを脱がせるのが難しいだけかもしれない。
ジッパーが降りたことで、Tシャツの裾との僅かな隙間に、いつきが穿いている下着が露わになった。白い生地に、カラフルなウサギの顔がちりばめられた、愛らしい柄のショーツだ。由利香の手によって、デニムが太腿、そして膝、結局は足元まで脱がされ、「いつきちゃん、シャツめくって」という言葉に従って彼女自身がシャツをへその上まで捲り上げたことで全貌が明らかになる。ウェーブを描くウエストの縁に、ピンク色の刺繍がされている。ボーイッシュな少女の穿くものとしては、愛らしさの度合いが高い。
「このパンツね、下ろしたてだよ」
後ろからいつきのへそ下に手を回して、優しく抱きしめた由利香が言う。そうした接触には慣れているのか、いつきが嫌がる様子はない。「そう、なの?」
「うん、由利香、いつきちゃんにこういうパンツ穿いてほしかったの。穿いてるとこお兄ちゃんに見せてあげたかったし、あと、いつきちゃん普段かわいいの穿かないから、……パンツもおしゃれしたら、きっともっとかわいいのにって思ってたから」
可愛い、と言われて真っ赤になって、いつきは両の手のひらで自分の下着を隠した。
「ゆ、ゆりっちは、パンツ……」
「うん、由利香も見せるね」
いつきの背後から再び姿を現した由利香は、いつきに掛けた時間の十分の一も掛けずに、
「はい、由利香のパンツ」
太腿と膝の中間地点にあった、スカートの裾を両手で摘まんで持ち上げて、隠されていた下着を見せた。温かみのある淡いクリームイエローで、ウエストも裾もごくシンプルな中でセンターにリボンがアクセントとなっている。由利香はくるりと背を向けて、小さなヒップを包む生地も晒して顔だけ振り向いた。筆記体で「with LOVE」と、ピンク色を主体としたプリントがされている。しばしカメラに向かってリアビューを見せつけてから、再び向き直った由利香は改めて向き直ると裾を下ろし、自らの胸の膨らみに指を当てた。
彼女はそのワンピースの下には何も身に着けていないらしかった。粒状突起が、両胸のピークにうっすらと浮かび上がる。
「……こうゆうのって、その、……いきなりすっぽんぽんになっちゃったりするんだと思ってた」
積極的に自分の下着を見せ付ける親友の隣で、徐々に慣れ始めたのかも知れない。いつきはもう、愛らしいショーツを隠す手は外していた。
「一番えっちなのは、ハダカかも知れないけど……」
由利香がまたスカートを捲り上げる。今度は尻の方まで同時に捲り、その仄かな膨らみのアンダーラインまで見せた。雪のように白く細い腹部の、臍のくぼみがどこか幼げに見える。「でも、順番の方が、いつきちゃんもやりやすいでしょ? それに、いろんなところ見てもらったほうが、『いっしょにいる』ってお兄ちゃんにも思ってもらえるよ」
「そう、なの? かなあ……」
「そうなのー。……もっと時間があったら、由利香の持ってる水着とかいろんなの、いつきちゃんに着てもらいたかったけど、今日はないから、こんどね」
由利香が裾を下ろした。そのまま、……自らの下半身を護っていたショーツに指を絡めて、ゆっくりと下げる。太腿までそのショーツを下ろしたところで、「いつきちゃん、シャツ脱いで」と促す。
「シャツ……、って」
「由利香は、先にパンツ脱ぐから、いつきちゃんはそっち」
太腿から膝へ、最終的には足を抜いて、由利香は嫣然とカメラに向けて微笑み、自分のぬくもりが残る下着を胸元で左右に引っ張って見せる。「由利香のパンツだよ」と、愛らしい声で言う。
「あたしのー……、胸なんて見たって……」
いつきは首を傾げ、唇を尖らせながらもシャツを捲り上げ、どこか男らしささえ感じさせるやり方で脱ぎ去った。静電気のせいで、乱れた髪に、由利香が優しく手櫛を通す。パンツ一丁の姿になったいつきは、一瞬胸を隠し掛けたが、由利香が背中を向けて裸の尻を捲って見せていることに気付いて、両手を下ろす。
「いつきちゃんのおっぱい、由利香かわいいと思うよ?」
「そうー……、かなー……。こんなさ、ぺったんこなのに……」
「でも、由利香はいつきちゃんのおっぱい好きだなー。お兄ちゃんも、由利香のおっぱいと同じくらいいつきちゃんのおっぱい好きだよ」
振り向いた由利香が、じいっとカメラを見詰めて、「お兄ちゃんは、ちゃんと由利香もいつきちゃんも『女の子』って思って、大事にしてくれるもん。おっぱいの大きい小さいじゃなくって……、大きいのが好きだったら、由利香たちよりもっとお姉さんの、大人の女の人の方がいいはずでしょ? でも、お兄ちゃんは」
由利香の口元には、甘い甘い笑みが浮かんでいる。摘まんだスカートの裾を、焦らすように、ゆっくり、ゆっくり……、上げていく。
「由利香たちのこと、『好き』って思ってくれる。由利香もいつきちゃんもお兄ちゃんのこと大好きだから、同じぐらいに『大好き』って思ってくれる」
少女の、場所。スマートな体型の由利香でありながら、その場所にスリットが刻まれることで、どことなく肉感的に見える。ほんの短い亀裂に過ぎない、離れたところからならただ短く黒い線分、それでいながら、見る者の心を烈しく揺さぶる。……男児の陰茎のようにあけっぴろげに前へ突き出している訳ではなく、そのスリットはあくまで内性器の端緒に過ぎない、ゆえにある種の奥ゆかしさが漂う。しかしその一方で、大人の女のその場所のように茂みに隠されている訳でもなく、無毛ゆえに遮るものなく見えてしまうことが、明確なエロスを醸している。
「いつきちゃん」
由利香に名を呼ばれるだけで、いつきは自分が何をするべきか悟ったようだ。んく、と唾を飲みこむ。全裸で男湯に浸かることで、男の「ハダカ」「ちんこ」を観察したいと願って来た彼女にとって、男の視線のあるところでパンツを下ろすことはそれほど抵抗はないかも知れない……、いや、それが「記録」として残ることはやはり大きいか。
しかし、いつきは由利香の隣で、背中を丸め、片足を上げ、……その愛らしいショーツを下ろした。それを見届けてから、由利香がワンピースをたくし上げて、脱ぎ去る。
対照的な二人の少女の裸が、並んだ。緊張しているのか、いつきは微かに震えている、……いや、
「……ひぁ、……ひゃっくしょん!」
彼女は、大きなくしゃみをした。
ずっと黙って見ていたけど、
「だ、大丈夫? いつき、寒い?」
慌ててぼくは言ってしまった。「あっ」と由利香が声を上げ、「うあ……」鼻を啜ったいつきもぼくを見た。二人は「しー」と唇に指を当てるが、もう遅い。
「もう、せっかくお兄ちゃんひとりのときに楽しいの作ろうって思ったのに」
ぼくが入るのは、もっと先の予定だったのだ。その方が、本当に一人のときの僕が慰められるものになるだろうから、という由利香のアイディアだった。
「ごめん……」
「あたしも、ごめんなさい」
いつきもしゅんと謝る。
「でも……、何ていうか、ぼくのためにいつきが風邪ひいたりしちゃったら困るしさ、ここからは、もう普通でいいよ。……いつき、本当に大丈夫? 寒いなら着て」
脱ぎ捨てられたパーカーを、肩に掛けてやる。由利香よりも少年っぽく見えるってことは、それだけ華奢でもあるわけで、彼女の細い腕には鳥肌が立っていた。
「緊張、しちゃって、その……、へへ、ごめんなさい」
由利香も、この期に及んでわざわざ二人のショーのようなビデオでなくてもいいかという気がしてきたらしい。「ごめんね、いつきちゃんに無理させちゃった」素直に謝って、ぎゅ、と親友の身体をパーカーの上から抱き締める。
「でも、いつきちゃんが可愛かったからお兄ちゃんおちんちん勃起してたよ。いつきちゃん見えた?」
いつきは、「ん」と頷いて、照れくさそうにぼくのその場所と、顔を、順に見る。
「なんか……、すっごいうれしかったっす。その、触ったりするんじゃなくて、見てるだけでお兄さんのちんこが、どんどん上向いてってて……」
少年のような笑顔と、少女の身体、由利香とくっつくと一層拍車がかかる。
「二人とも、本当に可愛いよ。……両手に花だね」
腕の中に抱き締めて、……由利香の身体も冷え始めてしまっていることに気付かされる。当然と言えば当然。一方でぼくは二人を見て、全裸でいるけれどまるで寒さを感じていない。
「お兄ちゃん、あったかい……」
由利香が気持ちよさそうに呟く。「お兄ちゃんが一番さむがらなきゃおかしいのにね、パンツもはいてないんだよ?」
「ぜんぜん寒くないよ。二人見てると、寒さなんか忘れちゃうね、……心の中に火が点いたみたいな気持ちになる」
それは正直な気持ちだ。今だって、愛らしく良い匂いのする少女二人を腕の中に収めて、興奮している。そんなぼくの身体が二人にとって温かく心地よいなら、何よりもぼくが嬉しい。
「でも、お兄ちゃんが寒くて風邪ひいちゃったら困るから、あったかいとこ行こっか」
由利香が、ぼくにと言うよりいつきに訊いた。
「あそこ? うん、あたしはいいよ。……でもあそこ、思いっきし外だけど……」
「でも、ぜったい誰も来ないでしょ? 由利香たち以外は陽介と瑞希しか知らないし、あの二人今日はデートしてるから。ね、お兄ちゃん、由利香たちのね、もういっこの秘密基地いっしょに行こ。また服着て、あっちいったらまた脱がなきゃいけないくなっちゃうけど」
口ぶりからすると、温泉があるのだろう。しかしマップにはこちら方面の温泉はもうなかったように思うし、「山ゆりの湯」という訳でもないらしい。
「もちろん、ぼくは構わないけど……」
「じゃあ、決まりだね!」
由利香が嬉しそうに言い、いつきも頷いた。勃起したペニスをトランクスの中にしまいこむ間、立てたままの三脚のカメラは二人の少女が身支度を整える様子をきちんと収めていた。
「こっちにね、だーれも知らない温泉があるんです。あたしとゆりっちが見つけたの」
あの小屋から、道なき道を進むこと五分ほど。もう温泉街の中心地からは二キロは離れたはずで、周囲は冬枯れの野原と山林だけ。残雪が綺麗に残っていて、ぼくらは寒い中なのに、汗をかきながら一歩一歩を踏みしめながら歩いた。
「こんなところまで、二人だけで来るの?」
「うん、……冬の間だけね。夏は怖いから」
「怖い?」
「クマが出るんです」
思わず周囲に目を配ってしまったが、冬眠中に違いない。
「春になるとクマが起きてくるから、冬になって雪がある間だけしか行っちゃいけないことになってるんです」
二人の息も弾んでいた。帰りはしっかりあったまって帰らないと、却って湯冷めしちゃうかもしれないな。何を目印に歩いているのか、ぼくのは判然としないけれど、夏場は爽やかな高原になるのであろう雪原から林に入り、少し雪が浅くなったか、小さな川が見えて来たなというところで、
「着きました」
いつきが言った。
その、小川のほとりで。
「川……、だね」
「はい、川です。あそこのところ……、お兄さん見えますか?」いつきが指差した先、少し上ったところに、この川を生み出しているらしい湧き水が大きく口を開けている。
「あそこから、熱いお湯が出て来てて、だんだん冷めて来て、この辺からちょうど入れるぐらいの温度になるんです。だからここがヒミツのお風呂。屋根も何にもないですけど、あたしたちしか知らないから」
「なるほど……」
つまり、この小さな流れが由利香やいつきの旅館や、「山ゆりの湯」に恵みを供給する源泉というわけか。
「ううん」
ぼくの考えを読んだように、由利香が首を振った。「あたしたちの温泉のお湯は、……バスの着くところにあったでしょ? 足湯になってる……、あそこ」
「あ、そうなの……?」
じゃあ、これは?
「こっちのお湯は、すぐに向こうの川と合流しちゃうし、街のはずれだから誰も入らないんです。だから、あたしとゆりっちの秘密基地」
いつきは笑顔で言って、「入ろ、ゆりっち」と親友を誘う。
「うん! お兄ちゃんも、こんどは入りたくなったらいつでも入って来てね」
慌ててカメラを構えるぼくの前で、二人の少女はここが屋外であることを忘れたかのように、するすると裸になって見せた。……経験上、本当に此処に来る人間がいないことを、彼女たちは知っているのだろう。湯気をたなびかせて流れる川、背景は林。裸になった由利香といつきは、何だか悪戯好きの妖精のようにさえ見える。二人は並んで川の流れの浅いところに仰向けになった。滑らかな肌の上を滑る温かな流れが、二人の美しさの秘密かも知れない。実際由利香もいつきも、とても肌が綺麗なのだ。
「二人とも、いつもここでお風呂入るときはすっぽんぽんなの?」
寝そべる二人に訊いてみた。
「うん、だって誰も来ないもん」
由利香はうつぶせになる。円いお尻が、とてもキュートだ。
「でも、今日はいつもと逆なんだよね」
いつきが言う。逆?
「うん、えっと、いつもは先にここでお風呂入って、それからあの小屋に行くんです。夏の間は、『山ゆりの湯』でお風呂に入ってから、小屋に行ってお昼寝したり、宿題やったりとか」
いつきはもう、股間を隠すことさえしなくなっていた。滑らかなお湯の流れるスリットは、鮮やかささえ感じさせる。温泉の妖精、源泉の天使、何と言っても構わないけれど、祝福されて在るような景色だ。
見てるだけでは寒いから、……そんな言い訳も要らない。誰も来ない、という二人の言葉を信じて、ぼくもすぐに裸になって恐る恐る、流れの中に足を浸した。本当にそれは、心地よい温泉の温度だった。
二人がぼくの手を取る。
「こっち、もっと深くてちゃんとお風呂だよ」
由利香といつきに導かれて、なるほど、深く掘り込まれた場所がある。大人のぼくと二人の少女が入っても全然窮屈でないほどのスペースで、足も延ばせる。源泉から少し離れた分だけ、温度も少しぬるまったようだが、その分長く入っていられそうだ。
「お兄さん、あの、……くっついていい、っすか?」
いつきが少し恥ずかしそうに問う。もちろん、と頷くと、いつきがぼくの右の太腿を跨いでぴったりとくっつく。
「じゃあ、由利香も」
由利香は左の太腿だ。肩から上を水面から出して、二人がぼくに抱き着いた。すべすべの肌が、温泉の中でぼくに重なる。
「……あったかいね、すごい……、露天風呂としては最高のロケーションだ」
しかも二人の天使が腿の上。素晴らしい温泉を、ぼくはまた知ってしまった。
「お兄ちゃんが気に入ってくれてよかった。……あ」
「う」
由利香といつきが二人して声を上げる。ぼくにはそれが何を意味するのか判らない。二人は顔を見合わせて、由利香はいたずらっぽく笑い、いつきは照れ臭そうに紅くなった。
「いっしょに、しよ?」
「……うん」
二人の指が、お湯の中でぼくに絡んだ。何だ、二人ともぼくに触ろうと思ってくれたのか。
二人を同時に抱き締めながら、順にキスをする。二人の柔らかな指、由利香は左手、いつきは右手、それぞれ相応な器用さで、ぼくのペニスを愛撫する。由利香のほうがより積極的にぼくを心地よくする動きを選ぶ、……尿道口に指の腹を当てたり、亀頭の裏筋を指先で擽ったり。一方でいつきは、まだ不慣れな男性器の感触をその無垢な手のひらで学ぶように、丹念にあちこちを触れて回る。
「ここの温泉の、お湯はね、由利香のところとか、街のあちこちの温泉まで流れて行くの」
由利香がぼくの頬をぺろりと舐めて言った。「だから、由利香といつきちゃんがここでオシッコしたら、そのままみんなの浸かるお風呂に流れて行っちゃうの」
「……ああ……、なるほど、そういうことになるか」
「ゆりっちと、二人でね、ここで……、お湯の中でしっこ、しました、こないだ」
いつきが恥ずかしそうに告白する。
「お外、寒かったし。一緒にしたの」
源泉からして少女の尿が混入しているお湯、……まさかここ一帯の温泉が心地よいことの理由にはなるまいけれど、それはそれで素晴らしいことに決まっている。
「今は?」
二人の瑞々しいお尻に触りながら、ぼくは訊いてみた。さすがにさっきたくさんしてもらったばっかりだから、そうそう出ないかもしれないとは思ったけれど、
「由利香、出来るよ」
ひょいと立ち上がって、由利香のスリットはぼくの目の前。何度も見てきた場所なのに、そこを目にしたぼくがペニスに力を籠めてしまったことは、いつきにもバレているだろう。
「いつきちゃんは?」
幼馴染に訊かれたいつきが「んー、うー……」少しためらって、……短い時間お湯に浸かっていたから、と言うには少々紅すぎる頬で、
「出来るっ」
と勢いよく立ち上がった。羞恥心を超えて、いつきは微笑む。
「お兄さん、しっこ好きっていうのもう判ったし、それに、……どーせするなら、お兄さんの好きなやり方がいいから……」
下から見上げるスリットもバストもいいものだと思う。いつきもこうしてみると全くのぺったんこという訳ではない、いや、平たいことは間違いないけれど、乳首がツンと尖っているのは判る。由利香と比べてしまうからいけないのであって、この子だってちゃんと女の子のおっぱいをしているんだ。
「お兄ちゃん、あーんして」
男の子のおちんちんがどっちに向けてオシッコが出て来るか、その矢印のような役割を果たしているのに対して、女の子のそこはまた違う。しかしいつきは立ってオシッコが出来る子だし、由利香にしてもそれはずいぶん上達したと言っていい。ぼくは素直に口を開けて、二人のスリットから迸るはずのシャワーを待つ。
「いーい? いつきちゃん、いくよ?」
「うんっ」
ほとんど同時に、二人が指で開いたスリットから淡い黄色の液体が滴り始めた。勢いがいいのは由利香の方だ。まずそれが、ぼくの口の中へと注がれる。由利香の、塩味の強いオシッコ、それを追い掛けるように由利香と混じり合いながら、いつきが意外なほど色の濃いオシッコを噴き出した。由利香に比べれば丸みを帯びた味、二人のそれがミックスされて、ぼくの舌の上で極上のカクテルとなる。
二人とも、女の子とは思えないぐらい「立ちション」が上手で感心する。けれどそれを称賛する言葉を口にすることはもちろん出来ない。ぼくの頭上で、
「いつきちゃん、お兄ちゃんのおちんちん見て」
「ん? ……あ、ヒクヒクしてる……」
由利香が、ぼくを跨いだまま一度オシッコを止めて、太腿を跨ぐ。「いつきちゃんも」と手招きして、今度はぼくのペニス目掛けて放尿を再開する。
「えっえっちょっと待って待って」
不意のことだったのだろう、いつきのそこからは小刻みなシャワーが止まらない。けれどぼくにお尻を向けて、再び勢いよくオシッコのシャワーを、ぼくの勃起して震えるペニス目掛けて解き放つ。こうして見るといつきのお尻は引き締まっていて、とても瑞々しく見える。
二つの甘美なせせらぎが止み、再び辺りには温泉の流れの音だけが響く。それに溶け込むように、二人の溜め息が漏れた。
「すごい……、こんな、お兄さんにしっこめっちゃかけちゃった」
いつきがぼくを振り返って、照れ臭そうに笑う。
「お兄さん、こういうのうれしいんですか?」
口の中に残されたオシッコを味わいながら呑み込んで、
「嬉しいし、幸せだと思うし、大好きだよ」
とぼくは百パーセント心からの言葉として認める。
「そういえば……」
言いながら由利香がしゃがみ、オシッコまみれにしてもらったぼくのペニスに触れる。それを見て、いつきは一瞬ためらった様子を見せたけど、お尻を向けたまま同じくぼくを跨いでしゃがんで、恐る恐るの感じで片手を当てる。「しっこ触っちゃった……」と小さく独語するのが聴こえた。
「お兄ちゃん、いつきちゃんのうんちはまだ見なくていいの?」
「ぴゃ」
由利香の言葉、いつきには「とんでもない」と思われたに違いない。いつきは、……今日だけで、大人の男のペニスに触れ、疑似的にとは言えセックスに近いことをし、その上、パンツを穿いたままオシッコをしたり、男の顔を跨いでオシッコをしたり……、数々の初体験をこなしてきた後ではあるけれど、同じ排泄物ではあれその「小」と「大」との間は大きな差があることはぼくも判っている。
「え、えー……」
いつきは、恥ずかしそうにぼくを振り返る。
「お兄さんは……、あの、そっちも見たい……、ん、ですか?」
いまのいつきのポーズは、正しく和式でうんちをするときのそれである。顎を引けば彼女の小さな花のつぼみはぼくにも見ることが出来る。
「まあ……、それは、いつきに任せるけど……」
ぼくの言葉を拾い上げるように、
「今日はお兄ちゃん、いつきちゃんの見たいものたくさん見せてくれたよね?」
って由利香が煽る。
「うー……、う、ん……。……で、でもでも、うんこなんて、臭いし、汚いし……、お兄さん、マジでほんとに、そんなの、見たいんすか……?」
弱り切ったように、でも、優しさを捨てきれずにいつきは問う。
「お兄ちゃん、いつきちゃんのうんちするとこ想像したでしょ」
由利香がくすくす笑いながらぼくのペニスに顔を近づけた気配がある。れー、と茎の裏側を舐めて登られた。「ふふ、いつきちゃんのと由利香のと、オシッコ混じった味する……」
「ゆ、ゆりっち、あたしのしっこ舐めちゃった……!」
いつきは、前から後ろから、いろいろな欲に翻弄されるばかりだ。
「由利香のも、だよ。いつきちゃんのオシッコおいしい。由利香のは、そんなでもないかもしれないけど、……お兄ちゃんのおつゆと一緒になって、もっとおいしくなってる。ほら、いつきちゃん、いっしょにしよ? お兄ちゃんにいつきちゃんに全部見せてあげながらしたら、お兄ちゃんたくさん気持ちよくなってくれるよ?」
「ぜんぶ……」
いつきは、ぼくのペニスを手にしたまま、ぼくを振り返る。由利香の言葉の意味を、彼女なりに想像し、理解し、……恥ずかしそうに、ぼくの胸の上でシックスナインのポーズを取る。いつきがうんをする穴が、目の前で震えている。たくさんのオシッコをしてくれた場所は、残尿で濡れている。
「うう……、しっこくさい……」
そうつぶやく声が聴こえる。それでもいつきは、もう由利香に促されることもなく、ぼくの亀頭に舌を這わせた。
「ふふ……、いつきちゃん、お兄ちゃんのおちんちん大好きだね。……由利香も大好き」
由利香は袋から根元にかけてを舐め始めた。それを見たからだろう、いつきも勇気を出して、ぼくの亀頭を口腔内に収める。不慣れではあるけれど柔らかな愛撫にいとおしさを覚えるのは当然として、ぼくの中にこの子をもっと幸せにしてあげなきゃいけないという義務感が芽生える。
いつきのお尻に手を当てて、顔へと引き寄せる。
「っぴゃ……!」
いつきの口からぼくのペニスが抜けた。構わず、いつきのスリットに舌を這わせる。オシッコの味をぼくの舌に知らせていることに戸惑いながらも、いつきは腰を逃そうとはしなかったし、口から外れたペニスを握ったまま離さない。
「お……、にいさ……」
まだ不慣れな感覚だろう。それが「気持ちいい」とはっきり理解しているかどうかも判らない。でも、ぼくが出来る精一杯のお返しだ。いつきが悦べばいいという願いは、ことによっては自分が気持ちよくなりたいと思うそれよりも大きいかも知れない。
「いつきちゃん、きもちい?」
いつきが健気に動かす手を支えながら、由利香がぼくの亀頭に舌を当てる。
「んっ……、たぶん……、たぶん……っ」
「お兄ちゃん、優しいでしょ? お兄ちゃん、大好きでしょ?」
いつきが、震えながら、
「ん……っ」
確かに、頷いた。
「……出来る?」
由利香が、重ねて訊く。「由利香もいっしょにするよ。そしたらいつきちゃん、そうやってペロペロしてもらうよりもっと気持ちよくなれる……」
小さなピンク色のつぼみが、鼻先できゅっと窄まった。
それが、僅かに、緩んだ、ような気がした。
「……す、る……」
濡れた吐息混じりに、いつきが呟く。
「あたし……、する、出来る……、したい……、ひゃ!」
細く引き締まった太腿にキスをした。右に、そして左に。ゆっくりと起き上がり、びっくりした様子で振り返ったいつきの髪を撫ぜる。そのいつきに由利香が抱き着く。二人ごと、ぼくは抱き締める。
「ふつうの人は、そうじゃない」
由利香が言う。「ふつうの男の人はね、由利香たちの恥ずかしいとこ、見たいだけ。でもお兄ちゃんはね、由利香の知ってるたくさんの男の人の中で初めて、ちゃんとお返ししてくれる人。由利香が幸せにしてあげたいって思う人。いつきちゃんが一緒なら、きっと今までよりもっとお兄ちゃんのこと幸せにしてあげられるし、お兄ちゃんのこと大好きなみんなのことも、お兄ちゃんが願うように幸せにしてあげられると思う」
少女の肌は、少年のそれとは違って柔らかい。どっちがいいなんて言うつもりはない、どっちもかけがえのないものだ。だからぼくにとって他の少年たちと由利香と、今日出会ったばかりのいつきの間に差なんてない。
ぼくが腕を緩めると、いつきは少しだけ躊躇ってから、
「どう……、やって、ゆりっち、するの……?」
親友に訊く。
「いっしょに。……由利香はね、いろんな仕方でしたことあるよ。ね? お兄ちゃん」
そりゃもう、考え付く限りいろいろなポーズを見せてくれた。
「いつきちゃんも、立ってオシッコできるぐらいだもん、由利香とおなじやり方、きっと出来るよ」
由利香はそう言って、いつきの手を導いて立たせる。そのまま大切な親友の身体を、ぎゅっと抱き締めた。
「ゆ、ゆりっち……」
いつきはぼくにそうされるよりも恥ずかしく思えるらしい。頬を真っ赤に染めたが、「いつきちゃんも」と由利香に請われて、恐る恐る、やがて確かな意志を篭めて、由利香の腰に手を回した。
由利香の両手が、いつきの女の子としては小振りな臀部に触れる。左右からそれを、きゅっと割り開いた。
「お兄ちゃん、いつきちゃんのお尻見て」
「やっ……、これ……、はずかし……っ」
由利香の言う通り覗き込む。綺麗な肌色の一本線と、愛らしいピンク色の肛門が両方見える。とても贅沢な景色である。
「恥ずかしがることないよ。いつきのお尻、すごく可愛い」
「そ、そ、そうなの……?」
「いつきちゃん、由利香のお尻もして? 由利香もお兄ちゃんに見せたい……」
いつきは羞恥心から逃げるように、ただ由利香の頼みに素直に従う。いつきが割り開いた由利香のそこも、同じくらいに愛らしい。ただはっきり違うのは、由利香のおまんこからとろりとした卑猥な液体があふれて止まらなくなっているということだ。
「出て来るとこ、お兄ちゃんに見せたから、もう恥ずかしくないよね?」
由利香はそんな勝手なことを言って、いつきのお尻から手を離し、一歩下がる。それから肩を抱いて、……いつきが驚く暇も与えない。その唇を、いつきの唇に重ねた。いきなり舌を含ませる、濃厚な口づけだ。いつきは目を丸くしたが、すぐにひくひくと震え始める。由利香のキスは、いつだって上手だ。
「いつきちゃ……、うんち、いっしょに、しよ……?」
「……っ、んっ、れ、もぉ……っ」
「らいじょぶ……、も、ゆりか、れちゃうから……」
手を離す。自分の臀部を、自らの手で割り広げながら由利香はなお親友に舌を絡めている。「いつきひゃ、も……、ね?」
二人の足の間から、勢いの良いシャワーが溢れ出した。どちらも、ここまでで摂取した水分量の多さからか、色はほとんど付いていない。重ねていた唇が離れ、二人は吸い寄せられるように互いの股間に目を向ける。スリットの奥から解き放たれた飛沫に、由利香は一層興奮したように微笑み、いつきはただ茫然としていた。
由利香のお尻の陰から、黒茶色の物体が顔を覗かせた。オシッコが、ピュッ、ピュッと二度間欠泉のような噴き出し方をして、勢いを喪って行く。
「お兄ちゃん……」
左足を軸に、九十度身体の向きを変えて、由利香はぼくにお尻を向けて突き出した。「見て……、由利香、うんち出て来た……」
ぼくらが浸っている温泉の流れはもとより湯気を立てているが、それ以上に熱さを感じさせる物体が、にちにちと音を立てながらゆっくりと由利香のお尻の間から生まれ出て来る。すべすべで、程よい弾力があって、ほんのり紅潮した清潔感満点のお尻から、そんな物体を覗かせる由利香は、世界でも有数な、ぼく好みの少女である。
由利香はそうなるべくしてそうなった。
「いつきちゃん、も……。お兄ちゃん、きっとすごく、うれしいよ……」
隣に立って膝を震わせるいつきも、「そう」なるために、ぎこちなく、……ぼくへとお尻を向けて、付きだした。内腿に付いてしまうことを恐れるのだろう、由利香よりぐっとお尻を突き出して、膝を曲げて、……結果的にそれは、由利香よりもずっと淫らでみっともないポーズであるとさえ言える。
それでも「んぅう……ッ」声を堪えていきむ、その肛門に一瞬隙間が空いて、愛らしいガス放出の音をぼくに聴かせる、俯いて、なおもいきむ……、その姿は、ぼくの胸を強く揺さぶる。
人に晒すことなど今日が初めてに違いない肛門が、今度は確かな物体の力感を伴って内側から膨らむ。
「う……あっ……ああ……っ」
いつきのお腹は、由利香同様ちゃんと健康であるようだ。ゆっくりと丸く押し広げられた穴から、立派な太さの便はそれまでの躊躇いとは裏腹なスムーズさで生み出され、突き出されたお尻の下にぽちょんと音を立てて落下した。それが呼び水になったように、もう一つ長いものが生み出される。隣では由利香がお尻を甘ったるく揺らしながら、女の子としてはこちらも相当に立派な太さのうんちをじっくり時間をかけて垂らしている。二人のお尻の下に落ちる茶色い塊は緩やかな温泉の流れに従って、下流の方へ転がって行く。
「んっ……、はぁあ……」
いつきが、力を喪ったようにしゃがんだ。全部出たのだろう。遅れて由利香も、同じポーズになって、
「すっきりした?」
いつきに訊く。いつきは肌全体が羞恥心に染まったように見える。震えながら、こっくりと頷いた。
「ゆりっち……、いっつも、こんな、恥ずかしいこと、してるの……?」
「もっと恥ずかしいこともするよ?」
「ひえ……」
「だってお兄ちゃんが好きだもん。お兄ちゃんがうれしいって思うこと、いつもたくさん考えて、どんなに恥ずかしくってもするって由利香、決めてるの」
ね、お兄ちゃん、と由利香が振り返る。苦しくなるぐらいキュートでチャーミングな由利香は流れの中で四つん這いになって、「お尻、洗って」たくさんのうんちをひり出したお尻をふりふりと振って見せた。
「うん、……ごほうびもあげなきゃね?」
「んーん、ごほうびは、いつきちゃんにあげなきゃ。いつきちゃん、由利香よりももっと頑張ったもん」
いつきは頬を染めながらも興味津々の顔で由利香のおねだりに応じるぼくを見詰めている。その視線を意識しながら、由利香のスリットに舌を当てて、ワレメの中へと潜らせる。
「んふぅ……」
由利香はことさら気持ちよさそうに鳴いた。それをされるのが好きであることは知っているけれど、いつきの前だから余計にそう見せたいと思うのだろう。
「お兄ちゃん、お尻も……、お尻も、いっぱいうんちしたからごほうび欲しい……」
「いいよ、……由利香はお尻が大好きだもんね」
とはいえ、挿入までは出来ない。いつきにはまだ無理だろう、……そのチャンスがあるとしたら次以降。ぼくらはきっとまたこうして、一緒に遊ぶのだから。
指先をそっと由利香の、たくさんのうんちをして見せてくれた愛らしい肛門に当てる。それだけで由利香はぼくの舌先に悦びの液体の味を教えてくれる。ぼくの指先が這入る場所を見て、いつきが息を呑んだのが判る。無論、それは由利香も意識した上で。
「あは……、お兄ちゃんっ、お尻気持ちいい……」
甘ったるく瑞々しい声を上げて、ぼくに、いつきに、聴かせる。
「い……、たく、ないの……?」
恐る恐る訊く親友に、こくこくと由利香は頷く。
「由利香ね……、お尻、お兄ちゃんにしてもらうのすごく、好き。おまんこよりもお尻の方が気持ちよくなれる……。でも、いつきちゃんは初めてだから、きっとそんなに、気持ちよくならないかも……、だけど、お兄ちゃんとしてると、きっといつきちゃんも好きになる……」
由利香の、ほのピンク色に染まったお尻にキスをして、
「男の子たちもここをされるのが好きなんだ」
ぼくも解説を加える。「うんちしたばっかりだから、柔らかくなってるし、指もスムーズに入る。……ここでぼくのと繋がることだって出来る」
「つ、……え、繋がるって、こ、ここにお兄さんのちんこっ……」
「すっごい、気持ちいいんだよ? ……由利香ね、いっつもお兄ちゃんがお尻におちんちん入れて、……そのまま由利香のお尻の中で射精、してくれると、頭まっしろになっちゃうぐらい、うれしい」
ひゃー……、という声がいつきの唇から漏れる。
「お兄ちゃん、指抜いて、由利香のお尻、いつきちゃんに見せて」
指は緩やかに抜けた。言われた通りに割り開いた肛門は、清純と言ってしまっていい。洗ったから、汚れも付いていない。その印象は誰が見ても――由利香の恋人であるぼくじゃなくても――同じものを抱くに違いない。
「いつきちゃん、お尻、まだ洗ってないよね?」
由利香が身を起こしてにぃーと微笑む。
「うぇ、え、っ、い、いいっ、いいっす、いいです、あたしは、自分でっ」
「お兄ちゃんにうんちするとこ見せたのに、綺麗にしてもらうの恥ずかしいの?」
「だっ……」
いつきはさっきから頬っぺたを何度紅くしただろう?
「いつき」
抱き寄せて、その林檎の色の頬に口づける。
「でもでもっ、あたしは……」
おでこに、それから唇に、キスをして。
いつきは、観念したようだ。ぺたん、と湯の中にお尻を浸す。足を開いて、女の子のところもおっぱいも全部ぼくに晒して見せてくれたいつきの、まだまるで膨らんでいないおっぱいを啄む。
「ん……っ」
それが、「気持ちいい」ことだともう理解している身体が、微かに震える。右手の親指をそのつるつるの、まだ男を受け容れたことのないスリットに這わせながら、中指を排便直後の肛門に当てる。
「うひ……」
太腿がびりっと震えた。それは仕方がない。しかし右手の拳を口に当てて、いつきは恥ずかしさを堪えている。
いつきの肛門が指先に柔らかく感じられた。
「ぴゃっ……!」
一度、お尻が浮きかける。「あっ……あ……っ、おにいさっ……、ダメっ、ダメですっ、ダメっ……」
抗いは、ぼくが唇に唇を重ねると止まった。自由なままではきっと暴れてしまうと思ったのだろう、両手でしっかりとぼくの首にしがみ付く。由利香と比べてずいぶん狭苦しく思えるお尻の中に中指の半ばほどまでを埋め込んだとき、親指が滑らかさを覚える。ほんの少しだけ潜り込ませたところでやめておくけれど。
「この先が、『セックス』だよ」
ぼくは告げる。いつきは声を喪って、ぼくを見詰めていた。
「次までに、由利香、いつきちゃんにもっと色んなこと教えてあげる」
由利香がぼくの背中にぴったりくっついて、微笑む。「気持ちよくなるやり方、おちんちんをもっと気持ちよくしてあげるやり方、お兄ちゃんの『恋人』として、ちゃんとお兄ちゃんのこと幸せにしてあげられるように、たくさん」
「こい、びと……」
もう少しの間呆然としてから、いつきはもう一度ぼくの身体にしがみ付いた。震えている。けれどそれは恐怖や嫌悪ではなく、悦びに違いなかった。ぼくの口の中に、初めて自分から舌を差し入れてくれたことで、それがぼくに伝わる。
「……お兄さんは、あたし、なんかで、いいん、ですか? こんな、ゆりっちみたいに、可愛くない、男みたいな、あたし……」
「いつきはちゃんと女の子だよ」
片腕で抱き締め返して、ぼくはきちんと言う。「男の子みたいだって最初は思った。でもいまのぼくにはもう、いつきは可愛い女の子にしか見えない。……まあ、男の子のことも『可愛い』と思ってるぼくが言っても、説得力ないかも知れないけど……」
数秒、黙りこくって、いつきが、そして背中で由利香も、噴き出した。うん、自分で言っていて極めて危うい言葉であるなとは思った。
「なんか、たぶんもっといい言い方があると思うっすけど、でも、うれしいです」
どんな形であったとしても、笑ってもらえたらそれで良しという気もする。嘘のない気持ちであるのだから、間違いなく伝わってはいるはずだ。
「でも」
由利香がぼくの頬にキスをする、小さく、くすぐったい。「お兄ちゃんらしくて、由利香は好き」
原則、カッコ付けたくても付かない自分であるということを自覚している。だって男の子と女の子が好きなのだ、でもって、その排泄する姿に物凄く興奮してしまうのだ。ぼくはぼくでしかない。それを知って、判って、理解した上で、それでも一緒にいてくれる男の子と女の子がいるっていう事実を、ただ有難がっている。
右の腿にいつきが、左の腿に由利香が乗った。二人は片手ずつでぼくに抱き着き、空いた方の手で、どちらもぼくのペニスに触れる。
「……由利香、嬉しいなあって、思う」
いつきの頬にもキスをして、由利香は言った。「由利香ね、いままで男の人の相手するとき、いつだって一人だった。けど、お兄ちゃんと会って、昴星くんたちといっしょにするようになって、大好きな人を幸せにするの、こんなに嬉しいことなんだって判って……、今日から、いつきちゃんもいっしょに出来る、いつきちゃんも嬉しいし、お兄ちゃんも嬉しいし、由利香も嬉しいから、すっごく幸せだなあって」
いつきは、少し恥ずかしそうに俯く。けれどその視線の先にあるのはぼくのペニスだ。
「……あたしも……、その……、今日、勇気出してお兄さんに話し掛けて、よかった。ゆりっちとこんなのするなんて思ってなかったし、まだちょっと恥ずかしい、けど……、でも、やっぱすごい、幸せです!」
二人の軽い身体を同じ力で抱き締めて、ぼくはしばらく、その幸せの大きさに圧倒されて言葉とはぐれた。やっと言えたのは、
「二人とも、ほんとに可愛くって、大好きだよ」
という、極めて馬鹿みたいな言葉。男の子が好き、女の子が好き、そういうのはたぶん、大した問題じゃない。大事なのはきっと、ぼくを「好き」って思う心にぼくが呼応して、ごく自然に……、当たり前のようにそう思ってくれる相手のことを、大事にしたいと思う心の反応だろうと思うのだ。
違うかもしれない。だけど、この二人が同意してくれるなら、それが――唯一ではないのかもしれないけれど――正解だろう。
「お兄さん、……あの、……さいごにもう一回、ゆりっちといっしょに……、したいです」
お風呂に浸かっていたとき以来初めて、いつきがはっきりと欲を口にした。「その、あたし一人だとあんま上手くないかもしれないけど、ゆりっちといっしょだったらきっと……、それに、ほら、きっとゆりっちのやり方マネしたら、あたしも上手に出来ると思うし……」
いつきだって、もう十分「上手」なんだけど。でも、向上心の邪魔をする必要はない。腿から降りた二人の前で立ち上がると、それぞれ片手ずつを当てて、空いた方の手は繋いで、ぼくのペニスに顔を寄せる。
「お兄ちゃん、おつゆすごい出てる……」
由利香が尿道口に浮かんだ露に細い指先を当てて、糸を見せる。その指を当たり前のようにいつきの唇に滑らせて、その唇を舐める。いつきは紅い顔をして、「も、もう、あたしたちじゃなくて、お兄さんっ」尖らせた唇をそのまま、ぼくの亀頭のサイドに当てる。
「うん、いまはお兄ちゃん」
由利香は紅い舌でぼくの茎を緩やかに滑る。自然とその手はぼくの陰嚢に触れた。それに気づいたいつきも真似をする。ぼくのペニスが強張るたび、いつきの目はぼくを見上げた。応える代わりに頷くと、勇気づけられたように、やがて大胆に舌を動かし始めた。
「おにいひゃ、いきそう……?」
ぼくの呼吸の乱れを敏感に察知して問う由利香に、小さく頷いた。このままどこまでも幸せに上り詰められる……、そう思ったところで、由利香が顔を離す。
「いつきちゃん、ストップ。……お兄ちゃん、立ったり座ったりいそがしくてごめんね、もう一回、こんどは……、あおむけになって」
それは、構わないけど……、いつきはぽかんとした顔でいる。
「いつきちゃん、お兄ちゃんのせーし、飲みたい?」
「え……? ん、うん、のみたい……」
「じゃあ、お兄ちゃんの上乗って。由利香はね、お兄ちゃんのおちんちん、おまんこに欲しい」
「上に……、上にって……?」
「だからぁ、お尻、お兄ちゃんのお顔に乗っけて、そしたらおちんちんしゃぶれるでしょ? ……お兄ちゃんの一番好きなの何か、忘れちゃったの?」
考えを巡らせたいつきが正解に辿り着くまで、ほとんど時間は掛からなかったはずだ。それでも彼女が、
「うー……、これ……、すっごい恥ずかし……!」
ぼくの顔を跨ぐために必要な勇気の量に、ぼくは感動さえ覚える。ぼくは目の前にあるいつきのぷにぷにでつるつるのタテスジを割り開き間近に観察させてもらいながら、同時にいつきがぼくの股間に反り立つペニスを観察しているのを覚える。
そのペニスが、上から抑え込まれた。
「ふふ……、いつきちゃんのお顔の前でこんなことしてる……」
由利香がぼくの腰を跨ぎ、いつきと同じく滑らかな双子の膨らみでぼくのペニスの背面を包む。
「いつきちゃん……、由利香のオシッコ、顔にかかっちゃうと思うけど、いい……?」
意外なことに、いつきは「ん」とすぐ頷いた。頷いたときにはもう、舌を出してぼくの亀頭を舐めていた。
いや、彼女が舐めたのはぼくの亀頭だけではなかったようだ。
「あう……! いつきちゃ……っ」
いつきはきっと、由利香のその場所にも舌を這わせた。それが彼女の心にどういった感覚を催させたのかは知らない、ただぼくは、いつきの小さなお尻の穴が一度、きゅっと窄まるのを見ただけだ。
じわ、とぼくのペニスが温かくなった。
「はぁあ……、おにいちゃ……っ」
もちろんそれはいつきにも味として伝わっただろう。彼女はぼくの喜ぶその要素を、マイナスと捉えることはもうやめたらしい。はじめは遠慮がちに、やがて、はっきりとした勢いを持ってぼくの口へとオシッコを搾り出していく……。
「お兄ちゃん……っ、お兄ちゃん好きっ、好きっ……」
由利香が放尿しながら擦り付ける刺激、声、いつきの舌による刺激、与えられる味……、景色、三人でいま、こうしているという現実。何が、どれが、一番、というものじゃない。全部ひっくるめて、ぼくを幸せにしてくれる、欠片の集合体。
「っん!」
放尿の終わり掛かったいつきが、短く声を漏らす。その拍子にオシッコが一瞬止まって、けれど彼女はまた力を緩め、ぼくの胸にお腹を乗せて残りの尿を全て出し切って行く。顔に掛けてしまったか、目に入ってはいないだろうか、そう心配になったぼくが起き上がるのと、
「すごーい……、いつきちゃん、もう飲めちゃうんだ……」
由利香が感心したように言うのは、ほとんど同時だった。
「ん」
こくん、と喉を鳴らして呑み込んだ、かと思ったら、いつきは由利香を抱き寄せて、キスをする。きっと口の中には由利香のための半分を残しておいたに違いなかった。
「だって、おいしいし、……もったいないと思った。お兄さんが出してくれたんだから、それに……、ゆりっちもきっと、欲しいと思ったし」
たぶん、きっと、絶対、……ぼくは思う。
ぼくの好きになる子はみんな優しい。
いや、ぼくなんかを好きになってくれる時点で、優しい決まっているのだけど……。
そうつくづく思いながら、ぼくは二人を抱き締める。
「お兄ちゃん、いつきちゃん、もう一回由利香のとこのお風呂に、ちゃんと入ろ。みんなオシッコまみれになっちゃった」
嬉しそうに由利香が言い、ちょっと照れ臭そうにいつきが頷いた。
「でも……、すごく楽しかった。二人きりなのもいいけど、いつきちゃんいっしょだと、もっと楽しいかも……」
一先ず身体を、大事なところまで含めて綺麗に洗ってから気付くのは、三人の身体を拭くにはタオルが足りないということで。ぼくらは湿った身体にぎこちなく纏った服で、「山ゆりの湯」へと小走りに向かったのだった。
乗る予定だった特急よりも一本遅くなってしまったことは、それだけゆっくりとお風呂で温まれたということだ。そういうことにしておけばいい。さすがに人の多いところで抱き締めることは出来ないけれど、
「必ずまた来るからね」
小指をきちんと結ぶ。少し寂しそうないつきを励ますように、
「今回はお兄ちゃんに来てもらっちゃったから、次は由利香たちがお兄ちゃんのところに行く」
由利香が言った。
「でも、東京は遠いよ……」
いつきの懸念を振り払うように、由利香はにっこりと微笑んだ。
「へいきだよ。ね、お兄ちゃん?」
「うん、大丈夫だよ。……こういうことを言っちゃうのは良くないけど、二人でぼくのところへ泊まりに来るための上手い理由を考えておいて。もちろん、いいアイディアが浮かんだら、ぼくもすぐメールする」
親同士が仲が悪い、という障害があろうと、この二人は仲良しだ。そして歳の差も超えて、ぼくもこの二人と仲良しなのだ。距離なんてどうとでもなる。ぼくが髪を撫ぜると、安心したようにいつきも頷いた。改札口に入ってからも、何度となく振り返って手を振る。電車の座席に沈むなり、さすがに疲れが来たか、すとんと眠りに落ちてしまって、……気付いたら、列車はもう家の最寄り駅のホームに差し掛かろうとしていた。
充実しすぎた二泊三日がこうして終わる。あくびを噛み殺しながらも、充実感で一杯になりながら部屋に向かうぼくの携帯に、由利香からのメールが届いた。二時間半ほど前に見たのと同じ格好で、いつきと二人、笑顔で写っている。それを見て、つられて笑顔になりながら、……そうだ、と思いついた。
二人が一緒に東京へ来られるような、アイディア。
さすがにすぐ実践する訳には行かないけれど、きっと上手く行くはずだ。そう思うと疲れた足であるはずが、歩幅を広げて家が近付く。帰り着いて荷解きをしたぼくの携帯に、
「おにーさん、今週どこ空いてる?」
と昴星からのメールが届いた。