温泉、最高の温泉

 由利香の旅館に泊まるのは二回目のことだ。

 小さな、小さな旅館ではある。そして、とても古い。夕闇の迫った時間には、遠目からだと墨に浸ったように黒く潰れてしまっているかに見えるのだけど、近くに寄ると……、その古さと小ささが、かえってとても好ましく思えるような、そんな建物だ。前回教えてもらったところによれば大正時代からの建物だということで、自治体からは文化財の指定を受けている由緒正しい温泉旅館なのである。

 ……初めて来たときは、正直言って驚かされた。自分の家の娘にあんな無茶な仕事をさせているような両親の旅館だから、きっと色々と問題のあるところなんだろうなと思っていたのだけど、女将さん、……つまり、由利香のお母さんはぼくを三つ指付いて出迎えたし、仲居さんの働きもテキパキとしていて、とても爽やかだ。後で調べて見たところによると、もともと由利香の旅館では創業当時から「そういった」サービスを客にするところであったのだという。女中さんたちが美人ぞろい(ぼくがまっとうな性嗜好の持ち主だったらたまらないだろう)なのもそういった理由かもしれない。けど、ともあれ今はごく普通の、しかし素敵な旅館として、少なくとも表向きは営業しているのである。

 女将さんがお母さん、そして板前として料理に腕を振るうのがお父さんという旅館に生まれた由利香の身に、極端な量のサービス精神が備わっているのは判る気がする。実際、「山ゆりの湯」にて由利香の接待を受けた男性客はその後も由利香目当てにかなりの数通って来たようだ。しかし現在はもう、由利香はあの温泉での営業活動はしていないし、由利香のご両親もそういう目当ての客に由利香をあてがうということはしていないようで、インターネットで調べてみたらそれを多いに残念がる嘆息を幾つか見つけることが出来た。悪いことをしたとは思わない。

 ぼくは二回目となる投宿を、前回同様由利香とは全く親しくない振りで始めた。部屋の世話をしてくれる仲居さんに、……前回はまさかこんな旅館だとは思わなかったので用意していなかったチップを今回はちゃんと渡し、美味しい晩ご飯を頂いて、愛想のいい仲居さんが布団をのべてくれたら午後七時半。

 平日の温泉旅館、客はぼくを除いていないようで、早くも静まり返っている。

 由利香としても、おおっぴらにぼくと親しくするわけには行かないもので、駅で一旦別れてからまだ会っていない。前回もそうだったけど、この建物の中で会うのは難しいだろう。

 そう思っていたら、

「こんばんは!」

 と元気のいい声が、ぼくに投じられた。

 由利香のものではない。……もっと高くて遠慮がない。

「ああ……、こんばんは」

 由利香の持つ、清純な愛らしさ。その比率をもっと元気な方に傾けたならこんな風になるだろうな、という少女。

 これが、由利香の妹の由有理である。まだ小学三年生の女児である。複雑な事情のある温泉旅館の次女として生まれながら、由利香の必死の頑張りによってその身を男に穢されることなくこの歳まで育った。もう由利香もああいう「仕事」をすることはないから、この愛らしい少女は本来的な意味の「愛し合い」を迎えるそのときまで、清純な身のままでいることだろう。

 この宿に泊まるのが二回目なら、由有理と会うのも二回目だ。初めはちょっと恥ずかしがって、お姉ちゃんの後ろからそうっと覗いて、ぼくが「こんにちは」と微笑みかけるとぴゅっと逃げ出してしまっていたけれど、夜には部屋にやってきておもちゃの自慢をされてしまうくらいには仲良くなっていた。由利香のためにももちろん「また泊まりに来るよ」と言うぼくだったが、この子にも「また来てね! ぜったいだよ!」って何度も指切りげんまんをすることになった。

 もちろん、この子はぼくとゆりかがどういうことをしているか知らない。というか、自分の姉が年上の男とどういう行為をしてきたか知るはずもない。

  由利香からメールはまだ来ない。だから、おもちゃの自慢をされるのも悪くないかなと思って迎え入れたところ、

「お兄ちゃん、お風呂! お風呂いっしょに入ろうよ!」

「……はい?」

 唐突なことを、由有理は言い出した。

「お、お風呂……、お風呂って言うと……」

 びっくりしたぼくに、飛びついて「お風呂!」由有理はねだる。お風呂。えーと、お風呂という言葉の意味くらいはわかっている。でもそれは、これから由利香といっしょに入る予定で……。

「こーら、由有理ったら」

 ゆったりとした声がして顔を上げると、クスクス笑うおかみさん、つまり、由利香と由有理のお母さんがいた。

「申し訳ありません、この子ったら、素敵な殿方を見るとすぐこんなことを言い出すんです」

 それは、何かの遺伝か、この温泉旅館に脈々と伝わるサービス精神の賜物か。実際ロリコンとしてはこんな幼女に「お風呂入ろう」なんて言われたら……。由利香の努力を、ひょっとして由有理自身がふいにしちゃってるんじゃないか、そんなことをぼくは思ってしまった。

「由有理は、ちょっとあっち行ってなさい。今日はお父さんの肩たたきの日でしょう?」

「あ、そうだっけ」

 ひょい、と立ち上がると、由有理は「お兄ちゃん、また後でね! お風呂入るよ! やくそくだよ!」って駆けて行ってしまった。

 おかみさんがため息を一つ。「お客様」と膝を揃えてぼくの前にひざまずく。

「お客様には、心の底から感謝をいたしております」

 いきなり頭を下げて、

「か、感謝?」

 そんなことを言い出すのだから、こちらとしては度肝を抜かれる。何せ、ぼくはこの女性の娘さんと、まあ、ええ、ああいうことをしているわけで……。

「わたしは由利香に、あの『仕事』をずっと、させ続けていました。それだけで、どう罰せられても仕方のない、悪人です。そして由利香にずっと辛い思いをさせて……。本当は大人であるわたしがしなければならない仕事でしたのに……」

「え、え、あの……」

 顔を伏せたまま、泣きそうな声になって言う由利香のお母さんの言葉を整理してみたところ、……どうも、こういうことらしい。

 由利香がしていた「湯女」の仕事というのは、本来ならこの女性がしなければならないものであったようなのだ。

 しかし、彼女は心から夫を愛している、……いや、どうも心のみではなく、肉体的にも夫に依存し切っている、らしい。

 それゆえに、他の男に裸を見せることには強い抵抗があった。そして夫も、妻にそういう仕事をさせたくはないと思っていた。しかしある意味ではそれが「売り」でもある旅館だ。

 そんな中で、由利香が自ら進んであの温泉で、「湯女」の仕事を始めた。両親が、それで少しでも幸せになればいいという、健気な思いに基づいて……。

「え……、あの、じゃあ……」

 由利香のその仕事はもう終わっている。ぼくが終わらせたのだ。陽介たちのこともあって、半ば強制的に……。

「由利香から、聴きました。あの子は、わたしに、泣いて謝ったんです」

 ごめんなさい、お母さん、ごめんなさい。もう、おうちのためのお仕事はできない……。

「由利香のことを救ってくださったのが、お客様だったと聴かされて……。わたしは人の道を外れていました……。でも、やっと、お客様のお陰で、やっと正しい親子になれました」

 このごに及んでぼくは、「この人は由利香とぼくの関係に気付いているのか」ということに困惑しているばかりだ。だいたい、妙齢の女性にこんな風に頭を下げられることなんてこれまで一度もないわけで。

「お客様には、既に心に決めた方がおられると、由利香は申しておりました」

 ……流斗、昴星、それとも諭良のことか、ぼくには瞬時に判断しかねた。

「それでも、由利香はお客様のことをおしたい申し上げていると……。これは、哀れな女親のせめてものわがままでございます。お客様、どうか、由利香のことを、……お客様が飽きるまでで結構でございます、それでもどうか、由利香の大好きな、『お兄様』でいてあげてくださいまし……」

 ぼくは馬鹿みたいに口を開けて呆然としていた。その間も、このお母さんは娘を、こんな、どこの馬の骨かもわからないような、ショタコンでもうロリコンに両足突っ込んじゃってるような男に、娘をお願いします、と何度も繰り返して言うのだ……。

「あ、あの、顔を、上げてください、その……」

 潤んだ目は、ああ、やっぱり親子なんだなあ。由利香にも由有理にも、大変良く似ている。

「その……、ええと、具体的に、あの……、具体的にと申しますか、ええ、……由利香、ちゃん、と……、その、ぼくと……」

「由利香は、他のどんな方よりもお客様が一番優しかったと申しておりました」

 決然、とお母さんは言う。「だからこそ、お客様のことをおしたい申していると」

「そ、そのっ、優しかったって、あの、具体的にどういうことかとか、そういう……」

 お母さんは、微笑んだ。優しく強く見える。それが、特殊な職業にあるがゆえの強さなのかそれとも単純に娘を思うがゆえに生まれる強さなのか、そのどちらでもないぼくには、容易に判断が下せるはずもない。

「お客様のご想像の通りです。……母と娘ですもの、言葉を使わなくても判ることはたくさんございます」

 それでいて、あなたは「娘をお願いします」なんて言うの……。

 座っているからいいようなものの、立っていたなら腰を抜かしていたっていいほどだ。全く、常識から外れた考え方だ。……とはいえそれについて、全く非常識な人間であるぼくがどうこう言えやしない。

 ぼくがまたしばらく言葉からはぐれている間に、

「おかあさん、まだ?」

 由有理が催促の声を上げた。その後ろに、……いっしょに、由利香が立っている。

 ぼくがしなければならないことは、……進んで「しよう」と思うことは、

「……こちらこそ、なにとぞ、あの、よろしくお願い申しあげます」

 ぎこちなく背骨を軋ませながら、平身低頭……。由利香の、なんだかいろいろ詰まった溜息が耳に届いた。

 

 

 

 

 お母さんに「今日は他にお客様がおりませんので、どうぞ当館の温泉をご利用になってください」と言われたので、山ゆりの湯に足を延ばす必要はなくなった。とはいえ、「お母さん」が同じ屋根の下にいるところでそこのおうちのお嬢さんを抱こうなどとは思い難いわけで、由有理もいることだし、一先ずは仲良しの兄妹としてお風呂に入るのが妥当であろう。

 廊下を進む最中、

「ごめんなさい。お母さんがなんだか大げさに考えちゃって……」

 由利香が申し訳なさそうに言うのに、ぼくは慌てて首を振った。

「いや、あの、びっくりしたけど……、……何て言うか、すごい……、おかあさんだね……」

 人の母親のことを悪く言ってはいけないと重々承知してはいる。まあでも「すごい」ということは間違いなく言っていいはずだ。

「おかあさん、すごいの?」

 由有理がぼくと由利香の間に首を突っ込んで聴く。由利香は「なんでもないの」と由有理の髪を撫ぜる。二人とも、あの綺麗なお母さんから受け継いだ黒髪である。

「えーと」

 温泉旅館であるから、「山ゆりの湯」同様に、男湯女湯に分かれているわけだ。由利香が「どちらでもいいですよ? ほかにお客さんいないですし……」と言う途中に、

「こっち!」

 男湯ののれんをくぐって由有理が振り向いて笑う。

「いっつも女湯だもん、だからこっちがいい!」

 朝になったら男女が入れ替わるのだが、由利香や由有理は朝はお風呂に入らない。だから男湯に入った経験が、由有理は極端に少ないのだろう。

 いや、それ以上に、

「……あの子、おちんちん見たがるから……」

 由利香が溜め息を吐いた。由有理が「えっちな子」だということは、もう聴かされているから知っている。もちろんそれは、由利香をそう評するのとは全く違った意味のことであるのだが。

「……お兄さまがもし嫌じゃなかったら、由有理に、見せてあげてください。ちょっと見たらそれで満足すると思います」

「ああ……、ああ、うん、判ってる」

 決して反応してはいけないぞ、と自分に言い聞かせる。でも、「由利香の裸を見ちゃったら、どうなるかな……」と懸念を口にする。

「それは……、……じゃあ、水着持って来ましょうか……」

「いや、まあ……、頑張ってがまんするよ、うん、きっと大丈夫……」

「お兄ちゃん、はやくー!」

 由利香が姉らしい溜息を吐いて、「行きましょうか」とぼくを促す。でものれんをくぐる前に背伸びをして、キスをした。……そういうことされると、また「我慢」が必要になっちゃうじゃないか。

 

 

 

 

 由有理は、……判っていたことではあるけれど、

「ちんちん見せて! ちんちん!」

 まだぼくがトランクスを脱ぐ前から早速リクエストしてきた。

「由有理。女の子がそんなはしたないこと言っちゃダメ」

 って、お姉ちゃんが叱っても、

「だって、由有理ちんちん見たいし! 由有理にちんちん付いてたら見たくないけど、付いてないものは見たいよ!」

 と、まるで言うことを聴かない。これでこのお姉ちゃんが普段ぼくや陽介や昴星たちのおちんちんと親しんでいるなどと知ったら大変だ。

「由有理ちゃんは、……えーと、普段からいろんな人にそんなこと言ってるのかな」

 ぼくは苦笑して、ぼくと同じパンツ一丁になった少女に訊いた。まだおっぱいはぺったんこで、身体つきは幼い。

「いっつもです。陽介や瑞希にも、何度もねだって……」

「だってちんちん面白いもん」

 由有理が抱くのは完全なる興味である。由利香が性欲をベースにぼくの身体を見たく思うのとは全く違う。

「……うーん。まあ……、ぼくのだったらいいけど、ふつうは男の人もここ見られるのは恥ずかしいから、あんまり言わないでおいてあげた方がいいと思うな。……いい?」

「うん!」

 元気のいい返事ではあるが、……はたして彼女がぼくの言ったとおりに自重してくれるかどうかは判らない。しかし、そうでないと危険なロリコン男に悪事を働かれる危険性だってあるのだ。

「約束だよ? 由有理ちゃんといっしょにお風呂入ってあげるから、ぼくと約束してね?」

「ん!」

 小さな小指とぼくの小指を結んでから、……トランクスを下した。

「わあ……、すっごい、ちんちんだ……」

 由有理は目を丸くして、ぼくの「ちんちん」に見入る。……少年少女の天使たちと親しくなってから、ずいぶん「大きい」と褒められる機会が増えるようになったけれど、……まあ、平均サイズよりちょっと大きいか、それかそのまま平均かというぐらいだよな、というのがぼくの自覚だ。

 そして、それは別に臨戦態勢にはなっていない。ぼくに気を使って、由利香は胸にタオルを当ててくれているから。その内側を見てしまったら、この幼気な少女の前であろうが関係なく勃起してしまっていたかもしれない。

「さわってもいーい?」

「ダメ」

「ダメっ」

 ぼくと由利香が同時に制した。「男の人のその場所は、由有理みたいな子が触っちゃ絶対にダメなの! ほら、もう見たんだからいいでしょ、お風呂入るよ!」

「えー、つまんなーい」

 確かに男の子のおちんちんは面白いものだ、ということは判っている。ぼくだってこれだけ慣れているはずなのに、未だに昴星のおちんちんがちょっと目に入っただけで興奮を禁じ得ない訳で、普段それを見慣れていない由有理のような女の子にとってはなおさらだろう。

 だけど、まだ早いのは事実だ。

「もー、おねえちゃんのケチ。ね、後でお兄ちゃん、由有理にだけ見せて」

「聴こえてるわよ!」

 仲良しで、外見とは裏腹に性格はずいぶん違う姉妹はにぎやかにやり取りをしながら、全裸のぼくを他所に、

「え、あの……、二人とも水着……?」

 を纏っていく。

「由有理が一緒に入ると思ってなかったから……。お母さんは大丈夫って言うんですけど、でも、一応……。それに、そっちの方がお兄さまも、……ね?」

「ああ……、うん、そうだね、そっちの方が大丈夫だ」

 由利香が説明する。由有理は何が「大丈夫」で「ダメ」なのか判っていない様子だが、タオルを巻かずに水着を纏った。由利香はもう纏っている。心配をかけてしまっているな、と思う。さすがに水着姿の幼女と少女を見ても反応したりはしない。ぼくだけ全裸というのはやや落ち着かない気もするが、まあ、あまり気にしないようにしよう……。

 と思ったのだけど、

「……由有理ちゃん、普段からそういう水着なの?」

「ん?」

 由有理は、純白の水着である。フォルムは、スクール水着と変わらない。ただ、……何だろう、気のせいではないだろう、明らかに生地が薄い。そのせいで、由利香よりもさらにささやかな、というかほぼ無きに等しい乳房のふくらみの頂点、乳首の存在感が……。

「学校のときはちがうよ。学校のときは紺色の着るもん」

「ああ、まあ……、そうだろうね」

 三年生ぐらいでも、異性のおっぱいを見たらただじゃいられない男の子っているだろうしね。

「……大丈夫ですか?」

 心配そうに由利香が訊く。……大丈夫、とはっきり答えられる自信が少し揺らぐ。

「本当は、由有理も紺色の、学校の水着を持ってるんです。でも、こっちの方が好きみたいで……」

「……そう……、そうなの」

 でも、どうしてそんな水着を持っているんだろう……? というぼくの素朴な疑問には、

「由利香が、……去年まで着てたの、なんです。その」

 お仕事、のときに。

 ははあ……、なるほど。まあ、訊くまでもなく察せることである。

「お兄ちゃん、早く入ろー、ここさむい!」

 由有理は、……スレンダーという言葉はまだ当てはまらないか、まだ主張に乏しい身体つきであるのだけれど……、やっぱり由利香の妹であるだけに、愛らしい顔立ちをしているし、やがてはこの姉のように男の目を引き付けて捉えたらもう離さないような蠱惑的な少女姿態へと成長するのであろうということを想像させる。

 とにかく、あまりじろじろ見ないことが肝心だ。ショタコンであり、ロリコンではない、……はずではあったのだけど、由利香という魅力的な少女ボディが近くにあって、類似点の多い由有理も一緒にいて、ここで由有理に反応するようなことがあってはいけない。いろんな意味でいけないし、由利香を失望させることにさえつながりかねない。

 しかし、

「お兄ちゃん、ちゅうしよ、ちゅー」

 由有理はぼくを困らせる女の子である。

「ちゅ、ちゅーって、いうのはね、由有理ちゃん、好きな男の人が出来たらそのとき、その人とするための、特別な……」

「由有理お兄ちゃんのこと好きだよ?」

「あ、ありがとうだけど、でもあの、ぼくは大人で由有理ちゃんはまだ」

 小学五年生のこの子の姉とは数えきれないほどキスをしているぼくの言葉がどれほどぎこちないかはさておいて、由利香が「あんまり困らせるんじゃないの!」って、姉として、……というか、ぼくの「恋人」として叱る。由有理は既に、ぼくの膝の上だ。お風呂に入るなりそこを定位置とでも言うように乗ってきたのだ。まさか跳ね除ける訳にもいかないでしょう……。

「好きどうしだったら年とか関係ないんだよ。ねー、お姉ちゃんそうだよねー」

「そ、それは……」

 由利香、そういうこと言っちゃったんだ……。でも、いや、だったら、なおさらそんなことこの子としちゃダメだ。

 とにかくどんな理由でもいいから捏ねくりだしてキスを思いとどまらせよう、そう決意したぼくの目の前を、

「オシッコしてくる」

 白い薄布水着に覆われた由有理の股間が塞いだ。気遣いの塊である姉とは真逆に、マイペースの妹である。

 問題は、その薄布、……由有理のスリットまでスケスケの丸見えという点で。

「……お兄さま、ええと……」

 由利香が、心底から案じてぼくの顔を覗き込む。

「……うん、いや……、早く出ようね……」

「もう、……その、……ええと」

「いや、まだ。まだ平気だけど、その……」

 由利香が、ぼくの股間を確かめる。まだ勃起していない。しかしそこに集まりそうな熱を、ぼくが精神的な努力によって振り払おうとしていることは、女の子である由利香にも理解してもらえたようだ。

 由利香は、心底困ったように言う。

「……由有理と、キスして、一度だけ……、一度キスしていただければ、あの子もきっと満足すると思います」

 でも、……そんなことしたら。

「由利香に考えがあります……、って、由有理、オシッコしたらちゃんと流しなさい!」

「はーい」

 由有理が戻ってくる。お姉ちゃんに言われた通り、洗い場の隅っこに作った水たまりをシャワーで流してから。

「お兄さま、一度だけならキスしてくれるって」

 えっ、と声を上げかけたが、

「ほんと?」

「だから、ちゃんと『ありがとう』って言うの」

「ありがと!」

 姉はどんどん話を進め、妹は無邪気にそれを喜ぶ。……や、待て待て。キス一回ぐらいじゃさすがにいくらなんでもぼくだってそう無節操に身体を反応させたりはしない、……しないはず、しないでいられるはず。とはいえノーリスクとは言いがたいことも認めざるを得ないところではあるのだけれど。

「お兄さま、……横になってください」

「よ」

 由利香は浴槽の縁に、自分のタオルを広げた。岩風呂ではないにせよ、ちょっと凹凸のある岩板タイルである。ぼくの背中が痛くないようにっていう気遣いなのだろうけど、……横に?

「由利香からの、お願いです」

 横になったぼくの下半身を隠すために、こんどは由有理のタオルをそっと乗せる。「これからお兄さまが由有理とするキスは、この子のファーストキスです。そして、お兄さまとするのはこれ一回きり。だから、お兄さまは由有理のことをぎゅうって抱きしめてあげてください。そして、……出来るだけ、ゆっくり時間をかけて」

「由有理、お兄ちゃんに乗っかっていいの?」

「……構いません、よね?」

 由利香の考えていることが、少し理解できた。由有理を身体の上に乗せて抱きしめてあげれば、由有理からはぼくの下半身は絶対に見えない。

「……わかった。ええと、由有理ちゃん、おいで」

 覚悟を決めて、由有理を誘う。由有理は嬉しそうに笑って、スケスケ水着のままぼくの身体に乗っかってきた。当然のことながら由利香よりも軽いしよりコンパクトな身体だ。これまでぼくが抱っこしたことのある身体の中で、一番小さい、軽い。それでもどこか女の子らしいたおやかさのようなものを、ぼくの肌は感じる。

「よかったね、由有理」

「うん、……へへ、由有理お兄ちゃん大好きー」

 ぼくが抱きしめるまでもなく、由有理がぎゅうっとぼくに抱き着いてきた。こんな風に男に抱かれることなんて初めてだろう……、というのはぼくの早合点で、

「由有理は、いつもこうなんです。気に入ったお客様がいるとすぐ甘えて、ひっついて離れなくなって……」

 それはたぶん、この姉妹の母親がさせている「サービス」の一環ではなく、シンプルに由有理と言う無垢な少女の欲に応じてなされることだろう。そういった男たちに「サービス」をしなければならなかった由利香の苦労が、いやでもぼくはしのばれた。

 だってぼくの股間は、

「お兄ちゃん、お兄ちゃんキスしよ」

 腕で身を支えて、ぼくを見下ろす由有理の、……白い水着から覗けるツンとした乳首や、もうすっかり浮き出てしまっているスリットに反応を始めている。妹の足の間からわずかに見通せる三角形の空間、タオルをどかした由利香が、ぼくのペニスに指を絡めた。

「ああ……、うん、そうだね」

「おかあさんにはないしょだよ?」

「うん、内緒だね……」

 ぼくの男としての理性は由利香の指によって少しずつ溶かされていく。由有理が再びぴったりと身を重ねて、……ぼくに唇を重ねて来た。一秒、二秒、目を閉じて重ねるだけのキスをした由有理が、そっとぼくに囁く、内緒話のボリュームで、

「おねえちゃん、みえないよね」

 って。

「……ん?」

「いっかいだけじゃなくって、もっと」

 再び、由有理の唇が重なる。由利香や流斗よりもさらに小さく幼い唇は不思議と甘い香りがした。それをことさら強くぼくが感じてしまうのは、由有理の愛撫が手だけではなく唇も加えたものに進展したからだろう。その音は、ぼくと由有理のキスの音によって掻き消される……。

「由有理ー、どうせもう二回も三回もしてるんでしょ」

 口を外して扱きながら、由利香が問う。ぴく、と反応した由有理は、「してないよお」なんてバレバレの嘘をつくが、ぼくに共犯者の目をして微笑む。

「悪い子なんだから……。オシッコしたあと洗ってないでしょ」

「ぴゃっ」

 ぼくの身の上で、由有理の身体が宙に浮くように跳ねた。

「ち、ちがうよお、ちゃんと洗ったもん……」

「嘘ばっかり。……お姉ちゃんのいうこと信用できないなら、お兄さまにも見てもらいなさい」

「えー……」

 由有理は、ぼくの顔をじーっと見詰める。ぼくのペニスには再びタオルが掛けられた。もうがちがちに勃起しているそこを隠すためだ。

「ん、んーっと……」

「ほら、早く」

「うー……、わかったー……」

 由有理は、恥ずかしそうに身を起こす直前にもう一度ちゅっとキスをして、「……由有理の、ここ、オシッコついてなんかないよねえ……?」

 さっき向こうでオシッコをしたときと同じポーズを、横たわるぼくの顔の前でして見せる。

「……そう……、ええ……」

 タオルの中に由利香が両手を潜り込ませる。右手では竿を扱き、左手では袋を優しく揉む。超一流の愛撫であるから、息が上がりそうになるのを堪えるのにずいぶん苦労を強いられる。

 しかも目の前には、由利香よりも幼く、それゆえにむっちりとした印象のある由有理の足の間がほぼ丸見えになっているのだ。どこからスリットが始まって、ひときわ深まる場所、そして途絶えて、お尻の穴のあたりまでが、ほぼすべて。

「ちょ、ちょっとだけ……、黄色いんじゃないかなって、気も、するけど」

「ち、ちがうのー、これは今日のじゃないんだもん」

 今日のじゃないってことは、えーと……。

「ねーおねえちゃん、このかっこう恥ずかしいよー」

 泣きそうな声で言った妹に、「じゃあもういいわよ。……お兄さま、はしたない妹でごめんなさい。最後にもう一度だけ由有理にキスをしていただけますか?」そしてぼくに言い、由有理はぼくが応えるよりも先に「あーもうっ」再びぼくの身体に身体を重ねてくる。

「オシッコのとこ、きれいだったよね? ついてなかったよね?」

 先程までよりずいぶんと恥ずかしそうになって、由有理はぼくに訊いた。

「うん、ええ、まあ」

「オシッコのとこ見られるの恥ずかしいよ……」

「勝手な子ね。自分は男の人のオシッコのところ見たがるくせに」

「だ、だって、オシッコのとこ見せるのは、『こいびと』だけなんだって、みずくん言ってた」

 みずくん、……瑞希のことだろう。真面目なあの子のことだ、おちんちん見たい見たいってワガママを言う由有理を宥めるためにそういう言い回しをしたに違いない。でも結局、瑞希も陽介も恋人ではない由有理に見られちゃった訳だけど。

「でも、……まあ、ぼくも見せた訳だし、おあいこってことにしようよ。ね?」

 ぼくの顔を、じーっと見詰めて、……頬を染めた由有理はこくんと頷く。そういう仕草は、お姉ちゃんそっくりだと思う。

 そのまま、由有理はぼくに唇を重ねて来た。今度は、さっきよりも力一杯抱き着いてくるということはしない。ぼくはその代わり、素晴らしい景色を見せてくれたことへのお礼として抱きしめる。

 ぼくの下半身で、由利香が再びタオルを外した。深々と咥えこまれたのが、視界に届かない分だけよりリアルに感じられた。

「お兄ちゃん」

 由有理がキスを求める。唇を重ねる寸前に、「『こいびと』になろ」と。

 え、と訊き返す暇も与えられないまま、ぼくの言葉は由有理の唇に塞がれた。あとはもう、声を出さないように息を乱さないように堪えるために努力することで頭がいっぱい。由有理がハイペースにぼくのシャフトを咥えたままスライドさせ、かつ吸い上げてくれるから。

 この時間を早く終わらせることこそぼくに与えられた使命だ。……まあ、そんな気負わなくても。

「……ん? お兄ちゃん?」

 ぼくの身体が一度二度と強張ったことには、お腹と胸を重ねた由有理も当然気付く。ぼくは余韻をゆっくり楽しむこともせず、

「いや……、ごめん、ちょっと、クシャミしそうになっちゃっただけだよ。びっくりさせてごめんね」

「んー、お兄ちゃんさむくなっちゃった?」

 芯まで、というか主に芯を温めてもらったような感じだけれど、それでごまかせるなら「大丈夫」と笑って由有理の髪を撫ぜる。由有理が丹念にタオルでぼくの性器を拭いて、改めてそこに被せる。

「もう、いつまで乗っかってるの。もういいでしょ?」

「はあい……」

 由有理がどいて、ぼくが起き上がって、……タオルの膨らみは、意識さえしなければそう目立たないだろう。「あいたた」なんて、結構ごつごつした硬いところで横になったせいで背中の痛いふりなどして、

「えーと、じゃあ、もう一度温まったらそろそろ出ようか? 由有理ちゃんもお母さんが心配しちゃうよ」

「おかあさん全然心配しないよ? いっつもお父さんといっしょで、お風呂もおとうさんと入るの」

「だから、由有理は男の人のおちんちんに興味がすごくあるんです。……お父さんのを見てれば、だいたいどういうのが付いてるか判るから、こんなに見たがったりしないはずなんですけど」

 お父さんはお母さんのもの、……心も身体もおちんちんも、ってことか。それゆえに由有理にとって男の子のペニスというのは必要以上に神秘的なものになってしまっているのだろう。

「男の子のここはさ、由有理ちゃんのオシッコ出るところと同じ、見られて恥ずかしいものなんだから、本当に仲良しの男の子にだけしか『見たい』って言っちゃダメだよ?」

 ぼくはもう一度同じことを言った。由有理は、案外素直に「はあい」と頷いて、「さいごにおまけ!」とぼくのほっぺたにキスをした。

 

 

 

 

 二人きりの時間を作ってくれた由有理と、姉妹のお母さんには感謝するしかない。由利香は結局ぼくの部屋に泊まることになった。泊まるとなったらすることは一つで、

「大変だったね」

「はい……、もう、大変でした……」

 由利香を膝の上に載せて、キスをする。ぼくたちの時間には仕上げのお風呂が不可避であって、さっき温泉に浸かった余韻でお互いの身体はぽかぽかと温かいけれど、またこれから、このあと、一緒にお風呂に入ることになるのだろう。それが内風呂か、それとも足を伸ばして「やまゆりの湯」になるかは、まだ判らないけれど。

「由有理ちゃんにばれちゃうんじゃないかって結構ひやひやしたけど」

 こっそりと、でも大いに頑張ってくれた由利香を抱きしめて、乾いてサラサラの髪を撫ぜる。なめらかな触り心地で、ほんのり甘いにおいがする。けれど同じシャンプーを使っているわけで、夕べに続いて今夜もぼくらは同じ匂いになっている。

「あの子のおちんちん好きなの、どうしたら治るでしょうか……。いっつもあんな調子で、お客様にねだるんです」

「あと、瑞希や陽介たちにもね?」

「はい……。まだ由利香が『お仕事』してたころには、由有理で興奮するお客様も結構いて……」

 そういう危険な牙から毒を抜いて回らなければならなかった由利香の苦労、並大抵のものじゃなかっただろう。せっかく「仕事」をもうしなくてもいい状況を作り出したのに、今後も由有理があんなでは……。

「うーん……。お姉ちゃんとしては困るよね」

「はい……。みなさんがみなさん、お兄さまみたいに優しい方ばっかりじゃないので……」

 まだ由有理は男の恐ろしさを知らない。ただ興味深い「おちんちん」の生えた、魅力的な生き物でしかないわけだ。痛い思いをすれば判るのだろうけれど、お姉ちゃんとしてもぼくとしても、あんな純真無垢な子に「痛い思い」なんて絶対にさせたくないわけで。

 少し考えに沈みそうになったところ、

「でも、今はいいです。あの子、もう寝ました。由利香はお兄さまのことだけ考えます、だから……」

「ああ、もちろん。ぼくも今は由利香のことだけ考えよう。……こんな可愛い子が膝の上にいてくれるのに別な子のこと考えてたらもったいないしバチが当たっちゃうよね」

 由利香が、微笑んだ。やっぱりこの子の微笑みには心が蕩ける。第一印象は冷たい感じだったけれど、人間ここまでお互いをさらけ出し合うとどうしたって笑顔の割合が高まって、……大好きな子ならばなおさらだ。

 ゆっくりとまた、キスをしたところで、

「さっきのさ、由有理ちゃんの水着」

「はい?」

「あれ……、由利香の着てるとこ見せてもらってもいい? ……さすがにちょっと窮屈すぎるかな」

 あの水着、由有理が脱いだ後、由利香が脱衣所まで持って来ていたハンガーにかけていたのを見た。そのまま由利香は直接ぼくの部屋に来ているわけで、当然、その水着はこの部屋にある。

「……見たい、んですか?」

「うん、正直なところ、見てみたい」

 由有理が着ているのを見ても、いかにもぎりぎりで危なっかしくてドキドキさせられたのだ。それを由利香が着るとなれば……。

「えっと……、はい、わかりました。お兄さまがそんな風にリクエストしてくださるのあまりないから、ちょっとびっくりしました」

「ああ……、そうかな? でもいっつもぼくがリクエストする前にほとんど由利香が叶えてくれちゃうからねえ……」

 浴衣姿の由利香はぼくの頬を両手で包んで、「えっちなお兄さま、大好きですよ?」にっこりと微笑んで、ハンガーから水着を外す。

「きゅうくつだから、着るのちょっと時間かかります。待っててください」

 とトイレに入った由利香が出てくるまでの間、カメラを準備する。出張にカメラなんて要らない? 出張だけなら確かに要らない。一瞬一瞬が本当に可愛い恋人と会う時間には必須とでも呼ぶべきものだ。

「お待たせしました……、あ」

 カメラを見つけて、由利香が反射的に胸と股間を掌で隠す。

「やっぱり、ちょっときつい?」

 構わず、ぼくは訊いた。由利香は恥ずかしそうにこくりと頷く。

「だって……、三年生のときのですよ?」

「三年生の頃の由利香ってどんなだったんだろうね? きっと可愛かったんだろうなあ」

 由利香はもじもじと、布団の上のぼくの前に正座する。まだ、胸は抑えたままだ。

「どうでしょう……。お仕事を、始めたばっかりのころです。その頃は、まだ敬語を使ってなかったです。だから、いまの由有理とあんまり変わりません」

「へえ……、じゃあやっぱり可愛かったんだ」

 わかりません、と由利香は首を振る。それについては、ぼくは全面的に支持できると信じる。

「……もっと早く、お兄さまと会えてたら、そういう由利香も見てもらえてたんでしょうか……」

 それは、まあそういうことになる。でも、

「今の由利香とはまた違った由利香になってたかもしれない。でもぼくは今の由利香が一番可愛いと思うし、大好きだよ」

 素直な気持ちを口にしたら、由利香は困ったようにうつむいて、

「……今夜も、『お兄ちゃん』になってください」

 恥ずかしそうに、緊張した声で言う。

「うん、……久しぶりに三年生のときの水着着たら三年生の由利香になっちゃったのかな」

「それは……」

「いいよ。いろんな由利香を見せてもらえるの、幸せなことだと思う。由利香は全部可愛いからさ」

 ぼくから、由利香のおでこにキスをした。お風呂上がりしばらくは長い髪をタオルでまとめていたけれど、今はポニーテールに結っている。とても素直な黒髪が微かに揺れた。

「由利香、おっぱい見せてもらってもいい? 手、退かすの恥ずかしい?」

「……ん、えっと……、お兄ちゃん、見たいの……?」

 普段着の由利香になった。身に纏っているのは全く普段着ではないけれど。

「見たいよ」

 三年生の頃の由利香は、もちろんまだ仕事に慣れていなくって、きっと初々しくって、……それだけに、より強い恥ずかしさに苛まれていたことだろう。いま、ぼくに裸を見られることが平気なぐらいに「大人」になったとしたって、そうなるまでに重ねて来た経験が由利香の中にある。

 ぼくはその「経験」を含めて由利香を愛さなければいけない。けれど仮に、そういう経験がなかったとしてもやっぱり由利香のことを大事にしなきゃいけない。

 由利香の心臓が鳴る音が聴こえる。こんなに緊張してる由利香、久しぶりだ。昴星たち男の子相手ならそれこそ、自分でリードしちゃうぐらいなのに。

「ん……、由利香の……、おっぱい……」

 ぺったんこだった由有理とは違って、そこは控えめながらも膨らんでいる。ぼくの舌に甘く感じられる乳首も、由有理のそれよりも発育がいい。

 白い、もうちょっと濡れただけで肌の色が顕れてしまいそうな生地に、はっきりと二つの突起がある。それは由有理よりも大きい、でもやっぱりまだまだ発達の途上にある、由有理の乳首だ。

「ああ……、いいね、すごくいい」

 由利香は、油断すれば自分でそこを隠してしまうのだろう。だから両手を後ろに回して、

「お兄ちゃん……、えっち……」

 ちょっと唇を尖らせて言う。

「えっちだよ。由利香みたいな可愛い女の子いたら、男は誰だってえっちになるよ。……もっともっとえっちになる……、由利香、立って見せて。隠しちゃダメだよ?」

 こく、と由利香は頷いて、……ぎこちなく、立ち上がった。

 もう隠されることなく晒される足の間は、くっきりと食い込んでいるのが判る。模式的には指三本で表現出来る、シャープな水着のビキニラインと、真ん中の一本筋。

「きつい?」

「……ん、ちょっと……」

「そう。由利香は昔着てたときよりおっぱいが大きくなってるから、そのぶんそこに負担がかかっちゃうんだろうね」

 この生地は、さっき由有理で見た通り、濡れると透ける。

「ねえ由利香。由利香のおっぱいの先っぽが見たいな」

「え……?」

「ぼくに見せてくれないかな。きっと、すごく可愛いと思うんだけど」

 ぼくの思うところがうまく伝わらなかったらしい。一度カメラを置いて、由利香のお尻(けっこう露出している)に手を回して、ぷっくりとした肉の膨らみさえ露わな足の付け根をじっくり撮影してから、おへそのところを舐めた。

 想像していたよりもよりはっきり、由利香のおへそのくぼみが表出する。

「……おっぱいの、先っぽ……」

 由利香は理解に至ったらしくこっくり頷いて、……左右の指を順番に濡らす。それから、緊張気味な指先を、それぞれの突起の先に当てた。

「……もっとかな。いっぱい濡らして」

「う、ん……」

 濡らせば透ける、そして透かそうとすれば、いっそう由利香の乳首は反応して、主張するようになる。

「見えて来たね……、うん、綺麗なピンク色」

「……そう、なの……?」

「由有理ちゃんもピンク色だったけど、由利香もすごくきれいだよ」

 恥ずかしさと嬉しさが、由利香の中で追いかけっこを始める。

「お兄ちゃん、……由利香のおっぱい、見えるの、嬉しいの?」

「嬉しいよ。すぐ脱がせちゃいたい気持ちもあるけど、でもこうやって見せてくれるのもえっちだし可愛い」

 由利香が、微笑みを浮かべた。

「……由利香も、お兄ちゃんにこうやって見せるの、恥ずかしいけど嬉しいかも……。でも、すっぽんぽんになるのより恥ずかしいんだよ?」

 立ち上がって、キス。「恥ずかしがってる由利香も可愛いんだから、しょうがないよね」

「いじわる」

 あんまり意地悪なぼくだと嫌われてしまうかな。そんな懸念を拭い去るように、

「大好き」

 と背伸びをしてぼくに抱き着く。

「……お兄ちゃん、由利香、オシッコしたいかも……」

「ああ……、じゃあトイレ行こうか」

「うん……、抱っこして連れて行って。……お部屋のおトイレじゃなくって」

「お風呂?」

 ううん、と由利香が首を振る。由利香がこそっと囁いて、「早く。ガマン出来なくなったら怒られちゃう」ぼくの心臓を、ぎゅっと鷲掴みにする。

 由利香に言われるまま、廊下に出た。

「今日は、お客さんお兄ちゃんだけだよ。だから大丈夫」

「ああ、そうだったね……」

「早くしないと、廊下でオモラシしちゃうよ……?」

 この宿は、各部屋にトイレが備え付けられている。しかし――こういう宿はどこもそうだろうけど――各フロアにも一つずつ、男女別のトイレが設けられているのだ。部屋にあることを知っていたものだから、まだ一度も使ったことがないし、人が入る頻度はそう高くないものと思われる。

 そんな宿のトイレは、他の場所が重厚かつ温もりのある木の造作であるのに対して、……一度リフォームしたけれどそれからずいぶん時間が経っちゃったんだろうなあ、という冷たいタイル敷きの空間で、正直、ちょっと寒々しい。押戸を開けたところにスリッパを脱ぐスペースがあって、その先は下駄に履き替えて進む構造になっている。毎日掃除をしているんだろうけど、それでもちょっと、トイレらしい匂いが漂った。

 その匂いの正体は四つ並んだ小便器一つあたりに二つずつ転がる、緑色の芳香剤ボールである。最近はなかなか東京では見かけなくなったやつだけど、地方に出てくるとこんな風に現役として活躍しているところを見ることがある。

「大丈夫? 由利香、寒くない?」

 由利香は、何といっても裸足で、ほぼっていうか完全に、裸だ。

「ん……、お兄ちゃんとくっついてたら温かいから平気。だけど、オシッコするときは離してね」

 由利香は下駄を履く。下駄と白い透け水着のミスマッチが、何というか奇妙だ。そしてもうお分かりの通り、ここは男子トイレである。

「お兄ちゃん、撮ってる?」

「うん、もちろん……」

「由利香、オシッコガマンしてるよ。もうガマン出来なくなっちゃいそう。どうしたらいい?」

 ぼくのリクエストを、由利香が求めている。健気で愛らしい少女はぼくが求めれば何だってするだろうけど、あんまり派手な水遊びは、やっぱり人の家であるから避けるべきだろう……。

「大丈夫だよ」

 由利香がぼくの考えをまた見透かした。「おトイレ掃除するの、由利香と由有理のお仕事だもん」

「だったら……、なおさらあんまり派手なことやらかしちゃまずいんじゃないか……」

「でも、『お客さん』の言うことは聴かなきゃ。……早く言って。由利香、もうオシッコ」

 スリットに指を当てて、もじもじと愛らしく我慢のしぐさを見せる。

「じゃあ……、じゃあ、ええと」

 咄嗟に、ぼくは由利香の手を引いて、「こっちでしようか」個室に入った。和式の便器だ。

 由利香は意外そうに、

「普通に、するの?」

「いや……、ええと……、ほら、前に由利香が教えてくれたじゃない? 女の子が水着のとき、ときどき……」

 ぼくが由利香に教わって、覚えていたことを由利香も思い出したらしい。笑顔になって、「うん、わかった」と頷き、……まだ、霞がかかったように見えないスリットの部分を大きく広げて、和式の便器に屈み、「お兄ちゃん、ほんとにえっち」と言う。けれどその顔は、とても優しい笑顔だ。

「撮ってる?」

「うん……」

「じゃあ……」

 由利香が、そっと自分の股間を覗き込む。スリットの存在があることは判るけれど、股下もそこそこ布地の面積があって、さすがに一本線をそこに描き出すには至らない。

 しかし、由利香がゆっくりと息を吐くと、霞が晴れるように、そこに隠されていた少女の秘部がつまびらかにされる。

「お兄ちゃん、これが見たかったの?」

 うん、とどのつまり、そういうことだ。

 もちろん、ライトを点けている。だから由利香の股間の金色の滴りは、眩く美しく煌めいている。布に覆われているから普段の、スリットから解き放たれる一条とは異なり、視界をクリアにしながらお尻の方へ回り、そこで太い一筋となって便器の中へ滴り落ちる。由利香のスリットはどんどん黄色に染まっていく透明なフィルタの向こうで露わになるが、代わりにその液体によって生じる湯気で、また少し霞む。

「ふふ、由利香、……おトイレでしゃがんでるのに、オモラシしちゃってる……」

 眩しげにぼくを見上げる。明るい笑顔だ。そして、とんでもなく可愛い笑顔だ。

「……由利香、立てる? お尻の方どうなってるか見せてくれる?」

「うん、……えっと」

 一度、オシッコを止めて、まだポタポタ滴の垂れる状態で便器の上、向きを変える。壁に手をついて、「……あ、また出ちゃう……」再びつうっと金色の液体が垂れ始めた。後ろからだとまた違った形に由利香の秘丘の形がくっきり判る一方で、黄色く汚れた水着もまた趣深いものがある。

 そこを覗き込み、由利香の匂いを嗅いでいるだけで胸が苦しくなってくる。

 気付いた時にはぼくは、

「きゃ」

 浴衣の帯を外して、下着をおろして、

「ごめん、すっごい可愛いから……」

 まだオシッコをしてる最中の由利香の足の間に自分の性器を差し入れていた。びっくりしたように由利香のオシッコが止まる。黄色く染まった化繊の、少しざらついて温かい感触が、ぴったりぼくのペニスの上側に当たって、それだけで激しい興奮をぼくに催させた。

「……お兄ちゃん……」

 由利香がふるると震えて、

「もう……、浴衣とか、パンツとか、由利香のオシッコついちゃってもしらないよ……?」

 再び、そこからオシッコを漏らし始めた。右手を舐めて、彼女のスリットにあてがわれたぼくのペニスの先っぽを舐めるように撫ぜる。そういうことが反射的に出来てしまうのが、ぼくにとって唯一の「女の子」のすごいところだ。

「ん、んあ……、お兄ちゃんのぉ……、ふふっ、すごいすごい……っ、お兄ちゃんのおちんちんに、オモラシ、しちゃってるのっ……」

 こすり付ける刺激が加わるから、由利香の放尿は全くスムーズさを欠いている。それでもぼくのペニスに悦びをまぶすように、ぷしゅ、ぷしゅっと漏らし続けて、温かさを分け与えてくれる。

「由利香」

 後ろから、両のおっぱいを掴んだ。ほんのり柔らかい乳房の触感が、指先に捉えられる乳首がツンと尖っていることが、ぼくを悦ばせる、幸せにする……。

「ひゃっ……あ……っ」

 竿全体で由利香のスリットをぐいっと押し上げるように弾ませながら、ぼくは由利香の股間で射精した。「由利香……」髪の匂いを、嗅ぎながら、ちょっと乱暴に抱きしめながら。

「……ふふ、由利香が射精、しちゃったみたい……」

 壁に飛び散った精液を見下ろしながら、由利香が微笑む。足元は由利香のオシッコが飛び散ってびちょびちょだ。ああ、我ながら後先考えずにやっちゃったなあ……。

「あ、お兄ちゃん、いいよ、由利香あとでまとめてお掃除するよ……?」

 ロールペーパーを巻き取って、壁を拭くぼくに由利香は慌てて言うが、ぼくとしても、

「自分の出したものぐらいは、自分で片付けないと……」

 という気持ちは当然あるので。

「……お兄ちゃんって、まじめだよね」

「そう、かなあ……?」

「でも、まじめでカッコいいと思うけど」

 こっちを向いて、背伸びをして、キス。

「こんな風に……、由利香ぐらいの女の子のオモラシ見て興奮して射精するような男はちっとも真面目なんかじゃないように思うけどなあ……」

 でも、不真面目なことばっかりしてたとしても、好きな子に好きって言ったり、それを行動で表現したり……、そういうことについては紳士的かつ真摯にありたいとは思っている。

「ねえ……、お兄ちゃん、もっと撮って」

「もちろんいいよ。……でも由利香、寒くない? ちゃちゃっと掃除済ませて部屋に戻ってからでも」

「このかっこで?」

「ああ……」

 トイレは多少オシッコ臭くたっておかしくないわけだ。

「お兄ちゃんだって、脱がせる前にもっと撮りたいでしょ?」

「ええ……、まあ、はい」

 完全に把握されている。しかし気分の悪かろうはずもない。結局トイレで、股間だけ黄色く染まった白水着姿を撮影し、二人で協力して由利香のオシッコ(とぼくが無責任に放ったもの)を洗い流すまでの間、由利香がクシャミをしないでいてくれたのはぼくにとってはありがたいことだった。

 でも、冷えてしまったから当然お風呂だ。匂いがあまりぶわぶわ拡散されることのないように、抱っこして急ぎ足に、再びあの大浴場に向かう。由利香はぞんぶんに全身をお湯で温め、由有理よりもよりはっきり透ける乳房や股間のスリットをぼくに披露して見せてくれてから、やっと「撮影会」はひと段落。

 考えてみれば今日は、……さっき由有理も一緒だったときに一回、そしてトイレで一回、ぼくばっかり幸せにしてもらっていて、由利香はまだ気持ちよくなり切れていない。

 広い浴槽で後ろから抱きしめて、穏やかに温まりながら、……さあ、どんなことをしてあげようか、どうやって幸せにしてあげようか。そういうことに、ぼくの頭は巡り始めたところ、

「お兄ちゃん、この水着の由利香、好き?」

 由利香が訊いた。

「……ああ、うん。可愛いと思うよ。由利香はだいたい何着たって『可愛い』ってぼくは言うから、あんまり信用出来ないかもしれないけど、でも本当に可愛いと思ってる」

「お兄ちゃんハードル低いよね。きっと昴星くんたちのこともなんでも褒めちゃうんでしょ」

 由利香はちょっと生意気で「可愛い」妹になって言う……、いや、実際そうだから返す言葉もないのだけど。

「あのね、もし……、お兄ちゃんが由利香に着てほしい服とか水着とか、穿いてほしいパンツとかあったら、由利香、これじゃなくても着るよ。……好きな人が、由利香のおしゃれしてるの見て、『可愛い』って言ってくれるの、嬉しいし……」

 由利香とこれから先、どれぐらいの時間を一緒に過ごすことが出来るのかは、残念ながらまだ判らない。判らないけれど、その時間を出来れば未来にずっと繋げていきたいと思う。そう思うのは、由利香を「可愛い」って思う気持ちが、例えば由利香がもっと大人になって、ぼくぐらいの歳になったとしても変わらないだろうということが容易に想像できるからだ。

 だって、そういう生き物だ、由利香は。たった一人の人間、ぼくなんかを「好き」って言ってくれる女の子。だったら、飽きられるまで一緒にいなきゃいけないって思うのは当然だろう。

「……由利香ね、海、あんまり言ったことないんだ。水着持ってても、海で泳いだことそんなにないから……。だから、来年の夏は新しい水着を、お兄ちゃんに選んでもらって、それ着て、海行きたい。みんな、……昴星くんたちと一緒に。そうしたらみんなでお兄ちゃんのことしてあげられるし、……お兄ちゃんもきっと楽しいかなって」

 ぼくも同じ「生き物」として、これほど嬉しいことはない。後ろから、優しく出来る限り優しく抱きしめて、ぼくは自分のするべきことを思い出す。由利香をまだ一度も気持ちよくしてあげていない夜なんて、一緒に過ごす限りはあってはいけない。

「……由利香、あたたまった?」

「ん……、お兄ちゃん?」

 透き通ったお湯の中で由利香の細いお腹に指を滑らせる。見下ろすと由利香の身体は薄く白い膜をまとっているのみのようなありさまで、乳首のピンク色さえもはっきり判った。由有理よりも一回り身体が成長している分、生地が突っ張ってこうなってしまうのだろう。

「可愛いよ。すっぽんぽんみたいだけど、そうじゃない。……夏に海に行くときはどんな水着がいいかな」

 小さな耳にキスをして、両手でおっぱいをそっと包む。

「お兄ちゃん……、は、どんなの、が好き……?」

「うーん……」

 まあ、何を着せたって感想が「可愛い」になってしまうのは避けられないのだけれど、

「一口に『水着』って言っても、いろんなのがあるよね……。それこそ、いま由利香が着てるのも『水着』なわけだし……」

「こっ、これは……!」

「いや、もちろんこれ着せて海に行こうとは思わないけどさ。……何て言うのかな、こんなの着て、濡れちゃったりしたら、由利香のことみんな見ちゃうでしょ」

「そうだよ、そんなの……、由利香は諭良くんや流斗くんみたいなことしないもん……」

 半透明の裸を晒している、来年は六年生の由利香。存在自体が危険すぎる。

「うん。だからもうちょっとちゃんとした『水着』がいいに決まってるんだけど、じゃあ具体的にどんなのにしようかって思うと悩ましいよね……。上下分かれてるビキニでお腹が出てるのも可愛いと思うし、でも、さっき着てたみたいな学校の水着もどきどきするしねえ……。形だけじゃなくて色とかもいろいろ考えちゃうしさ」

 おっぱいを優しく、優しく揉みながら、由利香とそんなおしゃべりをする。由利香は嬉しそうにぼくに身をゆだねて、

「……ちょっとくらい、えっちなのだったら、由利香、頑張ってみるけど……」

 なんて微笑む。

「ぼくらだけしか見てないならそれが一番いいんだけど、他の男に由利香のえっちな姿を見せるのは、……何て言うか、嫉妬するからね」

 こっち向いて、と膝に乗せる。由利香の視線は自然と下に落ちた。ぼくのペニスの反応していることを確かめてから、ぎゅっと抱き着いて唇を重ねる。

「由利香も、お兄ちゃんのおちんちんが大きくなってるとこ、他の女の人に見せるのはいや」

「見せたら犯罪だけどね……」

 水着の上からおっぱいに口づける。普段の瑞々しくなまめかしい舌触りとは違って、ざらりとする。早くこの子の乳首に吸い付きたいという気持ちを抑えて、スムーズな股間へと指を忍ばせた。

「ん……、さっきお兄ちゃん、すっごいえっちだった……」

 ぼくの指に、自由にそこを撫ぜさせながら由利香は目を閉じる。

「ぴったり、お兄ちゃんのおちんちんと、くっついて……、お兄ちゃんが気持ちよくなってるの、わかって、……すっごく嬉しかったよ」

 あんなやり方で達してしまったことを、ぼくとしては少々恥じる気持ちもある。というのも、……かなり自分本位だったなあと、反省しているのである。由利香に与えられた刺激なんてたかが知れているわけで。

「じゃあ、……今度はもっと幸せにしてあげたいよ。せっかく一緒にいるんだから、ぼくに出来ることは何でもする」

 指先を、水着の股下からそっと忍ばせる。お湯の中だからそこがいま、どういう反応を示しているかということは判りにくい。でも、……いつだったか昴星が教えてくれたのは、「あったまるとゆるむ」ということ。あの子が言っていたのは――男の子でもあるし当然――お尻の穴のことだけど、由利香にしかないその場所だってきっと、そういう性質なのだろうと思うのだ。

「お兄ちゃん……、由利香、脱ごうか……?」

 ぼくが指を当てたところで、由利香が遠慮がちに言った。「脱いでも、あんまり変わらないと思うけど……」

「……由利香は、脱ぎたい?」

「えっと……、……うん。お兄ちゃんに、もっとちゃんと、触って欲しい、かな」

 由利香の言う通り、「脱いでも」見た目は「変わらない」ことは間違いないのだ。それに薄い膜を纏ったような由利香の裸体はすごく美しい。

 けれど、もちろん望みのままに。

「わかった。じゃあ……」

 由利香が立ち上がる。改めてその、不思議で卑猥で可愛らしい水着姿をぼくはゆっくり見せてもらってから、肩のひもを指にかける。……考えてみると、女の子の水着を脱がせるのなんてこれが初めてのことだ。やっぱりちょっと窮屈だっただろうか、肩にはひもの跡が付いてしまった。

 普段より着衣と裸体との格差は小さいから、興奮もおとなしいものではあるけれど、やっぱり乳首の色を改めて見るときには思わずそこに口づけをしたくなったし、お腹から下へはずいぶんと性急な脱がせ方をしてしまったかもしれない。

「ふふ……、お兄ちゃん、何度も見てるのに」

 由利香はスリットに目を奪われてしまったぼくを笑った。

「何度見ても……、きれいだなあって」

「おちんちんないのに?」

「なくていい。由利香にはおちんちんなくていいよ……」

 お湯に浸かっていたのに、その場所はほんのりと由利香の匂いがするように思う。

「由利香、座って、足開いて。……恥ずかしいかな」

「んん、恥ずかしいけど、平気だよ」

 広げたタオルの上、由利香がお尻を置く。それから、

「……これでいい?」

 はしたなく、美しく、足を大きく開いて見せた。細い脛に太腿、線対称に開かれた二本の脚の中央を、縦に走るスリットがほころぶ。お湯の中に屈んで、顔を寄せて、……細い孔は奥まで覗けてしまいそうなほど晒されているし、そこが濡れていることもぼくには判った。

「あ……ん……」

 しばらく、ぼくの耳には由利香の声とぼくの舌が立てる音と、反対側の壁にあるお湯の吐出口から注がれるお湯の音だけが届いていた。ぷっくりとしてすべすべで、滑らかな舌触りの唇の隙間、由利香の中へと舌を差し入れると、由利香の身体の奥底が、じいんと痺れているように感じられる。ほんのりとしょっぱくて、甘酸っぱいような気もする少女の味は、世界中でここにしか存在しない甘露に違いない。由利香が許してくれるから、ぼくだけを認めてくれるから、ぼくの舌に乗る味だ。

「おにいちゃ……ん、由利香の、……おまんこ、好き? おまんこ……、なめるの、好きなの?」

「ん……」

 由利香と出会ってまだ半年も経たない。けれどぼくたちは、最初からこうだった。お互いが裸でいるのが本当に自然で、そこに悦びを見出すし、相手を悦ばせたいって思う。最初から変わったことと言えば、由利香が幾度か言葉遣いを変えたことぐらいで、それにしたって全部「可愛い」由利香なのだから何の影響もない。

「お兄ちゃん」

 由利香がぼくの髪を撫ぜた。由利香みたいに美しいわけでもないはずのぼくの髪を、彼女の指がほんとうにいとしげに撫ぜてくれるとき、「悪いもんじゃない」って自分でも思うことが出来るのだ。

「由利香に、オシッコさせて。お風呂出て、お水たくさん飲んだから……」

「このまましてもいいんだよ?」

「ん……、でも、お風呂だから、ちょっと違うのがいいなって」

 性急に気持ちよくしようとしなくてもいいと、由利香はぼくに言う。「後ろから、抱っこして、由利香の足って持てる?」

「えーと……?」

 抱っこしたまま足を持つ、というのがどういうポーズかすぐには判らなくて、訊いたぼくに、由利香は少し恥ずかしそうに、

「前に、お兄ちゃんちに行ったとき、流斗くんの前でしてくれたみたいな……、赤ちゃんのオシッコの……」

 そこまで言って、ぼくに理解させた。

「いいよ。由利香は軽いから楽にできる」

 後ろに回って、抱え上げる。「それで? どこでオシッコするのかな」

「ここ」

 ここ、……ぼくが由利香を抱えて立っているのは、岩風呂の縁である。

「……お風呂にしちゃうってこと?」

「ん……。これは、ナイショだけど……、由有理と二人でこっちのお風呂入るとき、どっちが遠くまで飛ばせるかって、競争するの。お母さんにばれたら叱られるから、ぜったいに秘密だけど」

「へえ……。じゃあお客さんは由利香と由有理のオシッコの中に浸かってたのか」

「それ、教えてあげると喜ぶお客さんもいたよ。『最高の温泉』って」

 最高の温泉……、か。温泉であるだけでも最高なのに、その上……、まあ、確かにそう言ってもいいか。

「だから、するところ見せてってよく言われた」

「オシッコの飛距離を競争するのなんて、男の子しかしないものだと思ってたよ」

「男の子もするの? ……昴星くんと流斗くんと諭良くんで誰がいちばん遠くまで飛ぶの?」

 見せてもらったことがないから判らないけれど、「今度撮って、由利香にも見せてあげるよ」とぼくは告げた。ついでに思うのは、精液の飛距離だったら間違いなく昴星だろうということ。

「じゃあ……、するよ?」

「はい、どうぞー」

 絶景であろうと思うのだ。山のように開かれた由利香の左右の足と、そのちょうど中央、谷間となって切れ込む場所と。そしてそこから噴き出すのは神聖なる泉、いや神聖かどうかは判らないけれど、

「っふ……」

 透き通って、斜めに吹き上がってキラキラする甘やかな液体である。

 放物線はじょぼじょぼと音を立て、岩風呂の中央に注がれる。

「なんだか、男の子のオシッコみたいな音がしてるね」

「ふふ……、お兄ちゃんにこうやって抱っこしてもらいながらだったら、由利香も昴星くんたちとオシッコの飛ばしっこできるかな……」

 楽しそうに笑ってするオシッコ。由利香に限らず、ぼくの天使たち全員が、オシッコという行為に楽しさを見出している。だからこそそれが、……もちろんとてもえっちなものではあるんだけど、彼女たち自身にとってもハッピーである以上、ぼくがそれを見て幸せな気持ちになることも多少は許されるように思うのだ。

 勢いよく飛んでいた放物線が緩まり、ちょろちょろとした流れになって、最終的には数滴がぼくのペニスにもこぼれた。

「ん……」

「すっきりした?」

「ちょびっとだけ。……またしたくなったら、そのときは、違うやり方で……、ね?」

 由利香を下ろし、キスをしたところで、由利香の指がぼくのペニスに絡んだ。

「お兄ちゃんのおちんちんにオシッコ、かかっちゃったね……」

「まあ、そういう風になっちゃう体勢だったからね」

「……お兄ちゃん優しいなあ……。オシッコかけられたら怒るのが普通だと思うよ?」

 それは、由利香のオシッコに備わる価値を判っていない連中の思うことである。ぼくにとっては「神聖な」液体であるから。

「由利香、お兄ちゃんのおちんちん洗ってあげよっか」

 由利香がそうやって男のペニスを洗うのが、とても得意なのだということはもちろんよく知っている。けれど、

「えーと……、その前に由利香のおまんこをぼくが綺麗にするべきだと思うな」

 いまは、由利香のことを気持ちよくしてあげたいので。

「そう……?」

 座って、と石畳の上に座らせて、ぼくは再び由利香に跪く。ほんのりと香る、少女の尿の匂いはいつ嗅いでも「臭さ」とは無縁で、清らかなものだ。

「由利香のおまんこ、さっき舐めたときもちょっと濡れたけど、今はそれだけじゃなくってオシッコも付いてて……、すごくいいね。舐めるよ?」

「う、ん……、んっ」

 潮の味と塩の味と、重なって、「ああ……、うん、美味しい。由利香のおまんこ美味しいよ」という感想が一番素直なもの。由利香のそこにあるオシッコの味は、すぐに薄まる。彼女の官能を刺激出来ている証拠が、彼女の感応に顕れているのだ。わざと音を立てて啜り、舌を突っ込むと、彼女の最奥からは濃厚な性の味がにじみ出てきているようだった。

「お、にいちゃ……っ、今日っ、すごい……、えっち……!」

 しょうがないよね、可愛い可愛いぼくの恋人、唯一の女の子、二人きりの夜、……温泉。これだけ条件が揃ったならば。

「ふ……ああ……ふぅ……んっ!」

 太腿が痺れたように震える。由利香が唇に手の甲を当てて、声を堪える。そんなことをするぐらいなら、おっぱいをいじったっていいのに、……いや。

 ぼくは由利香と初めて会ったときのことを思い出した。そのときぼくは無意識の行為の結果、由利香のことをいかせてしまったのだ。だから由利香にとって一番の「スイッチ」は。

 ぼくの唾液と由利香の蜜が混じってこぼれた先に、指を当てた。

「んひっ……!」

 由利香が声を塞ぐ手を外して、宙を掻いた。お尻の穴の入り口(出口?)をちょっと押してあげただけなのに、ぼくが舌を突っ込む由利香の中がびりびりっと震えた。舌を抜き、ぷくりとした核を唇で吸いながらぬるつく指先を由利香のつぼみの中へ、ほんの少しだけ潜らせたところで、

「っ……! ひっ……、ぃっ……、い……は……っ」

 小刻みに身体を痙攣させてから、少女の身体は脱力した。

 一応、由利香に半分ぐらいはお礼が出来た……。そういう気持ちになって、一安心。

「やっぱり由利香はお尻がいちばん気持ちいいのかな」

「……そ、んなの……、お、お兄ちゃんが、するからだよ……」

「ぼくは由利香のお尻もおまんこも好きだからね。もちろんおっぱいも唇も、全部好きだよ」

 由利香のことをゆっくりと抱き起して、そのまま温泉に浸かり直す。膝の上に載せてまたキスをしたとき、由利香はぼくのペニスをじいっと見下ろして、

「……ごめんね。由利香だけ、先に気持ちよくしてもらっちゃった」

 反省したように言うので、ぼくは慌ててぼくが先に気持ちよくしてもらっちゃったのだ、しかも二回も。だから由利香をもっと気持ちよくしてあげるのがぼくの義務なのだという意味のことを説明する。

 由利香は心底からびっくりしたように目を丸くして、

「……え」

 と声を漏らした。

「え、って」

「……ん、その……、男の人って、そんなこと、考えるの……?」

「え?」

 今度はぼくが同じ声を漏らす番だった。

「……男の人は、気持ちよくなる方が嬉しくって、気持ちよくするのはあんまり、そうでもないのかなって……」

 じいっと由利香の顔を見つめてしまった。それから、

「そんなことないよ、少なくともぼくは。恋人が気持ちよくなるの、嬉しくないはずないでしょ?」

 ひょっとして、この子の「お客さん」たちは、……いや、客どもは、由利香にひたすらさせるばっかりだったのかもしれないな……、と思う。陽介たちや、昴星たちはまだ、女の子の身体が珍しいばっかりだし、そもそもまだ幼い子供なわけで仕方がないけれど。

「ぼくは由利香が気持ちよくなると嬉しいよ。自分が気持ちよくなるのよりも、もっと嬉しいかもしれない」

 こんどは由利香がじいっとぼくを見つめる。それから視線を落として、

「あ……、お兄ちゃんのおちんちん……」

 ……うん、まじめな話をしちゃったもんだから、おとなしくなってしまった。

「洗ってあげよっか」

 由利香が微笑んで言って、立ち上がる。「由利香も、お兄ちゃんとおんなじだよ。お兄ちゃんが気持ちよくなるの、嬉しい。だから由利香、お兄ちゃんに撮ってもらうのも好きだし、お兄ちゃんが気持ちよくなってくれるかもって思うと恥ずかしいかっこだって平気になるんだ」

 じゃあ、ぼくたちはお互いさまということだ。……いやいや、恋人なのだからそれが自然だ。お互い高め合ったところに最高の幸せがあることなんて、いま初めて知ったことじゃない。

「それも嬉しいけど、由利香が風邪をひかないでいてくれるのがいちばん嬉しいな。……部屋に戻ってから続きしようよ」

 お湯を一浴びして言うと、由利香も頷いた。三十秒間、肩までしっかりと温まってから、脱衣所へ移動して由利香の身体を拭くと、由利香の温かさでほんのり上気した肌が息をのむほど美しいことに気付かされる。

「……うちの温泉はね、『美人の湯』なんだって」

 美肌効果があるってことだろう。……大人のぼくの肌でさえ、なんだか普段よりもつるつるしているような気がするのだ。

「由利香のオシッコが入ってるから余計につるつるになるのかも知れないよね」

 馬鹿なことを言いながら、カメラを取り出す。「いい?」」

「いいけど、……由利香、パンツ穿いちゃうのに?」

「いっつも脱ぐところばっかり撮らせてもらってるから、たまにはね」

 由利香は納得したように頷くと、脱衣かごに入れておいたパンツを広げて、左足から通す。染みの付いていない、洗い立てのピンク色女児パンツだ。立ったままだから、バランスを取りながら……。そういう体勢で生み出される、ちょっとお尻を突き出した格好もまた魅力的なものだ。由利香のお尻は女の子だから昴星たちより丸くて、ほんのりピンク色に染まっているせいで「桃」という単語をぼくに思わせる。そのお尻がぱつんとパンツに包まれて、バックプリントに曲線美が描き出されるのは本当に可愛らしい。双丘の中心にきゅっと食い込んでいるのも、またいい。

「前は、撮らなくてよかったの?」

 振り向いて見せてくれる、パンツ一丁の少女の姿態。スリットを薄く描き出している下着は、きっといい匂いがする。由利香はこうして見るとやっぱりスマートで、それでいて女の子らしい滑らかな曲線で描かれた身体つきをしている。おっぱいがまだ小さい分、腰の細さがよく目立った。

「ブラは、寝るときだからしないよ。あと、今日はお兄ちゃんのお部屋でお泊りだから、浴衣」

「……ノーブラで浴衣着るの?」

「寝るときはね。普段はパジャマだし……」

 浴衣は、さすがに着慣れているからか、ぼくなんかよりもよっぽど上手にぴしっと着こなしている。髪は結ばずそのまま。しかし、和風美人である。

「はい、できあがり。……由利香の裸、何にも見えなくなっちゃったけど……、おもしろかった?」

「面白いって言うか、魅力的だったよ。浴衣は薄着だけど、そうやってきっちり着ちゃうと何て言うか、安心感があるね」

「由有理はまだ浴衣着るの下手で、すぐぐずぐずになっちゃうんだよ。パンツとか見えちゃうときしょっちゅうあるの。お客様の迷惑になっちゃうから気を付けるようにっていっつも言ってるんだけど……」

 迷惑、というか「困惑」を誘うに違いない。この子の妹であるから、それだけ可愛いわけだ。

 浴衣は、別に特別なものではなくて、薄い灰色に紺色でツタの柄が入っているもの。シンプルであるがゆえに由利香の魅力を引き立てるし、こんな子のいる温泉に高いお金を払ってでも通いたくなる男性客の気持ちもぼくは判った。

 くるり、また背中を向けて、細いながらも女性的で、むしゃぶりつきたくなるようなヒップのラインを見せてくれた。

「ちょっと、お尻突き出して見せてくれる?」

 ぼくのリクエストに、「こう、かな?」振り向きながらお尻を突き出す。カメラを寄せると、ほんのわずかではあるけれど彼女の穿いた下着のゴムラインが判る。

「きゃ」

 つい、触ってしまった。「もう……」ちょっとだけ、怒ったように、でも非難はしないでぼくを咎める。「触るなら、着ない方がよかった? 由利香、お兄ちゃんが抱っこしてくれるならはだかんぼでお部屋まで行っても平気なんだよ?」

「んー……、まあ、他のお客さんがいないにしてもそれはちょっとやめとこう。ごめんね、由利香の浴衣の後姿さ、美人だったから。いや、後姿だけじゃなくて前もなんだけど」

「後姿って……、お尻?」

 由利香は壁の鏡に映った自分を見るが、「そうなのかなあ……? 由利香はね、お尻の形だと、諭良くんが素敵だと思うな。足がすらっと長くて、スタイルもすごくいいし……」と謙虚な感想を述べる。諭良の後姿が、その端正かつ聡明そうな顔を想起させる綺麗なものであることは言うまでもないのだけど、いやいや、由利香の後姿だってなかなかのものだよって思う。

「お兄ちゃんはいろんなところが好きなんだね。男の子のおちんちんも、由利香のお尻も」

「由利香のおっぱいも、おまんこもね。可愛いものが好きなんだ。でもって、『いろんなところ』かもしれないけど、ぼくの好きなものって実はそんなに多いわけでもないと思うよ」

 しっとりした髪を撫ぜて、……由利香にはぼくの言いたいことが伝わったようだ。うん、と微笑んで、手をつなぐ。

「早くお部屋で続きしよ。どっちが多いとか気にしなくていいから、こんどは由利香の番。お兄ちゃんがしたいって思うのとおんなじで、由利香だってしたいことあるもん」

 どんなこと? と訊くと、秘密めいた微笑みを浮かべて、

「お部屋着いたらお兄ちゃん、はだかんぼになってね?」

 由利香はぼくの問いには答えてくれない。浴衣姿の、サービス精神がすこぶるつきにいい少女が考えていることを、ぼくは覗けない。ただ期待感だけがどんどん膨らんでいくばかりで。

 部屋に一組プラス枕一つ、敷かれた布団の上で、「お兄ちゃん」と請われて裸になる。ぼくも――由利香と違って、お世辞にも「似合っている」とは言いがたい――浴衣姿だったから、脱ぐのは簡単だ。帯を解いて、

「……全部?」

「うん、おちんちんも」

 浴衣少女の前で全裸を晒す。ぼくがいるせいで由利香の美しさがいっそう引き立つことだろう。

「後ろに手を回して」

「……ん?」

「お兄ちゃんのこと、縛っちゃうから」

「はい?」

「だって、お兄ちゃんってすぐ由利香のこと気持ちよくしようとしちゃうんだもん。今夜は由利香のところに泊まりに来てるんだから、由利香がいっぱい気持ちよくしたいの」

 そう言いながら、ぼくの背後に回った由利香は自らの浴衣の帯を解き、ごく手際よくぼくの手首を縛ってしまう。……とはいえ緩めだ。頑張れば自力で解くことも出来そうだけど……。

「……この間さ、流斗と諭良が泊まりに来たとき、そのときは縛られはしなかったけど……」

 同じようなことを、あの二人にも言われた。「ぼくたち二人でお兄ちゃんのこといっぱい気持ちよくしてあげたい」って。その結果、二人は相当に過激なサービスをしてくれたわけだ。

「……そうだったの?」

「うん……」

 二人でグラスにオシッコをなみなみと注いで、その中に精液を放って、二人の味の「カクテル」を味わわせてくれたことも、ぼくは話した。ぼくの前に回って、

「じゃあ、由利香も頑張らなきゃ。流斗くんと諭良くん二人がかりにはかなわないかもしれないけど」

 座って、と言われるままに布団の上に腰を下ろす。由利香は洗面所からグラスを持って戻ってきた。

「お兄ちゃんに、由利香のオシッコ飲ませてあげる」

「えー……、えーと、……はい、ありがとう……」

 浴衣の帯を解いているから、由利香の身体の前部は全部見えている。いつの間に脱いだのか、おへそからまっすぐ下がるとあそこも露わだ。

「流斗くんたちみたいに、上手に出来るかな……」

 そこを、……ぼくの腹を跨ぐ形で広げて、中央にグラスを宛がう。

「……由利香、学校の尿検査でオシッコ採るときって、そんな風にするの?」

「オシッコとるときは、座ってするよ? 由利香の、おうちの方はちゃんと様式のおトイレだから……、あ……、出そう……」

 勢いは、そんなに強くない。色も、由利香一人のものだからそんなに濃くはない。それでも、少女が自分のオシッコを採る姿なんてそうそう見ることはないだろう。……もっとも、少年二人が一緒になってするところもそう見ることはないはずだけど。

「男の子は、どうやってするの?」

「どうやってって……」

「由利香ね、男の子はオシッコすごい遠くまで飛ばせるから、おトイレの床とかに置いてするのかなって……」

「そんなことしたら零れちゃうよ……。左手で容器を持って、右手で自分の摘まんで……」

「へえぇ……、……ふふ、じょうずにできたよ」

 オシッコの満ちたグラスを、そうっとそこから外す。まだ濡れている白い左右のふくらみから、お尻の方へ滴ったものがぼくの腹部を少し濡らしていた。

「……流斗くんたちは、こうやってオシッコとって、そのあとどうしたの? 全部お兄ちゃん飲んじゃったの?」

「いや……、さすがに全部は……」

 まず、二人からかわるがわる口移しで呑まされた。でもそれだけで全部がなくなる訳がなくて、

「……えーと……、ぼくのそれとか、身体にこぼして、それで、そのあと二人の……、口と舌で……」

 汚されてるんだか綺麗にされてるんだか、途中から判らなくなってしまった。由利香はしばし自分の手にあるものと、ぼくの身体とを見比べて、

「……それって、つまり、……自分のオシッコを舐めて……」

「うん……」

 飲ませてあげるって言ったからには、そうさせたいと思うのだろうし、ぼくだって由利香のオシッコを飲むのは好きだ。だけど由利香に口移しで、となると。

「……由利香は自分のオシッコ飲んだことは……、ないよね」

 由利香は答えなかった。

「……ある」

「え、あるの?」

「だ、……だって、お兄ちゃん……、おいしいって言うから……」

「ああ、まあ、そりゃぼくは美味しいと思うけど……」

「……お兄ちゃんうそつきかもしれないって思っちゃった。しょっぱくって、くさくて……、でも……」

「いや、そんな無理にしなきゃいけないようなことじゃないし……、あ」

 とぼくが止める間もなかった、止めようにも後ろ手を縛られているわけで。

 由利香は意を決したようにくーっとグラスを傾け、口の中に自らのオシッコを溜める。そしてすぐさま、ぼくに唇を重ねて来た。由利香の口の中から一気にぼくへ流れ込む、少女のオシッコの「しょっぱい」味……。オシッコ(に限らずあらゆる物)の味に関して最も鋭い味覚を持つ昴星が「しょっぱい」と言う通り事実しょっぱくて、だけど、だからこそいとおしい由利香の味だ。

「うう……」

 自分から言い出したことであるのだが、由利香は当然目に涙を浮かべている。

「えーと……、おいしかったよ……?」

「……ほんとにー……?」

「うん、由利香の味だもん、そりゃ美味しいよ……」

 抱きしめて、髪を撫ぜてあげられないのが残念だ。

「実際、由利香のオシッコ飲んだら元気になる気がする。昴星たちのもそうだけど……、仮にみんながぼくのことを本気で『カッコいい』なんて言ってくれるんだとしたらさ、それはみんなのね、若くて可愛い子たちの身体から出たものを飲んでるからじゃないかなってときどき思ったりするよ」

 由利香の視線は、ぼくのペニスに向いた。

「……さっきより、おっきくなってる……?」

 うん、素直に頷く。

「由利香のオシッコ飲んで、こうなったの?」

「そうだね。由利香のオシッコでこうなった」

 由利香はまだ自分の手の元にあるグラスとぼくの身体とを、再び見比べた。それから、

「うー……、お兄ちゃんはずるいよ……」

 と肩を落とした。

「ずるい?」

「うん、ずるい! うれしいことばっかり……、由利香がもっとうれしいことしてあげたいのにーって……」

 それに関しては……、まあ、仕方のない側面もある。

「ぼくはみんなを嬉しくしてあげるのが自分のしなきゃいけないことだと思ってるから」

「そうかも、しれないけど……」

 はあ、と溜め息を吐いて、由利香は浴衣を脱ぐ。再びのすっぽんぽん。

「じゃあ、由利香もっとがんばる!」

「え?」

 オシッコの入ったグラスに、ちゃぷ、と右の指を二本突っ込んだ。

「流斗くんたちとは、お風呂場でしたんだよね……? いまは、あんまりびちょびちょにはできないから、ちょっとずつだけど……」

 濡らした右手の指を、由利香自身の綺麗な色のおっぱいに当てる。

「……うあ……、こんなの……」

 薄い桃色の乳首が、あっというまにツンと尖り、見る見るうちに熟したように赤みを帯びた。足を大きく広げて、スリットをぼくのペニスと重ねて、腰をもじもじと動かす。ぼくのペニスにオシッコを塗り付けようとしているのだ。

「お兄ちゃん、由利香ね、自分の、きたないオシッコ、おっぱいに付けちゃった……」

 右も、左も、乳首の先端からお腹へ向かって、つうっとオシッコが垂れる。

「本当だね……。どんどん美味しそうになっていっちゃうんだ」

「ん……、おいしくなりたい、由利香、お兄ちゃんに……」

 腰を浮かせて、おっぱいを突き出す。ちょうど唇の高さにあるそれに吸い付いて、

「んぅ……」

 ゆっくりと舐めて味わってみると、……もともとほんのり甘くさえ感じられるような由利香の乳首に薄く塗られたオシッコのせいか、その場所が余計に甘さを強めたように思われる。

「ん……、はう!」

「おっと……」

 バランスを崩した由利香が、ぼくのペニスにおまんこをすり当てた。そこはもう、オシッコではないものでぬるぬるしている。

「欲しくなっちゃった?」

「……うー……、ずっと欲しい……」

「そっか。じゃあちょうどいいタイミングだね。ぼくも由利香に挿れたい。……でも、せっかくオシッコ採ってくれたんだから、それも使わなきゃもったいないよね……」

「……ん」

「とりあえず、解いてもらっていい?」

 由利香はこくんと頷いて、ぼくの腕のいましめを解く。自由になった手でオシッコがなみなみ継がれたグラスを持ち上げる。やさしい体温がガラス越しに伝わってきた。

「オシッコは、どこに流すべきかな?」

 ぼくはとうに答えを決めていながら、そう訊いた。

「オシッコは……、おトイレ」

「うん、正解。……由利香、もう一回オシッコ出せる?」

「え……?」

 由利香はぽかんとぼくを見上げる。この子には、……いや、この子に限ったことじゃなくて、この子を含めてぼくの天使たち全員には、いまさら自分が変態であることを隠す必要もない。

「もう一回出せるならさ、見せてほしいなって。……どうかな」

「……ん」

 由利香はこくりと頷いて、ほったらかしになっているカメラを手に取る。

「撮って欲しいの?」

「……だって、お兄ちゃんだって、ほんとは『もう一回』だけじゃなくって、何回も見たいんでしょ……?」

 バレてるのなら、格好をつける必要もない。すっぽんぽんの由利香と一緒に、またトイレへと廊下を歩く。由有理がちっとも寒そうじゃないのがぼくを安心させる。

「実質、おうちの中みたいなものだからすっぽんぽんでも平気?」

「……ほ、ほんとはちょっと、恥ずかしいよ……? その、……こんな風に、オシッコ、持ってるし……」

「確かに、オシッコ持って歩くことなんてないよね。……諭良だったら外で裸になるだけでおちんちん勃起させちゃってるかもしれないね」

「ゆ、由利香はそんな、ヘンタイじゃないもん……」

 男の子たちの前で裸になる度胸はある一方で、由利香はそういう類の「露出」をしたことはないはずだ。その辺りは子供たちの中でも比較的常識が備わっていると言っていいだろう。そんなことを思っているうちに、ぼくたちは再びトイレに着いた。

「じゃあ、流すよ?」

 オシッコを、小便器に流しかけた手を止めて、そのグラスを満たす少女の黄金水を一口啜る。それから、背中を丸めて由利香のおっぱいを舐めた。

「ひゃ」

「……やっぱり由利香のオシッコはしょっぱいね。美味しいよ」

「……もう」

 白い陶器を流れていく少女の尿。ただの水と言えばそれまでなのに、由利香の身体を一回通過して、濾されたものだってことを考えると、やっぱりかけがえのないもののように思える。

「……じゃあ……、はい」

 由利香がグラスを置く。「えっと……、オシッコ、どこですればいいの?」

「そうだね……。せっかく男子トイレに来たんだから、こんどは男の子みたいにオシッコしてるところ見せてもらおうかな」

 ぼくの口にした言葉の意味を、由利香はすんなりと飲み込む。自分の股間と小便器とを見比べて、「……で、出来るかわからないよ? その、……こぼしちゃうかも、しれないし……」

 まだ「立って」出来るようになったというばっかりで、男の子のように目標物に向かって上手に放物線を描けるというわけではないということらしい。でも、「どうせこのあとまたお風呂だしね」ぼくが重ねて言うと、「もー……、お兄ちゃんって、ほんとえっち」ちょっと唇を尖らせて、でも、覚悟を決めたように頷いた。

「もう、撮ってるの?」

「うん。由利香の裸は綺麗だからね……、何だろう、男子トイレにいるっていうのが、普段と違ってなんかこう……」

「そう、なのかな……?」

 由利香はいまいちピンと来ないようだけど、本来男しか入らない場所に全裸の少女がいるというのはなんだか奇妙なものに思える。首を傾げながらぼくに身体を向けて、サンダル履きでくるっと一周、その美しい肢体を見せてくれたところで、

「あ……、オシッコ、するね」

 ふる、と身体に震えを走らせた。

「いっつも、立ってオシッコするときは、お外とかお風呂とかだから……、あんまり上手に出来るか自信ないし……、へんなとこ飛んじゃっても、笑っちゃダメだよ?」

「笑わないよ。びしょびしょにしちゃったらぼくが掃除するから」

 由利香は、足を広げて男子用小便器の前に立つ。ちょっと膝を曲げて、上体を逸らして、両手を股間に当てがう。美しいスリットを、自分の指で広げる様子には、まるでオナニーを始めるときみたいな淫靡さがあった。

「んっ……」

 由利香のお腹に力が入ったのが判る。中途半端な勢いだと足元を濡らしてしまうと思ったのだろう、思い切り力を入れた由利香の尿道から、高い水音を立てて細い一条が飛び出した。それは見事、小便器の壁に当たり、白い陶器にごく薄い黄色の膜を描いて行く。

「ふふっ……、オシッコ、ちゃんとおトイレに出せてる……」

 真横から見ると、しゃがんだ状態でするときよりもオシッコが細く見える。なるほどなあ……、なんて、また少女の泌尿器の構造に詳しくなったつもりのぼくだ。

「すごいね。これなら陽介たちとみんなで並んでオシッコ出来るんじゃない?」

「そう、かな……? 陽介たち、そうするとうれしいかな」

「嬉しいに決まってるよ。……まあ、途中でオシッコの向きが変わっちゃうかも知れないけどね」

 ふわふわと温かく優しい臭いの湯気を立てながら、由利香は「立ちション」をぼくにゆっくりと見せる。由利香は身体に溜め込んでいたものを出すとき特有の、安堵と羞恥の入り混じった美しい表情を浮かべて、唇の隙間から息を漏らした。

 何というか、この少女の放尿姿には人の心をとらえて離さない何かがあるように思うなあ……。そう気付いた客はきっと何度も由利香にオシッコ姿を見せるようせがんだはずだ。でも……、どうだろう? そもそもそういう趣味の持ち主ってマイノリティだったりするんだろうか……? だとしたら、もったいない話だ。

「……いっぱい出たね」

「うん……、ちょっとだけ、こぼしちゃった」

 まあ、本来は女の子が立ってオシッコをするための便器ではないわけで、由利香の股間の真下にごく小さな水たまりが出来てしまうことは全く問題ない。

「陽介たちと一緒にオシッコするの、楽しみになったんじゃない?」

 微笑んで、由利香は頷いた。

「……あれ? じゃあ普段はどういう風にしてるの? あの二人は由利香のオシッコにあんまり興味ないのかな」

 ぶんぶん、とんでもない! と言うように強く首を振った。

「お兄ちゃんと同じぐらい、あの二人もオシッコ大好き! ……学校でも通学路でも、すぐ『見せろ』って言うんだもん……」

「へー……、へえ、あ、そうなの……」

 むう、と唇を尖らせて、

「お兄ちゃんがヘンなこと教えるからだよー?」

 って、言う。でも優しい由利香のことだ、何より、あの二人のことを愛している由利香のことだから、見せてあげるんだろうし、「お礼ちょうだい」って言うんだろうとも想像する。

「まあ……、多くの男の子からしたら、女の子のオシッコ見られるチャンスなんてないもんだし、……それに由利香は陽介たちにとって誰より一番可愛い『女の子』だろうからね」

「それは……、ちょっと、うれしいけどー……、でもね? あらかじめ、見せてって言われて見せるならまだいいけど……」

 由利香はお腹に当てた指をむずむずさせる。

「このあいだ……、由利香、学校でね、クラブ活動……、由利香、体操部なの、えっと、バレエみたいなの、してるんだけど」

 初耳だ。瞬間的にこの少女のレオタード姿を想像したけど、まあ話の続きを聴こう。

「放課後に着替えて、学校の、五年生の教室のある階のおトイレでオシッコしてたら、なんか変だなって……。放課後だし、由利香たちの学校、ちっちゃいから子供ぜんぜんいないはずなのに、個室、三つあるうちの一つ、使ってる人がいて……」

 放尿を終えて、丁寧に拭いて、……それからそうっと足の間から後ろの個室を覗き込んだら、陽介と瑞希と目が合った、と言うのだ。

「……すごいことするね……」

「ほんとだよね……、もし由利香じゃなくって他の誰かにばれたら大変なことになってたよ?」

「それだけ見せて欲しかったってことなのかな」

「そんなの……、言えば、ちゃんと見せてあげるのに……」

 まあ、苦情の尽きることはあるまいが、由利香だってそこまで求められれば悪い気はするまい。少年二人の前でもぼくと一緒にいるとき同様、淫らに美しく可愛くいるに違いない。

「女の子のオシッコは、魅力的なものだから。神秘的って言ってもいいかもしれない」

「由利香は、男の子のオシッコのほうがいいなって」

 ちろり、と由利香はぼくのペニスに目を向ける。「……お兄ちゃん、ずっとオシッコしてないよね?」

 誰だって、自分の価値なんてものは判らない。昴星だってあんなに可愛いのに「おれかわいくねーし」って言う。流斗はぼくが可愛いって言えば、「うれしいけど……、昴兄ちゃんのほうがかわいいと思うなあ」って言う。だからぼくだって、ぼくの価値は判らない。

「……えーと、して見せて欲しいってことかな」

「由利香、オシッコしたもん。だからお兄ちゃんもしないと不公平でしょ?」

 やれやれ……。元はと言えばぼくが「見せて欲しい」って言ってここに連れて来たのだ。まあ、しかたがない。

 大きく深呼吸、一回、二回、三回、それから浴衣の前を開けて、トランクスから。

「……あれ? おちんちんふつう……」

「普通、にしたんだよ。勃起したままだとやりづらいから」

「あ、それ瑞希も言ってた……。朝とかおちんちん立っちゃってオシッコするの大変だって」

 由利香のオシッコをまだ流していない小便器の前に立って、……少女の死線を大いに感じながら、「蛇口」を緩める。

「……ふふ」

 由利香は放尿するぼくのペニスをより近くで観察しようと言う魂胆なのだろう、しゃがんで、顔を寄せて、「お兄ちゃんのオシッコ、すっごい勢い……」言う。

「あんまり顔近付けたら汚いよ」

「由利香のオシッコも汚い?」

「それは……」

「じゃあ、お兄ちゃんのオシッコも汚くないもん。……おちんちん触っちゃお」

 危うく軌道が乱れそうになる。ひんやりした右手の指を絡み付け、「オシッコ、すごい……、おちんちんの中オシッコが走ってるね……」じっくりと観察する。少女の恥ずかしい姿をさんざん観察させてもらった後だから、ぼくだけ「恥ずかしいから嫌だ」なんてことは当然言えないわけで。

「やっぱり、男の子って大変だね……」

 ぼくの落ち着かない放尿も終わりが近付いた頃、由利香がそんなことを呟く。

「女子は、しゃがんだりすわったりして、……そのあとは何にも考えないでオシッコすればそれでいいけど、男子はおちんちんちゃんと持ってあげないとオシッコ散らばっちゃうんだもん……、おしまい?」

「……うん」

「じゃあ、おちんちん振らせて。男の子はオシッコのあと拭かない代わりにおちんちん振るんだよね?」

 そういった情報はだいたい陽介たちから仕入れてくるのだろう。十個以上年下の女の子に放尿後のペニスを振られるというのはなかなか貴重な体験ではあるけれど、……嬉しいですかと問われて「はい」とは答えにくいものではある。

「そういえば、……由利香はまだ拭いてないね?」

「……ん」

 立ち上がって、由利香はぼくにぴったり抱き着く。

「……どうしてかな」

「ん?」

「……うんちするときって、オシッコ、かならずいっしょに出てくるの」

 恥ずかしそうにぼくを見上げて、由利香はそう訊く。ぼくは真意に気付かないふりをして、

「そうだね……、うんちをしようとして入れる力が、オシッコ出すときと同じ向きだからじゃないかな」

 なんて答える。要は由利香、もう一回オシッコであそこを濡らしちゃう予定があるから拭かないでいるのだ。

「それは、……男の子もおんなじ、だよね?」

「そうだね。昴星と一緒にしたとき、由利香びちょびちょにされてたじゃない」

「ん……、あれ、うれしかった……。ね、お兄ちゃん」

 ぼくたちは、これだけ濃密な時間と行為を重ねて来てもまだ恥じらいというものを捨てられないでいる。そしてそれはお互いにとってふさわしく、また大切なことなのだと思う。

「……えっと……、うんちしたいな……」

 排便の欲を口にするとき、由利香はその先にあることについても当然考えただろうし、ぼくもそれは同じだ。そうしたい、と望む由利香と、そうして欲しいとぼくも望む。

「ひゃ」

 由利香をひょいと抱き上げて、「うんちは、さすがにここじゃ出来ないよね」と熱いほっぺたに口づけをする。由利香は「ん……、でも、由利香立ったままでも出来るよ……、昴星くんたちみたいに……」と恥ずかしさを堪えて気丈に言う。

「じゃあ、立ったままする?」

 こくん、由利香は頷く。「お兄ちゃんに……、立ったままするとこ、見せたい……」

 おでこにキスをして、抱っこをしたまま和式の個室に入る。下ろしてあげるなり、由利香は嬉しそうに背伸びをしてぼくにキスをして、

「お兄ちゃん……」

 壁に手を付き、可愛いお尻を突き出した。細い腰に、女の子らしく丸いお尻、ピンク色の肛門、そして女の子の秘密の場所が一つの視界に入る。オシッコで湿っぽいおまんこが、既にオシッコ以外の液体によって濡れていることまでよく見えた。

「由利香の、……うんち、見ててね? でもって、……えっちだって思ったら、ごほうび……、ね?」

「はい、かしこまりました」

 カメラを構える。由利香は視線をいざなうようにお尻を揺らして、

「んーっ……!」

 膝を少し曲げ気味に、いきみ始めた。

 オシッコが足元、便器のない場所に勢いよくほとばしった、と同時に、ぷうっと判りやすい放屁の音が響く。

「可愛くってお行儀の悪い女の子だね」

「うぅ……、だって……」

「ぼくにうんちするとこ見せるって思うだけでおまんこ濡れちゃうんだ?」

 短い放尿が終わって、滴が糸を引くのが見える。

「……流斗くん、が、……うんち、してるとき、お兄ちゃんのこと思って、おちんちん、勃起しちゃうって……」

 ああ、どうもそうらしい。流斗だけじゃない、昴星にしても諭良にしても、太いうんちをする際にぼくのペニスがそこを通過しているイメージにとらわれて、おちんちんが反応しちゃうことがあるって教えてくれた。

「由利香もそうなの?」

 由利香は素直にこくんと頷いて、「あっ出る……、お兄ちゃんっ、うんち……出る……っ」肛門を自らの中にあったもので、内側から環状に押し広げ始めた。

「ああ……、すごい太いよ」

「あん」

 ぼくが告げると、恥ずかしがるように体の中に引っ込めてしまった。ぼくは思い立ってロールペーパーを巻き取り、「そう言えば、流斗が自分で自分のうんち手に取って見せてくれたことがあったんだ」と言う。

「え……?」

「そのポーズだと顔が見えないからね。由利香の可愛い顔と、臭いうんち、一緒に見れたら楽しいだろうなって思ってさ」

 多めに巻き取ったロールペーパーを、由利香の片手に持たせる。由利香は戸惑いながらもぼくの意図をしっかりと理解して、

「もう……っ」

 これまでよりもう一段も二段も恥ずかしそうに、それでも素直に、足と足の間に手を差し伸べた。括約筋が限界を迎えたのだろう。由利香の肛門からは、重たげな便がじりじりと垂れ下がり始める。手のひらに重ねたロールペーパーの上に、それがゆっくりと接着する。

「うんち、すっごい……、出てるっ、おもたい……」

 由利香の声は排便でいきむためのそれから、すぐに行為そのものに快楽を覚えて濡れたものへと変わった。ぼくの目の前でカメラに撮られながら自分の手でうんちを拾うという、およそ想像さえしてこなかったであろう行為に、その官能が刺激されているのだろう。

「すごいね、由利香。ひょっとして今朝しなかったんじゃない?」

「ん、そ、そんなことないもん……」

「そう? でもすごい太くてたくさんだ。由利香は毎日こんな太いうんちしてるんだ?」

 実際のところ、うんちが太いことはこの後に続く行為で彼女をより幸せにすることにも繋がる。ぼくも見ていて楽しいし、一挙両得一石二鳥とでも呼ぶべきもの。

「っん!」

 硬く太い便が切れた。どうにかこうにか由利香の手のロールペーパーに収まったけれど、重さで切れただけでまだ出てきそうだ。零れちゃったら困るなと思うから、

「はい、じゃあ由利香、こっち向いてお顔とうんち見せてごらん」

 ぼくは求めた。由利香は浅い息を繰り返しながら、落とさないように慎重に、左手も添えて自分の便を支えながら、和式の便器にしゃがみ込んだ。その肛門からぽちゃっ、ぽちゃっとスムーズにまだ大きなものが次々落ちる。

「興奮した?」

 由利香は紅い顔でこくんと頷く。

「笑って」

「ん……、えへ……」

 触ったわけでもないのに乳首が両方ともツンと尖っている。しどけなく広げられたおまんこからは糸を引いて愛液が垂れている。そしてその相貌は、やっぱりとびきりに可愛らしいのだ。

 たとえその手に、自分の肛門がひりだした便を持っていたとしても。

「すごい立派なの出したね。どう?」

「え……っと、すっごい……、思ってたより、重くって、あと……、こうやって、近くにあると、すっごい、くさい……」

「ね。由利香の可愛い顔と汚いうんち両方見せてもらってるんだ。太さだけなら昴星よりもすごいんじゃないのかな。今度昴星と二人で比べてみようよ」

「……由利香、うんち太い……?」

「いいことだと思うよ。すっごい興奮した。……まだ出てる?」

「……ん、うんちもオシッコもいっぱい……。お兄ちゃんとこういうことしてると、止まらなくなっちゃうのかな」

「ありがたい話だと思うよ。それだけたくさん由利香の可愛いところ見せてもらえるんだからね」

 動画が素晴らしいものであることは言うまでもない。でもポケットからスマートフォンを取り出して、まだ放尿並びに排便をし続ける由利香の姿を撮る。由利香はそれに気づいて、笑顔を向けた。それから、

「お兄ちゃん」

 今度は、動画を撮影中のカメラに向けて呼びかける。

「由利香、お兄ちゃんの前でいっぱいうんちしちゃった。お兄ちゃん、いま由利香見ながらえっちなことしてる……?」

 由利香の目には、ぼくが映っている。ぼくも、臭いの届くほど近い場所と特急で何時間もかかる遠い場所から、由利香を見ている。

「由利香の、うんち……、すっごいくさいよ……」

 由利香は両手でロールペーパーをカメラに掲げて見せる。本当にこれがついさっきまで、この可憐な少女の中にあったという事実が信じられないくらい、……どっしりとした塊だ。

 由利香のオシッコの雨が止んだ。お尻から垂れていた便も、肛門がきゅっと収縮してちょん切れて落ちる。由利香はそっと掌の上のものを便器の中に落として、僅かに膝を震わせながら立ち上がる。

 そして、そのまま後ろを向いてお尻を突き出した。

「お兄ちゃん、由利香の、くさいうんち出たところだよ……? お兄ちゃん、いまおちんちんいじってるのかな、由利香のきたないお尻見て……」

 震えているのは、膝が少し痺れちゃったせいかなと思っていた。けれどどうやら違ったらしい。金隠しを前に座ってカメラを向けているぼくが見るのは、由利香の濡れたスリットから再び少量のオシッコがほとばしる様子と、

「んー……っ」

 彼女が力むのに応じて肛門が蠢き、まだ少し残っていたらしい茶色い塊が顔を出すなり便器の上に小さなひと塊、落下する様子。

「お兄ちゃん、興奮した? おちんちんかたくなってる?」

 由利香は恥ずかしそうにもとのポーズに戻ると、カメラに向けて訊く。流斗ほど撮られ慣れているわけでもなかろうけれど、需要というものをよく理解した振る舞いだ。

「お兄ちゃんの硬くなってるおちんちん、由利香に見せて」

 由利香の言葉の意味するところを察して、ぼくは立ち上がる。浴衣の前から出ているペニスを差し出すと、

「んん……、お兄ちゃんのおちんちんすごい……っ」

 嬉しそうに唇を当て、上手な舌で這い回り始める。こうしてくれることによってぼくは後から自宅で由利香と「会った」ときに、由利香にしてもらっているような気持ちを味わうことが出来るわけだ。

 本当は、早いところ容れて欲しいはずだ。でもそれを我慢して、こういうことをしてくれる。だからぼくはこの子を尊敬するし、愛している。

「おちんちん、ふふ……、あつくって、おいし……、お兄ちゃんのおちんちん大好き……」

「おちんちんだけ?」

「ん、全部。お兄ちゃんの全部。でもおちんちんすっごい美味しいし、……由利香のこと見て、すっごいかたくなってるの、うれしい……」

 フェラチオは撮影しやすいのがやっぱりいい。いまのぼくの視点、……ぼくのペニスを咥えこんで愛撫する由利香の顔は本当にいいものだと思うし、それと非常に近い角度で家に帰ってからも愉しむことが出来るというのは、やっぱり素晴らしい。再現性があるという言い方も出来るだろう。

 由利香のフェラチオは、何度も言う、本当に上手だ。器用だし、愛情が籠っている……。何よりぼくにとって唯一「女の子の」恋人だという思いも、少女の愛らしい相貌を見ていると、とても強く興奮を煽られるのだ。

「いきそう……」

 ぼくが呟くと、目元をほころばせてカメラを見上げ、「一回だけ?」と問う。

「……一回だけじゃないよ。由利香のおまんこ全部に出さなきゃ終わらない」

「ほんと……?」

 ぼくは、人より性欲が強いのかもしれない。伴って性的に強いのかもしれない。昴星たちも含めて四人がかりでかかって来られても、一応最後まで元気でいられる。

「ふふ……、じゃあ、全部ね? 由利香のおまんこ……、全部、お兄ちゃんのおちんぽ気持ちよくするためにあるんだから……」

 愛らしいことを言うその口までも「おまんこ」と称して、由利香が再び深々と銜え込んで頭を動かし始めた。その間もたえることなく舌を這わせて、……口腔全体での圧を使ったマッサージに甘ったるいアクセントを加える。こみ上げるものをその口の中へ吐き出すまでに、そんなに時間は要らなかった。

「……ありがとう、由利香」

 乾ききった髪を撫ぜたぼくに、そうっと頭を引いた由利香が口を開けて、

「まら、いっふぁい……」

 覗かせる。ぼくの出したばかりのものが、その口の中をたっぷり満たしているのが見える。

「ん、……おいし」

 飲み干した由利香は微笑んで、立ち上がる。さすがにもう排便も排尿も完了している。

「お兄ちゃん、由利香、うんちもオシッコもしたから、拭いて」

 足を肩幅以上に開いてそう求めた。そういう姿を見せられれば射精直後であることなんて関係ない。すぐに片手でロールペーパーを巻き取って、由利香の足元、黄色い水溜まりに横たわるこげ茶色のうんちをじっくり撮影してから、見上げる。スリットと、奥まったところにあるアヌスを、普段はあまり見ることのない角度から観察してから、お尻のほうから拭いて行くことにする。

 ペーパー越しにも由利香の肛門が緩んでいることがはっきり感じられた。オシッコが伝ったせいで、ペーパーはすぐ濡れてぐずぐずになってしまう。

「お兄ちゃん、おまんこ見るの好きだね」

 由利香は優しい顔で咎める。

「好きだよ。だって、女の子にしかない場所だからね……。こんなところ見せてくれるの、由利香だけだ」

 由利香の股間からは芳香が漂っていた。それは由利香の排泄物の臭いと、由利香の欲の高まりを告げる液体の匂いとが混じりあったときにだけ生じる、不思議な香りだ。男の子のストレートに刺してくる臭いが蠱惑的なものであることは言うまでもないが、由利香のそこから漂う臭いも、ぼくにとっては麝香のようなもの。

 スリットに鼻を寄せて嗅いだぼくに、

「由利香だけなの、うれしいけど、お兄ちゃんはそれでへいき?」

 由利香は首を傾げて訊いた。

「……ん?」

「お兄ちゃん、男の子、昴星くんと流斗くんと諭良くんと……、あと、才斗くんも? それから」

「ああ……、ええと、ルカとソラ。瑞希と陽介も入れていいのかな」

「入れてあげたほうが、陽介たちうれしいと思う……。でも、女子は由利香だけでいいの?」

 由利香の問いに、

「そりゃあ、もちろん」

 ぼくは頷いて、鼻の頭を手の甲で拭った。

「それは、やっぱりお兄ちゃんが男の子好きだから?」

 ぼくは質問の意図を捉えかねて、訊き返した。「……どういうこと?」

「んっと……、お兄ちゃん、お風呂で由有理の水着見て、どきどきしてたでしょ? だから、お兄ちゃん、おまんこもっとあった方がうれしいのかなって、あ、あのね、由利香はもちろんうれしいよ、お兄ちゃんとこういうこと、これからももっといっぱいしていきたいって思うし。でも、由利香はお兄ちゃんがいっぱい気持ちよくなるのがいいなって」

 ぼくが彼女をはじめとする存在を「天使」と呼びたくって仕方がない根拠となる言葉を、また由利香は口にした。

「それに……、由利香以外の女子もいたほうがうれしいの、お兄ちゃんだけじゃないかもしれないって」

「……それは、……えーと、どういうこと?」

「……ん、だからぁ、……由利香だけじゃつまんないんじゃないかなって、……その、昴星くんとか、諭良くん……」

 カンの悪いことだ、そこまで由利香に言われてようやく合点がいった。

「ああ……!」

 確かにぼくだって、……言うまでもないけど由利香一人で十分すぎるもったいなすぎる、けれど、さっき由有理の水着姿で興奮してしまったように、もうそっち方面の欲望が開発され切ってしまっている部分は否定できない。例えば(それが問題にならないことは決してないけれど)もう一人いたからといって、それは別に困ることではないだろう。

「なるほどね。それが叶ったら確かにあの二人は、……まあ、昴星は素直には現さないかもしれないけど、嬉しいだろうね」

「うん。……由利香、そんなに友達多くないけど、でも、……その、由利香がこういうことしてるの、知ってる子、いるし」

「そうなの……?」

「うん、同い年の幼馴染。お兄ちゃんや瑞希たちのことは、まだ行ってないけど、お仕事のことは離した……。そしたら、ちょっとうらやましそうにしてた。だから男の子のおちんちん、きっと、好きだよ。だからね、昴星くんたちがこんどもし来ることがあったら、そのとき、イタズラしちゃおうかなって思ってた」

 昴星は、ええと、リリィさんだっけか、金髪の女子留学生とそういう関係になったとはいえ、依然として女子とそういうことをするのに慣れた訳ではない。きっと恥ずかしさに興奮しきってしまうだろう。諭良だって大喜びするはずだ。

 いやはや。

「由利香は昴星のことも諭良のことも大好きだね」

 少し、照れくさそうに唇を尖らせた。

「だって……、あの二人、すごいと思う……。諭良くんみたいに、あんなカッコいい男子、見たことないし、昴星くんみたいにきれいな男子がいるなんて思ったこと、なかったもん」

 瑞希や陽介も可愛いし格好いいと思うけれど、まあ、幼馴染であることからも多少なりとも減点されるのは仕方ないかもしれない。

「お兄ちゃんだって、由利香だけじゃなくって、みんな好きでしょ?」

「……ええ、はい、まあ、はい」

 我ながら歯切れが悪い。そりゃあ、由利香に言われるまでもなく、あるいは由利香よりも詳しく、昴星たちの魅力について語れるのがぼくなわけで。

 由利香はふふっと笑って、ぼくにキスをした。「えっちなお兄ちゃん、みんなに好かれてるお兄ちゃん。だから好き。だから由利香とこんな風に遊んでくれるんだもん。だから、大好き」そのまま、抱き着いて、

「いいよ、由有理とも、遊んであげて……。こんどお兄ちゃんが由有理とお風呂入って、もしおちんちん硬くなっちゃったら、由有理、由利香の妹だから、きっとちゃんと出来ると思う。由有理だけじゃなくって、他の女子、気になる子いたら、……危ないことはしちゃダメだよ? でも、いいよ」

 危ないこと、って。……君と今こうしてる時点でぼくはたいそう「危ない」んだけどな。

「……まあ、そのときが来たら考えるよ。今はこうやって由利香のこと可愛がってるんだから、由利香のことだけ考えてればいいし、そうじゃなきゃダメだ。今は由利香だけの恋人なんだし……」

 由利香が、嬉しそうに微笑んだ。ぼくの勃起に触れて、「いれたい? お兄ちゃん、聴かせて」と囁く。

 素直に、

「……由利香に入れたい。由利香の、可愛い女の子の、きゅうって締まるおまんこに入れたいな」

 ぼくは求めを口にした。

「由利香の、どっちのおまんこ?」

「せっかくうんちしてくれたから、そっちにしなきゃね?」

「うん……、由利香もそっちがいい」

 由利香がそこをもぼくに委ねてくれるから、ぼくは百二十パーセント、由利香を感じられる。唇と舌、おまんこ、おっぱい、肛門、小さな耳、きれいな髪、その身体から漂う由利香だけの臭い、味……、後ろを向いてお尻を突き出した由利香の肛門に自分のペニスを挿入するとき、確かに気持ちいいのはその場所なのだけど、ぼくは由利香と身体を重ね合い溶け合うような感覚に酔い痴れる。

「はぁああ……」

 由利香の艶っぽい声に、ぼくの胸は少年のようにときめいた。由利香が僅かに背伸びをする。そのまま持ち上げるように腰を突き上げ、後ろからおっぱいを包む。由有理よりは大きいにしても、やっぱりまだ子供、女の子、未発達な部分のほのかな膨らみである。それでもぼくの指がぷっくりした乳首を摘まむと、それが快感であることをもう知っている。

 悦びを知るがゆえに、悦びを分け与えずにはいられない由利香の身体だ。

「お、にぃちゃっ、お兄ちゃんっ、好きぃ……っ、由利香はぁ、お兄ちゃんがっ、大好きぃ……!」

 心の底からそんな風に声を絞り出すくせに、「他の子とも遊んで」なんて言う。ぼくが実際にそうするかどうかは置いておいて、この子のことを愛することをやめる日が来てはいけない。この先何があってもぼくは、ぼくを、ぼくなんかを、愛してくれる子供たちを愛することをやめてはいけない。

 そう念じながら、小さなお尻に腰を抉り込み、何度も叩き付ける。

 うわごとのように「好き」という言葉を繰り返す少女へ、ちゃんと伝わっているという気持ちを返すために、それが少しぐらいの力を持てばいいとぼくは思う。


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