おれの、XxXXXXX、見んの好き?

「おっ……」

「わぶッ!」

 ちょうど角を曲がったところだった。ぼくはメールの返信を打つために手元に視線をやっていて、周囲への気配りが足りなかった。腰にどんとぶつかったのは、小さな少年だった。

 ぼくもそれほど身の頑丈な方ではないけれど、もちろん少年と比べれば……。尻餅をついた彼は「いってー……」と顔をしかめていた。

「ああ、ごめんね、ごめん、大丈夫? 本当にごめん余所見してたもんで……、お尻ぶつけちゃった……?」

 少年はスポーツバッグを背中にかけていた。尻餅で済んだのはまさしくそのバッグのおかげで、それを背中に敷くような格好でバタバタもがいている。手足が細くて、体幹も引き締まっていて、なかなか気の強そうな顔に短くさくさくした髪がよく似合っている。……流斗と同じくらいかな、なんて、ショタコン特有の眼力を無意識のうちに働かせてはしまうけど、もちろん今はそんなことは考えず、

「よいしょ」

 その子を抱き起こす、真っ当な大人としての振る舞いが大事だ。

「本当にごめんね、……痛かったよね。どこか怪我してない? 大丈夫?」

 尻餅を着いて、大人の手を借りたことにプライドが傷ついたが、少年の頬は紅かった。一度目を瞠って数秒間、ぼくの顔を見てからプイと横を向き、「へ、平気です」と唇を尖らせて言う。

 と、「ぶちゅん!」とクシャミをする。……無理もない、今夜も寒い。少年の鼻から鼻水が垂れた。慌ててポケットからティッシュを出して、拭く。少年は真っ赤になって、ぼくが鼻を拭き終えるなり走って行った。

「気を付けてね」

 と言ったぼくの声が、届いたかどうかはあまり自信がない。しかし仕方のないこと。もっと気を付けて歩かなければならないのはぼくのほう。でないと可愛い男の子に怪我をさせてしまうかもしれない。

 そんなことを考えて立ち止まったままメールを打ち直した。今夜は諭良と遊ぶのだ。……あの子と過ごせる時間はもうそれほど長くない。だから、このところ頻繁に泊まりに来る。僅かな悔いも残さないように、ぼくらはたくさん、愛し合わなければならない。

 

 

 

 

 そういうことがあった、次の日の帰り道だ。

「あ、あのっ」

 甲高い声に呼び止められたのは、昨日と同じ曲がり角だった。今日も寒い、しかし今日は諭良が泊まりに来ない。そんな平日の夜。

「あ……」

 昨日の子だ、というのはすぐにわかった。「やあ……」と微笑んだぼくに、何故だか少年は思い詰めたような顔でいる。視線は、睨み付けるように強い。

「どうしたの? ……昨日の、お尻、大丈夫?」

 手袋をしていない両の拳はギュッと握られている。微かに震えているようにさえ見える。

「こ、こっち、来てください、ついて来てくださいっ」

 早口でそう言うなり、少年は踵を返し、パタパタとスニーカーの足音を立てて走り出す。

「え、えっ、ちょっと……」

 全く、……神に誓って言う、ぼくはこれっぽっちも予期してはいなかった。ただ、ぼくが昨日、ぶつかってしまった男の子である。

「早くっ」

 少し離れたところで、少年は振り返って催促した。……全くもってわけがわからない、きょとんとするばかりだが、基本的に男の子の言うことには全面的に従順であると決めているぼくだ。幸い周囲には誰もいない、……やれやれ、と溜め息を吐き、わけもわからずぼくは彼の後を追った。

 少年の足が止まったのは、城址公園の一番奥、ひと気のない、そもそも舗装された道や木組みの階段もない、暗がりだ。少年は走ったせいで息を弾ませているが、その呼吸も収まらないうちに、

「か、か、上柚木、空太ですっ、四年生、ですっ」

 肩を上下させて、そんな乱暴な自己紹介をした。

「かみゆぎ、そらたくん……」

 うん、知らない子だ。「四年生」というぼくの見たては当たっていたけれど。

「き、き、昨日っ、昨日っ、痛かったっ、からっ」

「あ、ああ……、うん、本当にごめんね……、余所見をしていた。気を付けなきゃね」

 少年を愛する「大人」として、少年に怪我をさせるようなことをしてはいけない。そういう意味では、本当によくなかったな……、としみじみ思う。

「ひょっとして……、アザになったりしちゃった? それとも、擦りむいたとか……」

 ぼくはショタコンとしては極めて恵まれていることに、少年の「恋人」が複数いる。またロリコンとしては初心者であるにもかかわらず、少女の「恋人」もいる。概ね人間失格であることは承知しているけれどその一方で、恋人たちに怪我をさせたことは一度もない。アナルセックスをしてさえ、その身体に痛みを走らせることには(大きくは、彼らの努力によって)至っていないのだ。

 だから大いに反省して、……ああそうだ、カバンに絆創膏が入っていた、そんなことをぼくは思い出す。

「い、い、痛かったから、あの、えっと、いしゃりょーをせーきゅーしますっ」

「いしゃりょー……、慰謝料!」

 四年生であればそれぐらいの単語は知っていてもいいにせよ、全く予期していない言葉が出てきたものだから驚く。

「い、慰謝料って、……ひょっとして、病院に行ったりしたの……?」

 だとしたら、事はぼくの「少年を愛する男として云々」の域は超えてしまう。ちゃんとご両親に正式にお詫びをしなければ……!

 そう、ぼくが青ざめているところだった。上柚木空太くん四年生は、ぐるっとぼくに背中を向けるなり、ジャンパーの背中に手を回す。……いや、ジャンパーではない。華奢にも見えるが運動の得意そうな身体つき、その長く細い足によく似合った半ズボンのウエストに指を入れて、

「はれてるかどうかっ、見てくださいっ」

 呆気にとられるぼくの目の前で、ぐいっとそのズボンを下ろした、……いやズボンのみならず、白い、ブリーフまでも一緒くたに。

 流斗のお尻よりは丸みが少ない、昴星よりも小さい、……形のタイプで言えば諭良にちょっと似てるところがあるかな……、なんて、ショタコンの業とでも呼ぶべきのんきなことを考えてしまったが、

「わ、わあっ、びっくりした……」

 まだほとんど初対面の少年に突然慰謝料を請求された上にいきなり丸出しのお尻を見せられるという事態にあれば、このリアクションこそが正しいものであろう。

「ど、どう、ですか」

 ああそうだ、腫れてるかどうか見てください、と言われたのだ。しかしなんというか……、ぼくはショタコンとしては極めて恵まれているとは思っている。全ては昴星と出会ったところから始まったわけだけど、流斗に諭良に由利香、そして先日来ぼくを「先生」と呼んで慕ってくれるルカこと鞆鞘遥。しかし本来ならばこんなこと、あるはずないのだ。

 だからまあ、多少は少年という神秘的な生き物への耐性は身についている、とは思う、……そこらのショタコンよりは、ずっと。だからお尻を見せられたぐらいじゃ平常心を失ったりは、……いや、もちろんドキドキしているし、「おおラッキー」なんてことも考えてしまっているのだけれど。

「そ、そうだねえ……」

 ひざまずいて、顔を寄せる。とりあえず今のところは、……この空太の方からお尻を出して来たわけで、状況にぼくの側に過失はない。だから、……だから、見る分にはセーフ、見る分には、見るだけだから。だって、なんてったってお尻を出した子は一等賞なんだから。

 とはいえ、

「うん、……なんともなってないみたいだよ?」

 それは事実なのだ。つるんと丸く締まりのいい空太の臀部には傷一つない。許されるならばほっぺた擦り寄せて感触を確かめたいところだが、許されないのでやらない。

 冷静さを保って、

「さあ、……あんまりそんな風にお尻を出してたら風邪ひいちゃうよ? えーと、空太?」

 ぼくとしてもあんまり長いことお尻を直視していると色々な方面に問題が生じ始めてしまう。思えばこれまでぼくは危うい橋を渡ってきている。流斗と初めてこの公園のトイレで出会ったときには昴星の差し金だとは知らずにあの子の可愛さに負けてイタズラをしてしまったわけだ。諭良は、向こうから三度に渡る誘惑と告白をしてきたから構わないにしても、……由利香には昴星と流斗とそういう遊びをしているところを思い切り見られてしまった、由利香の街の少年たち、陽介と瑞希にいたっては、流斗が自らこちらの関係を明らかにしてしまったし。

 これまではただ、「男の子とえっちなことが出来て嬉しいなあ」程度のことしか考えて来なかったし、それでよかった。でもいま、ぼくのことを、……ぼくなんかのことを「恋人」って呼んでくれる男の子たちがいる、「お兄ちゃんのおよめさんになりたいな」なんてことまで言ってくれる。

 いまのぼくに大切なのは、この形の生活を今後も保ち続けて行くことだ。もし仮に将来、「およめさんになりたい」と今言う流斗にぼく以外の好きな人が出来たとしてもそれはちっとも悲しいことではない。ただ、彼らがぼくを必要とした時に必ず側にいられるぼくでなければならない。

 だからもう、危うい橋を渡る訳にはいかないのだ。

「ほら、空太、パンツを……」

 ぼくの言葉の途中で、空太はがばっと振り向いた。どんなに清いことを考えようと努めたところで、目の前におちんちんがあると視線はそこに吸い寄せられてしまうのがショタコンの性というものだ。

 小さい、……小さいおちんちんと言えば昴星の専売特許のようなところがあるけれど、昴星のそれをちょうど二年遡るとこうだろうか、と思われる。そして昴星の丸っこいおちんちんと比べると細くひょろっとしていて、気の強そうなその顔と裏腹にひよわな印象だ。

「お、おれのっ、……ちんちんっ、きのう、転んだときから、変なんですっ、だからちんちんも、見てくださいっ」

「……はい?」

「早くっ、ちんちんっ、ちんちん見てっ」

「な……」

 何だこれは。

 ……ぼくの頭の中では幾つもの可能性が浮上し、ぐるぐるとまわり始めた。

 具体的に一番高いかと思われる可能性を引っ張り上げてみると、……この子も、昴星の差し金だろうかということ。ぼくにまた新しい男の子のおちんちんを見せてくれようとして……? いやしかし、もうずいぶん長く昴星と一緒に過ごしているけれど、こんな子が知り合いにいるということは聴いたことがない。

 そしてまた、ここが流斗の街であったらまず間違いなく(ルカと同じく)流斗を疑うべきところだが、言うまでもなくここはぼくの地元だ。

 こんな、唐突におちんちんを見せてもらえる機会なんで訪れようはずが……。

「え、えーと……、う、うん、あの、見たよ……?」

 ちんちくりんだなぁ、なんて失礼なことを思う。流斗よりもう一回り小さくて、タマタマも小さい。用事のようなおちんちんで、皮も余っている。ただそれは諭良のように伸ばして余っているのではなくて、単にそのサイズが小さいゆえに余ってしまうものであろう。見た目上のサイズ、つまりツルツルの根元から皮の先っぽまでの、中身はおよそ半分もないのではないか。もちろん、ぼくは触るわけにも行かないから見て想像するだけだけども。

「ちんちん……、ちんちん、変に、なって、ない、ですか……?」

 目に涙を浮かべて空太は聴く。

 変も何も、

「いや……、まあ、普通のおちんちんだと、思うよ?」

 口を滑らせて「小さくて可愛いね」なんて言いそうになってしまった。いかんいかん、ちゃんとまともな大人としてだな。この子が何を考えてぼくにこんなサービスをしてくれるかわからないけども、ここで手を出したりしたら犯罪者だ。

「おれの……、ちんちん……」

 空太は、腰をくいっと動かした。

 そのおちんちんが、ぷるると揺れる。……小さいから揺れ方も小規模だ。

 思わず見惚れそうになってしまう。けれど、視線はぐっと、空太の顔に固定する。また空太が腰を揺すった。ぼくの視線は重力に負けてしまいそうになる。

「その、……変って、……具体的にどう変だと思うの……?」

 はっ……、と空太の唇から白い息が漏れた。空太は腰の動きを止めて、「その……」慌てたように、膝に引っかかったブリーフを引っ張る。

 その内側は、ずいぶん汚れていた。……オモラシをした後かと一瞬見まごうぐらいに。でも、「違う」とわかるのは、実際にオモラシをしたブリーフがどんな風に汚れるかをぼくが知りすぎるくらい知っているからだ。

「おっ、おれの、パンツ、こんな、黄色く、なっちゃって、そのっ、シッコ、いっぱい付いちゃってて……」

「そ、それは……、昨日、ぼくがぶつかったから?」

 あのとき、チビってしまったのだろうかとそう訊けば、ぶるぶると首を振る。ああもう、全然わからない。

「えー……、あの、……うーんと、そう、あのね、オシッコをした後は、よーく最後までオシッコをちゃんと出し切って、……それからおちんちんよく振って、そうすればあんまり汚れることはない、……よ?」

「ほんと、ですか……?」

「うん、……それは、本当に。あと、あのね、空太、あんまりそういうことしちゃダメだよ、えーと、つまり……」ぼくみたいな男におちんちんを見せるなんて、「危ないから。その、空太のおちんちんを見て」いまのぼくみたいに「イタズラをしちゃうような、悪い大人が世の中には」君の目の前にも「いるから……」

 ぼくが必死に言葉を捻り出しても、空太はまだ縮こまったおちんちんをしまおうとはしない。

「あの」

 ひう、ふはぁ、と深呼吸をひとつ、空太はした。

「おれ、……おれ、これから、しっこ、する、ので、お兄さん、の、言ったの、やってみるので、……それでいいかどうか、見ててくださいっ」

「は?」

「しますっ、もう、ずっとガマンしてるっ……」

 唖然とするぼくの前で、空太はバタバタと方向転換をする。再びお尻が丸出しになった。ちょろろ、と音がする、もうオシッコをし始めてしまったようだ。

「早くっ、お兄さんっ、おれのちんちんちゃんと見ててっ」

「え、えっ」

 見てって言うから、……だから見るんだこの子がそう求めたから! ぼくはそう自分に言い聞かせて、空太は放尿するおちんちんを、その頭の上から見下ろす。

 垂れた皮を膨らませての放尿は、諭良に似ている。本当に我慢していたんだろう、空太のオシッコは強い勢いで斜め下の土を抉り、泡立たせ、湯気を漂わせる。幼過ぎるおちんちんからの、元気いっぱいの放尿……、理性を削り取られそうになりながらも、

「ちゃんと、見ててください、おれのちんちん、してるっ、おれのしっこっ……」

 求められるままに、視線は逸らさない。これは何て苦行だ。

 それでもぼくが耐えるのは、あの愛しい少年たちとの生活を維持したいと願うからだ。上柚木空太というこの男の子が少々可愛くって無意識のサービス精神旺盛であったとしても、あの子たちのそばにいるためには……!

「空太、……本当にね、こういうのは……」

 オシッコをしながら、

「お兄さんが悪いんだ!」

 空太は声を上げた。「お兄さんがっ、きのう、おれにぶつかったりしたから!」

 お、怒られた……。いや、まあ確かにぼくがよそ見をしていたせいで尻餅を付かせてしまったことは事実、なのだけど、……だからと言って、こんな……、ねえ。

 どうしたらいいのか。

「……しっこ、終わりましたっ」

「お……、うん……」

 一体全体、どういうつもりなのだろう。空太は振り返って、おちんちんをぼくに向けて突き出す。余り皮の先っぽに、金色の滴が光っている、……むしゃぶりつきたいぐらいに可愛いのだけど。

「え、えーと、じゃあ、……おちんちん、摘まんで、振ってみてごらん……?」

「わかんないです」

「え、え、わ、わかんない?」

「お兄さんが言ったんだからっ、お兄さんが手本見してくれなきゃやですっ」

 えー、……えー、ということは、

「……ぼくに、……ぼくに、空太のおちんちんを、摘まんで……、ってこと?」

 がくんっ、と空太は頷く。

 間違いなく、昴星の差し金ではないな、とそのときぼくは思った。昴星が誰かにこういうことをさせようとしたならば、もっとスマートで、かつ直接的な誘い方を教授するだろうから。

 そして、諭良が誰かにこんなことをさせるという想像もぼくには出来ない。

 つまりこの、上柚木空太は本当に自分の自由意志でもって、ぼくにこういうことを求めているんだろう。……そこまで考えが至って、ぼくは理性の糸を締め直す。ますますもって変なことは出来ないぞ、と。

「わかった……、うん。でも空太、一つ、ぼくと約束してくれるかい?」

 空太はじいっと強い目でぼくの目を見つめている。負けずに見つめ返して、

「教えてあげる。でも、ぼくにこんな風に、オシッコするところ見せたり、おちんちん触らせたり、……したことは、絶対誰にも言っちゃダメだよ? 空太はわからないかも知れないけど、ぼくみたいな知らない大人が男の子のおちんちん見たり触ったりしたことが誰かにバレたら、ぼくはおまわりさんに捕まっちゃうから。……約束出来る?」

 強い目のまま、がくん、と空太は頷いた。

 どのみち、この子にパンツを汚さない処理の仕方を教えないままでは帰してもらえそうにない。だから理性に基づく、精一杯の譲歩がこの結論だ。正直、これ以上妥当性の高い選択肢はぼくには思い浮かばない。

「……絶対、言いません、誰にも……」

 空太は嘘のない目で言った。ぼくとしても、もう信じるしかない。全ては昨日、よそ見をしてこの子とぶつかっちゃったのが悪いんだ。

「じゃあ……、えーと、後ろを向いて」

 覚悟を決めて、ぼくは後ろから空太の陰部に手を寄せる。空太の身体は接しなくてもわかるぐらいあったかい。

「触るよ……?」

「ん、……はい」

 落ち着いて落ち着いて、自分に言い聞かせながら、そのか細く短いおちんちんを、指先に捉えた。

 ぷにゅ、と、……昴星諭良流斗ルカ、それぞれのとはまた違う、あまりにも幼く頼りない触れごこちが届いた。……小さな男の子の、まだ何も知らないような、オシッコをしたばっかりの、おちんちん……。

 いや、そうじゃない、そうじゃないんだ!

「お、オシッコをしたら……、こうやって……」

 おちんちん、こんなにちっちゃくて、柔らかくっても可愛いなあ……。いやいやいや。

「ね、おちんちん、よーく振って……、そしたら、パンツを上げてもオシッコ付かないから……、わかった?」

 こく、と空太は頷く。しかし、ぼくが指をポキポキ軋ませながらそのおちんちんから手を離すなり、

「じゃ、じゃあ、うんこは? うんこは、どうしたらいいんですか」

 また魅力的な、いや、わけのわからないことを……。

「ど、ど、どうしたらって……」

「だからっ」

 空太は苛立ったようにぐいっと右足を上げて、ずっと膝に絡まったままのパンツとズボンを脱ぎ去る、おなじようにして、左足も。

 つまり、ええと、……下半身、すっぽんぽんになっちゃったぞこの子……。

「うんこ」

 パンツを裏返して、ぐいとぼくに差し出す。

「あ、ああ……」

「おれっ……、う、うんこも、上手に、……ふけなくってっ、……だから、おれ……」

 前の酷い汚ればかり目に付くが、そこにこびり付いたものがあることにもぼくは気付く。何なのだこの子は一体。……まっとうな神経とは言い難い気がしてきた。何か、「男の子だから」って理由だけであんまり深く関わっちゃまずい系統の子なんじゃないのかって……。

 しかし、ぐいぐい、空太はぼくにそのパンツとズボンの塊を押し付けてくる。

「これから……、ここで……、うんこ、しますっ」

「こっ、こっ、ここで……」

「おれ、が、うんこしたら、……っおれの、うんこ、見たらっ、拭き方、教えて、くださいっ、でもって、……でもって、おれと、……おれと……」

 空太は真っ赤になっている。恥ずかしいならそんなこと言わなきゃいいとは思うのだが、何というかもう、ぼくの常識を大きく超えている。昴星や流斗と付き合っているぼくの常識を超えてるんだから、この子、相当だぞ……。

「なんでもないっ、もう、うんこっ……」

 しゃがみこむなり、キッと涙目で睨み上げて、「お兄さんもっ、しゃがんで、ちゃんと見るのっ」もはや命令に近い。「は、はい」ぼくはもう、「よそ見しててぶつかった」補填はとうに済ましているはずなのにしゃがんでしまった。

 だって……、またきわどいバランス、秤がぼくの中で揺れる。……恋人ではない少年の排便を合法的に面と向かって見ることが出来るなんて……。

 暗がりの股間、せっかく雫を払ったばかりのおちんちんから少量のオシッコがちょろりと溢れ出た。と、同時に長く高く、要するに、かなり間抜けな音を立ててのガス放出があった。

「う……」

 空太は目からポロリと涙をこぼす。泣かれたって、ぼくは困るのだ。君が「見ろ」というから見るのであって……。

「おなら、なんて……、誰だってするもんだから、そんな恥ずかしがらなくっても大丈夫、だよ?」

 ぎこちなく笑って見せたぼくに、空太はしゃくりあげ始めた。しかし同時に、その肛門からポトポトと音を立てて、便が落ち始める。

「うっ、んっ、おれぇ、おれっ、……うんこっ、お兄さんが、お兄さんにっ、うんこぉ、するとこ、見られて……っ、見せてっ……」

 もはや完全に泣き声である。……男の子の泣くところには、極端に弱い。だから男の子を泣かせたくないと心から思っているぼくなのだ。

「そ、空太……」

 しかし、空太は立ち上がる。まだうんちの最中だというのに、立ち上がる。目の高さに、その縮こまったおちんちんが揺れた。

「おれ、っ、お兄、さっ、好き……っ」

 ……はい?

 今何て言った?

「お、お、おれのぉっ、おれの、うんこっ、くさい、うんこ、っいっぱい、いっぱい見て欲しいよぉ、うんこもっちんちんもっ、は、はっ、恥ずかしい、とこぉっ、ぜんぶ、ぜんぶ、見てっ」

 好き?

 ぼくのことを、「好き」って言ったのか? この子は。……どうして? 疑問符が、幾つも幾つも浮かぶ。だってぼくはこの子と、昨日、ぶつかっただけ。

「え、えーと、……空太、あの、……ぼくのこと、が、……好き?」

 がくんがくん、空太は頷く。お尻からは相変わらず、細い紐みたいなうんちを落としながら。

「その……」

「おれ、おれはっ、おれはっ、男の、人っ、好きっ、好きなのっ……、だからっ、お、お、おにーさっ、みたいな、……にいちゃっ、欲しいっ、ちんちんもっ、うんこもっ、ぉっ、ぜんぶ、おれのぉ、はじゅかひいとこっ、ぜんぶっ、見せたら、好きっ、なって、……好きっなって、くれるっ、てっ……、思ってっ……」

 唖然、である。

「好きなの、ぼくを、空太は……。ええ?」

 空太に、というよりは、神様というものがもしいるならばそれに値する存在に向けて浮かび上げた問いだ。

 ……一目惚れ、というやつか。ショタコンにショタっ子が一目惚れ? そんなことって。

「そ……、空太、よく聴いて……。その、うんち、立ったままするのしんどいでしょ、だから、座って」

 ぶるぶるっ、空太は首を振る。

「ちんちん、お、お、おれのっ、見せたらっ、おにぃ、ひゃっ、好き、なって、くれる、からっ……」

「いや、あの……」

 そんな知識を、この子はどこで拾ってきたのか……。そりゃあね、おちんちん見せられて好きにならない男はいないだろう、……ショタコンである限りは!

「だからっ、だからっ、おれの、見て欲しいっ、おれのちんちん、おれのうんこっ、おれのぜんぶっ」

 ぴと、と先っぽの冷たいおちんちんが、ぼくの鼻に当たった。

 昴星ほどじゃない……、昴星よりは薄い、質が違う……、それでも、かなりに臭う、おちんちん。

「……空太……」

 お尻に、手を回した。びくんと空太の身体が強張る。恐れたようにぼくを見下ろし、ひくっ、としゃくりあげた。

「大丈夫だよ……、泣かないで。何も悲しむことはないよ……、大丈夫」

 落ち着いて、と、自分に対しても空太に対してもぼくは言い、ぼくは思わず触ってしまったお尻から手を離した。「落ち着いて」……、どっちの比重が大きいかは、率直に言ってわからない。ただこの事態を、そう鋭くも回らない頭で考察して見るに……、やっぱりこの子はどうやら本当に「単独」で、昨日の出来事をきっかけにぼくを求めているらしい、……その公算が高そうだ。

 でも、

「その、……恥ずかしいところを見せたら好きになってもらえるって、誰かに訊いたの?」

 その点は確認を取るべきだろう。昴星にしろ流斗にしろ、そういうことを言ってこの子に強いているのだとしたら、……泣いちゃってるぞこの子、可哀想に、さすがにちょっと叱らなくちゃとは思って。

 でも、空太は首を振った。

「……本当に?」

 今度は、がくんと頷く。

「だっ、だっ、だって、お、おとなの、セックスすんのは、恥ずかしいとこ、をっ、相手に、見せる、ことだからっ……」

 そういう知識は持っているのか。

 要するにこの子は、……セックスってものをよくわかってはいないのだ(いやぼくにしたってどこまでわかってるかと訊かれると、適齢の女性とはしたことないわけで、覚束ないのだけど)ろう。ただそれを「恥ずかしいところを見せる」ことばかり重視してしまった結果、真っ赤になって泣きながらうんちして見せるという、暴挙と呼ぶべき行動に出たのだ。

「えーと……」

 いつからか、空太のお尻からの落下物は終わっていた。

「空太は、ぼくのことが、好き、なんだね……?」

 こく、こく、何度も空太は首肯する。

「……ぼくみたいな大人が、空太みたいな子のことを好きになっちゃいけないってことは、判るかな。……そもそも、ぼくも空太も男なわけで、……それは普通の人から見たら、……空太のお父さんお母さんや、学校の先生から見たら、すごく悪いことって言われるの、わかるかい?」

 空太が唇をへの字にして、再び訪れる強い涙の発作を堪えているのが伝わってくる。ぼくは空太をしゃがませて、……ショタコンであり、昴星たちという恋人がいる男としてこの子に何が言えるか何ができるか、必死に捻り出した言葉は、

「……空太は、内緒に出来る? ぼくとこれからすることを、誰にも言わないって約束出来る?」

 という、……恐らく、最も程度の低い類のもの。

「で、き、るっ、約束っ、するっ……」

 小指を差し出して、……男同士の約束。空太はきっちりぼくに絡めて、何度も何度と手を振る。

「空太、落ち着いて聴いてね。……ぼくには恋人がいる。でも、空太のことを可愛いと思う。空太は、それでも平気?」

 都合のいいことを言っている自覚はある。しかし事実は伝えなきゃいけない。空太が本当に真剣に、ぼくなんかを、……昴星たちが思ってくれるように「好き」って思ってくれているのなら、なおのこと。

 空太は、こくこく、頷いた。

「本当に?」

 こくん、と頷く。

 秘密と約束は、常に守られるためにある。そう信じて、自分の秘密をぼくに見せることでこの心を求めている少年を前に、……ぼくは無力だった。

「空太は、おちんちん小さいね」

 オシッコの雫が付いたそこ、冷たくなっている、もともと小さいようだけど、可哀想なほどに縮こまってしまっている。この子のそこは、ぼくに温めて欲しいのだ……。

「同い年の子と比べても、ちょっと小さいかな。でも可愛くってぼくは好きだよ」

 自分で拵えたうんちの山の上に屈んだ少年の、涙の波が収まり、ポカンとした顔……、悪くない。

「そうだ、……さっきから当たり前みたいに呼び捨てしちゃってたけど、嫌じゃなかった? ちゃんと『空太くん』って読んであげた方がいい? それともあだ名の方が『恋人』みたいでいいのかな」

 ぼくが何を言っているのかもわかってはいないような顔である。

「空。……うん、空太のことはソラって呼んでもいい?」

 鞆鞘遥は、「ルカくん」と呼ぶ流斗に倣ってぼくも「ルカ」と呼ぶようになった。愛らしい名前であろうと思っている。一方でこの空太はソラ。二人を同列に扱わなければならないと、無意識のうちにぼくは考えるのだ。

「そ、ら……」

「嫌?」

 まだぼんやりとしていたが、ソラはふるふると首を振った。

「じゃあ、これから君のことはソラって呼ぼう。……ソラはぼくのこと何て呼ぶ?」

 昴星は「おにーさん」と呼んでくれる、流斗は「お兄ちゃん」だし、諭良は「お兄さん」で、由利香は「お兄さま」だ。見事に全員少しずつ違う。

 でもって、ルカはぼくを「先生」って読んでくれる。

「ソラは……、セックスがしたいって言ったね。でもセックスのことはまだあんまり知らない?」

 こく、とソラは自信なさげに頷いた。

「じゃあ、……そうだな、ぼくはソラの、先生になってあげるよ。ぼくの知ってることをソラに教えてあげる。だからぼくはソラの先生」

「せ……、んせ……、い」

 うん、とぼくは頷いて見せる。

 ずっと、怒ったり泣いたりしていたソラだが、

「先生……」

 その笑顔は、可愛い。本当に抱きしめてあげたくなっちゃうぐらいに可愛いと、ぼくは思った。

「ソラ。先生には他に恋人がいる、……何人か、いる。でもソラのこともきちんと大事にするし、ソラが幸せになれるよう、努力する。……ソラは、それでいい?」

「……ん」

 よかった、と安堵するような、ぼくは穢れた大人だった。ソラの髪を撫ぜて、「いつか、紹介してあげるよ、ソラのこと、ぼくの恋人に。……きっと、ぼくの恋人たちもソラのことを大事に思うだろうし、好きになると思う」言う。それはまず間違いないと、ぼくは信じられた。

「じゃあ……、ソラはこの可愛いぷにぷにのおちんちんが硬くなったことあるの?」

 ソラはずっと小さいままぼくにいじらせるおちんちんを見下ろして、「ん」と応える。

「ボッキ……、したこと、ある。せーえきも、ちゃんと出る」

 それは、ちょっと驚きだった。

「へえ……、じゃあソラはおちんちんで気持ちよくなるやり方を知ってるんだ?」

 四年生と考えれば早い。しかし流斗の精通は三年生のときだったと言うし、ルカだって流斗によって四年生にして精通を迎えている。色んな面で常識にかからない子が多い。

「じゃあ、……ソラはぼくにおちんちんを気持ちよくしてもらいたかったんだ? ぼくのことを好きになって、ぼくとそういうことがしたかった?」

 恥ずかしそうに、小さく頷く。

「ソラは、男の人が好きなの?」

 それを罪と感じるのか、ソラはまた頷いて、「む、昔は、そんなこと、なくって、でも、……ちんちん、見ると、ドキドキするし、……その、……おれ、ちんちん好き、ねえ、先生の、……先生のちんちん、おれ、見たい……」途中からは勢いづいて、言った。

「おれ、ちんちん気持ちよくするやり方しってるよ。ちんちん舐めると、気持ちよくなる、……おれ、先生のちんちん舐めたい。ぜったいだれにも言わないから、先生のちんちん……」

 この子、本当にゲイなんだ……。一体どうして、こんな小さな子が同性愛に目覚めることになったのかは、ぼくの想像の範疇を超えている。ぼくとしてはただ、空から降って湧いた、おちんちんの小さな男の子……、という事実だけありがたく受け止めていればいいのだろう。

「……わかった、いいよ。大人のを見るのも勉強ってことにしなきゃね。でもその前に、やらなきゃいけないことが二つあると思うんだ」

「やらなきゃいけない……、ふたつ……?」

「一つは」

 本当に愛らしい触り心地をたっぷり味わわせてくれたおちんちんから指を離して、「うんちしてからお尻拭いてないよね? 綺麗にしないと、またパンツ汚しちゃうよ?」

「あ……」

 告白からその受諾まで、もうそのことで頭がいっぱいだったのだろう。本当にソラは自分が排便したことを忘れていたようだ。

「頑張ったね、ソラ。ぼくに告白しようと思って、恥ずかしいのいっぱいガマンしてたんだ?」

「……っん。……その、……恥ずかしいの、見せたら、好きになってもらえるかもって……」

 その考え、感覚、「ぼくだけは、そうだよ」と答えるのが最適だろうか。

「でも、他の人はどうかな。ぼくはソラのこと可愛いって思ったし、すっごいえっちな子だって思ったけどね、うんちの臭いが苦手な人も多いだろうし、男の子のおちんちん見るの好きじゃないって人もいるだろうから」

 まあ、どうかな。自分がショタコンだから微妙なとこだけど、男の子のおちんちん見るって状況に「好き」も「嫌い」もないだろう。

「それにね、世の中にはおちんちんが好きでも、ソラのことを好きになってはくれない人だっている。だから、約束しようね、ソラ。おちんちんは大事なところなんだから、ちゃんと信じられる人にしか見せないこと。いい?」

 ソラは、流斗ほど度胸もないだろう。いや、男を落とすために「見てくださいっ」ておちんちん見せるっていうのは度胸なくちゃ出来ないことだけども。

 流斗は賢くて、強い。仮にどんな恥ずかしいことになってもそれを平気で乗りこなせる。けれどソラにそれはできないだろうから、ぼくはきっちりと言い聞かせてからポケットからティッシュを取り出して手渡す。

「ぼくはソラのうんちするところ見られて嬉しいと思ったよ。ソラが可愛いって思った。……拭くところ見せて。上手に出来るかな?」

 ソラはこっくり頷いて、足の間に前から手を突っ込む。グリグリとしっかり拭いて、紙の汚れを確かめて、もう一枚。

「拭けた?」

「ん、……拭けた……」

「そう。じゃあちゃんと拭けたかどうか、見せてごらん」

 ソラは恥ずかしそうに立ち上がり、ぼくにお尻を向ける。引き締まった臀部、両の親指で割り開く。いかにも見られ慣れていない様子で、未発達な蕾が微かに震える。

「うん、上手に拭けてるね。今みたいにていねいに拭いたら、パンツにうんち付いちゃうようなことにはならないと思うよ」

 立ち上がって、短くてさくさくとした手触りの紙を撫ぜる。ぼくの恋人たちの髪は、……昴星やルカはしっとりと長めだし、諭良は長くはないがさらりとしている。そして流斗は天使のふわふわヘアーだ。短い髪も、男の子らしくて悪くない。活発そうな体型によく似合っている。

「せんせ、……あの、二つの、もうひとつって……?」

「ああ、そうだね。……目をつぶって」

 髪をしばらく撫ぜて手のひらで楽しんでから、前髪が短いせいで丸出しのおでこに、涙の跡が乾いたほっぺたに、そして唇に……、キスをする。

「これで、ソラもぼくの恋人だよ」

 ああ、トータルで六人目の。平均年齢に関してはもう考えないことにしよう、そうだそうしよう。目の前の子を一人ひとり幸せにして行くのがきっと、ぼくに与えられた使命なのだ。

 ……そうとでも考えないと、罪深さに慄き潰れてしまいそうである。一人であっても問題なのに六倍となったらもう、ちょっとやそっとじゃ出て来られないぞ……。

「……んっ、恋人っ……」

 ぎゅう、ぼくの首に抱きついてしがみついて、ソラが嬉しそうにしてくれるならぼくの存在は罪を超える。

「ソラ、ぼくの見たいんじゃなかったっけ? ……あとさ、下すっぽんぽんで寒くない? まあ、ぼくはソラのおちんちん見られるの嬉しいから、ソラがいいならそのままでもいいけど」

 ソラは、少し口ごもる。しかし、結局下着を穿くことは選ばなかった。

「先生は……、おれのちんちん見んの、うれしいの……?」

「うん。……ぼくの知ってる男の子のおちんちんの中で一番小さい。でもおちんちんっていうのはさ、大きい小さいで価値が決まるものじゃない。男の子に、一人に一つずつ付いてて、全部同じように価値があるものだよ」

 じ、と自分のそこを見下ろして、「そうなの、かな……」摘まんで、引っ張る。

「……おれ、ちんちんちっちゃいって……」

「誰かにそう言われたの?」

「ん、ううん、違うけど、でも、恥ずかしいちんちんだから、……おれが恥ずかしいって思うの見て、先生が、うれしいのかなって……、うれしい?」

 正確に言うと「恥ずかしいところ」そのものも見せられれば嬉しいのだけど、それとともに「恥ずかしい」と思っている素振りも嬉しいのだ。昴星や流斗みたいに何の衒いもなく見せてくれるのも、もちろんかなり心にグッと来るものがあるのだけれど。

「嬉しいよ。……もっとよく見たいけど、順番だね、先にぼくの、見たいよね?」

 こく、とソラは頷いて、立ったままぼくの股間に目を向ける。スーツ上下、の下の方。正直に言ってもう、ずいぶん限界である。ベルトを外し、トランクスを目にしただけで、

「わ、わっ……、でけえ……」

 ソラが目を丸くする。「なんで……? おれの……、ちんちんとか、うんことかで……、先生、ちんちん、ボッキしてんの……?」

「そうだよ。ソラの恥ずかしいところで勃起してる。……一応言っておくけど、……大人のここは、ソラのみたいに可愛くないよ? ソラは大人のここが勃起してるところなんて見たことないよね?」

「あ、あるよ、……一回だけ、だけど」

「あるの? ……誰かのを見たってこと?」

「……写真で」

 ああ、そういうことか。同性愛者の少年だから、そういう画像を見たことがあっても不思議ではないか。でもそういう話を聴くと、何だか子供にネットをやらせることの危うさを感じてしまうなあ。

「先生、早く、ちんちん見せて……」

 膝をつき、ソラはぼくを見上げる。男の子に「見せて」って言われるのは、正直に言って、いつでも嬉しいことだ。自分ではそう立派であるとも思っていないけれど、

「はい、どうぞ」

 って見せれば、

「うわ、ぁ……」

 そういうリアクションをしてくれる。妙な自信が芽生えそうになってしまう。

「でっ、けぇ……、先生……、大人の、ちんちん、すっげえ……」

 唇から白く息が漏れている。しばらく宙を舞っていたが、「触ってくれる?」とぼくが訊けば、恐々とした手つきで、そっと、指を当てる。

「すっげえ……、すっげえ、かたくて、熱くなってるっ……」

「そうかな……、ソラのおちんちんも硬くなるでしょ?」

「で、でも、おれの、こんな熱くないよ、おれのより、ぜったいかたい……」

 ぼくのペニスの手応えに、ソラはほとんどすぐに虜になったようだ。ぺたぺたと手のひらで質感を確かめ、顔を寄せて観察している。

「……ソラは、『フェラチオ』ってわかる?」

「ふぇら……、口でするやつ……?」

「うん、すごいね、ソラは詳しいんだ?」

 んく、とソラが唾を飲み込む。その視線はずっとぼくの男根に当てられていたが、恐る恐る顔を上げて、

「フェラ、……っていうの、して、いい? 先生の、ちんちん、……おれちゃんとできるかわかんないけど、いっしょうけんめいやるから、してみたい……」

 一生懸命をそのまま表情として形容するならそういう顔だろう。小学四年生の少年の、全力思い切りを前にして、

「嬉しいよ」

 ぼくの手のひらは自然とソラの髪に乗った。

 ソラが口を開け、赤い舌の先を、ぼくの砲身へと当てる。

 そっと、そうっと、先端に向けて一度舐めたことで、ソラは同性愛行為へ思いっきり踏み切った。

「ふんげぇ……、おれ……、せんせぇのふぃんふぃんなえへう……」

「うん、舐めてもらってる。嬉しいね……」

 髪を撫ぜると、恥ずかしそうに微笑む。強気な表情が似合う少年ではあるが、その笑顔は清純そのもの。ぼくの反応を伺うように三白眼気味の大きな目を瞠り、陰茎に濡れた唇を当てる。それから勇気を出したように再び舌を出して、れろれろと這わせ始めた。

「せんせ、……ちんちん、ひもちぃ……?」

 率直なことを言うならば、……まあ、他の子たちに比べれば、まだまだ拙い。とはいえそれは昴星たちがちょっと異常なレベルで巧みすぎるのであって、この子が悪いんじゃない。

 だから、

「気持ちいいよ。……ソラ、あーんって口開けて」

「ん。……あー」

 そこそこ整った歯並びにあって、犬歯が尖っているのが愛嬌だ。歯を立てられるかもしれないなという躊躇いはすぐに消して、ぼくはソラの口の中へと自分のペニスを挿入する。

「んっ、んん……!」

「……苦しい?」

「ん、んーんっ」

 強気に、どことなく強情やソラは応える。

「そしたら、……ソラ、もし出来るなら、そうやって口に入れたままで、舌を動かしてみて……」

 ソラの通う小学校の担任の先生がどんな人か、ぼくにはもちろんわからない。ただ、……まあ正直なところあまり勉強が得意そうには見えない子だけれど、「上柚木空太」という男子児童ってかなり可愛く思われているんではないだろうか。

 だってほら、ぼくとしてはかなり難しいリクエストをしたつもりなのに、ソラはぼくの期待に応えようと心をこめて舌を動かしてくれる。即座に射精させてもらえるようなものではないにせよ、その気持ちがぼくには嬉しい。繰り返し繰り返し髪を撫ぜて、

「ソラは、……ぼくの精液飲みたい?」

「ん、……あぷ」

 口を外し、……顎もだいぶだるいだろうに、「飲みたい! せんせぇのせーえき、飲みたい」ごく素直に答える。

「わかった。……じゃあ、もうちょっとさっきみたいにお口開けててもらっていい? ソラのお口にぼくの精液、出すからさ……」

 歯科医師、子供の天敵だろう。見た限り、ソラには虫歯はないようだ。「目に……、入らないように、閉じててね」ぎゅ、と目を閉じるとますます、歯医者さんに来た子供のように見える。

 ソラの顔ばかりに目が行っていたけれど、……その下半身にて、小さな小さな、柔らかいおちんちんがぴんと上を向いていることに、やっとぼくは気付いた。

 こんなこと、初めてだろうに……、それでいながらソラが感じる興奮は本物だろう。きっと、……いつかの諭良がそうであったように、こういうことを、したくてしたくてたまらなかったのだ。念願が叶っていま、男の性器の快楽が極まる瞬間を待ちわびている。

「ソラ、……いい? お口に出すよ……? でも、不味かったら飲まなくてもいいんだからね……?」

 柔らかな唇に先端にを擦り付けるようにしながら、ぼくのヒートアップした右手は止まらない。息が詰まるような、激しい興奮、まだ何も知らない男の子の口への、……。

「ぷぁっ、……あ……あ……?」

 それでも、ソラの髪や顔にぶちまけないで済ませられたことばかりには、多少、安堵する……。開かれたままの口、覗ける紅い舌の上、今日ぼくがソラと出会ってこの子が見せてくれたお尻おちんちんオシッコうんち、健気な告白までの一連の流れによって蓄積した精液が、ゼリーみたいに濃く揺れる。

 片目をそっと開けて、ソラが口を閉じる。

「んぉ……」

 舌の上に乗った液体は大人の味だ。だから、吐き出したって構わないのに。

「ん、……んぐ、ふへ……っ」

 ソラは思いっきり飲み下してしまった。

「すごいすごい、ソラは本当にすごいね、初めてなのに飲めちゃったんだ?」

 思わず賞賛の言葉が出てしまった。空太は目をパチパチさせてから、

「……へへ」

 と、ちょっと得意げな笑顔を見せた。男の子のそういう笑顔には、男の子のいろんな良さが凝縮されているように思う。それは昴星のように少女顔の娘でも、諭良のように美少年顔でも同じこと、だから当然ソラも可愛い。

「でも」ちょっとだけ、その笑顔をソラは陰らせる。「ほんとは、……ちゃんと最後まで先生のちんちん口でしなきゃいけないんだよ。ふぇらって、そうゆうもんだろ?」

「まあ、ね。……でも、初めてなのに上手に舐めてくれたと思うよ? ちゃんと飲んでくれたし、ぼくは嬉しかった」

 くしゅくしゅと髪をなぜて、「ついでに言えば、可愛かった。……ぼくのをフェラして、おちんちんビンビンにしてるソラ、すごく可愛かったよ」膝をつく。

「え? あっ……」

 ソラはどうやらぼくに指摘されるまで、自分が勃起していたことにさえ無自覚でいたようだ。小さいものは小さいなりに元気な様子でいる。勃起時の膨張率は昴星よりだいぶマシで、大きくなっていれば流斗ともいい勝負かも知れない。それでも皮の余り方やスマートな細さに、諭良を髣髴とさせる要素を持った幼いおちんちんである。

「ソラのおちんちん、もっとよく見せてもらってもいい?」

 ソラは頬を染めて、でもこくんと頷いて立ち上がった。

「ソラは、タマタマも小さいね。……射精しても、まだあんまり精液は出ないんじゃない?」

 ひくっ、とそこを震わせて「ん……」と応える。

「おちんちん、じーっと見られるの恥ずかしい?」

 小さく、素直に、「すこし……」ソラは言った。でもすぐに、

「でも、あの、せんせ、に、見せて、先生が、うれしい、なら、……いい」

 唇から息を漏らして言葉を継ぐ。

「そっか……。ねえソラ、ソラのこと、写真に撮ってもいい?」

「え……?」

 不安そうに、初めて答えをためらった。

「もちろん、誰にも見せないよ。……ただね、ソラのおちんちん可愛いしさ。……ソラはぼくが側にいないときにも、いつでもぼくがソラのおちんちん見てるっていうの、どうかな。……恥ずかしくってどきどきするんじゃないかな」

 ぼくはソラの答えを待たず、懐からスマートフォンを取り出す。明かりをつけて、動画の撮影を始めた。

 ソラは戸惑った顔のまま、それでもぎゅっと握ったシャツの裾を離そうとはしない。

「ソラ、撮ってるよ。……ソラの可愛いおちんちん丸見えだよ」

「あ……、う……」

「ソラのおちんちんピクピクしてるのもよく見える。白くて可愛い」

 ソラの息がまた、震える。どうしよう、自己紹介でもしてもらおうか、そう思ったところで、

「せんせ、……おれの、ちんちん……、ちんちん……」

 ぽつ、ぽつ、言葉を紡ぎ始め、

「お、おれっ、せんせぇに、ちんちん、撮って、もらって、うれしい……、せんせぇにちんちん、もっとみてほしい……」

 腰を、ひくっひくっと動かし始めた。

 勃起しているから、おちんちんは揺れない。タマタマがほんの僅かに震えるだけだ。しかしそれもまたいとおしい。

 その動きが恥ずかしいものであるという自覚はあるのだろう。しかしぼくを喜ばせようと思った結果、少年は何も知らないままぼくの一番好きな腰振りダンスを披露してくれているのだ。これは、感動的と言ってもいい。

「せんせぇ、おれ、せんせえが、好きっ、先生のちんちん、おれ、もっとせんせぇのちんちん気持ちよくしたいっ、おれのちんちんみてほしいっ」

 ふるっふるっとタマタマが揺れる。

「可愛いな……、本当に」

「ひゃ!」

 衝動的に立ち上がり、くるりと身体を回して後ろから抱き締めた。「おちんちん見て欲しいんだ……? じゃあ、いっぱい見せて。ソラの恥ずかしいって思うところ、……ソラはオナニーしたことある?」

「お、な……」

「自分でおちんちんいじって気持ちよくなること」

「さ、さっき、先生がしてたみたいな、やつ……?」

「うーん、まああれは、ソラにお手伝いしてもらったっていう言い方も出来るけどね。……ソラがオナニーしたことないなら、やり方教えてあげようか?」

 何てったってぼくは「先生」だからね。

「持ってて。自分の恥ずかしいところ、ぼくに見せると思ってしっかり撮ってね?」

 その両手に、しっかりとスマートフォンを持たせる。ソラはためらいがちに、……でも、どうやらその行為そのものにも(きっと、間違っているという自覚を持った上でも)興奮を催すのだろう、くん、とおちんちんを震わせて見せた。

 ぼくの右手、もう触りたくって仕方がない。腰から手を回して、健気ささえ纏って勃起した幼茎を摘まむ。

「あ……」

「ソラのおちんちんも硬いね。それに、すごくあったかい」

 ソラのおちんちんは先っぽが濡れていた。マシュマロみたいな触り心地のそこをいじると、くちゅっと小さくしかしはっきり音が鳴る。

「せん、……せんせえが、……ちんちん、さわってる……っ」

 ソラは震えた声で言う。「おれ、の、ちんちん、……しっこ付いてる、ちんちん……」

「うん。ソラのオシッコするところは可愛かった。オシッコしてるおちんちんも可愛かったし、いまの勃起してるおちんちんも可愛いね」

「せんせ……、おれの、ちんちん、しっこするとこ見んの、好き……?」

「うん、好きだよ」

「いま、……いまも、見たい……?」

 おや、と思う。寒さからか緊張からか。昴星や諭良のようにだらしないおちんちんというわけではないだろうから(というか、あの二人がちょっと極端過ぎると言えば過ぎるね)何らかの都合で近くなっているだけだろうか。

「出してくれるの?」

 指を離す。ソラは、ふーっと息を吐いて整えて、

「んーっ……」

 と、お腹に力を入れる。……ちょろちょろ、びゅっ、と、まあそんな大した量ではなかったけれど、余り皮から愛らしい噴水が飛び出した。

「可愛い」

「あ」

 確信を籠めて言い、雫の伝う茎を摘まんだ。「せ、せんせっ、ダメだよ、しっこ……」

「ん? ああ……、気にしなくていいよ。恋人のオシッコが汚いわけないでしょう?」

 また、ピクンという脈動をぼくに伝えてきた。先端から拭った尿液を、茎へと塗りつけていく。一度だけで終わらせるつもりはない。それでは、初めて「恋人」が出来て、そういう行為をするに至った男の子に悪いというものだ。

「やぁ……、せんせ、ちんちんっ、おれ、しっこくさくなっちゃうよぉ……」

 本気で困惑した声を上げる「恋人」に、

「あとで先生がちゃんときれいにしてあげるよ。それに、……ソラのオシッコは臭くないよ?」

 と告げて安心させる。事実として、ソラのそのから噴き出す液体は昴星ほどは臭くない(それだって、昴星がちょっと特別なのだが……)し、しかしだからと言ってその臭いが魅力的なものではないということでもなく、要するに「男の子のおちんちんから出たオシッコ」というその時点、十分過ぎるくらいプレミアムでスペシャル。しかもそれ、廃物利用だからリユースでありエコだ。

「しっこ……、ちんちんしっこまみれ、なっちゃった……」

 オシッコの臭いは、……いや、唾液や汗もおおよそそうだろうけど、出したてと乾いた後とではずいぶん違う。一番臭いが強まるのが「生乾き」の状態であることは言うまでもないことだろう。その臭いは主に何処から生じるかと言えば、……オモラシして少し経ったブリーフ、うんそれも正しい、もうひとつ、ほぼ恒常的にその臭いがする場所は、男の子たちの包茎おちんちんの、皮の中だ。

 毛細管現象と言う。残尿はごく狭い、少年の皮と亀頭粘膜の間に入り込み、いつまで経っても乾かないどころか熟成していく。そこで、「恥垢」……まあ、いわゆる「チンカス」と呼ばれる垢が生じ、混じり合い、とにかくこれがすごい臭いの原因となるわけだ。

 断トツにというか、群を抜いて臭いのが昴星のものであることは言うまでもないだろうけど、臭いの控えで基本的には清潔でさえある流斗でさえ、おちんちんの皮を剥くとムッとした臭いを隠し持っていたことを報せる。

 ……何の話かと言えば、

「ソラのおちんちん、中も外もオシッコ臭くなっちゃったね、……ここまで臭ってくる」

 乾きかけのオシッコの臭いが、甘美だということ。繰り返しになるけど、臭ければ臭いほどいいというわけではない。それぞれ個性とでも言うべきものだ。

「しっこ、……の、におい……」

「そうだよ、ソラのオシッコの臭い。でもソラのおちんちんは嬉しそうだよね、皮剥いてみようか。ソラは普段お風呂のとき、中は洗う?」

 自信なさそうに首を振る。「中、何か怖い……、ヒャッてするから……」真性包茎だから、それはしょうがないことだ。

「先生は、なんで皮がむけてんの……?」

「もうちょっと大人のおちんちんになったらソラのおちんちんもこうなるよ」

 そうっと、怖がらせたり痛がらせたりしないように、剥く。

 鈴口が明らかになった。

 顔を覗かせられる亀頭の面積は、本当にごく僅かだ。オシッコの出口の周り、五ミリも行かない。これまで見てきた少年の亀頭としてはもっとも小さい部類で、昴星と同じく包皮の上からカリの輪郭を伺うこともできない。ただそこはグシュグシュに濡れていて、やはり垢も付いていた。

「見える? ちゃんと撮ってる?」

「ん……、しっこ出るとこ……、んひゃ!」

 そっと、そうっと指を当てる。「オシッコだけじゃない。ソラがエッチな気持ちになってくるとね、おちんちん硬くなるだけじゃなくってこういうぬるぬるしたのが出てくるんだ」

「……しょっぱい、やつ……?」

 さっきぼくのを口にしたのを覚えているらしい。「そうだよ、オシッコもしょっぱいけど、オシッコとは違ったしょっぱくて、ぬるぬるしてる、ソラのおいしい『ガマン汁』だ」

 皮を閉じ、先に向けて皮を伸ばすと中に溜まっていた腺液が皮の隙間から滲み出てくる。それも陰茎包皮全体に塗り広げて、

「ほら、ソラのおちんちんピカピカ光ってる。ソラのオシッコとガマン汁でピカピカしてるの、すごく恥ずかしい見た目だと思うよ、……でもぼくはこれ可愛いって思うし、ソラも恥ずかしいとこぼくに見られるのは嬉しい?」

 はあっ、と息が大きく弾んで、「うん……」とソラは頷いた。

「おれ、先生にちんちん見られんの、うれしいよ……、先生が、おれのちんちん見て、うれしいの、うれしい……、あんっ」

 つまんでちょっと動かしただけで、透き通った高い声を弾ませる。

「気持ちいい?」

「ん、ん、きもちぃ……、せんせぇ、ちんちんさわんのきもちぃよ……、せんせいのっ、ゆび、ピカピカちんちんくにゅくにゅひてる、ひ、ん、ちんっ、ちんちんきもちいっ、……お、おっ、せんせぇ、せんせっ、ちんちんビクビクしゅるっ」

「いきそう? ……精液出るのを『いく』って言うんだよ」

「うんっ、うんっ、いきそうっ、き、キンタマきゅんきゅんするっちんちんビクビクひてるよぉっ、おっ、し、しっこ出そうっしっこ、しっこじゃなくてぇっ」

「精液」

「せーぇきっ、せーぇきっ出るっ、ちんちんいくっきもちぃっきもちぃっ、い、いぃいっんんっ、ん! んーっ」

 自分の射精を撮影しているのは、ぼくにもよく見えていた。ソラのおちんちんの先からは少年らしい勢いでどくんと精液が飛び出す。右手で愛撫を続けながら左手でそれを受け止めた。あったかい、というよりは熱さすら感じる精液の量は決して多くはない。しかし、さっきぼくが出したものみたいにずいぶんと濃い。

「気持ちよかったね……、ほら、ソラの精液だよ。濃くて、べとべとしてる」

「は……、う……、お、れの……、せーえき……っ、ひゃう」

 揉み込み擦り付けるように、まだ痙攣の収まらないおちんちんをその手のひらで包んであげてから、カメラを右手に受け取る。

「ソラ、こっち向いて。おちんちんもっとよく見せてよ」

「は、あ……、ちんちん……、おれの……」

 ソラは赤い顔でぼくに向き直り、シャツの裾を胸まで捲り上げた。少しずつ力を失い、徐々に下へ向くおちんちんを惜しげも無く披露しながら、

「せんせぇ、に……、オナニー、してもらった……、ちんちん……、きもちよかったぁ……」

 まだ粘液の艶が光るそこに受けた感覚を言葉にしていく。

「ねえ、先生も、……先生も、ちんちんきもちよくなると、お尻のとこ、……ギュッて、なる……?」

「なるよ。ソラのお尻、ギュッてなってたんだ?」

「ん……、気持ちいいの、あると、すぐギュッてなって、ちんちんビクンってなんの……、しっこガマンするみたいにしてんのに、しっこ出そうになって、どんどんきもちよくなって、もれちゃいそうになって、でも、気持ちよくって、……恥ずかしいけど、先生見てるから、……もう、しっこでもいいからって……、なってた……」

 まだまだ浅い経験であるがゆえに、紡がれる言葉の幼さが愛おしい。

「そうだね、ソラのおちんちんから出るなら、オシッコでも精液でも好きだよ。ぼくとこういうことするときはどっちもガマンしなくていいんだからね?」

 こくん、とソラは頷いて、「へへ……」とはにかんだように笑い、自分の股間を見下ろした。

「あんなガチガチだったのに、ちんちんまたちっちゃくなっちゃった。でもすっげえべとべとしてる……」

「他のところはさらさらなのに、おちんちんだけ濡れてる。……何だかオモラシしちゃったみたいだね」

「ん……」

 スーツが多少汚れてしまうけど仕方ない。あぐらをかいて座って「おいで」と招く。流斗と同じくらいの安定感で、ソラはぼくの膝に収まった。

「先生のちんちん、またボッキしてんの……?」

 下着の上からそっと手のひらを載せてソラは訊く。

「ソラの恥ずかしいところ見てたらね。……あのさ、ソラはもうオネショしたりはしないんだよね?」

 ん、とそれははっきり頷く。小さなおちんちんだけど、そこんところはちゃんとしているぞ、という自信のようなものが感じられた。

「ソラが最後にオネショやオモラシしたのっていつ? 内緒にするから教えてくれる?」

 膝の上の少年はもじもじとシャツの裾をいじっていたが、「誰にも言わない?」ぼくの目を見て、そこに真実を見出そうとする。

「言わないよ。ぼくの、他の恋人にも黙ってる」

「……じゃあ、言うけど、……オネショは、ほんとに長いことしてないよ。最後にしたの、多分幼稚園よりもっと前だと思う」

 世の中にはいろんな子がいる。もうすぐ中学生なのにオネショが治らない子を二人知っているし、意図的にオネショをしちゃう子も一人知っている。そんなわけで、

「偉いね。ソラはしっかりしたおちんちんしてるんだ」

 賞賛の対象にすらなってしまう。

「……でも、その、オモラシは、……言わない?」

「言わない。オネショより最近なの?」

 恥ずかしそうに、ソラは頷いて、

「きのう」

 驚くべき答えを口にした。

「きのう。……え、きのう?」

「せ、先生、恥ずかしいよ……」

「ああごめん……」

 きのう。……一体きのうこの子のおちんちんに何が起きたのか、何ゆえオシッコでパンツを濡らすことになってしまったのかということについては、非常に興味がある。しかしあまりしつこく訊くのは可哀想だ。

「そうか……、大変だったね。でも、きっとソラのオモラシは可愛かったんだろうね」

 どうせ断られるに決まっているから、冗談めかして、

「いつか見てみたいな」

 言ったのに、

「……先生と、二人っきりのとこで、先生だれにも言わないなら……」

 ギュ、とぼくのシャツのお腹あたりを握って、ソラは言った。

「……いいの?」

 ソラはまだもじもじして、

「……先生、見たいんだろ? おれの……、しっこ、漏らすとこ……。せ、先生だから見せるんだよ? おれ、そんなしっこ漏らしたりしないしっ」

 ああ、愛おしい子。ぼくは抱き締めてキスをして、「ありがとう。次また会えるときが、心の底から楽しみだよ」囁いた。

「おれ、先生が好きだから。恋人になってもらえて、すげえ、うれしいから、……だから、……先生の喜ぶこと、したいよ」

 この子の目にぼくがどう映っているのかは、全くわからない。しかしこの子の言葉が本気のものだということはわかるし、そこから導き出される仮説としては、ぼくという人間そのものよりもずいぶん、相当、ものすごく「いい」イメージなのだろうということ。

「じゃあ、……ソラ、おちんちん綺麗にしてあげなきゃね。かゆくない?」

 すっかりおとなしいフォルムになったその場所は、指を当てるとぺとぺと吸い付くようだ。こうして膝に乗せているだけで、尿と精液の乾きかかった臭いが立ち上ってくる。

「よいしょ」

「わあっ」

 シックスナイン、一番かどうかは微妙なところだし全部が一番とも言えるけど、それでもトップクラスにいい体位であることは間違いない。

「ああ、ソラのお尻、やっぱり可愛い」

「ふゃっ……」

 遠慮なく割り開いて、なんとなくだけど流斗やルカ、同い年の二人に比べて小さくピンク色の度合いが高いように見えるアヌスを覗く。ついさっき、細い便をたくさん落としていたところだ。もちろんちゃんと拭いてあるのでもう綺麗。ピンク色が余計にいやらしいように見えるけど、その分傷つきやすそうにも見える。……入れるのはもうちょっと先のことになるかもしれない。

「せ、んせ……」

 視線を緩めれば、小ぶりなタマタマと更に小さなおちんちんがぷるんと揺れている。

「恥ずかしい?」

 こく、と頷く。でも恥ずかしいの、嬉しいんじゃないの? そう訊こうと思ったら、

「先生が……、可愛いって、ゆってくれんのはうれしいけど……、でも、おれ、あんま可愛くない、よ……」

 なんて言う。男の子のこういうところが可愛い、とぼくは信じている。女の子と違って「可愛い」が自己評価項目にないのである。

「でも、ぼくはソラが可愛い。……ほら、ソラのこと可愛いって思うからぼくも勃起するんだ」

「んー……、うーん……」

 流斗だと、「可愛い」を自分に向けた褒め言葉だと認識して「えへへ」と嬉しそうに笑うのだけど、まあ、わりと男の子っぽい男の子のソラであるから、きっと「かっこいい」の方が嬉しいんだろう。そこらへんはまあ、仕方が無い。この子の価値観というものがあるのだし。

 ともかく、

「……じゃあ……、もうあまり時間もないよね? ソラ、そろそろ帰らないといけないんじゃない?」

 そういうことが気になる時間帯だ。知り合ったばかりの男の子、昴星や諭良のように家庭の事情で時間の融通が効いたり、流斗のようにご両親も公認の付き合いというわけでもない。だから、そろそろ解放してあげないと。

「ソラのおちんちん、ぼくにくれる?」

 抽象的な言い方になったけど、ソラはきちんと理解する。

「ん、んっと……、こう……?」

 もうオシッコも精液もすっかり乾き切って、ただ臭いだけにその余韻を残すか細い陰茎をふるふるさせながら、ぼくの口に近付ける。鼻を擽り、無意識のうちにぼくに臭いを嗅がせて、……ああ、いい臭いだ。昴星に近いけれどさすがにもう少し薄くて、嗅ぎやすい。それでもはっきりと、「男の子のおちんちんの臭い」であることを告げて、ぼくを興奮させる類の。

「じゃあ、ソラのおちんちんにフェラしてあげようね」

 首を上げて、一口に収める。小さいから、タマタマとおちんちん、丸ごとだ。

「ふあ……あぁ……っ」

 オシッコのしょっぱさ、精液のまろやかさ。両方がミックスされた味をまとい、まだほんとうに柔らかくて愛らしい舌触りのおちんちんをぼくに味わわせながら、ソラは尻尾の付け根を撫ぜられた猫のように震えながら背中を弓なりに逸らした。まだ舐めるという行為だけでは鋭い反応は示せないほど幼くて、でもその行為が「フェラチオ」という、要するに「セックス」に続く行為であるということを認識するがゆえに、ソラは甘い声を漏らす。

「せんせぇ……、せんせぇが、ちんちんなめてる……っ、しっこいっぱいついてるのに、おれのぉ……」

「……うん、思ってた通りだ。ソラのおちんちんは美味しい」

「でも……っ、しっこ……」

「ソラのオシッコも精液も美味しいよ。すごく、すごく美味しい」

「……しっこ……、おれの……」

 再び吸い付いたところで、むく、と舌先に覚醒を感じた。

「あ、あ……、ちんちん、おっきくなってきてる……」

「ん……、オシッコ美味しいって言われて嬉しいんでしょう?」

「ん、わかんなっ……、でもぉ……、ちんちん、ボッキする、ボッキ、ちんちんボッキっ……」

 一度始まってしまえば、もうぼくの舌はソラにとってはおちんちんを拭い清めるためだけの意味ではなくなる。「美味しい」とぼくが言った精液を、ぼくの舌へと送るために……。

 完全に「ボッキ」すると、さすがにタマタマまでは口に入れていられない。茎だけを舐め回しながら、ソラの手が、……恐らく「そうしなきゃ」って思ってくれたんだろう、ぼくの勃起へと伸び、指を絡みつける。まだオナニーをしたことのない子が、

「ちんちん、せんせぇの、すげえ、すっ、ンッ、げぇ、あついっ、ガチガチっ……んぉ、おっ、おはっ、す、すわれへるっ、ひんひんんっおれのぉ、しっこちんちんっ、せんせぇえっ」

 不慣れに、健気に、ぼくを扱いてくれている。それだけでもう、フェラチオされるのと同じほどの快楽をぼくは感じることができる。ソラの思いがこもった手コキは、誰よりそれが上手な(というか、プロの)由利香のそれにも匹敵する快感を生み出すのだ。

 口の中に精液ともオシッコとも違う塩味がジワリと広がった。

「……ソラ、いきそう?」

「ん、いきほっ、おっ、ちんちんっ、ちんちんきもちっ、せんせっ、もっともっと、ちんちんにゅるにゅるがいいっ、ちんちんっ、ん、お、おおっ、お、ほぉっん、んっんぃっ、いっ、いくっいくっせんせっ、いくよっ、いくぅ、いくぅ! いくっ! いくぅう!」

 昴星に負けないぐらい恥ずかしい言葉を連呼して、ぼくの口へと一足先に、ソラの精液が鼓動とともに弾んだ。もうだいぶ薄くなってしまったけれど、でも、……やっぱり美味しい。少年とは全身かぐわしく、また美味なるもの。おちんちんはその焦点とも呼ぶべき場所である。

「ごちそうさま、ソラ」

「うあぁ……」

 そもそもソラはフェラチオされるのだって初めてだろう。優しく身体から下ろして、おでこにキスをさせてもらって、「どうだった?」と訊いてみる。

「あ……、う、……んっと……」

 ぺたんと座って、「なんか、……なんかね、やっぱ、きゅうってなって……、その、おれの、……きたないしっこちんちん、先生の口で、……気持ちよくって……」

「精液出たね」

「ん……、しっこちんちん、せーえきちんちんになった……」

 しっこちんちんって言い方、可愛いなあと思う。膀胱に蓄えられ、尿管を伝い陰茎から出る液体のことを「しっこ」って呼ぶのは、諭良と同じ。昴星に流斗と由利香は「オシッコ」って言うし、ぼくもこの子たちの前ではそう呼ぶけど、「しっこ」って呼び方も幼い男の子っぽい良さがある、間違いなくある。

「あの……、先生のちんちん、まだ、しゃせー、してない……」

「ああ……、まあね。ぼくは大人だからさ、ソラのより我慢強いんだ」

 しょんぼりと、「おれ、もっと上手になりたいな……」とつぶやく。

「先生がね、おれがね、したら、すぐ気持ちよくなって、せーえきすぐ出してくれるようになったらうれしいし……、おれのちんちんも、もっとせーえきガマンできるようになりたい」

 いまはまだ、その気持ちだけで十分すぎる。感謝をこめて髪を撫ぜたところで、

「ねー先生、せーえき、さっきの、おれもうちょっとがんばりたい。……ちんちんしゃぶっていい?」

 ぼくの股間に顔を近づけて、請う。願ったり叶ったりである。

「いいよ。……でも、無理しなくってもいいんだからね? 苦しくなったらいつでもやめていい」

「うん。……あのさ、さっきおれ、先生のちんちん手でしたの、……気持ちよかった?」

 それはもちろん、大いに。

「あのね、先生がさっきおれにオナニー? してくれたのの、マネしてみたんだ」

 ソラは腹這いになって顔を寄せながら言う。

「ちんちん、やっぱすっげえでけえ……、かっこいい」

「かっこいい?」

「うんっ、おれのちっちゃいのより、ぜんぜんかっこいい。形もちがうしさ、赤くて、先っちょのとこ全部出てて、ぴーんってしててつるつるでさ」

 その「つるつる」と亀頭を紅い舌がぬらりと這った。

「……ひもひぃ?」

 頷くと、嬉しそうに目元を微笑ませて口を開け、その部分を口の中へと吸い入れる。浅く咥えたその状態で舌をぬるぬると動かしながら、右手を添えて茎を扱き始める。

 少年なりの創意工夫、その結果、表現されるもの。

「気持ちいい……、さっきも気持ちよかったけど、もっと気持ちいいよ」

 ぼくが褒めると、ソラは一層勢い付いて舌の動きをエスカレートさせる。口元から、こんな純粋そうな子供の出す音とは思えない、いやそもそも男の子が出してはいけない類の音がちゅぷちゅぷと盛んに立つ。右手のスライドとあいまって。

 やすやすと、ぼくを追い詰める。

「大丈夫……? ソラ、……飲める?」

「んっ」

 手首や腕は、流斗とルカよりも太い。やがて誰より大きくなるだろう。しかしいまはそれでも、ぼくよりずっとか細い少年、足りない分は溢れんばかりの愛情に任せて。

 ぼくは射精する。

 ぴくっとその頭が動く。でも、促すようにしばらく舌を動かして、……やがてぼくのバウンドが収まったところで、口にしたままじいっと見上げる。

「……ありがとう……、気持ちよかったから、射精したよ」

 ぼくが言っても、どうしたらいいのかわからないような、戸惑った顔で見上げる。しかしすぐに思いついたのだろう。そうっと吸い上げながら口を外し、

「んー、く」

 その幼い口中を満たした精液を呑み込んだ。

「へへっ、先生のちんちん、気持ちよくできた!」

 誇らしげにそう笑って、「先生のちんちんもせーえきちんちんになったね」と唾液の光るぼくのペニスを撫ぜる。

「ソラが、頑張ってくれたからね。本当に気持ちよかった。っていうか、びっくりしたよ、上手だった」

「へへ。いまにもっとうまくなるよ」

 ひょい、と立ち上がる。おちんちんは半勃ち。しかし、もう帰してあげないと。

 今日だけじゃない。ぼくとソラには「次」がある。

「じゃあ、帰ろうか。……ソラ、足あげて」

「うん」

 黄ばんだブリーフ、……オシッコのシミとうんちのスジが付いた、ソラの汚れブリーフ。射精直後とはいえ、やっぱり魅力溢れるものだ。いやいやダメだぞと自分に言い聞かせて、ぴたりと上まで引き上げたところで、ソラは首を傾げて、

「先生、おれのパンツ見ておもしろいの?」

 ……ああ、じろじろ見ちゃったことがバレてしまった。

「面白いっていうか、……うん、可愛いなって思って」

 白状すると、「ふうん」と納得したように頷いて、

「次、先生いつ会えるの? おれ先生とまた遊べる? そんときにはこのパンツ、先生にあげる」

 もう、えっちな表情ではない。少年らしい意志の強さを感じさせる目をソラはしていた。

「そうだね……、あさっての、土曜日の午前中はどう? 昼からは」昴星たちと「予定があるから無理だけど、もしソラが空いてるなら」

「土曜の午前だいじょぶだよ!」

 嬉しそうな笑顔を見せてもらえて、ぼくも嬉しい。またこの子に会える、それが本当に、心の底から。

 最後にもう一度「キスしたい」とソラは言った。応じて、気を付けて帰ってねと手を振って見送ったぼくは、何だかニヤニヤしながら家路に就いた。


back