お帰りなさい、お兄さん

「おかえりなさい」って言葉がある。

 ……いい言葉だなぁって、ぼくはしみじみ思うのである。何を唐突に言い出したのだ男の子のオシッコの飲みすぎでとうとう頭がおかしくなっちゃったのかと思われてしまうかもしれないが、ともあれ「おかえりなさい」って言葉が嫌いな人なんてそうそういないはずだ。

「おかえりなさい」

 って言われたから、

「ただいま」

 って返す。こだまでしょうか、いいえ誰でも……、という具合にね。たった一つのやりとりだけで、一日の疲れも癒えてしまうような、不思議な力がある言葉だと、ぼくは思うのである。

 

 

 

「おかえりなさい、お兄さん」

 泊まりに行きたいです、という諭良のメールをぼくが受けたのは、前日の夕方のこと。明日だったらいいよと答えて、今朝は玄関のポストの裏に、スペアキーを隠しておいた。ちょっと不用心なことではあるけれど、盗まれて困るものといえばパソコンの中身ぐらいのものだし、諭良はきちんとした子だから心配していない。

 仕事を終えて午後八時に帰り着いた2Kの部屋には、ハーフの美少年がいる。それはあらかじめわかっていたことであっても、やっぱり素敵な光景だ。会社を出て、混んだ電車に身体をねじ込み、最寄り駅から家に帰り着くまで何往復もメールをやり取りし合って、……この幸せは別にどこにも行きはしないとわかっているのに、やっぱりぼくの足運びはいつもよりせかせかしたものだったろう。

「ただいま、諭良」

 そう言ったとき、ぼくの息は少し弾んでいたし、二月の夜でありながら少し汗ばんでさえいた。

「キッチン、お借りしました」

 キッチンっていうか、まあ、台所だね。諭良の住む、あの高級マンションにあるものこそ、そう呼ぶにふさわしい。

「ご飯、作ってみたんです。……お口に合うか、わからないですけど……」

 自分の家から持って来たのだろう、腰に巻いた黒いサロンがよく似合っている。……才斗にしてもそうだけど、これぐらいの男の子が料理上手っていうのは、何だかすごく格好いい。

「嬉しいな。何を作ってくれたの?」

「ハンバーグです、トマトソースの……」

 なるほど、爽やかなトマトの香りが室内を満たしている。

 驚くべきこととして、トマトソースのハンバーグを作った諭良の白いセーターのどこにも、ソースはねの汚れなんてついていない……、言っちゃあなんだけど、ぼくはそういう料理をする際、あっちゃこっちゃと汚してしまいがちだ。

「すごいね。……諭良が学校で女の子にモテるっていうの、こういうとき本当に実感するよ」

 ぼくが褒めると、純情に頬を赤らめて、「……でも、ぼくには恋人がいますから」と唇を尖らせる。

「ぼくが、誰かのために本気で何かをする相手は、……昴星と才斗と流斗を除けば、お兄さんだけです。大人の男の人だと、本当にお兄さんしかいません。それは、お兄さんが本気でぼくのこと、大事に思ってくれてるっていうの、わかるから」

 恋人同士という関係にある二人にとって「お泊まり」っていうのは、やっぱり特別なものだ。

「だから今夜は……、お兄さんだけのぼくでいますから……、ぼく、本気でお兄さんが幸せになれるように、頑張ります」

 ぼくたちはこの幸せな夜、最初のキスをした。まだ唇を重ね合わせるだけの、控えめなキス。だけどそれだけで、流斗は嬉しそうにぼくにしっかりと抱き着くし、ぼくはぼくで、せっかくのハンバーグが冷めてしまうことを想像してしまいそうになった。

 もちろん、美味しい諭良より先にハンバーグもちゃんといただいたけれど。

 

 

 

「どんなことがしたい?」

 という質問から、まずぼくはした。

「お兄さんのしたいことが、ぼくのしたいことです」

 諭良は真面目な顔でそう答える。けど、それじゃあ話が終わらないし、したいことも始められない。

 とはいえ、

「うーんと……、じゃあとりあえず……、そうだな」

 考えてみれば諭良は、何だって楽しんでくれるはずだ。

「すっぽんぽんになろうか」

 はい、と素直に頷いて、この少年にはあまり似合わない六畳間の中心で諭良は服を脱いだ。一枚ずつきちんと畳む几帳面さが好ましい。「パンツ……、見たいですか? あの……、今日のは、普通ですけど……」全裸の諭良は白いブリーフを手に、遠慮がちに訊く。

 頷いたぼくに、それを開いた。白いだけに見えたが、ウエストと裾のゴムは空色、そして当然のこととして「白いだけ」であるはずもない。諭良が恥ずかしそうにひっくり返して見せてくれた内側には、小さいながらも黄色いシミが付いている。

 でも、「綺麗だね」とぼくは褒めた。

「今日、ここへ来る前に、家で一回穿き替えたんです。昼間は、これを穿いていました」

 持ってきたカバンの中から取り出したのはゴムや縫い目が全部紺色のシャープなデザイン、だけど布地は白というもの。しかしそちらはほとんど白くない。お尻から前面まで、黄色がほとんどを占めている。

「その……、お兄さんにプレゼントしようと思って、家で、オモラシしました。……そのとき撮ったの、見ますか?」

「撮ってくれたの?」

 もちろん、是非見たい。「じゃあ、一緒に見ようか。……諭良、おちんちん可愛いけど、それ穿いてくれる?」

「はい……、わかりました」

 諭良はほんのりと皮余りペニスに少し力をこめながら、オモラシブリーフに足を通す。おいで、と手招きをして後ろから腕を回し、諭良の手のスマートフォンを一緒に覗き込む。

《お兄さん、……えっと、諭良です》

 緊張しているのだろうか、自分に向けられたカメラを恥ずかしそうに見ながら、画面の中の諭良はか細い声で言う。

《お兄さんに、プレゼントするパンツ、これから作ります。……その、お兄さんに、見て欲しくって、……喜んでもらえたら、嬉しいなって、思います……》

「そりゃ嬉しいよ」

 ぼくが髪にキスをすると、こちらの諭良はくすぐったそうに小さく震える。ディスプレイが揺れて、……鏡に向けられた。磨き込まれた鏡の向こう、胸にカメラを構えた諭良のパンツ一丁の姿が見える。

「これからオモラシ?」

「はい……、そうです」

《学校から、トイレ行きたいの、ずっと我慢してたので、たぶん、いっぱい出ちゃうと思います……、見ててください……》

 諭良の緊張の理由はオシッコの我慢によるものだったのかもしれない。

 その張り詰めた表情が緩んだ。

《あ……あー……》

 安堵したような息が漏れる。ポツリと浮かんだシミが、みるみるうちに広がっていく……、ぼくの足の間にある諭良のブリーフのシミが、どのようにして出来たものなのかが、リアルタイムにわかる。

《オシッコ……、出てます……、パンツにオシッコ……、してます……》

 カメラの角度が変わり、股間から溢れ雨を降らせる液体に寄った。オシッコの音もよく聴こえる。

《見えますか? お兄さん、ぼくのオモラシです……、オモラシしてる、おちんちん……》

 オモラシという行為の幸せと親しんだそこが、放尿中でありながらブリーフの中でむくむくと大きくなり始めている。

「えっちだなぁ……、諭良は」

 諭良の耳元に、そう感想を差し込む。

「ぼくにパンツくれるためにオモラシしてるだけなのに、もう勃起してる」

 ちなみに言えば、いや、言うまでもないが、こっちの諭良も勃起している。黄色い膨らみが愛らしい、肌もほんのり熱を帯び始めているみたいだ。

「だって……、お兄さんが、見てくれるって思って……」

《はぁ……、あんっ》

 画面の諭良はぶるっと震えて、オシッコを出し切った。しばしまた画面は揺れて、……おそらくスマートフォンを鏡の前に置こうとしているのだろう、それに少し手間取る。

《おちんちん、大きくなりました》

 これからオナニーをするんだろうな、と思った。……ぼくの予想通り、諭良はびしょ濡れのブリーフを太腿まで下ろし、すっかり勃起したおちんちんを見せる。

 けれど、

《お兄さん、見てください……》

 自ら腰を振って、そのおちんちんを動かす。揺らすというよりは「振る」に近い、勃起おちんちんの皮の先はぴるぴると揺れる軌跡を描いているけれど。

《おにい、さんのっ、好きな、おちんちんっ、ぷるぷるっ……》

 ひとしきりそうやって振って見せてくれてから、はにかんだように微笑む。

《今夜も……、ぼくのおちんちん、たくさん見てくださいね、いっぱい……、えっちなこと、しましょうね? ぼく、それまで……、おちんちん、気持ちよくなるの、頑張ってガマンします》

 そう言う下半身は言葉に抗うようにピクピクしている。けれど、諭良はそのまま撮影を終了した。

「……ってことはつまり、いまも我慢してるってこと?」

 ブリーフを膨らませた恋人に訊く。「はい……」って、小さな声で返事をする。

「お兄さんが……、そっちのほうが、いいのかなって、思ったんです。ぼくの……、精液、濃いのを、たくさん出せた方が……って」

 少年の精液の味は、一言で表現するなら「美味しい」ということになる。……少年のものしか口にしたことがない、っていうか大人のなんてゴメンだと思うから比較はいい加減なものだけど、見た目どろっとしていても舐めてみると案外に軽い口当たりで、飲み込むことにもためらいを覚えることはない。

 諭良、昴星と流斗の三人でオシッコの味と臭いに差があるように、精液もまた同じ。諭良は他の二人に比べて精液の量が少なめだ。……一番多いのが昴星で、そのタマタマの大きさに比例するような濃厚な白蜜を何度も放つ。流斗は幼いせいかまだ薄く、ガマンさせたり繰り返し射精させたりしているうちにほとんど半透明になる一方、オシッコみたいにさらさらしたものがびゅっと出てくるし、量自体は多い方だと思う。

 その点諭良は、濃さは昴星と遜色ないものの、量は少ないし勢いもあまりない。昴星と比べてずっと控えめなタマタマの生産能力が伺える。……もっとも、量の多少に関係無く美味しいものではあるのだけれど。

「そっか、ぼくのために溜めてるんだ?」

 ブリーフの黄色い膨らみの下、頑張って悦びを溜め込んでいるタマタマを指で押した。

「昼間……、学校にいるときからずっと、お兄さんのおうちに泊まるんだって思って、何度も勃起しました。今朝も、……オネショをして、そのとき、すごくおちんちん硬くなったけど、我慢して……、お兄さんに、喜んでもらいたくって……」

 健気なことだ。……もちろんぼくだって、「今日は諭良が泊りにくるぞー!」って、朝からずっとそれを意識して過ごした。仕事もその分捗ったし、だからほとんど定時に上がることだって出来たわけだけど……。

「そっか。じゃあ……、ご褒美あげなきゃね?」

 諭良が膝の中でぼくに向かい合う。抱きすくめて、今度は舌の絡む、丁寧なキス。……諭良の舌は昴星ほど器用じゃない。まだ緊張感があって、どことなく遠慮がちで、それが初々しさとなって、やっぱり好ましい。キスの最中からもう、「ん……、んっ……」と鼻から抜ける声を漏らし始めていたりするのもまた、なんとも愛らしいものだ。

 ぼくらが長いキスを終えたとき、諭良は目を潤ませていた。これからの、溺れるような快楽への期待がそこに満ちて、溢れてしまいそうだ。

「諭良は、意地悪されるの好きだよね?」

 こくこく、諭良は頷く。微笑みを浮かべて、「いっぱい……、いっぱい意地悪して欲しいです……、お兄さんにいっぱい、いじめて欲しいです……」やっぱりちゃんと「して欲しいこと」あったんじゃないか、微笑ましくぼくは思う。

 引き出しの中からぼくが取り出したのはピンクローター。昨日の帰り、寄り道をして買ってきたものだ。

「これ、知ってる?」

 ぼくの手のひらの中の物体を覗き込んで、諭良は首を振る。「パソコンの……、マウスみたいに見えますけど、違いますよね……?」

 ぼくは諭良の手のひらに楕円球を乗せ、少年が無防備な関心を寄せてためつすがめつするところ、伸びたコードの先の円状スイッチを操作した。

「うわっ……」

 知的で冷静な少年としては貴重な、驚きのリアクション、思わず畳の上に取り落としたそれのコードを、恐る恐るつまんで持ち上げて、

「な、何ですか……、これ……」

「面白いだろ」

「中に……、モーターが入ってる……、んですよね? 軸をずらした重りを付けて回して……」

 ぼくが購入したこの商品、レシートには「コンパクトマッサージャー」なんて書いてあった。けれどやっぱり「ローター」と言った方が通りがいいし、どちらの単語も諭良はまだ知らなくて当然。華奢な肩に振動卵を当ててやると、

「あはぁぁぁぁ……」

 意外なほど気持ち良さそうに声を上げた。そうか、水泳教室に通っているし、成長期でもあるし、これぐらいの子供でも意外と筋肉にコリを抱えているものなのかも。

「うはぁ」

 ぼくがローターを外すと、ころん、諭良は転がる。まるでいった後みたいに頬を染めて、「すっ……ごい……、きもちぃです……」と色っぽく言う。起き上がって、

「でも、これ……?」

 思い出したように訝った。これからえっちなことするのに、筋肉のコリをほぐす……、という理屈がすんなりと納得出来ないらしい。

 諭良が望むなら肩背中腰に足とマッサージしてあげてもいいんだけど、

「これをさ、……諭良のお尻の中に入れたら気持ちいいと思わない?」

 ぼくは言った。「マッサージャー」なんて書いてあったけど、実際のところ本当に疲労回復目的で使う人なんでいないだろう。……あくまでこれは、おとなのおもちゃ。

 ぼくと諭良の、……恋人同士の時間をより艶やかで楽しいものにするための小道具だ。

「ぼくの……、お尻に……」

「大きさ的には問題ないよね? ……ちょうど昴星のおちんちんと同じくらいだし」

 というか、見れば見るほどそのサイズ、そっくりな気さえしてくる。

「で、でもっ……、これは、あの、……さっきみたいに、振動を、……する、わけですよね? ただ入ってるってだけじゃなくって……」

「そうだよ。お尻の中に入って、ブーンって動く。……どうかな、これ入れたままさ、食後のお散歩してみるの、面白いかなって思ったんだけど」

 諭良は検討を始める。しかしその検討を始める前からしてすでに、肩当てマッサージのときには収まっていたオモラシブリーフの突起が再び息を吹き返している。

「わ、わかりました……」

 諭良は、ブリーフを脱いでお尻を向ける。「その……、機械、ぼくに、入れてください……」

「うん、……でも、その前にさ。諭良は昴星と同じでお尻だけで気持ち良くなれるじゃない?」

 男の子らしく引き締まったお尻に手のひらを当ててぼくは言う。「気持ちよくなると、どこでもそこでもオモラシしちゃうじゃない?」

 ぼくの、意地悪な言葉が嬉しいらしく、薄い色のお尻の穴がヒクヒクわなないている。

「外でオモラシする諭良も可愛いけど、その前に一応ここでオシッコして行こうよ」

 頭に降って湧いたアイディアに基づいて、ぼくは言った。

「オシッコ……」

「せっかく来てくれたんだし、普通にオシッコするところも一回ぐらい見たいなって」

 諭良は、戸惑いながらギョウ虫検査を待つような四つん這いの体勢を解く。ぼくは裸のままの少年を導いてトイレへと連れて行き、奥の壁の窓にカメラを置く。諭良は撮られていることに勃起を収めるのに苦労して、少しの時間を要したが、やがて完全に勃起を鎮め、細長いおちんちんをつまんで放尿を始めた。

「綺麗な金色だね。……まだそんなにお水は飲んでない?」

 膀胱の中に溜まっていたものを心地良さげに解放しつつ、諭良は頷く。オシッコが近くなったときには、ここまで鮮やかな金色にはならない。

 諭良は指でつまんだおちんちんを振る。しなる皮先から雫を落として、「全部、出ました」とぼくを見上げる。諭良のオシッコの間にぼくは卵にゴムを被せ、支度を整えておいた。

「じゃあ……、お尻突き出して、力抜いて?」

「はい……、……んぅ……」

 力の抜き方ももう慣れたものだ。昴星のおちんちんと同じサイズの卵球はすんなりと諭良の身体の中へと収まった。コードを垂らすゴムの根元がちょうど風船の結わえ口のように広がり、興味深い見た目となる。

「まだ勃起してないね」

 こっちに向き直って、こっくり、困惑気味に諭良は頷く。

「なんだか……、うんちが出そうなときみたいです……。それに、お尻の穴に挟まってるの、変な感じがします」

「そう? ……もし気に入らなければやめる?」

 ぼくが訊けば、文句を言ったくせに慌てて首を振る。

「じゃあ、支度しようか」

 ぼくの手には、救急絆創膏が数枚。肌に優しいタイプのもの、……特にこだわりがあるわけもなく、薬屋さんに勧められて常備用にと買ったものだ。

 まず一枚、包装を解くぼくを、不思議そうに諭良が眺めている。

「コードがさ、ブラブラして足に絡まったらいけないから」

 説明しながら、コードを諭良の股間から伸ばす。

「おちんちん、上に持ち上げて」

 戸惑いながら皮をつまんで上を向けた細身の茎の半ばほどのところ、

「あ、あの……、おちんちんに、貼るんですか……?」

「ん? そうだよ」

 コードを撓ませないように左から右へ、それを絆創膏を縦に貼って、固定する。「離していいよ」

 再び下を向いたおちんちん、コードは外れない。しかしまだ半分以上あまっている。スイッチを、諭良の手に握らせる。

「散歩の間、好きなときにスイッチ入れるといい。……どんなところで気持ちよくなりたいかは、諭良が自分で決めるんだよ」

「え……、あっ、お、お兄さんっ」

 諭良が困惑している隙に、ぼくは諭良のおちんちんを摘む。先っぽの皮、やっぱりすごく余っている。

 オシッコで少し湿っているのをペーパーで拭って乾かし、

「外で歩いてる最中にいっちゃうかもしれないでしょう? ……そうしたら諭良のコートの内側、精液で汚れちゃうからさ」

 茎のお腹側に皮を折り曲げて口を閉じさせ、ぐるり囲って塞ぐように、絆創膏を貼りつける。

「あ、あ……のっ、コートの内側って……!」

「うん」

 ぼくは頷いた。

「諭良は服着てお散歩なんかしたってつまらないだろうからさ。……寒いからコートはちゃんと着てもらうし、あとそう、靴と靴下もね。でも、それ以外は何も着ちゃダメ」

 六畳間から靴下を持ってきて、呆然とする諭良に履かせる。コートも、おしゃれなロングタイプのものだから、ソックスの脛が覗いていてもまぁ、下にハーフパンツを履いているんだって思ってもらえるはずだ。

「興奮してきた?」

 コートのチャックを閉める前に見た諭良のおちんちんは、先ほどよりもふっくらし始めている。諭良は頬を染めて、こっくりと頷いた。

 諭良の身体に施した仕掛けについては、「お散歩」の道すがらに説明することにしよう。

「諭良がおちんちん上を向かせると、コードが諭良のお尻から出そうになる、……おちんちんが小さいときに貼り付けたからね」

 諭良の性器の成長により、コードが引っ張られ、肛門へ外向きの圧力がかかることになるわけだ。

「でも、ローター落としちゃダメだよ? ちゃんとお尻に力入れて、落とさないようにするんだ。……出来るよね?」

 ぼくよりボリュームの大きな白い息を唇から漏らしながら、諭良は頷く。やはりお尻に物が入っている状況だから、歩調は緩い。

 アパートを出て、川沿いを歩く。まだ午後九時、時折、この寒いのにジョギングをしている人とすれ違う。隣を歩いて関係を疑われることを避けるために、ぼくは携帯をいじったりなどしながら諭良の五メートルほど先に立って歩き、時折後ろを振り返る。……諭良は、ぎこちなく、それでも、ぼくから離れるのは心細いのか、健気についてくる。

 交通量の多い国道に出た。川沿いよりもずっと明るい。信号待ちで、ぼくらは並んだ。

「あそこにコンビニがあるよね」

 ぼくの示した先、こうこうと明るい光を放っている。ぼくの部屋からは最寄りで、ちょっとした買い物によく寄る。

 諭良のコートのポケットに、千円札を滑り込ませる。「あそこで、何か好きなもの買っておいで。……ぼくも買うものがあるから先に行く。ああそうだ、スイッチは別に入れなくてもいいよ、でももちろん、諭良が入れたいなら入れてもいいけど」

 信号が青に変わった。選択の自由を諭良に与えて、ぼくはさっさと先に行く。横断歩道の向こうは駅だから、こちらはぼくと諭良だけだけど、向こうからは十人近い人が歩いてくる。ぼくは自分のスマートフォンを弄り、諭良とは無関係な人を装ってコンビニに入る。

 店内には仕事帰りのサラリーマンが何人か。

「っしゃっせー」

 いらっしゃいませ、とちゃんと言えないバイトくんを横目に、ぼくは箱ティッシュとタオル、それからちょっと考えてアイスキャンディーを選び取った。オレンジ味の、おいしいやつ。他の店ではあまり売っていないので、ここで扱っていてくれるのはありがたい。

 ぼくが三品をレジに持って行ったタイミングで、諭良が自動ドアをくぐって店に入ってきた。「っしゃんせー」というバイトくんの声にも、滑稽なくらいに身をこわばらせる。緊張感の漲る足取りで、

「っかいけー、よっひゃくじゅっちえんす」

 四百十八円のお会計をするぼくのすぐ後ろを通り過ぎるとき、その靴音と、……かすかにブブブと唸る音が聴こえた気がする。

 諭良はローターのスイッチをオンにしているのだ。

「あ、ちょっといいですか、買い忘れ」

 後ろに人が並んでいないことを確かめてから、一旦レジを離れる。諭良は青ざめた顔の、頬だけを赤く染めてドリンクストッカーの前に立っていた。「ごめんね」と声をかけて、中から麦茶のペットボトルを取り出し、

「例のトイレ」

 と囁く。諭良がほんの少しだけ、ほとんど震えるような角度で頷いた。

「すいません、あとこれも」

「ぃす、っかいけーごひゃっにじゅーはちえんす」

 五百三十円でもらった二円のお釣りは募金箱に入れ、ぼくは後ろを振り返らずに店を出た。

 城址公園まではさっきの横断歩道を渡って三百メートルほど。いまの諭良には長い道のりと言える。ぼくは四品入って膨らんだビニール袋をぶら下げて、城址公園へ向かう道の暗がりに腰を下ろした。あまり距離を隔てるのは、やっぱり心配だったりするし。

 三分ほど経っただろうか。コンビニ袋の鳴るしゃりしゃりという音と、やっぱりぎこちない靴音が近づいて来た。白い息が、呼吸のたびにふわんふわんと浮かぶ。

 ローターの作動音はさすがに聴き取れないが、多分まだ、運転を続けている。諭良は自販機の影に身を潜めたぼくの前を気づかずに通り過ぎる。城址公園の入口まではずっと暗く、ひと気も少ない。

 そういう場所まで来て、諭良がどんなことをするだろうか……、という想像は、ぼくには容易だった。

 耳を済ませたぼくの耳にじじじ、と音が届く。そろそろと歩きながら、諭良がコートのチャックを下ろして行く音だ。

 見られてはいけない、でも見られたい……、そんな欲が、もう抑えきれなくなったのだろう。お尻にローターを入れたままで明るいコンビニで買い物をして……、誰かにバレるかもしれない、そんな危惧を抱きながらもローターのスイッチを入れずにはいられなかった諭良の冒険心が、ぼくにはいとおしい。

「はぁ……、は、……ん……っ」

 息に声を混ぜるほど興奮しながら、諭良はチャックを全開にした。振り返った気配がある。ぼくには気付かない。ただ、諭良は立ち止まり明るい国道の方に向けて自分の裸を晒した。

 絆創膏を二つ貼ったおちんちんを、切なく震わせながら。

 諭良、昴星、流斗……、ぼく自身には露出への欲求って全くないのだけれど、三人揃ってタイプの違う露出狂である。それぞれ、身に備えた羞恥心を自ら刺激することで興奮を催し、快楽を得るに至る仕組みは変わらない。ただ(言うまでもないことだけど)その興奮は、羞恥心の度合いが高ければ高いほど強いものとなる訳で、……流斗がまだ諭良を知る前にこんなことを言っていた。「昴兄ちゃん、お外だとほんとに気持ちよさそうなんだよ。ぼくはもうそんなにドキドキしなくなっちゃったから、ちょっとうらやましいな」って……、まあこの点は流斗がちょっと凄すぎると言うべきではあるけれど、でも考えさせられる。

 とにかく、いまの諭良もとても「気持ち良さそう」だ。

 諭良は再び歩き始めた。ときおり、シャッターの切られる音とフラッシュ。……つまり、自分で自分の露出姿を撮影しているのだ。

 ぼくは諭良が振り返らないものと決めて、それでも十分な距離を保ち、ときおり物陰に隠れたりなどしながら、城址公園のトイレへと向かう少年を尾行した。

 公園の敷地、……この時間、まず間違いなく無人であるのだが、それでも「誰かいるかもしれない」という思いが諭良の中から消えることはないだろう。それは消してはいけないものではある。

 しかし、諭良が、だんだんと大胆になって行くのがわかる。公園の敷地に入って、周りがより暗黒感を増したところで、諭良はそれまでいつでも隠せるようにと、右手でカメラを構える一方、左手で握っていたコートの前を離した。

 彼の手は、コートの内ポケットの中にあるスイッチをいじる、……より、振動の強い方へ。

「あぁう!」

 鋭く身を反らし、慌ててお尻に手を当てる。こぼしてしまいそうになったに違いなかった。しばしその場で「んぅ……ん、……っ、ダメ……、出しちゃ……」自分に言い聞かせながら堪えて、ゆっくりと息を吐き出した。

 息を整えて、また一枚写真を撮る。

 次に歩き出すときには、コートの裾を捲り上げ、コードの伸びるお尻を丸出しにしながら。……ぼくがだいぶ近くにいるのに気づかないのだから、もう興奮し切って、全く周りが見えていない。非常に危なっかしいが、トイレはすぐそこだ。

 林が切れてささやかな広場、……先日昴星を全裸で登らせたジャングルジムの脇を通り、トイレは諭良の視界にはっきりとらえられた。ここでようやくキョロキョロし始めるが、それはぼくを探すためのものでしかない。

 とうとう、諭良はコートを脱いだ。ジャングルジムにコートを掛け、「お兄さん……」とぼくを呼ぶ。

 空から降り注ぐ月の光を浴びて青白い裸は息を飲むほど美しいのに、やっていることはといえば……、変態そのもの。

 だからこそいとおしい、ぼくの恋人だ。

 ぼくはトイレの建屋の影に身を潜めていた。諭良はもう一度「……お兄さん……」とぼくを呼ぶ。急に心細くなったのだろうか。コートをかけたジャングルジムに歩み寄る。

 ぼくがそのコートのポケットの中のスマートフォンを鳴らすと「ひゃっ」と声を上げ、飛び上がりそうなほど驚く。諭良はごくりと唾を飲み、

「……お兄さん、どこですか……?」

 と不安げに問い掛ける。

「諭良はどこ?」

 彼に自分の声が直接聴こえないように、トーンを落として「家」と答える。

「い、家って……、どうして……」

「よく聴いて。……さっき、公園に女の子たちが何人か歩いて行くのが見えた」

「え……?」

「君の学校の子たちみたいだった。……夜遊びはよくないよって注意したんだけど、聴いてもらえなくってね……。公園に入って行った。ちょうど、トイレの方へ……。諭良、ひょっとしてもう着いちゃった?」

 ぼくは言いながら、足音を立てないようにトイレに入る。ここのトイレは男女兼用、というか、個室が二つと朝顔が二つあるきりだ。

 受話口を指で塞いで、トイレの水を流し、またすぐトイレを出る。諭良が息を飲む音が聴こえた。

「……いい? 見られないように、戻っておいで。いや、……それでもいいのかな。諭良は、女の子たちの見てる前で、お尻で気持ちよくなるとこ見せるの、嬉しいかもしれないね」

 そこまで言ったところで、ぼくは電話を切った。「そ、そんなっ……お兄さんっ」泣きそうに声を震わせる諭良はパニックに陥っているはずだ。立ち尽くし、周りをキョロキョロ見回すばかりで、どうしたらいいかわからなくなっている。そっと覗くと、……それでも諭良のおちんちんは上を向いている。ぼくが最後に告げた言葉がそこを刺激したに違いなかった。

 実際に……、学校の女の子に見られたら諭良、どんな風になっちゃうんだろう。残念ながらぼくはそのシチュエーションを用意してあげることが出来ないし、実現することがあったとしてもそれをこの目で見ることも出来ないのだけど、……きっと諭良は大喜びで射精するんだろうな……、というぼくの想像は間違っていないはずだ。

 今は、そういう想像にとどめておく。パニックに陥りながらも勃起を収められない変態露出狂少年を、ぼくひとりで愛する……、だってあの子はぼくの「恋人」なんだから。

 トイレの裏、諭良の側から離れつつ、足元の小石を元いた方に放った。ガサッと下草が音を立てたのを聴いて、きっと諭良はそれを「人の気配」と感じるはずだ。いや……、もはやそれは、「同級生の女子の足音」としてしか捉えられないに違いない。自分の姿を彼女たちの目に晒すまでのカウントダウン、つまり快楽の高みへと駆け上るための。

 ぼくがトイレの陰から歩みを進めても、諭良はもう気づかない。お尻を丸出し、そこから伸びるピンク色のコードが突っ張っている。ぶぶぶと鳴るモーター音、諭良は振動を一番強い状態にしている。

 ぼくはスマートフォンの懐中電灯を灯し、

「諭良」

 と声を掛けた。反射的に振り返ったところ、写真に収める。諭良は何が起こったのか把握できていなかった。なぜぼくがここにいるのかということも。

 ただ、その身体だけは正直に反応する。

「あ……あっ、ああっ、あーっ……」

 ぼくに正対し、膝をがくがく震わせながら「蓋」をされたおちんちんを激しく弾ませる……、脈動のたび、勃起しても寝ている状態の諭良の余り皮の中を朝から今まで溜まり切った精液が満たし、……風船みたいにぷっくりと膨らむ。

「諭良、お尻だけでいっちゃったね」

 愕然とぼくを見上げて震える諭良の、サラサラの髪を撫ぜる。……この寒い中、全裸でいるのに、諭良の頭は熱かった。

「お、お、おに、ぃ、さっ……」

 これもまぁ、新しい意味でのパニックと言えるかもしれない。昴星だったら多分、オシッコ漏らして泣いちゃってるところだろう。その点、諭良はまぁ、偉いと言って……、いいのかな?

 ぼくはローターのスイッチを切り、その肩にコートをかけてあげる。諭良はまだ、事態をまるで把握できていない。

「可愛い写真が撮れた。女の子に見られるかもしれないって興奮してる諭良、堪能させてもらったよ」

 ぼくの言葉がやっと少年に理解をさせる。泣きそうな顔で、

「おにぃさぁあん……」

 ぼくに引っ付いて、離れない。さすがにちょっと胸が痛まないではないけれど、これでも一応「幸せにしてあげた」とは言えるような気がする。

「おちんちん、窮屈だよね?」

 ぼくの胸に額を当てたまま、こっくり。可哀想なくらい縮こまっているのに、余り皮の部分は精液を詰め込んで膨らんでいる。なかなか見られる光景ではない、光を当てて二枚取ってから、ぼくはやっと、諭良の皮を塞ぐ絆創膏に指をかけた。上を向けていないと零れちゃうな……、と思っていたけど、上を向けたところで柔らかな皮に隙間が空くと途端に濃厚なミルクがにゅるっと溢れ出してきた。慌ててそれを吸い上げる。

 すごい、濃い。

 諭良の、いつもはわりと口当たりのさっぱりした精液とは違う。ゼラチン質で舌の上でも存在感があり、青い臭いもとても強い。……諭良がぼくに味わわせてくれるためにとずっとためておいてくれた、最高の甘露だ。量もたっぷり。

「え……?」

 まだ口の中に精液を入れたまま立ち上がり、諭良の頬に触れる。諭良は導かれるように背伸びをして、ぼくに唇を重ねてきた。そっと唇を開き、……ほら、こんなに美味しいよ、諭良のおちんぽから出たミルク。

 こく、とその喉が鳴った。

「ぷぁ……はぁ……」

 諭良は自分のミルクの味に、また頬を上気させていた。

「……どう? こんなに濃いのが諭良のおちんちんから出たんだ。……気持ちよかった?」

 呆然と、こっくり、頷く。「……自分の精液飲んで、また興奮してる?」

 ぼくが指先に濡れた余り皮を摘まむと、恥ずかしそうに頷く。

「お兄さん……、お兄さん、ぼく、幸せですね……」

 またぴったりとぼくに抱きついて、諭良は声を震わせた。「こんな風に、お兄さんに意地悪してもらえて……、ぼく、幸せです……」

「意地悪されるの、嬉しい?」

「はい……、嬉しいです……」

 変態である、しかし美しい。諭良はほうっと息を吐いて、

「外で……、裸になるのは、初めてじゃないです」

 一人、語る。

「……これまでも、何度か……。でも、今日が一番興奮しました……、一人で、お店に入ったし、たくさんの人とすれ違って……、コートの中で、おちんちんずっと硬いままで、頭くらくらして……」

 露出の快楽に、もともと希求心を備えていた諭良である。これで完全に覚醒したと言えるだろう。

 ぞくり、諭良は微かに身を震わせ、ぼくから身体を離した。

「もっと……、お兄さんに、ぼくを見て欲しいです。……昴星がされたみたいなこと、ぼくも……」

 昴星。

「……あの子から訊いたの?」

 こくん、諭良は頷く。「この公園で、お兄さんに言われて、……すっぽんぽんでお散歩したって……」

 あれで、昴星も「覚醒」した感があった。そもそも流斗とも「お散歩」をしたことがあったけど、流斗の場合は覚醒点をはるかに越えて違うレベルにまで達してしまっている。

 でも、いつもいつも同じというのはあまり芸がない。

 それに、今夜は遅くから雨予報だ。木々の隙間から見上げる夜空はすでに雲に覆われている。

「諭良は、昴星と同じじゃなきゃ嫌?」

 諭良は、僅かに困惑して、首を振った。

「ぼくはね、諭良のこといじめるのも楽しいけどさ、……諭良とキスしたり抱きしめあったりするのも好きだ。つまりさ、……普通の恋人みたいに」

 恋人、という単語に諭良のおちんちんがピクンと反応した。

「だからさ、続きは家に帰ってからにしないか? ……身体も冷えちゃっただろうしさ、あったかいところで……、ぼくも裸になるから、恋人っぽいことしようよ」

 じっとぼくの顔を見上げて、……諭良は目を潤ませて頷いた。それからぼくに、一歩歩み寄りかけたところで、

「あっ……」と何かに思い至ったように立ち止まる。

「……ん?」

「あ、あのっ……、ぼく……」

 諭良はまたピクンとおちんちんを弾ませる。

「ぼく……、その……、お兄さんが、もっと……、いじわるしてくるって、思ったのと、それから……、さっき女子たちに見られるなら、一番恥ずかしいところ、見られたいと思って、……だから、その……」

 そんなこと思ってたのか、というのは置いといて。

 諭良は顔を真っ赤にして俯き、きゅっと内股になる。

「……うんち、が……出そう……です」

「あ……、そうなの?」

 うちに泊まりにくると決まった段階で、当然それも予定に組み込まれていただろう。その上、肛門に卵球を挿し入れ、それを強く震わせたまま長いこと歩いてきた。晩御飯の後にも出していない。

「そう……、ひょっとして、抜いたら出ちゃいそうな感じ?」

 こくこく、諭良は頷く。ぼくと諭良の視線は自然とトイレに向いた。

「……どんなのが、出るのかな」

「え……?」

 ぼくの何気なさを装った問いに、諭良は戸惑う。

「ほら。いつもは諭良はわりとしっかりしたのするでしょう? でも、今日はどんなのが出てくるのかなって思ってさ。お腹少し冷えちゃってるだろうし、お尻の中ずっと揺らしてるわけだから、普段より緩いのが出てくるのかなって」

 ぼくは諭良の肩にかけたコートを脱がせる。代わりにぼくが着てきた安物をあてがい、前を閉めさせた。ぼくにとってはまぁ丁度いいサイズのコートも、諭良にとってはぶかぶかだし、丈は膝にかかる。諭良も歳を考えれば背の高い方だけど、こうやって比べるとやっぱりまだ子供の身体つきなのだ。

「はい、携帯」

 コートのポケットから、諭良に手渡す。

「ぼくの家まで我慢出来るかな。……さっきみたいに撮りながら帰ってくるといい。その代わり、絶対誰にも見つからないようにね?」

「え……、ええっ」

 ぼくがそれを知っていたということに、諭良は真っ赤になる。そして便意を堪えるように、ぶるるっと震えた。

 コートの内ポケットに、スイッチを入れさせる。そしてそのスイッチを、……入れた。

「うあっ……」

「そのコートは安物だから、多少汚してくれても全然構わないからね」

 そう言い置いて、ぼくは諭良のコートを腕に下げてさっさと先に行く。「お、お兄さんっ……」諭良も慌ててぼくを追おうとするが、肛門から突き上げてくる便意に足取りは危うい。ぼくとの差は、どんどん広がっていく。

 

 

 

 

 ぼくだって鬼じゃない。いや、鬼になることが出来て(つまり、人間じゃなくなって)怖いものなんで何にもない自分であれば、諭良や流斗の求めるようなもっとずっと派手な露出をさせてあげられるのだろうけど、……鬼ではなく、人間としても小心な部類に入るぼくにはどだい無理な話だ。だから今日だって警戒心を張り巡らして、物陰から諭良を伺いながら帰ってきた。

「おかえり」

 冬の夜に、強い雨が降り出していた。しかし諭良はコートのフードを被らず、しっとりと黒髪を濡らしていた。

 そしてぼくのグレーのコートの、丁度少年の股間が当たる部分、頃んだかのように黒く濡れていて、裾からポタリポタリと滴が垂れている。軒先の雨だれみたいに趣深い。

「間に合わなかった?」

 諭良は震えながらこくんと頷き、泣きそうな声で「ごめんなさい……」と絞り出す。もっとも、何度も言うが「安物」のコートだから、どうせ近々新しいのを買わなきゃと思っていたところ。

 雨だれ滴るコートの裾に、もうひとつ垂れ下がっているものが見える。諭良の肛門から滑り落ちた、ピンクローターだ。まだスイッチが入ったままで、のたうっているそれには茶色い粘液がこびりついている。

 ぼくはコートを脱がせる。……コートの内側、前部分には排便に伴って吹き出したオシッコで大きなシミが出来ていたが、後ろは汚れていなかった。限界を迎えて、たくし上げたのかもしれない。

「ごめんなさい……、うんち、漏らし、ちゃいました……」

 しかし、まだ茎の根元に絆創膏でローターのコードをくっつけたままのおちんちんは上を向いているのだ。

「まあ、しょうがないよね。諭良はオモラシするの好きな子だから、我慢なんで出来ないだろうって思ってたし」

 どういう質のものを出したのか、見なくても瞭然とわかるような臭いが美少年の身体からは漂っている。それでも、

「どんなの出して来たの?」

 とぼくは訊く。諭良はぞくぞくとした震えを身体に走らせるが、もちろんそれは寒さによるものではなかった。

「携帯で……、と、撮りました……」

「そう、お利口さん。見せてもらえる?」

 ぼくの手にある汚れたコートのポケットから取り出したスマートフォン、ロックを解除して、動画を開いて見せる。

《……はぁ……、んっ……》

 まだ、公園にいる。暗い林道、足元を照らして画面は揺れる、喘ぎながら歩く諭良の不安定な足音が響いた。……しばらく進むが、映っているのがアスファルトに変わったぐらいで変化は訪れない。もう少し進んだところ、……昴星言う所の「うんこ橋」の特徴的な欄干が映ったところで、雨が降り始めた。諭良の歩調はもうずいぶん遅いものになっていた。この部屋まで、あと三分もかからない距離だ。

《んっ……う……っ、ふぅ……んっ……》

 画面がひときわ大きく揺れて、雨の打つ音、諭良の声と靴音、……と、同時に、ぶぢゅっ、と破裂音。

《ひあっ……!》

 遅れて、ローターの音がはっきり聴こえるようになる。

《あ、あ……っ、ダメっ、ダメダメっ、まだぁ……っ》

 諭良の声に涙が混じった。びちゃっ、と何かが地面に落ちる音がして、激しく画面が揺れて、……次に落ち着いたとき、諭良はカメラを自分に向けていた。

 オシッコがコートの中にほとばしる音に混じって、ぴちゃっ、ぴちゃっと、足元に湿った落下音。

 画面に収められているのは、括約筋の力を抜き切って、便が重力に従って落ちるに任せ恍惚感で満たされた諭良の顔。

《うんち……っ、うんち……、してます……っ、お外でうんちオモラシ……っ》

 既にオシッコの音は止んでいたが、諭良はカメラの向きを変えた。コートをたくし上げ、後ろに回す。

《お兄さん……、見えますか……、ぼくっ、お外でうんち、漏らしちゃいました……っ》

 白いお尻から、次々に落下する茶色い塊、やはり緩い。そしてここに至って諭良が、……せめてもの道徳心として道端の側溝を跨いでいたことがわかる。ただ、さっきの音から察するに、跨ぐまでにも少し出てしまっていたようだけど……。

《……は、あぁ……》

 控えめに溜め息を吐き出し、またカメラが揺れる。諭良は自分の出したものを移して《ぼくの……、汚いうんち……、たくさん……です……》濡れた声で言い、また息を震わせる。

 それから、フラフラと歩き出して、……アパートの外階段まで至ったところで動画は終わっていた。

「どうだった?」

 ぼくの問いに、「気持ち……よかったです……」と諭良は微笑みをとろかせる。

 こんな子だ。こんな可愛い子だ。

「誰にも見られていないね?」

「はい……、でも、あの……」

「ん?」

「ぼく、の、うんち……、お掃除、しないと……」

 それについては心配いらないだろう。既に雨は部屋の中にもはっきり聴こえるぐらいの勢いになっている。そのまま排水溝を流れて下水行きだ。

「マナーの悪い犬みたいだね、外でうんちしっぱなしで」

 恥ずかしそうに俯いた諭良を、抱きしめる。部屋の中では「恋人」の時間、あらかじめそう決めていたことだ。

「そういう犬の飼い主もだらしなくって仕方ないね。……お尻洗ってあげるのも飼い主の仕事だよ」

 諭良はふるると震えて「……はい」と幸せそうに溜め息を吐き出す。何というか、……お互いにしっくり来ている感がある。淫らな犬を飼うのは変態の主に決まっているじゃないか。お互いの嗜好に合致する、求め合う、だからこそ「恋人」なぼくたちだ。

 トイレットペーパーで拭き、靴下を脱がせて浴室、改めてお尻を突き出させて、寒いところにいた身体を癒すために四十度のお湯をかけ、石鹸も使って丁寧に洗い流す。

「さっきさ、犬みたいって言ったよね」

「……はい?」

 諭良は振り返って首を傾げる。

「あれ、酷い言い方だけどさ、実は諭良と初めて会ったときから思ってたことなんだ。……諭良は痩せてて細くて背が高くて、何で言うか……、シュッとしててさ、なんとかハウンドみたいな、育ちのいい猟犬みたいだなぁって」

 そういう発想から行くと、流斗や昴星も動物に例えることが可能だろう。流斗は愛くるしいけれど危なっかしい毒を備えていて、それは小さな口に犬歯を備えた子猫のようだ。昴星は……、子ダヌキとか子豚なんて言ったら、多分起こるんだろうな……、でもそれもとても可愛い。

「……犬は、舐めるのが好きです」

 諭良は微笑んで振り返った。

「お兄さんを……、舐めたいです」

 膝をついて、……それはまるで犬の「ちんちん」である。思いっきり勃起しているけれど。

 まだジーンズも脱いでいないぼくの股間を見て、「飼い主」に忠実な「犬」は息を弾ませる。

「そうなの?」

「はい、お兄さんのおちんちん、ぼくがいっぱい気持ち良くしてあげたいです。……昴星や流斗みたいに、上手には出来ないかもしれないですけど……」

「うーん……、まぁ、あの二人がちょっと上手過ぎるって気はするけど」

 だから、諭良が気にする必要はない。だいたい普通の男の子がそんなの上手になる必要、ないわけだから。

 それに、

「どうだろう、……ぼくだってあんまり上手に出来てるか自信ないんだよね。君たちのこと、もっと気持ち良くしてあげられたらいいっていつも思ってしてるんだけどさ」

 昴星に流斗に諭良、みんな我慢ということを知らないから、一様にぼくの口でも射精まで至らせることは出来る。

 けど、「どうにか出来る」じゃいけない気もする……。大切な恋人たちを幸せにしてあげることこそぼくの願いなのだから、それはもう、完璧さを追求したくもなるのだ。

 本当の意味での同性愛者ならば、また違うのかもしれない……、とは思う。要するに自分の気持ちいいところが相手にとってもそうであるはずで、多分お互いにアドバイスもし合えることだろう。

 だけど、ぼくと三人ではそもそもその場所の形からして全く違う。自分がそういう形だった頃のことなんで覚えていないから……。

「ぼくは……、お兄さんのお口でしてもらうの、大好きですよ? その……、自分の一番恥ずかしいところ、お兄さんに間近に見られて、……お兄さんがおいしそうに舐めてくれるの、すごく、幸せです」

「そう……?」

「それに、ぼくと昴星と流斗では、たぶん気持ちいい場所も違うと思います」

 諭良は浴槽の縁にお尻を乗せて、少し考える。

「……昴星の、初めてしゃぶったとき……、おちんちん小さいので、ぼくそのままぱくんってしゃぶったんです。昴星は先っぽより、皮の上からいっぱい舐めてあげたほうが気持ちよさそうにしてくれていました」

 確かに、昴星は先っぽ「ヒャッ」ってなるって言っていたっけ。

「流斗は、……タマタマを舐めてあげるとすごく気持ちよさそうでした。でもタマタマだけだといけないから、途中からタマタマを指でしてあげながら、皮を剥いて、……皮と、先っぽの境目のところを舐めてあげたら、すごくおちんちんピクピクしてました。先っぽは、昴星より流斗のほうが大人なのかもしれないですね」

 なるほど……。

「……っていうか、諭良、よく観察してるね……」

 ぼくが感心するとほんのり恥ずかしそうに、「だって、……二人とも大切ですし、大好きです。二人ともぼくを幸せにしてくれるから、ぼくも二人の幸せに応えてあげなきゃって思うから……」そう告白する。うん、仲良きことは美しきかな。そしてぼくは諭良の観察に基づいて、今後あの二人にしてあげるときの参考にさせてもらおう。

「……じゃあ、諭良はどこが好きなんだろう?」

「ぼく……は……」

 自分のおちんちんを、諭良は見下ろす。先ほどは苦しいくらい勃起していたが、いまは少し緩んで下を向いている。

「……考えたこと、ありませんでした。……お兄さんにしてもらってるときは、いっつも頭の中真っ白で、気持ちいいって、ただそれだけしか考えられなくなってますし……」

 うーん、と諭良はまた考え込む。考えている内容が内容、しかし真面目な話だから、おちんちんはどんどん萎えて行って、結局下を向いてしまった。

「……もし、諭良がよかったらさ、今日はぼくに勉強させてもらえない? 諭良のどこが一番気持ちいいのか、知りたいなって思うんだ」

 諭良は顔を上げて、「ぼくの……、一番……」と呟く。

 ぼくはジーンズを脱ぎ、裸になる。腰掛けに座り、浴槽の縁に座った諭良の両膝に手を置く。

「いろいろ、してみるからさ。諭良の反応を見ながら……、ね?」

 諭良は頬を染めて、こっくり、頷く。真正面に、控えめな大きさのタマタマを背景にしてぶら下がった細長い、皮余りが垂れている。

 何というか、……いつ見ても「長いなぁ……」と感心してしまうフォルムである。別に諭良のに限らず、昴星のも流斗のも、目の前にあれば毎度まじまじと見つめてしまうんだけど。

「まず、どこからしようかな……、って」

 ひとときの落ち着きを取り戻していた諭良のおちんちん、……ぼくの視線を誘いながら、ひくん……、ひくん、震え始めた。おちんちんを「サオ」なんて呼ぶことがあるけれど、さながら細い竿先に垂れる皮で獲物を捉えたかのようだ。

「見られるだけで感じちゃった?」

 苦笑して訊くと、唇をへの字に曲げて、でも素直に頷く。

「こんなんじゃ、外のトイレ行くのも大変でしょ」

「……流斗が、教えてくれたんです。お外のトイレでオシッコするとき、流斗はいつも、お尻まで下ろしてするんだって……」

「ああ、確かにあの子はそうだね。……って、諭良もそうしてるの?」

 流斗の場合はまだ、羞恥心の備わってない幼い子供のすることだと納得してもらえるだろうけれど、さすがにこれだけ背の高い諭良がそれをやるのはちょっとまずいんじゃないか、……それこそ変態に目を付けられかねない。

「お尻は、出せないですけど……、ちょっと便器から離れて、ズボンのボタン外して、パンツも、窓からじゃなくて上のゴムのとこから出して、オシッコします。……ときどき、隣の人に覗かれて……、そういうとき、おちんちん勃起しそうになります」

 一応、まだ勃起するには至ってないのだ、ホッとするけど、危なっかしいな……。

「見られるの大好きなんだね……、本当に」

 すっかり勃起してしまった、だらしない皮余り。流斗と同じほどのサイズの袋を、下からすくい上げるように指で持ち上げる。

「みんなの肌は、つるつるですべすべだけど、……ここはシワシワだね」

 まずは陰嚢への愛撫で様子を見る。さっきは大量に濃いものを皮の中に閉じ込めていたけど、基本的にはそのサイズに比例するように精液の生産能力があまり高くない諭良のタマタマだ。指で柔らかく傷つきやすそうな薄い皮膚を撫で、揉みしだき、顔を寄せて……、舐める。

「あ……!」

 鼻先でひくんとおちんちんが強張った。

「諭良はオナニーするとき、右手でおちんちん握って動かしながら左手でここも触ってるよね?」

 この間三人をまるごと相手にしたときに何度か見た諭良のオナニー、そうだった。

「左手で……、支えながらの方が、なんだかあったかくて好きです……」

 ぼくが舐めると、声は震える。ここに関しても一応性感帯としての役割はなしているということだ。それでも、……多分、流斗ほどではないと思う。

「じゃあ、こっちはどうかな」

 続いて茎。舌で下から上へとゆっくり舐め上げると、陰嚢よりも鋭い反応がある。特に、根元よりも皮の中で諭良の芯が尽きる辺りで反応が強まる。

「あっお兄さんそこっ……」

 うっすらわかるカリ首の膨らみから亀頭のおしまいの辺り、諭良の皮の中にちゃんと芯が入っているところだ。ここは多分、誰しもが気持ちいいであろう場所。ただし真性包茎の三人はだれもここを晒せない。

「……うん、気持ちいいんだ?」

「はい……、今のところ……」

「じゃあ、こっちは?」

 先っぽの、柔らかい余り皮の部分。指でつまむと皮の縁をガマン汁が僅かに濡らす。

 きゅうん、と芯に力がこもった、

「そこ……っ」

 諭良は口元に手を当てる、「恥ずかしいです……」

 なるほど……、と思う。

 諭良はマゾヒストだ。マゾヒストとして、「恥ずかしい」と自覚する場所を弄られるのが気持ちいいのかもしれない。でも身体の構造、神経の巡り方を考えるならば、もっと気持ちいい場所ってあるはずだ。

「諭良、皮剥いてくれる?」

 諭良はこっくりと頷き、恥ずかしがり屋の亀頭を晒すべく、おちんちんを摘まんで根元に向けてスライドさせる。たっぷり余った皮の先端に向けて諭良の芯が伸びて行くかに見え、ようやく顔を出した時には、晒された包皮の内側も亀頭も、粘液に塗れている。

「ここは、諭良も臭いね。昴星に負けないぐらい」

 いや、本当は昴星の方がもっと臭い。けれどやっぱり、鼻を刺すような臭いはある。ぼくの言葉にピクピクさせるその亀頭の、いかにも弱々しいピンク色を舐めると「ひん……っ」やっぱり諭良は敏感に反応する。口の中に残尿とガマン汁の味を満たして、舌先を皮の内側に当たる部分、裏筋の辺りに当てると、

「お、ぉにいさっ、そこぉ!」

 これまでで、一番鋭い反応を諭良は見せた。

「恥ずかしい」余り皮の内側、特に裏筋に当たる部分……、

「ここが、諭良の一番いいところみたいだね」

 諭良を見上げると、目を潤ませてこくんと頷く。

「自分でここ弄ったことはない?」

「は……い、いつも……、その、オナニー、するときは……」

 皮を先に向かってぐいぐい引っ張って、伸ばすみたいにおちんちんを扱いている。美しく整った顔立ちの男の子がそんなやり方でオナニーをし、快感に耽り、……ついでに言えば、おちんちんの皮をせっせと伸ばしているわけだ。

「諭良のオナニーの仕方、可愛いしすごいえっちでぼくは好きだけど、……あんまり皮が伸びきっちゃうのも良くないだろうからさ。一番気持ちいいところ見つかったんだから、これからはこっち弄ってみるのもいいかも知れないよ? ……もちろん、清潔な手でね?」

 こくん、諭良は頷く。最後のは言わなくてもわかっていることだろう。お風呂でも、ちゃんと皮の内側を洗っているようだし。

「ぼくとしても一安心だよ。諭良の一番気持ちいいところわかったからさ」

 舌先を当てると、「あんっ」と敏感に声を上げる。

「おにいさ……っ、もう、おちんちん……」

 いきそうなんだ、……可愛い。

 でも諭良はもう一段可愛くなれる。

「……諭良のここは、本当は何て言うんだっけ?」

 はっとしたように、息を飲む。それから唇をわななかせて、

「……おちんぽ……、ですっ、ぼくの、ここは……、おちんぽ……」

「そう。なんでそう呼ぶんだっけ?」

 ヒクッヒクッとしゃくりあげるように半剥けの陰茎は震えを催す。

「ぼっ、ぼくの、は、……皮が、いっぱい、伸びてて、オネショもしちゃうし……だらしない、から、だから、おちんぽですっ、ぼくのは、おちんぽっ……」

 はい、よく言えました、お利口さん。

「ひゃああんっ」

 口の中へ含む。さっきより強くなった潮の味を、諭良はどれぐらい堪能させてくれるだろう。

「おっ、お兄さんっ、おにいさっ、きもちぃっおちんぽにゅるにゅるっひもちぃですっ!」

 三人の少年は互いに影響し合う。昴星の「ちんこちんこっ」が諭良によって「ちんぽちんぽっ」に変わることがあるように、諭良の喘ぎ方も一番品のない昴星に似てきたようだ。

「出ますっ出ますもうっおちんぽおちんぽ……っおちんっ……ぽっいっちゃっいっンんーッ!」

 肛門がギュッとなるのが、其処に触れなくてもわかる。一気に射ち出された精液が口の中へと広がった。……まだ、たっぷり。そして、濃い。味わい深い、というのとは違うか、諭良から出たものは高貴なその容姿とはちょっと違って、案外にチープな味。ゆっくりと口から抜き、皮を剥きおろしていた諭良自身の指が離れると、「一番気持ちいい場所」は恥ずかしがるように隠れ、やがてすっぽりと先端を覆い切った。

「気持ちよかった?」

 諭良は恥ずかしさが蘇ったようにこっくりと頷き、「……いっぱい……、出ちゃいました……」と呟く。重ねて、

「……はしたないこと、いっぱい言っちゃいました……、普段こんなこと言わないのに……、お兄さんが、すごく気持ちよくしてくれるから……」

 確かに普段はお利口さん、なだけじゃなくて、上品で聡明な男の子なのにね。だけどそれだけに「おちんぽ」を連呼する諭良の姿は普段とのギャップが大きくて、一層愛らしさが際立つのだ。

「これでぼくはいつでも諭良のことをいかせられるね」

「べ、別にいまのところじゃなくっても、お兄さん、ぼくのことはすぐ……」

 まだ子供で快感への耐性が弱いから……、というのもあるだろう。けど、他の二人より皮で亀頭を守っている度合いが高い。多分もうちょっと大人になってからも、諭良は早漏なんじゃないのかなって気がする。

 二度目の射精を終えた諭良のおちんちんが、落ち着きを取り戻した。でもぼくは(まだ出してないんだから当然のこととして)激しい興奮を催している。例えば目の前の諭良が柔らかく垂れ下がっているのを見るだけで、なんだかもうたまらないような気持ちになってくる。

 実際、……三人とこういう関係になって以来、それ以前にはまったく目にしたことさえなかった「無毛包茎な子供おちんちんの勃起状態」に親しむようになった。ピンと立ち上がって震えるさまはなんとも健気であり、ぼくが幸せにしてあげなきゃって気持ちにならざるをえない。しかしその一方で、平常時のいわゆる「ふにゃチン」の状態もまた、これまで以上に魅力的なフォルムであるということをぼくは気付いたのだ。

 そういう男の子の場所の、きわめてシンプルな愛らしさ。……三人がぷるぷると震わせてくれるのを見るのがこのところほんとうに好きなのは、平常時のフォルムを目で愛でるのに一番いいと思うからかもしれない。

「おちんちんって、やっぱりいいなぁ……」

 しみじみ言うようなことじゃない。クスッと諭良は笑って、「お兄さんは……、男の子のここが好きですね」と言う。

「諭良も好きでしょ?」

「はい、大好きです。ぼくは自分におちん……ぽが、付いててよかったなって思います」

 諭良は立ち上がって、「お兄さん、おちんぽ揺らすの見たいんでしょう」とぼくの欲を言い当てる……、まあ、この間三人揃ったときも、散々見せてもらっている。

「いいの?」

「お兄さんがぼくの一番気持ちいいところしてくれたから、ぼくはお兄さんの一番好きなの、見せてあげなきゃいけないんです」

 腰掛けに座ったぼくの前に立って、「お兄さんに、ワガママ言ってもいいですか?」諭良は尋ねる。

「聴ける範囲ならね」

「ぼく……、お兄さんが自分でおちんちんいじるところ、まだ見たことないです」

 そりゃそうだ、一緒にいるんだから、自分でいじるよりは……、って思うのが人情だろう。

 って、

「見たいの? その、……ぼくの、オナニーなんか……」

「なんか、じゃありません」

 と諭良は唇を尖らせる。それからにっこり、美しい微笑みを見せて、

「ぼくはお兄さんに、お兄さんの見たいものを見せてあげます。その代わりお兄さんはぼくのみたいものを見せてください。でもそれだとまたぼくが得になっちゃうから、そのあとまたお兄さんのして欲しいこと、ぼく、なんでもします」

 諭良は、そう言った。

 そしてぼくの答えを待たず、ふるん、ふるん、腰を動かし始めた。ふるん、ふるん、皮余りの「おちんぽ」がしなる。

 ああ、これはもう仕方が無い。ぼくは鬱陶しいぐらいのペニスを取り出して、握った。

「わぁ……、お兄さんの、おちんぽ……」

 忙しなく右手を動かしながら、ぼくは左右に揺れる諭良のおちんちんを凝視しながらオナニーを始めた。手を後ろに回した諭良は勢い付いたように激しく腰を揺さぶり始めた。時折ぺちんと皮の先が肌に当たっていい音を立てる。

「お兄さん、おちんぽ気持ちいいですか……? ぼくの、おちんぽ見て、お兄さんオナニーしてるの……?」

 うん、と苦しい声でぼくは認めた。

「だって……、すごく可愛いよ、諭良の、……すごいぷるぷるしてる……」

 諭良は一層激しく腰を揺らす。

「あはっ……、おちんぽ、勃起しちゃいそうです……、お兄さんのオナニー……っ」

 左右に揺れ、時折円を描いていた諭良のおちんぽの揺れ方が変わった。諭良は膝をつき、腰の振り方を変え、自分の下腹部に叩きつけるようにする。ぼくの足の間で、時折その皮の先でぼくの亀頭を優しく叩く。

「諭良……、いくよ……?」

「は、いっ、……おちんぽっ、ぼくのっおちんぽで、いっぱい精液っ、だしてくださいっ、ぼくのおちんぽにかけてっ……」

 リクエストに応えるのはお安い御用で、諭良の「おちんぽ」に接するほど近いぼくの尿道口から、一気に放たれた精液はそのまま諭良にぶちまけられることになる。

「あはっ、出てる出てるっ、お兄さんの精液出てるっ……」

 腰を止めて、諭良は恍惚の表情でぼくの精液で汚れた自分の「おちんぽ」を見下ろす。息を弾ませて、根元から先端に向かって指で挟むように扱きあげてぼくの白濁を拭い、

「すごぉい……、いっぱい出ましたねぇ……、お兄さんの精液……!」

 その手を口許へ運んで、おちんぽをピクピクさせながら味わう。

「……だってさ、すごい可愛かった……」

 ぼくは諭良の髪を撫ぜて、ため息まじりに素直な感想を述べた。「やっぱり、おちんちんが揺れてるの、すごくいい……、途中で勃起したのも、すごい、えっちでよかった……」

 ふふ、と諭良は笑う。

「ぼくのおちんぽで気持ちよくなるお兄さんも、すごくえっちでしたよ?」

 そのまま、ぼくの膝に手を当てて、先に滲むものをちゅっと吸い取る。「お兄さんが……、ぼくのこと、えっちな目で見てるって……、ぼくを見て、興奮してるってわかるの、本当に嬉しいです」

 両手で優しく包み込んで、

「ぼく、これからもいっぱい、いろんなの、撮りますね。お兄さんと会えなくなっても、離れたところでお兄さんがぼくで気持ちよくなってくれてるって思うだけで、ぼく、すごく幸せです」

 と、ほんの少し目を潤ませて言った。さみしさといとおしさがぼくの周りで追いかけっこをする。

 諭良が三月の終わりにはいなくなってしまう……、それはぼくらがどんなに思いあっていたとしても、どうすることも出来ないことだ。

 しかし、切なさを脱ぎ捨てるように諭良は言った。

「今夜は、いっぱい『恋人』でいましょうね。ぼく、がんばります、お兄さんのこと、たくさん幸せにしますよ……」

 

 

 

 

 冷えた身体を温めるためにお風呂を沸かそうと思ったのだけど、諭良は「今は、シャワーでいいです」と言った。

「その……、どうせ汚れちゃいますし……、ね?」

 汚すようなことをしたいのと訊いたら、ぼくの精液を洗い流しながらこくんと頷く。お湯の温度に性欲も一緒に流れて、清潔感とだらしなさが共存する長いおちんちんは元のサイズに戻っていた。

 拭いてあげると、右手にブリーフ、左手にカメラを持って戻ってきた。ブリーフはプレゼント用に汚してきてくれたものではなく、洗濯済みの綺麗なものだ。諭良にしては珍しい、ゴムも生地も縫い目も全部白い、何とも健全な白ブリーフである。

「諭良もそんなの持ってたんだ?」

「ええと……、あんまりは、持ってません。何となくですけど、グレーとか紺色とかのほうが、カッコいいかなって……」

 なるほど、諭良みたいにクールな子でも、やっぱり「カッコいい」というものには惹かれるのだ。長い足を通して、ウエストも裾もパンと整えたパンツ一丁の立ち姿は、凛として美しい。

「よく似合ってるよ、白いパンツもカッコいい」

 まだ、黄ばみのないブリーフが眩くすらある。諭良は照れ臭そうに笑い、ぼくにカメラを委ねた。すぐに録画を始める。

「で……? これから、どうするの?」

「お兄さんに、オモラシ、撮ってもらいます」

 恥ずかしそうに微笑んで、それでも諭良は言う。

「その……、オシッコ、いま、ガマンしてます」

 ブリーフの記事と下腹部に挟まれて上を向いた細いソーセージの膨らみは、まだ柔らかそうだ。昴星はタマタマが大きくて、同じように上向き収納させても股間がふっくらしている。流斗はおちんちんもタマタマもまだ小さいので膨らみが全体的に控えめだ。

 その点、諭良の場合はおちんちんの皮の長さとタマタマの小ささがあいまって、膨らみが正面に細長く現れるのだ。その様子は、スマートなボディラインにもよく合っている。

「あの、オモラシしたら、お兄さんのご褒美欲しいです」

「ご褒美?」

「……はい。お兄さんの……、精液、さっきはぼくのおちんぽにいっぱいかけてもらったけど、今度は……、飲みたいです」

 そういうことか。……どのみち、ぼくも諭良のオモラシを見ればそうして欲しくなるに決まっていた。

「じゃあ、ここじゃなくて部屋にしようか?」

 浴室は狭いし、部屋の方がずっと暖かい。シートを敷けばオモラシだって大丈夫。

 広げたシートの上に諭良は改めて立つ。三脚にカメラを立てれば、画面だって安定する。「どうぞ」とぼくが言うと、頷いて、

「じゃあ……、オシッコ、します。ぼくのオモラシ、見てください」

 諭良はだらんと手を身体の両サイドに下げる。指先にわずかに力が入ると、同時に「ん……」と唇を結び、ブリーフの膨らみの先端から尿を解き放つ。

 皮がそっちの方を向いていたんだろう。ぼくから見て左側にまず濡れじみが生じ、それはおちんちんのフォルムに陰影を刻んでから、細い尿の音を立てながら一気にタマタマにまで至る。ブリーフの生地表面からも金色の液体が滴り始めた。

「あ……、すごく黄色い……」

 自分の股間を見下ろした諭良はそう呟いて嬉しそうな顔になる。純白だったブリーフはどんどんと黄色く染まり、その事実に感応したように諭良の膨らみがよりはっきりしたものとなって行く。臭いも普段より幾分強いようだ。

「すごい、濃いオシッコで……、パンツ、真っ黄色にしちゃってます……」

 諭良は微笑みながら一目瞭然の現象を「実況」し始めた。

「オシッコ、すごく熱いです……、パンツ、重たくなってきました……」

「オモラシ気持ちいい?」

「ん……、すごい、気持ちいいです、オモラシ……、ぼく、大好きです……」

 太腿の間を伝い、足元に水溜り。その上に立つ諭良は変態の誹りを避けられない姿でありながら、いまだ美しさを保っているように思われる。すっかり勃起仕切ったおちんぽがひくっと震え、最後まで絞り出したところで、

「オシッコ、全部出ました……」

 諭良はカメラに向けて微笑み、窓からおちんぽをタマタマごと引っ張り出す。

「オモラシして、勃起しました。ぼくのおちんぽです」

 びしょ濡れの性器を、腰を揺すってそれをぶらんぶらんと震わせた。

「オシッコ、濃かったからパンツもすごい黄色くしちゃいました……」

「お尻の方も見せて」

 諭良は素直にお尻を向ける。

「見えますか? お尻もびちょびちょ……」

「うん。お尻の半分くらいまで黄色くなってる。……ありがとう、可愛いところ見せてくれたからご褒美あげなきゃね?」

 ぼくもフレームに入る。諭良は嬉しそうに微笑んで水溜りに膝をつき、ぼくのペニスを両手で包み込んだ。

「お兄さんのおちんぽ、ぼくのオモラシでこんなに勃起してる……」

 諭良はカメラに顔を向けて傾けながら、ぼくのペニスを横咥えにする。

「んん……、お兄さんのおちんぽやっぱり好きです……」

「ぼくも諭良の口にされるの好きだよ。諭良はすごく上手だから」

 諭良は微笑んでぼくを見上げ、紅い舌でれーっと下から上へ舐め上げる。愛撫の終端は裏筋で、そこでぼくが強張ると、そこに唇を当て、集中的に攻め始めた。キス、キス、そして舌先でチロチロと。

 えっちな顔だ。

「おいひ……、おにぃふぁんぉ、おひんほおいふぃ……」

 サラサラの髪を撫ぜつつ、……足元から上がってくる臭いがぼくに強い欲を催させるのを覚える。

「ねえ、諭良。諭良の臭いももっと嗅ぎたいんだけどな」

「ぼくの……、におい……」

「きれいなパンツ真っ黄色にしちゃった、諭良の汚いオシッコの臭い」

「んぽ」

 咥えていた口から腰を引き、畳に仰向けになる。「カメラ持って、ぼくの上においで。やらしいお口でぼくのしゃぶるところ撮って、あとで見せてよ」

 諭良はこくんと頷いて、すぐさまカメラを手にシックスナインの体勢になる。黄色く染まって強い臭いを放つブリーフは、ぼくの目の前。

 肛門の場所に鼻を当てて嗅ぐ。

「んふぅ……」

 途端、奥で諭良の肛門がきゅっと引き締まった。

「ここも、すっごいオシッコ臭い」

「ん……っ、だって……、オシッコしました……」

「うん、だからご褒美あげるんだ」

 諭良は、ぼくの足の間にカメラを置いた。そして、早くもぼくの亀頭に滲んでいたらしい腺液を舐め取る。

「ちゃんと諭良の顔撮れてる?」

「ふぁい……、ぼくの、……口、おにぃさんの、勃起したおちんぽ……、ん、……ふわへてうの、ほれへまふ……」

「いっぱい見せてね、……諭良の、えっちな顔」

 諭良は「ふぁい」と応えて、……多分、カメラに視線を送りながら、「おにぃふぁんの、おひんぽ、お口でひてまふ……、熱くてかたいお兄さんの、おちんぽ、おちんぽお口で、するの、好きれふ……おちんぽおいしぃ……」と、また実況する。ぼくは諭良の舌がくれるくすぐったいような快感を、尿臭を堪能しながら味わっていた。

「お兄さんの、おちんぽピクピク、ひてるの、……ぼくのぉ、オモラシパンツでピクピクしてるの、すごい……しあわへ……っ、んむっ」

 ぼくの欲の高まりを待たずに諭良は深々と咥え込んでいた。その美しい顔を淫らに歪ませて、口いっぱいに頬張ったペニスを味わう。丁寧で大人っぽい言葉遣い、知力も相当で運動神経もいい、……昴星曰く「学校だといっつもまわりに女子がいっぱいいてさ、でも『女なんか興味ねー』みてーな顔でおすまししてんだぜ」と、女子の憧れを一身に受けるような理想的な男子。

 が、自分の尿で黄色く染め上げたブリーフを穿いて、同じ男のペニスを美味しそうにしゃぶっている。

「んぷっ、んっ、おにぃふぁっの、おひんぽっおひんぽっおひんぽっしゅきっおひんぽしゅきっ……!」

 捨てる神あれば拾う神ありなんていう言葉がある。ぼくは間違いなく諭良を拾う側で、諭良だってぼくに拾われたいと願ってくれるのだ。

「いくよ」

 と言うために一瞬だけ顔を外し、また諭良のコンパクトなお尻に顔を埋める。むせかえるようなオシッコの臭いに頭の中まで黄色く染まったところで、深々と諭良の口に咥え混まれ、しなやかな舌に絡みつかれて、……そのまま、細い喉の奥へと精液を放つ。

「んーっ……! んっ……っく、はぁあ……、お兄さんの……、精液……っ」

 ありがとう、と言う代わりにブリーフの上からお尻を撫ぜる。一旦ぼくから顔を上げた諭良はまた両手でぼくを支え、

「お兄さんのぉ……、精液……、精液、すごく美味しかった……です、大人のおちんぽの、勃起して、ビクビクしてるの……」

 諭良は足の間からぼくを覗いて、「お兄さん……、ぼく、上手に出来ましたか……?」と、現象から既に自明なことを訊く。

「すごく」

 諭良は嬉しそうに微笑んで、腰をずらし、ぼくの下腹部に跨ってから、「あっ、あの……、重たくないですか? あと、冷たく……」

「平気だよ。……まだ撮る?」

「はい、……あの、お兄さんのおちんぽ、精液、おいしかったので、……ぼくの、オナニーも、お兄さんに見て欲しいです」

 ぼくに、ではなく、カメラに向かって諭良は言う。もちろんぼくからは見えない。けど、ぼくの「もう一つ」の目は真正面から見ている。

 ちゅぷちゅぷと、皮が湿った音を立て始めた。普段通りのオナニー、左手をタマタマに添えて、右手では皮を伸ばすようにして。

「うふっ……っ、お、ちんぽっ、しこしこしてますっ、お兄さんのおちんぽ見ながら、ぼくっ、おちんぽシコシコしてるのっ見てくださっ、あんっ、おちんぽ……きもちぃ! おちんぽきもちぃっおちんぽ……あっ、もう出るっせーぇき出る出るっ、おちんぽっおちんぽおちんぽいくぅんーっんっ……んっ……!」

 あっけないほど簡単に、諭良は射精した。ぼくの性器にも、少しかかってしまった。諭良は身を反らして、

「あーっ、あ……っ、出ちゃった……、あはぁ……、おちんぽいっちゃいました……っ、おちんぽ……」

 快感の余韻を思い切り味わっていた。

「オモラシ、して……、お兄さんのおちんぽしゃぶって……、ふふ……、お兄さんの見てる前で、オナニー、しちゃった……」

 何とも嬉しそうで、満足げ。よかったね、とぼくも嬉しくなる。よいしょと身を起こしたら、諭良はぼくの上で身体の向きを変えてしっかり抱き着く。

「ぼく、やっぱりお兄さんに恥ずかしいところ見てもらうの、幸せです。ぼくの見て、お兄さんがおちんぽかたくしてくれるの、幸せ……」

 じっとりとしたブリーフ、べたつく包茎を、擦り付けるように諭良は甘える。頬にキスをして、

「ぼくも諭良のこと見るの幸せだよ。諭良のくれたのは、全部宝物だからさ」

 心の底からそう応える。

「……今日、お兄さんにまだ見せてないの、全部持ってきました」

 諭良は部屋の隅っこに置いたカバンに視線をやる。「ぼく、お兄さんに見て欲しくって……、いっぱい撮りました。……見てくれますか?」

 見て欲しいと言うなら、「いま?」諭良は頷き、立ち上がるとカバンの中からフラッシュメモリーを持ってくる。ぼくはPCの電源を入れた。

 カメラは回ったままだ。どこに置こうか、結局三脚に乗せて、PCの斜め上に設置する。諭良はぼくのあぐらの中に収まった。

「おお……」

 フラッシュメモリーの中のファイルは全て動画の拡張子。画面いっぱいにアイコンが広がる。

「こんなに……」

「気が付いたら、こんなにたくさんになってました。……オシッコするだけの、短いのもいくつかありますけど、長いのは……、えっと、十分とか」

「これ全部自分で撮ったの……、すごいね」

 諭良はこくんと頷いて、マウスでそのうちの一つを開く。

「この中で、三番目くらいに……、その、えっちなのです」

 最大化しても粗くない。諭良のカメラはぼくより上等なのだ。

《お兄さん、こんにちは。……ここ、どこだかわかりますか?》

 諭良は自分を撮りながらささやき声でぼくに訊く。

 どこか、室内だというのはわかる。オレンジ色の光の具合からして、夕方だろう。

 画面がぐるり、諭良のいる場所を映しだした。

《学校です。……ぼくの、昴星たちと同じ、六年一組の教室です》

「教室……!」

 頑張りすぎじゃないか。驚いたぼくに、膝の上の諭良は小さく笑う。これで三番目って、ほかの二つは一体どんなの……。

 画面の中で、じじぃと音がした。

《ぼくの、ズボンの中です》

 諭良はそこへカメラを向けた。

 オムツを、している。

《六時間目の授業中に、オモラシをして、いま、この中、オシッコでいっぱいです。……今日はお昼にトイレでオムツ穿いて、それからずっと、オムツして……、すごくドキドキしました》

 ジーンズを、上げ直す。

《いまはまだ、勃起はしてないですけど、授業中は何度もしました。……これからトイレで、オムツ外します》

 その言葉の通り、諭良は廊下に出て、真っ直ぐトイレに向かう。放課後なのだろう、大半の児童はもう帰った後らしく、ひと気はない。ぼくにとっては懐かしさを感じさせる校内を辿り、諭良は学校の一番隅のトイレに入った。滅多に人が来ないので、お腹の具合が良くない日なんかに、ぼくも使ったことがある。

《お、来た来た。おせーよ》

 聴き慣れた声がする。

《ごめんね、教室に女子いてなかなか始められなかった……》

 個室の便座に座って携帯をいじっていた昴星が、カメラに向けて《ひひひ》と笑う。

「昴星も一緒に撮ってくれたんです。昼休みにぼくが誘ったら、『いいよ』って。『一人で撮るとむずかしいときあるから』って……」

「そうだったの……」

「昴星は、優しいです」

 そう言えばきっと唇尖らして否定するだろう。けれどあの子は間違いなく「優しい子」だ。

《したらカメラかせよ、おれが撮ってやるからさ。おまえスボン脱いで座れ》

 昴星はテキパキと指示をし、諭良は便座に座る。ただ、普通に座るだけでは昴星も満足せず《もっとほら、足広げてさ》と的確なアドバイス。

《こう……?》

 オムツの下半身を誇示するように足を大きく広げて諭良は見上げる。

《そうそう。ひひ、すっげーカッコ……、なー、おまえまだそんなかで一回しかオモラシしてねーの?》

《うん……、だって……》

《あー、知ってんのか、二回目出てきちゃうの》

《うん……》

 さすがの諭良も、流斗のように授業中にオモラシするほどの勇気はないようだ。まぁ、当然だけど。

《そっか。……まーいいや、オムツ脱いでさ、ちんこ見せろよ》

 便座にお尻ではなく腰を委ねるような格好だから、背骨に負担がかかりそうだ。だけど諭良は昴星に素直に従う。グレーのふんわりしたセーターに包まれた上半身に対し、オムツと靴下……という下半身。足は個室の壁に当てて、《よい、しょ……っ》とオムツをずりおろして行く。

「六時間目」の授業中から尿に浸って封じ込められていたそこからは、むっとする臭いが漂うはずだ。

《おー……、オシッコくせー……》

 感心したように、普段諭良より臭いオシッコをする昴星の呟きが聴こえる。

《ん、そういえばさ、おまえパンツ脱いでどうしたの?》

《……今日は、穿いて来なかったんだ》

 画面の諭良は恥ずかしそうに答える。ぼくの膝の上の諭良は、「お兄さん、……今の興奮したんですか……?」と問う。

《へー……、まー体育ねーから大丈夫か》

 それにしたって、ずいぶん大胆だ。

《じゃー、ずっとノーパンでいたの?》

《うん……。ちょっとドキドキした。でもやっぱり、オムツして授業中にオモラシするほうがもっと……》

《オムツからあふれちゃったらどうしようとか思わなかった?》

《……ちょっと。でも……、それでもいいかなって》

 昴星のカメラか諭良の湿っぽいおちんちんに寄った。

《……ちょっとおっきくなってきた?》

《うん……、勃起しそう……っあ》

 昴星が指でピンと弾く。《ほんとだ、硬くなってきてる。諭良はほんとに撮られんの好きなー》とからかいながら、先っぽを引っ張って伸ばす。昴星に摘ままれ引っ張られ、細まって伸びた皮の中で諭良の「芯」がどんどん背伸びして行くのがよく見えた。

《勃起……》

《ひひ。……くせーちんこつままれて勃起してんの。ほんとに諭良はヘンタイだよなー》

 昴星が指を離すと、ぴたっと音を立てて下腹部にそっくり返った。

《んで? どうしたらいい? 何撮って欲しい?》

 昴星の問いかけに、諭良は不安定な体勢のまま、セーターを脱ぎにかかる。しんどそうな諭良を見兼ねて、昴星もそれを手伝った。すっぽんぽんになるもスマートな身体の中心で、諭良のおちんちんは一層勢い付いたかに見える。またしどけなく足を開いて、

《あの……、昴星の、オシッコかけて欲しいんだ。……昴星のオシッコの臭い、……欲しい》

《別にいいけど……、おまえおれのオシッコ臭いって言ってんじゃん。おまえがって言うか、おまえも流も才斗もおにーさんも》

 諭良はふるふると首を振った。

《臭いけど、好きだよ。みんな昴星のオシッコの臭い、大好きなんだと思う。ぼくの身体、昴星のオシッコの臭いになったら嬉しいし……》

《……タオルとかあんの?》

《うん。でも、拭かない。拭かないで乾かして、昴星の臭いのまま家帰る》

《……なんかカブれたりしそうだなー……》

 そう言いつつも、ごそごそと昴星はハーフパンツを下ろすようだ。昴星がカメラの視角を下げると、

《ひひ。おにーさん見える? おれのちんこだよー》

 指でぷるぷる揺らして見せた。膝の上の諭良がぼくの反応を敏感に気取って、

「お兄さん……、本当におちんちんぷるぷる好きなんですね」

 と笑った。

《んで? どこにかけたらいいの?》

《全部》

 画面の中の諭良は両手を広げて求める。

《顔も身体もおちんちんも全部、昴星のオシッコの臭いがいい……》

「このあいだ……」

 諭良は言う。「みんなに、オシッコかけてもらったの、すごいうれしくって……、ぼくの身体、オシッコ臭くなっちゃったの、すごい、興奮したんです。だから……」

《んー、わかった。じゃー出すよ》

 昴星は諭良の全身を写し出す。画面の中央下部分から、勢い良く一筋の黄金水が吹き上がり、諭良のお腹に注がれた。

《ああ……、昴星のオシッコ……》

 諭良は飛沫を浴びながら、嬉しそうに顔を綻ばせる。昴星が上へ下へ振り撒く液体を肌にすり込むように掌を這わせて、顔に飛び散るときには口を開けて味わう。その表情は、喜悦そのものだ。

《ん、っと。諭良お尻もかけてやるよ、後ろ》

 一旦オシッコを止め、早口で昴星が命じた。すぐに諭良は犬のように便座の上、膝をついてお尻の穴とタマタマの裏っかわを晒した。その中心へと、びしゅっと昴星のオシッコがぶちまけられる。

《あはっ……!》

《うお跳ねた……》

 とカメラがぶれる。けれどそのまま(多分、背伸びをして)昴星は諭良の背中へとオシッコを巡らせ、諭良は嬉しさに背中から流れ滴る尿を自分の胸へ腹へ塗り付ける。

 昴星のオシッコがやっと終わった。諭良がゆっくりと元の体勢に戻ったのを見て、《諭良、顔こっち》昴星が自分の股間に招き寄せる。諭良が恍惚に塗れた顔を寄せるや、

《ひゃっ……》

《んひひ》

 最後の一絞りを顔面にぶちまけた。そのまま諭良の形のいい鼻におちんちんの先を擦り付けて雫を払う。

《すっげーな、おまえ、超くせーぞ》

《んふ……、昴星のオシッコでいっぱい……、嬉しいよ……》

「本当に……、すごく嬉しかったんです、身体が全部昴星の臭いになって、……昴星と一つになったみたいに思えて……」

 諭良は乾き始めたオモラシパンツの中で激しく性欲を主張させながら解説を加える。そして、「後で……、お兄さんのオシッコも、欲しいです」とお尻をぼくに擦り付けておねだりをした。

「このあと……、どうなるか、見たいですか?」

 そりゃあ……、もちろん見たいに決まってる。

 だけど、膝の上にいるのだ、諭良が、画面の向こうではなくて、……本物の存在感を伴っていてくれるのだ。

「昴星も、すごい可愛かったですよ?」

 うん、それも見たい。たぶん二人はこの後めちゃくちゃセックスをする。だけどぼくは今この時間を「恋人」のために使うべきだろう。

 手を伸ばして、マウスで動画を止めた。

「あ……」

「こっち向いて、諭良」

 背が高いと言っても、所詮は六年生レベルとしてのもの。大人の男としても平均より十センチほど背の高いぼくの膝の上に、諭良は昴星や諭良と同じ安定感を伴って収まる。

 キスをする。

 いつも閉じる両目を、諭良はびっくりしたように丸くする。

「すごいえっちなものが一杯詰まってるんだね……、あのフラッシュメモリー」

 実際、今ので「三番目」って……、じゃあ一番はどんなのなんだ一体。

「でも今は、ぼくの目の前にいる可愛い『恋人』のことをさ、味も臭いも含めて楽しまなきゃ損だと思った。……諭良のオシッコも、昴星に負けないぐらいに臭くって、ぼくは大好きだよ」

 だいぶ乾いてきた。そのせいで、臭いは徐々にその質を変え始めている。湿った臭いと乾いた臭いと、両方混じり合って、いまが一番臭いタイミングである。

「お兄さん……」

「オシッコ、また出る?」

 諭良はこくんと頷いて、「オモラシ……、しますか?」と問う。

 ぼくは首を振り諭良を布団に横たえる。それから乾き始めたブリーフを太腿までずり下げて、ぴたりと口を閉じたおちんちんの皮を少し剥きおろして、隙間を開ける。男の子がオシッコをするときに便器からOB(もしくは、ガーター)させてしまうのは、その皮が閉じているときが多い、……のではないか。

「このまま、オシッコしてごらん」

「え……」

「諭良の身体、もっと臭くしようよ。そうしたらきっとすごく美味しくなるよね?」

 諭良は目を丸くしてぼくを見上げている。

「つまりさ……、この間、昴星と流斗のトイレになってる諭良も可愛かったけど、……例えばね、諭良自身のオシッコで濡れた諭良は、諭良そのものって感じでさ、もっと可愛いんじゃないのかなって」

 全身をオシッコまみれにする、というのは流斗も昴星も以前見せてくれた。あれはとてもいい、……と思うのがおかしいという自覚はある、けれどやっぱりいい。常識的な男の子は絶対に嫌がるはず、だけどぼくの「恋人」三人のどこに「常識」があるだろう? そんなもの、楽しむためには必要ないとかなぐり捨てしまえるような雄々しい少年たちだ。

「でも、……ここ、お兄さんのお布団……」

「心配要らないよ。布団は他にもあるし、……どうせ今夜泊まって行くでしょ? そうしたら諭良はきっと、大きな『世界地図』描いちゃうんだ」

 諭良に、オムツをさせなければ、間違いなくそうなる。

「わかりました……」

 仰向けの諭良は、こくんと頷く。

「ぼくの、身体……、おいしくなったら、お兄さん……」

 今度はぼくが頷く番だ。「もちろん、身体中おいしく食べてあげなきゃね」

 諭良が微笑む。そういう微笑みは、彼が普段学校で見せているのと同じものであるはずで、……つまり、クラスの女の子たちが見て心奪われるような類のもの。もちろんぼくだって、……諭良がトイレで勃起を見せ付けて誘うような子でなかったとしても、思わず恋に落ちてしまうような美しいものだ。

「ん……」

 きゅん、とおちんちんが震える。

「出せそう?」

「はい、出します……、出ますっ……オシッコ……!」

 はじめは、遠慮がちに。

 すぐに勢い付いて、勃起からオシッコが噴き出した。諭良はさっきの映像の中で昴星を浴びたときのように、身体に浴びせるオシッコを染み込ませるように手のひらで塗り広げて行く。

「どう? 昴星のもよかっただろうけど、自分のもいいんじゃない?」

「はいっ……、オシッコ、ぼくのも、あったかくって……、臭いです……」

 諭良は少し腰を上げて、放物線の終端をその美しい顔へ向けて濡らし、口を開けた。口に含み、飲み下し、

「ぼくの……、昴星のより味薄いですね……」

 冷静さを保って感想を述べる。

「そうだね。……でも、諭良のだって美味しいと思うよ? 今だって諭良、どんどん美味しくなってる」

 薄い黄色の飛沫は勢いを収めた。お腹にせせらぎを伝わせて、ひと震えして全て出し切る。濡れたせいで艶を帯びた身体は尿臭に包まれ、食欲ではなく性欲をそそられる。

「お兄さん……」

 諭良は両手を広げてぼくを導く。

 諭良は肌の色が、他の二人よりも薄い。

 ぼくを家庭教師として雇った諭良のお父さんには、一度ご挨拶をさせていただいたことがある(流斗のご両親もそうだけど、彼らぐらいの子とこういう関係になるにあたって、両親から信頼を得ているというのは非常に重要だと言えそうだ)けれど、綺麗な金髪の白人さんだった。ということは、諭良はお父さんからその透明感のある肌の色を、まだ会ったことのないお母さんから、美しい黒髪と相貌を受け継いだということだ。そんな愛の結晶に、少年自身の尿をまとわせてもらって、ぼくは味わう……、何と罪なことだろう。

「……っん……ん!」

 間近に顔を寄せて、艶っぽく滑らかな鎖骨に唇を落とす、そこから、キスと舌とで下りていく。昴星よりは男性的で、流斗よりずっと大人っぽい。だからぼくが諭良とこういうことをするとき、やっぱりちょっと、同性愛的な趣をなす。……三月末で諭良が外国に行き、もしまたいつか、日本でか彼の国でか会うことになったとしてそのとき、もう諭良は大人になっているだろうと思う。けどぼくが残念に思うのは、諭良が大人の身体になることではなく、その過程を日々に見ることができないという事実の方だ。諭良は大人になってもきっと、いまとほとんど変わらない美しさを保っているだろうと思うのだ。そのときには、オネショ治ってなきゃ困るだろうけど……。

「お兄さん……、あの」

 薄くもあり、男の子らしくもある胸板に唇当てて尿と肌の味を楽しんでいたところ、またオシッコを我慢するように諭良が腰を、……いや、上半身をよじった。

「……おっぱい……」

「うん。……諭良もおっぱいされるの好きになった?」

「はい……、おっぱい、されるの、ドキドキします、あと、……気持ちいいです……ンっ……」

 流斗のは、本当に男の子のおっぱい、「くすぐったい」と言うし、ほんの小さな粒。

 昴星は、ボリューム感のある(というと本人は傷つきそうだ)柔らかさ、だけど乳首はやっぱり、男の子だから小さい。

 二人に比べると、乳首がほんの少し、一回り大きいな、という気がする。

「諭良、おっぱいの先っぽコリコリしてる」

 指でいじくると、小さな声で感じながら、また少し笑う。

「おっぱいも……、お兄さんにしてもらえるの嬉しくて、勃起してるんです……」

 ツンと膨らんで尖った様子は確かに「勃起」という形容がしっくり来る。口を当てて舐めてみれば、舌にしっかりひっかかり存在感もある。そして、ことによっては昴星よりもそこでよがっているかもしれない。重ねた肌、ぼくの胸の辺りに「おちんぽ」の先を擦り付けてくる。

「諭良は……、オナニーのとき、ここいじる?」

 ぴく、と固まり、それから恥ずかしそうに頷く。

「でもそうしたら、タマタマはいじれなくなっちゃうんじゃない?」

 また、こっくり。

「……タマタマ、おさえてするときと、おっぱいいじるときと、どっちもあります。おっぱいいじりたいときと、タマタマ触りたいときと、両方あるので……」

 ぼくの唇が離れると、もどかしげにまた上半身を動かして求める。ちゅ、と音を立てて吸うと「んふ……っ」と本当に感じ切った声を漏らす。

「じゃあさ、諭良……」

 ぼくは諭良を抱き起こして、正面に座らせる。一度二度と唇を重ねて、「おっぱいでオナニーするところ見せてもらっていい? ……こんなにオシッコまみれの臭い身体になっちゃってさ、もうガマン出来ないだろ?」

 諭良は、恥ずかしそうにそれを認める。

「ぼく……、し終わったら、お兄さんのも……、します」

 いまは自分の気持ちよくなることだけ考えていればいいのに、そんな健気なことを言う。

 右手で「おちんぽ」を、そして左手の指では、普段は色が薄いのに勃起したせいで赤らんだ左の乳首を摘まんだ。

「んぅ……っ」

 長さ、五ミリぐらいはあるだろうか。でもって太さもある。「粒」という言葉にはもう収まらないその場所を、諭良は盛んに擦り爪を立て、そのたび「あん……っん、おっ……ぱい……っ」声を濡らす。

「すごいね、おっぱい気持ちよさそう」

「はいっ……、おっぱいいじるのっ、気持ちいいです……!」

「いっつもそうやってるんだ?」

 こくこく、頷いて認めるや、右手がスピードを上げる。

「だってっ、だっておっぱい気持ちいいっおちんぽっ、おっぱいですっごくビクビクするのっ……」

「諭良のおっぱい、女の子みたいにさ、気持ちよくなる場所っていうの、見ててわかるよ」

 空いている右の乳首はぼくが弄る。諭良は「あひっ」と声を上げ、よだれを垂らした。

「すごくえっちだと思う。興奮するよ、可愛い」

 諭良の手はいつものように皮を伸ばし始めた。射精が近いのだろう。オシッコは乾き始めていた場所が、ぐちゅぐちゅと音を立てる。

「お兄さんっ……見てっ、見てくださいっ、ぼく、ぼくおっぱいでっ……」

「いきそう? おっぱいでいくの?」

「はいっおっぱいでっいきますっ、見てっおっぱいっ……いきますっ見てっ、いくっいくいくっ、お、……っほぉッ、おっ……」

 どろぉ、と包皮の隙間から薄まってきた精液が溢れ出す。ぼくが自分のペニスの先を諭良の包皮に擦り付けると、諭良もそのトロトロを擦り付けて来る。

「ん……んふふ、お兄さん……お兄さんの見てる前で……、おっぱいで……いっちゃいました……でも、お兄さんのおちんぽ、おっきくなってるの、うれしいです……」

 また、キスをする。諭良は射精したことで一層欲を勢いづかせているようだ。

「そりゃあ、諭良が可愛かったからね。……おっぱいでいっちゃうとこ、本当に可愛くてえっちだったし、……オシッコもいい臭いだったしさ」

 諭良はぼくに精液を塗り付けてから、皮を剥いて敏感な場所をぼくの先端とくっつける。「キスしてるみたい……」とうっとり微笑み、ぼくに抱き着き、頬に、肩に、それからぼくの乳首にもキスをしてきた。

「お兄さん、……約束です。今度はぼくがお兄さんのこと、気持ちよくしてあげる番……」

 ぼくは諭良に湿っぽい布団の上、横たえられた。諭良はぼくに身を重ね、全身にキスの雨を降らせてくる。右手で彼自身の精液に塗れた場所を扱きながら……、愛に満ちた唇は胸に腹に、両方の腕、指先に、そして足の甲にまで至ったところで、

「お兄さん、好きです」

 ぼくの上に、今度はシックスナインの体勢で重なる。迷いなくぼくはその小ぶりなお尻を抱き寄せ、しょっぱいお尻の穴を舐めた。

「んふぅ……、おまんこ……!」

「うん、……諭良のおまんこ、しょっぱくて美味しいね」

 臭いも、とびっきりのもの。

「お兄さん……、おまんこの……、中もぉ……」

 舌の先で蕾はヒクヒクと誘うかのようだ。無意識だとしたら淫らすぎるし、意図的にだとしたらあざとい。どっちにせよそんな悪い評価を下すには当たらない。どっちにしたってぼくには可愛い。

 両手の指で広げて、ぼくが、昴星が流斗が、這入ることで一層の幸福をこの子に生み出す粘膜に舌先を当てる。さすがにそこにはオシッコの味はしない。ただ諭良がおちんぽをひくつかせるのがダイレクトにわかるだけでいい。

「んあぁ……、お兄さん……、好きっ……」

 泣き声を上げるなり、諭良は自身の精液を纏ったぼくのペニスにしゃぶりついた。

「おひんぽっ、おにいふぁっ、おひんぽっしゅきれしゅ、おにいふぁんのぉ、おひんぽっ、おひんぽっ……」

 声をただ漏らしにしながらのフェラチオ、……普段大人びた顔をして、知的に振る舞っている反動だろうか? 先日ぼくが「おちんぽ」という呼び方を教えて以来、その単語を口にするときの諭良は流斗よりも更に幼い子になっているようにさえ見える。

「うん……、諭良、気持ちいいよ……」

 更に言えば、……この子は自分の顔が「美しい」という自覚はないだろう。花は自らの美しきことを知らず同じ株の花の美しさを褒め称えるから美しい……、って、何の言葉だったかは定かじゃないけれど、この子は昴星と流斗を「美しい」と定義するがゆえに、もとより美しいその顔をいっそう煌めかせることとなる。

 ん? ってことは、昴星も流斗も同じか。三人でどんどん美しくなって行くんだ。

 そして今夜、その中の一人がぼくの「恋人」である。

「ぴゃっ……はっ、あはぁっ……、おにぃさんの、精液っ、精液……ん、っ、おいひ……、お兄さんの精液、まだ、こんな、たくさん……っ」

「……可愛いし、気持ちよくしてくれるからね……」

 息を落ち着けながら、一旦性欲は収まっているはず、……でもぼくは諭良のお尻を割り開いてアヌスを舐める。

「やぁ……!」

「こんな恥ずかしいところ丸見えにしてしゃぶってくれるんだもの、……まだまだ出せるよ。諭良もおまんこに欲しいでしょ?」

 頷くように、そこがひくつく。

「中、まだ残ってる?」

 諭良は恥じらいながら、「はい……」と応える。

「でも……、うんちは、お布団でしたら、ダメですよね……。だから、ちゃんと……、おトイレで出します……」

 オシッコ味の身体を起こし、立ち上がる。ぼくも起き上がり、見下ろしてみると、……うん、布団がすっかり諭良の「臭い」を沁み付かせている。寝心地はきっと、悪くない。

 諭良は浴室から洗面器を持ってきた。

「おトイレ?」

 とぼくが訊くと、勃起をこれ見よがしに震わせつつ頷いた。「お兄さんの見てる前でしたいから……、だから……、ここでして、いいですか?」

 礼儀正しく訊いたって、「部屋の中でうんちしたい」ってすごい告白だ。けど、もうこの部屋だってこの子たちのトイレである。そもそも諭良の場合、その身体にしたってそう。

「構わないよ。……どんな風にしたい?」

「あの……、昴星と流斗が、お兄さんに抱っこされながらしたって教えてくれました」

「うん。……諭良もあれやってみたい?」

「はい……」

 昴星ほど小さくも、流斗ほど幼くもない自分がそうしたがる恥ずかしさを判っているのだろう。

「どっち向きがいい?」

「カメラに向かって……、お兄さんに抱っこされながらがいいです……」

 そう言う諭良は伏し目がちだ。顔を隠したって何よりもの「証拠」を、晒しながら排便したいと求める。……いや、好意的に受け止めるのなら、ぼくが後で見て愉しめるようにという優しさであると言うことも出来る。

 三脚に委ねたカメラの向きを調整した。諭良の全身がこれで収まる。ぼくは足を開いて正座し諭良を膝に乗せ、諭良は自分の肛門との位置関係を確認しながら洗面器をぼくの膝の間に収めた。簡易的なトイレ、……ってこれだとぼくが「便器」ってことになるな……。

 まぁ、美少年の便器になるならそれも悪くないかもしれない。実際、この子たちにオシッコ引っ掛けられたのは一度や二度じゃない。

「あ……」

 諭良の太ももを両手で抱えて、お尻を宙に浮かせる。

「すごい格好だね」

「はい……、ふふ、ぼくのおちんぽもお尻の穴も丸見えになってます……」

 諭良の顔は見えない。けれどその美しい顔を微笑ませ、長いまつ毛に縁取られた双眸を潤ませていることは、見るまでもなくわかる。

「うんち……、出しますね……?」

 どうぞ、とぼくが促すと、太ももから力が抜ける。

「んふ……っ、ん……、あ……、出てきました……」

 諭良を抱っこしているから、ぼくはカメラに映っているものを見ることは出来ない。

「あっ、すごい、すごい臭いの……、いつもより、やらかいの……、出てます……、すごい音……っ」

 下品と言ってしまっていいと思う。放屁混じりの排便で、諭良のお尻の下からは一気に便臭が広がり始めた。……抱えておいてよかったなと思う。「立ったまま」だったら諭良の内ももも汚れていたかもしれない。

「んふっ、ふふっ、すごいすごいっぼく……っ、汚いうんちたくさんしてるとこ……撮られてるっ、お兄さんお兄さんっ、ぼくうんち撮ってもらってますっ」

 オシッコも噴き出しているようだ。諭良ははしゃいだ声を上げて尿を浴び、排便と放尿そのものに興奮を訴えている。下手したらこのまま触らずに射精まで達してしまうんじゃないかと思うぐらいだ。

「んん……うんち……、全部出ましたよぉ……、えへっ……、臭くて汚いうんち、……いっぱい出ました……」

 諭良はぼくに抱えられたまま、「ぼくに向けて」ピースをカメラに向ける。普段冷静でカメラを向けてもそういうリアクションはしそうにない諭良のピースサイン、諭良が楽しそうなら、後で見るのが本当に楽しみになる。

 中身のものを出し切ったにせよ、ぼくとしても「すっぴん」のまま入る訳にはいかないし、諭良も、「今日のうんち、ゆるかったから、ちゃんと拭いてきますね……」とさすがに照れ臭そうに泥状の便の盛られた洗面器を手に立ち上がる。濡れた身体からはポタポタ、浴びたばかりのオシッコが垂れている。

「お腹痛かった?」

 お尻をロールペーパーで拭い、洗面器の中身をトイレ用おそうじシートで便器の中に零しながら、諭良は首を振る。

「多分、ですけど……、お腹の中にブルブルするのずっと入れてたからだと思います。その……、震動を与えられて、お腹で水と、うんちが混ざりすぎちゃったのかなって……」

 液状化現象……、いやちょっとちがうかな。

「さっきお外でしちゃったときも、やわらかかったです。……でも、お腹痛くはないですよ? 大丈夫です」

 諭良は気丈に言う。もし仮に、本当はお腹が痛かったとしても、そう言えばぼくが抱くのを自重してしまうとわかっているのだろう。

 再び部屋に戻って、キスをしながら「考えてみると……」横たえて、またフレッシュな尿の味と臭いを纏った諭良の身体を抱き締める。

「ぼくら、これだけのことしてて、具合悪くなったことないって奇跡的なことかもしれないね……」

「はい……。その、男の子同士ですし……、でもぼくはお兄さんいつもちゃんと気を使ってくださってるって思います。……あの」

 諭良はぼくの頬に手を当てて顔を上げさせる。

「……お兄さん、初めてぐらいのときに、ぼく以外の男の子と……って、言っていましたよね?」

 そういえば、そんなこと言ったっけ。でもって流斗のオモラシ動画をこの子に見せたっけ。

「あの、『ぼく以外の』っていうのは……、昴星と流斗と、……あと由利香さまだけ、ってことですよね……?」

 おや。初対面のときの口から出まかせを、この子は信じていたのか……。

「もちろんそうだよ。……っていうか、他にいると思ってたの?」

 諭良は唇を尖らせて、「……いないといいなって、思ってました」と言う。

「昴星たちは……、ぼくにとっても大切な友達ですから、……でも、もし他に、知らない誰かとお兄さんが……、ぼくとこうやってしてるみたいにしてるって思うのは、やっぱり……」

「心配しなくてもいいよ……、ぼくは、……あの日は諭良があんな風に大胆に誘ってくれたから勇気振り絞って君と関係を結ぶことが出来たわけでさ。基本的にはぼくは、……なんていうのかな、男の子のおちんちん見たいけど、そう、……オシッコしてるとこを、こっそりね、ばれないように覗き見て……、それで満足してた。だから、……諭良以外には昴星と流斗と、あと女の子では由利香だけ。……と、あと年末にね、由利香の友達の男の子二人だけ」

 だけ、という言葉が落ち着きをなくすぐらいには、……多いよな。

 諭良はでも、安心したように頷いた。

「ぼくも、才斗と昴星と流斗と由利香さまと、……お兄さん」

 どうやら「多い」ってことを、諭良自身もきちんと認識しているらしい。

「でもって、今夜はお兄さんの恋人です。お兄さんのために、います」

 穏やかで優しいキス一つ。「幸せだなって、思います」それはもちろん、ぼくも同じ。

 諭良のおちんちんは少し落ち着いていた。抱きしめる腕を緩めて手を伸ばして、ぷるん、震わせて見せた。

「もう……、本当に好きなんですね」

 諭良は咎めるように笑ってぼくの乳首を舐め、立ち上がる。

 ぷるん、ぷるん。

「お兄さんが見たいならいくらだって見せてあげます……」

 ぷるん、ぷるん。見飽きることのない揺らめき。

「……ねえ、諭良? あのさ、今更なんだけど」

「はい……?」

「諭良、ぼくに対して敬語なんて使わなくていいよ。……その、確かにぼくのほうがずっと年上だけどさ、『恋人』っていうのは、もっとこう、対等な関係だとぼくは思うし、それにほら、昴星たちもぼくに敬語は使わないよね?」

 諭良は、ちょっと困っているようだった。

「でも、それは……、流斗はまだ四年生ですし、敬語使えなくっても仕方ないと思うんです。それに昴星は……、昴星の場合は、あの子、そういう子ですし……」

 まあ、言葉を選んではいるが、諭良の言う通り昴星は「そういう子」である。中学上がってから苦労しないといいけどな……。

「敬語を使わないでくれたほうが、ぼくも嬉しい。なんていうのかな、……大人と子供じゃなくてさ、諭良と、『恋人』って感じがすると思うしさ」

 こいびと……、と小さく呟いた。諭良の中ではとても重い意味を持つ言葉だ。

 ぼくにとっても、それはもちろん同様に。

 やがて、こっくり、諭良は頷く。

「わかりました……、わか、……った」

 お、なんだかすごく初々しい。

「やって、み……る、よ、お兄さんの、ちゃんと、恋人になりたいから……、敬語は使わないようにし……、す、る……」

 うん、可愛い。いつの間にか止まっていた「ぷるぷる」を、指でつついて催促する。

「う……、おちんぽ、もっと……?」

「うん。見せて」

 諭良はさっきまでよりも恥ずかしそうになった。敬語、という知的な要素を失ったことで、もう鎧が一枚も残っていないのだろう。

「お兄さんの……、えっち……」

 ぎこちなく、また、ぷるぷるさせ始めた。

「諭良はぼくのこと、えっちだと思うの?」

 こく、こく、頷きながらも腰は止めない。

「だって……っ、こんなの……、わかんない、見たいって、思うの……」

「でもぼくは、……君の恋人は、君のおちんぽがぷるぷるしてるの見てすごく興奮するようなヘンタイだからねぇ……。でもヘンタイな分だけ諭良のこと、心の底から可愛がりたいって思うよ?」

 諭良は、困り切る。困りながら腰を振り、徐々に力をこめ始める。

「あ……あっ……勃起……勃起しちゃう……っ、お兄さんっおちんぽ……、勃起しちゃう……」

 皮の先が内腿に当たってぺちぺちいっていた音が消えて、ゆらゆら動く勃起に対して垂れた皮だけが小刻みに震える。

「うん、ありがとう。可愛かったよ」

 諭良の皮の先にキスをして見上げる。諭良は紅い顔で、……小さく微笑む。

「勃起しちゃ、った……」

「そうだね。諭良のおちんぽがさ、ここの中の」小振りなタマタマをつんと指で押す。「出したいって言ってる。……元気いっぱいだね」

「ん……、ふふ」

 諭良は皮を捲って、刺激的な臭いの亀頭を晒した。

「お兄さん……、ぼく、オシッコもうちょっとだけ、出るよ……?」

 少しずつ、その口調にも慣れてきただろうか。

「お兄さん、ぼくのオシッコ、飲みたい……?」

 うん、と頷くと、皮を剥いたままぼくの口へと差し伸べる。

 ぼくは諭良の指を外させた。「あっ……」くるんと皮は元の通り、亀頭を覆い隠した。

「こっちの方が、諭良のおちんぽらしい感じがする」

「もう……」

 諭良は、唇を尖らせた。しかし僕が口に含むのに対しては従順だ。

「じゃあ……、ぼくの、オシッコ……、飲んでね……? ぼくの……、出してすぐのオシッコ……」

 震えが走り、口の中へせせらぎが流れ込む。

「はぁあ……、……んっシッコ……してる……お兄さ……オシッコのんでる……」

 そんなに量は多くない、しかし、それだけに貴重に感じられる、黄金の味。

「ねぇ……、お兄さん、ぼく、お兄さん」

 諭良は後ろに手を回した。「ぼくのお尻に、入れたく、ない……?」

「諭良は、欲しい?」

「うんっ、お兄さんのおちんぽ欲しい! ……あのね、ぼく……、ずっと、お兄さんのおちんぽ欲しくって……」

 顔付きは変わっていないのに、何だか子供っぽくなった気がする。でもこれこそが本当の諭良の姿だろう、飾ることのない、……飾らないままでも十分すぎるほど美しい、諭良という少年そのものの姿。

「お兄さんに会えないとき、ときどき、オナニーするとき、……お兄さんのおちんぽだって思って、指で……、お尻の穴、いじってる」

 ころんと湿っぽい布団に寝転がって、指を舐め足を抱え、さっき臭いものを生産したばかりだというのに清純な色をした場所に人差し指を当てる。

「こうやって……、お兄さんにしてもらってるみたいに……」

「うんち出てくる穴いじるの?」

「うん……、うんちのところ……、自分で気持ちよくしてる……」

「さっきの、細かったからさ。諭良の指で広げられるかい? ……あ、爪はきれい?」

 諭良はにっこり笑ってぼくに指を見せる。しっかりと切り揃えてあって、清潔感がある。

 その指と穴にローションを垂らしてあげたら、諭良はすぐにアヌスを使ったオナニーを披露し始めた。

「お兄さん、見える……?」

 指はすんなりと、細い穴の中へ収まってしまった。

「うん、丸見え。……こんなえっちなことしてるんだ?」

「ん……、最近……、ここ、気持ちいい……」

 言葉の通り、諭良は目と鼻の先にある自分のペニスをぴくぴくと震わせている。昴星もそうだけど諭良も身体の柔らかい子だから、以前セルフフェラを見せてもらったこともある。

「ひょっとしてさ、普段そのままおちんぽしゃぶったりしてるんじゃない?」

 諭良は「ふふ……」と笑って素直に認める。

「勃起すると……、おちんぽ、ほんとにすぐそこにあるから……、お尻が気持ちよくなってきたら、自分で……」

「見せてくれる?」

「見たいの……?」

 くすりと笑って「……こうやってね……」ちゅぷり、自分のお口へと幼い勃起をそのまま収め、自らに差し込んだ指をぎゅっと締め上げる。お尻の穴を広げながら、美少年は自分の性器を食んでいる。

 素晴らしい景色だと言わざるを得ない。

「んは……、オシッコで、おちんぽしょっぱくって……」

「美味しい?」

「うん……、おちんぽの味、好き、……でもいちばん好きなの、お兄さんのおちんぽだよ……? ここに……」

 量の指で、まさしく「くぱぁ」として見せる。

「ピンク色の内側が丸見えだ」

「ピンク色なの……?」

 諭良はそこへ視線をやるが、「見えないね……、当たり前だけど……」と諦めて、腕をほどいた。

 それから「お兄さん……」くるんと腹這いになってからの、四つん這い。「お尻、……入れて」

 粘液を纏って濡れた、少年の蕾を前にしてぼくがこの上こらえる理由なんてない?

 でも、もうちょっと。

「タマタマ、垂れてるの可愛いね」

「タマタマ……? やっ……」

「諭良のここさ、昴星のより小さいよね。おちんちんは昴星の方が小さいけど、……その分あの子はタマタマが目立つし、諭良は逆に皮が長いから、タマタマが勃起したときはじめて見えるようになる」

「うん……、昴星の、タマタマ、大きい……。だからたくさん精液出せるのかなって、ちょっと羨ましい……」

「諭良の小さいタマタマも可愛いよ」

 指二本で撫ぜると、小さくともふんわりしている。

「んふ……、ちょっと、くすぐったいよ……」

「ここはまだ感じない?」

「うん……、でも、昴星は感じるみたい。舐めたらちっちゃいおちんぽぴくぴくしてた……。お兄さん、ぼくのタマタマいじるの楽しい?」

「タマタマだけじゃないけどね、楽しいのは……。諭良はどこもかしこもツルツルのすべすべなのに、タマタマとお尻の穴だけはシワシワだね」

 足の間を覗き込むぼくには垂れ下がるタマタマと、砲身こそ反り返っているのに先っぽで垂れる皮が見えている。入れてもらうつもりでいたはずの諭良は足を広げてぼくには向けて座り直し、「タマタマ、したい……?」と訊き、自分でそこを撫でて見せた。二つの珠を隠したその袋は、先程よりも少し縮み上がっている。

 手をついて、そこを舐めてみる。他の肌よりも臭くて、濃いしょっぱさがある。

「シワシワの中にオシッコ入ってるんだろうね、……諭良のオシッコ、……っていうか、オモラシの味がする」

「ん……、ふふ……、ぼくのオモラシ、おいしい……?」

「うん。諭良はどこ舐めたって美味しいけどね」

 先っぽを吸い上げる。オシッコの残りと、腺液の味がする。そろそろいきたくなっているのだろう。

「お兄さん、……ぼく、ぼくのおちんぽとタマタマ、どんな味か知りたい」

 寝転がって両手を広げてキスを強請る。こんな味だよ、と教えるために身を重ねたら、ぼくの亀頭は諭良のタマタマにぴとっと当たる。「ん……ふっ、お兄さん……おちんぽ……すっごい熱いの、うれしい……、ぼくでお兄さんが勃起してる……うれしい……」

「ぼくも、……こんなぼくで諭良が喜んでくれるっていうことが、すごい嬉しいよ」

 ぼくにとって、……最高に美味でかぐわしい少年、……ぼくにとってだけそうであればいい。諭良が勃起すればぼくも勃起する、ぼくらは認め合い感知し合う幸せなスイッチだ。

「今日は、……このまま、が、いいな」

 諭良はぼくのおでこにおでこを当てて言う。

「このまま?」

「うん……、いつもは、後ろからだったり、お兄さんの上にまたがったりするけど、……こうやって、してるの、……すごく恋人っぽい気がするから……」

 確かに、「キスも出来るしね?」諭良はこくんと頷く。

 ぼくが一度身を起こし、ゴムを装着する間も諭良はその目に焼き付けようと思うみたいにぼくをじっと見つめていた。それから思い出し笑いをする。

「この間……、昴星に入れてもらったとき」

「ん?」

「昴星、溜まってたみたいで……、入れてすぐいっちゃったんだ。でも、ぼくがもっとって、ぎゅってしたらね、昴星、ぼくの中でオモラシしちゃった」

「はあ……」

「ベッドが真っ黄色になっちゃったよ。でも、嬉しかった。ぼくのオネショのシミがついたシーツ、昴星のオシッコもいっしょになった気がして……」

「……念のために言っておくけど、ぼくはオモラシはしないよ」

 おかしそうに、諭良は笑って頷いた。足の間にぼくが腰を据え、先端を押し当てると「んふ……、おちんぽ熱い……」と色っぽく呟く。

「諭良、好きだよ。……大好きだよ」

 身を重ね、囁きながらゆっくり、諭良の中へ押し込んで行く。諭良は目を閉じ、

「あー……おちんぽ……、おちんぽ入ってる……」

 幸せを満喫するようにとろとろと声を漏らして、ぼくを受け入れた。

 そのまま抱きしめあって、しばらく黙り込む。ぼくはぼくを求めることをはっきり報せてくる柔らかな肉壁を味わうことに集中するし、諭良はぼくの熱をひとかけら残らず感じているのだ。

「ん……、ふふっ、やっぱり……お兄さんのおちんぽ、好きだよ、ぼく、お兄さんの恋人でよかった……」

 同じ気持ちでいることが、まずなにより「恋人」の要件を満たすのかもしれない。ほんの言葉一つ、単語一つに過ぎないけれど、ぼくらはその「言葉」以外に互いの関係を表すことができない。だから、……些細でも、すごく大切なこと。諭良が敬語を使わないこともその一つと言うことができそうだ。諭良が自分の性器を「おちんぽ」って呼ぶことも。

 だから、伝える。「気持ちいいよ、諭良の中……、ぎゅうってしてくれてる」

「ん……、お兄さんのぉ……おちんぽ、 ぼくも、すごい……っ、きもちぃ………っおまんこ……」

 また、キス。ぼくらがこの行為に飽きる日なんて、きっと永遠に来ない。

「言葉って、不思議だね。……もう少しだけ動かないでこのままでいい?」

「ん……」

「諭良が『おちんぽ』って言うと、諭良のおちんちんは『おちんぽ』になるし、『おまんこ』って諭良が言うから、ぼくにとってもいま入ってるとこは、『おまんこ』になるんだなぁって……」

 うまく伝わるか、あまり自信がなかった。でもやっぱり諭良は賢くて、

「あのね……、ぼくは、……本当は、『ちんちん』って、言ってたんだよ……?」

 と教えてくれる。

「本当は……?」

「うん……、でも、お兄さんは、ぼくのここに、……丁寧に『お』を付けて、『おちんちん』って言ってくれた……、だからぼくのここ、『ちんちん』じゃなくて『おちんちん』になったし、今は、『おちんぽ』になったんだ……」

 へえ……、と思う。意外な気もする。諭良は最初からずっと「おちんちん」って呼んでたと思ったから。

「だって……、ぼくの身体の、もう半分の国の言葉だと、ぼくのここは違う言葉で、一種類しかないよ、日本語みたいに、『お』を付けて、丁寧にするなんてこと、ない」

「あ……、ああ、そうか」

「だから……、『ちんちん』だし、『お尻』もほんとうは『尻』だし、オシッコは、『シッコ』っていうのが本当な気がしてたけど、……周りの子とかが言ってるの聴いて、自然に治ったのかなって思う部分もあるし、……でも、ぼくの『ちんちん』を、『おちんちん』って呼んでくれたのは、お兄さんが最初だよ。自分では、なんとなくそう呼ぶようにはしてたけど……」

 諭良はぎゅっとぼくに抱きつく腕に力を込め直した。「ぼくのこと、『恋人』って言ってくれたのも、お兄さんが最初……」

 そうか。……ぼくは無意識のうちに諭良のこと、定義していた。諭良の身体のあちこちに知らないうちに付けていた名前が、諭良には大きな意味を持つことになっていたんだ……。

「……諭良が『しっこ』って言うの、なんだか不思議な気がするね」

「そう、かな……?」

「うん。なんだか子供っぽくて可愛い気がする。いや、オシッコって言うのでも可愛い……、うん、どっちでも可愛いね」

 諭良はふふっと笑って「お兄さん、ぼくのしっこ、好き?」と訊く。

「うん、諭良のしっこ好きだよ。……ちなみにぼくは中学ぐらいの頃からか大人になってからもずっと、自分のは『ちんこ』だと思ってるし、オシッコのことは『しょんべん』だと思ってる。『おちんちん』から『オシッコ』するのは君たちのだけだ」

「じゃあ……、……ちんちんからしっこするのも、ぼくだけだね……。おちんぽも、ぼくだけ……」

 そもそもが宝物である……、しかし諭良はぼくから授かったもののように、大事そうにおへその下で震えるものに触れる。

「ぼくの……、ちんちん……、ちんぽ。お兄さんに……、好きって言ってもらえる……」

 健気であり、幼気な仕草。胸がいっぱいになるまでゆっくりと諭良の「しっこ」臭い髪に唇を当てて、「……動いていい?」

「ん、お兄さんのちょうだい……」

 ぼくは、ゆっくり動き始めたつもりだった、……いや、動き出しは確かに「ゆっくり」だったはず。だけどぼくに抱きついた腕に急かされるように、ぼくの腰は気づいた時には一気にヒートアップした後で、甘くきつく締め付ける諭良の中でどんどん快感の容積を増していた。

「お、っおっちんぽっおにぃさっ、ちんぽ! しゅごっ、おなかぁっ、ちんちんごりゅごりゅひてるっちんちんっちんっぽっおっひんぽぉっおまんこいくいくっ、いくっいくいくぅっちんちんっ、いっちゃう! いっちゃう! おちんぽぉっ……!」

 ……ぼくが叩きつけるの、感じてくれただろうか。諭良の細いお腹に精液は皮からこぼれ、おへそにたまる。

「ちんぽぉ……、おちんぽいっちゃった……いっちゃった……、あはっ、ちんぽ、精液出ちゃった……」

「……諭良の身体、また美味しくなっちゃったね……」

ふふっ、諭良は笑う。「お兄さんも……、ぼくで『ちんこ』いっちゃったね……、ぼくで、『おちんぽ』いっぱいびくびくしちゃってた……」

ゆっくり諭良から抜く。諭良はのんびりしていればいいのに、「ああ……、すごい、たくさん……、こんなにたくさんぼくで……」幸せにとろけた微笑みを浮かべ、ゴムを外すなり、すぐにぴちゃぴちゃ音を立てて「おにぃさんのせーぇき……ひゅごぉい……こいの、いっふぁいれへる……」亀頭をお掃除し始めた。

「ゆ、諭良……、その、いったばっかりだからあんまりそんなされると……」

「ん……、ふふ、お兄さんも、しっこしたい?」

 したくはないけど、まあ……。

「う……」

 諭良はぱくんとまだ薄ら固いままの亀頭を口に含んだ。……まあ、あげなきゃいけないよね、こんだけもらっちゃったら……。

「零さないでね……?」

 とお願いしながら、諭良の口へぼくは注ぎ込む。んっ、んっと喉を鳴らしながらぼくの尿を飲み下して行く恋人の姿を見下ろして、……上品なはずの口にこんな汚いものを出されて嬉しそうなのだ、これはやっぱり……。

 全部出た? と目で訊いてくるのに、「はい」と答える。諭良は口の中に残ったものをこくっと飲み下して、

「おいしかったよ、お兄さんのしっこ」

 笑って、その「蛇口」にキス。

「お兄さんのもまた勃起してる……、まだ出し足りない?」

「……うん、はい」

 ふふっ、と、嬉しそうに笑ってれろりと今日学んだぼくの「いいところ」を舐める。

「ぼくも……、勃起」

 ひょいと立ち上がり、背伸びをしてぼくの先端に皮をぷにゅっと押し付ける。……今に気付いたことじゃないけど、身長差の割りに足の長さはそこまで大きな差はないんだなぁ……。諭良に流れてる血を考えれば仕方ないこと、……決してぼくの足が短いってわけじゃない、はず。

「口濯ごうよ」ぼくが促すと、ちょっと惜しいような顔で、でも素直に従った。ついでに歯を磨く。ぼくも並んで一緒に磨く。すっぽんぽんで二人して歯を磨いている姿が洗面所の鏡に映っているのは、なんだかとっても甘ったるくって、

「恋人って、感じがする」

 諭良は満足げにそう言った。

「そうだね。……幸せだよ」

「うん、ぼくも……」

 諭良は背伸びをして、またぼくに抱き着く。抱き上げてそのまま布団に運んだ。歯磨きという日常的な行為で一旦収まっていた性欲も、互いの裸がそばにあるだけで幾らだって……。

 布団の上で下ろすなり、諭良は腰を振る。プルプル、プルプル、諭良の「ちんちん」が揺れる。見惚れるぼくに、

「ふふっ、ちんちんっ、ぷるぷる……っんふふっ」

 笑いながら、ひとしきり腰を振ったところで止める。

「ん?」

「お兄さん、ぼく、しっこしたい。……もう一回オモラシしていい? でもって……、オモラシしたら、また……、おちんぽお尻入れて欲しいな」

 布団はもうだいぶ湿っぽいな……、落ち着きがないけど、また洗面所に移動する。時間的なことを考えたら、そろそろ最後の一回。諭良もちゃんとそれはわかっている。だいぶ乾いて黄色いブリーフを穿いた美少年、

「顔の上においで」

 とぼくが横たわって言うと、素直に顔を正位置で跨いだ。

「すごいね、すごい臭い……、ぼくのパンツ、真っ黄色」

「うん。……宝石みたいだ」

「ねえ、お兄さん? これ、あげるけど、少し待っててくれる? ……お兄さんといっしょにいっぱいオモラシしたって、昴星に見せてあげたいんだ」

 でも、そんなこと言ったら昴星が悔しがるんじゃないのかな……、そう思ったぼくを安心させるように微笑んで、

「そうしたら昴星はきっともっと頑張って、お兄さんのこと気持ちよくすると思うんだ」

 と言い添えた。……なるほど。

「でも……、いまはぼくのオモラシ、見ててね……?」

 ブリーフの中でおちんちんの位置を直す。そして、細い腹筋に少し力を籠めた。

「ん……、んん……」

 黄色いシミの中から音が響く、表面に浮かび上がり、流れとなり、前から股下からぼくの顔に振る優しい雨だ。

「ん……、しっこ、ぼくの……、おいしい? ぼくのしっこだよ……」

 答える代わりにそれを飲む。諭良は恍惚に息を震わせながら少し膝をずらしてぼくの口にブリーフの縫い目を直接当てた。

「ふふ……、お兄さん大好き……お兄さん大好きっ、お兄さん、大好き!」

「ん……」

 雨は直接流れ込む。ぼくも君が大好きと、生温かく濡れたお尻を撫ぜる。ブリーフは吸い付くようにピッタリ肌に密着し、そこを撫ぜられるのが諭良はずいぶん好きなようだ。

「んっ……」

 ぶるぶるっと震えを走らせて、「ふぅ……」満悦の吐息。

「出た?」

「うん……、でも、まだまだすっきりなんてしてないよ……?」

 わかる。

「オモラシパンツ、諭良のおちんちんの形くっきり浮かんじゃってるね」

 ふふ、という美少年の微笑み。窓から引っ張り出して、強い臭いのそれの皮を、……ちょっと手間取って剥いた。先端に指を当てて、糸を引かせる。

「ぼくの、しっこ味のおちんぽ。おいしそうでしょ?」

 誘うように、くちゅくちゅ音を立てて皮を戻したり、また剥いたり。

「……あっ、しゃぶっちゃダメだよ……」

 ぼくが首を上げて咥えこもうとした口の先から諭良が慌てて腰を引いた。

「……ダメなの?」

「ダメ。……だって、いましゃぶられたら、そのままお兄さんのお口で射精したくなるから……」

 立ち上がり、ブリーフを脱ぐ。それをぼくに差し出して、「……いまは、これ。……おちんぽは明日の朝だってどこにもいかないし、……それに、朝の最初のしっこの方が、きっとお兄さんの好きな味だよ……?」

「そうかな?」

 仕方なくブリーフを広げて、改めて重ね塗られたシミの臭いを楽しみながらぼくは笑う。

「オネショしちゃったら、最初じゃなくなっちゃうんじゃない?」

「起きてからするのは、最初のだよ。……それに、もうたくさんしたから、オネショだってしないかもしれない……」

 どうだろう、それはちょっと怪しいものだ。

「ねえ、お兄さん、……ぼく、お兄さんのおちんぽにゴム付けてみてもいい?」

「いいよ。……付け方はわかるよね?」

 うん、と頷いて諭良はぼくの手渡したゴムの個包装を開封し、「へえ……」しげしげと観察する。ぼくのお腹に生温かい股間を当てつつ、見なくともちょっとばかりおっかなびっくりの手つきとわかるやり方で、ぼくのペニスに両手を使ってゴムをくるくるかぶせる。

「できた……、どう?」

 ぼくから降りて見せる。うん、なかなか上手に出来ている。

「ゴムを付けるの、昴星がすごい上手なんだよ」

 そういえば、そうだったっけ。……「つけさして」というからいまの諭良みたいにさせてあげたんだけど、くるりんぱという具合にあっさり装着してくれた記憶がある。

「ほら、昴星はぼくや流斗よりも早くにお尻が使えるようになったから……」

 確かに、その場所の開拓度合いで言えば、一応ちゃんとした「恋人」のいる昴星が一番ではあろう。「昴星は、お尻も上手だし……、何でパニックになったみたいに感じてるのに昴星のおまんこはあんなに気持ちいいのかな……?」

 パニック、って言葉に少し噴き出してしまいそうになった。言い得て妙、「おっおちんぽっちんぽちんぽっひっひゃっ! んぁああいくいくっちんぽいっちゃうちんぽぉっ」……いっつもこんな感じだ。頭の中がもう「ちんぽ」でいっぱいになっちゃって、その「思考」と呼ぶのも問題が伴うようなプリミティブな状態になっちゃう、溢れこぼれて止まらないオシッコのようにひたすら、その単語を連呼するだけ。……でも言葉ってやっぱり不思議なもので、「ちんぽちんぽっ」って連呼する昴星が幸せになってるってことは誰の目にも明らかだ。

「諭良だって、気持ちいいときあんな感じだよ?」

 ぼくの熱に手をあてがって支えた上に、ゆっくり腰を寄せる諭良に言った。

「ぼくも……?」

「うん。いっぱい『おちんぽ』って言ってさ、……なんだろ、その言葉だけで『うれしい』とか『きもちいい』とか、諭良が思ってることが伝わってくる」

「そう……、かな……、ん……」

 お尻の穴に導かれるこの期に及んではもう、小難しいことを考える必要もないだろう。諭良のプレゼントであるパンツもとりあえず脇にのけて身を起こし、ゆったりと諭良を抱き締める。恋人同士のぼくらの唇は自然な流れで重なった。

「ん……、その、ふたっつ、だけじゃない……」

「ん……?」

「ぼくが……、おちんぽって言うとき、思ってるのはぁ……、『うれしい』と、『きもちいい』と、……あと、お兄さんのことが『大好き』って、そのみっつ」

 細い腕、しっかりぼくに巻きつけて、甘い声が囁く。「きっと……、ぼくだけじゃない、昴星も、流斗もおんなじ。……お兄さんとしてる、ときは……、お兄さんのこと、好きって気持ちでいっぱいで……、でもね、気持ちよすぎちゃうから、何にも言えなくて、あんなふうに……、なるんだ」

 三人の中で一番頭のいい(……って言い方をしても差し支えない、と思う。流斗もしばしば、とんでもないレベルで頭がいいところを見せることがあるけれど)諭良がそう定義するんなら、それが正解ってことにしていいんじゃないかな。

「ん……あ、お兄さん……っ」

 お尻を、抱える。抱えられる。諭良は長身ながら痩せているから。……ってまあ、昴星でもこれはできる。三人を抱えるぐらい、ぼくに出来ないわけがない。だってねぇ……、愛しているんだから。

 でも、「しっかり捕まっててね」……ちょっと、腰悪くするかも……。まぁいいや。

「あ……、あっすごいっ、お尻っお尻っお尻すごいっ」

 宙に浮いてるみたいな錯覚があるかもしれない。

「よい、しょっと」

「はぁあ!」

 一旦手を付かせてもらって、立ち上がる。駅弁スタイルっていうやつだ。諭良の一番深いところを突き上げながら太ももを抱え直し、揺さぶる。

「あっあ、あっ、すごいすごいっ、おにいさっ、これすごぉいっ、おまんこいっぱいっお兄さんのおちんぽっおちんぽでまんこいっぱいっ」

 諭良が、喜んでくれている、幸せになってくれている、ぼくを大好きでいてくれる。

「んほぉちんぽっちんちんっちんっぽっちんぽしゅごいっ、おにぃひゃっちんぽちんぽっ、しゅごいっ、おちんぽ変なっちゃうっ変っ、ちんちん! ちんぽっ……おちんぽ出るよっ出る出るっ、おっ……ちんぽぉっおっ、おはぁっあああ!」

 最高の快楽をその身に満たして、諭良が精液を射出する。だらしない皮に僅かに空いた隙間から、オシッコみたいな勢いで、括約筋をびゅくんびゅくんと脈打たせびしゃっと飛沫を上げる。

 そんな恋人の姿を見ながら、ぼくも諭良の欲しがる鼓動をそのまま、叩きつける。

 ……やっぱりちょっと、腰が痛い。ゆっくりと腰を下ろして、そのままごろんと仰向け。「おちんぽぉ……うふふ、おちんぽ……すごぉい……」

「ん……、すごかったね……」

 キスをしながら、ぼくの胸は濡らされた。

「あー……しっこ……しっこ出てる……」

「うん、出てるね……、諭良のオシッコもすっごい熱い」

「んふふ……、お兄さん、好き、好きっ……、お兄さん、ぼくのこと好き……?」

「大好きだよ。気持ちよくなって恥ずかしいこといっぱい言ってさ、オシッコ漏らす諭良が大好き」

 ふふ、と笑ってぼくの頬に頬ずりをする。いとおしさの破裂を待っていたら、またこの夜が終わらなくなってしまう……、だから思いを残さないように、深いキスをもう一度。

 

 

 

 

 不思議な、……不思議な光景である。

「じゃあ、行ってきます」

 しかし同時に、幸せな光景である。諭良がぼくの部屋から登校する朝、……これが初めてではないけど、やっぱりなんというか、不思議な気持ちになる。

 準備のいい子で、諭良は着替えを用意していた。長袖のセーターに、高いコート、ちゃんとジーンズも穿いて、その内側には綺麗なままのブリーフ、今日はスカイブルー。

 しかし肩掛けカバンには教科書にノートに、すっかり乾かした昨日のブリーフがジップ付きビニール袋に入って紛れ込んでいる。昴星に見せて自慢する、そうすれば昴星は次にこの部屋に来たとき、きっとすごい欲しがってくれるだろうという、聡明な諭良の読みに基づいて。

 背伸びをしてのキスとハグ。

 ぼくらに残された時間は短い。

 けれど、確かに存在する、……そして永遠に色褪せることのない、ぼくらの「恋人同士」としての時間だ。

 願わくば、「おかえりなさい」で始まって「行ってらっしゃい」で終わるんじゃなくて、「行ってらっしゃい」で始まり「おかえりなさい」で終わるぼくらがいい。けれどそれは高望み。ぼくらには、ぼくらが二人でいたという事実を大事にするための、心のスペースがちゃんとある。

 すっかり晴れて乾いた朝の空気の中、白い息を弾ませて学校へ向かう少年、ベランダから見やっていたぼくを振り返り、嬉しそうに手を振った。


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