おれ撮る?

 昴星も流斗もいない日曜日の夕方、である。

 いや、当たり前のこととして、一人暮らしのぼくの部屋にあの二人のどちらかがいるということのほうが、この秋から始まった幸せな椿事なのであって、それが習慣化しつつあると言っても相変わらず一人で過ごす時間の方がずっと長い。そういう時間に、ぼくは部屋の掃除をしたり洗濯をしたり、静養に充てているのである。月曜日からはまた仕事であるからして。

 朝からの秋晴れに任せて、部屋の空気をたっぷりと入れ替え、溜まっていた洗濯物も片付けた。清々しい気持ちになったのも束の間で、昼ごはんの後にごろんと横になったら眠気に襲われて、……気が付いたのは陽が傾いてからだった。こういう昼寝に、ぼくは割りと肯定的だ。身体が求めるに応じて疲れを癒す時間は、貴重なものだと思う。夜、ちょっと眠りに就きづらくなるかもしれないが、そういうときはウイスキーでも引っ掛ければいいんだし。

 さて今何時だろう、……とスマートフォンの画面を見て、不在着信があったことに気付く。マナーモードにしていたせいでぼくの眠りを途絶えさせるには至らなかったのだろうけれど、着信があったのは三分前、そしてメールも届いている。差出人はいずれも、

「鮒原昴星」

 である。《おにーさんいま家?》というのがついさっき届いたメールで、はてどうしたのだろうと思っていた矢先に、電話が鳴り始めた。

「はい、もしもし」

《あ、おにーさん》

 という昴星の声は、気のせいか、左耳と右耳両方から同時に聴こえた。

《家?》

「うん、そうだけど……、どうしたの?」

 電話がプツリと切れた、と同時に、「開けてー」と玄関から声がする。ドアを開けると、

「寝てたの?」

 そこに、昴星が立っている。

「ど、どうしたの……?」

 いつも、来るときにはちゃんと事前に連絡をくれるのに。……いや、眠りこけてその電話に出ることが出来なかったのはぼくだけど。

 でも、それ以上に、

「……っていうか、その格好は、どうしたの……?」

 ぼくの視線は昴星の服装に奪われていた。

 襟と袖の縁が紺色のシャツ、そして下は紺色の半ズボン。……体操服だ。この間、知り合いの女の子から貰ったというブルマを穿いて見せてくれたけれど、あのときとも違う、正真正銘、この近所の小学校の体操服、……っていうか、十年以上前にはぼくも身に着けていたものである。

「今日さー、運動会、んでいまその帰り。才斗はおとーさんとおかーさんが観に来てたけど、おれんとこ親忙しくって来れなかったからさ。おにーさんどうしてるかなーと思って」

 昴星の家も、才斗の家も、ご両親は共働きである。しかもどちらも多忙なお仕事ということで、一週間のほとんどを家に開けている。特に土日はまず、いない。

 だから運動会や保護者参観などで親が来たことは、小学校生活の六年間で「二回くらいかなー」と昴星は言っていた。

 しかし昴星は寂しがる素振りはまるでなく、あっけらかんと笑う。どころか、「親いたら今日は来れなかったなー」と靴を脱いで上がる。それから「のどかわいた! 麦茶もらっていい?」と冷蔵庫を開け、ぼくの答えるのを待たず、ペットボトルに直接口を付けてくぴくぴと飲む。

「あの……、学校で着替えて帰ってくるんじゃないの?」

 少なくとも、ぼくのときはそうだった。

「んー、そうするやつもいるよ。でもめんどいからって、そうじゃないやつもいる。おれとか才斗とかはさ、家も近いし、だからこのまんま。毎年そうだよ」

 手の甲で唇を拭った昴星の体操服姿……、上から下まで、しみじみと見つめてしまった。

「めんどい」のが理由であったとしても、その姿をぼくに見せてくれたことに、平伏したいぐらいの感謝の気持ちを抱かずにいられない。

 ……何と眩い、何と美しい。

「ん?」

 もう一口麦茶を飲んで、「どーしたの?」と昴星は首を傾げる。

「いや……、まあ、何ていうかね……」

 まずどこから行こうか。

「これは……、その、ぼくが、昴星みたいな子を見て、興奮するような人間だからなのかも知れないけど……」

「ショタコンっていうんだろ?」

 昴星は平然としている。そう。昴星や流斗に性的興奮を催すのは、間違いなくそう呼ばれる人種だ。自覚している。

「……昴星は、普段からすごく可愛い」

「んー? よくわかんねーけど、うん」

「いや、本当にね、実際に可愛いんだよ」

「流の方がぜってー可愛いと思うけど……」

「もちろん、流斗も可愛い。だけどね、昴星には昴星の可愛さがあって、……何て言えばいいのかな」

 寝起きだから、ぼくの言葉は思うように出てこない。しかし、概ねぼくは次のようなことを考えている。

 ショタコンのストライクゾーンというのは数あるわけだ。女の子みたいな男の子が好き、女装させたい、いわゆる「男の娘」に気を惹かれるタイプ。線が細くって中性的な顔立ちで、ちっちゃい子。

 逆に、しっかりと男の子らしくて活発で、性格もさばさばさっぱりしているような。体系的にもスレンダーだったり、筋肉質だったり。

 他にも、ちょっとぷにぷにしたような子の、いかにも幼いしまりのない体系に惹かれる、というのもある。ぼくは一応そういう嗜好の一つひとつ、「どれがいい/よくない」とは思わない人間である。みんな違ってみんないい。そもそも男の子は男の子であるという事実だけで、ぼくの人生を明るくしてくれる宝のような存在であるとさえ考えている。

 ただはっきり言えるのは、……いまの「昴星の姿」が、全て眩いということなのだ。

「昴星は、そうだ、……髪が長くて、顔が、女の子みたいに可愛く見えるときがある」

「……かなー?」

 それは紛れもない事実だ。

 耳と襟を隠すほどの長さの、生まれ付き栗色の髪、そして柔らかく優しい線で描かれる頬に、ぱっちりとした眼に、揃った睫毛。それらは全て、昴星の印象を中性的なものにする。

「でもって、昴星は、ちゃんと男の子らしいところがいっぱいある」

 性格は特に男らしい。初めての日、ぼくを「この世界」に誘ってくれたあの勇気は、そんじょそこらの男の子も持ち得ないほどのもの。

「んーまー、男だしなー」

「そういう……、昴星みたいな可愛さと男らしさの両方を持ってる子が、小学六年生だってことがちゃんと判る格好をしてる」

 胸には校章と、「6-1 鮒原」という名前欄。

「それを見て、……何ていうか、すごく感動したんだ」

 あちこち砂埃で汚れている、紺色のズボンもサイドからお尻に欠けて、白ッ茶けている。半袖半ズボンから伸びる腕と足は、先週会ったときよりもずいぶん焼けたようだ。恐らく運動会の練習で照りつける日差しの下にいたせいだろう。すねまでの白いソックスとのコントラストが目にも鮮やかで、トータルとしては非常に精悍な印象を与える。

 しかし、顔は本当に可愛いし、腕や脚の細さからすると、シャツごしでも何となくわかる体幹のむっちりとした感じがギャップになっている。

「うーん……、あんまよくわかんねーな」

 昴星はそう結論付けた。まあそうだろう、だって昴星はショタコンではないんだ。昴星自身がそういう男に性的な魅力を振り撒く対象なのだから。

「でも、おにーさんはおれが体操服着てんの見んの、嬉しいの?」

 昴星は部屋の中央に立ち尽くすぼくを見上げてそう問う。

「うん」

 心から素直に頷くほかないだろう。だって、こんなに可愛い。

「ふーん、そうなのか……。よくわかんねーけど、おにーさんが嬉しいならまーいいや」

 にひひ、と昴星は笑う。女の子みたいな可愛らしい顔で、男の子の本領を発揮したような悪戯っぽい微笑み。それだけでどくんと胸が一つ高鳴る。

「どーせおれ来たの、おにーさんとエロいことして遊ぶためだしさ、おれが何もしてねーのにおにーさん興奮してんなら、何か得した気ぃする」

「そ……、そうなの?」

「うん。ってーか、これまでおにーさんと遊んでエロいことしなかった日なんてあったっけ?」

 一度足りともない。いや、正確に言えば最初の夜だけは、そういうことはしなかったけれども。

「させてくれる、の……?」

「うん、……あ、でもそんかわり」

 背伸びをして、ぼくの首に両手が回った。「まず、キスしてから」

 愛らしい誘い文句に、くらくらする。ぼくは背中を丸め、昴星の瑞々しい唇に唇を重ねた。ああ、何だか恋人みたいな、しっかりと思いの篭もったキス……。唇だけでは飽き足らず、互いに舌を絡め合って、粘膜の味を教えあうような濃厚な。

「んひひ」

 昴星はぎゅうっとぼくに抱き着いて、「キスすんの、やっぱいーな、アンド舌でくちゅくちゅすんのエロいな」と笑う。それから、「おにーさんのにおい……」とぼくのシャツに鼻を押し付ける。……寝汗はかいていなかったはずだけど、そんないい匂いのもんじゃないよと思いかけたところ、

「あ、っつーかおれ、汗臭くない?」

 慌てたように顔を上げた。

 はっきり言おう、すごく、汗臭い。

 昴星の匂いあるいは「臭い」と書くべきもの、不思議だ。初めて貰ったあのブリーフの、黄ばみの匂いを嗅いだときにはあまり印象にも残らなかったけど、後になって流斗というもう一人の「友達」が出来て、ぼくは知ることになる。

 昴星って、臭いのだ。

 ……と言うとすごく酷い言い方みたいだな。「臭い」と言っても、それは悪い匂いがするという訳ではない。そうではなくて、……普通の子よりも体臭が強い、ということになるのだろうか。

 昴星が側にいると、昴星の匂いが自然と鼻に届く。それは汗だったり垢だったりの臭いということになるのかもしれないけれど、昴星は毎日ちゃんとお風呂に入っているし、ぼくが見ている限り、身体を洗うときもすごく雑、というほどではない(男の子らしい洗い方ではある)

 それでも、どうしてか、昴星の身体からは昴星の匂いが、流斗の肌から漂う匂いよりもずっと強く香る。ブリーフの黄ばみだって、もちろんそう。この部屋に昴星が入ってきてから、ぼくの鼻は体操服が快晴の一日に染み込ませた昴星の乾いた汗の臭いがはっきりと感じられている。

 才斗は、昴星の「臭い」に激しく欲情するのだという。その気持ちが、ぼくにはすごく良く判る。これは……、いわゆる「いい匂い」ではないけれど、ぼくの好きな「臭い」だ。ずーっと嗅いでいたくなるような。

「いいよ……、せっかく似合ってるんだから、このままがいい」

 昴星を座らせて、腿の上に乗せて、しっかりと抱き締める。腹一杯に昴星の体臭を味わって、……繊維に詰まった汗、砂埃、そして太陽の匂い……、そして昴星そのものの臭い。抱き心地も、とてもいい。細身な印象でいながら肉付きがよくて、充足感のあるハグが出来る。

「……おれ撮る?」

 昴星はぼくのパソコン机の上にあるカメラに視線を送って訊く。「撮っても別に……、臭いは残んねーけど、でもおにーさん、撮るの好きだろ、アンド撮ったの見んの好きだろ」

 もう一つ「アンド」でつなげるのなら、昴星だって撮られるの、好きでしょう?

「……おれでもわかる」

 にひひ、と笑ってカメラの前、くるりと回って見せて、昴星は笑う。

「何が?」

「こんな風にさー、体操服着た男子撮ってるおにーさん、やっぱすげーヘンタイって」

 まあ……、それは自覚があるからいいのだけど。

「でもさ、おにーさんは世界にたくさんいる嫌なヘンタイじゃねーからいいんだ。おれの愉しいようにさしてくれるしさ」

 もう一回、くるんと回って、「っと」バランスを崩して座る。

「やっぱり疲れてる?」

「んー、わりとあっちこっち疲れた」

 足を、無意識のうちにだろう少し広げた体育座り。……半ズボンの裾から覗ける白いブリーフが、何とも眩い。

「何が一番疲れた?」

「んー……、組体操とか騎馬戦とかもしんどかったけど、やっぱリレーかなー……」

 リレー。

「え、昴星は……」

「ん? あーうん、リレーの選手だった。アンカーは才斗だけど、そのひとり前がおれだった」

 そうか、昴星って足速いんだ。……また失礼な話だけど、体型がぽっちゃりだからあんまりそういう印象がなかった。でも活動的なのは確かだし、すばしっこいところもあるというのは納得が行く。

 ぼくの物思いには気付かない様子で、

「パンチラ撮ってんだろー」

 昴星は笑う。パンチラ、っていうかブリチラっていうか、とにかくそうだ。

「……そういう短いズボンだと、どうしてもパンツ見えちゃうときあるよね?」

「んー、でもしょうがねーし、誰もおれのパンツなんて見ても面白くないよ」

 そんなことはないよ。

「それにさ、トランクスだとフツーにちんことかキンタマ見えちゃうじゃん? それよりかマシだよ」

 それは、言われてみればそうだ。今日昴星が穿いているブリーフはまだ新しいものらしく、裾もぴったり、太腿に吸い付いている。そこを拡大して撮っていた画角に、不意に昴星の指が入る。そのままズボンの裾から中へ侵入して、

「よこタマ」

 ブリーフの裾を引っ張り、右のタマを覗かせる。

「アンド、よこちん」

 興奮して鼻血を出すという漫画的表現がある。ぼくの鼻の毛細血管は、どうやら丈夫らしい。

「おしまい」

 昴星はまた元通り、おちんちんをブリーフの中にしまった。思わず「もう一回」という言葉が出掛かったが、どうにか堪える。昴星はひょいっと立ち上がって、

「パンツ見る?」

 と訊く。

「見せてくれる?」

「うん。でも今日のはあんま面白くないよ、フツーに白いやつだから」

 白いののどこが面白くないと言うのか。……昴星も流斗も、カラフルなブリーフをよく穿く。だけど体操服にはやっぱり白いブリーフが一番合うだろう、基本をおろそかにしては応用も利かないというものだ。

 何の躊躇いもなく、昴星はゴムウエストの半ズボンを太腿まで下ろして、ブリーフをカメラに晒した。

「な? フツーの、ただの白いの」

 確かに、ウエストも縫い目も全て白い。

 しかし「純白」というわけにはやはり行かない。もともと昴星のブリーフって、前が黄色くなりがちだ。観察の結果、それがこの少年の排尿時の仕上げの甘さによるものだということはもう判っている。最後までよく振り切ってからしまえばいいのに、いつもオシッコが終わるやいなやすぐしまってしまう、いや、場合によってはじわっと最後の数ミリリットルが濡らしてしまうことさえあるはずだ。だから皮に付いた雫が内側に付いて黄色く染まってしまう。

 ぼくにとっては愛すべき「悪い癖」である。

「これ、欲しい?」

 昴星は意地悪をするような笑みを浮かべて、優しい問いをぼくに投げる。何を躊躇う理由があろうか、

「欲しいです」

 ぼくは即答した。

「んーわかった、じゃーあとであげる」

「ありがとう……」

 噛み締めるように礼を言い、昴星の足元に跪いた。……男の子のブリーフである。いや判り切っているだろうそんなこと、目の前の物体は紛うことなき男の子のブリーフである。サイズは百三十だろう。昴星にはジャストサイズ、それだけに、ちょっときつそうに見える。お腹のところもゴムが引き締めている。

「近いなー……」

 昴星は呆れたように呟く。一旦カメラを下ろし、ぼくは昴星のブリーフに顔を寄せていた。

「……触ってもいい?」

「いいよー」

 あっさり、昴星は許可してくれた。そっと、指で膨らみを押してみる……、知っている、そう、ここは柔らかいんだ。だけど今日は普段より湿っぽい気がする。それは一日分の汗を吸ったから。試しに体操服のお腹を撫ぜてみたけど、やっぱりそっちも湿っぽい。

 だからぼくの鼻にはこの距離で、まず昴星の甘ったるく濃い汗の匂いが届くのだ。

「……汗臭い?」

 昴星の問いに、正直に頷いた。しかし、「いい匂いだよ」と言い添えることは忘れない。

「おれの汗の臭いなんて好きなの? おにーさんも才斗とおんなじでほんとヘンタイだよなー……」

 膨らみに、鼻を押し当ててじっくりと吸い上げる……、炸裂して、ぼくの脳味噌の色まで変えてしまうような汗の臭い、そしてその奥に在って、それでも確かな存在感を発揮する、オシッコの臭い。二度三度、深呼吸をして、やっと満足、撮影を再開する。

「……オシッコの染み、いつもより少し大きい?」

 ぼくが問うと、「んー……、そうかなあ」と首を傾げて見下ろす。

「トイレ近かったりした?」

「うーんと……、そうかも。やっぱさ、組体操とかリレーとかどきどきしたし、結構トイレ行ったよ」

 いつも度胸満点で、緊張とはあまり縁がなさそうに見えるからそれは意外だった。でもまあ、もともとオシッコは近いほう、敏感な膀胱をした子だ。そうでなかったら、オネショだってとうの昔に治っているはずだし。

「組体操、どんなことした?」

「逆立ちとか、サボテンとか、扇とか、あとピラミッド」

 小学校の組体操で一番の見せ場だ。中学になるとそれが「タワー」になる。いまになって思うに、よくあんな危なっかしいことをさせたものだ。しかし今もたぶん続いてるんだろうから、これまで大きな事故が起きたことはないんだろう。

「おれ、ピラミッドだと上から二段目なんだ。背の順だと一番前なんだけどさ」

 昴星は面白くなさそうに言う。要するに、昴星よりも背は高いけれど体重では軽い子というのがいるんだろう。確かに昴星にしては、あまりいい気分のする話ではなかろう。

 けれど、思い出したように「ひひ」と笑って、

「ピラミッドで、ちょびっとオシッコちびった」

 唐突な告白をする。

「え……?」

「組体操の前に、ちゃんとトイレ行ってたから、そんなしたくなかったんだけどさ、最後に崩すとき上のやつがバランス崩して、おれのほうにコロンって重さかけてきてさ。そしたらおれの下のやつらも崩れちゃって、結局おれも転がり落ちちゃってさ、身体の上におれの上にいたやつが乗っかって、そんときちょびっとだけ」

「はあ……。大丈夫? バレなかった?」

「うん、ほんのちょびっとだけだったし。でもいっぱい出てたらバレてたかもなー、危なかった」

 アクシデンタルなものとはいえ、学校行事でのオモラシは記録にも記憶にも残ってしまう。ぼくは自分のことのように安堵した。

「でも、一年生と二年生で何人かオモラシしてるやついたよ。予行演習のときも、今日の本番でも。おにーさん来たら見れたのに」

 うーん、……ちょっと見たかった気がしないでもない。だけど、やっぱりぼくは目の前の少年に優るものはないと思っている。

「ちびっちゃったパンツの内側、見せてくれる?」

「んー、こう?」

 ブリーフを太腿まで下ろして、内側を外から押し示す。まだ平常時の大きさの、つまり下を向いた小タマネギのフォルムも愛らしいし、確かに普段より少し範囲広く黄色いオシッコのシミもまたいとおしい。

「じわってなってるからわかんねーよな」

 昴星が見下ろして言う。

「うん。でも、やっぱりいつもよりも大きいよ」

 指先で、ふるんとおちんちんを揺らして見る。ああ、いつものことながら、何ていとおしい触り心地だろう。

 平然と、ブリーフの中に隠されていた愛らしいおちんちんをぼくに触らせる昴星はいまだ少しも勃起していない。一方でぼくは、

「おにーさん、勃起してんの?」

 という問いに、「……うん」と頷くほかない状況になっている。

「じゃーさ、おにーさんのちんこ見してよ。おれのはおにーさんのたくさん見てから」

 ぼくの手を押し退けて、ぐいとブリーフを半ズボンごと上げてひざまずく。

「ぼくの……、見たいの? ぼくのなんて見ても……」

「おにーさんだっておれの見たいんだろ? おれが見たくたっていいじゃん」

 それは……、うん、まあ、確かに。

 昴星はぼくの部屋着のスウェットの股間に手を伸ばす。「おー……、マジででっかくなってる……」と感心したように独語し、何のためらいもなくウエストゴムを引っ張って下ろした。尖ったトランクスも引き摺り下ろし、いきり立つ男の性器に両手で触る。

「ひひ、すっげー……、おにーさんのちんこ超あつい」

 それに比べて、昴星の指は何となくひんやりと感じられる。子供の指に性器を触らせるという罪深さに、ぼくは昴星の眼前、幾度となくそれを強張らせた。

 昴星という、「美少年」と言うよりは中性的で可愛らしい男の子の顔の前にぼくのペニスはある。それに昴星はあまり高くはない鼻を当てて、「んー……、やっぱ大人のちんこってそんなくさくねーなー……、でも、やっぱりいいにおい」と感想を述べる。

「……臭くない? 洗ってないんだよ……?」

「うん。才斗のちんこ洗ってないともっと臭いし、流だってさ。やっぱほら、おれのもそうだけど、ここんとこ」

 と昴星は何気ない指先でぼくのカリ首をするんと撫ぜてなぞる。「大人は出てるけど、おれらの出てないじゃん? だからおにーさんのそんな臭くないよ」

 すごい。

 何がすごいって、……昴星はいま体操服を着ているんだ。健全な格好をして、男のペニスの臭いを嗅いで感想を口にするんだ。その上、

「なー、しゃぶってもいい?」

 と訊く。

「しゃぶり、たいの……?」

「うん、ちんこしゃぶんの好き。おにーさんも好きじゃん」

 好きだよ、そりゃあもう、大好きだ。昴星みたいな可愛いおちんちんが自分の口の中にある、それって……、最高に幸せなことだ。

「才斗はさ、おれの味よりか臭いが好きなんだって。でもおれはやっぱり味が好き。おにーさんのちんこ、才斗とか流のみてーにしょっぱくないけど、でもやっぱ舐めんの好きだよ」

 こんな可愛い子に舐めてもらえるんだ、……ぼくのだって、昴星の口が好きだよ。

「……わかった、あの、お願いします」

 掠れた声でぼくは言い、

「ひひ、じゃーいただきます」

 昴星は紅い舌を出し、ぼくの茎に舌を這わせ始めた。

「んほ……、びくって、ひた」

 器用であるように思う。少なくともこの歳の男の子で、男性器を舌で愛撫することにこれほど長けた舌を持っているのは昴星ぐらいなものだろう。

「やっぱ、おにーさんのちんこでかいねー……、キンタマもさ、中に入ってんのも、おにーさんのほうがずっとでけーし」

 ぼくの腰に手を回し、陰嚢を丹念に舐める。僅かなくすぐったさと罪深さと入り混じり、ますますもって興奮を覚える。

「昴星……」

「んー……? お、ガマン汁出てる」

 ぼくの先端に光るものを見つけて、昴星は嬉しそうに微笑む。人差し指の先をそこに当てて、糸を伸ばす。それから亀頭に塗り広げて、粘液を纏った指をぼくの構えるカメラに見せ付ける。

「ひひ、おにーさんのちんこ、おれですっげー感じてんの」

 息を上げないようにしたって、それはもう無駄な努力だ。少年が少年らしく振る舞いつつも、どう考えても淫ら過ぎる行為に愉楽を覚えているさまは、胸を圧迫する。

「ちんこ、超おいしそう……、ひひ」

 しみじみと見詰めて、はぷ、と先端を口の中に収めた。目を細めて、「んふー……」まずその舌の上に広がる臭いを愉しんでから、舐め始めた。

「ん、んっふ……ん、ぷは、おにーさんのガマン汁、やっぱおいしいね……ひひ」

 昴星は本当に「ちんこ」が好きなのだ。しかし誰のでも「好き」ってわけじゃないと、ぼくは信じたい。ソムリエのごとき舌を持つこの少年は「やっぱり才斗のが一番おいしいかなー」と言っていた。流斗のと比べても「流のもおいしいけどさ、才斗の味のほうが、おれには合ってるって気がする」……。確かに少年一人ひとり、おちんちんの形状は違うわけで、それすなわち味の変化にも繋がってくる、……多分、臭いという要素もそこへ加わってくるわけで。ぼく自身、昴星と流斗、二人の男の子のその場所を口に含んだことがあるわけだけど、味にほんの僅かな違いがあることは判る。縮尺を上げて言ったならその「僅かな」違いも昴星にとっては大きく異なるものとなって顕われるのだろう。

 なんて、考察はもういい。

 少女めいてさえ見える顔、その口にぱっくりとぼくのペニスを咥え込んで、ぼくの其処から間もなく溢れ出るもう一つの味を求める昴星を見下ろしながら撮影していて、余裕もない。

「昴星」

 ぼくの声に理解し、一層その舌を器用に絡めつけてくる。「んー、ふっ、んっ、んーっ」鼻から声を漏らしながら大人の男のペニスにしゃぶり付く体操服少年へと、ぼくは引き金を引いた。

「んっ……、んー……ふー……ん、んー……」

 鼻から溢れる呼吸がぼくの根元を擽る。吸い上げながら抜かれたときには、大いなる解放感があった。昴星はぼくを見上げて口をもごもごさせていたが、何か思いついたように口元に手を当てて、

「ぶへー」

 その掌に、ぼくの出したものを零して見せた。

「おお! すげー! 超濃い!」

 品なく零された、泡だって白い液体は昴星の言葉の通り、ゼラチン質が濃厚である。

「おにーさん溜まってたの? こんな濃いの初めてじゃん?」

 うーん……、何だかこれは、リアルに恥ずかしい。昴星の指摘は当たっている。夕べはオナニーをしなかったし……。

「超濃いせーし、味もすっげー濃いなー……、なんか、大人の味って感じする」

 ぷるぷるとしたそれをじゅぶ、ちゅっ、と音を立てて掌から再び吸い上げて、昴星はよく味わう。

 昴星が子供っぽい容姿――というか実際そういう歳だ――をしているものだから、何だか、粉に水かけて固める、オモチャみたいな工業製品みたいなお菓子があるでしょう、あれっぽく見えないでもない。いややっぱり精液だ。どう見ても精液だ。

「あー、超おいしかった!」

 この短時間でこの子は何度「美味しい」って言っただろうか。

「ありがとな、おにーさん、ごちそうさま」

「いえ……、お粗末さまでした」

 喜んでもらえてよかったはよかった、けれどやっぱりなんと言うか、気恥ずかしいものである。

「おにーさんのさ、ちんこしゃぶってるとき、おれもちんこ勃ったよ」

 昴星は立ち上がってウエストゴムに指を入れる。紺色半ズボンとブリーフ、一緒に引っ張って中を覗かせる。……勃起してもあまりサイズの変わらない包茎が、それでもブリーフの中でくっきりと上を向いて震えているのが見えて、ぼくの出しっぱなしの性器の内側に、力が再興する。

 ひざまずいて、顔を寄せる。半ズボンだけ脱がせて、「本当だね」鼻を当てる。

「おちんちん、すごい元気だ。何ていうか……、本当に男の子って感じがする」

 格好と相俟って。おかしな表現になるのは承知の上だけど、本当に男の子をしているみたいな気になる。

「おれ、本当に男子じゃん」

「うん、まあ、そうなんだけど……」

 失禁するのが好きなことであるとか、女装を平気でしてみせることであるとか、……この姿の昴星からはそういう性癖は伺えない。ただ健全な男の子が何かの拍子に興奮して、おちんちんを勃起させてしまっただけのように見えるのだ。

 恥ずかしい黄色のシミもまた、その妄想を加速させる。まだちょっと、排尿後の処理が甘くって、しょっちゅうオシッコを付けてしまう……、変に色気づいていなくって、だからこそそういうこともあんまり「恥ずかしい」と思っていないような。

「オシッコ、やっぱりいっぱい染み付いてるね……。汗と交じり合って、すごい……」

「んひひ……、おにーさん嗅ぎすぎ。ちんこスースーする」

 だって、いい臭いなんだもの。……才斗だってきっとそう思っている。

「おにーさん、ほんとにおれのオシッコ好きなー……」

 好きだよ。

 昴星がさっき、「才斗と流の味も違う」と言った、ついでにぼくの味を「好き」って言ってくれた。

 でもよく考えてみると、ちょっとおかしい。だって昴星は現状、才斗、流斗、ぼく以外のおちんちんの味を知らないはずなのだ。いや、あの中学生、先森遍の味は知っているだろうけど、……でも、ほとんど「知らない」と言っていいはずだ。それなのに、好きに順番を付けて他を圏外にするというのは。

 だけど、いい。ぼくだって昴星と流斗の臭いと味しか知らない。二人のくれるそれらを従順に愉しんでいればいい。ぼくという人間の一生に訪れる分の幸せは、もう二人で全てまかなってしまっているはずだから。

 幸せはぼくの鼻先からひょいと腰を引いた。

「おにーさん、もっとオシッコ嗅ぎたい?」

「ん……?」

「おれ、自分のそんな嗅がねーからあんまわかんねーけどさ、才斗が言ってたんだ。オシッコの臭いさ、パンツに染み込んで乾いたあとのと、染み込んだばっかりのと全然違うんだって」

 それは当然のことだろう。「腐りかけが一番美味い」なんて言うけれど、ブリーフは乾きかけが一番臭い。オシッコそのものの臭いが残りつつ、乾き始めることで布にまた新たな臭いが加わり、更に布が濡れたことによって生じる特有の、いわゆる「センイの生乾き臭」と三つ重なることによって臭くなるのだろう。

 いや、そんなことはどうだっていい。

「ええと……、それはつまり」

 昴星はニヤニヤ笑って僕を見下ろしている。

「その……、染み込んだばっかりの、を、嗅がせてくれるっていう、こと?」

「おにーさん、それも嗅ぎたいんだろ?」

 嗅ぎたいです、嗅ぎたい、舐めたい。

「お風呂行こうぜ。ここだと畳濡らしちゃうしさ」

「ちょ、ちょっと待って、昴星……、その、パンツ濡らして、……替えのパンツは……?」

「別に、家までだもん、ノーパンで平気だよ。こないだだってノーパンだったじゃん」

 そう、まあ、そうなんだけど。

 昴星は「はやくー」と洗面所の扉を開けてぼくを振り返る。ぼくは慌てて体操服姿の少年を追い、カメラを片手に浴室に入った。

「あ、……脱いじゃうの?」

 半ズボンに手を掛けた昴星に、思わずぼくは訊いていた。

「ん? んー、だってズボン濡らしちゃったら……」

「ああ、そうか……」

 体操服姿のままのオモラシ、ちょっと見たい気がした。ブリーフを濡らすところはこれまでも何度も見せてもらっているので。しかしそうなるとそれはそれで面倒にもなる、仕方がない……。

 そう思って諦めかけたのに、

「……洗って、乾くかなぁ」

 昴星は少し考え込む。それから、「あーでも、明日振り替えで休みだからいいや。おにーさんちゃんと洗って干しといてくれんならいいよ」

 と迷いを断ち切るように、……いや、実際そんな大して深い考えもないように、言った。

「いいの……? でも、その……、まさか、フルチンで帰るの?」

「まさか! ちゃんと朝学校まで着てきた服がカバン中入ってるもん。それに着替えて帰れば平気だろ? それにさ、おにーさん見たいんだろ?」

 それは、ええ、はい。

「わかんねーなー、おれはパンツ濡れてくとこのほうがエロいような気ぃするけど」

 わかんなくていい、わかんないほうがいい。だって昴星はショタコンではないのだから。

 昴星は「じゃー、するよ。ここで立ってすればいい?」とタイルの上、ぼくに向けて訊く。ぼくはカメラを構えなおして、「お願いします……」と興奮で声が震えるのを止められない。

「んひひ、ズボン穿いたままおにーさんに見せんの、初めて……、じゃねーか、こないだもブルマ穿いてしたっけ。でも……」

「ちゃんと男の子の格好でするの見せてもらうのは初めてだよ」

「そうだよな、ひひ。おにーさんこっちの方が興奮する?」

 昴星のオモラシなら、どんな形であっても興奮するに決まってる!

「お……、出る……」

 昴星は身体のサイドで半袖シャツの裾を握った。

「あー……、出てる……、オシッコ出てるよ……」

 ブリーフだけのときとは違う。浮かんだ染みの広がりも見えない。そのかわりまず、内腿からツウッと一筋、また一筋と伝っていく。

 地味と言えば地味、だけどそれだけにリアルだ。

 紺色の半ズボンの裾や股下からも、ポタポタと雨が垂れ始めた頃、ようやく前部にも濡れ染みが生じ、紺色の生地を黒く濡らしていく。

 これは、実際にあったかもしれない映像だ。……つまり昴星が、組体操のラストで「ちびっちゃった」だけに留まらず、全部漏らしてしまっていたなら……。

 あるいは、多分今も昔も変わらず長いであろう校長先生の話のせいで、トイレに間に合わなかったら……、閉会式の最中に、低学年の子みたいにオシッコを漏らしてしまっていたなら……、昴星はこういう姿をみんなに見られることになっていたのだ。

「はうー……、いっぱい出た……」

 昴星は足元を見下ろす。色の濃い、大きな大きな水溜りが、タイルの目地に沿って排水溝へと向かう。

「……靴下脱いですりゃーよかったかな……」

 白いソックスの内側も、真っ黄色だった。そうだ、普通にオモラシしたなら、そこもびちょびちょになっちゃうことだろう。

「おにーさん、やっぱパンツでするよりこっちの方がいい?」

「うん、すごい……、いや、パンツが濡れるの見るのもすごいいいけど、これも、いい……」

「ふーん。……おれはさ、ほんとはパンツだけでするよかこっちの方が好きかなー。あのな、パンツだけじゃなくってズボンはいてる方がさ、ほんとにオモラシしたって感じがする……」

 流斗よりも強いオシッコ臭さを纏った少年に思わず、

「ねえ、触ってもいい?」

 カメラを置いて訊いていた。「昴星の……、オモラシ、触っても、いい?」

「んー? きたねーけど、おにーさんがそれでいいならいいよ」

 昴星を後ろから抱き締めて、濡れた半ズボン、まだほんのりあったかい場所に手のひらを乗せる。……もちろん、濡れているのだからぼくの手も濡れる、昴星のオシッコだ、しかし、汚いなどとはもちろん思わない。

「昴星……、おちんちん大きくなってるね」

「んー、オモラシする前はちょっと収まってたけど、したらまた勃起した」

「……もし、運動会のさ、組体操のとき、ちびるだけじゃなくてこんな風に派手にオモラシしてたら、そのときも勃起してた?」

「は?」

 昴星はぼくを見上げる。ぽかんと口を開けて、「……んーなの、するわけねーじゃん……」と、まあ、至極当然の答えを寄越した。

「そう……、そうだよね」

「そうだよ、流じゃあるまいし……」

 まあ、流斗は確かにそういうシチュエーションこそお望み通りと身体を反応させてしまいそうな危うさがある。

 昴星の髪や体操服のシャツからは、オシッコにも負けないぐらいの昴星自身、この少年そのものの匂いが届いていた。塩っぱくて甘い汗の匂い……、ぼくが生まれ付き持っている琴線を掻き鳴らすような、魅力的な。

「ねー、おにーさん、……ちんこ、直接がいい」

 昴星にそう強請られたところで、ぼくはオモラシ体操着ごしの愛撫を止めた。素敵なものを見せてくれたのだ、だから、ぼくはもっと素敵なものをこの子に贈らなければならない。

「わかった。……どんな風にすればいい?」

「んー、口がいい。おにーさんの口エロくて好き。あのさ」

 昴星は半ズボンをずるりと下ろす。見事なまでに濃い黄色に染まったブリーフの中央、いつでも言いたいことははっきり言う子のものでありながら控え目な膨らみが布に吸い付かれている。

 窓から、その膨らみの中身をタマタマごと取り出す。ぴょこん、という擬音が似合いそうな、小振りでありながら元気一杯の勃起である。でも昴星は勃起してもサイズがあんまり変わらない。……元から小さいおちんちんであるけれど、それが勃起してもこの程度だと、何だか本当に可愛く見えてしまう。垂れ下がる袋は歳相応のサイズに見える分、余計に。

 それにしても、やっぱり体操服、そしてブリーフ、すごい。オモラシしちゃった男の子、その証拠となる黄色いオシッコブリーフの窓から、愛らしいおちんちんが思いっきり上向いて、……興奮を一番素直な形で表現しているんだ。これは本当に現実なのかという気さえする。

「ちんこ、しゃぶってさ、あとキンタマもして欲しいし、お尻とか触って欲しい」

 ああ、そうか。せっかくオモラシしたんだもの、昴星はオモラシという行為、そして感触にもおおいに興奮する子だ。

「うん、わかった。……でもその前に、ちょっとだけ撮っていい?」

「ん? うん、いいけど」

 昴星はぼくが向けたカメラに笑顔を返す。「ひひ、撮ってんの?」

「うん……」

「おにーさん撮んの好きなー。……まーおれも撮られんの、ちょっと照れくさいけど嬉しいからいいけどさ」

 体操服のシャツの裾も、オシッコでちょっと黄色くなっている。胸には名前とクラス名、太腿に引っ掛かったズボンもぐっしょり。

「……あの、あのさ、昴星、一つお願いしていい? その」

 カメラを一旦止めて、「なに?」と首を傾げた昴星に、……うん、我ながらどうかしている本当に変態だ救いようがない……、お願いをした。

「んー? なんで?」

「いや……、えーと……」

「そういうの、おにーさん見て愉しいの? あとで見て、興奮してちんこシコシコすんの?」

 ううむ、やっぱりどうかしている……。

「いや、あの、嫌だったら、いいです」

「いやー、やじゃねーけどさ。おにーさんが見たいんならいいよ」

 おちんちんを、まだ勃起させたまま昴星はにぃと笑う。ぼくは慌ててカメラを構えた。

「じゃ、じゃあ……、どうぞ」

「はい。……○○市立××S学校六年一組鮒原昴星ですっ、えっとー、オモラシしました! これ」

 と自分の勃起おちんちんを指差して、「オモラシしたおれのちんこです!」

 と元気よく言い切る。

「……これでいい?」

 はい、もう、すごい、いい。

「……わかんねーなー、いまのの何がそんないいんだ?」

 わからなくていいし、多分、わからないほうがいい。

「……おちんちん、オモラシして気持ちよかった?」

「んー? うん。だから勃起した」

 小さな球根状おちんちんを指でぴこんと弾いて昴星は笑い、

「なー、おにーさんまだしゃぶってくんねーの?」

 催促した。

「うん、しゃぶる……、もう少しだけ撮らせて」

 腰掛けに座り、昴星のおちんちんと真正面に向き合う。

「昴星のおちんちん……、びしょ濡れだね?」

「うん、だってオモラシしたもん。……んーな近いと臭くない?」

 臭い、……と言うほかないのだろう。しかしぼくの股間に熱を集めさせる、独特な臭さ。

 オシッコ、すなわち排泄物である。少年のものであろうと大人のものであろうと臭いに決まっているけれど、……何というか、一定量の水が、昴星の口に入りその身体を行き渡った末に出てくるものであると考えるならば、それはやっぱり特別なものだ。

 昴星のオシッコは、流斗より臭い。それが一体どうしてなのか、ぼくの想像出来る範囲に答えはなさそうだ。……例えば、この小さなタマネギにも似た丸っこいおちんちんの形状によるものか。上を向いてもさほど大きくならず、根元からぷくっと膨らみ先端に向けて急激に窄まり、余り皮はめだかの尻尾にも開いた花のようにも見える。そして色は白い。……運動会の練習でまた陽に焼けたからだろう、半ズボンの日焼け跡がとてもえっちで、そんな中で真っ白なおちんちんというのはまたたまらなく魅力的である。もちろん、肌と同じく白くあるべきブリーフが尿の色に染まっている様子をこんな風に見せてくれるのは世界中広しといえども昴星と流斗ぐらいなものだろう。

「あと一つだけ、……いい?」

「えー……、なに?」

「お尻も見たいな……。その、オモラシして、どれぐらいまで濡れちゃったのか」

「うー……」

 ごめんね、ぼくの口を求めてくれてるのに、こんな訳の判らないおあずけをして。

 でも昴星は優しい子だった。お尻を向けて、鏡に手をついて突き出す。「これでいい? 見える?」

 流斗に比べれば当然のこと、男の子として考えても大きく丸いお尻だ。オシッコを吸い込んだブリーフは、昴星のお尻の谷間に食い込んで、まるで肌に意志を持って吸い付いているかのようだ。

 くっきりとしたツートンカラー。お尻の半ばまでは白いが、そこから下は黄色に染まり、強い臭いを発している。

「あのさー、……おにーさん?」

 昴星は肩越し振り返り、唇を尖らせて言う。

「こんだけやったんだからさー、ちんこ、一回だけじゃなくって二回してよ」

 二回どころか三回でも四回でも! ぼくは頷いて、「ありがとう、こっち向いて。……とりあえず、最初の一回してあげなきゃね」

「うん。しゃぶって。あ、でもその前にキンタマ。あとさっき言ったみてーにさ、お尻も触って」

「天使」と呼ぶにはやや邪気がある。しかしそれすらも愛嬌。男の子らしさをややぽっちゃりとしたその身に臭いと共に纏った昴星を、信仰とすら言えそうな思いをぼくは抱く。昴星はぷっくりしたタマタマを音もなく蠢かせ、それを誇るように腰を突き出した。

 顔を寄せて、横縞模様の皺がくっきり現れ、その谷間にオシッコが含まれていることも判るタマタマに舌を当てる。

「んひひ……、キンタマ……」

 ぴくぴくっ、とおちんちんが震える。どこもかしこもつるりとした昴星の肌で、そこばかりはざらついた舌触り。しかしじんわり広がるオシッコの臭いと味を愉しみながら舌で突っついたり持ち上げるように舐めてみるのもいい。昴星も、砲身ほどではないにせよそこが気持ちいいのだろう。

「昴星のタマタマ、可愛いね。流斗のよりも大きくって、ふっくらしてて……」

「ん、おれ、キンタマでかいと思う」

 おちんちんが小さいからそう見えるというのを差し引いても、まあ、そうだろう。

「昴星はタマタマされるの好き?」

「んー、たぶん。……なんだろ、あのさ、オモラシしたときしか、お尻もキンタマも濡れないじゃん?」

 まあ、オシッコの後にちゃんと搾り出していればおちんちんだって濡れないけども、「うん」と一応ぼくは納得したことにする。

「キンタマとお尻濡れるとさ、オシッコ漏らしたの、わかるからさ」

 裾のゴムをなぞって後ろへ回り、肉付きのいい臀部、そのツートンカラーの黄色い方に手のひらを当てる。

「そうだね、確かに……、ここはオモラシしなきゃこんなに濡れない」

 昴星はぼくにお尻を揉みしだかれることではっきりと快感を催している。

「じゃあ、もっと濡らそうか」

 真ん丸タマタマを舐め回しながらお尻を揉み、鼻先のおちんちんの震えを愉しむ。おちんちんをしゃぶってあげたときほど鋭い反応は示さないものの、目を細めてうっとりと、

「んう……、はっ、……キンタマ……、すげー、ぬるぬるする……」

 ぼくの舌先で腰を揺らしながら、悦んでいる。

「ん、っ……、うン……、ん……」

 それは射精のために快楽を受けているというよりは、単純に行為の快感を満喫している、ちょっと大人っぽくて、えっちな有様だ。もう少し見せてもらおうかと思っていたが、目を開けて腰を引いて、

「……おにーさん、もう、ちんこがいい」

 とねだった。

「もう、タマタマはいい?」

「ん。……っていうか、タマタマって言うの恥ずかしー。おにーさん自分のキンタマそんな風に言うのかよ」

 言わないよ、こんなの。

「……昴星や流斗みたいに可愛い男の子のここは、みんなタマタマだと思ってるけどな……。流斗だって自分のここはタマタマって言うよね?」

 それはー……、と昴星は唇を尖らせる。「あいつ、だって四年生だもん。それにさ、あいつはかわいいから、そういうこと言っても……」

「ぼくからしたら、昴星だってまだ六年生だしすっごく可愛いよ。それに昴星だってもうちょっと小さい頃はさ、いまは『ちんこ』って言ってるおちんちんのこと、『ちんちん』って呼んでたでしょ?」

 前に、「赤ちゃん」になってもらったときそう言っていた。昴星はそれを思い出したように、頬を紅くする。

「……タマタマ、……って、言った方がいいの? おにーさんは、そっちの方がうれしいの?」

「うーんと……、それが嬉しいってことはそんなにないけど……」

「ねーのかよ!」

「ま、まあ、でも、……可愛い言葉使ってる昴星も可愛いし……、もちろん普段通りにさ、『キンタマ』って言ってる昴星もぼくは好きだよ?」

 昴星は複雑な表情を浮かべる。ぼくに呆れているのかも知れない……、まあ、実際呆れられて仕方のないようなぼくではある。

 しかし昴星は、

「……じゃあ、もうちょっとだけ、してよ」

 少し背伸びをして、

「おれの……、タマタマ、おにーさん、舐めて……」

 その場所をぼくの顔に近付ける。

 オシッコの噴き出し口である先端と同じくらいに濃い臭いが、鼻先に漂う。……皺と皺の間にオシッコが、毛細管現象って言うのか、吸い込まれるから臭いが強くなるのだろう。もちろん今日の場合、汗の臭いも加わって、一層その魅力的な臭いは強まる。

「あ……! ン……っ」

 改めて、昴星の「タマタマ」を口の中に収める。昴星は体操服のシャツのお腹辺りをぎゅっと握って、はっきりと感じ始めていた。それでもなお、

「んっう……、タマ……タマっ、タマタマ、……おれのぉ、タマタマ……っ」

 甘酸っぱい声で、その単語を紡いで聴かせてくれる。

「……美味しいよ、昴星のタマタマ。オシッコの味、汗の臭い、……ほんとにすごく美味しくって、可愛い」

「ん、ん……っ、おにぃ、さっ、おれの、……タマタマ、好き……?」

「うん、大好き。おちんちんもタマタマも、昴星の全部、大好きだよ」

 くん、くん、とおちんちんに力が篭もる。ぼくはもう一度口に含み、

「あ、あぁ、タマタマっ……タマタマにゅるにゅるするっ……!」

 舌を思い切り絡め付けて、一先ず満足する。

「……もう……、いい、の?」

「うん、ありがとう。昴星ももう出したいでしょ? ぼくのしゃぶって、オモラシして……、もうガマンできないだろうしさ」

 口を閉じた皮を摘んで見る。皮の隙間から透明な蜜が漏れ出してくる。

「昴星、オシッコ出るところ見せて」

「オシッコ、出るとこ……? ん、こう?」

 皮を剥いて、その亀裂を覗かせてくれる。

「すごいね、おつゆでトロットロだ」

「ん、……ひひ、おれ、ちんこ勃起してさ、ずっとしてると、すぐこんななる……。学校でさ、授業中とか、そういうこと考えて、……ほっとくと、パンツの前にさ、このぬるぬる、付いちゃうんだ……」

 だから、才斗にすぐバレる、昴星はひひひと笑った。

「ここがこんなに濡れてるの、すごくえっちだ。昴星のパンツにそういうのが付いてたら、昼間ずっとえっちなこと考えてたんだって思っていいわけだね?」

 こく、と昴星は頷いて、「おにーさんのちんこのさ、どこ舐めたら一番おいしいかなとか、思って濡れるときもあるよ」と嬉しいことを教えてくれる。

「奇遇だね。ぼくも昴星の身体のどこが一番美味しいか、ときどき考える。……でも結局のところ、全部美味しくっていい匂いなんだよね」

 昴星のお腹にキスをして、ぼくは言った。これはお世辞ではなく本当の気持ち。この子はこんなに美味しくって、いい匂い。

「そうかなー? おれはさ、ちんこがいちばんおいしいって思うけど」

 要するに昴星は、早いとこ一番「おいしい」ところを舐めて欲しいんだろう。

「じゃあ、どれくらい美味しいか教えてもらおうかな」

「うん! たぶんオシッコとガマン汁で超しょっぱいけど……ぉっ!」

 舌触りが、とても滑らかだ。鼻を内側からツンと刺激しながら抜ける、先鋭的な臭い。昴星の予告通り、オシッコとガマン汁の混じって破裂するようなしょっぱさ……。

「お、っン……ひっ、ちんこっ、ちんこ、おいし? おれのちんこ……!」

 うん、本当に……、泌尿器であることさえ忘れさせるような美味しさ。いや、オシッコが出るところだからこそ美味しいのか。

「ひっ、ンっ、んぅ、んぉ、ほっ……す、っげ、へっ、ちんこ、すっげっ、ちんこぉお……!」

 なんだか、ちんこちんこいっぱい口走ってるの、すごくいやらしくって可愛い。それだけ昴星の悦びが高まっていることの証拠だということが伝わってくる、ぼくがちゃんと、昴星を悦ばせてあげられている……。

 昴星のおちんちんがピクピクするたび、ガマン汁の味がじわじわと広がってくる。しょっぱいもののとり過ぎは、あんまりよくない。判ってはいるけれど、でも美味しいんだからしょうがない……。

「んもぉっ、もぅ、ちんこダメちんこダメっいっちゃう、おにぃさっ、ちんこいっちゃういっちゃうっいくっ、いくッンいくぅう!」

 声を散らした昴星の精液は、全てぼくの口の中へともたらされた。どくん、というよりは「びゅくんっ」とぼくの舌の上で弾んだおちんちんから、ドロッと濃い精液が何度も飛び出してくる。タマタマの大きい分だけ生産量の多い精液、……ゼラチン質で、粘っこくて、少し飲み込んだだけで喉がひりつく。もちろん口の中にある段階から相当に強い臭いを発している……、何て贅沢な味だろう。

「すっごいね」

「……ほぇ?」

 昴星の身を支えて腰掛けに座らせてあげてから、後ろからぎゅっと抱き締める。骨格は未発達なのに、肉付きがよくて、だからしっかりとした抱き心地。髪から漂う汗の臭いは甘くさえあった。

「昴星の、おちんちん、すっごい美味しかったし、精液も、……濃いの一杯出たね。……気持ちよくなってくれたの判って嬉しかった」

「あー……、そりゃー……、だって、きもちよかった、よ? おにーさん、ちんこしゃぶんの上手いし……」

「才斗や流斗はもっと上手いんじゃない?」

「あいつらもー、上手いけど……、舌の動き方とか、おにーさんの……、なんかすっげーエロい。やっぱやり慣れてるからかなー……?」

 やり慣れてるも何も……。そりゃあまあ、昴星と流斗の、いつもさせてもらっている、練習を積んでいるわけだけども。

 男の子のおちんちんをしゃぶるとき、ぼくは毎回「初めて」のときと変わらぬ緊張と興奮を味わっている。幸せ過ぎることを自覚しているから、それぐらいの心構えでないとやってはいけないように思っている。

「おにーさん、また勃起してんの?」

 昴星が肩越しに振り返り、後ろに回した手で探る。ぼくが差し出したそれに触れて、「ひひ……、すっげー、超ビンビンじゃん……。おれのちんこしゃぶってこんななったの?」嬉しそうに鏡越しの笑顔を向ける。

「うん。昴星のおちんちんでこうなった」

「ヘンタイだなー。じゃーもう一回出したいんだ?」

 意地悪く訊いているつもりなのかもしれないけれど、その顔は可愛いし、言葉も優しい。昴星はこういうところが本当に可愛らしいとぼくは思う。

「まあ……、そりゃね。昴星のおちんちん、今もこうして目の前にしてさ、臭い届くぐらい近くにいるわけだから……」

「ふーん……」

 昴星はにやりと笑って、膝を付く。大好きな臭いが遠退いた、その代わりに昴星の顔が近付いて、そのまま唇が重なる、舌が這入り込む、とても積極的な、キス……、心がぎゅうっと熱を帯びるような。

「おにーさん、もっとしたいんだ?」

 強気な問いかけに、ぼくはどんどん素直になる……。「うん、したいね。いっぱい……、したいよ」

「じゃー、おれのうんこするとこ見る?」

 どくんと高鳴った鼓動を聴かれただろうか。昴星が「うんこする」って言うとき、それはつまり……、

「いいの……?」

 この間の、初めてのときと同じ。昴星とぼくが一つになる、そのための大切な準備。

「うん。……ぶっちゃけ、わりとしたいしさ」

 昴星はひょいと立ち上がって、両手を広げる。

「おにーさん、だっこ。トイレまで連れてって。靴下もパンツもびちょびちょだからさ、オシッコで床汚れちゃうのまずいだろ」

 立つと同時に小さなおちんちんがぷるんと揺れる。ぼくは微笑んで頷き、昴星を抱き上げる。……重たくはない、けれどまあ、ちゃんと支えなければ危なっかしい。トイレの便座に座らせるなり、昴星は「ちゃんとさ、よく見えるように」と便座の上に濡れた靴下の足を乗せてしゃがみ直した。

「うんこは? 撮んなくていいの?」

 訊かれて、慌てて浴室からカメラを取り戻す。昴星はシャツを捲り上げて待っててくれていた。

 足を大きく広げている格好、確かに「よく見えるように」だ。昴星のおちんちんもタマタマも角度を変えればお尻の穴まで見えてしまう。絶景である。思わず便器の前にひざまずいて、足の間に顔を突っ込んでしまいたくなる。

「あれだよ、ちんこ、いましちゃダメだからな、勃起しちゃったらオシッコまきちらしちゃう」

 ああ、それは困る。一瞬「しゃぶっちゃえばオシッコされても平気かも」とは思ったけど、それはそれで昴星が落ち着いてうんち出来なくなってしまうわけで、……ここは大人としての節度を発揮すべきだ。

「真っ正面から撮るの?」

「うん……、ほら」

 ぷるんと揺れる可愛いおちんちん、その向こう側に、これから臭いものを生み出すアヌス。「ここからだと、昴星の全部見えるから」

「撮っていいっつったの、おれだけどさー……」

 昴星はひひっと笑う。「飽きない? だってさ、ちんことお尻の穴……、アンド、うんこするとことか、おにーさんもう全部撮ってんじゃん」

「それは……、まあ、確かにそうなんだけど」

 でも、一回一回が本当に特別なんだ。もっとも、これを「判って」と言うのはわがままだろう。

「んーまー、おにーさんが撮りたいならいいんだけどさ。おれも、撮られんのはうれしいし……、お……、出るかも……」

 一度、座り直して、おちんちんの向いた角度を確認する。そのままなら手で押さえなくてもオシッコは便器の中だ。昴星は安心したように両膝に手を置いて、一度、細長い音の放屁をぼくに聴かせて照れ臭そうに笑う。それから「あ……、出る出る……」ほんの浅い皺を眉間に寄せて、いきむ。

 肛門が内側からむくりと膨らみ、ぱっくりと口を開ける。暗闇の奥から、一瞬顔を覗かせたと思ったら、

「っお……おー……」

 すぐに引っ込んでしまった。昴星はもう一度座り直して、

「ひひ……、見えた? すっげー太いの……」

 笑う。ぼくはこっくりと頷くばかりだ。

「今度は出るかな……? ……っんー……あ、オシッコが出る……」

 ちょろちょろと包茎の先っぽから愛すべきせせらぎが生じる。昴星は下肢から力を抜き、「ほー……」と息を吐きながらオシッコを出るに任せていたが、「あ……、おにーさん、今度はちゃんと出そ、お……っ……」そのままの勢いに乗じて、オシッコを噴き出させながら再び肛門から太い塊の頭を覗かせる。

「う……、ひひ……っ、すっげ……の、出てきたぁ……」

 オシッコのシャワーが止むと、にちにちと其処が音を立てているのが判る。黒茶色の艶をてらてらと光らせて、何と言うか「ごつい」という言葉がしっくりくるようなものが、じわじわと昴星のお尻から出現した。

 昴星は足の間を覗き込んで、

「お……、やっぱ、太い……、なげー……、アンドやっぱりくせー……」

 自分の生み出したものでありながら感心したように言う。

「本当にね……、湯気立ってる……」

「ん、……超伸びてる……、シッポみてー」

 昴星はふざけてお尻を揺すって見せた。茶色い「シッポ」はゆらゆら揺れて、やがて昴星のお尻から抜けてちゃぽんと着水した。

「ほー……」

 昴星は少しだけすっきりしたように溜め息を吐く。しかしまだ一部に過ぎないだろう。

「んぅ……ン、ん、……っく、……ふー……っ」

 また力を篭めて、胎内を開放すべく……、今度は、先程よりもスムーズに滑り出した。

「あー……、すっげ……、太いの出てんの……、ひひ、おにーさん見すぎっ……」

 排便の様子を撮らせながらも、昴星は小さいおちんちんの角度を徐々に変え始めている。撮られることの悦びと同時に、肛門を通過する物体がもたらす快楽に反応しているに違いなかった。

「……んふー……」

 二つ目を便器の中に落として、「なー……、おにーさん、もっとおれのうんこ見たい?」ニィと笑って訊く。

「もっと、って……?」

「んー、だからー……、よいしょ」

 お尻も拭かずに、便器から降り、すぐまた上り直す。今度はこちらに背を向けて跨り、上体をタンクに委ねるようにお尻を突き出す。お尻の位置はさっきより高い。きゅ、きゅ、と次のものをガマンしているのか窄まったり緩んだりする肛門、丸見えだ。

「なー? こういうのだったら、おにーさんもっと見れるだろ……?」

 ぼくはトイレマットに膝を揃えて座り、ぽかんと口を開けて見上げていた。

「あっもう、出る……、おにーさんうんこ出る」

「あ、あ、はい」

 慌ててカメラを構えなおす。太陽がどうやったって届かない場所を、ぼくにカメラのレンズに晒す昴星が、

「んぅ……」

 三度目の排出を始めた。裏側から見るタマタマの愛らしいフォルムが、肛門から垂れ下がるものですぐに遮られた。

「すごい……、昴星、これまでで一番太いのしてるんじゃない……?」

 気圧されて言ったぼくに、「ひひ……」どこか得意げに、昴星は笑う。昴星の肛門はそこに備わる環状の筋肉の存在が外見からでもはっきり判るほど膨らみつつ、……五百円玉ぐらいだろうか、とにかく圧倒されるような太さのうんちを長々とぶら下げていた。重たげで、千切れて落ちそうになりながらもぎりぎり、まだ昴星と繋がっている。

「すげー、だろ? こう、ゆーの、おにーさん、見て、うれし?」

「うん……、すごい、すごいよ」

 振り返って訊いた昴星は、ぼくの応えに満足したように「ひひっ」とまた笑った。

 黒茶色の便は、もちろん臭いし、汚いものだ。しかし肩越しの昴星の顔がたまらなく可愛いから、本来マイナスで在るべきそういった要素さえ許せてしまう、寧ろ、それさえも可愛く思えて来てしまう……。こういうのを「倒錯」って言うんだ。辞書に載っている言葉の意味を、自分の心ではっきりとぼくは理解する。

 昴星のいっぱいに膨らんだ肛門から便器の土手へ、ぴとん、と長々とうんちが落ちて、横たわった。

「おはー……、出たぁ……」

 昴星のアヌスはそこを思いっきり拡げた便の通過直後。まだ、ぱっくりと口を開けて、ぼくの指一本ぐらいなら昴星のどこにも触れずに内側まで至りそうだ。内壁までも生々しく覗けてしまう。そこにもう、物体の存在が伺えないということは、

「すっきりした?」

 ぼくの問いに、昴星は「おー……」と頷いて、またぼくに向かい合う形で、……こんどは、お行儀よく便座にお尻を収める、いや足は大きく開いているから、お行儀よくはないか。足首を回して、「ちょっと足痺れちゃった」と笑い、改めて自分の足の間を覗く。

「すっげー……、超太いの出てる」

 慌てて止めそうになった。だって、便器の中に平気で手を突っ込もうとするものだから。……もちろん昴星だってそこまで非常識なことはしない。触れない程度に、でもかなり近いところで指を広げて、

「こんくらい」

 と太さをぼくに教える。「おにーさんのちんこの方がやっぱおっきいね」

「まあ……、ああ、そう」

「でもさー、やっぱさ、ふっといのすると、おにーさんのちんこのこと考えちゃうね。いまもさー、ほら、ちんこ勃起したし」

 そう、昴星の足の間でぴょこんと上を向いた、可愛いおちんちん。

「こないだおにーさんとしてさ、あんな太いの初めてだったから、あのあと帰ってからもいっぱい考えちゃってさ」

 ひひ、と愛らしい笑みを浮かべて、「今日も、入れる? 入れたい?」ぼくに訊く。

「うん、……あの、……入れたい。でも……」

「んー?」

「その、しんどくない? ぼくのは……、ほら、太いし。それに、才斗の方が昴星も……」

「んーん、才斗のもきもちぃし、おにーさんのもきもちぃよ。どっちもちんこだもん。なんてーかな、あのな、ちんこって太いほうがお尻パンクしそうになってきもちぃんだけど、でも流のみてーなさ、ほそっこいちんこでもおんなじに気持ちいいんだ」

 入れられたことがないもので、昴星の経験を「そういうものか」と納得するほかない。昴星が「入れてもいいよ」と言ってくれるという事実だけを、ただもう平伏して「ありがとうございます」と受け止めるほか、ぼくには出来ないし、するべきではないのだろう。

 ゴムは、もちろんトイレではなくて部屋の方。

「なー、おにーさん、お尻拭いてよ」

 昴星は再び便座の上、和式でのスタイルになってシャツを捲った。そのポーズの、なんとまあ愛らしいこと。「アンド、いまのままだとさ、おにーさんのちんこもらったらすぐ出ちゃいそうだからさ、うんこ拭いたら、ちんこ、して欲しいなって。ほら、オシッコもちょっと付いてるしさ、おにーさんこーゆうの好きだろ?」

 はい、とぼくは頷き、「……あの、昴星? その、おっぱいも見せてくれる?」と余計なリクエストを一つ。

 しかし昴星は、

「んー? こう?」

 シャツを首下まで捲って、薄いピンク色の乳首を晒してくれる。男の子でありながら、ほんのりと膨らみを帯び、触れば柔らかいことを知っている。「男のおっぱいなんて見ておもしれーの?」

「うん……、いや、面白いっていうか……、うん。……触っていい?」

「いーけど、でもその後ちゃんとうんこ拭いてよ。お尻かゆくなるから」

 向けたカメラに一応愛想良く微笑んで、おっぱい、おちんちん、どっちも撮らせてくれる昴星の優しさに感謝しつつ、ぼくはペーパーを巻き取り、昴星の足のあいだに手を入れた。

「ん……、ひひ、ちゃんとさ、綺麗にしろよなー……」

「うん、はい……」

 自分以外の誰かの肛門を拭き清めることなど、……まあ、まだあまり考えたくはないけれど、自分の両親の介護をするときでもなければ、あるいは自分の子供にするときでなければ、まずありえまい。

 でもぼくは何の抵抗もなく出来る。昴星も喜んでそうさせる。

「見して……、ん、一応もう一回」

 昴星のおちんちんは上を向きっぱなしだ。六年生にもなってこんな風に、うんちの後始末を大人にしてもらうという甘ったるい感覚を愉しんでいるらしかった。こういう状況をまず「愉しむ」ということが出来るのが、昴星にしろ流斗にしろすごい。ぼくだって愉しいは愉しいけれど、緊張と興奮をコントロールするのがやっと。そのうちちゃんと出来るようになるだろうか。

「っん……、きれい?」

「うん……、多分」

「んし、じゃー、こんどちんこ。ちんこはー、紙じゃなくっておにーさんの口できれいにして。ほんとはちんこ以外もオシッコまみれだけど、とりあえずちんこだけでも綺麗になりたい」

 ひひ、と笑って言う間、昴星は先程捲ったシャツをずっと捲ったままでいる。すぐ目の前にある淡いピンク色の乳首、可愛くって、

「って、……なんでそっちなんだよぉ……」

 つい、舐めてしまった。

「ごめん……、昴星のおっぱい、可愛い」

「……うー……、わけわかんな、ひゃ」

 感じる、というところまではまだ至っていないようだ。単にくすぐったいだけかもしれない。とはいえおちんちんだって元々はそんなに感じていたわけではなかったろうし、……要は、慣れだ。

 舌先でこね回しているうちに、昴星の意思とは無関係に、乳首はツンと尖りを帯びる。内側から空気を吹き込まれたように膨らみ、粒状の突起となった。

「もう一回……、撮らせてもらっていい?」

「えー、また? ……まーいいけど……、減るもんじゃねーし」

 面倒臭かろう、けれど昴星はまた微笑んで見せてくれた。さっきよりほんのちょっと赤みを帯びて、乳輪の中央に小さな同心円として勃ち上がった乳首がよく判る。自分の恥ずかしい所はお尻とおちんちんだけだと思って居るのかもしれないけれど、そんなおっぱいをした昴星にぼくが魅力を感じるのは当然の事と言える。そしてそれだけのものを見せてくれたのだから、

「ありがとう。……じゃあ、するね」

 ぼくは昴星にひざまずき、その短くとも元気一杯に勃起した包茎おちんちんに顔を寄せる。

 オシッコの臭いだけでもくらくらするのに、その上昴星のお尻の下からは出したてのうんちが湯気を燻らせているのだ。大小の差でこれほど臭いの圧迫感が違うというのもすごい。しかしどちらも昴星という、とびっきり可愛い男の子の身体を通過して世界に生み出されたものであるから、貴賎はない。

 口を開けて、昴星のおちんちんを口に含む。

「んぅ……」

 それは「咥える」という言葉が相応しくない。本当に小さくって、丸っこい。だから飴玉のように「含む」と言った方がずっとしっくり来る。

「んひっ……、おにーさんに、ちんこ、しゃぶられてる……」

 ぴく、ぴく、昴星の太腿には力が入り、同時におちんちんも脈打つ。ぼくの舌はあまりに美味しい昴星のオシッコをあっという間に舐め取り、やや余った皮を剥き、内側へと侵入する。流斗にしてもそうだけど、おちんちんが小さいものだから口の中で色々と悪戯出来るのは非常に便利で、いい。

「あ……っン、……んぅ、ん、んはっ……ちんこ、おにーさっ、ちんこきもちぃ……」

 無意識のうちに腰が動いている。それは淫らそのものの表現。オシッコとはまた違う塩辛い潮がじわじわと湧き出てくる、ぼくが幸せにしているのだという実感も、同じくぼくに湧いてくる。

 いとおしさと一緒になって。

「あ、あー……、きもちぃっ、ちんこぉ……、ちんこ、きもちぃっ、おにーさ……、おにぃさっ、もぉ出そうっ、ちんこいくっ、いくっ、ちんこっいくいくっ……ぅんンっ」

 びりびり、電流が走ったみたいにおちんちんが痙攣し、ぼくの舌へと甘美な蜜を漏らした。勃起も元気の良さを感じさせるものならば、その射精もまた弾むような勢いで、量も多い。ぼくは口いっぱいに漏らされた昴星の精液を十分に味わってから半分飲み込み、残り半分を口に入れたまま昴星に唇を重ねた。昴星は少しも嫌がる素振りは見せず、

「んふぁあ……、ふげぇ、おれの、せぇし……」

 うっとりと舌を絡めてくる。

「……まだ、いっぱい出るね。昴星はうんちも精液もたくさん出せるんだね」

 座らせ直して、抱き締める。昴星は「んひひ」と得意げに笑い、

「オシッコも、まだ出るよ。いまは出ねーけど、あとでまた、多分もらしちゃうぐらい……」

 ぼくの頬に何度もキスをくれる。

「部屋、行く?」

「うん。……抱っこがいいな」

 六年生男子としてそれを求めることに恥ずかしさを感じるらしい。確かに、普段はあれほど強気に押している少年が「抱っこ」されたい欲を持っているなんて……。

 でもぼくだって「したい」と思う。一人っ子、童貞、恋人のいたこともないぼくは、この歳で昴星と流斗に出会うまで、誰かを「抱っこ」したことなんて一度もなかったのだ。

 童貞喪失がこの子相手なら、抱っこぐらい幾らだってしてあげなくっちゃいけない。

 しきっ放しの布団に下ろしたところで、

「……このまんまがいい?」

 昴星はぼくを見上げて訊いた。

「このまんま?」

「んーその……、フルチンでいいのかなって。……ほら、さっきおにーさん体操服ですげー興奮してたからさ、ひょっとして、そっちの方がいいのかなって……。あーでもオモラシしたからシーツ汚しちゃうか……」

 ぼくはトイレに取って返し、確かにまだまるで乾いていないズボンとブリーフを持って来た。昴星は「ひひ……、わかった」足を広げて、「はかせて」とねだる。

「……なんかさ、おにーさんが興奮してくれるってわかると、このカッコですんのもいいかなって気になる……。普段さ、学校の体育で着てんのとおんなじカッコして、おにーさんとエロいことして遊ぶの」

「……興奮する?」

「うん、する」

 オモラシの刻印が濃く刻まれた紺色の半ズボン、ソックス。健全さと不健全さの両方を備えて、昴星が横たわる。

「でも、どーせ脱がせられちゃうんだよな」

「……まあ……、でも、出来るだけ着せたままでするよ」

 一方でぼくは裸なわけだ。そのアンバランスさもまたいいように思う。昴星はぼくが布団に乗ると、両手を広げて抱擁を求める。それに応えて抱き上げ、膝に乗せると今度は「キスしよ」とねだってくる。……まるで、恋人同士みたいな甘ったるい時間。確かに昴星の半ズボンからはオシッコの臭いが漂うし、さっきは排便を撮影するような非常識な真似をしていたぼくらだけど、この形のうるわしさが少しも減じることはないように思う。

 キスの最中、昴星の指がぼくの性器に伸びる。

「ひひ……、ずっと、でけー……。おれで、こんななってんの……?」

「うん……」

 昴星の耳に唇を当てて、ぼくは答えた。

「しょうがないよ……、こんなさ、昴星みたいに、可愛い子が……、オモラシの臭いさせて膝の上にいるんだよ? 夢みたいだ……」

「ん……、おれも嬉しいよ。おれのこういうのでさ、ちんここんなする人、才斗と流斗以外にもいるんだって思うの、うれしい」

 また、キス。

「昴星、キス好き?」

 ん、と昴星は頷く。好きこそ物の上手なれという言葉もある。フェラチオだって昴星は抜群に上手い、……比較の対象たる流斗もまたすごく上手いのだけど。

「なんかー……、ドキドキする……」

「ぼくも、ドキドキしてる。……昴星と出会ってからドキドキしっぱなしだよ。幸せ過ぎてさ。さっきみたいに、男の子のうんちするところ真正面から見る日が来るなんて思わなかった」

「おにーさんが見たいときあったら、……そんときおれがうんこ出来ればだけど、いいよ、いつでも。オモラシとおんなじくらいたくさん見せてやる。……でも」

 ぎゅ、とぼくに強く抱きついて、

「うんこしたらさ、ちゃんと、ご褒美におにーさんのちんこ、欲しいな」

 横たえて、「約束だよ」と小指を結んで、シャツを捲り上げる。ほんのり柔らかなおっぱいにキスをして、先程のように乳首を勃たせて、「……んもー……、おれ、男なのに……」昴星は微かに感じるような反応を見せつつも、唇を尖らせる。

「男の子だね。でも、男の子のおっぱいの方が、……女の子のおっぱいよりも可愛いし、ぼくは興奮する」

 ふくよか、とまでは言わない。けれどやっぱりふんわり柔らかいことは事実、お腹も含めて。全体的に曲線的な昴星は、その顔の形や髪型まで含めて場合によっては女の子。

 でも男の子だということを確かめたくて、半ズボンの前を下ろさせる。じめじめしたブリーフの尖りを、ブリーフごと口に含む。強烈な臭いとしょっぱさに、頭がくらくらしてくる。

「んぅ……、もぉ、お尻、してくれんじゃねーの……?」

「このまま、またいっちゃう?」

「……まだ、へーきだけどぉ……」

 おちんちんも嬉しいのだろう、でも、早くお尻に欲しいらしい。

「じゃあ、こっちにしようか」

「ふあ?」

 腰を抱え上げて、二枚重ねの布に包まれたタマタマ、縫い目、そして布が一枚に切り替わり、しっとりと濡れつつもしっかりとお尻を支える黄布の中心に鼻を当てた。

「ひゃ、あっ、おにっさ……、うんこしたばっか……!」

「ん……、でもそういう臭いはしないよ? ちゃんと拭いたからね」

「な、なら……、いいけどぉ……」

「そもそも昴星のうんちの臭いならさっきたくさん嗅いだよ。すごい臭かったけど、昴星のだって思えば平気」

 昴星は恥ずかしそうに顔を染めながらも、ブリーフの中に閉じ込められたおちんちんをヒクヒク震わせる。そういう反応を示せば当然、括約筋だってひくつくわけだ。

 ぼくは股下の布を引っ張って、裏返して見る。そこは黄色いばっかりで、汚れていない。

「昴星はいつもうんちの後、上手に拭くよね。これは流斗も同じだけど……。二人のパンツのここが茶色かったことほとんどない」

「だ、だって……、汚れてたら、カユくなるし、……それに、おにーさん、するときやだろ、うんこ……、付いてたら……」

 なるほど、してもらうつもりでいたのだ。

「ぼくはあんまり気にしないけどね、……多少なら付いてたって」

 布を戻し、指を当て、ぐり、と押し込んでみる……。

「っは!」

 欲しがってくれていた所に、欲しがっていたものとは違うものをプレゼントする。それでも布越しにきゅうっと噛み締めてくれるのは愛らしい。指を抜いて見ると、ぼくの指が入っていた部分が見事に昴星の内側へ食い込んでいる。

「パンツ! パンツ汚れるっ……」

「うん、……どんな風になったかな。見てみようか」

 布を引っ張り出して、また裏返してみる。

「ど……、どんななってる……?」

「思ったよりは汚れてない、ね……」

「思ったより……、って、やっぱり汚れてんだ……?」

 昴星も流斗も、あくまでオシッコでブリーフを汚すことにこだわりを抱くのであって、茶色い汚れの付加はどうやら少年たちにとって決して嬉しいものではないらしい。

「可愛いから、ぼくはこっちも好きだよ。……たまーに昴星のここがちょっと汚れてると、すごく興奮するし」

「……ヘンタイ」

 昴星は身を起こして、ぼくを咎めるように肩に噛み付き、それから頬にキス、唇にも。

「もー……、お尻、ちゃんとちんこくんないともうこういうことさせないぞー……」

 おお、それは困る。

「じゃあ……、しようか?」

「ん」

 昴星はズボンとブリーフを太腿まで下げて四つん這い、ぼくにお尻を突き出した。「うんこしたから、ユルくなってると思うけど……、おにーさんのでかいから……」振り返って言うときの顔は、清純だ。

「判ってる。ちゃんと慣らしてからね」

 ローションを指に出し、昴星の穴へと当てる。誘い込まれるように、するん、昴星に飲み込まれてしまった。

「んひっ……、指入ってるー……」

「うん……、すごいね、柔らかくって、あったかい……。昴星は力抜くの上手だね」

「ん、ひひ……、だって、オシッコさ、出したり、止めたり、……オモラシするのってさ、フツーのやつ、できねーじゃん? でも、おれとか流とか、出来るから、肛門のね、力のかげんとか、たぶん、すげー上手なんだ……」

 ときおり、きゅっと引き締まる。そういうとき、この子の、あの小さなおちんちんがピクンと震えているのだと判る。お尻にキスをしつつ、「可愛いよ」と、この言葉でまかないきれる限りは言い続ける。

 そろそろいいだろうか? 指を抜いたところで、昴星が振り返る。

「あのさ……、おにーさん?」

 お尻を、それまでよりもうちょっと、高く上げて。

「こないだは、おにーさんのちんこの上乗っかってしたじゃん? だから……、今日は、こっちがいいな」

「バックから?」

「って、いうの? ……あの、でも、おにーさんがもし、おれのちんことか見たいんなら……」

 自分にゴムを被せて、

「昴星のして欲しいことをしてあげるのが」

 突き出されたお尻に、当てて、進む。

「ぼくにとっても幸せだと思うよ」

「うあ……!」

 十分に緩めたつもりでいたけれど、まだ足りなかったのだということを思い知る。肉の管はゴムの膜の向こう側から微細な凹凸がぼくによって押し広げられていくことを軋みと共に伝えてくる。ぼくと昴星は密着し、ぼくのペニス全体は吸い上げられるような感触に包まれた。

「お……ほ、ぁ……ぁあ……」

「……昴星……? 大丈夫?」

「んぅ……、んっ、す、っげ、おにーさ……の、ちんこぉ……、やっぱ……、すっげぇ……」

 悦んでくれている。だとしたら、ぼくは嬉しい……。もちろん自分をきゅうきゅう吸い上げてくるような昴星の肛門の圧力も、ぼくにとっては悦びに違いないのだけれど。

 何ていうか、それ以上に、……昴星をもっと悦ばせてあげなくちゃって気にさせられる。

 それぐらい、ぼくのそばにこの子が居てくれるという事実はぼくにとって重たい。宝物のような時間をくれるこの子が居てくれる限り、この子を幸せにするのがぼくの……、使命なのだ。

「昴星」

 しっかりと奥まで昴星を穿ったところで、腰に当たるお尻の肉感。このリアル感。

「昴星と、セックスしてるね……、すごい嬉しいよ」

 お腹、おっぱい、右の手のひらで辿る場所がいちいち柔らかくって愛らしい。ぼくにとって生まれて初めて「繋がる」相手が、こんなに可愛い「男の子」でいいのだろうか。……いや本当は良くないんだけど、でも、「……嬉しい。幸せだよ」ぼくの言葉は心の底からの本音。

「んっ……はぁ……、お、にーさんの、ちんこっ、すっげー……、きもちぃ……」

 振り返って、愛らしい顔、笑って見せる。「ひひ……、おれも……、おにーさんのちんこ、してもらえんのうれしい、アンド……、おにーさんのちんこがね、きもちよくなってんの、うれしいよ」

 健全な体操服の少年がそんな風に言うのだ。

 炸裂しそうな思いがこみ上げる。ぐっと抑え、汗の臭い濃厚な体操服の背中にお腹を当てて、……そうやってみると、やっぱりぼくが抱いているのは子供だ。昴星を潰してしまわないように、そんなこと絶対にしないように……。

「……じゃあ……、一緒に気持ちよく、なろうね……?」

「うんっ……、おにーさんの、さ、ちんこ、……ちんこいっぱいいって、おれの、お尻で……」

 先日、ぼくの腰に跨って激しく身をバウンドさせて見せてくれたことを覚えている。それでもぼくの腰の動きはどうしても控え目なものとなる。……昴星は物足りないだろうか? でも、

「んん! んっ、んはぁあ……! ちんこすげ……っ、おにーさっ、ちんこすっげぇ……!」

 感じ入ったように、長く引き摺る声を溢れさせている。

「昴星の……、お尻も、すごいよ」

 シャツの中へ忍び込んで、左手におっぱいを揉み、右手でタマタマを揉み、肌の感触を確かめるように優しく優しく愛撫しつつ、ぼくは辛うじて理性の糸をまだ断ち切らない。「吸い付いてくるみたい……だ、すっごい……」

「んひっ……、ん、だ、って……、おれっ、うんこ、ガマンできるもん……っ、そこ、ユルかったら、オモラシっ……オシッコだけじゃ、すまなくなっちゃうもんっ……」

 それはそうなのだけど、ただうんちガマンするためだけの筋肉の使い方じゃない。ぼくが言った通り、「吸い付いて」来るのだ。ただぎゅっとするだけじゃなくって、粘っこく、絡みつくように。

 これがこの子の、……才斗という「男」の恋人がいる子特有の肛門ということなのだろうか。だとしたら、何てかけがえのない。

「ん、ね、おにーさん……、おれ、……ちんこ……」

「……うん、おちんちんして欲しい?」

「ん……、でも、おにーさん、まだ……っあ」

 びく、と身を震わせたのは、肛門のぎゅうぎゅうした圧力に屈するようにぼくが脈打たせたからか。

「……いきそう? おにーさん、おれで、いきそう?」

 うん、と掠れた声で頷いて、最愛のポークビッツを指に収める。きっとしょっぱいんだろう、オシッコのすごい臭いがするんだろう、だけど、だからこそ、ぼくが気持ちよくしてあげるんだろう……。

 理性を噛み千切った。一度引いて、誘うまま、奥へ。

「おあっ、あっンっあんっ、あンッ! お、しりっ、お尻お尻っ、すごぉ、っちんこ! おにぃさっ、ちんこぉっちんこっいいぃっくぅっ、いくっいくっいくっあっあっあぁあっ」

 離さないと言うように強く強く握り締められて、ぼくは、……我ながら呆気ないと思うほど陥落した。

「あ、あっ、ひゅげ、っ、ビクビクっ、ちんこっちんこビクビクひてるぅ……」

 布団に精液を散らした昴星が背中を反らし、ぼくの脈動をそのまま全身に伝わせたように激しく痙攣する。後ろから抱き締め、胸いっぱいにその匂いを嗅ぎ、……ああ、どうしよう、本当にこの子が可愛い。今更のように罪深き思い、身を満たし、心に茨を這わせる。

 でもせめて、

「……大丈夫? お尻……、痛くない?」

 案じよう。この子の幸せを祈るものとして。

「ん……はぁ……」

 ゆっくりと腰を抜いた。ゴムに血は付いていない。肛門を覗き込むが、傷も。そのことに、心底安堵する。昴星はぺたんと身を倒し、

「ふわー……」

 ぼくを見上げて、汗ばんだ頬に張り付く髪そのままに、目を丸くして、

「すっげーぇ……」

 何だか、暢気に驚いている。

「……ん?」

「……やー……、わかんねー……、おにーさんのちんこ……、ちんこっていうか、ちんこもだけど……、アンド射精……、すごかったー……」

 射精を褒められるってどういうことだ。ぼくは呆気に取られて見下ろしていたが、

「起きる」

 昴星の求めに応じてすぐ抱き起こす。

「その……、お尻は平気?」

「んー? んー。ちょっとじんじんしてるけどー……」

「大丈夫?」

「うん。……なんつーか……、ちょっとビックリした。こんなビリビリッてなんの、初めてだったからさ……。あれかな、おれの、……いちばんいいところ、なのかな」

「いちばん……、いいところ?」

「うん。お尻のさ、肛門の中の、お腹の一番奥。おにーさんのちんこずんずん当たってすごかった……。おにーさんちんこにうんこ付いてない?」

 ぼくのゴムを確かめようと覗き込んだところで「うわすげー!」昴星はまた驚いた。うん、……まあ、ぼくもさっきから、ゴムが重い。

「すっげー……、お、おにーさんこれ、おれの中でいって、出たの……? マジでこれ、全部せーし? なんか別のもん混じってんじゃねーの……?」

 昴星が驚嘆するのもまあわかる。ぼく自身、「えっ」と思うぐらいの量がゴムの中に封じられている。どんだけ興奮してんだよ、今日の一発目でもないのに……。

 目をきらきらさせて、

「あのさ、あのさ、おにーさんおれ、これ飲みたい!」

 とんでもないことを昴星は求める。

「これ……、これを?」

「ダメ? おにーさんがさ、おれのお尻で感じて出したんだろ? だったらさ、おにーさんの出したせーしおれのもんじゃん!」

 どういう理屈だろうか。……ただ昴星は止めた所で止まらないだろうし、ここで外したら間違いなく零れる。どのみち一度、シャワーを浴びなければならないわけで。

「わかったわかった……、お風呂でね」

 昴星は嬉しそうに立ち上がるなり、さっさと体操服を脱ぎズボンもパンツも下ろす。

「おにーさんっ、早く早くっ」

 すっぽんぽんで急きたてるのをどうにか諌め、体操服の上下を洗濯機に突っ込んでシーツと一緒に回す。ぼくは浴槽の縁に、昴星は腰掛けに座ってぼくの足の間に入り、ぼくが慎重に外すのをいまや遅しと待っている。

「じゃあ……、口、あーんして」

「あーん」

 ゴムの外側が口に入ったら大変だ。だから慎重に傾けて、その紅い舌に垂らすような感じ。

「あふぁ……、ふひひ……」

 子供の舌には一番相応しくないような液体、昴星は絡めて大事そうに味わって、それから、こくん。

「んンー……ッ」

 目をぎゅっと閉じて、「ぷはっ」開く。そして、「おにーさん!」おっきな声で。

「な、なに」

「超おいしい!」

 自分ではわからないから、

「そ、そう……」

 濃厚な反応は出来かねる。というか、二十代半ばの男が「ぼくの精液は美味しい」なんてことを自覚していたらそれはもう「変態」の領域を超越したもっと他の何かだ。

「やっぱおにーさんのちんこはすげーなー……、どろっどろでさ、超濃かった、アンドにおいもすげーの。フツーのやつだったらこんな風に飲めないよ。まー流は飲めるかもしんねーけど、おれと流しか飲めねーだろうなーあんなせーし」

「……ああ、そう」

「これ、褒めてんだからな? おにーさんはおれにすっげーおいしいせーしくれた。だからおれな、これからもおにーさんのせーしいっぱい飲みたい」

 ぎゅ、とぼくの腿に乗って抱き着く。危なっかしいから抱き締めるのは当然のリアクション、そして昴星は「ひひ」と笑って頬に頬を擦り寄せてくる。

「ぼくも……、えー、昴星の舌を満足させられるなら、それにこしたことはないと思います」

「な? おにーさんもきもちぃもんな?」

「……うん、はい」

「おれもさ、飲ましてくれたらお礼に、おにーさんのしたいことさしてあげる、アンドまたお尻に入れさせてあげる、……ってーか、入れて欲しいし!」

 はー……、もう、困らされる。幸せをどこに置けばいいんだろう?

 何度も繰り返し思う、ぼくはこの子に感謝すべき自分であるのは当然として、この子に感謝されるような男では、到底ないはずなのに……。

 しかし、願いは叶うのだ、何度だって叶えられるのだ。

 昴星によって。

「……じゃあ……、リクエスト、していい?」

「うん、何でもいいよ。またお尻入れる?」

 そんな何度もしてたら、幸せが我が二間の独身部屋に収まりきらなくなりそうだ。

「あの……、昴星のオシッコ……、もし出るようだったら、するとこ、見せてもらえる?」

 んぁ? と昴星は首を傾げる。「そんなんでいーの?」

「うーんと……、まあ、はい。その……」

 昴星が見せてくれる、何と言うかもう、ぼくのそれまでの人生をガラッと変えてしまうような、色々なもの。

 本当はこんな風に裸を見せてくれるだけでありがたい。だからぼくの望みというのは基本的に、ハードルが低いのかも知れない。実際問題、昴星の今日置いていってくれるオモラシブリーフ一枚で、一体何度幸せになれるだろう……?

「まー、出るからいーよ。……ここですんの?」

「うん」

 昴星の座っていた腰掛に下りて、気持ち的には正座、せめて膝に手を置いて。

 この少年の今日見せてくれたもの、……これから見せてくれるかもしれないもの、全部をこの目に焼き付けられたらいい。それが叶わなかったとしてもせめて、……やっぱり、昴星が「見せて」くれるという事実が、昴星にとって幸せなものでありますように、ぼくに出来ることを片っ端からやっていかなくちゃ。

「んーじゃ、するよー」

 ぼくに見せるための放尿だ。後ろで手を組んでくれて、だから、遮るものは何もない。

 最愛の小タマネギの先端から噴き出す金色飛沫を、有難く拝むような気持ちでぼくは見つめていた。


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