おれがそういう風にしてんの見て嬉しいの?

 ぼくの部屋は、基本的にぼくのいるときならば少年たちにとってフリーパス。あらかじめ「この日ってあいてる?」って訊いてもらえれば大体ぼくの方で予定を調整して(決して昴星たちと諭良がダブルブッキングすることのないように!)ぼくの仕事上がりや休日に遊びに来てもらって構わない、という方式を取っている。というか、ぼくにとっては一週間に一度以上、可愛い可愛い男の子たちと遊べるというのは非常に嬉しいことなので、いつだってウェルカム、という気でいる。

 金曜日の夜に、昴星はやって来たいと言った。昼にメールで、

《今夜ってあいてる?》

 と訊かれた瞬間から、午後の仕事もバリバリとこなしてしまったぼくである。我ながら現金というか何というか。

 昴星がぼくの家に、単独で泊まりに来るのはこれがはじめてのことだ。流斗はこれまでに何度かあったけれど。……一応、現在「恋人」と呼ばせてもらっている以上、流斗を最優先してあげたい気があるけれど、一方でぼくは少年たちにぼくが与えられる幸せがあるならば、出来る限り等分してあげたいなんていうワガママも抱いているので、昴星の申し出はかえってありがたく思えるほどだ。

 昴星はハーフパンツに上はウインドブレーカーという、寒い夜には少々心許なく思える取り合わせで夜の八時、ぼくの部屋にやってきた。いつもの鞄を肩から提げている。

「ごはんはもう食べたの?」

「うん、食べた。おにーさんは?」

「ぼくも今食べ終わったところ。外寒かったんじゃない?」

「んー、でもおれわりと寒いの平気だよ。暑いほうがしんどいかな。……太ってるから」

 昴星は自嘲気味に笑って言った。

 確かに昴星は、流斗や才斗、諭良に比べれば、「太っている」という形容が当てはまってしまうのは仕方がないのかもしれない。手足は細く服を着ると気付かないのだが、体幹、お腹、胸、お尻といったあたりはむっちりとした脂質感のある身体つきをしている。

 ただそれは昴星の身体がまだまだ幼いからという理由に過ぎないだろう。十二歳という歳よりは少し子供っぽく見えるし、同時に昴星は中性的な顔立ちをしている。つまり、身体が男らしくなるまでまだ時間がある分、たくさん運動をしていたとしても、食べたものが筋肉になりづらいということを意味する。

 だから、

「そんなに気にするようなことじゃないと思うよ」

 ぼくはサラサラの髪を撫ぜて言った。

「昴星は、すごく可愛いと思う。昴星がいつも『可愛い』って言ってる流斗と同じぐらいに可愛いって、ぼくは思うよ」

 いつもなら、それでもっと素直に笑ってくれる。なのに今夜、なぜか昴星は、

「だといいんだけどなー……」

 何となく、歯切れが悪い。いつでも大体のことならすっぱりさっぱり割り切って考える少年のリアクションとしては、それは非常に珍しいと言っていい。

 何か、あったんだろうか。

 案じるぼくを表情から察したか、

「才斗がさ」

 昴星はぼくが出した座布団に胡坐をかいて、ついでに太腿をぽりぽりと掻いて、切り出した。

「ここんとこ、……ずーっと勉強ばっかして、あんま遊んでくんないんだ。その……」

「……才斗と、ケンカしちゃったの?」

 ううん、と昴星は首を振る。ただ、何となくその顔は晴れない。

「そういうわけじゃ、ねーんだけどさ……。ただ、ね」

 ゆっくり時間をかけて聴き出してみるに、こういうことらしい。

 最近、同じクラスに転校生がやって来た。……その男の子はすこぶる頭がよくって、これまで学年でもトップの成績を取っていた才斗のことをあっさりと追い抜いてしまったのだという。しかも運動神経も抜群で、見た目も、まあ、それなりにいい(昴星はここで「でも才斗のほうがかっこいい」と言った)もので、女子からの人気もあっという間に掻っ攫っていった(「これは、別にどっちだっていいけど」と昴星は言い添えた)のだという。

 聴きながら、……ああ、なるほど、とは思う。しかしその続きを今考える必要はない。

 その子が来てからというもの、才斗は何となく元気がなくて、今までは甘えれば遊んでくれたのに、いつも机にかじりついていて。

 要するに昴星は、「つまんない」のだそうだ。

「なるほど……」

 そういう気持ち、ぼくも何となく理解できた。「恋人」なんて思わせてくれる存在は流斗が初めてだったから嫉妬も失恋もこれまでしないで来たけれど、……例えば流斗が、もっとカッコよくてお金持ちで何でも出来る素敵な「お兄ちゃん」を見つけたとして、ぼくに振り向いてくれなくなったら寂しいに決まってる、悲しいに決まってる。

 そこまでラディカルなものではないにせよ、昴星が「つまんない」のも無理はない。もちろん才斗だって昴星のことは変わらず大好きに決まっているけれど、今はその転校生に負けたくない気持ちが一杯に詰まって、どうにか、追い越そうと努力をしている真っ最中なのだということも判る。

「だから……、あのさ、こんなことおにーさんに頼むの、よくないって思ってんだけどさ……」

 昴星は上目遣いに、遠慮勝ちに言う。

「おれな、才斗がさ、おれの匂い嗅いだり、ちんこ見たりして、興奮すんの、すげー嬉しいんだ。才斗がおれでちんこ硬くして、しゃぶってあげたらおいしいせーし出してくれてって……」

「うん……、そうだよね」

 恋人同士なのだ、無理もない。

「……だけど、いま才斗、そういうの全然してくんねーからさ、……だから、おにーさんがもしよかったら、おにーさんが、おれでさ、ちんこ、硬くしてくれるの、見してくれたら、おれすげー嬉しいなって……、思うからさ」

 自分で、それが都合のいい頼みごとだということを意識している。だから昴星はしょんぼりと、本当に申し訳なさそうに言う。

 しかし、昴星、誤解してはいけないよ。

 ぼくは昴星が才斗を愛しているのを知ってる。それでもぼくと一緒にいるとき、ぼくを愉しませてくれることに心から感謝している。だからこそ君のことを、ぼくだって愉しませてあげたいって思うし、幸せにしたいって心の底から思うんだ。

「ぼくは昴星のパンツ見ただけで興奮して、勃起するよ」

 だからぼくは言った。

「……昴星は、すごく可愛いからね。パンツの匂いだって大好き。昴星のえっちなところ見たら、何度だって硬くなるし、きっと何度射精したって足りない。……覚えてるでしょ? 温泉行ったとき、もう数え切れないぐらい、したの」

 実際、本当に温泉から帰った翌日は足腰が立たないぐらいの疲労に襲われてしまった。でも昴星と流斗、大好きな二人を前に「節度」なんて要らないと決め付けてしたことだから、ぼくは少しも後悔なんてしていない。

 昴星の、まだ少し尖った唇にそっとキスをした。

「見せて欲しいな。昴星のえっちなところ。……ぼくが興奮するのが嬉しいなら、いっぱい見たいよ」

 昴星は、やっと微笑んだ。ぼくにぎゅっと抱き付いて、頬にキスをくれる。

「ひひ」

 いつもの笑い方も戻ってきた。ぼくも同じように、嬉しくなる。

「じゃー……、いっぱいエロいとこ、見せるよ。おにーさんがいっぱい興奮して、ちんこからせーしいっぱい出してくれるようにさ、サービスする」

 君がこうして腕の中に居てくれることがそのものずばり「サービス」どころの騒ぎじゃないくらいの幸せなのだけれど、……そう言ってもらえるならぼくは喜んでそうさせていただくことにする。

「じゃーさ、どんなことする? 何でもいいよ」

 何でもいい、と言われたって、大概のことはもう昴星としてきている。それこそ、お尻の穴に這入ったことだって何度も。

 もちろん、今日だってあれをさせてもらえるのならば嬉しいけれど……、其処に至るまでにすることの一つひとつ―キスとか、フェラとか、オモラシを見せてもらったりとか―はすっかり定着していることでもある。

 そして、その一つひとつが全部幸せなことである。

「……逆に、昴星はどんなことをして欲しい?」

「ん?」

「ぼくはさ、昴星と一緒に遊ぶのは、何でも楽しいから。昴星が楽しそうにしてくれてることが、何よりぼくにとっては『サービス』になるんだ」

 昴星はぽかんと口を開けて、

「あー……、うーんと……、考えたことなかったなあ」

 座布団の上に座り直して、ぽりぽりと後頭部を掻く。

「ぼくは、例えば昴星に『何してもいい』って言われても、そもそも一緒にいるだけで楽しいしさ」

 うーん、と腕組みをして、「よし」と昴星はまた立ち上がって、

「おにーさん、おれのちんこ見んの好き?」

 そう訊いた。

「もちろん」

「おれもおにーさんにちんこ見せんの好き!」

 ハーフパンツとブリーフを、一緒に膝まで引き摺り下ろし、シャツをぐいと捲り上げる。ペコロスという失礼な形容が、しかししっくり来てしまうような丸っこくて愛らしいものがぷるんと弾む。昴星はぼくの目の色が変わったことに気付いてしまうだろうか。

「んでさ、……ちんこ撮ってほしいなって」

「おちんちん? ……いいけど、どうして?」

「ひひ」

 自分の指でぴんと弾く。それだけでぷるんとみずみずしいような震え方を、その場所はする。

「おにーさん、撮ったら後で一人ンとき見るだろ?」

「まあ……、うん」

「でもさ、いっつもエロいことしてるときとか、オモラシんときとか、そういうのばっかでしょ?」

「うん、そうだね」

 というか、そういうの主に見たいからね。

「だからさ、今夜は全部撮ろうよ。おれのフツーにしてるときも、エロいのも全部さ」

 そう言われても、多分ほとんどが「エロいの」になってしまうような気がする。……きっと、昴星もそれを想定して言うのだろう。

 ぼくはカメラを取り出す。冒頭からいきなりおちんちんが映っているというのもアリだろうと思って、録画を始めた。

「ひひ、ちんこ撮ってる?」

「うん、撮ってるよ」

 昴星は腰を左右に動かして、ぷるぷると震わせて見せる。……諭良のより小さいが、諭良のほど皮が豪快に余っているということもなくて、だから茎が左右に小刻みに揺れるのが、本当に可愛らしい。シャツを捲り上げてふんわり丸いお腹も晒して、袋の裏側もぼくに見せてくれる。

「昴星、お尻は?」

「お尻? ひひ、見たいんだ?」

「うん、昴星の可愛いお尻見たいな」

 昴星はひょいっと後ろを向いて、カメラに向けて突き出して見せた。

「おれのお尻ー、アンドうんこ出るとこ!」

 両手で左右にぐいと尻肉を広げて、ピンク色の穴を見せびらかす。

「お尻、綺麗だよ昴星。縦にちょっと長くてね、そこに集まるみたいに細かくて短いシワが並んでる」

「へーえ……、流の見せてもらったこと何度もあるけど、自分の見たことねーや。あとで見せてよ」

 男の性器を何度も飲み込んだ場所とは思えない小さな穴をきゅきゅっと引き締めて見せてから、昴星は振り返り、

「パンツも」

 足元に落ちていたものを引っ張り上げて、穿き直す。

「今日は白いのなんだね」

「うん、やっぱり白いのが一番多いよ。んでもおにーさん白いのじゃないほうがよかった? おれ、おにーさんとこ来たいって思ったの昼だったからさ、来るまえにパンツ替えたほうがよかったのかな」

「いいや、昴星の穿きたいのを穿けばいいと思うよ。……それに、白いのもよく似合ってる。黄ばんでるのも含めてね」

 いつもの通りだ。ウエストゴムに水色の細いラインが二本入っている以外は白い、オーソドックスな少年ブリーフの中心部、その膨らみだけでぼくの胸を高鳴らせる部分には、二枚の布を重ねても防ぎきれない黄ばみが甘酸っぱいもののように染み付いている。

 率直に言おう。ぼくはこれだけで十分すぎるぐらい満足してしまえる。昴星たちが置いて行ってくれるブリーフの匂いだけで数え切れないほどオナニーをしてきたという事実があるからして。

 でも、ぼくには実際に、……こうして実体を伴い、

「……昴星、オシッコ出る?」

「見たい?」

 リクエストに応えてくれる昴星がいる。目の前に、こうして。

「うん、すごく見たい」

「ひひ……、おにーさんのヘンタイ。でもいいよ、ここでオモラシしたらいい? それともお風呂行く?」

 まだお湯を溜めていない。さすがに夜の浴室は底冷えがきつい。

「オモラシも見たいけど、普通にオシッコするところも見たいな。トイレでするところ、あんまり見せてもらったことないよね」

「そういやそうだね、いっつもおれがオモラシ楽しいからオモラシばっかしてるもんな。じゃあ、トイレでする?」

 昴星はトイレの扉に目を向けた。

 洋式のトイレへの放尿、それも可愛らしいとは思う、けれど。

「……あと十分ぐらい、ガマンできる?」

 ぼくのその言葉だけで、昴星は何もかもを理解したようだ。それぐらい近い間柄に、ぼくたちはもう、なっている。

「ひひ、ホントにヘンタイだなー」

 それでも昴星は、きっちりと上着のチャックを閉めた。

 

 

 

 

 城址公園のトイレ、もうぼくにも昴星にも「おなじみ」となった背景である。

「じゃー、オシッコするよ、ちゃんと撮っててくれよな」

 冷え込みのきつい公園だが、昴星はまるで寒がらない。小便器の前に立って、ハーフパンツとブリーフを一緒に膝まで下ろす。

「そんなに丸出しにしてしちゃうの?」

 と思わずぼくは訊いてしまった。意図的にだろうと思うけど、便器と昴星の立つ場所には、昴星がもう一人立ててしまえるほどのスペースが空いている。

「だって、おにーさんこっちの方が撮りやすいだろ?」

「それは、そうだけど……」

「ふだんはちゃんとさ、ズボンは脱がねーし、もっと近くでするよ。おれちんこちっちゃいからさ、誰かに見られんの恥ずかしいし……、でも今日は特別。おにーさん一緒だから」

 昴星はぼくに向き直って、小さな包茎おちんちんを指で揺らして見せた。まだ、勃起してはいない。しかしこんな風にぼくと一緒にいる、恥ずかしいところを見せるということへの期待が昴星の中に在って、火をつけられるのを待っているのだということは判った。

 今夜の昴星は、とても積極的でいるつもりらしい。

 可愛いな……、と思う。それが才斗につれなくされた反動であることは明らかでも、ぼくとしても昴星の寂しさをしっかり埋めてあげなくちゃ。それが出来なかったら昴星と一緒に時間を過ごすことなんて許されない。

「じゃあ……、可愛いおちんちんからオシッコするところ、見せて」

「ん、もう漏れそう」

 再び昴星は便器に向き直った。便器と言っても仕切りのない、簡素なものだから昴星の下半身はよく見える。ぷにぷにとした丸っこいおちんちんに手も添えず、いきなり便器に向かって放水を始める。皮の先が閉じていたから、少量が床に零れるが、すぐに強い勢いで便器へと薄黄色の液体が湯気を立てて注がれていった。

「ひひ……、普段よりお尻スースーして、どきどきする……」

 昴星は言いながら、カメラのほうを向いてピースサインを送って見せる。していることは強気そのものだけど、流斗と違って露出に慣れているわけでもない。だから、頬はほんのりと紅く染まっている。

 だけど昴星の描く放物線は少しずつ、角度を上げ始めていた。本当はマゾヒスト、誰かに見られているかも知れないという自覚が、少年の心を熱くするのだ。

「色が薄いね。……まだまだたくさん出せそう?」

「ん、だって、おにーさんちでお茶飲んだし、……その前にも、いっぱい飲んだよ。ほら、おにーさんおれのオシッコ好きだって言ってくれたしさ」

 昴星も流斗もぼくと会うとき、いつも膀胱を水分でいっぱいに満たしてきてくれる。それが彼らのぼくへ向ける愛情なのだ。そしてぼくは彼らのその「水分」を愛している。理想的な関係であると言い切ってしまっていいはずだ……。

 昴星の放物線の勢いが一先ずは収まり始めた。放尿の中盤から虹のように高く描かれていたそれは最終的には昴星のおちんちんに伝って、竦んだようなタマタマまで濡らす。膝のところで広がったブリーフにも垂れて、薄っすらと染みを生じさせるに至る。

「ひひ、ちんこ、勃起しちゃった……」

 再びこちらに向き直って昴星はセーターを捲り上げたままそれをぼくに見せびらかす。ああもう今すぐ跪いてその水滴ごとしゃぶりついてしまいたい! ……そういう欲求を一度堪えることが出来たのは、今夜の積極的で勇敢な昴星ならば普段以上に色々撮らせてくれるかもしれないと思ったからだ。

「昴星、今日はすごいね。誰か来るかも知れないのに、そんな風におちんちん出しっぱなしにしてる」

「だいじょぶだよ、だってこれまで夜にここで遊んでて誰か来たことなんかねーもん」

 それは確かに昴星の言うとおりで、だからぼくも一定の安心を持ってここへ連れてきたわけだ。

「じゃあ……、もうちょっと思い切ったこと出来る?」

「ん? 思い切ったこと?」

「うん。……すっぽんぽんになってさ、ぼくと夜のお散歩してみない?」

 昴星が何かを言う前に、

「ああ、でも昴星が怖いならしなくていいけど」

 ぼくは先回りをした。一瞬、ほんの一瞬、少年の頬がためらいに強張ったのをぼくは見逃さなかった。

「えー……、フルチンで歩くのー……?」

「前に、温泉で泊まったときに、お外でしたじゃない? あのときの昴星、すごく可愛かったからさ。また見せて欲しくなったんだ」

 それがぼくの望みだと知った時点で、昴星の中で決意が定まる。その音さえぼくは聴き取れた気がした。

 だから、

「ったく、おにーさんマジでヘンタイだなー……」

 昴星は頬を染め唇を尖らせながらも、上を脱ぐ。ぼくに脱いだセーターとシャツを委ね、ぼくの腕に掴まりながら、ハーフパンツもブリーフも脱いで。……少年の服一揃い、鞄にしまう。

「脱いだよ、……これでいいのか?」

 流斗より少しはまともな感性が働くから、昴星の股間のそれは萎えて縮まってしまった。寒さも手伝っているはずで、普段はふっくらとして見えるタマタマもシワを刻んでキュッと竦んでいる。

「寒い?」

「……そんな、寒くはない、けど……」

「でもやっぱり恥ずかしい?」

 昴星はためらいがちに、こくん、頷いた。

「誰か来ちゃったらって、思うし……」

「これまでこの公園で遊んで誰か来たことなんてあったっけ」

 今度は首を横に振る。だからこそぼくはここを選んだ。けれど「万が一」の可能性を忘れているわけじゃない。もちろんその「万が一」を思うからこそ、昴星はよりドキドキするのだろうと思う。

「そこに、ちょっとした公園があるよね」

 城址公園の中に在って、このトイレの周囲だけほんの少しの遊具が設けられている。遊具と言ってもブランコ、ジャングルジム、そして小さな東屋があるばかりだけど、林の途切れたこの一画、昼間は子連れのお母さんだって訪れる。

 二ヶ月前、温泉に先駆けて我が家に泊まりに来た流斗の露出欲を晴らしてあげたのもここだ。それは昴星も、その写真や動画を見ているから知っている。

「昴星が裸で遊んでるところ、見てみたいなって思うんだけど」

「……で、でも……、おにーさん流のそれ見たじゃん……、おれなんてあいつみたいに、可愛くねーし……、ひゃ」

 昴星の、サラサラの髪、綺麗なストレートの髪、撫ぜて掬って、そのまま抱き締めて。

「そんな風に自分を卑下しちゃダメだよ。昴星が可愛いことはぼくも流斗も知ってるし、誰より一番、才斗がよく知ってることでしょう?」

 抱き締められることの悦びを、この少年は知っている。本当の恋人ではなくても、ぼくが抱き締めてやれば反射的に両腕で抱き着いて、その心を幸せで満たすやり方を。

 だからこそ「本当の恋人」が振り向いてくれない時間は寂しいはずだ。……ぼくはキスをした。とは言え、恐らくそれは、ぼく自身がしたかったから、それだけだ。

「おにーさんは……、見たいの? おにーさんはおれがそういう風にしてんの見て、嬉しいの?」

「……正直に言えば、今だって硬いんだけど」

 昴星は顔を上げて、ぼくのジーンズの前に触れてそれを確かめる。

「でも、すごく興奮するのは事実だね。昴星はさ、流斗よりも外でそういうことするの、慣れてないでしょう? だからついさっきみたいに恥ずかしそうにしてるの、本当に可愛いと思うし、興奮する。可愛い所たくさん見せてもらうだけじゃなくって、その後この可愛い子とセックスが出来るんだって思うと胸がいっぱいになるよ」

 腕の中で昴星が背伸びをした。もう一度、唇が重なる。

「……おにーさん、おれとセックスしたい? おれが外でフルチンなってるの、撮ったら、セックスしたくなる……?」

 今だって、十分過ぎるぐらいしたいけど、

「もちろん」

 とぼくは答える。昴星は腕を離して、

「わかった」

 頷いた。

「……じゃー、おにーさんがもっと興奮するように、する」

 ぼくはもう一度昴星の髪を撫ぜる。もう六年生でありながら、昴星はぼくの手にこうして撫ぜられることが嬉しいと思えるらしい。

「ごめんね、変態で」

「……知ってるもん、おにーさんヘンタイだって。こんなさ、おれみてーな男子の裸とか見てちんこ硬くすんだもん。……でもおにーさんがヘンタイじゃなかったら、おれおにーさんと遊べねーし、……だからいい」

 お墨付きをいただけた訳でもないのだが、気持ちが大きくなる。流斗にしてもそうだ。ぼくはこういう性嗜好であるがゆえにこの少年を悦ばせてあげることが出来る。

 逆に言えば、これはぼくにしか出来ない、昴星を幸せにする方法。

 昴星はぼくから離れて、トイレの入口からきょろきょろと左右を見回す。……誰もいないことを確認してから、一つ、深呼吸をして、意を決したように児童遊園区画へと踏み出した。ぼくはカメラを手にそれを追う。真っ白くて丸いお尻を晒したまま、右手でおちんちんを隠しながら慎重な足取りで五歩進んだところで、振り返る。

「おちんちん、見せて」

 まだぼくはトイレの中だ。昴星はこくんと頷いて、震える吐息を白く揺らしながら、右手を退ける。再びまた隠してしまわないように左手を添えて、胸の辺りで組んで。

「見せた、よ……、おれの、ちんこ……」

「うん、よく見える。小さくって可愛い昴星のおちんちん。……才斗とはこういう風に外で遊んだりしないの?」

「する、けど……、もっと、くさむらの中とか、そういう……」

「こんな広々したところでは、あんまりしないか」

 昴星は頷く。才斗は聡明で慎重な少年だ。恋人を危険に晒すような真似を進んでするはずもない。

「でも、ぼくと初めて会ったときは外だったよね? それにこの間の温泉でも、こんな風に暗い山道でセックスした」

「……最初だって、こないだだって、恥ずかしくなかったわけじゃねーもん……」

 ちょっと唇を尖らせて、

「でも……、おにーさん、見たいんなら……」

 はぁ、と気持ちを落ち着けるように昴星はまた一つ深呼吸をして、今度は先ほどより少し果敢な足取りでジャングルジムの元へと歩み寄り、振り返った。

「おれの、遊んでるとこ、撮っていいよ」

 遊具の前に全裸で立つと、その罪深さが一層際立つようだ。三年ぐらい前には昴星もこのジャングルジムで才斗と遊んだのかも知れない。……もちろんそのときは、服を着て。でも半ズボンの裾からブリーフを覗かせたりはしていたかもしれない。

 昴星は「つめて……」と微かに言葉を漏らしながら、ジャングルジムの中に入り、五段の高さまであっという間に昇っていく。身体はぷにぷにしているが、その動きは俊敏だ。

「おにーさん、……見える?」

 斜め下から昴星のことを見上げるという、普段あまりない光景だ。

「よく見えるよ。昴星のタマタマの裏、可愛いね」

 ぼくが言うと、……少し余裕が出てきたのだろうか、「ひひ……」と笑みを見せる。

「おにーさんも、中入って遊ぼうぜ、いっしょに」

 昴星とぼくとでは頭一つ以上の身長差がある。大人と子供だから当然。だけど誘われたのだから仕方がない。ほとんど這い蹲るようにして鉄の檻の中に入り、……右手を縮めると今度は左手が引っ掛かる、頭をぶつける、靴の先が引っ掛かってなかなか思うように入れない。ぼくがやっと檻の中に入り、もう一度後頭部をぶつけながら見上げると、昴星は一番上の段からぼくを見下ろしていた。ぼくから一列斜めにずれて、横に渡る鉄棒を両手で持って、靴の裏でしっかりと矩形のパイプを捉えて……、丁度、

「うんちするみたいな格好だね」

 とぼくが言うと、

「だって、ちゃんと掴まってねーと……、落ちたらやだし」

 ぼくも昴星に転げ落ちられるのは大変困る。苦労して昴星の一段下まで登って、

「昴星、……そこでさ、お腹下にして、こう、うつ伏せになるのって出来る?」

「うつぶせ……? 出来るかな……」

 ジャングルジムは縦横五列、最上段に三列ずつの凸台がある。昴星がいるのは端っこで、

「えっと……、よい、しょ、うぁつめて……!」

 慎重に掴まるところを探しながら、苦労してうつ伏せになる。ぼくから左から順に昴星の顔、おっぱい、お腹、おちんちん、足。ちょうど左右の乳首が鉄棒で隠れているが、横たわる少年の姿を下から見るという新鮮な角度である。鉄棒のせいでおっぱいやお腹の柔らかさもよく判る。そしてふわふわした身体つきの下半身で小タマネギはまだ柔らかいまま、先っぽを真っ直ぐ下に向けて実っている。

 ぼくは手を伸ばしてそれに触れてみた。

「オシッコがまだ乾いてないね」

「ん……、おにーさん、こういうの撮りたかったの?」

 どうだっただろう。結論から言えばこの角度はとても可愛らしいものだ。

「そうだね。すごく可愛いと思う」

 不思議な魅力を持つこの体勢を見られただけでも十分嬉しい。ぼくがそう感想を述べると、「ひひ、そっかー」昴星も嬉しそうに微笑む。徐々に裸で外にいるという抵抗が薄れてきたのかもしれない。

「おにーさん、おれ、このカッコのまんまでオシッコしてみたい」

 自らそんなことを言い出すのも、その証拠だろう。

「このまま? うつ伏せでってこと?」

「ん。どんな風になんのかなって……、してもいい?」

 ぼくは窮屈な思いに耐えながらカメラのライトを灯す。昴星の白い裸が檻の中にくっきりと浮かび上がった。

「まぶし……」

「誰か来たら、遠くからでも昴星が裸ってばれちゃうよ」

「え……」

「でも、せっかく昴星がオシッコしてくれるなら綺麗に撮りたい。……ダメなら消すけど」

 昴星は頬を紅くして、ふるふると首を振って、

「はぁ……」

 真っ直ぐ下を向いたおちんちんの先からオシッコを垂らし始めた。

「出てきたね」

「ん……、オシッコ、ポタポタって……、でも、すぐジャーってだすから……」

 言葉の通り、昴星は少しお腹に力を入れて、膀胱の中身を一気に吐き出し始めた。薄くとも金色に輝く一条はほとんど真下に向かって高い音と共に零れ、昴星の下腹部へ湯気となって広がる。遅れて足元の方から、砂を泡立たせる音がし始めた。

 五秒ほど「ジャー」というのが続いて、昴星の丸っこいおちんちんからの放水は終わった。余り皮の先端から、軒先の雨垂れのように雫が零れる。ぼくは灯りを消して、もう一段上へ登り、隣の列へとどうにか顔を覗かせて昴星のおちんちんに付着した雫を吸い取る。

「んン……」

 やっぱり、しょっぱくて美味しい。そして臭い。

「どうだった? うつ伏せでオシッコしたの初めてだよね?」

「……んっと……、おにーさんのちんこしゃぶりながらするのに似てるかもって思った」

 ああ、そうか。ここまで百八十度水平のうつ伏せではないにせよ、ぼくとシックスナインのときにするオシッコはこういう状況だ。

「でも……、ドキドキした。……おにーさんもドキドキした……?」

「うん。……さっきからジーンズがきつくてしょうがないくらいドキドキしてる」

 昴星の目は暗がりでも判るぐらい煌いている。白い歯を少し覗かせて、

「おにーさんがちんこ硬くしてんの、嬉しいや。……ほかには?」

「ほか?」

「ん……、おれ、頑張る。フルチンなの、恥ずかしいしちょっと怖いけど、ほかにどんなの見たい?」

 すっぽんぽんの状態でこの上「他に」も何もないだろうとは思う。けれど昴星がまだまだ魅力的な姿を隠し持っていることは知っている。

「……逆に訊くけど、昴星はどんなところを見せたい?」

「えー……?」

 屋外フルチンの時点で既に十分頑張ってくれているし、それ以上をどう搾り出せと言うのかと我ながら思う。しかし、

「昴星が楽しそうに遊んでるのだけでも、ぼくは見ててすごく興奮するんだ」

 というのも事実。

 昴星はジャングルジムの上にうつ伏せたまま、

「……流とは、どんな風にしたの?」

 ぼくに訊く。

「あいつ、ほら、……その、おれより、勇気あって、もっといろいろさ、おにーさんに見せたんだろ? だったら……」

 年下の流斗に対する、密やかな対抗心。昴星がときに見せるそういう表情はぼくに小さな罪深さと其れを覆い隠すほどのときめきを与える。ぼくのために、流斗に負けないぐらいにえっちで居ようと考え、実際にそうしてくれるのだから……。

「そう……。流斗とは、お散歩をしたよ」

「……おさんぽ?」

 んしょ、と起き上がり、また元の通り、うんちの体勢になった。まだ竦んだままのタマタマの裏からお尻の穴まで丸見えだ。

「うん。この公園の中を、二人でね。ときどき、流斗が『撮って』って言って、……それで、何枚か写真を撮って」

「……それから?」

「あのトイレの中で、しゃぶってもらった。ああ、その前にうんちするところも見せてもらったっけ……」

 思い出すだに「すごいことしたよなあ」と思うし、昴星も聴きながら圧倒されている様子だ。

 実際、あそこまでのことは流斗だから出来ることなのであって、……昴星には出来ないし、出来なくっていい。

 しかし昴星は、するするとジャングルジムから降りる。

「行こうぜ」

 頬を紅く染め、またおちんちんを手で隠す。しかし表情は――顔の形こそ、相変わらず少女じみたものであるけれど――男の子らしく、凛々しい。

「おにーさんといっしょに、おれも、公園の中散歩する。でもって、おにーさんが流と行かなかったとこまで行く」

 そんな無理をしなくてもいいのに……。

 ぼくがまた何箇所かぶつけながらジャングルジムから這い出ると、昴星は右手でぎゅっとぼくの手を握る。

「どこに行くの?」

「展望台」

「え」

 結構遠いぞ。それに……、名前の通り、見晴らしがいい。いいの? と訊いたぼくに、昴星はぎゅっと握る手に力を篭めて頷く。

「……前に、才斗と一緒に、展望台でオモラシしたことある。……そんときは、女子の服着て、……スカートちょっとめくっただけだったけど、……でもいま、夜だし、……今日は、あそこでおにーさんと、セックス、する……」

 昴星を衝き動かすのは二つ。ぼくとのセックスを愉しみたいということと、流斗に負けたくないということ。

 いや、もう一つあるとすれば、……フルチンで「お散歩」を、本当にしてみたいという気持ちが、どこかに。だって昴星は、既に才斗から教わり幾度か確認したとおり、マゾヒストだ。六年生の男子としては随分小さなペニスを露出したまま歩くことに、性欲がそそられるのかもしれない。

「わかった。……じゃあ、一緒に展望台まで行こうね」

 うん、頷いた昴星に、背中を丸めてキスをして、

「でもその代わり……、おちんちんは隠しちゃダメ。流斗は一度もそんな風に隠したりはしなかったよ。……それから、途中で写真を撮ろうか。昴星もここまで出来るっていう、証拠にね」

 ぼくの言葉に、昴星は緊張を身に甦らせたように柔らかなほっぺたを強張らせて、それでももう一度、頷く。そしてぼくに再び促させることもなく、股間に当てていた左手を外す。

 微かに内股気味なのが微笑ましい。

「じゃあ、行こうか」

 昴星の心の中にある、男の子としての勇気、負けたくないという気持ち。

 そしてぼくには覗ける、マゾヒズム。

 展望台までの距離は長い。道の両脇を雑木林が包んでいるときは、ぼくとしても安心だが、時折ぽっかりと木々が切れ、城址公園の下にある道路を走る車の灯りが見える。そういうところを通るときには、ぼくはもちろんとして、昴星はそれ以上に緊張するらしい。

「じゃあ、少し先まで行って」

 それまでずっと先導していたぼくは昴星に促した。

「あの、少し明るい所で撮ろう」

「あそこ……、で?」

 林が途切れ、今にも切れそうな常夜灯が頼りなく照らす枯れ葉の上。

「あそこまで行って、こっち向いて可愛く笑って見せて」

 今だって、左手は油断すれば自分の股間を隠してしまうだろう。けれどぼくが「それとも、怖い?」訊けば、昴星はやっぱり首を横に振る。

「……わかった……、やる」

 ぼくから十メートルも離れていないのに、本当に心細そうに何度も振り返って、途中からは早くこれを済ませてしまおうとするように駆け出していた。息を弾ませて光の中で振り返り、カメラを構えるぼくに振り返って、ぎこちなく、小さく、微笑んでみせる。

 一枚、二枚、撮ってから、……昴星の硬い笑顔にいとおしさがこみ上げてくる。本当は嫌なんだろうな、とは思う。けれどぼくの幸せに繋がると思うから、昴星はそんな姿を見せてくれる。

 たっぷり愛してあげなくちゃいけない……、そんな決意が漲るのをぼくは覚える。そして、もう少し意地悪をして、興奮させてあげなきゃ。

「昴星、ピースして」

「うん……」

 また一枚。

「それからさ、……笑顔が少し硬いな。身体全部で笑ってない感じがする」

 昴星は訊き返す。ぼくは半分ほどに距離を縮めて、

「昴星の笑顔を撮りたいんだ。昴星はほら、嬉しいときは本当に嬉しそうに笑うでしょ、それがすごく可愛い。……この後、一緒にたくさん気持ちよくなること思ってもあんまり嬉しくなれない?」

 本人は十分に笑っているつもりなのだろう。しかし、「身体全部」という範囲で言えば、顔でどれほど繕おうとしても「笑顔」にはなりきれていない部分がある。

「昴星はぼくと一緒にいて嬉しいとき、いっつもその可愛いおちんちんも元気一杯にして見せてくれるでしょう?」

「……ちんこ……」

 昴星は自分の下半身を見て、そこがこれまでにないほど縮こまってしまっていることに気付く。極度の緊張が露出の興奮に負けて、そこはまるで赤ん坊のおちんちんみたいだ。

「で、でも……、こんなとこで、ちんこ大きくなんて……」

「温泉のときは出来たよね? ……それとも、もっと興奮しなきゃ勃起しないかな」

 昴星は困りきっている。導火線をその身に抱えているのだけれど、着火剤が足りない……、とでも言うべきだろうか。これほど長い時間露出しているのは昴星だって初めてのはずで、興奮する材料は揃っている。

 ぼくは一旦ビデオを止めた。

「これからさ、一本、そうだな、五分くらい、ちょっと違うの撮ってみようか」

 困惑した顔で、足元に跪いたぼくを見上げる。

「スカイプの、……ハルカちゃん、だっけ。彼女にね、流斗が、『昴星くんのおちんちん見たい』って頼まれてるんだって。だから今度流斗に撮らせてあげて欲しいって言おうと思ってたんだけど、考えてみたらこうして側にいるんだから、いま撮っちゃえばいいと思うんだ」

「え……、え、ハルカって、あの……」

「そう、昴星の元同級生の、ハルカちゃん。大丈夫だよね? 昴星のおちんちんだけならさ、顔映さないで、声も出さないようにしてれば……」

 昴星の返答は待たなかった。ぼくは撮影を再開し、マイクに向けて喋り始めた。

「えーと、……流斗の『お兄ちゃん』です。これから昴星のおちんちんを君たちに見せてあげるんだけど、……もちろん、ぼくはこういうことには反対だよ。君たちぐらいの女の子が男の子のパンツの中に興味を持つなんて、やっぱり間違ってると思う。だけど、昴星が協力してくれるって言うから、今から少しの間だけ見せてあげるから、それで満足して欲しい。もう、今回限りだからね?」

 レンズを、昴星の股間に向ける。

「見えるかな。これが昴星のおちんちん、……やっぱり恥ずかしいんだろうね、こんなに縮こまってる。男の子のおちんちんは緊張するとこんな風に小さくなる、……ただ、昴星の場合は元が小さいから、余計に、赤ちゃんみたいになっちゃうけど……」

 本当にハルカたちに見せるものだったとすれば、自分の声を録るようなことはしない。あくまで昴星に「見られている」という意識を植えつけるためのものだ。

 昴星は声を出さぬよう口を抑え、もじもじと落ち着きなく腰を震わせて、幼児のようなペニスをその腰に合わせてぷるぷると揺らす。

「でも、君たちはこれじゃあ満足出来ないだろうね。……しょうがないから、特別だよ。昴星のおちんちんの皮の中、見せてあげるから」

 指で摘んだだけで、昴星の口から「ひ」と小さく声が漏れ、その頬は真っ赤になる。

「ここまで縮こまっちゃうと、皮剥くのも一苦労だね……。ちょっとだけ……、見える? これが昴星のおちんちんの内側。……流斗のとよく比べてみるといい。まあ、外側からの見た目と比べると、そんなに差はないかもしれないけどね。……ほら昴星、自分で摘んで、もっと剥いて、ハルカちゃんたちに見せてあげなきゃ」

 ぼくの指先は、ほんの僅かに昴星が反応を始めたのを把握していた。やはりこの子はマゾヒスト。同級生の女子に自分のおちんちんの小ささを披露しているという錯覚に陥れば、状況を超えて火が点く身体をしているのだ。

 昴星は白い息を弾ませながら、自分の手でおちんちんを摘む。先程より少しふっくらし始めていて、ぼくが剥いたよりも容易に、皮が捲れて行く。もっとも、真性包茎だからすぐに行き詰まってしまうけれど。

「よーく見ておくんだよ。こんなシーン、滅多にないんだからね……。さっきより少しおちんちんが大きくなってきたの、判るかな。何度も流斗の見たから知ってるんだろうけど、これが『勃起』っていうんだ。昴星の小さなおちんちんでも、……いいよ、昴星、指離して。……ね、こんな風に上を向いて、ピクピクするんだ」

 ぼくの言葉の通り、昴星はすっかり勃起していた。屋外で露出している以上に、特定の誰かに見られているということに緊張がカバーされ、いよいよ興奮がピークに達しようとしているのだ。

「この動画は、……本当は君たちだけにしか見せるべきじゃないんだろうけど、でも、貴重な資料だからね、女の子たちの秘密にするといい。……ハルカちゃんは転校したんだよね? だったら、新しい学校の友達にも、昔通ってた学校の友達にも、しっかり見せて、一緒に勉強するといいよ。……『昴星くんのおちんちん』を、みんなでよーく観察してさ」

 上を向いたおちんちんを嬲るように言葉を這わせてから、ぼくは撮影を終了した。昴星は力が抜けたように落ち葉の上に膝をつき、真っ赤な顔に涙目でぼくを見上げている。

「お、にいさ……、それ、ほんとに、あいつらに見せるの……?」

「さあ、どうしよう」

 ぼくは笑う。もとより見せる気なんかないのだけど、昴星がそう信じてしまうことでより興奮してくれるなら、「見せてあげてもいいかなって思うけど」と嘘をつくことも耐えられる。

「それよりさ、昴星、笑って。せっかくおちんちんも笑ってるんだから、……ね?」

 ぼくがスマートフォンを向けると、昴星は先程より柔らかくなった笑顔で、ピースサインを送る。元気一杯のおちんちんと共に淫らな笑顔を浮かべる膝立ちの少年を二枚、フラッシュつきでぼくは撮ってから、昴星の手を取り立ち上がらせた。

「さあ、展望台までもうすぐだ。たくさんご褒美あげるから、それまでガマンだよ」

 昴星は切なげに頷いて、ぼくの胸に抱きついた。

「ほんとに、いっぱいご褒美、くれる? おれ、お尻欲しい、おにーさんのちんこ、お尻入れて欲しい」

「うん、ぼくも昴星のお尻に入れて気持ちよくなりたい。……そのための準備もさ、展望台でしようよ。それまでそっちもガマンできる?」

 昴星が先ほどから尿意をガマンしていることは判っている。ついでに言うならば、便意も。それは暗がりを歩いている脚運びがやや内股気味であることや無意識のうちにお腹に触れていることからも明らかだった。

「ん……。オシッコもしたいけど、ガマンする……」

 いい子、キスをしよう。だけどあんまり濃厚なのだと昴星の膀胱も括約筋も限界に達してしまう。だから触れるだけで済ませて、

「じゃあ、行こうか」

 今度は手をつないで、ぼくが導く。まるでトイレに子供を導く親みたいに。

 最後の急坂を登ると、そこが城址公園の頂上。さらに螺旋の階段を登りきった所が「展望台」だ。

 展望台の柵は手すりを縦の鉄棒で支える形。だから解放感があって、実際晴れた日にはとても景色がいい。もっとも急な坂を上ってやって来る人なんてそうそういないけれど。

「お、にーさっ、もっ、もれそうっ……」

 ここに来るまでは一応「隠さない」という約束を守ってきていた昴星だけれど、この期に及んではもうおちんちんに手を当てている。それは隠すためではなくて尿意を堪えるためだ。

 興奮というよりはガマンによって、おちんちんは上を向いている。

「いいよ。じゃあさ、真っ暗な街に向かって思いっきりオシッコしてごらん」

 ぼくは柵沿いまで昴星を導いて、ライトを点けた。

 遠くから見れば、真暗な城址公園の頂上だけ薄らぼんやり明るく見えるだけだろう。全裸の少年が勃起していることなど見えないだろうし、ましてやオシッコをしているなんて。

 しかし昴星からすれば街中の人間を前にして、上を向いたおちんちんを見られている錯覚に陥るには十分すぎる「舞台」だ。

「お、おにーさん……っ、ほんとに……っ」

 昴星は俄かに怖気づいたように声を震わせる。

「ん? でも、ここでオモラシしたことだってあるんでしょ? 才斗と一緒に、昼間に」

「だ、だって、あんときは、パンツ穿いてたし、女子のカッコして、おれかわかんないようにしてたしっ……」

 昴星の尿意は限界に達している。ちょろ、とおちんちんの先から僅かに雫が零れ始めた。しかしまだ舞台上で衆目に晒されながら失禁することへの抵抗は捨てきれないらしい。

 しかし、

「昴星がここからオシッコすることが、ぼくにとっても昴星にとっても幸せな時間に繋がるんだよ」

 オシッコのガマンは身体に良くない。本質的に膀胱の容積が小さく尿意の近い昴星にとっては普通の子供にとってよりも良くないはずだ。だからぼくはやや強引に彼を後ろから抱いて、こぶし一つ分ほどの柵の鉄棒の間に斜め上を向いてオシッコを滴らせる短茎を差し入れた。

「ひゃっ、うゃああっ」

 鉄の手すりの冷たさが昴星の堰を決壊させた。ビクビクと声を震わせながら喉を反らして、一杯に溜まっていたオシッコで夜空に高々と噴き上げる……、ライトを浴びてきらきら光って、それは夜空にかかる金色の虹だ。

「ああっ、あ、あぁっ……、お、ひっこ……っ、ひっこいっぱい……ッ」

 やっぱり相当ガマンしていたんだろう。勃起で細まった尿道を押し広げる、放尿という行為そのものが昴星にとってはこの上ない快楽となりえているようだ。その声はもう、セックスのときとほとんど変わらない。昴星のマゾヒズムが破裂したときにだけ溢れる淫らなものだ。

「可愛い、昴星。……すっごく可愛い。昴星のオシッコ見た『みんな』もそう思ってる」

 髪に口付けながらそう囁いて、やっと放尿を終えてヒクヒク震える身体にこっちを向かせて、一先ず「ご褒美」のキスをする。昴星は泣いていた。泣きながら舌を伸ばして、ぼくからの贈り物を味わっているようだ。

「でも、まだ出るよね。……二人で幸せになるためには、広げなきゃいけないもんね?」

 流斗のように軽々というわけには行かない、けれど昴星を抱え上げて、「しっかり掴まってて」と言い添えて、手すりに昴星のお尻を乗せる。その冷たさに昴星のぼくに抱きつく腕が強張った。ぼくもしっかりと昴星を支えながら、お尻を半分、外へ出す。何せぼくが腕を緩めたらそのまま昴星は下へ落っこちてしまう。だからしている行為とは裏腹に、ぼくは案外マジメでいる。

「おにーさんっおにーさっ、ムリっ、こんなのやぁあっ」

 昴星は泣きじゃくって首を振る。さすがに気が咎めるのもまた事実。だけどぼくは昴星を抱きながら、

「ぼくが昴星のことをいっぱい可愛がってあげるためには、こうするのが一番なんだ。昴星の欲しいものをあげられる。ぼくは今夜昴星を、愛してあげたい」

 早口で、そう告げる。……うん、とんでもないことを言ってるなあ、自分でも思うけれど、半分ぐらいは事実であると思ってもらえないものかどうか。

 その判断を下すのは昴星だ。

「ぅああ……!」

 ぼくが抱き締める腰の奥から、お腹の中が動くことによる響きが届いた。くるる、ぐるる、重たい物がゆっくりと蠢き、本人も無意識な腸の蠕動によって徐々に出口へと運ばれて行く。

「ほら……、お腹鳴ってる。出したいんだよね、みんなに見られながら……」

 昴星の耳元で、ぼくは囁く。

「可愛いお尻の穴いっぱいに広げて、臭いうんち出すところ、みんなに見てもらおうね……」

 ぴりり、そんな震えが昴星の身体に走る。同時に勃起したままのおちんちんから少量の尿が噴き出してぼくのコートを濡らした。……別にもうそれぐらい大した問題じゃない。

 昴星は自らの力で直腸まで降りてきた塊を吐き出そうとしていた。

「んぅっ、んっ……んぃいいっ……!」

 体勢的に、それを伺うことはもちろんできない。あくまでぼくは昴星を落とさないように集中しているべきなのだ。

 しかし、音と臭いで判る。

「出てきたねえ……、お尻、気持ちいいでしょ? みんなに見てもらいながらうんちしたかったんだもんね……?」

「はっ……ぅンっ、んっ、んこ……っ、おれ、のぉ、おれのうんこぉ……っンッ」

「ほら、教えてよ。おちんちんこんなに硬くしてさ。嬉しいんでしょ?」

 首を振る。それでも昴星は、

「んっこ、っ、おひり……っ、出てきてぅっ……、うんこっ、うんこ出てるよぉっ……」

 きっと、呆れるほど太いものが長く長く、尻尾みたいに垂れ下がっているに違いない。それを実際に見なくとも、昴星のお尻の下から漂う臭いと湯気でぼくには判った。

 ぼくに縋り付いて自分の排便を「実況」する昴星は、背中からお尻にかけて無数の視線を感じているに違いない。

「うんこっうんこっいっぱい出てるっ、いっぱいうんこしてるのっお尻っ、見られてるっ……見られてるっ、おれのうんこ見られてるよぉ……!」

 昴星がビクンと震えたのに少し遅れて、ずっと下の方に昴星のお尻から切れた便が着地する音が聴こえた。下品な言い方になるけど「一本糞」を出し切った昴星の身体は恍惚そのものとしか思えない震えを走らせ、ぼくがゆっくりと柵の手前に下ろして改めて見てみればその肌には寒さからではない鳥肌が立っていた。

 そして、ぼくは匂いを感じる。たっぷり出したうんちのものではない、さっき少量ちびったオシッコのものでもない。

「ああ、……こっちも出ちゃったね」

 ヒクン、ヒクン、震えるおちんちんの先っぽから短い茎へ溢れて伝う白い液体。

「お、ひ……っこ……」

「オシッコじゃないよ、……ほら、昴星。こんなに濃くてぷるぷるしてる。昴星の精液」

「せー……き」

「観衆」の前での排便がよほど刺激的な体験だったのだ。身体の中から溢れる衝動をそのまま解放すると同時に昴星は射精した。……生まれて初めてに違いない。その液体こそ、昴星がはっきり露出の快楽に目覚めた証とでも言えそうだ。

「すっきりしたでしょう。……オシッコもして、うんちもして、精液も出した……。もう何も要らないよね?」

 呆然としていた昴星は弾かれたように顔を上げ、泣きそうな顔でふるふると首を振る。

「や、やだっ、まだっ、まだやだっ、おにーさんのちんこ、ちんこもらってないもんっ、おにーさんのちんこくんなきゃやだぁ」

 もちろんぼくだって、ここまで来て昴星に挿入しないで終わるなんて無理だ。でも、普段は強気なのにぼくのちょっとの意地悪で泣いてしまう昴星の姿をもうちょっと愉しみたいと思ったってバチは当たるまい。カメラを再び回しながら、

「欲しいの? でも、昴星は気持ちよくなれたんだよね?」

 訊いたぼくに、涙を零しながら強く首を振った昴星は冷たく硬いコンクリートの上に背中を付く。

「まだっ、まだっ、うんこしたの、おにーさんのためだもんっ、ここっ、おれのここっ」

 太腿を抱えて、ほんのり色付いた蕾を晒してみせる。……本当に入れてもらえないと思って居るのだろう。その焦りが昴星の縮こまったおちんちんからまたオシッコを零し始めていた。

「ね? ね? おれのお尻っ、おにーさんのためにうんこしたお尻っ、ごほうび欲しいよ、おにーさんのちんこ欲しいっ」

 自分の身体をオシッコで汚しながら求める昴星の有様は、「浅ましい」という言葉でだってまだ生温い。もっとずっと程度の低いものだ。

 つまり、何もかもを超えて可愛いということだ。

「しょうがないなあ……」

 なんてもったいぶった言い方で焦らしながら、ポケットの中からコンドームを取り出して、昴星に差し出す。

「そんなとこで寝っ転がったら背中痛くなっちゃうよ。……ぼくのに填めて。やり方わかるよね?」

 昴星は大慌てで起き上がり、ぼくの手渡した個包の端を口に咥えて両手をぼくのベルトにかける。オシッコ臭い身体をした少年はふーっ、ふーっと鼻息荒くベルトを外しジーンズを下ろし、トランクスの中で苦しいくらいに勃起したぼくのペニスを取り出すや、「あはぁ……」口からコンドームをポロリと落とした。

「ちんこ……おにーさんの……ちんこ、ちんこ……、ちんこぉ……」

 頬擦りをして善がっている。もう既に、あんなに縮こまっていたおちんちんは上を向いていて、ぼくの亀頭を濡らす腺液を唇で吸う段にいたっては右手で自分のものを刺激しはじめている。

「昴星は本当にお口でするの上手だね……。でもいいの? 口に出しちゃったら昴星の一番欲しい所にあげられなくなっちゃうけど?」

 嘘だ。一回や二回出したぐらいで収まるような熱だと思うなら、そもそも昴星にあんなことさせていない。昴星は慌てて顔を外し、拾い上げた個包を開いて丁寧に、上手に、ぼくを塞いですぐ、手すりに手を付いて、

「ちんこ早くぅ……、おにーさんのちんこっ」

 お尻を振ってこの上なく可愛いおねだりをする。

「はいはい。……本当にはしたなくって可愛い子だね」

 一応、追加でローションのミニボトルをお尻に垂らして指三本で慣らす。……すんなりと入るし、

「ぅんん、もぉ、ゆび、いぃよぉ、ちんこぉ……ちんこ欲しいよぉ」

 昴星はすっかりそこが性感帯になってしまっている。

「昴星、右足上げて。……手すりに乗っけられる?」

「え……? ん……」

 昴星は背が低いし、足だってそんなに長いほうじゃない。ぼくがどうしてそう求めるのか判らないまま、苦労して足を上げようとするが、全く届かない。……まあ、想定内。

「っひゃ!」

 ぼくは右手で昴星のお腹を抱えてぐいと持ち上げ、「左足も。……落ちないようにちゃんと支えてるからね」昴星の両のかかとを手すりに乗せた。

 昴星にしっかりとぼくのコートに掴まらせて、

「はぁああん!」

 そのまま、左手で自分のペニスを昴星の入口へ、一気に突き入れた。

「すごいね……、根元まで一気に入っちゃった」

 正直、まあ、あまり長く続けられる体勢ではない。

「いま『みんな』見てるよ、昴星がお尻の穴をこんな風にされて、嬉しそうにおちんちんピクピクさせてるところ、幸せそうな顔も、全部……」

 そうとだけ告げるのが、昴星のお尻的にも(それ以上にぼくの腰的な問題で)やっと。腰を少し引いて足を下ろすなり、昴星は手すりに縋りつく。

 一気に押し広げてしまった弊害はどうやらなさそうだ。いや、普段以上に効果的だったと言うべきか。昴星のお尻は柔軟にぼくのペニスを捉え、肛門の内部全体で絡み付いてくる。柔らかく、そしてはっきりと窮屈で、お尻の肉付きのよさをそのまま表すような粘っこい動き。

「昴星……、嬉しい? ぼくとセックスしてるところ、みんなに見られてるんだよ?」

 は、はっ、手すりに掴まり膝をガクガク震わせながら、わざわざ声をあげることもない、だってそこまでぼくは求めてない。

 でも昴星は、

「う、れひっ……、おにーさっのちんこっ、入ってんのっ、おにーさんにっ、してもらってんのうれしぃっ」

 喜悦の塗された声でそう訴える。

 きゅうん、とぼくのペニスをお尻で丸ごと締め上げて。

「そっか……、昴星が嬉しいなら、ぼくも本当に嬉しい。……大好きだよ。お外ですっぽんぽんになって気持ちよくなっちゃう昴星、大好き」

 あとはもう、この夜にどうピリオドを打つか……、それだけ考えていればいい。そう思い決めて、ぼくは腰を降り始めた。大人の責任として、この後の昴星をちゃんと護って家まで連れて帰る。

 そして、風邪をひかさないように熱いお風呂に入れて。

「んぁっ、あはぁあ! あっ、お尻っ、お尻にちんこっ、ちんこぉすっげぇきもちぃのっ、うんこよりっ、うんこより太いのっ、おっ、お、おひりぃいっっちゃうぅう!」

 ただ、……「多分」というよりもうちょっと濃厚な予想として僕の中に立っているのは、これ一回じゃ終わらないよな、ということ。昴星はもう複数回の射精を経て満足だろうけれど、もとよりぼくはここで二回三回したっていい気でいた。

 昴星の激しい収縮に射精の接近を感じながらも、……まあ落ち着け、自分に言い聞かせる。思春期前の子供じゃないんだから。

「いくよ、昴星……、昴星の中に出すよ……!」

 ぼくを置いて先に到達した昴星の中へ欲をそのまま叩き付けながら、……ああ、これは昴星の火も簡単には消えないぞ、ということに気付く。だって昴星はぼくの脈動に腰を弾ませて、そのまま次を求めるように淫らな動きで腰を振り始める。

 さあ、どうしよう。「続きはまた後で」なんてことを、

「もっとぉ、おにーさん、ちんこもっと、もっと、ちんこぉ……」

 まあ、言える訳がないね。


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