お兄さんのお言い付けの通りに

 

 いやはや、すごいマンションだ、最上階にプールがある。諭良の家がお金持ちであるということは判っていたし、この高層マンションの家賃がぼくの想像を絶するものだということも知っていたけれど、実際足を踏み入れて見ると本当に、驚く。

「セキュリティが厳しいから、住民と、住民の招いた人しか入れないんです。……もちろんお兄さんは、ぼくの特別な人だから」

 かといって、部外者、「知り合いのお兄さん」程度の人間が入れるはずもない。諭良が導き出したのは、「家庭教師の先生」という立場だった。流斗と全く発想が同じである。

 とは言え、「家庭教師の先生」の立場で居るのが、少年とこうして良好な付き合いを続けていく上では最良であろうかと思う。……流斗に対して負うことになったものではあるけれど、一応あの子の宿題を添削してあげたり、テスト勉強のお手伝いをしてあげたりする。幸いにして流斗はとても頭のいい子で、自分の成績が落ちればどうなるかということをきちんと理解してくれているから、いつでもいい点を取ってくれているみたいだ。

 諭良も、学校の成績は素晴らしく良いらしい。

 だから本当は、「家庭教師」なんてものはこの少年に必要とは言えないのだけれど、諭良が一緒に暮らしているというお父さん(外国人だ)は電話口で、「よろしくお願いしマス」とやや癖のある日本語でそう言ってくださった。

 好都合であり、ありがたい。

 高級マンションの上層階、ぼくらの住むちっぽけな街なんて当たり前に全貌出来る部屋に通されて、まず、その広さに驚く。

 リビングだけでぼくの住む2Kの部屋が丸ごと収まってしまう。

 トイレは、ぼくの家の倍の大きさ。

 浴室には、浴室乾燥機並びに床暖房完備。

 ……と、初めて上がらせてもらう家のそんなところを一々見ているのは、当然のように諭良が案内してくれたから。

 最後に通されたのは諭良の自室だった。

 八畳ほどあるだろうか。フローリングの部屋の奥にベランダ、戸棚には、漫画ではない本がぴっちりと詰まり、何とも大人びた印象の一室は綺麗に整頓されている。こんな部屋で生活する子を、先日あんなうらぶれた部屋に招いてしまったことにぼくは少々恥じ入ってしまう。

「すごく嬉しいです、お兄さんがぼくの部屋に居るなんて、夢みたいです」

 これまで案内役として、上品に先導していた諭良はそう言って、はじめてぼくに背伸びをして抱擁をねだった。ぼくは当然細い身体を抱き締めて、彼の強請るままにキスをする。諭良も六年生としては背が高いほうだけど、ぼくも日本人としては背の高い部類に入るので、結果的にはやはりバランスは大人と子供。諭良はグレーのシャツにクリーム色のズボン、外で待ち合わせたときにはこの上に紺のコートを着ていた。

「ぼくも、夢みたいに思うよ」

 キスは一先ず七度で終わって、改めて部屋を見回す。

 流斗の部屋は見せてもらったことがある。ぬいぐるみがあって、ランドセルがあって、一応片付けはしているみたいだけど、ちょっとばかりその片付け方のリズムが悪い、……そんな部屋。本はほとんどなくて、漫画ばかり。よくこれであんなにいい成績が修められるものだと感心するほどだ。

 昴星の部屋には行ったことがない、……失礼な想像になるけれど、多分、あまり片付けはしないようなイメージがある。

 才斗の部屋も未踏だけど、逆に彼は綺麗に纏めていそうだ。

 諭良の部屋は、完璧である。

 こんな部屋に住む子が内心にあれだけのものを隠している、という事実は、深く考えるまでもなく、不思議なものだ。いかにも聡明そうな顔立ち、実際頭が良くて礼儀が正しい少年が住むに相応しい部屋。ぼくは諭良の抱える性癖の片鱗をも、この部屋から見出すことは出来ないで居た。

「お兄さんに、先週借りたパンツを返します」

 諭良はぼくの身体から離れて、ベランダを開けた。ぴう、と冷たい風が吹き込んでくる。

「わざわざ洗濯してくれたの?」

 そもそも、あげるつもりだったのだから、返してくれなくってもいいのに。

 ベランダから戻ってきた諭良が、恥ずかしそうにブリーフを広げて見せた。

「……ぼくの、お兄さんへの、気持ちです」

 おう、と思わず声が漏れた。ぼくが、結果的には「貸した」ことになっていた下ろしたて白ブリーフが、少年の色に染め上げられて戻って来た。

 ……昴星に、流斗に、度々そういう贈り物をされているのだから、もう慣れても飽きてもいいのだろうとは、思う。

 それなのにぼくの心臓は呆気なく震え、弾み、転びそうになる。

「……ありがとう」

 まず何より言わなければいけない言葉を口にして、ぼくは改めて諭良を抱き締める。ほんのりと温かい体温が、シャツの向こうから伝わってくる。甘い匂いと共に。

「……すごく、どきどきしました」

 諭良はぼくの胸から顔を上げて、赤い頬を微笑ませる。

「今朝、起きて、トイレに行く前に、……しようって、思って。お兄さんに、ぼくの、いちばん濃いオシッコつけたパンツ、プレゼントしようって……」

「お父さんにばれなかった……?」

「昨日の夜から出張なんです。……明後日まで帰って来ないです」

 その言葉の意味するところを思って、ぼくは思わずまじまじと少年を見つめてしまった。

「お風呂場で、……パンツの中にオシッコしてるうちに、おちんちんがどんどん大きくなって……、ガマン出来なくって、そのまま、精子、パンツの中で出しちゃいました」

 ぼくは改めて諭良の贈り物を広げてみる。見事に濃い黄色に染め上げられたブリーフからは、広げただけで甘いようなオシッコの匂いが漂う。けれど、オシッコだけを吸ったにしては、布がぱりっとしていることに気付く、白くこびりついたものを、よく観察すればすぐに見つけられる。

「そうか……、本当にありがとう、大事にするよ」

 ぼくは改めて諭良の髪を撫ぜて、今夜、本当に泊まるのだとしたら、一晩中掛けてでもこの御礼をしなければいけないのだと理解する。もちろん、明日もこの子には学校が、ぼくには仕事があるから、限度というものがあるけれど。

「諭良、……いまは、どんなパンツ穿いてるの? 見せてもらっていい?」

 諭良は恥ずかしそうにこくんと頷くと、細い腰にベルトで引っ掛かるクリーム色のズボンを脱ぎ始めた。

 現れたのは、深い紺色のカラーブリーフだ。ゴムの部分は白で、それが爽やかなアクセントになっている。細身の諭良の身体の印象を、一層引き締める少年らしい下着と言っていいだろう。

「そんなカッコいいのも持ってたんだね」

 ぼくの言葉に、

「今日は、身体測定だったんです」

 そう、諭良は返す。意味が判らなくて訊き返したぼくに、既に膨らんだ股間を指で囲うようにして、「嗅いでみてください……」と恥ずかしそうに求める。

 顔を近付けて、

「ああ……、そういうことか」

 ぼくは理解した。少年のさらりと乾いたブリーフの膨らみからは、乾いたオシッコの匂いがほんのりと薫った。

「こういう、色のだと……、オシッコが付いても目立たないです」

「そっか。黄色くなっちゃってるとみんなに見られるの、恥ずかしいもんね」

 こく、と諭良は頷いて、

「でも」

 とすぐに言葉を繋ぐ。

「……お兄さんの前でなら、ぼく、いつでもそういうパンツ穿きます」

 凛々しく、美しく、そして淫らな言葉だ。諭良の、少年の華とでも呼ぶべき香りを放つ部分は、いっそその部分をアピールするかのようにくっきりと性器の輪郭を浮かべている。

「あっ……」

 鼻を当てると、諭良はひくんと震えた。乾いた尿の匂いに混じって、二枚の布を隔てて、陰茎そのものの匂いも届いてくる。

 ぼくの魂の深いところが、悦んでいる。もちろん諭良のおちんちんもぼくにそんな風に扱われることを幸せと捉えている。

「諭良、出したい?」

 見上げて訊くと、こくんと頷く。

 質問者であるぼくは一瞬、どっちのことだろうと考える。諭良が出したいのは……?

「どっちも、出したいです……。でも、オシッコは、もうちょっとだけガマンします」

 ちら、と諭良はぼくが持ってきて、いまは床に寝ているカバンを見てそう答えた。

 そうだね。

 諭良は自分で上を脱ぐ。それからブリーフを、足元まで下ろした。ぼくがじっと向ける視線に、少年の性器は上を向き、ぴくんと震える。少年のスマートな体型に似つかわしい、細身の勃起である。ただ皮の余りが少々目立つ気はする。

 諭良は少し躊躇ってから、ぼくが床に置いた白いほうのブリーフを手に取ると、それに足を通し始めた。再び勃起は布の向こうに隠されてしまったけれど、くっきりと付いた染みを膨らませることによって、そのフォルムは一層淫靡なものに思えた。オモラシの証拠を身に着けて諭良は更に興奮を催しているようだ。

 一般的には、臭そうだ、という感想が相応しい。

 けれどぼくにとっては甘美な匂いだし、諭良自身ももう、それを自覚している。

「お兄さん……」

 諭良は目を潤ませている。もう、笑顔の余裕はない。「ぼく……、こんな恥ずかしい格好を、お兄さんに見せてるんですね……」

「そうだね。オモラシパンツの中でおちんちんそんなに硬くしちゃうんだから、諭良は本当に変態だ」

 カバンから取り出したデジカメを向けると、一瞬だけ緊張したような表情を浮かべる。しかしすぐに、諭良は幼い性欲を象るペニスを窓から覗かせた。

 ぼくはすぐにはレンズを局部には向けないで、諭良の端正な顔をじっくりと撮影する。

「ぼくだけじゃもったいないから、……誰に見てもらおうか……? そういうの、諭良は好きだよね?」

 だって、露出癖があるんだ。そしてこの子の中に潜むマゾヒスト性欲にぼくはもう気付いている。

 諭良が頷くまでにほとんど時間は要らなかった。

「じゃあさ、……諭良。今夜これから撮るものは全部、女の子に見てもらうこと前提で撮影しようか」

「……は、い……」

「興奮する? 諭良の恥ずかしい秘密ぜんぶ知られちゃうんだよ」

 ぞくぞくとした震えを身に走らせて、またこくんと頷いた諭良は言うなれば変態性欲の結晶と言えるかもしれない。昴星が才斗から得て、流斗は昴星から得て、それぞれの影響を受けあいながら育ててきたそういう類の性欲を、この少年はたった一人で磨きこんできた。

 それが美しくないはずがない、魅力的でないはずがない。

「諭良」

 ぼくは試みに自分のジーンズの前を開けて、とうの昔から勃起しきっているペニスを少年に見せてみた。

 途端、諭良はそこから目を離せなくなる。

「お兄さんの、……おちんちん、しゃぶってもいいですか……?」

 はっ、はっ、と、上品な顔を崩れそうにさせながら諭良は言った。ぼくのペニスを両手で包んで、……同じ男性の、雄としての脈動を感じるだけで、ブリーフの中、足の間の細茎をピクつかせて。

「しゃぶりたいの?」

「ふぁ、い、おちんちん、しゃぶりたいです……」

 ひく、ひく、鼻が動く。匂いを嗅いでいるのだ。

 服を着ているときには、西洋の猟犬のような立ち姿なのに、……いまは餌を前にしてよだれをだらだら零す駄犬のように見える、なんて意地悪なことをぼくは考えてしまった。でもこの子にとったらそういう扱いこそ幸せに感じられるのかもしれない……。それこそ、いつかの昴星が女子に見られることを思って激しく乱れたように、内心のマゾヒズムが開放されたとき、少年はどこまでも浅ましくなり、それだけに美しくもなるのだ。

「どうしようかな」

 ぼくは、サディストではないと思う。流斗の、昴星の、したいようにさせている、その流れに乗って幸せになるので十分だ。

 けど、この子はひょっとしたら、それだけでは満足しないのかも。

「おちんちんしゃぶりたいなら、自分のをしゃぶったらいいんじゃないのかな。……この間見せてくれたよね?」

 ぼくは諭良の指を解き、あえてそんなことを言った。……ぼくだって先端を濡らすぐらい興奮しているのだけど、それこそこの子の望みだと信じて。

「でもって、おちんちんから出てくるもの、ぼくのだと思って飲んだらいいよ、撮っててあげるから。……そうだ、その撮ったの、君のクラスの女の子たちにも見せてあげようか」

ぞくぞくっと震えが諭良に走る。

「クラスの……、女子に……」

「うん。きっとびっくりするだろうね、……綺麗な顔した諭良が自分のおちんちんしゃぶっちゃうような変態だなんて、誰も思ってないだろうから」

 流斗から学んだサディストの振る舞いをぼくは実践する。

 昴星がそうであったように、……言葉は人を操る。諭良はためらいがちに、しかしやがてはっきりと意志をもって仰向けに寝そべり、ブリーフを脱ぎ捨てるや先日ぼくの部屋でして見せてくれたように柔軟さを披露し、……足の間を全て見せる。ぼくは「自己紹介して」と言ってからカメラを回し始めた。

「あ、あ……、諭良、です……、六年一組の、諭良=ファン=デル=エルレンバルトですっ……」

 ぼくは(実際にこれをこの子のクラスの女子に見せることはないだろうけど)黙ったまま手で続きを促した。

「こ、これから……、ぼくの……、オナニー、するとこ……、見てくださいっ……」

 諭良は察し良くそう言って、ぱくんとおちんちんにしゃぶりついた。お尻を抱える自分の腕に力を入れて、口の中で上手におちんちんを往復させる。カメラを寄せるとカメラ目線で、

「ぷぁ……、はぁっ、……おちんちん、をっ……、自分で……なめて、きもちよくっ、してますっ……」

 と説明する。見れば判る。けど、意味はぼくと諭良を除けばあと何人もわかりはしないだろう。

 しかしそれにはきちんと意味がある。そう証明するように諭良のおちんちんは、悩ましいようにピクピクと震えを繰り返している。艶を帯びた唇と先っぽを結ぶのは唾液ではないだろう。

「ぼくっ……、これから、オシッコを、します……っ、自分のお口にオシッコ、出して、それをっ、のみます……っ、見ててくださいっ……」

 下唇に先っぽを当てて、諭良は一度二度と力を籠めた。……さっき濃い色のを漏らしたばかりだから、そう溜まってはいないはずだし、なによりその体勢では出しづらかろう。実際、すぐには出てこない。お尻の穴が何度も膨らみ、一度はガスの放出があった。

 が、

「んうーっ……!」

 端正な顔をした美少年が真っ赤になっていきんだことで、細まった尿道からようやく金色のせせらぎが溢れ出した。……と同時に、肛門がぱっくりと口を開ける。暗闇から、硬い便がムリムリと顔を覗かせた。

「あ、あぶっ……んっ、ぶ、んっ、ぅっ……」

 口にオシッコを注ぐ諭良は、もちろん自分の肛門の状況を自覚しているはずだ。しかし諭良がしたことは、出てきたそれを隠すどころか両手で穴を広げること。

「あ、は、はっ、うんち……っ、オシッコといっしょにうんち、でてきちゃった……」

 壊れたようにオシッコまみれの顔をひきつらせて笑い、カメラに向けて斜め上方に、ごくゆっくりと便を生み出していく。驚いたのはぼくがピントを合わせなくともカメラのほうがそこに自動焦点をぴたりと結んだことだ。確かに、それだけのインパクトのあるシーンではある。

 黒茶色の塊は海から顔を出す塔のようにしばらく真っ直ぐと諭良のお尻からそそり立っていた。もちろん、いつまでもそうしていられるはずもないのだが、驚くべきことに諭良の肛門は生み出したばかりの棒状のそれを俄かに再び飲み込み始めた。

「見てくださいっ、ぼくっ、うんち、して……っ、うんちしながらおちんちんひゃぶりましゅっ」

 諭良ははしゃいだ声で常軌を逸した言葉を散らしながらフェラチオを再開している。貪欲な舌で自分の残尿を拭い、じゅぷじゅぷと音を立てながら口で愛し始めた瞬間、括約筋に力がこもり、棒は半ばで千切れてシーツの上に落ちた。

「ひンンっ! ん、ぷぁン、せぇひっ……、おくちにせぇひっ!」

 口のみならず顔にも自らの精液を浴びせながら、諭良は恍惚の声を垂れ流す。それは冷たい雪を想起させる普段の声とは全く異なる、ただ快楽に溺れるばかりのものだ。

 ぶりっ、ぶっ、と、そんな音を立てながら再び肛門が排出を始めた。もう先ほどのように「塔」の形を成すことはなく、ぼとぼととシーツの上に落下して行く。

「あ、はぁ……、ぼく、のっ、おなにぃ、見てくれて、……っ、ありが、と、ございまひたっ……」

 微笑みの形はすっかり蕩けているものの、それでも美しさばかりは確かに伝わる。最後まで諭良がカメラから目を逸らすことはなかった。

ぼくは撮影を止め、まだ排便を継続する諭良のためにシーツに盛られたうんちをティッシュで摘み上げ、先ほどのオムツの中へ移す。昴星みたいにオムツの中でさせるのがよかったかな、という気持ちがちょっと過ったけどもう遅い。諭良はそのままうんちを全て出し切ったらしく、すっきりとした顔で、まだお尻を抱えていた。

「……気持ちよかった?」

 ぼくが聴くと、目を潤ませて「はい……っ、すごく、気持ちよかったです……」と、感動したように声を震わせる。ぼくがお尻の穴を拭いて抱き起こすと、

「お兄さん、ぼく、幸せですっ……、お兄さんはぼくのこと、幸せにしてくれる……」

 すがり付いて涙声で言う。ぼくはひとまず自分の方法がそう間違ってはいなかったことを知り、一つ、安堵した。だってね、こんなことさせて「全然気持ちよくありませんでした」なんて言われちゃったら、報われないにもほどがある。

「諭良は、そうされたいんじゃないかって思ってさ」

 こくん、諭良は頷いて、「お兄さんにだけ、見せます……」と言いながら省電源モードにしていたらしいパソコンのマウスに手をかけ、素早くカチカチとフォルダを開いて行く。

 動画がたくさん詰まったファイルだ。

「これ……、ぜんぶ、一人で遊ぶときに撮ったんです……」

諭良は言って、そのうちの一つを開いた。

《六年二組の、諭良=ファン=デル=エルレンバルトです……、ぼくの、オシッコするとこ、見てください》

 クラス名が今とは違うから、転校してくる前に撮ったものだろう。外だ、ということはすぐ判る。野外露出の道すがらで撮ったに違いない。諭良は自分の顔を写していたカメラを、ジーンズを穿いた下半身に向ける。それから焦った手つきでボタンを外し、もじもじと落ち着きなくそれを太ももまで降ろすと、思い切りよく白いブリーフも引き下ろした。

 落ち着いた画面の中心に、雪色のおちんちんが揺れる。緊張からか、小さい。

《オシッコ……、出ます……》

 そう宣言してすぐ、余り皮を突き破るような勢いで諭良はオシッコを噴き出させる。……風の音がする。諭良のオシッコの軌道は少し乱れて下土を叩いた。

《見えますか……? ぼく、の、おちんちん、……オシッコしてる、ぼくのおちんちんです……》

「こんなこと、してたんだ?」

 諭良は自分の放尿する動画を見ながら、またおちんちんに上を向かせて、頷いた。

「こんなの、誰かに見られたらどうしようって……、思って、でも、そうすると……」

《あ、あ……、おちんちんっ、ぼくのおちんちん大きくなっちゃう……っ》

 同一人物だから、声は呼応するようだ。

 画面の中ではまだ放尿が終わっていないのに、飛沫を散らしながら皮被りのおちんちんを扱いて快感に耽る諭良が写っている。

「だから……、お兄さんに、さっきの撮ってもらえて、嬉しかったです……」

「そっか……、喜んでもらえてよかった」

 一緒になってディスプレイを見ながら、ぼくは諭良のサラサラの黒髪を撫ぜた。諭良は一人でここまで来ちゃうような子なんだ。だから、ぼくと出会えた……。

《あっ、出る……、ぼく、いきます、ぼくのっおちんちんいくとこ見てぇっ》

高い声と共に画面の中の諭良が精液を放つ。ぼくの隣にいる諭良は、マウスを握る右手を離したとたん、また自分のおちんちんを扱いてしまうだろう。ぼくが見せろと言えば、またしゃぶって見せてくれるに違いない。

 それぐらい、この子はこの出会いに感謝しているだろう。もちろんそれは、ぼくだって同じだ。

「他のも全部、こういう自分で撮ったもの?」

「はい……。お外でおちんちんを出してオシッコしたり、うんちしたり、……あと学校の教室ですっぽんぽんになってオナニーしたことも、あります」

 その日のことを思い出したらしい、諭良は可愛いチンピクをぼくに見せた。

「そう……」

 ぼくに出来る、この子を幸せにする方法は片っ端から実践していかなくては。……でもまず、とりあえず、

「諭良」

 ぼくは自分の物を指差した。諭良の思い切りのいい醜態を見せられて、正直もう、我慢の限界だ。でも、

「頑張ったから、ごほうびをあげよう」

 一応、そんな建前を用意する。

 クールビューティーかと思っていたのに、諭良はぼくがベッドに腰を降ろすとばあぁっと幼子のような笑顔になって、ぼくの足の間にひざまずいた。……どっちの諭良も綺麗だな、と思う。この笑顔にはふんだんに「可愛らしさ」が伴うのだけど。

「ぼく、頑張ります、お兄さんに、いっぱい気持ちよくしてもらったから、お兄さんにはもっと気持ちよくなってもらえるように、頑張ってお兄さんのおちんちん、おしゃぶりしますっ」

 透明な声で成される宣言。……学校ではほとんど誰とも話さないと言っていたから、多分だけどこうして「会話」をすることじたい、その舌にとっては嬉しく感じられるのだろう。誰かのペニスを口にすることと、きっと、同じくらい。

 さっそく諭良はせっせとぼくのを舐め始めた。

「……諭良はさ、好きな女の子なんていないの? ……いや、男の子であってもいいんだけど」

 ぼくはサラサラの髪を指で掬いながら訊いた。

「……お兄さんのこと、ぼく、好きです」

 首を傾けて、裏筋から尿道の膨らみをなぞるように舐めて、諭良は答える。先端に浮かんだ露をじいっと見つめて、それから舌先で、つうっと糸を引かせて舐め取る。口の中に広がったぼくの「味」を確かめるように、そっと目を閉じた。

 味わいの時間が終わるまで待って、「もちろんぼくも諭良のこと好きだし、いっぱい可愛がってあげるつもりだよ。……でも、……もし仮にね、同い年ぐらいのさ、それこそ、こんなことやさっきみたいなことまで含めて、何でも話せる相手がいたら、諭良は嬉しいんじゃないかな」

 ぼくの言葉に、諭良は困ったように眉を落とした。

「それは、そうですけど、でも……、ぼくはどうせすぐ転校しちゃうんです。どこへ行っても……」

「いまは、離れていても会えるよね? それこそスカイプだってある。このパソコンでもスカイプできるんじゃない?」

諭良はますます困ってしまう。

「でも……、……ぼくは自分のこと、変だってわかってます。……だから……」

 諭良の気持ち、ぼくにも判るのだ。

 誰かと秘密を共有することには、常にリスクが伴う。それこそぼくだって、……昴星に始まり、流斗、才斗、周、そして諭良のうちの誰か一人でも、ぼくの秘密を漏らしたならその瞬間、人生そのものが一発アウトになってしまう。諭良はだから、自分のことが誰かに知られて、否定されることを恐れる。秘密が漏れ広がることを、もっと恐れる。

 ぼくは、考えるのだ。……例えば昴星が、あるいは才斗、流斗……、あの子たちは諭良のような趣味を持つ子のことを非難したりするだろうか?

 同じ以上のことをしていながら、「おかしい」と指弾するようなことをするだろうか?

 もちろん、よく考えなきゃいけない、ごく慎重に。……でも、一つの選択肢として念頭に設けておくことは、きっと誰にとっても無駄じゃない。

「変なこと聴いちゃったね、ごめん」

 諭良はフルフルと首を振って、ぼくが醸してしまった気まずい空気を振り払うように「お兄さん」と言う。

「ん……?」

「お兄さんのおちんちん、すごく美味しいですね……。ぼくにとってこんなに美味しくていい匂いで、でもぼくが美味しいとお兄さんが気持ちよくなって……、とても、幸せな形だと、ぼく、思います」

 優しい微笑みが浮かぶ。その笑顔には、誰だって心惹かれるだろう。この子が多少なりとも変態なところがあったとして、それが大した問題にはならないぐらいの美しさだと、贔屓目抜きにしてぼくは感じいる。

「そうだね。……でも、さっきみたいに諭良が恥ずかしい格好して気持ちよくなるの見て、ぼくのは勃起したんだ。……二人で気持ちよくなっていけばいいんじゃないかな」

 こくん、と諭良は頷いて、それからほんの少し恥ずかしそうに上目遣いで、

「あの……、ぼく、もっとさっきみたいに、恥ずかしいこと、したいです」

 自分の欲を告白する。

「お兄さんのおちんちん、気持ちよくすることできたら、ぼくのことも……」

 可愛いなあ、素直にぼくの心から、いとおしさが湧き出した。

「いいよ。じゃあ、今夜はいっぱい諭良に恥ずかしい思いをしてもらおうか」

 諭良も、心底から嬉しそうに頷いて、まずは自分の仕事をこなすべく深々とぼくのペニスを咥えこむ。頬を窄めてのフェラチオに熱中する顔は、元が美少年であるだけに、ぼくを一層興奮させた。

「……いい子、諭良、いくよ?」

「んん……、んんっ!」

 口の中に叩きつけた精液、諭良はきちんと受け止めて、一滴も零さないように口を引き、「うふぁ……」口を開けて、ぼくに見せる。あー、と思う。たくさん出た。

「んく」

 幸せそうに飲み込んだ諭良は、

「美味しかったです……、すごく美味しかったです……、ありがとうございます……」

 とぼくの腰に腕を回して、何度も何度もお礼を言うのだ。

 可憐さすら纏う少年の髪を存分に撫ぜて、

「そしたら、支度しようか」

 ぼくは言った。

「頑張ってくれた分だけ、恥ずかしい思いをさせてあげなきゃならないし、そのためにはしっかり準備しなきゃね?」

 顔を上げた諭良は、確かな意志と期待感、そして隠しようのない貪欲さを光に変えて宿した目で、こく、と頷いた。

 

 

 

 

 さすがに、というかなんと言うか、高級マンションの高層階に住む家の子だけあって、

「こんなものしか出来なくてごめんなさい……、ぼく、まだ料理ぜんぜん出来ないんです、お口に合えばいいんですけど……」

 諭良が申し訳なさそうにテーブルクロスに並べたのは、

「えーっと、これはなに?」

「レトルトの、フォアグラのソテーです」

「ふぉあ、ぐら……」

「あとこっちは、牛頬肉のシチュー、これは、その、○トウのごはんです……。お兄さんは、パンよりごはんのほうがいいかなって……」

 いやはや、なんともはや。

「これ、全部で幾らぐらいするの?」なんて質問は飲み込んだ。だってそんなこと、知ったところでどうするんだ。

 人生はじめてのフォアグラを堪能し、諭良も諭良で自分のプレートを綺麗に空にした。

「もういいの?」

 ぼくの無意識の問いを、諭良は意識的に受け取る。

「もうちょっとだけ、食べます……」

「……あ、いや、そういう意味じゃなくって」

「普段は、あまり食べないんです。……でも、今日はこのあと、お兄さんとお出掛けだから……」

 薄っすらと頬を染めて諭良は言う。通りでさっきから、紅茶をもう三杯もお代わりしている。

 そんな、「準備」があって、ぼくらが諭良の家を出たのはもう日付が変わる頃。人通りのない道に、二人分の白い息が流れる。この辺りは都心に比べて標高があるものだから、冬の朝晩は辛いぐらい冷える。ぼくなんて、マフラーで首元をガードしても寒さに震えそう。

 けれど、感じる寒さは諭良のほうがずっと強い。実際、さっきから諭良はカタカタと震えているのだ。紺色のロングコートを着て、マフラーだった巻いているのに。

 ぼくらの足は、ぼくらの出会った城址公園に向いた。あの場所はこの時間人が来ることはなかろうから安心だし、一方で間違いなく「屋外」だ、以前流斗を遊ばせたのも城址公園だった。

「お兄さん……」

 公園の敷地に入るまでは、別々に歩いた。けれど林が空を閉じてからは、手をつないでいる。

「ん?」

 諭良は震えながらぎゅっとぼくの手を握って、

「オシッコ……、もれそうです……」

 と恥ずかしそうに言う。

「もうちょっと。……ここだと、道から見えちゃうからね。初めて君とあったあのトイレまで我慢だよ」

「あっ……」

 非情に徹する。ぼくの愛する少年でなければ、大慌てで周りを見回して「とりあえずここでやっちゃおうか」なんて言っているところだけど、ぼくは諭良の手を引いてずんずんの真っ暗な山道へと突き進む。……どのみち、諭良が我慢出来るとは思っていない。

「お、にいさんっ……、もうっ、もう出ちゃいますっ……!」

 コートの上からぎゅっと前を抑えて、諭良は涙目で訴える。諭良がもう一歩も動けなくなったのは、四方を樹々に囲まれた林の中だ。

「そう。……じゃあ、撮ろうか」

「は、はい……」

 ポケットからカメラを取り出してライトを点ける。この暗がりでも少年の姿を十分に映し出せることは、流斗のときに学習済みだ。

「あ、あの、諭良ですっ……、いま、城址公園に、来ています、いますごく、オシッコガマンしててっ、もう、漏れちゃいそうです、ぼくのオモラシするところ見てくださいっ」

 声は慌ただしく震え、涙さえ混じった。諭良は大急ぎでカメラの前でコートの前を開く。

 現れるのは白い裸にピンクの下着、そういう状態で、首には水色のマフラーを巻いている。

「ああ、あ、ああ……っ」

 ぶるぶると震えながら諭良は、オシッコを勢いよく薄い下着の中に解放していく。カメラに向けた目から感動の涙を散らしながら、足元の枯葉にオシッコの雨を降らせた。激しい水流の音が迸り、温もりを帯びた湯気がもうもうと上がる。

 諭良は、女の子の下着を身につけていた。

 これは、ぼくが用意したものだ。昴星みたいにいかにも少女っぽい顔立ち身体つきの少年に似合うのは当然のこととして、流斗のようにまだ幼さが先に立つ男の子の女装も大いに魅力的だ。

 では、諭良のように端正な顔立ちの「美少年」の女装はとうだろう?

 ……言うまでもない。似合っていない。しかし、それが却って諭良の変態性欲を際立たせるし、諭良自身のことも悦ばせるのだ。

「あ、あ……はぁ……、オシッコ……、女の子のパンツの中で……ぜんぶ、だしちゃいました……」

 諭良は初めて穿く女の子の下着をいとおしむように手のひらで撫ぜる。家を出る前に穿かせただけで勃起していた。「ほんとに、こんな可愛いパンツでオモラシしちゃっていいんですか? そんな恥ずかしいとこ、撮ってくれるんですか?」って、目をうるうるとさせて。

だから、

「女の子のパンツ、の、中で、オモラシして……、おちんちん、こんなに、大きくしちゃいました……」

 オシッコを含んで吸い付くような下着の前をくっきりと膨らませているのも当然と言えた。

 ちなみに、ブラジャーもつけている。もちろんおっぱいのない諭良にはゆるゆる、……昴星が着けたらどんな感じになるのかな、こんど試してみようかな。

「あのっ、……おちんちん、大きくなっちゃったので、これからここで、ぼく、オナニーします……、変態の恥ずかしいおちんちん、見てくださいっ」

 諭良は発情期の犬みたいだった。ピンク色の記事に細かな赤いハートマークを散りばめたパンツから勃起した自分の変態の証明を取り出して、扱き始める。ただ、少しコートが邪魔だ。ぼくが手でサインを送ると、それを脱ぎ捨て、マフラーも外す。もう寒さは感じないらしい。

 立ったまま、左手を足に挟むようにして股下の濡れた感触を楽しみながら諭良は濡れた声を溢れさせつつ右手を動かす。

「んっ、んっ、きもちぃっ、お外でおなにぃ、きもちぃ……っ、女の子のっ、パンツでオモラシしてオナニーするの、見てっ……あんっもぉっちゃうっ、いっちゃううっ」

 ぎりぎりのところで諭良は右手を離した。両手でパンツを引き上げ、砲身を濡れ下着の感触で包み込みながら、

「うぅうンっ、んんんぅっ……」

 恐らくこの少年にとっては最上の快楽を貪る。生地が薄いからだろう、諭良のおちんちんがビクビクと何度も跳ね、その度に下着の内側へ精液を付着させ、それに留まらず表面へ滲み出させるところまでよく見えた。

「あ、ん……っ、ん、……っ、はぁ……ん……、女の子の、パンツで、射精、しちゃいました……、ぼくの……、射精したおちんちんです……」

 諭良はまた下着を、今度は太腿まで下ろす。

 ピンク色だった下着はずいぶん濃い色に汚れている。……普通、水分を過量摂取したときのオシッコって色が薄いものだ。

 でも、鮮やかに染まっているのは、諭良が先ほどのご飯のあとで飲んだ子供向けのビタミン剤によるものだ。「風邪をひいたときとかに、飲みます」と教えてくれたそれ、夜更かしするからと飲んだのだけど、思わぬ効果を発揮した。

 諭良の性欲はこれぐらいでは収まらない。

「女の子のパンツ穿いたの、今日が初めてで、……でも、こんなふうにしてると、ぼく、女の子になったみたいな、気持ちになります。おちんちん生えてるから、男の子だけど、でも、……頑張って女の子みたいにするので、……最後まで見てくれたら嬉しいです」

 言いながら、諭良は膝をついて足を広げ、指をペロペロと舐める。

「あの、さっき、うんち、したとき、……お尻の穴にうんちが詰まって、お尻の穴が開きっぱなしになっちゃって……」

あの感触を思い出したらしい、諭良はぞくりと震えて、微笑んだ。

「だから、ぼく、女の子みたいに、おちんちんじゃないところで気持ちよくなります……」

 へえ、そういうことを知っているんだ。じゃあ、と、ぼくは口をぱくぱくさせてその「単語」を諭良に伝える。

「お……、おま、んこ……」

 その言葉を口にするとき、諭良は明らかに羞恥心を煽られていた。しかし一度口にしてしまうと、それはたちまち諭良にとって自らを貶める、魔法の言葉へ変わってしまうらしい。

「ぼくの、おまんこで、気持ちよくなるとこ……、男の子なのにおまんこで気持ちよくなっちゃうとこ、見てくださいっ!」

 上等のコートの上にお尻をついて、下着はまだ太腿に引っ掛けたまま。しかし諭良はそのままさっきのセルフフェラの体勢になって、大きく開かれた肛門に躊躇いなく指を挿し入れた。

 お尻いじるのも初めてのはずだ。だけどさっきの排便体験が相当に刺激的だったのだろう。

「お、おまんこにっ、指、入ってます……、見えますか……? ぼくの、おまんこ……っ」

 諭良の声の何処を探しても痛みはなく、ひたすらに悦びしか溢れてこない。細くて綺麗な人差し指はスムーズに出し入れされ、間も無くそれだけでは物足りなくなってしまったのか、二本目が軋みながら挿入される。

「すごい、おまんこ……すごい、きもちぃれす……っ」

 さすがにそれは流斗のように射精にまで直結した快感にはまだ至らないようだけど、それでも諭良の顔の前でおちんちんはきつく勃起し悦びを訴えている。諭良はしゃぶりたくて仕方のない自分の欲を堪えながら、なおを肛門自慰を続ける。

 ぼくは「咥えていいよ」と声を出さずに言った。

「もう、もうガマンできないのでっ、おちんちんしゃぶりますっ、お、女の子だからっおちんちんしゃぶりますっ」

 さっきは両手でお尻を抱えて動かすことでスムーズなセルフフェラを披露してくれた。今度は指を「おまんこ」に出し入れさせながら、ぎこちなくおちんちんを咥えて動かす。

「んふぁ!」

 あっと言う間の出来事だった。諭良は激しく肛門を収縮させて、その拍子に口からおちんちんを零す。……そのまま自分の顔面に射精してしまった。

「うふぁあ……、せーし……、ぼくのおちんちんの、せーし……」

 ぼくがもう何も言わなくても、諭良は精液をねぶり、恍惚の表情をカメラに向ける。指の抜けた肛門は開きっぱなしになって、ふすううと気の抜けた音を立てる。

「せぇし……おいひぃれす、オシッコのあじと、まざって、しゅごいおいひ……」

 諭良はそのままこのターン三度目の射精にさえ至りそうだ。それでも構わないと思いかけたところで「あう!」という声と共に、小さな塊を肛門から斜め上に跳ね出した。

 枯れ草とよく似た色の、小さなうんちの玉だ。

「うんち、出てきちゃいました……」

 困ったように言いながら、諭良は身を起こす。先ほどの食事が早くも消化され、肛門への刺激に乗じて溢れ出て来たのだろう。その分、「塔」のときのような硬さはない。枯れ草の上でパンツを足から抜いた途端に、ぼとぼとと大量に落下するそれにはさほどの粘りもない。形状こそ固体だが、紐のように緩い。

「いっぱい、……いっばいうんちしてます……、ぼくのおまんこ、ゆるゆるになっちゃった……、うんち止まらなくなっちゃった……」

 諭良は嬉しそうに頬を綻ばせ、足の間に次から次へと便を落としていく。ぼくがサインを送りかけたところでそれをまたぐようにお尻を向けて、

「ほらぁ……、ぼくのおまんこ、どんどんうんちしてます……」

 足の間からこちらを覗き、両手で双丘を広げて見せる。

 当たり前ながら、オシッコ以上に臭くて、湯気のボリュームも大きい。

「うんちが……、おまんこからスルスル出て来るの、何だか不思議です……、いっつも硬いのゆっくり出してるのに……、ぼくのお尻、ほんとにおまんこになっちゃったのかな……」

 おまんこがうんちするわけがない。それは流斗と諭良だけの、言わば特異体質だ。

 ようやく、肛門からの自由落下に一つの区切りがついた。

諭良はスッキリしたような顔で振り返り、手に持った女児パンツを広げて引っ張る。

「ぼくの……、恥ずかしいとこ、見てくれてありがとうございました」

 そう言って、一つの区切りを提示する。ぼくが動画を停めると、しばし呆然としたように立ち尽くしていたが、

「くしゅんっ」

 という子供らしいくしゃみで我に返る。

「風邪ひいちゃうよ、いつまでもその格好だと」

 でも、コートをかけてあげた身体はまだほかほかと温もりを帯びている。

「大丈夫です、暑いくらいだし、お兄さんもすごくあったかい……。でも」

 ぴったり、ぼくに身を寄せて諭良はおねだりをする。

「パンツ……、穿いてもいいですか……?」

 気に入ってしまったようだ。

「構わないよ。……可愛いから、ぼくも『女の子』になった諭良を見たいし、写真にも撮りたいなって思ってたところ」

 お尻、まだ拭いていない。しかしぼくが止める間も無く諭良はいそいそと黄色く汚した女児パンツを穿いて、コートをぼくに委ねる。

「……可愛い……、ですか?」

 諭良はもじもじとそう尋ねる。……まあ、いいか。何枚も買ってあるし。

「可愛いよ、パンツとお揃いのブラジャーもよく似合ってる。そこらの女の子よりも全然可愛い」

 十二歳の、そこそこ背の高い男の子にとって「可愛い」は禁句だろうとも思う。けれど恥ずかしそうにしながらも諭良は嬉しさを隠せないでいる。「可愛い」女装男子の立ち姿、前から後ろから、何枚もぼくは撮る。

「勃起しちゃう前に、おちんちん出して見せて」

「はい。……えっと、こんな風でいいですか……?」

 諭良はゴムから細い陰茎を引っ張り出してぼくに見せる。

「あ……っ、そんな近くで……」

 シャッター音にぴくんと反応する。また勃起しちゃいそうだ。

「オシッコ出来る?」

「はい、……出来ます」

「じゃあ、して見せて」

「はい……」

 諭良はおちんちんから指を離して、そろそろと力を抜く。たっぷり余った皮の隙間を縫うようにして、まだ色付いたオシッコを迸らせる。

その様を撮りながら、

「諭良のおちんちん、細くてすごい皮が余ってるよね」

 と其処に語りかける。

「……早くから、オナニーしてたから、伸びちゃったのかもしれません……」

 勃起して、指でめくればそれなりには剥ける。けれどこの様子だと大人になっても仮性包茎なのは間違いない。

 昴星のおちんちんも、皮が余っている方だ。でもあの子の場合はおちんちんのサイズじたいが平均よりずいぶん小さい、だから育てば問題なく剥けるようになるだろう。

「あの……、お兄さんが見たことある、男の子のおちんちんと比べて、ぼくのって、どうですか……?」

 ポタポタと残りの雫がだらしなく滴っている。

「そうだねぇ……、正直に言っていい?」

 ほんのり硬さを帯びて膨らんで来ても、ぼくが摘まんで水を切るために揺らすと、皮だけはふるんふるんと尾を引くように震える。

「はっきり言っちゃうと、六年生のおちんちんとしては恥ずかしいぐらい皮が余ってるよ。……諭良は勃起した自分のここ、誇るみたいに見せびらかしてたけど、みんながこれ見て思うのは『エッチだな』っていうより、『情けないおちんちんだな』ってことの方だと思うよ」

 あえてキツイ言い方をぼくは選ぶ。諭良がそれで喜んでくれるのが望みだ。

「なさけない、おちんちん……」

「うん。だってさ、六年生ぐらいだと、早い子は皮剥けるし……、ぼくの知ってる四年生の子も、こんなに余ってないからね」

 才斗と流斗のことだ。

「女の子たちもそれは知ってると思うし、だからすごい恥ずかしいことだよ。諭良が思ってるより、もっと、ずっとね」

 諭良は反射的にパンツの中におちんちんをしまった。理性が戻りかけているのだろう、おちんちんが萎みはじめている。

 ぼくは構わず諭良のそこを下着越しに撮影する。うっすら透けているから、それでも包茎具合は明らかだ。

「あ、あの……、お兄さん……っ」

「どうして隠すの? 諭良は恥ずかしいおちんちん見てもらうの好きなんじゃないの?」

 可愛い、と言われたときの反応からして、この子は自分の見た目を褒められるのがとても嬉しく誇らしく思えるようだ。ナルシストとまでは言わないけれど、実際、自信を持っていいぐらいの美しい相貌をこの子はしている。

「ほら、もっとよく見せて」

 恥ずかしい「部分」である。誰にとっても、パンツの中って。

「や、やあぁ……っ」

 でも諭良はこれまで、それを判った上でカメラに、そしてぼくの目に晒して来た。言うなれば一つの「関」は自力で乗り越えたのだ。……その「関」は、単に「おちんちんを露出する」ということに限らず、「オシッコをして見せる」「オモラシをする」「うんちを見せる」「自分のおちんちんをしゃぶる」……そういう、数々の要素にもあって、段階的に諭良は踏み越えて来たのだ、言ってみればクソ度胸で。

 でも事ここに至って、そもそも原点的な部分に当人も気付かないような「恥」の「関」があったことを指摘されることは、諭良には全く想定もしていなかったことで、別の角度からの刺激になるようだ。

 ぼくは半ば無理やりに諭良の女児パンツを引き摺り下ろし、包茎おちんちんの先を摘んだ。……柔らかくて、いい触り心地だ。

「やぁあ……っ、皮っ、のびちゃいますっ……」

「どうせなら、もっと伸ばしちゃえば? さっきオシッコしたときもさ、皮がストローみたいにチューって出てて、だらしない感じだったよ」

 ひくっ、ひくっと啜り泣きはじめた。ぼくは心を鬼にして、動画の撮影に切り替える。諭良はそれに気づいて、……どんな風に思考回路が働くのかは、手に取るように判った。

「あ、あ、……っ」

 しかし、思うように身体は動かない。恥部の恥ずべき特徴を撮られて、興奮を催しながらも其処は反応しない。縮んでいるせいで、皮の余り具合は一層際立つ。

 ぼくは黙ったまま、諭良の股間だけをフレームに収めた。ここからどうするか、……どんなところを見せてくれるか、期待感を持って。

「ぼ、ぼくの、おちんちん、はっ……、先っぽに、皮が、余って、ます……」

 まずはそんな「自己紹介」から始まった。指が、自分のものを摘まむ。

「こ、ここまで、おちんちんです」

 全体を差してそう呼ぶのだけど、確かに諭良の「おちんちん」は其処までと言った方が事実に即しているかもしれない。皮余りのせいで細長く見えるけれど、「芯」の長さは流斗とさほど変わらないはずし、それはこの子が流斗より二つ年上であることを考えれば、やはり恥ずべきことだと言わざるを得ない。

「だから、あの、……えっと……っ」

 普段は自分で「見せたい/見られたい」姿を定めてから撮影するのだろう。けれど今は、見せたくないと思ってしまった場所を見せているわけで、諭良は思うように言葉が出てこない。まごついた挙句、自分の指で皮を捲って包茎なばかりではないことを証明しようと思ったらしいが、それもうまくいかない。

 ぼくは「オシッコ」と口の形で伝える。諭良が、ごくりとツバを飲み込んだ。

「ぼくの、……ぼくのおちんちんは、こんな風に、あの、皮が、いっぱい余ってるのでっ……、オシッコが、ストローから出てくるみたいに、見えると思います……、あの、だから、……そういうおちんちん、見たことある人は、あんまり、いないと思うので……、なのでっ……、ぼくの、オシッコするとこ、いまから……、みてください……っ」

 既に諭良の膀胱は過敏になっている。寒さも手伝って、オシッコはしばらく幾らでも出てくるだろう。

「お、オシッコ、オシッコ、見えます、か? 皮のあいだからっ、チューって……」

 ヒクヒク震えて自分のおちんちんの秘密を披瀝するうちに、諭良はまた「関」の戸を開く。

 無意識に、欲のままに。

「ぼくの、おちんちんっ、皮が伸びててっ、だらしない、恥ずかしいおちんちんですっ……」

 どうするかと思って見ていたら、諭良はオシッコの最中にも関わらず自分のおちんちんから指を離し、その場で小刻みに腰を振りはじめた。……左右に尿を散らばせながら、おちんちんはぷるぷると小刻みに揺れる。

「ほらっ、ほら見てっ、ぼくの、おちんちんの先っぽ、あまった皮っ、ぷるぷるしてるっ、おちんちんの皮ぷるぷるしてるのぉ……っ」

「関」を超越した諭良は、笑みさえ浮かべて腰を振り続けていた。オシッコはいつしか止み、おちんちんはむくむくと勃ち上がっている。それでも滑稽なダンスに左右に揺れる細茎の先、そこだけ違う材質で出来ているみたいに、スナップの効いた震え方をしている。

「おちんちん、勃起しちゃいました……、ね、ほら、見てっ、ぼくのおちんちん、勃起したのにぜんぜん皮剥けない……」

 恥ずかしい、という本来負であるべき感情がひっくり返る。「露出」も「オモラシ」も、まさしくそういうからくりで少年に快楽をもたらすのだ。

 包茎であることも、また同じ。壊れたような笑顔と共に「包茎ダンス」を撮影していたぼくのカメラに、「ね、ほらぁ……」背伸びまでして自分の包茎をアピールする。

 また少し、意地悪をしてみる気になった。

「あっ、やぁあ……っ、顔じゃなくてっ、おちんちんっ、ぼくの包茎おちんちん撮ってぇ」

 カメラを少し上げただけなのに、諭良は泣きそうになってぴょんぴょんとその場で跳ねる。ぼくがカメラを渡して身を引くと、お尻を枯葉に落として、それはもう熱心に、カメラを寄せて、

「見えますかぁ……? ぼくの、だらしない皮のおちんちんですっ」

 と幼い口調で喋りながら撮影する。

「あのね、ぼく、昔から、オシッコのときにときどきすることがあって、ぼく、それすごく上手にできるんです、でもそれ、ぼくのおちんちんがこんなだからできることで……、とにかく見てくださいっ」

 諭良は余り皮をきゅっと絞るように摘まんで、「んふっ」と力を込める。

 ぷくり、摘まんだところより根元が膨らむ。同時に「ぶりゅっ」と音を立てて、諭良の緩んだ「おまんこ」から少量の軟便が漏れた。

「あは……、うんち漏れちゃいました……、でも、ほら、オシッコは漏れてません、ぼく、こんなふうに上手にオシッコガマン出来るんです」

 指を離すと、栓が抜かれたように皮の縁を濡らしてじんわりと尿が滲み出す。諭良はそれを見て更に煽られたように、

「同じふうに、せーしも、オモラシしないでいくとこも、見せますっ……」

 と宣言するや、これまでより先端の方を握ってオナニーを始める。お尻がうんちに塗れていようがおかまいなしだ。ぐちゅぐちゅと、口をゆすぐような音が諭良の手の中から巻き起こる。

「すっごぉい……っ、ぼくのおちんちん、すっごい恥ずかしい音っ、ぼくの、ぼくのはしたないおちんちんっ、はずかしいおちんちんっ……おちんちんんンっ」

 射ち出されるわけではないから、「射精」とは呼ばないかもしれない。諭良は「おちんちん」を連呼しながら快感のピークを迎え、性器を指の中でのたうたせてから、そっとそのいましめを解く。

「は、はぁ……っ、ほらぁ……、せぇし、おちんちんの中でガマンしましたぁ……」

 溢れ出るミルクをカメラで舐めるように撮影してから、諭良は緩い力の腕でぼくにカメラを委ねる。とろとろを纏った指でまたおちんちんの皮を引っ張って言うのは、

「ぼくの、恥ずかしくって……だらしない……おちんちん、いっばい見て、くわしくなってくらさいね……?」

 克服し切った果てのものだった。

 カメラを止めると、

「はぁ……、すごいこと……しちゃいました……、あんな、おちんちん、振って……、うんち漏らして……、変態みたい……」

「『みたい』じゃなくって、正真正銘の変態だと思うよ」

 ぼくはきつい言葉とはあまりに裏腹な優しい声で諭良を褒めて、立ち上がらせる。

「お尻、うんちまみれになっちゃいました……」

 拭く前に、恥ずかしそうな後姿を一枚。

 拭いてから、右足に引っかかったままの女児パンツを裏返して、「こっちも」と茶色いシミを見せてから、「穿いてよ」と頼む。

「でも……」

「よく似合うと思うよ? 諭良のはしたないパンツの中、パンツ穿いたって隠せないんだから」

 諭良はこっくりと頷いて下着を引き上げると、ピンク色の生地でもはっきり判るシミを突き出して、またぼくに一枚撮らせる。

「諭良は本当に綺麗な身体をしてるよね」

 久しぶりにぼくが素直な賞賛を口にしたから、「えっ……」とちょっと驚いたように諭良はぼくの顔を見た。

「うん、……本当にそう思ってる。スレンダーって言っていいよね。身体のラインが綺麗でさ、お尻も小さくて引き締まってて、すごくいいと思うよ」

 別に昴星たちをとやかく言うつもりじゃない。昴星の、中性的で抱き心地のいい身体、流斗のまだまるで子供な膝の上に乗せて抱き締めるのがぴったりの身体、同じようにぼくは好きなのだ。

「……ぼくの身体、そんな風に褒めてくれるの、お兄さんだけだと思います。だって、誰にも言われたことないです」

「そうかな。みんな思ってると思うけどな。……学校の女の子たち、きっとみんな諭良のこと好きだよ」

しかし諭良はさみしそうに首を振った。

「ぼく、好きって思った人に振り向いてもらったこと、ないんです……。さっきお兄さん、『友達作ったら』って言いましたよね。でも、……お友だちになりたい人は、いつだってぼくのこと見てくれないんです」

 また身体が冷えてしまうのはいけない。ぼくは諭良の肩にコートをかけて、包み込むように抱き締めた。

「ひょっとして、……諭良には好きな人がいるの?」

 こく、と少年はこれまでで一番恥じらいを帯びて頷く。

「それは、……ええと、男の子、なんだよね?」

「はい、……同じ学校で、同じ水泳教室に通ってる、男の子。すごくかっこいいんです。綺麗な顔をして、頭がよくて、優しくて、運動も出来て……」

 諭良ほどオールマイティな少年が存在するのだということは驚きだ。

「でも、ぼくは多分彼に嫌われてるんだと思います」

「嫌われてる? どうして?」

 諭良は、確かに澄ました顔をしているときはちょっと冷たい印象を与えてしまうかもしれない。けれど実際は、昴星や流斗同様に優しい心の持ち主だ。

「ぼく、彼の前だと、どんな風にしたらいいのかわからなくなっちゃうんです。……仲良くしたいのに、うまく出来なくて。……それに、彼には多分、恋人がいます」

 それは……、しょうがない。ぼくはぼくで、昴星という、「恋人」がいる相手と遊んでいるわけだけども。

「……そうなんだ。……もう彼女がいる子なら仕方ないね……」

 いえ、と諭良は首を振る。ぼくが訝ると、

「彼女じゃなくて、……彼氏がいるんです。だから、ぼくは……」

 えっ、と、こんどはぼくが驚く番だった。

 同時に、すっ、と血の気が引くような心持ちになる。

 ええと、……諭良が通う学校って、あそこだ、ぼくが卒業した学校。あの学校の六年生はいま、四クラスあるって昴星が教えてくれた。

 四クラス、……一学年の中に同性愛者のカップルがどれぐらいいるものだろうか。一般的には「十人に一人がその因子を持つ」なんて言われている。だから可能性としては四クラスあればまあ、二組ぐらいのゲイカップルが成立する可能性もなくはない訳だ。

 でも……、「頭が良くって運動が出来て優しい」って。

「あ、あのさ、諭良、……君が好きな子って、何て名前なのかな……?」

 諭良は顔を上げて、「淵脇くんです。フルネームは、淵脇才斗……」

 おお、と思わず声が出てしまった。……才斗って、あの才斗。

 ということは、だ。

「その、……才斗、……の、相手っていうのは……?」

 諭良はぼくの表情が孕む緊張感には気付かない様子で、

「鮒原くんっていう子です。……背が低くて、ちょっとぽっちゃりしてて、でも、すごく可愛らしい、女の子みたいな顔をした、同じクラスの男子です」

 ……バレてるよ、昴星、才斗。

 いや、単に才斗に思いを寄せる諭良だからこそ見ることが出来るものかもしれない、そうであって欲しいって、ぼくは思う。

「そう、そうなんだ……、そう……」

 ぼくは腕の中でこくんと頷く少年を見る。

 ……君は多分、昴星と同じくらいに才斗好みの男の子なんだよ。

 そして君は、きっと昴星とも仲良くなれる。だって君と昴星は、身体の形こそ違うかもしれないけれど、……とても似ている。

「……諦めるのは、どうかなって思うけどな」

 ぼくは言葉を選ぶ。

 昴星たちと諭良が学校ではほとんどコミュニケーションを取らないであろうということは察する。諭良は学校では冷たく強張った表情でずっといるのだろうし、性格を考えれば昴星ともすぐに仲良くなれそうなタイプじゃない。

 ただ、ぼくにとっては共に大切な「友達」であり、限定的には「恋人」だ。才斗との仲をこじらせてまで諭良を助けようとはもちろん思わないし、諭良が願っても「恋人」になることは出来ないにしても、距離を縮めて判り合うことだって出来るはずだ……。

 諭良の寂しさを埋める事もできるかもしれない。

「でも、……嫌われるの、怖いです……」

 多分、昴星も才斗も、諭良が彼らの仲を引き裂こうとしない限りはこの子が「仲間に入れて」って言っても、決してそれを拒みはしないだろうと思う。そもそも流斗が昴星に招かれて「オシッコの匂いと味、アンドオモラシ」の世界に入り込んだのだということもある。

「雑な言い方になっちゃうのは承知の上で言うんだけどね、諭良」

 ぼくは後ろから、コートを肩にかけてもまだ華奢に思える細身を抱き締める。

「いざとなったら、……つまり、振られちゃったりしてもさ、春には会わなくなるんだ。だから、君には逃げ道がある」

 悪い大人だなあ。今更のようにぼくは恥じる。だって、何もかもわかってこんなこと言ってるんだから。

「逃げ道……」

「好きな子に、『好き』って言えないまま終わっちゃうのよりは、当たって砕けた方がいいって、ぼくは思うんだけどな」

 ……この後諭良は、彼の願いを叶えることとなる。ぼくがこのとき思っていたよりも、ずっと理想的なやり方で。昴星・才斗・流斗と諭良は、強い絆で結ばれるというハッピーな展開が待っている。ただ、それは別の話、追い追いわかって来るだろう。

「……お兄さん」

 諭良はぼくの腕の中で身体の向きを変えて、微笑む。

「もしぼくが、あの子とうまくいくようなことがあったとしても、お兄さんといっしょにいるあいだ、お兄さんはぼくの恋人です」

 すべすべの頬に、自然とぼくの手は伸びた。諭良はぼくの手の甲に手のひらを重ね猫が甘えるみたいに摺り寄せる。

「……お兄さん、ぼくの撮ってるばかりで、まだここに着いてから一度も気持ちよくなってないです。ぼく、お礼しなきゃ……」

 ついさっき、あのみっともない「包茎ダンス」を見せてくれた諭良は、元の通り、穢れを知らないような美少年の表情に戻ってぼくを見上げる。

「ぼくは、諭良が気持ちよくなるとこ見るだけでも結構満足だよ? さっきのも面白かったしね」

「……興奮しちゃったんです、あんなの、普段はしません」

咎めるようにぼくのコートをぎゅっと握って、そのまま背伸びをする。

「……でも、……お兄さんが見たいって思ってくれるなら、ぼく、おちんちんぐらいいつだって振ります、あんなことでいいなら……」

「へえ」

 ぼくは笑って、髪に唇を当てる。諭良はそれだけで求められていると思ってしまったのか、ぼくから身を離してコートの前を開いて、恥ずかしそうに、ぷるん、ぷるんと細い包茎を弾ませて見せた。

「やっぱり、……いいね、そうやっておちんちんが弾んでるとこ見るの、ぼくすごく好きなんだと思う」

「……そう、なんですか?」

「うん。……ほら、オシッコの後におちんちん振るでしょ。あのシーンとか、最高だなって」

 ダンスを止めた諭良はじっとぼくを見て、

「お兄さん、いつもトイレでそんな風に覗いてるんですか……?」

 責めるというよりは、案じる声で訊く。

「ん……、まあ、無理に見ようとはしないよもちろん。可哀想だし、バレたら後が怖いから」

 あくまで偶然を装って視界のはじっこに入れているだけ……、って、この言い訳からして既に最低だ。

「もう……、おちんちんぷるぷるするところは、ぼくが見せてあげます。お兄さんいなくなっちゃったら、ぼく、困ります」

 優しい声でぼくにお説教をして、再びステップを踏む。ふるん、ふるん、愛らしくおちんちんが弾む。猫だったらじゃれついてしまうところだろう。

「お兄さんは……」

「ん?」

「……どうして、男の子が好きなんですか?」

 ぼくは苦笑して、

「いろいろね、あったから。諭良だってまさか自分がそんな風におちんちんにダンス踊らせるようになるなんて思わなかったでしょ?」

 諭良は赤くなって「はい」と頷いた。さすがに連続して射精したから、羞恥心を覚えてもすぐには勃起しない。だからぼくは柔らかく弾むおちんちんの有様を堪能することが出来ている。

「あの、お兄さん……、ぼく、またオシッコしたくなっちゃいました……。腰動かしてると、お腹の中でオシッコ、はずんじゃって……」

 少年が尿意を催している、そう思って見ると、そのダンスはまるで幼児がトイレに行きたくてむずかっているようにも見えてきて、なんだか滑稽な中に微笑ましさのようなものが漂ってくるかのようにも思えて来る。

「ごめんなさい、ぼく、オシッコしてばっかりで……。まだお兄さんのことぜんぜん気持ちよくしてないのに……」

「いいよ。出もの腫れものところ構わずって言うし、あれだけたくさんお茶を飲んだら頻尿になって当然だ」

 それに、少年の放尿を見られるだけでも嬉しいものだ。

「でも、ここはちょっと寒いね。……もう少しだけ我慢出来る?」

 諭良は少し自信なさげにこっくりと頷いた。肩にコートを纏わせ、マフラーを巻かせ、「部屋に戻ろう」と宣言して、ぼくが持ってきた新品のブリーフを穿かせた。仕事先近くの衣料品店で二枚五百九十八円だったそのブリーフは、スマートな諭良の身体にもはっきりときついことが見て取れる。

 だってサイズは120、つまり、流斗にちょうどいいか、あるいはあの子もちょっと窮屈がるかもしれない。白地に水色で乗用車やトラックの小さなイラストが散りばめられている。

「お、お兄さん、これ……、ぼくよりもっと小さい子が穿くような……」

 身体にぴったりフィットして食い込む下着の模様を見下ろして、諭良は戸惑う。大人びたところがあって美しい少年は、女児パンツと同じような恥ずかしさをその、だいたい二年生か三年生ぐらいの男児が穿くにふさわしいようなブリーフから感じるのかもしれない。

「可愛いよ。よく似合ってるね」

 コートにマフラー以外はほとんど裸って、露出狂の格好だ。事実として諭良は露出狂だけど、こんな可愛らしい変態なら通りで遭遇するのも悪くない。

「じゃあ、行こう。……部屋に戻ったら、ぼくのこと気持ちよくしてくれるね?」

 ぼくが頬を捉えて口付けると、とろんと微笑んで「はい……、約束します」と諭良は頷く。

 雑木林の中から抜け出て、諭良のマンションまで戻る途中のどこでだかはわからない。けれどマンションの一階に着いたときにはもう、諭良の靴底は湿っていて、エレベーターに乗り込むときには大理石を模した床がキュッと鳴った。

 部屋に着いて、鍵を掛けるなり、「はあぁ……」と諭良は脱力して三和土(と言っていいのかな。こんな高級なマンション、しかもハーフの子が金髪の父親と住んでる部屋に、古ぼけた日本語を持ち込むことにぼくは少し抵抗を覚えた)にしゃがみこんでしまった。コートのボタンの下から三つが外れ、拍子に開脚された部分が覗ける。

 いかにも小児用、低学年用といった趣のプリントブリーフが、引き締まった十二歳の太腿が、溢れた尿で濡れている。

「お外で……、オモラシしちゃいました……」

「『お外で』はこれまでだって何度もして来てるじゃない」

 手を貸して立ち上がらせ、靴下も濡れているのだと思い出したから結局そのまま抱っこして浴室まで運んでいく。外が寒いのは判り切っていたから、帰宅するまでに湧くよう、諭良にスイッチを入れておいてもらったのだ。

浴室に一歩立ち入って驚く。きっと氷のように冷たいと思っていたタイルが、じんわりと暖かいのだ。浴室床暖房というやつだろう。

「お外の、……あんな、人が来るかも知れないところでしたの、初めてです……」

「なるほど。……だからそんな小さい子のパンツで勃起してるんだ?」

ただでさえ窮屈な下着が、盛り上がる男性器によって一層際立って狭っ苦しい。プリントされた模様のどれもが突っ張って伸びているのが、何だかとてもエロティックに見えるのは気のせいじゃないだろう。

「諭良、お尻も見せて」

「はい……」

防曇加工がしてあるらしい鏡に手を着いて、諭良はお尻をぼくに突き出す。諭良のお尻は昴星とは比べ物にならないほど小さく引き締まっているが、そこもぱつんぱつん、歩いているうちに食い込んで、片尻が丸見えだし、普段に比べて低いウエストゴムの上には尻肉の割れ目の発端も覗いている。

 浴室は汗ばむくらいに温かい。ぼくはセーターを脱ぎ、ジーンズをおろして、……もういいやって裸になった。お尻をこちらに向けたままの諭良は鏡ごしにぼくの裸身を見たはずだ。下半身で反り返る、男性器も。

「そのままでいて」

 ぼくは自分の性器の先端をしっとり濡れてゴムの食い込む下着の後部に押し付けた。

「う、あ……っ」

 脂質感の少ない諭良のお尻はまだ冷たい。その分だけ諭良は、冷えた場所に当てられた性欲の温度を感じるはずだ。

「どう? 諭良の好きなの、可愛いオモラシパンツで感じる?」

「は、はいっ……、お尻に……」

 諭良は早くも腰を揺らし、ぼくの亀頭の熱をその場所で貪り始めている。

「諭良、お尻で気持ちよくなってるの?」

「んん……、わかりません……でも、お兄さんの熱いの、お尻で感じるの、すごく、えっちで……」

「諭良のオモラシが可愛いからこうなってるんだ。……こっち向いて。キスしよう?」

諭良は身体の向きを変えて、ぼくが背中を丸めるまでもなく自ら背伸びして、両手でぼくに抱き付いて唇を重ねて来る。下半身ではじっとりとしたプリントブリーフをぼくのペニスに擦り付けて、その度鼻から声を漏らす。

「ん、にぃ、さっ……」

 でも、キスで感じている。ぼくに特別な技倆があるはずもなく、ただ諭良がいやらしい本質でもってぼくから快感を得ようとしている結果だろう。

 ぼくらのペニスは濡れた布を介して温度を分け合っていた。

「そろそろ出したいな。……諭良、おいで」

ぼくが暖かなタイルの上に仰向けに横たわると、はじめ、諭良は同じ向きに身を重ねようとした。

「そうじゃなくてさ。諭良の可愛いパンツ、ぼくによく見せて」

そう窘めると顔を赤くしてぼくを跨ぐ。「失礼します……」と小さな声で断った。

「いい景色だ。諭良、すごい勃起してる。もう何度もいったのに、全然収まらないね」

「だって……」

諭良はぼくのペニスに頬を当てて、言葉を絞り出す。

「嬉しいんです、お兄さんがぼくの、……恥ずかしい格好見て、こんなに、おちんちん硬くしてくれてるの……嬉しいんです……、しゃぶっても、いいですか……?」

「しゃぶりたいの?」

「はい、お兄さんの精液、飲みたいです……」

「そう。……いいよ、たくさん出してあげる。諭良の恥ずかしい場所にいっぱいイタズラしながらね」

 流斗や昴星に比べ、ぼくと流斗の身長差は少ない。だからこの体位もさほど難しくなく、ぼくは自分の顔を比較的楽に諭良のお尻に突っ込むことが出来る。さすがにもう色の薄いオシッコは、それでもたまらなくいやらしい臭いを漂わせて、諭良の口の中で性器に力をこめさせる。

「んふ、ぅン……」

 ぴちゃぴちゃ、音を立てて行われる諭良のフェラチオは再びぼくの「味」を感じられる喜び、その感謝の気持ちを表現するかのように積極的だ。舌先はカリ首の裏を這い、裏筋を擽り、尿道口に浮かんだ蜜を掬い取る。そして上品な口を大きく開き、深々と咥えて激しく頭を往復させ始めた。じゅっぷじゅっぷと音を立て、その間も舌を絡み付けることを忘れはしないし、手のひらではぼくの袋を優しく撫でさする。見事なフェラチオだ。

「諭良、おいしい?」

「ん、ん、おぃひっ……」

「子供のパンツ食い込ませたお尻の穴ヒクヒクさせてフェラする諭良、すごく可愛い。……いくよ?」

 ぼくが告げると、更にスピードを上げた。こみ上げる熱いの塊をそのままその口へと弾き出すとき、諭良は強く吸い上げたようだ。途方もない快感に、ぼくの頭は微かに意識を薄れさせ、腰は一瞬麻痺する。

「あふぁ……、おにいふぁん、せぇえき……」

 諭良はうっとりと呟いて、こくんとぼくを飲み込む。それから、「ごちそうさまでした……、すごく、おいしかった……」ぼくの身体から降り、身を添わせて横たわる。

「上手だね、諭良は……」

「そう、ですか……? お兄さんが気持ちよくなってくださったなら、すごく嬉しいです」

「諭良はおちんちんもやらしいし、お口もすごくえっちなんだ」

 諭良は恥ずかしそうに、嬉しそうに、ぼくの腕に腕を回す。そして、ぼくの手を熱いブリーフへと導く。

「お兄さんのおちんちん、してたら、どんどん熱くなって……」

「うん、わかるよ。ヌルヌル出てるね」

 それを塗り広げるようにしてあげれば、すでに濡れている場所はますますぬるついてくるようだ。

 このまま射精させても構わない。でも、

「諭良、パンツ脱いで」

 ぼくは起き上がって求めた。「諭良のお尻、もっと見てみたいんだ。いい?」

「ぼくの、お尻……」

 こっくりと頷いて、寝たまま諭良はきつい男児パンツを脱ぎ、四つん這いになった。

「ぼくの、お尻、です」

 たっぷりとオシッコを吸い込んだパンツを諭良に渡して「いい匂いだよ」と言えば、少年は嫌がるそぶりも見せず、それを広げて嗅ぎ始めた。

「ほんとだ……、ぼくの、オシッコ……、こんなかわいいパンツ、いっぱい汚しちゃったんですね……」

 ちょっと待っててねと言い置いて、目的のセットを持って戻ってきたら、諭良はまだひくひくと穴をわななかせながら一心不乱にブリーフの臭いを嗅いでいるところだった。

 湿った谷間を広げて、持ってきたローションを垂らす。

「んっあッ……」

「冷たいけど、ちょっとだけガマンだよ」

 まだ一度も、何かが入ったことはない穴だ。

 しかし、あれだけ太いものをひりだした場所だ。再びの産生に備えて、洗面器を引きずり寄せて足の間に置く。……人んちのものだけど、この家にも漂白剤はあるだろうと思って。

 ぼくが指を挿し入れた途端、

「あ、はぁあああっ!」

 背中を弓なりに逸らして、諭良が叫ぶ。指一本、痛みはそれほどでもないはずだ。それよりも、

「お、ひりっ、おひりにっ……!」

 肛門に自分以外の指を挿入されるということが、諭良には相当に衝撃的な事態だったらしい。

「そうだよ、……諭良のお尻の中にぼくの指が入ってる」

 緩やかに、でもためらうことはなく、ローションを纏わせた指を痙攣する括約筋をはぐらかすように往復させる。奥まで挿入すると指の先が塊にぶつかる。さっき城址公園の林の中で漏らしたときのように緩かったらちょっと始末に困るなとは思っていたけど、今度はまた健康的なものがおりてきているようだ。腸内で物体が逆流するような感覚に、

「うんちぃいっ、うんち出ちゃいますぅううっ」

 諭良は声高に排便を宣言する。

「ガマンできない? 君より小さい子だってもう少しはガマン出来るのに」

 そりゃ、流斗はぼくにこうされることを望んで、予め準備していた。

心身ともノーガードのノーマークという状態でいきなり挿し入れておいて、我ながら意地の悪いことを言うものだ。

「はひっ、も、っ、無理ぃっ、漏れひゃっ、うんひもれひゃっ」

 指の侵入を拒むように塊が押し返して来る。ぼくが素直に指を抜いた途端、

「んはぁあああ……!」

 勢いよく、流斗の肛門は洗面器へと便を落下させた。タイルに雨の降る音もするから、同時に少量の尿も零しているらしい。

「は……、はひぃ……」

 膝を降り、お尻だけ上げた格好で諭良はぱっくり開いた肛門をぼくに見せびらかしていた。出たものが健康的で、また勢いもよかったからだろう、肛門周辺は綺麗なままだ。ローションが内側で細かく泡立っているのが見える。

「まだいっぱい出るね、諭良のうんち」

「はっ、……はっ、ぼ、くの……っ」

 諭良はどうにかこうにかぼくを振り返る。ぼくは諭良の中に入っていた左の人差し指を立てて見せる。愕然とした表情が、これだけ乱れてもまだ残る少年の年相応な部分の存在を証明しているようだった。

「ぼくの……、お尻に、指を……?」

「うん、そうだよ。……諭良は知らない? 男の恋人同士がどんな風にして遊ぶか」

 その表情の変化は紅葉よりも鮮やかなものだ。

「恋人……」

「そう、恋人同士。……諭良のお尻の中にぼくの入れて、一緒に気持ちよくなれたらいいなと思ったんだけど」

 諭良の肛門はまだ開いたままだ。ほんのり赤くなって、それがまたいやらしく見える。

 昴星と、流斗と。二人の少年とそういうことをして来たから、ぼく自身、これまではほとんど考えもしなかったことをあっさり選択肢の中に含めるようになっているようだ。それは決して好ましいことではない。

 わかっている。諭良の表情には好奇心が混ざっていたが、ぼくまでそれに乗じることは、大人失格、そしてこの子を可愛いと思う男としても許されることではない。

「……お兄さんは、他の子と、そういうこと……」

「うん。……でも、そうだな、今日はしない」

 ぼくはあっさりと引き下がった。そうするとそれ以上の距離、諭良はぼくを追いかけて来るようだ。

「えっ……」

「他の子たちとここを使って遊ぶようになるまでに、ぼくと彼らはもっといろんなことをして来たし、……ぼくと諭良がこうあう関係になってから、まだ二回しか会ってない。だから今日はしないよ」

 諭良は、まだ見ぬ昴星と流斗への嫉妬を濡れた双眸に漲らせた。でも、ぼくは「今日はダメ。……その代わり、彼らには滅多にしないことをしてあげよう」

 仰向けになって、と言ったぼくに、まだ未練を残すようにお尻を向けていたが、やがて諦めたように、……ほんの少し安堵したように、仰向けになる。諭良のおちんちんはまた皮を伸ばして縮んでいた。やっぱりちょっとは痛かったに違いない。

「あの……、他の子に、あまりしないことって……?」

「期待してるの? おちんちんはおとなしくなってるけど」

 諭良は目を泳がせて、相変わらず勃起状態のぼくの性器にその視線が当たるたび、微かに唇を震わせる。

「時々、頼まれるんだけどね。でもぼくは綺麗な子の顔や身体を汚すのが悪い気がしてなかなかしてあげられないんだ。……でも諭良は変態だもんね、汚れるのなんて何とも思わないみたいだからさ」

 諭良の包茎に、再びの力が篭り始めた。

「もう何されるかわかっちゃった?」

 こくこくと頷いて、

「ぼくっ、変態なので、汚されるの好きですっ、お兄さんに汚されたいですっ」

 身を起こし、はしたなく求め始めた。

 ぼく自身、この行為は性欲とは無関係。ただ昴星たちはときどき求めて来る。二人と違ってそうのべつまくなしに出せるもんじゃないし、ぼく自身、こんなところを見せるのは正直恥ずかしくもあるので。

「あ……っ、あっ……ああっ」

 でも、諭良は大喜びだ。

「お、お兄さんのオシッコっ……、お兄さんのオシッコかけられてる……!」

 はじめ、ちょろちょろと。でもすぐに確かな勢いを伴って細い身体に降りかかるぼくの汚水を、両手を掲げて受け止める。足の間の包茎ペニスはもうすっかり勃ち上がって、汚されることの喜びを表現していた。

「あ、ぶぁ」

 顔目掛けてかけてやれば、喜んで口を開け、喉を鳴らして飲み込んでいく。まずいに決まってると思うのだけど、この子はそれを、この子自身のオシッコのように甘美なものと感じてしまう舌を持っているのかもしれない。

 膀胱に溜まっていたストックが少なくなって来た。美しい肢体はまるで、

「便器になったみたいだね」

 と言葉にした通り。でも便器に手足は付いていないし、その手でおちんちんを扱いたりもしないものだ。

 諭良は顔に浴びるだけでは満足できなくなったように、身を乗り出して放水を続けるぼくのペニスに顔を寄せ、嬉しそうに浴び、まもなく直接口を付けた。その頃にはもう、さすがに勢いもなくなったそれから、一滴でも多く飲み込もうと吸い上げる。

「もうおしまいだよ」

 ぼくが咎めても、口は止まらない。今度はまた、違う液体が欲しくなってしまったに違いなかった。

 膀胱の中身は打ち止めだけど、精巣はまだ余裕がある。諭良が繰り返し見せてくれる痴態によって、「貯金」があるとさえ言っていいかもしれない。

 犬食い、という言葉がある。口だけでぼくを愛撫する諭良の姿はまさしくそれで、右手は忙しなく、ただでさえ伸びている自分のおちんちんの皮をもっと伸ばしてしまうように扱き、左手は自分の身体に振りまかれた汚水を染み込ませるようにお腹を胸を撫で回している。

「ぼくの出るまでガマンしなきゃダメだよ? 諭良の一番美味しいものが出るまで」

「んぅ」

 右手を止める。それは健気な努力に見えた。しかしそれほど猶予は残されていないらしく、諭良は自分の茎を離した右手をぼくにあてがい扱きながら口を使う。そうすることでぼくを一刻も早い射精に追い込もうとする。

 ぼくの汚水を浴びることで、ぼくの精液を飲むことで、より悦びの高みへと上り詰めようとする、美少年。

 ぼくは諭良の変態性欲を賞賛するような気持ちで、その口の中へ精液を注ぎ込んだ。

「んぅうう」

 諭良が口を離し、もごもごと口の中に放たれたぼくの精液を味わうように咀嚼しながら右手で再び自分のおちんちんを握り込む。喉を鳴らして飲み込んだときには、また「撮影」されているときのように酔い痴れた表情へと変じていた。

「んはっ、はぁっ、お、にぃさんのせぇえきっ、おひっこ、っ」

「ぼくのトイレになってそんな感じてるんだ。そういうのなんて言うか知ってる? ……肉便器って言うんだ」

 ちょっと、違うか?

 でも諭良は心底から嬉しそうに頬をほころばせる。

「嬉しいんだ? ……ほんとに諭良は変態だなぁ。トイレがわりに使われて嬉しいだなんて」

 どうだろ。ぼくの「言葉責め」も少しは板に着いて来ていたらいいのだけど。

「ん、っ、ぼくっ、お兄さんの、お兄さんの肉便器っ、お兄さんのっオシッコもらえてうれしい変態っ……、もっあっ、出っ、出ちゃうぅっ」

 さすがにね、もう、これだけ射精した後だから。ビリビリと震えた諭良のおちんちんの先からは、ほんの僅かしか精液は出てこなかった。だらしない皮の隙間からトロトロと、洗面器の中へと糸を引いて零れ落ちるのみ。

「あはぁ……、出ちゃった……、お兄さん、ぼく、自分のうんちに、せーえき、かけちゃいました……」

「そうだね。諭良のトイレはその洗面器だ。ぼくといるときはトイレなんて行っちゃダメだよ? パンツの中か洗面器に出さなきゃね。諭良みたいなだらしないおちんちんした子には人間用のトイレなんてもったいないからね」

「はい……、ぼくの、おトイレ……」

 人間未満の扱いを受けて、それでもうっとりと微笑む諭良の顔は、どこまで崩れても美少年。……困ったものだなあ、なんてぼくは思う。

 ゆったりと余韻に浸りたいところではあるけれど、もうずいぶん遅い時間、日付が変わって久しいし、諭良の身体はぼくが放ったもので臭い。せっかくお風呂を沸かしたところでもあるし、ひとまずこの夜は終わりということにしなくてはならない。諭良の精液も、もう出ないみたいだし。

 でもぼくがお風呂の中で諭良をもう一度可愛がることになったのは言うまでもない。濃密な……、むせかえるぐらい濃密な夜を過ごして、ぼくはそのまま諭良のベッドで一緒に寝た。

 

 

 

 

「ん……」

 睡眠時間は短かったはずなのに、目覚ましがなる前にぼくが目を覚ましたのは、自分の下半身に違和感を覚えたからだ。

 ……冷たい。

 どきりとして飛び起き、布団を捲る。

 大きな水たまりにぼくの腰は半ばまで浸っていた。隣に寝ていたはずの諭良はいなくて、寝る前に穿かせた白ブリーフはぐっしょり濡れて床に置かれている。

 諭良がオネショをしたのだろう。……自分じゃなくてよかった。さすがにこの歳でそんなこと、するわけにはいかない。

 では諭良は何処へ行ったのか。ベッドから降りたぼくが濡らされてしまったトランクスをひとまずどうにかしなくちゃと向かった浴室に、……諭良はいた。

「んっ……ふぅう……ぅン……」

「……なにしてるの?」

 って、我ながら馬鹿なことを訊いてしまったものだ。

 だって、見ればわかる。

「あ……、お兄さん……、起こしちゃい、ましたね……、ごめんなさい……」

 洗面器を足の間において、お腹に力を入れて。

 覗ける穴は既に口を広げ、硬質な黒褐色の物体に顔を覗かせている。

「お兄さんの、お言い付けの通りに、ぼく、おトイレ……。パンツの中と、洗面器にしか、してません……、んっ……んンぅ」

 伸びた自分の便を、それだけでもぼくの家の、昴星たちが大便器代わりに使うあれがいくつも変えそうな白い洗面器に横たえて、諭良は笑う。当然のように、皮余りのおちんちんに上を向かせながら。

「お兄さんも、朝だから、オシッコ……、溜まってますよね……?」

まだ拭いていないお尻を引き寄せた腰掛けに乗せて、諭良は両腕を広げて、

「ぼく、お兄さんのおトイレです、……お兄さんの朝一番の濃いオシッコ、ぼくにぜんぶ出してください……」

 諭良は嬉しそうに求める。その目はぼくの、夕べあれだけしたのにまだ満ち足りない素ぶりを見せるペニスに欲深な視線を送っているのだった。


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