おれぜんぶバレたとおもって

 寒くなってきたなあ、と思うのが十一月なら、寒いよなあと思うのが十二月。師走という言葉の通り何となく気ぜわしい日々で、ぼくの仕事はよく考えれば季節の割り振りで仕事量が変わることのないものなのだけど(研究所だし)やっぱり何となくそわそわしがち。加えて「忘年会」なるイベントが我が物顔で予定を塞いでくれるもので、時間的にも経済的にも余裕がなくなりがちだ。

 それでも土日はきちんと休めるし、そのどちらかを使って昴星か流斗に会えるのだから、ぼくは多いに恵まれた労働者であると言える。

 安アパート住まいなもので、家の中でも朝は息が白いほどだ。西向きの部屋であるから、朝は青いばかりで陽射しはまるで入ってこない。寒い寒いと震えながらひとまずお湯を沸かしてコーヒーを飲んだりパンを焼いて食べたりして、ぼくの土曜が始まる。今日は昼に昴星と流斗が揃って来てくれるから、それまでに洗濯や掃除は済ませておこう。二人が揃うのはあの旅行以来のことで、久しぶりだ。

 午前のうちに家事を済ませて、買い物袋をぶら下げて急ぎ足にアパートに戻る途中、

「お兄ちゃん!」

 と流斗の声が飛んで来た。振り返れば、昴星も一緒だ。多分、二人で夕べから才斗の部屋に泊まっていたのだろう。流斗はふわふわの毛糸のマフラーを巻き、黄色いジャンパー、でも下は膝丈の半ズボンだ。白いソックスが覆う脛は相変わらず細い。昴星は上下スウェットに丈の長いウインドブレーカーを羽織り、そのボタンを上から二つ目まで外している。

 白い息を弾ませて駆けて来た二人の少年は、春夏秋冬変わらず愛らしいぼくの天使たちだ。どーん、と流斗がぼくの腰にまとわりついた。

「早かったね」

 とぼくが言うと、

「うん、お兄ちゃんとこ早く来たかったから」

 流斗は可愛い答えをもたらす。ぼくだって一分でも早く二人に会いたかったし、一分でも長く一緒にいたいと思う。

「お昼は食べて来たの?」

 うん、と昴星が頷いた。「お昼ってゆーか、遅い朝ごはん食べた。ちょっと寝坊したからさ」

「昨日の夜、おそくまで起きてたからね」

 なるほど、才斗と三人でたっぷり遊んだんだろう。でもそれだけで飽き足らずに来てくれるのだから、ありがたいことだ。

 部屋に招じ入れるなり、二人は上着を脱ぐ。流斗はお泊まりセットの入ったカバンを持ち、昴星は近所だから手ぶらだ。三人でしばらく、もう二ヶ月経ってしまったあの温泉旅行についておしゃべりを楽しんで、話の流れからあのとき撮った動画を見返したりしているうちに、ぼくのジーンズの中はあっけなく窮屈になったし、二人も遊びへの欲は募り出したと見える。

 頃合いを見て、

「二人は、今日はどんなパンツ穿いてきたの?」

 とぼくは訊いた。

「ヘンタイだなー。こんだけおれらのちんこ撮ったの見たのに、本物見たいのかよ」

昴星は笑うが、流斗は率先するかのように立ち上がって、半ズボンのボタンを外し、

「今日のはねー、こんなの!」

一気に膝まで下ろした。

「おお……」

 という、説明しがたい声がぼくの口からは漏れた。

 汚れてはいない、清潔感のあるブリーフである。が、心なしかサイズが小さく見える……、動画を見てえっちな気持ちになっている分を差し引いても、窮屈そうだ。

 加えて、キャラクターのプリントがなされている。ただしそれは、やや色あせているけれど。

 白いウエストゴムのところに、「2−1 まきさかりゅうと」と学年組名前が油性ペンで書かれているが、だいぶ色が薄くなっている。

「かわいいでしょ。ぼくが二年生ぐらいのときにはいてたパンツだよー」

「へえぇ……」

「お尻はね、こんなふう」

 ぼくに向けて突き出す小さなお尻、やっぱり少し小さいサイズで、プリントされたアニメキャラクターは上下左右に引き伸ばされている。

「お兄ちゃんと知り合ったの、夏だったでしょ? だからお兄ちゃん、ぼくたちのちっちゃい頃のこと知らないから、教えてあげようよって昴兄ちゃんに言ったんだよ。おうちの押し入れの中にちょびっとだけ残ってたから持ってきたの」

「じゃあ……、昴星も可愛いの穿いてるの?」

 昴星は立ち上がり、「可愛いかどうかはわかんねーけど……」と前置きした上で、スウェットを腿まで下ろす。流斗とは異なり、いわゆる「白ブリーフ」だけど、左前に小さくUFOのワンポイントがあしらわれている。

「昔のなかったから、去年まで穿いてたやつ。まだ才斗とこうゆうことし出したばっかりぐらいのとき穿いてたけど、そんときから結構ゴムんとこかゆかったりしたからあんま穿かなくって、タンスの奥に入れたまんまだった」

 なるほど、昴星の体型がいまのようにふっくらもちもちしたものになったのは、ここ最近のことなのか。確かにウエストゴムは昴星の下腹部にきゅっと食い込んで見える。

「……やっぱおれ太ったかなー……」

 とお腹に手を当てて昴星は呟く。

「着やせ」という言葉がごくしっくりくるような昴星の体型だ。服を着ているときには、そのお腹や胸のほのかな膨らみは全く目立たず、むしろ手足の細さに目がいってしまうのだが。

 と言っても、ほんのりぽっちゃりしているだけだ。指数的にどうかはわからないけど、「太っている」という言葉には語弊があるように思う。

「二人とも、すごく可愛いね」

 心の底からの感想を、ぼくは述べた。

「でも、ぼくたちもうこのパンツはいてた頃より、ずっとずっと大人だよ」

 窮屈そうなパンツの前をひと撫でして、流斗はほんの少し誇らしげに言う。

「だって、おちんちんからせーしいっぱい出せるようになったんだもん。ね、昴兄ちゃん」

「まー、おれはこのパンツの頃にはもう射精してたけど」と前置きして、昴星は流斗に同意する。

「でも、おにーさんともともだちになったし、あの頃よりもっと色んなこと出来るようになったから、大人だと思う」

 ぼくの立場からは、二人ともその幼さが何より可愛い子供なのだけど、ひとまず二人の自覚意見には同意することにした。

 部屋は、二人が遊びにくることを見越してあらかじめ温めてある。二人ともなんのためらいもなくパンツ一丁になってくれた。けどぼくは、「靴下は脱がないで」とリクエストをしてみた。

「ん? なんで?」

 昴星は黒と紺のチェックのスニーカーソックス、対して流斗は先述の通り白いソックス。

「うーんと……」

 格好つけたってしょうがない。

「そっちのほうがえっちに見える、からかな」

 正直にぼくは言った。実際、そういう風に見えるのだから仕方が無い。

「そうかなあ? 裸に近いほうがエロい気ぃするけどなー……」

 昴星は首を捻りながら、流斗は素直に、もう片方脱いでいた靴下を履き直す。

 パンツ一丁にプラス靴下の美少年二人が完成した。

「じゃあ、……どうしようか。オシッコしたい?」

 ぼくの問いに、流斗は「うん!」と頷く。昴星は「おれはまだあんま出ないかなー」と答えた。

「じゃあ、流斗だけ先にオシッコしようか」

「うん。さっきからずーっとしたかったよ」

 浴室は寒い。だからオネショシートを押し入れから引っ張り出して、その上に流斗を立たせる。「靴下、濡れちゃっても大丈夫?」

「うん、白いくつしたたくさんあるから、汚れても平気だよー。それより、ね、お兄ちゃん」

 流斗はアニメキャラクターのプリントブリーフの、勃起の収まりつつある股間を両手の指で丸く囲って、「もうちょびっとだけガマンするから、ぼくの子どものころのパンツ、とってほしいな。ちっちゃいころこのパンツすごいお気に入りだったから……」

 ぼくは急いでデジカメを引っ張り出して、男の子らしいパンツ姿の流斗の、「子どもの頃(繰り返しになるけど、いまだって子供だ!)」のブリーフを観察するように撮影する。きちんと洗濯して畳んで、それから押し入れの中にしまったのだろう。古びた下着ではあるはずだけど、汚れは全くない。

 ただ、いまの流斗にはやはりサイズが小さいのだろう。タマタマを収める部分には隙間が空いてしまっていて、角度によっては中が覗けてしまう。ぼくが其処にレンズを寄せていることに気づくと、流斗は微笑んで窓からタマタマごとおちんちんを取り出して見せた。

すぐに勃起する。

「えへへ。こんな子どものパンツ穿いておちんちんおっきくしちゃった……」

「すげーエロいなー。流、二年の頃なんてすげー真面目でいい子だったのにな」

 笑って言う昴星に、「いまだっていい子だもん」と言って、元の通りに収める。さすがにウエストゴムから先っぽが顔を出すということはない。目をつぶって呼吸を整え、「おちんちんちっちゃくするから、その間お尻もとって」とこちらにお尻を向ける。食い込みがきついせいで、やたらにセクシーだ。足の間からぼくを覗いて愛らしく流斗は微笑む。細い足にぴったりのソックスも、ぼくが期待していた通りの効果を発揮している。

「うん、もうだいじょぶ」

 言葉の通り、振り返った流斗のブリーフのふくらみは元通り、楚々としたものに戻っていた。

「どんなこと考えて小さくしたんだ?」

「んーとね、このパンツはいてたころのこと思い出してた。おちんちんがこんな気持ちいいところってまだ知らなくて、オシッコはちゃんとガマンしなきゃいけないんだって思ってたころのこと」

 まあ、それはいまでもしなきゃいけないんだけどね。

 ぼくは写真からムービーへモードを切り替えた。改めてカメラを向けると、

「はじめまして」

 とにっこり笑って、「○○S学校二年一組の、まきさかりゅうとですっ」と、おりこうさんの自己紹介をする。一瞬面食らったが、すぐにぼくは流斗の意図するところを理解した。

「こんにちは、流斗。はじめまして。……これからカメラの前でオシッコしてくれるんだよね?」

 えへへ、と流斗ははにかんだように微笑んで頷く。

「こんなこと、はじめてだよー。オシッコはおトイレでしなきゃいけないのに……」

「でも、いまだけはパンツ穿いたままでしていいんだよ。みんなにはナイショだからさ」

「うん……、恥ずかしいけど、オシッコ、するね……」

 流斗は「二年生のときの流斗」になりきっている。……初めて会ったとき(つまり、ぼくが見事にだまされてしまったときだ)もそうだったけど、この子は本当にそういう演技が得意だ。あのときは何せ、名前さえ違っていたのだから。

「あ……、あ、オシッコ……、出る……」

 ごく、とぼくのすぐ隣で昴星がつばを飲み込む音がした。遅れて流斗の可愛いブリーフの中から漏水の音が始まる。

「ふあ……、オシッコしてる……、パンツ……、ビチョビチョになっちゃう……」

 想像していたとおり、普段より内腿を伝う液の量が多い。流斗の華奢な足を垂れて、白い靴下をも濡らして行く。オシッコは「ガマンしてた」という言葉の通り色が濃く、美しい金色だ。

「どんな気持ち?」

 ぼくは訊いてみた。

 流斗はぼんやりとした顔で自分の下半身からあふれ続ける黄金水を見下ろしながら、困ったように「やっぱり、はずかしい……」と唇を尖らせる。

「でも、ガマンしてたんだよね? いっぱいオシッコすると、きっとすっきりして気持ちいいんじゃないかな」

 重ねて問うたぼくに、ためらいがちにこっくりと頷いた。

 やがて長い放尿は終わり、流斗はぶるっと震えて、おずおずとカメラに目を向ける。

「全部出た?」

 ぼくの問いに、またこっくりと頷く。

「そしたら、流斗。おちんちん出してごらん。いまから黄色くないオシッコの出し方を教えてあげる。ガマンしてたオシッコ全部出すよりもっと気持ちいいことだよ」

「きもち、いいこと?」

「うん。流斗は気持ちいいこと知りたくない?」

 酔ったみたいな赤い頬で、「しりたい……」と流斗は答える。それから、まだ小さなままのおちんちんを窓から引き出した。

 ぼくは手を伸ばし、オシッコで濡れたおちんちんを摘まんだ。まだマシュマロみたいに柔らかくて、いとおしい手触りだ。

「んぁ……、お兄ちゃん、オシッコついちゃうよ……」

「平気だよ。流斗のオシッコは汚くなんかないんだから」

 指先で流斗のおちんちんを優しく揉み、いつかのように、快楽や幸福を教え込むように愛撫する、……まさしく、愛を込めて。

「ほら……、硬くなってきたね」

 とろんとした目で流斗は自分のおちんちんを見下ろして、こくんと頷く。もともと純粋で穢れない瞳が一層イノセントなものになっている。

「今度は自分でやってごらん」

「じぶん、で……」

「うん。ぼくがいまして見せたみたいに、おちんちん摘まんで動かすんだ」

「二年生の」流斗は素直にぼくの言葉に従った。普段よりも、どこかおぼつかない指先で勃ち上がった自分の短い茎を摘まんで、くにゅくにゅと動かし始める。

「んぁ……」

 声が、あふれる。

「気持ちいいでしょ?」

 ためらいがちに、流斗は頷く。尿に濡れた小さなブリーフはそれだけで流斗の喜びとなるはずだ、ぼくに撮られながらなら尚更に。でも何より、「二年生なのにこんなことしてる」自分というものに、強い興奮を催しているに違いなく、そういう流斗の姿はたまらなく愛らしい。

「おちんちん……、すっごく、あつくなってる……」

 流斗の手は止まらない。徐々にスピードを上げ、欲情を自らの手でヒートアップさせていく。

「あう……、きもちぃ……、おちんちん、きもちいぃよ……」

 うっとりと声を揺らし、膝を震わせながらオナニーを披露する「二年生」の流斗の姿に、ぼくも激しい興奮を抱く。もう、ジーンズの中が窮屈でたまらない。けれど、いまは流斗のためにじっと堪えて撮影に集中するのだ。

 気持ちまで薄汚れていることは自覚するけど、芸術家みたいだ。少年の美貌を余すところなく撮影することに神経を研ぎ澄ませている。

 もっとも、流斗の可愛さをぼくなんかがうまく撮れるはずもないのだけど。

 扱くたびに、オシッコでおちんちんをくちゅくちゅと鳴らしながらの流斗のオナニーが間も無くクライマックスに達する。

「んぁうっ、おにいちゃっ、なんか……、なんかれちゃうっ」

 怯んだように声を上げて、流斗はずっと添えていた手を離した。

 幼樹はしばらくビクビクと震えていたが、……やがて皮の隙間から白い濃密な樹液をとくとくと湧き出させ、長い糸を引いて足元へと垂れ落として行く。流斗はしばらくぼんやりとそれを見たまま、余韻の震えを身体に走らせた。

「オシッコ……、白いオシッコ、出た……」

 ぽつりと、カメラに向けて言う。

「流斗が大人になった証拠だよ」

 流斗はまだ夢見心地の中にいるみたいに、ぼんやりと頬を上気させて、「でもまだ、ぼく、二年生だよ……?」と訊く。

 ぼくは撮影を止めた。

「すっげー……」

 ずっと黙っていた昴星が、圧倒されたように言った。ため息混じりに「見てて、何かさ、ほんとに二年生の、こんなことやっちゃいけない子供におにーさんがイタズラしてるみたいに見えた」と感想を述べる。

「えへへ」

 と「四年生」に戻った流斗は笑う。どこか、満足げに。

「次は昴兄ちゃんのばんだよ。昴兄ちゃんもちっちゃい子になって、お兄ちゃんにいっぱいかわいくとってもらおうよ」

 流斗のすすめにも、昴星は「うーん」と唸る。何やら気乗りしない様子だ。

「撮られるの、嫌かい?」

 ぼくが訊けば「んーん」と首を横に振る。

「撮られんのは別に、やじゃないよ。……恥ずかしいけど、おにーさんがあとで見て興奮してくれんなら、それはうれしいし……」

 優しい子だ、いつものことではあるけれど。

「でも、あのさー……」

 昴星は足元に視線を落とし、おずおずと、ちょっとの逡巡を見せてから、

「靴下、は、脱いじゃだめ?」

 上目遣いに、ぼくに言う。

「靴下?」

「うん。……これさ、まだおろしたばっかで、柄もわりと気に入ってるやつだから、汚しちゃうのはやだなって……」

 なるほど、そういうことだったのか。

「じゃあ、くつしたぬらさないようにしたらいいんじゃない?」

流斗はあっさりと言う。

「ムリだろ、だって、……オモラシしたら足まで濡れちゃうじゃん」

「だから、立ったままオモラシしなきゃいいんだよ。ね、お兄ちゃん。今度はぼくに昴兄ちゃん撮らせて」

 オモラシパンツに精液の滴るおちんちんをしまって、流斗がねだる。

「いいけど、……どうやって?」

「うん、あのね」

 流斗が背伸びをしてぼくの耳を求めるなら、ぼくは背中を丸めて耳を済ませる。

「ああ……、そういうことか」

「ね」

 企みごとを秘めているなど考えもつかないような透明な微笑みで流斗は言う。頭のいい子だ。この子がその頭脳を何か別のことへと発揮することを思いついたなら、世界は少し変わるかもしれない。

「よいしょ」

「わ!」

 ぼくは断りもなく、昴星を後ろから抱え上げた。

 ただ抱っこするのでは、もちろんない。むっちりとした太腿に手を入れて、上体をそのまま。

「こっ、これって……」

 そう、赤ちゃんにオシッコをさせるポーズだ。しゃれた靴下を履いた両足はブリーフよりもずっと高い位置にあるから、内腿をオシッコが伝って靴下を汚してしまうおそれはない。ぼくの足元はすこしばかり濡れるかもしれないが、惜しむような靴下ではもちろんない。

「じゃあ、とるよー」

 流斗が動画の撮影を開始した。昴星の身体がじんわりと暖かくなるのが、セーターを着ていても伝わってくる。

「自己紹介して」

 流斗は昴星の足の間から見上げるように撮りながら命じる。昴星はほんの少し震えた声で、

「鮒原昴星……、えっと、……四年生、です」

 最後に穿いたのが五年のとき、だけどこのUFOのブリーフを一番多く穿いていた時期に、昴星は立ち返る。

「四年生なんだ、じゃあぼくとおないどしだねー」

 逆に撮影を終えた流斗は既に自分本来の年齢に戻っている。「昴星くんのパンツ、かわいいね。これからお兄ちゃんに抱っこしてもらいながらオモラシするんだよね?」

 流斗の問いに、こく、と昴星は頷くが、その角度は浅い。

「昴星くんは、毎日オネショしてるんだよね?」

「ま、毎日はしてない……」

「ほんとに? じゃあ、けさはしなかったの?」

 昴星の肌がもう一段熱くなった。「今朝は……、しちゃった、けど……」

「へえ。ぼくもうオネショしないよ」

 流斗は昴星より膀胱の管理能力が高い。だから流斗がオネショすることがあるとすれば、それは当人が意図的にしたときをおいて他にない。

「赤ちゃんみたいだね、ポーズも、おちんちんも」

 ふに、流斗の細い指が縦長楕円の膨らみをからかうように押した。

「ぼくの方が昴星くんよりおとなのおちんちんだから、これからオモラシ見せてくれたらごほうびに、きもちいいこと教えてあげる。昴星くんもきもちいいこと知りたいよね」

 流斗は昴星と「同い年」の立場を楽しんでいるみたいだ。ぼくはしっかりとした重量感のある昴星を抱いたまま、流斗の演技能力は天性のものなのだろうと考えている。

「じゃあ、昴星くん、オモラシしてみせて。いっつもおふとんの中でしてるから出来るよね?」

 先程はまだ余裕のある膀胱でいた昴星だけど、そろそろ尿意も高まっているはずだ。実際、

「あ、音してる……」

「昴星くん」のブリーフの中からは、ごくスムーズにせせらぎの音が響き始めた。はじめはためらうようにゆっくり、すぐに確かな勢いを持って。

「わあ、すごいすごい、昴星くんのパンツどんどん黄色くなってくねー」

 ぼくからは、その様子は見えない。だけど後で流斗が撮影してくれているこの動画をじっくり楽しめばいいだけのことだ。

「ね、昴星くん、起きたままオモラシするのどんなきもち?」

 放尿中の昴星に、流斗は意地悪く訊く。

「ど、どんなって……」

「ほんとに赤ちゃんになっちゃったみたいなきもちにならない?」

 昴星は答えられない。流斗のようには上手く「演技」することが出来ないから、ボロが出ないようにするだけで精一杯なのだろう。

 ぶるっと昴星の身体に震えが走った。足元の水たまりに靴下を濡らさないように下ろした昴星は、後ろ手で身体を支え、しどけなく足を広げて流斗を見上げている。

「いっぱい出ちゃったね。すっきりした?」

流斗の問い掛けに、昴星は頷くだけだ。反応そのものは、先程の流斗と遜色ないほどに初々しいもの。

 しかしブリーフの前はすっかり尖ってしまっている。

「昴星くんのオシッコはぼくのよりくさいね。色も真っ黄いろ。だっこしてもらったままオモラシしちゃったから、お尻のほうまでびちょびちょになっちゃったね。……それなのに昴星くん、おちんちんおっきくなっちゃったの?」

「あ、う、……こ、これはっ……」

「赤ちゃんなのにおちんちん硬くなっちゃうなんて、昴星くんはすっごいえっちなんだねぇ。おちんちん見せてー」

 流斗の声はいつもの通り穏やかで柔らかい。

 しかしいまの「昴星くん」にははっきりと、力感を伴って響くはずである。ぼくは昴星が操られるように自分のブリーフの前を開けて、ピンと勃起した茎を取り出す。

「わー、元気いっぱいだねぇ。オモラシしてきもちよくなっちゃうなんて、いけないんだよー」

 不意に、はい、と流斗はカメラをぼくに渡す。

「ん?」

「ちょびっとだけ持ってて」

 そう言い置いて流斗は自分のカバンから携帯電話を引っ張り出す。おや、と思う。この間までは折りたたみ式の携帯電話だったけれど、スマートフォンだ。

「お兄ちゃんにお勉強見てもらってたくさん百点とったから、おかあさんにお願いして買ってもらったの」

 もともと、素晴らしく頭のいい流斗であるし、ぼくが教えた回数なんてそう多くもない。のだけど、そのご褒美としてそんないいものを買ってもらえたのだと言うなら、ぼくとしてもそれは一緒に嬉しく思えばいいことだろう。

 つい、つい、と画面をスワイプ、それからタップ。操作はもう、手慣れたものだ。きっと流斗も、「昴星くん」のムービーを撮りたくなったのだろう。

 けれど、流斗はぼくを手招きして、「お兄ちゃんはぜったいに声だしたらダメだよ」と囁く。

 ぼくを脇に置いて、

「はい、昴星くん」

 と流斗はディスプレイを昴星に向ける。ぼくには何が映っているのか把握することは出来なかった。

「げっ……」

 そんな声を、昴星が上げた。同時にぼくの耳に届くのは、少女の笑い声。

 ……どこかで聴いたことあるような。

「見えるー? 昴星くんだよ。昴星くん、この間は六年生のお兄ちゃんって言ったけど、ほんとはぼくと同じで四年生なんだよー」

「やっぱりー? 六年生にしてはちっちゃいなーって思ったもん。ね、セイラ、そうだよね」

 ……チヒロ。先日昴星に恥ずかしい思いをさせるために流斗が呼び出した少女二人のうち、片方だ。

「それにさ、六年生でオネショするなんて聴いたことないもん。四年生だったらたまになら、いるのかもしれないけどー」

「なっ、なっ、なんでっ……!」

「四年生の昴星くん」は半ばパニックで、ガクガク震えながら、おちんちんを隠すことも思いつかない。ただ、まだカメラは昴星の顔に向いている。

「っていうか、流斗たちいまどこにいるの?」

「今日はね、昴星くんにぼくんち来てもらって、一緒に遊んでるんだよー。ぼく、昴星くんと二人でおちんちんとかオシッコとかで遊ぶの大好きだから、いまも一緒にオモラシしたとこ」

 流斗は自分のびしょ濡れ下半身に内側カメラを向ける。

「いっぱい出ちゃった」

 と、言わずもがなのことを言う。

「でね、いま昴星くんもオモラシしたとこだから、お姉ちゃんたちに見せてあげようと思って」

 恐ろしいことを思いつくものだ……。この間ぼくが「こういうことをしてはいけない」と叱った女子二人が相手だから、「お兄ちゃんの部屋」と言うわけにはいかないし、ぼくがフレームインするのもまずいわけだ。

「えー、昴星くんまたオモラシしたのー?」

「うん、ぼくが先にして、昴星くんもいましたばっかり。びちょびちょですっごいくさいよ」

 ひょい、と流斗がスマートフォンの角度を 変えて、再び昴星へ向ける。……今度は、「びちょびちょ」の、UFOブリーフを穿いた下半身へ。

「うあ……」

 昴星は、隠すことも出来なかった。平均よりややふっくらとしたお腹も、その下、ブリーフから覗いて、……しかしすっかり縮み上がってしまったおちんちんまでも。

「あはは、ほんとだ超くさそう。っていうかパンツ真っ黄色になってんじゃん! ほら、セイラも見なよー」

 流斗のスマートフォンから「あたしはいいよ……」なんてためらう声がする。が、セイラも異性の性器への興味は押しとどめられるものではないらしく、結局覗いてしまったのだろう。「……くさそう……」と昴星の心をいたく傷つける感想を漏らした。

「でね、これから昴星くんが二人にせーし出すとこ見せてくれるんだってー」

 信じられない顔で昴星は流斗を見る。怒るとか怒らないとか、それ以前の問題として、言葉の意味に仰天し切っているのだろう。

「ねー、流斗、いまさ、うちのイトコ来てるんだけどその子にも見せていーい? あたしたちとタメの女の子」

「んー……、どうしようかなー。いまも見てるの?」

「んーん、さっきトイレ行って……、あ、戻ってきた。いいでしょ?」

流斗は一旦昴星からカメラを自分に向けて、

「その子はちゃんとヒミツ守れるの? ぼく、チヒロねえちゃんとセイラねえちゃんはやくそく守ってくれるって信じてるからおちんちん見せてあげてるんだけどなー」

 と試すように訊いた。

「大丈夫だよ、ちゃんと言って聴かせるしさ」

「じゃあ、そのおねえちゃんにかわってくれる?」

 ねえ、誰と話してんの、と新しい声がする。どうやらあちらはパソコンのようだ。チヒロがその「イトコ」に代わったのだろう。

「はじめまして、牧坂流斗です。四年生だよ」

「え、えーと……、六年生の、宮田ハルカです」

 その返答を聴いて、……冗談ではなく昴星の全身が総毛立った、ように見えた。

 ちらりと、流斗もその反応を見ていた。

「ハルねえちゃんは、男の子のおちんちんに興味あるの?」

「はっ?」

 完全に虚を突かれたリアクション、……当たり前だ、ぼくだって初対面の男の子にそんなこと訊かれたら「いいえ」って答えるよ。

「あるある、超あるよ。だってハル、こないだエロ本持って来てくれたじゃん」

「そ、それはー、ちーちゃんが見たいって言ったからじゃん!」

「こんなこと言ってるけど、ハルがあたしたちの中で一番そういうの詳しいんだから。ねえセイラ、そうだよね?」

 恐らく、セイラが同意するように頷いたのだろう。「セイラちゃんひっどーい!」なんてハルカが抗議する声が届いた。

「ふうん、じゃあ三人ともえっちなんだね」

流斗の総括は、どうやら的を射ているようだ。

「じゃあ、ハルねえちゃんにぼくと、ぼくのおともだちのおちんちんと、射精するとこも見せてあげる」

 昴星がわなわな震えながらぶんぶんと首を振る。ここに至ればもう、昴星がそこまてま怯え切る理由はわかる。流斗は手を伸ばし、再びカメラをぼくに委ねた。片手ぐらいは空いていないと、自由にやりたいことが出来ないのだろう。流斗は自らの下着に視界を下ろした。

「わ」

 と、驚いたようなハルカの声がする。

「ね、すごいでしょ。この子オモラシしたんだよ。この子と、おともだちの昴星くん」

「こうせい……?」

 訝るような呟きに、うん、と流斗が頷く。「昴星くんだよ」

「なにハルカ、知り合い?」

 数秒の沈黙が、「昴星くん」に重たくのしかかる。

「……ううん。前の学校におんなじ名前の男子がいたってだけ。珍しい名前じゃないもんね。いまのとこにも、クラス違うけどいるし」

 もたらされた彼女の言葉に、全身をこわばらせていた昴星が傍目にわかるぐらいはっきりと安堵した。

「ぼくのイトコのお兄ちゃんのクラスにも、昴星くんっているんだよ。字もおんなじ」

 流斗はあくまで昴星に油断することを許さないつもりらしい。

「ハルねえちゃんって、転校したの?」

「……うん、去年の二学期からね。いまはこっちに通ってるの」

「ハルねえちゃんの学校にも昴星くんいたの? どんな子?」

「どんな……、えーっと、いっつもうるさくて、バカ」

 ピク、と昴星が反応するが、もちろん声は出さない。

「えー、カッコよかった?」

 チヒロが早速興味を示した。

「カッコいい、のかなあ……。見た目はあんま男っぽくない感じ。女子みたいな顔してたし、背も小さかった」

「昴星くん、……あたしたちの知ってる昴星くんと、同じだね」

 小さな声でセイラが言う。

「そうそう、こっちの昴星くんも可愛いんだよね。ねえ流斗、昴星くんの顔映してよ。ハルカに見せてあげて」

 昴星が再び蒼白になった。

「だって。昴星くん、どうする?」

 ぶるぶる、ぶるぶる、全身の震えをそのまま拒絶のサインに昴星は変える。くすっと笑って、「ダメだって。昴星くんはぼくと違ってまだおちんちん見せるの恥ずかしいから、顔も見せるのヤダって」

「なんだ、つまんないの」

「でも、ぼくはぜんぜん恥ずかしくないよ。昴星くんの代わりにぼくのいっぱい見て」

 再びカメラを自分の股間に向けて見せる。「ほら、おっきくなったおちんちんだよー。昴星くんのはまだちっちゃいまんま」

 続いて昴星の縮こまったものも映す。昴星は顔の代わりに秘匿されたプライベートを切り売りする羽目になるのだ。同じクラスの女子の目に。

「……流斗、っていうんだっけ」

「うん、ぼく流斗」

「その……、こんなこと、いつもしてるの?」

 ハルカの戸惑いぎみの質問に、流斗は恥じらいのかけらもなく「なかよしになったおねえちゃんだけだよ、見せてあげるのは」と答えた。

「だって、おちんちんはだいじなとこだもん、誰にでも見せるわけじゃないよ。ハルねえちゃんはチヒロねえちゃんのなかよしだからとくべつ!」

本当は、誰にだって平気で見せる流斗のパンツの中だ。

「ねえ、ハルねえちゃん、ハルねえちゃんの学校の昴星くんのこともっと教えてよ」

「えー……、だからうるさくてバカだって」

「ほかにはー?」

「ほか? えーなんかあったかなあ……」

 ハルカは少し考えこんで、「あ」と何かしら思い出したらしい。

「二年のとき、教室でオモラシした」

 びく、と昴星がまた震える。昴星にとってはトラウマであり、同時にいまこういう嗜好を得るには不可欠な記憶である。

「えー、学校でオモラシしたの?」

「そうそう、したの。覚えてる」

 昴星は深いところを抉られたような羞恥に震えている。さすがにちょっとかわいそうだ。ハルカが覚えてるってことは、いま昴星が毎日のように顔を合わせる女子たちだって覚えているに違いないのだ。

「こっちの昴星くんはぼくと同い年なのにまだオネショしてるんだよ。ね?」

 昴星は縛られたように動けない。

「で、そうそう、体育の着替えのときにね、ウチの学校は三年まで男女一緒だったんだけど、『鮒原のパンツ黄色い』ってみんな言ってた」

「その頃からハルカ、男子のちんちんに興味あったの?」

「ち、違うよ、あたしだけじゃなくてみんな言ってたの!」

 女の子って残酷だなあ、と昴星の表情を見ながらぼくは思う。いまだって昴星のブリーフの前は、たいがい黄色い汚れが目立つのだ。

「ふなはら、昴星くんって言うの?」

「そうだよー、鮒原昴星」

「じゃあ、……それって、ぼくのイトコのお兄ちゃんのおともだちかも」

 流斗の言葉は、考えをまとめながらにしてはすらすらと流れるようだ。

「え? ……流斗のイトコって?」

「才兄ちゃん、えっと、淵脇才斗」

「淵脇くんの……」

 ハルカが、ちょっと言葉に詰まる。

「え、知ってんの?」

「……うん、クラスで一番頭良くって運動できて、性格もよくってね、超もててた。昴星はいっつも淵脇くんと一緒で、……そう、おんなじ団地に住んでて」

「才斗くんって、こないだ流斗がいっしょにいたあの子だよね? え? でもあの子……」

 まずいんじゃないか、ぼくは緊張する。才斗のそばには「昴星くん」だって一緒にいたはずだ……。

 昴星がほとんど泣き出しそうになったタイミングで、携帯電話の向こうから電話の着信音がした。

「あ」

 とチヒロがつぶやく。「その、才斗くんから電話だ。ちょっと待って。……もしもしー?」

チヒロが電話の向こうに、

「え? 流斗ならいま話してる。ううん、一緒じゃないよ。スカイプしてる……、昴星くんのとこにいるって。え? 違うよー、流斗の学校の昴星くんだって」

 昴星の、祈るような心持ちはぼくにも十分理解出来た。

「そう、うん、こないだの昴星くんと一緒に、昴星くんのおうちにいるんだって。え? ああそうなんだ。……ねえ流斗、才斗くんが『いつ来るんだ』って」

「あ」

流斗はわざとらしさを感じさせない声で、「そっか……、今日のお昼、才兄ちゃんとこ遊びに行く約束してたんだっけ。才兄ちゃんに、いまから行くから待っててって伝えてくれる?  一時間ぐらいで着くよって」

「わかったー。えーとね、流斗、いまから一時間ぐらいでそっち着くって」

「ひょっとして昴兄ちゃんもう着いちゃってるのかな」

「あー、ねえ才斗くん、そっちの昴星くんってもういるの? あ、いる?」

「昴兄ちゃんに漫画借りっ放しなの。それも持って行くよって」

「漫画持ってくって言ってるー」

 少し、間があった。「昴星くんが『わかった』って」

 昴星は手品を見たような顔になる。

「はーい。あ、いま才斗くんの学校から転校したあたしのイトコいるけど代わる? ハルカっていうの。……あ、いい?」

 ハルカがどんな表情を浮かべたかは、わからない。ただ「覚えてないからいいってさ」と電話を切ったらしいチヒロに言われて「覚えてないんだ……」と言う声は、ため息交じりのさみしげなものだった。

 ともあれこれで、ここにいる「昴星くん」とチヒロたちが先日会った「昴星くん」は別人であったことが判明したわけで、……正直、ぼくは大きな声で安堵を叫びたい気になった。もっともそれは、昴星にしても同じだっただろう。

「じゃあ、流斗くんはもう行っちゃうの……? 才斗くんと鮒原昴星くんが待ってるんだよね……?」

それはセイラの声。

「だいじょぶだよ。だって、ここから才兄ちゃんのおうちまで、急げば一時間もかからないもん。……それに、ほら」

再び、湿った下着から上を向くおちんちんを見せる。

「こんなおちんちんじゃ恥ずかしくて電車乗れないよ」

「セイラ、流斗のえっちなの見たくて仕方ないんでしょ」

 からかうようなチヒロの声に、それを必死に否定するセイラの声が重なった。

「じゃあ、ぼくと昴星くんで三人におちんちんのお勉強させてあげる。あのね、ぼくたちすっごいの考えたんだ。おちんちんがすっごくきもちよくなっちゃうやり方」

 流斗はカメラを左手に持ち替え、「昴星くん」の縮み上がったおちんちんに触れる。相変わらずしどけなく足を開いたままの昴星のおちんちんはかわいそうなほどに縮んだままだ。

「昴星くんってオモラシすると勃起しちゃうんじゃなかったっけ……?」

 セイラがそう訊く。流斗はクスクス笑いながら昴星の小さなそれを指で優しく弾き、「始めての女の子に見られちゃってるから、きっと緊張してるんだよ。ね、ハルねえちゃん見える? 昴星くんのおちんちんだよー」

 言いながら、流斗はつまんだ昴星のおちんちんをフルフルと揺らして見せる。

「ぼくのよりちっちゃくて、かわいいでしょ。ほら、タマタマもちぢんじゃってしわしわ。ね、ハルねえちゃんの知ってる『昴星くん』のおちんちんとどっちがおっきいかなあ」

「そんなの、知らない……。見たことないもん」

 抗議の声はもちろん出せない。昴星は身を硬くしてこの時間をやり過ごすことにだけ集中しているようだ。

「でもね、ぼくがこれからちょっとしただけで、昴星くんのおちんちんもすっごく元気になっちゃうんだよ。見ててね?」

 流斗は、ひょいと水たまりに手をついて昴星の股間に顔を近づける。

 何のためらいもなく、縮こまった幼茎を口に含んだ。……少女たちが息を飲むのが聴こえる。

「ね、ねぇ、ハルカ、あれってフェラチオっていうやつだよね、そうだよね」

 チヒロが驚いて訊くが、ハルカは返答しない。昴星は声を出さないように口元を抑えて震えているばかり。流斗の口元からはぴちゃぴちゃと小刻みに舌の這う卑猥な音が立って、尿臭の漂う部屋に浮遊していた。

「ふぇらちお? って、ゆうの?」

 ぺろりと唇を舐めて、画面に向かって流斗は問う。

「その……、セックスのとき、女が男のそこに、するの……」

 圧倒されたように、ハルカが周知の事実を流斗に解説した。「流斗は……、ホモなの? 男の子が好きなの?」

 流斗は再び昴星のペニスをぺろぺろしながら、「んーわかんらい。れも、おひんひんこんあふーにふるの、たのしくって、すき」と、まるで何の知識もない無垢な子供のように言う。

 昴星の性器は急激に「元気」になり始めた。その反応は恐らく、昴星の深いところにあって本人も普段は隠している、マゾヒズムによってもたらされるものだ。

 同い年の、知り合いの女子に自分の恥ずかしい秘密を晒しているという現実。

「あはは、やっぱり勃起してもちっちゃいまんまだねー」

 チヒロが笑って指摘するとおり、それは「勃起している」と言うにはサイズは小さいままだ。角度が上を向いたというだけ。

「でも、ちゃんとかたくなったよ。昴星くんのおちんちん、先っぽの皮もむいて見せてあげるね」

 流斗は宣言したとおり、昴星の皮を摘まんで剥き、いかにも傷つきやすそうな色をした亀頭を晒す。

「……四年生の子の亀頭なんて見るの、初めて……」

 ハルカが気圧された声で呟いたのが聴こえた。

「ねえねえ流斗、さっきのまたやって見せてよ、フェラチオ」

「うん、いいよ!」

 流斗は、今度は亀頭にちゅっと音を立ててキスをする。「えへへ。昴兄ちゃんのおちんちん、すっごいオシッコくさいの。でもってしょっぱくっておいしい」

「男の子の……、そこって、おいしいの?」

 セイラの問いはハルカに向けられたものらしい。「し、知らないよ、そんなの! したことないし……」とハルカが答えた。

「セイラねえちゃん、こんどぼくのおちんちんなめてみる?」

 セイラは答えなかった。

「っていうか、流斗のちんちんならまだ臭くなさそうだからいいんじゃない? 昴星くんの、すっごいくさそう」

 そう言ったのはチヒロだ。

「くさいけど、ぼく、おいしいと思うな」

「でもさあ、臭かったら味なんて全然わかんなくなりそう。ほら、昴星くんのオシッコすっごい臭かったし、うんこもさぁ……」

「うんこ……、って」

 ハルカが驚いた声を上げた。「え、なに、ちーちゃんたち、この子のそんなとこまで……」

「だってさぁ、昴星くんがガマン出来ないって言うんだもん。超びっくりしたよ、超太くて超臭いの出しながらちんちん硬くしてんだもん。ねえ、セイラ」

「昴星くん、普段は恥ずかしがり屋さんなのに、本当はこんな風に恥ずかしいとこ見てもらうの好きなんだよ」

 流斗は勝手な、しかし的を射た説明を加える。

「ね、昴星くん。ハルねえちゃんに射精するとこ見せてあげなよ」

 昴星が、潤んでとろけそうな目を流斗に向ける。

「こないだ、チヒロねえちゃんとセイラねえちゃんには見せてあげたでしょ。ほら、パンツもう脱いで」

 流斗の言葉に、もう昴星は抗わなかった。震える指をブリーフに入れて、ズルズルと引きずりおろして、裸に靴下のみという姿になる。

「せっかくだからお尻も見せてあげよ?」

そう言われれば、ころんと仰向けになって、自分で太ももを抱えてお尻の穴を晒す。もう、恥辱を求める操り人形だ。

「ねー流斗、なんで昴星くん靴下履いたまんまなの?」

「んーと」

 流斗はちらりとぼくを見る。ぼくがそう頼んだから、とは、言えない。

「脱ぐの忘れちゃったから。ぼくもだよ、ほら」

 とカメラを向けて言った。

 再び昴星へと視界を戻し、「ほら、昴星くんのうんちの穴。オモラシしちゃったからこっちまでオシッコでびちょびちょだよ」と解説しながら、ピンク色した穴に指を這わせる。

「でも、お尻の穴は女の子にもついてるからそんなめずらしくないのかなぁ」

「そんなことないよー、男子の肛門なんて見ないし」

「そっか、そだよね。……じゃあ、たっぷり見てお勉強するといいよ、昴星くんのお尻の穴はこうなってまーす」

 流斗は空いた方の指で昴星の穴を左右にくいと広げる。その途端、小さな破裂音が昴星の肛門から放たれた。

「あっ」

 という声は、セイラのもの。

「ひょっとして昴星くん、うんちしたいの?」

 流斗の問いに、昴星は答えない。多分それは問いではなくて、昴星にそれを示唆するためだけの言葉だった。

「昴星くんうんち出ちゃうって。お部屋の中なんだけどなぁ……」

「窓開ければ大丈夫だって」

 人ごとであるからチヒロは気軽に言う。部屋の持ち主であるところのぼくに視線を向けた流斗は、ぼくが頷いて傍の箱ティッシュを渡すと「じゃあ、いいよ。昴星くん、この上に出してね?」と何枚か抜き取った薄紙を昴星の穴の下に広げる。

 昴星の肛門が、三人の少女たちの視線に悦ぶように震える。……間も無く、もう一度の放屁音に遅れて、ぬちぬちといかにも硬く、何より「くさそう」な塊が顔を出した。

「やっぱすごいね……」

 チヒロはどこか感心さえしたように言う。

「こんなさ、男子がうんこするとこなんて……、ハルカだって見たことないでしょ」

「……うん、……っていうか……」

 ハルカが、戸惑いながらもたらした質問は、排便中の昴星の肛門括約筋に鋭い力をこめさせるものだった。

「パンツがね……、その、あたしが知ってる鮒原昴星の穿いてたのと、おんなじなの」

 ぽとり、昴星のうんちがティッシュの上に落ちた。

「え?」

「そうなの……?」

「うん……、体育の授業のときに、ちらっと見ただけなんだけど、ほら……、最近の男子ってトランクスが多いじゃない? だから覚えてて、……UFOのマーク……、同じだと思う……」

 昴星の肛門がまた排出を始める。が、わななくように震え、それは短く途切れる。

「じゃあ……、やっぱりほんとは、その、ハルカちゃんの知り合いの方の昴星くん……?」

「……体の感じも、なんか似てるし……」

「昴星くん」の肛門から力が抜けた。肛門が一気に広がり、太い便が勢いよく排出される。

 昴星は全てから解放されたような顔をしていた。それは絶望を通り越して何もかもを超越したところにある快感に辿り着いたような顔だった。品のない音を立てながら排便し、同時に勃起したおちんちんからは薄い色の尿を吹き出させ、お腹やおっぱいのみならず、顔まで濡らしている。

 噴水が終わるなり、また便がちょん切れた。一度、二度と括約筋が震え、……昴星は自分のお腹に精液を漏らしていた。

「あーあ、昴星くん、うんちだけじゃなくってオシッコもせーしも出しちゃった。おちんちんからせーし出るときのびくびくってするの、ハルねえちゃんに見せてあげようと思ったのに」

 流斗は何でもないように平然としている。

「ハルねえちゃんの知ってる『昴星くん』も、ぼくのお友だちの昴星くんも、あとぼくも、おんなじパンツ持ってるんだねえ」

 流斗はすらすらと言って、脱力した肛門から排便を再開する昴星の下半身を撮影し続けていた。

「ね、ねえ、流斗、その子ほんとに……」

『鮒原昴星じゃないの?』という決定的な問いが齎される前に、彼女たちの方から電話が鳴った。

「……また才斗くん。……もしもし? わ!」

 電話に出るなり、チヒロがびっくりしたように叫んだ。

「なに、どうしたの……?」

「……超うるさい声……。もしもし、才斗くん? ……え? え、あ……、流斗、スカイプ出ろって。っていうか、いまの誰の声……、えっ」

 きょとん、とチヒロが声を止める。

「今のが昴星くんの声なの? ほんとに?」

 え? とぼくは流斗を見る。流斗は依然として、悠々と微笑みを浮かべている。昴星の耳には届いていないようだ。

「あ、あの、もしもし? ……昴星くんに電話代わってくれる……? 声うるさいな!」

 チヒロが負けないように大声を上げる。

 結局何だかわからないうちに、

「……切れちゃった」

 らしい。

「ちょっと聴こえた……。すっごい大きい声だったね」

 セイラがため息混じりに同意して、「いまの、……その、『鮒原昴星くん』の声だった?」

ハルカが、少し考え込む。

 数秒も、かからなかったはずだ。しかしそれはぼくにもとても、長い時間のように感じられた。

「……多分、そうだと思う、あいつ、バカみたいに声大きいし……」

「なんだぁ。じゃあ、そっちのは『鮒原昴星くん』じゃないのかー。もしそうだったら面白いって思ったのになあ」

 三人は心底から残念がっているようだった。ぼくはスカイプが繋がっていなかったなら、本当に、向こうに聴こえてしまうぐらい大きなため息を吐いてしまいたいのを堪える。

「ぼく、もう行かなくちゃ。あんまり待たせると二人にしかられちゃう」

 流斗も名残惜しいように言って、自分のおちんちんにカメラを向けた。「三人はぼくのおちんちん、もう飽きちゃった? そんなに昴兄ちゃんのおちんちん、見たかった?」

「そ、そういうわけじゃないよ? そりゃ、流斗のちんちんもさ、可愛いと思うし……」

「ほんとに? ほんとにぼくのおちんちん、かわいいって思ってくれるの?」

「うん。セイラもハルカもそう思うよね?」

 チヒロに同意を求められて、二人も頷いたようだ。

 流斗はにっこりと微笑んで「じゃあ、ぼく、こんどまたおねえちゃんたちのとこに行くね! そのとき、またいっぱいおちんちん見せてあげる。……今日は、もう時間ないからここまでだけど……、でも約束だよ? ぜったいだよ?」

 うん、約束、口々に彼女たちの言う声が、ぼくに聴こえて来た。

 じゃーね、ばいばい、別れの挨拶をして、流斗は断線する。

 しばらく沈黙が排泄物臭の漂う部屋に流れた。

「……はぁああー」

 それを破ったのは、恥ずかしながら少年たちより年上のぼくである。

「もう……、危なっかしいよ流斗……、あんまり冷や冷やさせないで……」

「お兄ちゃんがオモラシしたのバレちゃったわけじゃないのに、ひやひやしたの?」

 そりゃあ、するともさ。秘密がばれたときに、昴星がどれだけ辛い思いをするかぐらいはぼくにだって容易にたどり着ける。

 というか、それを想像するのが「優しさ」というものではないだろうか。……流斗が優しい子だということをぼくはよく知っているつもりだけど。

「でも、バレなかったでしょ? ぼくちゃんと才兄ちゃんに話しておいたもん、こうゆうことするから、お願いって」

 流斗はチヒロが出た電話の向こうから昴星の声がしたからくりを明かす。あれは、夕べ三人でやったカードゲームのときに才斗がデジカメで撮った罰ゲームの動画だったのだそうだ。

 ちょっとばかりボリュームが大きかったのだろう、だからチヒロは昴星の声の大きさに驚いていたし、会話にもならなかったのだ。ただ何にせよ、電話の向こうから昴星の声がしたことで、彼女たちに「アリバイ」を証明することには成功したわけだ。

「今朝からこうするって決めてたったこと……?」

「うん、そうだよ」

 恐ろしいことに、流斗はこれほどのことを平然とやってのけ、相変わらず和やかな微笑みでいるのだ。

「昴兄ちゃんにいっぱいきもちよくなって欲しいなって。……昴兄ちゃんのむかしの知り合いがいるのは考えてなかったし、靴下でバレそうになるなんて思ってなかったから、ちょびっとだけぼくもドキドキしちゃったけどね」

 何が流斗をそこまで動かすのか、……ぼくは知っていた。

 この純真無垢なる少年はその賢さで以てよりエキサイティングなシチュエーションを求めるのだ。

 そして多分、少年が抱くのは悪意ではない。

 シンプルな、昴星という同類項への愛情だろう。

「昴兄ちゃん」

 昴星は顔を覆って必死に声を殺して、でもはっきりと泣いていた。それが心に負ったかりそめの傷が痛むことによるのか、それとも悪い夢から解放された安堵によるのか、ぼくには測りかねる。だからぼくは動けず、啜り泣く昴星を見ていることしか出来なかった。

「よかったね。同じクラスの女の子に、恥ずかしいとこいっぱい見られちゃった。たくさんきもちよくなれたでしょ?」

 流斗は濡れた顔を隠す昴星の手を退けて、……優しく口付けをする。

「お、おまえ、っ、……おれぜんぶバレたとおもってっ……!」

「そんなひどいこと、ぼくしないよ」

流斗は精液と尿にまみれた昴星に肌を重ねて、何度もその頬にキスを繰り返している。

「昴兄ちゃんのこと、大好きだもん。だからいっぱい幸せになってほしい。そのためにぼくがするのは、たくさん考えて、くふうすることだよ」

 流斗の、やはりどうしたってそれは、「愛情」ということになるのだろう。

 ぼくは圧倒される他ない。昴星の身体と排泄物が発する臭いを嗅いでも、いまは勃起することはなかった。しかしやっと泣き止んだ昴星のお尻を流斗は拭き清めたところで、

「おまたせ、お兄ちゃん」

 流斗はにっこりと笑う。

「長いこと待たせちゃってごめんね。これから昴兄ちゃんがお兄ちゃんのこと、たくさんきもちよくするよ。ね? 昴兄ちゃん?」

 昴星は手の甲で涙を拭い、洟をかんで、「ん」と頷いた。

「スカイプしちゃったからさっきの撮れてないし、ぼくのもいっしょにきもちよくしてくれる昴兄ちゃん撮らせてね」

 流斗は再びスマートフォンを構える。昴星はぼんやりとカメラを見上げる。

 ポン、と軽やかに動画撮影開始のサイン音が鳴った。

「昴兄ちゃん、これ、ハルねえちゃんたちに見せないけど、見せるとしたらどんな風にとったらいいのかな?」

「え……?」

「昴兄ちゃん、女の子に恥ずかしいとこ見られるの好きでしょ? だから昴兄ちゃんの恥ずかしい秘密、全部知ってもらおうよ」

 昴星がつい先ほどまで味わっていたものに比べれば、ずいぶん甘い屈辱である。

「ほんとに……、見せない、んだよな?」

 しかし流斗はにこにこと甘い笑みを浮かべたまま「んー……、どうしよっかなぁ」と、ちっとも意地悪さを感じさせない言い方で昴星を翻弄する。

「いいのがとれたら、こんどおねえちゃんたちに会いに行ったときに見せちゃうかも。……でも、もういまだって昴兄ちゃんがすっぽんぽんなの、とっちゃってるし」

 昴星は、口を一度二度と開け閉てして。

 ごく、と唾を飲み込んだ。

「じゃあ、昴兄ちゃん。もう一回自己紹介して?」

 また昴星は、流斗の操り人形になる。

 そうなることを、自ら望むのだ。

「鮒原昴星……、△△小六年一組の、鮒原昴星です……」

 小さいままのおちんちんが、僅かに強張ったように見える。

「昴兄ちゃん、うんちしたばっかりなんだよねぇ。ほら、こんないっぱい出しちゃったんだよ?」

改めて、昴星が産み出したいくつもの、いかつささえ感じさせる塊を流斗は写す。

「さっき、同級生のハルねえちゃんの前でおちんちんいっぱい見られてうんちするとこも見られて、そのまんま射精しちゃったの。……うれしかったんだよね? 恥ずかしいとこ見てもらえて」

 はっ、……はっ、と昴星の呼吸が上がる。

 こく、こくこく、と昴星は頷いた。

「うれし……かった……」

「昴兄ちゃん、ヘンタイだもんね? オネショなおんない、赤ちゃんみたいなおちんちんなのに、恥ずかしいこといっぱいしてたくさんきもちよくなっちゃうんだもん」

 昴星のおちんちんはすっかり勃ち上がっている。……本当に女子に見られているような倒錯に、自ら進んで溺れることを選んだのだ。

「昴兄ちゃん、さっきの思い出しておちんちんおっきくなっちゃったね。……いつもどんな風にしてるか、ハルねえちゃんたちに見せてあげようよ」

「いつも……」

「うん。いっつも昴兄ちゃんがやってる、すっごいいけないやり方、ぼくに教えてくれたみたく、ハルねえちゃんにも見せてあげよ?」

 流斗はオネショシートの上に丸まって落ちたUFOブリーフをつまみあげて昴星に差し出す。

「昴兄ちゃん、それなあに? 広げて見せて」

 昴星は起き上がり、言われた通りに摘まんで広げる。生乾きの段階でもう、濃い黄色のシミ。……昴星のオシッコはそのものでも臭いが濃いし、乾いても強い臭いを発するけれど、「夜明け前が一番暗い」じゃないけど、「乾く前が一番臭い」のだ、……いや、全然いい喩えじゃないな……。

 ともかく昴星は、真っ黄色のブリーフを広げて、

「お、れの……、パンツ……」

 と声を震わせて答える。

「昴兄ちゃんのパンツ、すっごいくさいね。なんでそんな黄色してるの?」

 流斗の声に、一秒、二秒、答えるのをためらってから、……しかし、結局昴星は、

「オモラシ……、したから……」

 と答えた。

「昴兄ちゃん、オネショ治らないだけじゃなくてオモラシもしちゃうの?」

 こっくり、昴星は自分の特級の秘密を認めた。

「オモラシ……、するの……、好き、だからっ……」

「いけないことなのにね? オシッコはきたないし、すごくくさいよ? だからちっちゃい子だってオシッコはパンツの中でしちゃいけないってわかってるのに」

「だって……、だって……」

 昴星は真っ赤になって、大きな目にまた涙を浮かべる。

 嫌なら、言わなきゃいい。この「撮影」だって止めさせればいいのに、それをあえて答えようとするのだから、……答えは簡単、昴星は本当は、嬉しくってたまらないのだ。オモラシをして性感を得るという自分の変態的な嗜好を、一番知られてはまずい相手に暴露するという、このかりそめのロールプレイングゲームが。……いや、昴星はもう、流斗が本当にハルカたちに見せてしまうことを信じているかもしれない。

「気持ちいいんだもん、オモラシすると、ちんこすっげえ気持ちよくなっちゃうんだもん……」

「そっか。やっぱり昴兄ちゃんはすごいヘンタイなんだね」

 流斗は笑顔でひどいことを言って、

「じゃあ、昴兄ちゃんがいつもどんな風にオモラシするのかハルねえちゃんに見せてあげなよ」

 昴星は導かれるように自分の汚れたブリーフに足を通して行く。すっかり黄色く染まった下着のちょうど真ん中に、元気いっぱいのおちんちんが膨らんでいる様子はまるで自分の恥ずかしい秘密を誇るようにさえ見えた。

「勃起、してるから、じょうずに出ないかも……」

「でも、昴兄ちゃんなら出せるよ。だっていっつもガマンしなきゃいけないときにオモラシしちゃうじゃん。お布団もオシッコで、そのパンツみたいに黄色くよごしちゃうんだし」

 昴星のおちんちんが下着越しに震えるのが見える。

「昴兄ちゃん、こっち向いて。ハルねえちゃんが見てるよ」

 流斗は昴星の全身をフレームに収めているらしかった。昴星はおずおずと顔を上げて、……冷たい下着の中で激しい熱を帯びたおちんちんの尖りの先から、放尿を始めた。

「あ……ああっ……でてる……オシッコでてる……」

 カメラに向けて涙声でそう実況しながら、下着から尿を伝わせ、そのまま太腿を濡らし足元へ滴らせる音を立てる。

「ほんとだ、また出てる。おちんちんさっきよりもっと硬くなってるね。ハルねえちゃんに見られながらオモラシするのうれしいんだね」

 こっくり、頷いた昴星の頬は緩く綻び、口元には壊れたような笑みさえ浮かんでいた。

「ん、んっ、うれひ……っ、おれ、オモラシしてんの……っ」

「きっとハルねえちゃんは昴兄ちゃんのクラスの女の子みんなにこのこと言っちゃうよね。昴兄ちゃんがオモラシで気持ちよくなっちゃうヘンタイだって、みんなにバレちゃうね」

 ひ、ひっと笑いながら昴星はまた頷く。ほつれた理性の綱が、更に力を加えられることでちりちりと切れて行く。

 昴星の尿の勢いが止まった。

「ぜんぶでたの?」

「んん……、まだでる……、うんこでる……」

「さっきしたばっかりなのにまたうんちするの? じゃあ、こっちにお尻向けて」

 さっきの排出、射精で中途半端に途切れたままだから、まだお腹の中に溜まっていたのだろう。もう先ほど敷いたティッシュはいっぱいだ。ブリーフを脱いだ昴星はシートの上に足を開いて僅かに膝を曲げ、力をこめ始めた。流斗はそんな昴星の後ろ姿を見上げるような角度で撮影する。

「おれの、うんこ、……うんこするとこ、女子に、見られてるの……?」

「うん。お尻の穴のしわまでぜんぶ丸見え。あ、うんち出てきたねえ。昴兄ちゃんは赤ちゃんみたいなおちんちんなのにすっごい太いうんちするんだね。おちんちんよりうんちのほうが太いみたい」

「ひ、ひひ……、おれ、のうんこ……」

「昴兄ちゃん、こっちから顔だして」

 足の間から呼び掛けた流斗に従って、昴星は自分の股間を覗き込む。流斗がティッシュを三枚ほど抜き取って、手渡す。

「ちゃんと自分のうんち、おとさないようにしなきゃ。ね?」

「ん……」

太く垂れ下がる自分の便の下にティッシュを広げた手のひらを差し出し、昴星はそれを上手に白い紙の上へと寝かせて行く。

「すごいすごい、昴兄ちゃん、まだこんなにうんち出すんだ?」

「ん……、いっぱい……」

「昴兄ちゃん、おちんちんいまどんな風になってるの? 自分で撮ってみせて」

 流斗の差し出したスマートフォンを受け取ると、昴星は勃起して涎を垂らす自らのおちんちんの有様を大写しにした。

「すっげ……、ピクピクしてる……、オシッコでびちょびちょ……」

「うんちして気持ちよくなっちゃうなんて、ほんとに昴兄ちゃんはヘンタイなんだねえ」

「ん、ん、だって、うんこ、お尻の穴のいっぱいひろがって、きもちぃもん……」

 流石に立ったままでいるのはしんどくなったらしい、昴星は手のひらで便を支えたまま、慎重に屈み込み、まっすぐに自分のはしたない股間と顔を撮影していた。

 流斗が回り込み、スマートフォンを受け取る。

「昴兄ちゃん、うんちしながら射精できる? きっとハルねえちゃんおどろくよ。昴兄ちゃんがどこまでヘンタイなのか、見せてあげなよ」

 こっくり、昴星は頷き、右手を上を向いたおちんちんに添える。

 自分のペニスを摘まんだ右手は、ほとんど自動的に動き出したようだ。

「ん、んぅン……っ」

 昴星の手のひらの上で、尻尾のように伸びていた便が切れた。重さに負けたのではなく、括約筋の収縮によって切れたのだろう。

「きもちいい?」

「うんっ、ちんこっ、きもちぃっ……!」

 流斗の言葉に包茎をいじめるようにますます激しく扱き、粘液の音を立てて見せる。

「でも、そのままいっちゃダメ」

 流斗は手を伸ばして昴星の右手を止めさせた。

「な、なんでっ……、もうだしたい、せーし、だしたい……」

 流斗は優しく微笑んで首を振った。実際、「優しい」としか形容できないような笑みである。

「だーめ。昴兄ちゃんが一番きもちよくなるのって、オモラシパンツの中だもん。持ってて」

 流斗は再び昴星にスマートフォンを委ね、濡れた下着を広げて昴星を立たせる。

「ゆっくり、ね、右足上げて。そう。こんどは左足」

 冷たい下着をゆっくりと穿かされるあいだ、昴星のおちんちんはいまにも射精しそうな震えを何度も何度も催している。流斗の意図を理解し、考えうる限り最も恥ずかしい姿を晒してしまうことに強い期待を抱いているらしい。

 流斗の手によって、再び昴星は下半身を失禁ブリーフに覆われた。

 但し一部分は外にさらされているままだ。言うまでもなく、窓から勃起を震わせている。

「ね、昴兄ちゃんいちばんきもちいいのって、こういうのでしょ? どんな風にきもちいいか、ハルねえちゃんに教えてあげて」

 スマートフォンを受け取り、オモラシしたブリーフから勃起を覗かせる昴星はこっくりと頷く。

「オシッコで……、びちょびちょになった、お尻とか、ちんこの下のほうとか、……おれの、オモラシしたのでぬれてんの、わかって……、はずかしくって……」

「おちんちん、ピクピクしてるね」

「ん……、オモラシパンツはくと、ちんこ、すぐこんななる……」

「ね、いま出したばっかりのうんちも見せてあげなよ」

 流斗の言葉に従って、昴星は太く逞しささえ感じさせる手のひらの上の便を身体の前へ持って来た。

「おれの……、うんこ……」

 湯気が、臭気とともにゆっくりと立ち上る。その臭いに自らあてられたように、またペニスが震えた。

「昴兄ちゃん、もうぜんぶ出しちゃったし、見られちゃったね。おちんちんもお尻の穴も、……見られてきもちよくなっちゃうヘンタイだってことも、ぜんぶ」

「……ん……」

「あ、でも最後、オモラシパンツで射精しちゃうとこまででぜんぶだね。……昴兄ちゃん、射精して見せて。自分のきたなくってくさいうんちに、せーしいっぱいかけちゃいなよ」

 言葉が昴星を操る。「こっち見て」と言われれば、ちゃんとカメラに目を向ける。

 右手が再び動き始めた。

「ほら、ちゃんと言わなきゃ。ハルねえちゃんに、昴兄ちゃんがどんな子か教えてあげよ?」

「んっ、お、おれっ、……おれはぁっ、オモラシっ、オモラシ大好きでっ、オモラシパンツでちんこきもちよくなるっ……」

「でもって、女の子にはずかしいとこ見られてうれしいヘンタイなんでしょ?」

「うんっ……おれっ、ヘンタイっ……うんこするとこも、ちんこもオモラシもっ、見られてうれしいヘンタイっ……、も、でるっ、せーしでるっ! オモラシしてせーしだすとこ見てっ、おれのっ、うんこにせーしでるとこ見てぇっ」

 高い声でそう叫びながら、昴星は女子の視線に晒されて最高の快楽を得る。

「んぁうっ、ふぁ、あはっ、でてるっせーしっ、うんこにいっぱい……いっぱいでてる……!」

 快楽の大きさは、二度目としては濃すぎるし量も多すぎる精液に証明される。

「いっぱい出したね、昴兄ちゃん。きもちよかった?」

 もう、しゃがんでいることすらかなわない。昴星はぺちゃんとお尻を付いて、とろけた笑みでこっくり、

「ん……、きもちよかった……、オシッコもうんこもせーしも、いっぱいでた……」

赤ちゃんみたいに無垢に頷く。

「これでもう、昴兄ちゃんがヘンタイだってことみんなに知ってもらえたね。これから昴 兄ちゃんのパンツの中はハルねえちゃんたちのものだよ」

「ん……」

「じゃあ、これでおしまい。昴兄ちゃん、ピースして」

 言われるがままに、昴星は左手は精液をデコレートされた自分のうんちを載せたまま、へらりと笑って二本の指を立てる。

 流斗は撮影を終え、そのままメールの操作をし始めた。「長いこと撮ったから、送るのちょっと時間かかっちゃうかなあ。でも昴兄ちゃんのひみつ、みんなに見てもらわなきゃね。きっと月曜日には昴兄ちゃんの学校のみんなが知ってるんだよ」

 すいん、とメールの送信音を聴いて、……しかしぼくも昴星も動じなかった。ぼくには流斗のメールの送信先が「才兄ちゃん」であり、そもそも「さっきの電話、ありがとう。」という添付のない文面であったことが見えていたし、酔い痴れた昴星にはもう、自分の姿がそうやって暴露されることは喜びでしかなかっただろうから。

「流……、もう、撮るの、おわり?」

 昴星はうんちを置いて、流斗を見上げる。その目には媚を売るような浅ましい光が宿ったままだった。

「なぁに? 昴兄ちゃんもっと撮ってほしいの? ……二回も射精したのに、まだおさまらないんだ?」

 こくこく、昴星は頷いて、まだ上を向いたままのおちんちんを見せびらかすように足を開いた。

「おれ……、もっと見てほしい、ヘンタイなおれの、ちんこも、射精も、いっぱい……」

「でも、昴兄ちゃんばっかりきもちよくなるのはズルいよ。ぼくだっておちんちんずっと大きいままだし、お兄ちゃんはまだ一回もしてないんだよ?」

 やっと、思い出してもらえた……。いや、流斗に忘れられた瞬間なんてなかったと信じてはいるのだけど。

 昴星ははっとしたように、ぼくのジーンズの足の間に目を向ける。犬のように這って、「ごめんなさい……」と謝る。

「いいよ。昴星がたくさん気持ち良くなれたなら、それだけで嬉しいもの」

 殊勝なふりをしつつ、ぼくは昴星にねだられるままキスをして、ジーンズの上から撫ぜてくれる手のひらに任せていた。

 それを、流斗が「もうちょっとだけ待って」と止める。

「せっかくだから、昴兄ちゃんがすっごいいやらしい顔してお兄ちゃんのおちんちんしゃぶる顔も撮ってあげる。……あのね」

 と、ぼくの押し入れに顔を突っ込んで引っ張り出したのは、オムツ。

「もう六年生のお兄ちゃんなのにオムツしてるとこも、きっとはずかしくってドキドキするよね?」

 振り向いた昴星の肌から悦びが匂い立つかのようだ。流斗の前で横たわり、ブリーフを脱がされ、代わりにオムツをあてがわれるとき、昴星は完全に流斗より年下の「赤ちゃん」になっている。

「あ。昴兄ちゃん、うんち拭かないでパンツはいちゃったから、お尻のとこもすっごい汚れちゃったね」

 流斗の指摘するとおり、昴星のブリーフの後部には錆びた爪で引っ掻いたみたいな筋がべっとりこびりついている。流斗はそれを昴星に持たせたところで、再び撮影を始めた。

昴星はもう、流斗に指示されるまでもなく、

「おれの、オモラシパンツ……、の、お尻んとこもよごれちゃった……。きたないうんこ、いっぱいついちゃった……」

 とカメラに向けて、そこを見せびらかす。流斗がカメラをオムツに向けると、「おれのちんちん」と、「大きな赤ちゃん」になったときの単語を選んで言う。「オシッコいっぱいもらしちゃうから、だから、オムツした……」

「赤ちゃんみたいだね」

 流斗の言葉に、「ひひ」と笑う。

「ん、……でも、オムツするの、好き……」

「これならオシッコガマンできなくなってもだいじょうぶだもんね」

「ん。……またオシッコでる……」

 流斗の回すカメラには、昴星がプラスティック・パンツの中で放尿する音がきちんと届いているはずだ。ぶるっと震えて昴星が「また、出ちゃった……」と笑う。

「おちんちん、またおっきくしてるの?」

 こく、と昴星はうなずき、ぐしゅっとオムツの前を指で押した。

「いっぱいオシッコしたら、のどかわいたでしょう。おいしいミルク飲んで、またたくさんオシッコしてうんちして、きもちよくなっちゃうといいよ」

 お兄ちゃん、と流斗がぼくに目配せをする。ぼくがジーンズから取り出したものを目にするや、昴星はすぐに這いつくばって、「あはぁ……、ちんちん……」と濡れた声で言う。

「昴兄ちゃんはおちんちんおしゃぶりするの大好きだもんねぇ。……ミルクの前にジュースものみたい?」

「ん、ん、ジュース、のみたい」

 できる? と流斗が口で訊く。ぼくは頷いて、……正直、勃起状態では容易なことではないけれど、

「ふぁあはっ、ジュースっ、ちんちんのじゅーすっ」

 昴星の顔面目掛けて、自分の膀胱に溜まっていたものを解き放った。

 昴星は可愛い顔をぼくの尿で汚しながら、

「ジュース、おひっこのじゅーしゅっ、おいひぃっ」

 と喚きながら口を開け、注がせて、喉を鳴らして飲み込んでいく。

 ……こうして少年の口へと放尿することは、別にぼくにとって性的な快感を催すものではない。単に自分の尿意を解放するためだけのものではある。

 ただまあ、すごくいけないことをしちゃってるなあって気持ちにはなるわけで、……興奮しない、といえば、やっぱり嘘になる。

「よかったね、昴兄ちゃん、お兄ちゃんにいっぱいおちんちんのジュースもらえたね」

「んひひ……」

「お兄ちゃんは優しいから、昴兄ちゃんの大好きなミルクも出してくれるよ?」

「んん……、ちんちんのみるく……」

 昴星はうっとりと、放尿したてのぼくのペニスに手を添え頬擦りをする。それから大きく口を開けて、ぱくん、深々と、ぼくをくわえ込む。興奮の度合いが強いからか、ぼくのペニスは昴星の口の中の体温を、普段より熱いものとして認識した。

「昴兄ちゃん、おちんちんおいし?」

 流斗はぼくの背中に回り込んで、肩越しに見下ろすような角度でカメラを回す。昴星は「をい、ひ、ひんひん、らいふひ……」カメラを見つめながら一生懸命なフェラチオをしつつ、ぼくに絡めた舌で言葉をギリギリに紡ぐ。

「昴兄ちゃんは男の子なのに男の人のおちんちんが大好きだねぇ。おちんちんのミルクほしくってしょうがないんだねぇ」

「ん……」

 さすがに苦しくなったか、ぷぁ、と口を外し、れろれろと舌先での愛撫に切り替えた。裏筋の弦を弾くとぼくに鋭い力がこもることを、とっくの昔に「学習」している昴星はただひたすらに嬉しそうに、献身的に、ぼくを愛してくれるようだった。

 一度昴星の口はぼくの陰嚢まで下りた。猫みたいに、お尻を高く上げてゆらゆらさせている。昴星の顔を覗き込むようにして撮影していた流斗が気付いたように、「昴兄ちゃん、ひょっとしてうんちしたいの?」と訊く。

「んん、うんこ……」

「そうなんだ。でもオムツしてるんだから大丈夫だよ。それよりほら、お兄ちゃんのこと気持ちよくしてあげなきゃ」

「んう……」

 ぼくの見る昴星の顔は、……およそこの年の少年が浮かべる表情としてこれほどまでに淫らなものがあるだろうかとおもわせるほどのものだ。だらしない口から涎を垂らしながら、排便のために籠められる力は眉間にしわとなる。しかしオムツの方へカメラを映した流斗には、もちろんそれが見えない。

 ぼくはとんとんと昴星の髪を指で叩き、一旦フェラチオを中断させた。腰を引くと「んぁあ、ちんちんん……」と泣きそうな顔をするが、毎朝ぼくの風采上がらない顔を映してばかりいる手鏡を持って戻ってくると、「ちんちんっ、ちんちんっ」嬉しそうにまたしゃぶりつく。

 流斗はぼくが鏡を持ってきた意図に気付いた。

「へえぇ、昴兄ちゃん、うんちしながらお兄ちゃんのおちんちんしゃぶってそんなうれしそうなお顔してるんだぁ……」

 昴星は鏡ごしに流斗に言われて、いっそうアピールするようにオムツのお尻を揺らして見せる。その合間に、ガス放出の音がした。

「あ、いまオナラしたでしょ。はずかしい音ばっちりとっちゃった」

「んひへ……」

 昴星は鏡ごしの「視線」に向けてはにかんだ笑みを向けると、自分の顔とオムツのお尻がしっかりと撮られていることを確認するように一旦鏡に目を向けると、またぼくへのフェラチオを再開する。ただ今度は、

「昴兄ちゃん、オムツしてると見えないから、ちゃんと教えて? あと、お兄ちゃんのおちんちんしゃぶってうれしいのも言わなきゃわかんないよ」

 と流斗の指令が下った。ぼくのものを咥えたり舐めたりしながらの「実況」なんて、少年の小さな口には大変だろうと思ったのだけど、

「んふぇ、いま、ね、おれのぉ、オムツのなかで、どんどんれてぅの……、おれのぉ……、うんち」

「うんこ」を「うんち」に言い換えて、幼い子供に昴星は立ち返る。その言葉を自らの耳で聴いたことが、また昴星には恥ずかしく、震えを催させるのかもしれない。

「あう……」

 と小さく呻いた。どうしたの? と流斗が問うよりも先に、

「んん、ちんちん、ぎゅってひたら、うんちきれちゃっ……あ、れも、おひりのなかとそとで、うんちにちゃにちゃひてるお……」

「オムツのうしろ、パンパンにふくらんじゃってる。オシッコもまたでてるんでしょ?」

「ん、いま……、いまひてぅの……、おひっこ、あったふぁい……。おにーふぁんのひんひんひなはらおもらひひてぅ……」

 ちゅ、ちゅ、ちゅ、と何度もぼくのペニスにキスをして、昴星は精一杯に「実況」の役を果たしている。立派なものだ。流斗の暗示がここまで昴星の心を蕩かしているのだ。

「おにーさん、のっ、ちんちん……、おれ、だいすき……、すっげぇ、おいひくって、ん、……む、……ちゅ、いい、におい、ちんちんの、ぬるぬる、しゅごいおいひぃ」

「昴兄ちゃんがヘンタイなとこいっぱい見せながらお兄ちゃんのせーし出させてあげるとこ、ハルねえちゃん見たいって。きっと学校のみんなも見たいよ」

 ぶるる、と昴星は震えて、「あむ」とぼくのをまた深く咥え込んだ。

 肛門は恐らく行き場をなくした太く硬い便で広がったままのはずだ。そしてそれは、昴星にとっては中途半端な快感がじわじわと持続することを意味する。

加えて、……昴星が口にしているのは、少年が一番好きなものの味だ。ぼくのものから「ぬるぬる」が出ていることも事実だろうし。

 更には、昴星が感じるクラスの女の子たちからの視線。

 ……出すよ? とぼくは昴星の髪をひと撫でして、合図を送る。昴星はもう喉を突いてしまうんじゃないかと心配になるほどの勢いで、何度も何度も激しく頭を上下させた。

 ぼくはあっさりとその快楽に屈する。

「ンんんッ……!」

 昴星の全身が、ぼくの精液を受け止めて弾んだ。高いところにあったお尻がビクビクと強張り、それが終わるなり、ペタンと脱力する。

「んぉ……ほ……」

 昴星は呻きながらも、ぼくの精液を零さなかった。流斗が容赦なく、「お口のなか見せて」と言うから、昴星はしびれたような身体を何とか仰向けにして、緩く口を開く。

「わぁ、昴兄ちゃんがんばったから、いっぱいミルクもらえたんだね、よかったねぇ」

 流斗の言葉の通りだ。自分でも、……待たされた分だけ大量の濃厚精液を放った感覚はあったけど、あきれるぐらい白いものが紅い舌の上を満たしていた。

 昴星は嬉しそうに微笑んで、それをこくんと飲み込む。

「おいし、かった……、おにーさんの、ちんちんのミルク、おいしかった……」

「昴兄ちゃん、うれしい? いまみーんな見てるよ? 昴兄ちゃんのえっちなとこ、うんちのオモラシも、ぜんぶ」

「んひひ……、みられちゃった……」

「オムツ、かえなきゃね。いっぱい出したから、パンパンだよ? ぼくがはずしてあげる」

「ん」

 大き過ぎる余韻は、昴星の身体に理性をなかなか取り戻させはしないらしい。ほら、「賢者タイム」っていうでしょう、あれが今の昴星にはまったく訪れないかのようだ。事実として昴星は赤ちゃん扱いが嬉しくって仕方がないように、脱糞したオムツを流斗に委ね切るように脚をM字に開いて待ちわびているのだ。

 流斗からスマートフォンを受け取り、ぼくは撮影係を代わる。流斗がサイドのテープを剥がして行くのを撮りながら、昴星がうんちをオムツの中でとは言え出してしまうのは初めてのことじゃないのかと思い至った。……初体験、激しい興奮があって当然と言えるかもしれない。オムツは流斗が言っていた通り、パンパンに膨らんでいる。

「うわぁ……」

 開かれたオムツには悪臭が詰まっていた。昴星のお尻まわりは昴星自身の硬い便がべったりとこびりつき、まるで泥濘に尻餅もついたかのごとく。昴星のうんちはいつもやや硬いけれど、それも密閉空間でお尻に潰されればこうなるのも仕方がない。

「すごい、昴兄ちゃん、うんちこんなに出したの?」

「うん、うんち、いっぱいした」

「お尻もうんちですっごく汚れてる。ほら、昴兄ちゃん、オムツの中見てごらんよ」

 昴星はゆっくりと身を起こす。おちんちんは一応いまのところ、ひと段落したように落ち着きを取り戻している。

「ね、昴兄ちゃん。クラスのみんなにオムツの中でどんな風になってたか教えて」

 ぼくは少し引いて、オムツの中身と昴星の顔と、両方を画角に収めた。

「んっとね……、これが」

昴星は薄黄色のシミの輪郭を指でなぞる。

「オシッコで……、あと、これが、せーし」

 指で、そのシミの中にこびり付いた白いゼリーをすくって見せる。まだ、糸を引いている。

「でもって、これがおれのうんち」

「昴兄ちゃん、もうこれで三回目のうんちだよね? まだこんなに出せるんだね」

「うんっ、うんちすんの、おれ好き」

 そうやって説明しながら、昴星のおちんちんはまた硬さを取り戻して行く……。

「おれね、うんちしながらオシッコして、両方ともオモラシして、ちんちんすごくきもちよくなった。でね、うんちがお尻の穴の中と外で、オムツの中でつっぱってね、いったりきたりしてんの、きもちよくって、またせーしでた」

 昴星はすっかり勃起して、汚れたお尻を突き出すように四つん這いになった。それをアピールするように、左右に振って見せる。

「ねえ流、お尻、きれいにして」

「もう、全部出たの?」

 昴星はカメラを振り返りながらふるふると首を振った。「まだ、ちょっとだけ出るけど、出るとこ見てほしい……、お尻うんちだらけだから、いま、わかんないでしょ……?」

 押し入れの中にはオムツの他にも色々な物をしまっている。二人からもらった下着もそれに含まれるし、それ以外にも。

 流斗はぼくが言うまでもなく、ひょいと覗き込んでそれを持ち出してくる。一度、この間遊んだときに使ったことがあったのを思い出したのだろう。

 昴星はそれを見るのは初めてだ。

「お兄ちゃんね、昴兄ちゃんがこんな風にお尻いっぱい汚しちゃってもだいじょうぶなように、おしいれにおしりふき買って入れておいてくれたんだよー」

 パッケージに笑う赤ちゃんの写真が載っている。当然、乳幼児向けの商品である。

「ぼく、ふいてあげる。じっとしててね?」

 今更そういうことを嫌がるような流斗では、もちろんない。悪臭を放つ昴星のお尻を拭って行く手付きは、かいがいしささえ感じさせるほどのものだ。流斗は茶色い汚れを拭ってはオムツの中に落とし、少しずつ、昴星のお尻を再び白くむっちりとしたものへと戻して行った。最後にほんのり穴の周りを拭われるときには、昴星の其処には粘っこく、ぐぐっと力が入って窄まった。

「きれいになったよー、こんどのでさいご?」

「うん、おなかの中のうんち、さいご」

「じゃあ、いいよ。スッキリしてね」

 カメラに向けてお尻を突き出して、昴星は三たび、外向きの力をそこへ込める。

 シワの揃ったピンク色の穴が内側から膨らみ、中央から一度ガスの放出がある。遅れてもう一度力が篭り、オネショシートに向けての放尿の音を立てながら、便の顔を覗かせる。色の濃く、最後までしっかりと硬い、昴星のうんちだ。

「うんち、でてきた……、見える?」

 昴星はうっとりとした声で訊く。

「うん、ちゃんと見えるよー。昴兄ちゃんのお尻の穴、うんちでいっぱいひろがっててすごくえっち」

「んひひ……、ちんちん、また気持ちよくなっちゃう……」

 五センチほど伸びたところで、それはするんと切れて流斗があらかじめ広げておいたお尻拭きの上に転げ落ちる。昴星がブリーフの前をしょっちゅう汚す一方で、お尻の方にあまり汚れを作らないのは、この子のお腹の中が健やかで、こんな風にしっかりしたうんちをいつもしているからだろう。

 全て出し切った昴星のお尻は、まだしばらく広がったままだった。空っぽになった穴の中まで晒して、昴星はふぅふぅと息を吐き、やがてじりじりとその扉を閉じる。

 流斗が丁寧に昴星の其処を拭き、押し入れの中から下着を一枚、持って戻ってきた。

「はい、昴兄ちゃん、新しいパンツ」

 新しい、と言っても、ぼくにくれたものだからそれは汚れているものだ。

才斗は恋人の下着を一目見ただけでそれがいつどのようなシチュエーションで汚されたものか答えられるという。ぼくも、最近はそういうことが、多少は出来るようになってきた。流斗が持ってきたのは、あの温泉旅行の朝に昴星が流斗と揃ってオネショしたときのもの。……それが単なるオモラシではなくてオネショのときの、と正しく答えるためには、前の方は控えめなシミがお尻の方まで広がっていることに気付ければいい。

 流斗に穿かせてもらって、昴星のおちんちんはツンとブリーフの前を尖らせる。立ち上がって、「ひひ……」と笑い、自ら後ろを披露した。

「お尻のほうも真っ黄色だね」

「ん、これ、オネショしたときのパンツ」

「おちんちんもうれしそうだねぇ。はずかしいパンツ、もっといっぱいあるんだよね?」

 ん、と頷いた昴星は、提げてきたカバンから汚れた下着を三枚引っ張り出す。いずれも、まだぼくが見たことのないもの。というか、見たことがあるものは大抵、譲り受けてしまう。

「これはね、こないだ、学校のトイレのうんちするとこで、先っぽ濡らしたやつ」

 一番汚れが控えめなものを摘み上げて昴星は紹介して行く。ゴムも縫い目も白い、正しくそれこそ「白ブリーフ」と呼ぶに相応しいものだが、説明の通りちょうどおちんちんの当たる部分にいびつな丸型をしたシミがくっきりと付いている。

「でね、これが、きのう、公園でオモラシしたやつ」

 それは白地に細い水色のストライプが入ったもので、水色部分は目立たないものの、白い部分には広くオシッコが広がっている。

「ゴムのとこまでぬれてる。オシッコ、そんなにいきおいよく出たの?」

 多分、流斗もその現場を見ていたはずなのに、「見ていなかった視聴者」のためにそう質問した。

「んひひ……、オシッコしようと思ったら、ちんちん上向いちゃって、そのまんま出したらここまで濡れた」

「昴兄ちゃん、ほんとにオモラシ好きだねー。さいごのは?」

 他の二枚のものに比べて色の濃いシミが、股下から広がっている。もちろん、ぼくにはわかった。

「けさ、オネショしたパンツ……」

 ほんの少しだけ照れ臭そうに、昴星は告白した。

「昴兄ちゃんのパンツ、こんなのばっかりだね。こんど学校で体育の着替えのときに、みんなに見せてあげようよ」

 ん、と昴星は頷いて、その日を期待するようにテントの支柱を震わせる。そこにカメラを向けると、「みて」と媚を含んだ視線を返して、両手の指で其処をアピールするように囲う。

 ほんの少しだけ力を入れて、新しいシミを浮かべて見せる。……ほんの少しだけのつもりだったらしい、けれど、案外に勢いよく噴き出したそれは、みるみるうちにブリーフの前面にシミを広げて行った。

「きもちい? 昴兄ちゃん」

「うん、すっごいきもちぃ……、またせーし出したいし、はずかしいとこ、もっとみてほしい……」

 流斗はぼくの勃起したペニスと昴星のオモラシパンツを見比べて、机の引き出しからローションとコンドームを取り出して戻ってきた。「昴兄ちゃん、横になってお尻だけ出して、お尻の穴見せて」

 素直に昴星はそうした。太腿を抱えるように横になり、緩んでいるお尻の穴を指で左右に広げて見せる。ちょうど顔の目の前に、いま濡らした自分の下着の前部ざ被さる形だ。

「昴兄ちゃん、自分のオシッコのにおい、どんなふう?」

「ん、んと……、くさい……」

「だよね、そんなにくさいオシッコ、ガマン出来なくていっぱいしちゃうのが昴兄ちゃんだもんね?」

「んん……」

 昴星の身体は柔らかい。身体を団子のように丸めても、まるで苦しがるそぶりは見せず、意識は顔の前にある自分のブリーフに奪われている。

「昴兄ちゃん、出したてのオシッコってどんな味なの? 昴兄ちゃんって自分のオシッコのんだことあるんでしょ?」

 流斗がコンドームと引き換えにぼくからカメラを受け取り、顔に寄りながら訊く。昴星がちゅうとおちんちんごとブリーフを吸って、「ひょっぱい……」と答えるのを聴きながら、自分の砲身にコンドームを装着させる。

昴星には秘密で流斗とセックスをしたのが先々週のこと。そもそも昴星とぼくがセックスしてることについても、一応は「秘密」である。

だけどいまの昴星ならば構うまい。

「ね、昴兄ちゃんからだやらかいから、おちんちんもしゃぶれるんじゃない?」

「ん、しゃぶれる。ときどき、ひとりんとき、こうやって……」

 昴星は窓を開けて元気な短茎を取り出し、それをぱくんと口に入れるところを見せている。

「ん、ひんひん、ひふんれ、なぇへ、ひもひぃの……」

「へえぇ、すごいね、オモラシした自分のおちんちんしゃぶっちゃうんだぁ、ヘンタイだねー」

「んぃ、おぇ、へんふぁい……」

 昴星のセルフフェラチオの音を聴きながら、ぼくとしてももう辛抱が堪らない。

 流斗が「いいよ」と言うように頷いた。ぼくの方は準備万端、コンドームは、ローションでぬるぬる。

 そのまま、昴星のお尻の穴に先端を重ねる。

「っぷぁ!」

 ちょうど、オシッコを飲むところを見せようとしていたのだろう。顔に放尿しながら、「んにゃ、なっ、んっ、おに、しゃっ」と驚いた声を上げる。

「さっき昴兄ちゃんのお尻、何度もうんちしちゃってだらしないから、お兄ちゃんね、蓋してくれるんだって。オムツの中でくさいうんちたくさんしちゃったから、おしおきにもなるし、ガマンできるよね?」

「ひぁ、あはぁっ、んっ、おひりっ、おひぃっ……!」

「おしおき」という言葉を使うには、昴星はあからさまに喜んでいた。自分の顔に浴びせるシャワーは射精のように脈打つし、そんな姿を晒す少年を包むのは間違いなく幸福だ。

 ぼくは昴星の身体をそのまま自分の身体の上へと導く。流斗は後ろに回り、「わぁ、昴兄ちゃんのお尻、お兄ちゃんのおちんちんで栓されちゃった」とその部分を撮影する。それから昴星がついさっきシミをつけたブリーフを脱がせて、膝で体を支えさせる。そのブリーフはどうするかと思えば、昴星の口の中へ、濡れた部分から無理やり詰め込む。

「あ……か、はっ……」

「昴兄ちゃんの大好きなオモラシパンツだよ、おいしいでしょ。おちんちんすっごいうれしそうだもんねぇ。……自分のオシッコがいっぱいついたきたないパンツしゃぶっておちんちんかたくしてるとこ、みんな見てるよぉ」

 昴星は口に自分の下着を頬張り、涙に濡れた顔を正面から捉えられ、浅い呼吸を繰り返しながら、……それでも僅かに微笑んだと思う。

「ほら、昴兄ちゃんはお尻の穴いじめられるのも好きなんだよね? うんちが出てくるだけできもちよくなっちゃうんだもん、もっと太いお兄ちゃんのおちんちんなら、もっときもちよくなっちゃうよねえ?」

 昴星はがくがくと頷いて、自ら腰を上下に動かし始めた。

 その口から、唾液が糸を引いてブリーフがぼくの腹部に落ちる。流斗は先程の撮影の際に使ったものを昴星には渡す。

「お、おっおれのっ、おれのオモラシパンツっ、オシッコの、いっぱいついた、オモラシパンツっ……」

 腰を振りながら広げて、昴星はもう迷いなくそれにしゃぶりついた。ちゅうちゅうと自分のオシッコを吸う音が、粘液の音に混じる。

「しあわせ? 昴兄ちゃん」

「んむぅ、んっ、ひあわへっ、おひっこらいしゅきっ、おひっこ、おひっこらいしゅきっ」

「みんなに見せてあげようね? 昴兄ちゃんがヘンタイなとこ。そしたらもっともっときもちよくなれちゃうよ?」

「ん、んっ、みてみてっ、もっと、おれのヘンタイなとこっ、うんちもちんちんもパンツもおひっこもせーしもぜんぶっ、ぜんぶぅっ」

 昴星の肛門の中が、ぎゅっと狭くなる。

 ぼくはそれに抗うことなく射精した。

「あはぁあああんッ」

 少女の悲鳴のような声と共に、昴星がおちんちんから精液を噴き出させる。腰の上下動が収まったとき、精液に比べてずっと勢いの弱々しいオシッコがぼくの胸に注がれていた。昴星はうつろな目で、ブリーフを広げて、

「おれ……、またおひっこもらひひゃった……、おれのひんひん、へんたいの……、はじゅかしい、ひんひん……」

 そこまで言ったところで、体力が限界を迎えたのだろう。ぼくと繋がったまま、意識を落としてしまった。

「寝ちゃった」

「……というより、気絶しちゃったんだよ。無理をさせすぎちゃったね」

 えへへ、と流斗はあいも変わらず天使の微笑み。内面を「悪魔」なんて言ったりはしないけれど、でも、何と言うか末恐ろしい。この子はだって、ほんの少し前まではオシッコはちゃんとガマンしなきゃいけないものだという決まりごとをきちんと守っていたのだから。

「……片付けようか。すごい臭いだから」

「うん。ぼくもおてつだいするよ。昴兄ちゃんのうんちはおトイレ?」

「そうだね、オムツは袋に入れて……」

 換気扇は回さなくてはならない。けど、窓を開けたら近所に異臭がするって通報されるレベルだから、消臭スプレーと置き型の消臭剤に頑張ってもらわなくちゃ。ぼくはすやすやと眠る昴星の顔と身体を綺麗に拭き清めてから布団を被せて寝かせ、流斗は昴星の排泄物の処理をする。オムツはビニール袋の口を縛って密閉し、オネショシートは大雑把に水洗いしてから、それ単独で洗濯機に突っ込んで回す。

 流斗のてきぱきとしたお手伝いのおかげで、部屋が片付くまでさほどの時間も掛からなかった。

「お兄ちゃん、昴兄ちゃんのパンツいる?」

「うーんと……、欲しいけど、いいのかな」

「だいじょぶだよ。ぼくも片方もらっちゃお。チヒロねえちゃんたちにみせてあげるんだ」

 ぼくは少し気になって、訊いた。「さっき撮ったやつ、あの子たちには見せないよね……?」

「うん、見せないよー。だっていきなり見せちゃったら、昴兄ちゃんつまんないもん」

 それは、優しさだけではない。いや、それこそ優しさと呼ぶべきものなのか。

「いつかね、昴兄ちゃんがぼくみたいに、もっといろんなことができるようになったら、そのとき見せてあげるの」

 はたしてそんな日が来るのかどうかは、わからないけれど。

「だいじょぶだよ、お兄ちゃんの映ってるとこは見せないもん。ね、それよりお兄ちゃん」

 流斗は部屋の中央に立って、ぼくに振り返る。ウエストゴムに指を入れて、

「ぼくのパンツはいらない?」

 と訊いた。

 流斗のブリーフだって、オモラシ一回分のオシッコを吸い込んでいる。もうあらかた乾いて、黄色く染まっている。

 欲しいに決まってる!

 ぼくがそう答えるより先に、流斗は座るぼくの膝に乗って「もっとよごしちゃったほうがいーい?」と嬉しそうに、重ねて訊く。

「したいの?」

「うん! だって、ぼくずっと昴兄ちゃん撮ってて、ずっとどきどきしてたんだよ? ほんとはぼくだって撮ってほしいのガマンして、昴兄ちゃんのきもちいいののためにしてたんだよ? それに」

 流斗はぼくの頭を抱き、何度も頬にキスをしてくれながら囁く。「ぼくだって、お兄ちゃんのおよめさんだもん。お兄ちゃんのおちんちん、お尻にほしいよ」

 ぼくは小さな身体をぎゅっと抱きしめて、流斗の腕に答える。

「『二人きり』のときだけじゃなかったの?」

「昴兄ちゃん寝てるもん、いまは二人っきりだよ」

 流斗はいたずらっぽく笑って、「オモラシして、うんちもしたいな。おトイレいこ?」とぼくの手を取り立ち上がる。流斗は昴星を散々辱めたスマートフォンをぼくに渡し、便座の上で足をV字に広げて、「撮って」とねだった。

「いいよ。……そのポーズでするの?」

「うん。ちょっとだけど、オネショしたみたいになるかなって……」

電池はまだ残っている。ぼくはカメラを回し始めた。

「んっ……」

普段とはずいぶん違う体勢ながら、流斗は幼いアニメプリントなブリーフの中でやすやすと放尿し始めた。既に黄色く汚れた下着に、同じ色を重ね塗って行くのだ。

「撮れてる……?」

「うん、ちゃんと撮ってるよ。……撮られて嬉しい?」

 流斗は「えへへ」と笑顔になる。

「だって、ぼくもヘンタイだもん。オモラシするのだいすきだし、はずかしいとこいっぱい、たくさん、見てほしいもん。……お兄ちゃんのことが大好きな、ヘンタイだよ?」

 流斗のお尻まで巡ったオシッコが、便器の中にちろちろと滴る。放尿が終わるときにはもう、ブリーフの前はすっかり窮屈だ。

 ただ、もう一箇所、ほんのり窮屈な場所がある。

「そしたら、うんちもするね? ……ほんとは昴兄ちゃんのしてるあいだもガマンしてたから、オシッコといっしょにちょびっと出て来ちゃったの」

オシッコで濡れた足の間、お尻の穴に食い込みそうな部分は僅かに尖っている。

「昴星がオムツに漏らしてるの見て、してみたくなっちゃったの?」

「うん……。でもうんちぜんぶ付けちゃったらお兄ちゃんにあげられなくなっちゃうから……」

 流斗は便器の上でブリーフを脱ぐ。親指大のものは濡れた布にくっきりと茶色い汚れを記している。流斗はブリーフを広げて、大小のオモラシの証拠をカメラに見せてから、便器の上に跨り直した。後ろ向き、和式でするときみたいに、こちらにお尻を突き出して、

「んふぅ……、んんン……」

 愛らしいいきみ声を漏らしながら、勢いのいい排便を披露する。昴星に負けないぐらい健康的で逞しいうんちは、次から次へと便器の中に落ち、ほんのりとした悪臭と湯気を漂わせた。

「本当にガマンしてたんだね……、いつもより勢いがいいし、たくさん出て来る」

「んへへ……、だから、いつもよりきもちいいの……」

 ひときわ大きい塊というか筒というか棒のような管のようなものを長々とピンク色の肛門から伸ばすとき、「んンィっ……」と流斗は震えながら極まるような声を上げる。ぼくはトイレの床に膝をついて見上げるような角度で覗きながら、そのボリュームといい艶といい、こういうの、肛門科医や小児科医が見たら惚れ惚れしちゃうんじゃなかろうかとしみじみ思ってしまった。

「お兄ちゃん……、お兄ちゃんのおちんちんとぼくのうんちと、どっちがふといかなぁ……?」

 流斗は濡れブリーフを胸に抱いて振り返り、ぼくに訊く。そりゃ、どんなに立派なものでも、ねえ。……とは思うのだが、大量の排便の開放感に流斗がそう訊きたくなってしまった気持ちもよくわかる気がした。大人のぼくだって快便の朝には機嫌がよくなるものだし。いや、自分の出したものをそんなまじまじ観察したりはしないけども。

「どうだろうね。……比べてみる?」

「うんっ、……でも、そのまえにね」

 流斗はお尻を自分で拭いて、また便座の上で仰向けになる。

「タマタマもオシッコでびちょびちょ」

 丸い袋を摘まんで、ぼくに見せる。「あのね、お兄ちゃんにタマタマかわいがってほしいなって……」

 ふんわりとして、丸い。珠をちゃんと二つ収めて、少年の無限とも思われるような欲に応えるようにせっせと精液を生産する、働き者の場所だ。

「いいけど、……でも、そこはそんなに気持ちいいわけじゃないんじゃない?」

 事実、そこは非常に繊細な場所である一方、その表皮じたい、接触性の快楽を感じさせてくれるわけではない。もちろん、流斗が舌でちろちろ舐めてくれると大いに嬉しいし興奮するのだけど。

「タマタマだっておちんちんだもん、先っぽばっかりかわいがってもらってたら、タマタマがいじけちゃうよ」

 ……なるほど。ぼくとしても流斗のタマタマにいじけられちゃうと困ってしまう。

「お兄ちゃんのおちんちんで、ぼくのタマタマいっぱいかわいがってほしいな」

 音もなく動く、流斗のタマタマは色が薄い。ここに限らずおちんちん、いや、パンツの中にとどまらず、流斗は肌が白い。初めて会ったのは夏で、この場所までくまなく太陽に愛された色にこんがりしていたけれど、いまは真っ白だ。

 そこに重なるぼくの性器はいっそう赤黒く見えて、印象が悪い。けれど流斗のおちんちんの可愛らしさは際立つし、

「わぁ……、すっごいえっち……」

 流斗が嬉しそうにそう言うならば、構わない。

「じゃあ……、流斗の可愛いタマタマにぼくの、かけていい?」

「うんっ、いっぱいかけて、ぼくのタマタマべとべとにして。ぼくもいっしょにきもちよくなって、そのあとは」

 うん、とぼくは頷く。流斗のお尻も、たくさん愛してあげなくてはいけない。それは義務以前に、ぼくがそうしたい。

「ふあ……っ」

 ぼくが流斗のタマタマに亀頭を押し付けたまま茎を扱くと、流斗も一緒になって摘まんだおちんちんを動かす。

「すっごい……、お兄ちゃんのおちんちんでタマタマすごくあつい……」

 オシッコで濡れたタマタマの柔らかく弾むような感触、ぼくが扱くたびに擦れて、ぷにぷにとした心地がそのまま亀頭に伝わってくる。流斗が扱くとますます弾んで、それもアクセントとなって、……これは、気持ちいい。

「ん、はぅ、っんンっ、タマタマっ、きもちぃっ……おにぃちゃんのおちんちんでタマタマっ、タマタマすごくきもちぃよお……っ」

流斗にとっては、可愛らしすぎるその場所ももう立派に性感帯らしい。ぼくにとっても流斗の口やお尻の穴と同様、無尽蔵の快感を生み出す場所だ。身体の一つひとつに、こうして新しい意味が出来て行くのだ。……素晴らしいことだ!

「おにぃちゃっ、ぼく、もうれちゃうっ……!」

 いいよ、と言う代わりにぼくは身体の折り曲げて流斗にキスをした。流斗のおちんちんが脈打つ感じが、タマタマから亀頭へと伝わってきた。

 遅れてはいけないし、その懸念もいらない。

「あはぁンっ……」

 流斗の陰嚢に先端を押し付けたままで、ぼくももらった脈動と同じものを流斗に返した。もっともぼくのほうがずっと猛々しく浅ましい。流斗の精液はいつでもぴゅるっと可愛らしく飛び出すものだけど、ぼくのは、

「すごぉい……、タマタマ、どくどくゆってる……」

 ようなものであるからして。

 キスをしながら二人で射精したから、お互いのその部分がどんな具合になっているかを見ることはできなかった。身体を起こして覗くと、……流斗の細い胸には流斗自身のミルクが飛び散り、タマタマはでろんとしたぼくの精液がべっとり付着している。

「わぁ……、わぁあ、すごい、タマタマお兄ちゃんにいっぱいかわいがってもらっちゃったぁ……」

 流斗がためらいなく自分の小さな袋を手のひらで包み、べとべとの手を美味しそうに舐めるのを見て、ぼくも流斗の身体に散った少年の愛蜜を啜る。どうしてか、やっぱりちょっと甘く感じてしまう。この舌を持つのはぼくだけでいい。

 ついでに言えば、

「やんっ……」

 ピンク色したおっぱいも、おなじく甘く感じられる。昴星のように柔らかくはないけれど、白い身体に実る早熟の木苺、甘酸っぱくさえ感じられるほどだ。

「はい、ぼくのオモラシパンツ」

 流斗は首の下に置いていたそれを裏返してぼくに差し出す。ちょうど、お尻の汚れがぼくに見えるように。

「こないだ昴兄ちゃんとしてあげたときみたいに、このパンツにもいっぱい出してね? あ、でもうんちのとこはダメだよ? おちんちんのぐあい悪くなっちゃったらかなしいから」

 ぼくは顔を寄せて、何度も何度も嗅いでいて飽きていたっていいはずの鼻の奥が、大いに悦ぶのを覚える。どんな花よりかぐわしい、少年のオシッコの臭いにうんちがスパイスのように加わる。かけがえのない臭いである。

「ぼくのタマタマ、ちっちゃいよね……?」

 流斗は残りをぼくに拭かせながら訊く。

「昴兄ちゃんのは、もうちょっとふっくらしてて、もっとぷにぷにしてるけど」

「ああ……、まあ、流斗は昴星より二つ下だからね。その分ここだって、まだ小さくって仕方がないよ」

 そっか、と流斗は納得する。確かに昴星のここは、もう少し膨らみがある。昴星の茎は流斗のものより短いから、その分余計にふっくらして見える。いずれにせよ、成長前の誤差の範囲と言っていいだろうけれど。

「ね、お兄ちゃん。ぼくのおちんちんも、いつかお兄ちゃんのみたいになるんだよね。毛が生えて、皮がむけて、大人のおちんちんになるんだよね?」

 既に射精の悦びを知り、そんじょそこらの大人よりもずっと発展している流斗は言う。

「……そうだね。もうちょっとしたら、……うん」

 それはぼくにとってはほんの少し、寂しく思えることだ。

 きっと、ここが大人になった流斗はもう、いまの自分がしていることを恥ずかしく思うようになっているだろうし、ひょっとしたらぼくと遊ぶことに飽きてしまっているかもしれない。……それは昴星にしても同じことだ。才斗という最上の恋人がいる以上、やがてぼくは少年たちの記憶の中だけの存在になって、消えるさだめだ。

 それに覚悟を決めている。

「……お兄ちゃんは、ぼくが大人になってもぼくのことおよめさんって思ってくれる?」

 流斗はほんのりとさみしげに訊いた。

「……お兄ちゃんは、ちっちゃい男の子が好きなんだよね? ぼくがいつかおおきくなったら……」

 言葉の途中にはもう、ぼくは流斗を抱き上げていた。

 そう頑丈でもないぼくの腕でも、たやすく抱き上げてしまえるほど、軽く小さな身体だ、……いまは、まだ。

「流斗がそのときになっても、ぼくのことを好きでいてくれるなら。おむこさんって思ってくれるなら……」

 柔らかくて、すべすべのほっぺたに唇を当てる。

「流斗はずっとずっと、ぼくのおよめさんだよ」

 ぎゅっ、と流斗がぼくに抱き付いた。

「大好き。お兄ちゃん、ぼく、お兄ちゃん大好き」

 それは流斗が滅多に見せない、心の一番純粋な一区画から溢れ出る言葉だった。

「ぼくも、大好きだよ。ずっと大事にするから」

 嫌われないように、疎まれないように、この子の幸せを心の底から願う……、それがぼくのするべきことだ。それだけ出来ていれば、あとはそんなに大した問題じゃないかもしれない。

「お布団、……は昴星が使ってるから畳の上になっちゃうけどいい?」

「うん、どこでもいいよ。お兄ちゃんといっしょならどこでもいいもん」

 そりゃ確かに流斗はどこでもそこでと平気でおちんちん出しちゃうけどね。ぼくはさすがにそれは出来かねるし、流斗のことを考えたなら場所はおのずと制限される。

 ぼくが畳の上に下ろすと、

「お兄ちゃん、……おちんちん、ちょうだい?」

 すぐに流斗は動物のポーズになってお尻をふりふり。ピンク色の皺穴は、綺麗に拭かれている。ただその周囲からは乾いたオシッコがふんわりと臭った。愛らしさがこみ上げて、ぼくはそこに顔を寄せて左右の「ほっぺた」に一度ずつキスをしてから、谷を割り開いて、舐める。

「やぁん……、うんちしたばっかりだよぉ……?」

 でも、嬉しそうな声だ。舌をそのまま奥にねじ込む。ほんの少し、苦い気がした。けれど悪いものじゃない。

「んもぉ……、舌だけじゃやぁ……」

 甘ったるくおねだりをして、流斗は腰を逃がした。意図的にだろう、きゅ、きゅっと肛門を窄ませて、「おちんちんじゃなきゃやー」と、またお尻を振る。

「ちゃんと、順番は守らなきゃね?」

 ローションを手に取り、丹念に塗りつける。硬いうんちで広がっていたぶん、指二本は楽に入るが、やっぱり昴星より一回りほどきつい。ここを壊してしまうことがあってはならないから、ぼくの指はいやがうえにも慎重なものとなる。

「あぅ……ん、おまんこのなかぁ……」

 かりかり、畳に爪を立てて流斗が喘ぐ。言葉の選択が「お嫁さん」のそれになっていた。

「痛い……?」

「んんう、……すっごい、あつくって、……はやくお兄ちゃんのぉ……」

 三本目の指まで、流斗は飲み込んでしまった。力の抜き方は、まだこうやって愛し合った回数など昴星に比べてずっと少ないのに、器用ささえ感じさせるものだ。粘っこく絡みつき、時折ぼくの指を絞り上げながら、柔らかく蕩けて行く。

 指を抜いたところで、流斗はころんと仰向けになってから、おちんちんに触れる。皮を剥いて、

「おつゆ、いっぱいでてる……」

 鈴口に浮かんだものを、指の腹に当てて糸を引かせて見せた。

「お兄ちゃん、ちょっとだけなら、なめていいよ。……ちょっとだけじゃないと、ぼく、いっちゃうかも……、っンッ」

 透明なそれの味は、オシッコとは違う。ほんの一口吸い上げただけで、とろりとした舌触りと澄んだ潮の味が舌の上に広がった。本当はもっと欲しいなって思う。けど、ぼくのためにガマンしてくれている流斗のために、ぼくも我慢する。

 流斗は両手を伸ばした。

「ん……?」

「だっこ。……お兄ちゃんにおひざの上でぎゅーってしてもらうの好き……」

 ぼくも、好き。可愛い可愛い流斗のすべすべの肌とぴったり重なる悦びはなかなかない。吸い付くような肌の感触に、まるで流斗がぼくの本当の弟みたいに、……違う。

 本当のお嫁さんみたいに、心が満ちる。

「ん、ん、お兄ちゃん、好き、だいすき……」

 ぼくの胡座に、身を沈めながら繋がった流斗は何度もキスをしたがった。潤いを帯びた唇から、唾液が零れる。ぼくは時折流斗の乳首をくすぐるように撫でながら、……途中からはそんないたずらをして反応を見る余裕もなくなって、しっかり支えたお尻を持ち上げては下ろすことで二人分の快感を追い出し始めていた。

「んっンッ、おひり、っ、しゅごぉい……っ、おにいひゃっ、おにいひゃっのっおひんひんンッ!」

 悪魔かもしれないと思ってしまったことを、心の底からぼくは詫びる。……誰が何と言おうとこの子は天使だ、ぼくに舞い降りた、天使だ。

 最後の最後まで、流斗は唇を重ね舌を絡めたがった。ぼくはそれに応えながら、……激しい脈動を流斗に伝える。感謝の気持ちさえ籠めて。

 先に自分だけ快感を貪ってしまった後悔を打ち消したのは、「ごめんね……?」と、紅く染まったほっぺたを涙で濡らす流斗が震えた声で謝ったからだ。

「え……?」

「ぼくだけ……、先にでちゃった……」

「え?」

 見下ろせば、ぼくの腹部から伝う、流斗の精液がある。

「いっしょに、……ぼくのおまんこにお兄ちゃんのが出るまでガマンしようと思ったのに……」

 皮の隙間も白い粘液で潤んでいた。ぼくはキスをしてこの子を揺さぶることに夢中で、おちんちんには触っていない。

「……お尻だけで、精液出ちゃった?」

「ん……、ごめんなさい……、っん!」

 ぼくはまた深く深くくちづけをする。なんて可愛いんだろう、なんていとおしいんだろう、……天使、ぼくのお嫁さん。

「いいんだよ。流斗が気持ちよくなってくれるときには、ぼくも同じように気持ちよくなってるから……」

「……ほんとに……?」

「うん。だから謝らないで。……でもってぼくに、もっともっと流斗のこと気持ちよくさせて欲しい」

 それでもぼくは、一度流斗から自分を抜いた。小さな身体の小さな場所は、繰り返しの往復には耐えられないだろう。というか、本当は一回だってしてはいけないのだ。

「わぁ」

 流斗はぼくのコンドームの膨らみを見て目を丸くする。「すごぉい……、お兄ちゃんぼくの中でこんなにたくさんせーし出してくれたの?」

 少々恥ずかしいが、ぼくは素直にそれを認めた。愛のこもったキス、心が満ちて、すごく気持ちよかったのだ。

「ぼく、お兄ちゃんのせーしもっとほしい。……おまんこで味がわかればいいのになぁ」

流斗は前にぼくが教えたとおりにゴムを外し、先端を摘まんで持ち上げ、垂れてくるものを舌に乗せる。

「んふぁ……、おいひいね、おにぃひゃんのせぇひ……」

 流斗のだって美味しそうだ。まだおちんちんの皮は精液で濡れている。ぼくが畳に膝をついてかぷりと咥えて吸ったら、

「あぁん、ズルいよぉ、ぼくもぉ……」

 泣き声で言う。結局流斗の身体はぼくと再び重なった。自分の性器を相手の顔に見せびらかす格好で。

「んん、おにいひゃんのおひんひん……」

「美味しい?」

「ん……、ぷはっ、すっごいおいしいよ! お兄ちゃんのおちんちんの味、大好きっ……、においも……、すっごいえっち……」

「そっか……、流斗もおちんちんとお尻からすごいえっちなにおいさせてる」

「ほんと? お兄ちゃん、ぼくのおちんちん好き?」

「うん、好き」

「じゃあ、ぼくのオシッコは?」

「大好きだよ」

 流斗は「えへへ」と笑って、指を添えて勃起した茎をぼくの口へ挿入する。何をしてくれようとしているのかはわかっているし、ぼくもそれを期待していた。

「えへへ……、おいし? お兄ちゃん……」

ぼくの口にオシッコを注ぎながらそう訊かれても、……答えようとすれば口の中のかけがえのない露を零すことになってしまうからできない。ただ「んん」と言っただけ。

「うれしいな……、お兄ちゃんのおちんちん、ぼくのオシッコのんでまたかちんこちんになっちゃった……」

 そりゃあ、しこしこと動かされているんだもの、先端に浮かんだものを、指でぬるぬる亀頭に広げられているんだもの。

「お兄ちゃんのおちんちんおいしいの知ってるけど、こうやってぬるぬるいっぱい付けるともっとおいしそう……、いただきまぁす」

 オシッコを終えて流斗は本格的にぼくへの愛撫に集中し始めた。くすぐったいという言葉では少々足りない刺激が腰を痺れさせる。

「……流斗は、ぼくのオシッコが好き?」

 ぴた、と流斗は止まる、と同時にきゅうんと肛門に力が入り、同量だけの力がおちんちんを震わせた。

「うん、大好きっ」

 滅多に飲ませないからね、流斗が足の間からぼくを覗く瞳がキラキラ輝いていたって無理はない。

 すぐに流斗はぼくのものを浅く、しかししっかりと口に閉じ込めた。……正直勃起してて出しづらいし、さっきもしたからあまり溜まっていないのだけど。

「んんン……」

 流斗が嬉しそうに飲み込んで行く音が届く。おちんちんは何度もピクピクしている。けど、ここで扱いてはいけない。喘いで口からぼくの尿を零されても困るし、何より今度こそ、いっしょにいかなくちゃ。

「んはぁ……、おいしかったよぉ……、お兄ちゃんのオシッコ……。ふだんあんまり飲ませてくれないから、すっごいどきどきしちゃった……」

恥ずかしいんだもの、だって。

「オシッコおいしかったから、せーしもまたのみたくなっちゃった……」

 再びペロペロとぼくの亀頭を舐め始める。

「ぼくも、流斗のが飲みたいよ。すごく美味しいだろうからね」

 同じように、ぼくも流斗を咥える。

「んふぅン……、ん、……だいすきぃ……、お兄ちゃん、のっ……ぜんぶ、ぜんぶすきだよぉ……」

 ぼくの陰嚢を手のひらで揉みしだきながら、流斗は一気にフェラチオをペースアップさせた。……いっしょにレストランで食事をしたときには、ナイフとフォークを上手に使い、こぼすこともなく上品に食べて見せたのに、いまはこの上なく品のない音を進んで立てている。じゅぽじゅぽと、口をお尻の穴と同じものとして扱っている。まあ、口にしてるものがそもそも品性に欠いたぼくのペニスだ。

 美味しいと思うものをシャチホコばって食べる必要なんてない。

「んんっ……!」

 流斗の舌にぼくが味を贈ったのは、流斗がそうしてくれるより先だった。プライドなんてこの子の前ではティッシュペーパーよりもなお軽い。流斗がぼくの味と鼓動を存分に味わい尽くしてから、安堵したように甘い白蜜をぼくの口に零したとき、ぼくたちは本当の夫婦みたいに、お互いへの愛情に包まれているのだった。

「あは……、すっごいきもちよかった……」

 流斗はぼくの上で改めて正対して、ぴったりと抱き着く。

「ちゅーしちゃダメ?」

 まあ、……うん、「いいよ」嬉しい顔が見たい気持ちの方が勝った。

 じっくりと、一分近くキスをしていたら、

「んん……」

と昴星が唸った。さすがにもう目が覚めるのかもしれない。流斗と二人で見ていたら、うっすらと目が開き、

「あっ……」

 と小さく身を強張らせる。恐る恐る布団をめくって覗いて、「あー……」と。

 まあ、そうなるだろうなという気はしていた。ぼくと流斗に気付き、ばつの悪そうな顔で「ごめんなさい……」と謝る。

 流斗が上機嫌に捲りあげた布団には、大きな黄色い地図が描かれている。「もう電池なくなっちゃいそう」と言いながらも、流斗は「昴兄ちゃん、ちーず」と呼び掛ける。昴星はあれだけ射精してもまだ起き抜けには勃起するおちんちんを隠さないまま、恥ずかしそうにピースサイン。

「なんか、……すげー夢見た」

 昴星は身を起こしてぽりぽりと後頭部を掻いて言う。

「どんな夢?」

「んーと……、学校で……、女子の見てる前でオムツ付けてオモラシする夢……」

 それは、半分は夢じゃない。現実じゃなくてよかったね、ぼくは昴星の少し寝癖のついた髪を撫ぜる。流斗はスマートフォンを充電コードに繋いで、「おにーさんと二人でしてたの?」と問う昴星に、「そうだよー」なんて答えながら、あの動画を開く。

「覚えてない? 昴兄ちゃん、こんなにしあわせそうだったのに」

 スマートフォンからは、

「ん、んっ、みてみてっ、もっと、おれのヘンタイなとこっ、うんちもちんちんもパンツもおひっこもせーしもぜんぶっ、ぜんぶぅっ」

 ぼくの腰の上ではしたなく喚き散らしながら快感に溺れる昴星の映像。

「これねぇ、ハルねえちゃんたち楽しそうに見てたんだよー? あさって学校行ったら昴兄ちゃんがヘンタイだってみんなにバレてるの」

 昴星はわなわなと震え、あおざめている。「ううううそだよな、なっ、こ、こんなのおおおぼえてねーし、こ、こ、こんなのっ」

「うそだよ」

 にっこり、流斗は微笑む。あ、やっぱこの子こういう怖いとこある……。

「でも昴兄ちゃんが覚えてなくても、ぼくはずかしいとこいっぱい撮っちゃったもん。昴兄ちゃんがほんとは学校のみんなにはずかしいとこ見てもらいたくって、見られるとどんどんすごいことしちゃうヘンタイなんだって」

 流斗は画面をスワイプして、んふぇ、いま、ね、おれのぉ、オムツのなかで、どんどんれてぅの……、おれのぉ……、うんち」と脱糞を実況するシーンを昴星に見せる。かぁあ、と昴星の顔が赤く染まる、茹だってしまう。

「う、ううぅ……!」

 くすっと笑って、「ぼくもえっちな悪い子だけど、昴兄ちゃんのほうがもっと悪い子だねぇ。……やっぱりこれ、ハルねえちゃんたちに送っちゃおうかなぁ」

「や、やだ、やだぁっ、そんなんしたらっ……」

 昴星は泣きそうだ。流斗は可愛がるように、「でも、ほら」と昴星に画面をまた向ける。

「うんこにせーしでるとこ見てぇっ」

「ね? 昴兄ちゃん『見て』って言ってるし、すっごくうれしそうだよ?」

 ぶるぶる、ぶるぶる、昴星は首を振る。

 悪魔のような天使の微笑み。悪魔じゃないからそれは本当に、天使の微笑みだ。

 流斗は昴星の頬を両手で包んで、「大好きな昴兄ちゃんがかなしいことは、ぼく、しないもん」とおでこにキスをする。

「それより、もっと楽しいことしよ? 昴兄ちゃんもぼくもお兄ちゃんも、三人でしあわせになれること、いっぱいしよ? そのほうがずっといいもん。ね?」

「あう」

 哀れささえ伴うくらいに縮んで、ほとんど体に減り込んでいるようなおちんちんの皮をにゅっと引っ張って、流斗は笑う。

「おどろかせてごめんね、昴兄ちゃんのこと、ぼくとお兄ちゃんでしあわせにしてあげるから、怒らないでね?」

流斗はそのまま緩やかに、昴星のオネショした布団に昴星を押し倒し、顔を跨ぎ、自分のまだ柔らかい性器を昴星の口に差し込む。「んっ……」と小さく力を籠めて、

「ぷあっ……りゅ、っ……!」

 オシッコを、する。

 ぼくも昴星の両足を持ち上げて広げさせて、縮んでしまったものをほぐすように、タマタマを口に含んだ。

「んっ、んんっ、んんン!」

 口の中へ溢れる流斗のオシッコを半ば零しながらも、一生懸命に昴星は飲み下す。美少年の聖水を味わえば、……元々そういう風な扱いだって嬉しいはずの昴星で、ぼくの目と鼻の先でおちんちんはどんどん膨らんでくる。「膨らんで」……いや、残念ながら――いや、ちっとも残念じゃないことながら――ほとんど大きくはならないのだけれど。

「ぼくもお兄ちゃんも、昴兄ちゃんのこと大好き。だからぼくたち二人でいっぱいきもちよくしてあげるんだ」

 流斗がオシッコを終えてすっきりした顔を股の間から覗かせ、「お兄ちゃん、昴兄ちゃんのオシッコ、ぼくのお尻にちょうだい」と強請る。流斗はぼくより昴星に詳しい。だからひと眠りした昴星がまた尿意を募らせていることをすっかり判り切っている。

 流斗の望むまま、昴星に身を重ねた少年のお尻に昴星の短茎の行く先を向ける。

「りゅ、うっ……!」

「大好き」

 流斗が唇を重ねて昴星の言葉を封じる。

 ぼくの指先には、昴星の放水する圧力が心地良く伝わってきた。


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