お兄ちゃん、あのね

 

「もう、お兄ちゃんのえっちー」

 流斗が泊まりに来た。

 少年たちがこのむさ苦しい部屋に泊まりに来るのはもう当たり前、新鮮味がない? とんでもない。部屋に上がり、手洗うがいを済ませ、じゃあ甘い紅茶でも入れてあげようかとヤカンにお湯を注いだところで「お兄ちゃん」と呼ぶから振り返ってみたら、上はセーターもまだ脱いでいないのに、半ズボンを脱ぎ捨てて足を開いて布団の上、ウエストゴムも縫い目も全て白いブリーフをぼくに見せびらかしている流斗の居る空間。無邪気そのものの誘い方がぼくの心の琴線を掻き鳴らすのは当然で、多分ぼくは一生、こうなんだろう。

 ぼくが少年の姿をした神様に跪き、その細い太腿の間、魅惑のマシュマロに鼻を当てたところで、流斗が右のような言葉を発したのである。

「だって、流斗が可愛いもの。パンツもそうだし、パンツの中味もそうだし、流斗そのものが全部可愛いよ」

 流斗の白いブリーフは黄色く汚れていた。いつもより心持ち、汚れの面積が大きいように思える。表側からはっきりそれが視認出来るということは、相当量のオシッコを吸い込んでいるということだ。

 加えて、今日は少し汗の匂いも絡んでくる。恐らく、体育の授業があったのだろう。

「いつもより、いい匂いがするね」

 まだ柔らかい場所に鼻を押し当てて繰り返し深く嗅いでいるだけで、頭がくらくらしてくる。身体は疲れているはずなのに、心は流斗の顔を見るだけで復活するのだと言うように性欲のスイッチが入り、股間がじんと硬くなってくる。

「うん。お兄ちゃんとこ泊まるって思ったから、お兄ちゃんにいっぱいオシッコのついたパンツあげようって思ったんだー」

 昴星のようにちゃんと振らなかった、……だけではなさそうだ、それにしては大きいし、失禁したにしては小さい。

「オシッコしたあと、さいごにぴゅって出るでしょ?」

「ああ、……お尻を締めると、出るね」

 最後まで「絞る」なんて言い方を、ぼくらはする。

「学校のおトイレでオシッコしたあとにね、ちょっと残ってるの、パンツの中で出したの。えっとね、三回ぐらい」

「なるほど……、でも、おちんちん痒くならない?」

「ちょびっとだけだよ。それ以外のときはきれいにしてるし。あ、でもね、今日、体育の授業あったから、そのとき回りの子に恥ずかしいパンツ見られちゃった」

 えへへ、と流斗は笑うが、今更そんなことで動じるような少年ではないし、そもそも回りも「月一回以上学校でオモラシをする流斗」に慣れているのだろう。体育のときに湿っぽく汚れたブリーフを目撃したところで、今更何を驚くことがあろうか。

「お兄ちゃんみたいにかっこいいおちんちんの形だったら、パンツにオシッコついたりしないのにね」

「でも、ぼくは流斗の形のほうが可愛くって好きだよ。いい匂いだし……」

 また深々と嗅ぐ。清潔な匂いではない、しかし、少年がぼくのために作り出してくれた匂い。

 其れは濃厚であればあるほどぼくの心を揺さぶるのだ。

「ね、お兄ちゃん、もうお兄ちゃんのおちんちんおっきくなってるの?」

 いたずらっぽく訊かれて、こんな小さな優しい子相手に格好付けるのも馬鹿らしい。ぼくは素直に頷いて一先ずスーツの上を脱ぎ、スラックスも脱ぎ捨てて、地味なトランクスの尖りを流斗に見せた。流斗は嬉しそうにぼくの前に跪いて、下着の上から両手で包み込む。

「あはっ、やっぱりすっごいおっきい……」

 何の躊躇いもなく、少年はぼくの下着から勃起した陰茎を取り出して、ちゅ、ちゅ、と愛らしい音を立ててキスをする。それに反応するようにぼくが流斗の柔らかな唇を欲の矛先で押し返してしまうのは、無理からぬことといえるだろう。

「ね、お兄ちゃん、ぼくお兄ちゃんのせーし飲みたいな」

 ダメって言っても飲んでしまうんだろうし、「ダメ」なんて言えるようなぼくじゃないわけで、

「うん……、お願いします」

 二つの欲が一つに重なるのだから、断る理由を探す方が難しいわけで。

「えへへ、うれしいな。お兄ちゃんのおちんちんだいすき。今夜もいっぱいいっぱいおいしいせーし出してね?」

 れー、とぼくの袋の中の玉を一つずつ舌の面でたっぷり濡らすように舐めてから、両手を添えて茎を上がって来る。

 何度も言うようだけれど、流斗は「美少年」だ。

 大概の男が、こうしてフェラチオをされるのを嬉しく思うのは、この視界が幸福に満ちているからだろう。大好きな相手の顔が自分の陰茎によって一層美しく可愛らしく見えるし、舌や唇での愛撫は「慈しむ」という言葉の意味をはっきり理解させる。

「んふ……、おいひぃ、おにいひゃのおひんひん」

 ぼくが嬉しいだけじゃない、流斗が一緒に嬉しくなってくれているという事実は、……蛇が自分の尻尾を飲んでるみたいな話だけど、ぼくを余計に嬉しくさせてくれる。裏筋を舌先で弾きながら、ぼくの反応を観察し、先端にもう雫が浮かんでいるのを見ると、指先でぬるぬると亀頭に塗り広げる。

「やっぱり、お兄ちゃんはおとなだから、おつゆもいっぱい出るんだねえ」

 細い指を離すと、指の腹と亀頭とが糸で繋がる。

「もっともっとおいしそうになったよ、お兄ちゃんのおちんちんのさきっぽ……、いただきまぁす」

 流斗は、フェラチオが上手い。

 流斗は、技術という点でもかなりのものがあるのだけれど、それ以上に咥えられたときの口の中の狭さと温かさがぼくに強い快感を抱かしめているように思う。

「うん……、すごい、気持ちいいよ、流斗……」

 小さなお口一杯に、ぼくを頬張って、しかし歯は立てない。能う限りに舌を動かして絡めつつ、添えた右手は茎を扱き補助を行い、左手は陰嚢を転がしている。こまやかな気遣いという点では、流斗が一番かも知れない。

 ぼくの手は流斗の、天使のような巻き毛に自然と載る。小さな身体、小さな頭、小さな口、本当に「子供」としているんだという気持ちは罪悪感を超えてただただ快感しか生み出さない。ぼくがこの子の幸せを生み出せるなら、こうして快感を覚えることこそが一番大事だろうとさえ思えるのだ。

「んぅ……、おにぃひゃ……、らいひゅき」

 れろれろと器用に舌を這い巡らせながら、流斗は愛情の篭もった言葉を囁き、ぼくを見上げる。

「もう、でちゃう?」

 さすがに敏感だ。ぼくが頷くと、「ん、いっぱい出して」と陰嚢にキスをして、

「でも、一回だけじゃやだよ? 何度も、何度も気持ちよくなって、おにーちゃんのせーし、たくさんくれなきゃダメなんだからね?」

 うん、約束しよう。

 流斗が亀頭に再び吸い付き、激しく頭を動かし始めた。凄いヴォリュームの快感が一気に満ちてゆく……。

「んふぅ……ン……んぅ……」

 ぼくの痙攣が身に移ったように、流斗も微かに震えながらぼくの精液を小さな口で受け止めた。丁寧に、丁寧に、一滴残らず吸い上げてからやっと口を離して、

「えへへ……、やっぱりすごくおいしいね、お兄ちゃんのせーし……」

 何度も繰り返しキスをする。ぼくは余韻に浸りながらしばらく流斗の髪を撫ぜていたが、ティッシュでその口を拭い、抱き締めた。流斗の黄色いブリーフには、出来たばかりの小さなスポットがアクセントになっている。胡坐の中に後ろから閉じ込めてやると、自分から、

「お兄ちゃんのおちんちんしてたら、いっつもすぐこんな風に濡れちゃうんだよ」

 と申告する。

「可愛いよ、すっごく。……おつゆ、オモラシしちゃったみたいに見える」

 小さな耳を啄ばみながらぼくが言うと、くすぐったそうに笑う。

「……どうする? オモラシしたい?」

 ぼくの問いに、流斗は少し考えて、

「まだオシッコそんなにでない。……せーしでぬるぬるになったパンツ、お兄ちゃん、ほしい?」

 と質問を返す。

 ぼくは答えず、尿染みの中でコリコリと硬い幼茎を手のひら全体で揉み始めた。左手は薄く華奢な胸板に当てて、淡い色の乳首を指先で弄って。

「んんぅ」

 流斗はピクピクと震え出す。

「流斗もおっぱい、気持ちいいんだ?」

 こく、と頷く。ほんの少し恥ずかしそうに、「昴兄ちゃんが、してもらってるの見て、いいなって。お兄ちゃんがおっぱい好きなら、ぼくも、おっぱいできもちよくなりたいなって思って、……ひとりのときにさわったの」

「そうなんだ? ……気持ちよくなれた?」

「わかんない……。でも、お兄ちゃんがさわってくれるの、うれしいな……」

 左手におっぱい、右手におちんちん。流斗の可愛いところをWで楽しめる時間は短かった。

「あ、んひゃンっ……」

 短く悲鳴を上げて、流斗のおちんちんがブリーフの中で弾む。小さな耳を舐めて、「気持ちよかった?」とぼくが訊くと、微かに震えながらこくんと頷く。流斗はブリーフを脱ぐより先に、ぼくにキスをねだった。膝の上で抱き締めながら唇を重ね舌を絡め、甘い時間をぼくらは過ごす。

 流斗が立ち上がって、中から精液を零さないようにそうっとブリーフを脱いだ。黄色い生地に、ゼリーのような白蜜。二つの匂いが同時に溢れる。小さくなったおちんちんにも、べっとりと精液はこびり付いていた。

「ね、お兄ちゃん、ぼくのにおい、好き?」

 流斗は腰を突き出し、おちんちんをぼくの顔に近付ける。

「うん、大好きだよ。精液、いい匂いだね」

「じゃあ、味も好き?」

 乾いてしまう前に舐め取ってしまったほうがいい。細い皮余りをぱくんとしゃぶる。

「すごく美味しいね」

 流斗はくすくすと笑う。

「ぼく、お兄ちゃんにからだじゅう舐めてもらえたらうれしいな」

 望むところだ。

 しかし匂いに味、全身くまなく、愛らしさを纏っている少年はすっぽんぽんのまま、部屋を横切って押入れを開く。もうこの部屋の何処に何があるのかということを、何度も泊まった経験のある流斗だから判り切っているのだ。

 引っ張り出してきたのは、オネショシートである。

「オモラシしたいの?」

「ううん、お兄ちゃんにいっぱいしてもらいたいから……」

 ちょっと判らない。けれど流斗は畳の上にベージュ色のシートを広げて、その上にころんと横たわった。

「今日はね」

 流斗はぽかんと眺めるぼくに言う。

「お兄ちゃんに、ぼくのことおいしく食べて欲しいなって」

「た、食べる?」

 うんちを?

「ううん、……お兄ちゃんがおなかこわしちゃったら遊んでもらえなくなっちゃうから。でもね、ほんとにいっぱい、たくさん、ちゅーしてほしいんだ」

 ベージュのシートの色合い的に、何だか俎板の上に美少年が横たわって、調理されるのを待っているみたいに見える。美味しそうだし、実際美味しい身体をしている流斗なのだけど。

 ぼくは一秒後、流斗が摘んだ包茎の先から黄金色の噴水が噴き出したのを見て理解する。

「えへへ……、すごいでしょー」

 流斗の身体の上にかかる虹は、彼のお腹に、胸に、落ち、飛沫を上げる。さっき「まだ出ない」と言っていたけれど、どうやらあれは嘘だったようだ。その白い肌を薄ら黄色く染めてしまうのではないかと思うほどに濃い色と匂い……、少年が、こうするために膀胱の中に尿を溜めていたことは明らかだ。

 流斗は目をつぶり口を開けて、自らの顔にまでその噴水の矛先を向ける。口の中まで「美味しく」してくれようとしているのかも知れない。オシッコの勢いが収まるまで、長く続いた放尿の果て、流斗の上半身はシャワーでも浴びたみたいにびしょ濡れになった。

 おちんちんが、もう勃起している。

「ね、お兄ちゃん、ぼくね……」

 服を脱いだぼくを、招くように両手を広げる。

「お兄ちゃんのこと大好き。……えっちなことするの、お兄ちゃんとだけじゃないし、昴兄ちゃんや才兄ちゃんや、ゆりねえちゃんのことも大好きだけど、その中でお兄ちゃんが一番大好き」

 薄い胸板の奥で、心臓が鳴っている。いつもよりも早い。

「お兄ちゃんには、ぼくだけじゃなくって、昴兄ちゃんも居るし、ひょっとしたらこれからもっと男の子、来るかもしれないけど、でも、ぼく、お兄ちゃんのこと一番大好きだから、……いっしょにいるときだけでいいから、ぼくのこと、お兄ちゃんのおよめさんみたいに思ってほしいな……」

 これまで流斗が「女の子」になるのは、可愛い色のパンツを吐いているときだけだった。

 でも、いまの流斗は自分が男の子の身体をしていることを理解した上で、「およめさん」という言葉を使っている。

 ぼくに選択肢があるはずもなかった。

「うん……、わかった」

 オシッコの味のする頬っぺたを舐めて、ぼくは答える。

「二人きりのときは、流斗はぼくのお嫁さんだよ。可愛くって、良い匂いで、すごく美味しい、ぼくの、たった一人のお嫁さん」

 そして唇を重ねる。流斗が喜んでくれているのが判る。口の中のオシッコの味を、ぼくに少しでも伝えようと一生懸命に舌を絡めてくる。

 少年の告白を受け容れて、ぼくは胸の苦しさを味わっていた。長い長いキスの後は、流斗が用意してくれた最高に美味なる身体を舌で辿る。首に、鎖骨に、腋の下、舌を這わせる間、流斗は普段よりも純情に、より高い声を上げて感じてくれる。

 どこもかしこも、濃密なオシッコの味と匂い、素晴らしいとしか言いようがない。

「お兄ちゃん」

 目を潤ませて、ふうふうと浅い呼吸を繰り返す流斗がおちんちんを摘んで、皮を剥いて見せた。

「出そう?」

「ん……、おちんちんのミルク、出そう……」

「そっか。流斗はミルクも美味しいもんね。……この可愛いタマタマで作ったミルク」

 もちろん、そこもしょっぱくて美味しい。「ひうん」と流斗は太腿をびくびくさせる。

「もぉ……っ、いじわる、ガマンできないよぉ……」

 可愛い声を一頻り上げさせて、茎に一度キスをしてから、望み通りに吸い付いた。尿とは違う、とろみと塩気がぼくの口の中に広がったけれど、味わう暇もなく、

「あっ、あっ、んっ、んぁああンっ」

 流斗がぼくの口の中に、おちんちんを弾ませる。

 流斗の味だ、流斗の匂いだ。今日からはこの時間だけの、ぼくの「お嫁さん」の精液の味だ。

「はう……」

 ゆっくり味わって、一滴残らず飲みこんで顔を上げる。鼻にはミルクの余韻に遅れて、乾き始めた流斗のオシッコの匂いがたっぷりと届く。

 流斗を抱き起こし、膝の上に乗せて、改めて少年自身の尿を浴びた身体の匂いを愉しみつつ、キスをする。乾いたオシッコはちょっとべた付く、けれど少年自身は嫌ではないらしいし、ぼくにとっても好ましい。

「お兄ちゃん、ぼく、おいしかった……?」

「うん、ほんとにいい匂いだし、すっごく美味しいし……。そうでなかったら、こんな風にはならないよ」

 少年の手を、ぼく自身に導く。流斗は微笑んで、

「うれしいな。お兄ちゃんがぼくでこんなふうにおちんちんかたくしてくれるの、いっつも、すっごく、うれしい」

 ぼくだって、嬉しさの結果としてこうなるのだ。ぼくたちはこんな風に一致するスイッチを備えている。流斗は優しい手付きでぼくのペニスを愛撫しながら、何度もキスをくれる。

「お兄ちゃん、ぼくの、もっとのみたい?」

「ん?」

「ミルクも、……ジュースも」

 自分の身が汚れるのも構わず、ぼくは流斗を抱き締めて「飲ませてくれるなら」と耳元で囁く。流斗はちゅっとぼくの耳にキスをして、「お兄ちゃんが飲みたいの、あげる」

 と甘酸っぱい声で囁いてから、立ち上がる。

 ちょうど顔の高さに、ふるんと震える可愛らしい幼茎。指で少し震わせてから、ちょっと考えて、

「たまには、流斗が普通にオシッコするところ見てみたいな」

 とぼくはリクエストした。

「ふつうに?」

「うん。いつもオモラシするところたくさん見せてもらってるけど、普通にさ、男の子のオシッコするところも、すごく可愛いって思うから」

 にこ、と笑って「いいよ」と流斗は言う。オネショシートからずれたぼくの前で、おちんちんを摘んで見せる。

「……でも、ここでしちゃっていいの?」

 一瞬、どうしようかと思ったけれど、「いいよ」とぼくは頷いた。……考えてみればこれって、ちっとも「普通」じゃないよな。

 流斗の正面に膝をついて、今更のようにカメラを向けると、はにかんだようにピースサインを送りながら小さなおちんちんの先っぽからオシッコをし始めた。色は薄い。ぼくは夢中になってシャッターを切る。

「お兄ちゃん、この写真でも一人のときに使うの?」

「うん、……だって、すっごく可愛いもの」

 噴き出すオシッコは、シートにぐんぐん吸い込まれていくが、やがて追いつかなくなる。表面に水溜りを浮かべ、泡を立てる。

「お兄ちゃん、えっち。ぼくのオシッコするとこみておちんちんかたくしちゃうの、お兄ちゃんだけだよ」

 そう言いながらも、流斗は嬉しそうに微笑んでいる。いつもの通り、流斗が嬉しいことは、ぼくにとっても嬉しい。ぼくが嬉しいことが流斗にとっても嬉しいなら、幸せはぼくらの手の中で遣り取りされるたび、どんどん膨れ上がっていくことになる。

「したばっかりなのに、いっぱい出ちゃった」

 最後の一滴まで搾り出し、つまんだおちんちんを振って水を切り、水溜りを見下ろして流斗が言う。

「でも、オシッコはまだまだいっぱいだせるよ。ここに来るまでにたくさんお水飲んだんだ」

「そっか。じゃあ、あとでまたオモラシするところも見せてもらえる?」

 当然、と流斗は頷く。

「でもね、オシッコしたら、一回出ちゃったらなかなか出ないのも、出したくなっちゃった。つぎにオシッコするとき、いっしょに出ちゃうかも」

 流斗の言葉の意味はすぐに把握した。

「オモラシするとき一緒に出てきちゃったら困るよね」

 こく、と流斗は頷く。ブリーフを黄色く汚すことにためらいのない少年だけれど、お尻のところに付いた汚れは恥ずかしいと思うらしい。

 ちょっと待っててと言い置いて、ぼくは浴室から洗面器を持ってきた。流斗も昴星もそういうことをして見せてくれる。その度に自分が入浴する際の洗面器を消毒しなければいけないのは億劫だから、もう、専用のものを買ってきたのだ。まあ、消毒はどっちにしてもするのだけど。

「ここでしちゃっていいの……?」

「うん、構わないよ。流斗が嫌ならトイレでもいいけど」

 ふるふる、流斗は首を横に振る。

「お兄ちゃんのお部屋でうんちするの、してみたいな……」

 自ら洗面器をお尻の下に置いた。穴との位置関係を気にして、微調整。「立ったままするの?」ぼくが訊くと、

「うん。そのほうが出てくるとこお兄ちゃんに見せてあげられるもん」

 と両手で小さなお尻を割り開く。

 色素沈着の進んでいない、ほとんどピンク色と言ってもいいようなお尻の穴だ。皺も綺麗に揃っている。けれど、多分学校でか、おうちに寄ったときにか、一度したのだろう、薄茶色の捩れたペーパーの滓が着いている。けれどそれは、何とも愛らしいものとして映る。

「んん……」

 外向きの力が、肛門に篭もるのが判る。むくむくと内側から焦げ茶色のものが顔を出した、と思った次には、弾き出されるように洗面器の中に飛び出して、洗面器にころんと軽やかな音を立てて転がった。サイズは親指ほど、球状の、小さくて硬めの便だ。

「かわいいのが出たね?」

 流斗は一度、きゅっと肛門に皺を寄せる。それから改めて力を入れ始めた。

「ん……、えへへ、太いの……、太くてかたいのがね、お尻の穴のとこまでおりてきてる……」

 再び顔を覗かせたのは、いましがた零れ落ちたものよりもふた回りほど太い、しっかりとした筒状のもの。いつも思うのは、この子は顔に似合わず立派なものをするなあということで。昴星のように、健康的な腸を保つためにサプリメントを摂っているわけでもないのにこうして生み出すことが出来るのだから、天性の腸の丈夫さを持っていることの証かも知れない。

「ほらぁ……、ね?」

 太腿の裏、お尻と膝の裏を結ぶラインの丁度半ばほどまで、流斗の生み出すうんちが垂れ下がる。まるで尻尾のようだ。消化器官で一度完全にこなごなにされて、それが少年の腸に蓄積し、水分を奪われたことで再びこうした硬さを取り戻すという仕組みを、ぼくは思った。流斗のピンク色のお尻の穴はいっぱいに広がって、ぬちぬちと音を立てて排泄を続ける。

「ほんとだね。すごく立派なの、いっぱい出て来てる。ぼくのお嫁さんは可愛いお尻からこんなにたくさんうんちしちゃうんだね……」

 ぼくは流斗のおちんちんに手を伸ばしてみた。そこは、きつく勃起している。ぼくの前での排便に興奮している。ぼくも、流斗の排便を見てもちろん興奮しているのだけれど。

「やぁん……」

 愛らしい声を上げて、流斗の身体に鋭い力が入った。括約筋がぎゅっと引き絞られ、うんちをちょん切って洗面器の中に横たえる。けれど、またすぐに顔を出す。

「うんちして、こんなにおちんちん硬くしちゃうんだね。……初めて会ったときからずっとそうだよね、流斗は……」

 重ねた時間が短くないから、もう思い出語りだって出来る。お嫁さんと初めて出会った頃のことを思い出せるなんて、本当に幸せなことだ。

「んん、あのときとは、違うもん……」

 流斗は首を振って、最後まで塊を出し切った。

「あのときは、知らないお兄ちゃんにはずかしいとこ見てもらえるのうれしくって、おちんちん硬くなったけど……、いまはね、そうじゃなくって」

 流斗が振り返る。

「……大好きなお兄ちゃんとこんなふうにできるの、うれしいから、おちんちんかたくなっちゃうんだよ……」

 流斗の言葉に嘘がないことは、その大きな瞳が浮かべる透明な表情からもはっきり判る。

 ぼくは胸を衝かれて、流斗の潮っぱいお尻にキスをした。

「ね……、お兄ちゃん、ぼく、もうちょっとだけうんちでる」

「……うん、いいよ。ガマンするのは身体によくないからね」

「……あのね、ぼく、……お兄ちゃんとキスしながら、うんちしてみたい……」

 その思い付きが、流斗にはとても魅力的に思えるのだろう。ならばそれを叶えるためにどうしたらいいのかを考えるのがぼくの仕事だ。

 ぼくは流斗を連れて洗面器を持って浴室に移動した。腰掛けに座ったぼくの開いた太腿を跨ぐようにして流斗が座り、その下に洗面器を置けば……。

 流斗は嬉しそうにぼくに抱きつく。少年自身の体液と排泄物の匂いが、どうしてこんなに優しく感じられるのだろうかと思うほど、それは芳しい。

 流斗は両手でぼくの頬を包む。目を閉じて唇を寄せ、重なる寸前に、「すき」と囁く。

 ぼくも、好き。

 そう答える代わりに重なった唇で絡んだ舌で、心を篭めて流斗を愛する。流斗は時折ひくひくと強張りを見せながら、お尻から洗面器へと排便して、全て出し切ってからもしばらく、ぼくの太腿から降りようとはしなかった。

「……お兄ちゃん、あのね」

 流斗はぎゅっと抱きついたまま、秘密を漏らすように声を落とした。

「あのね、……こないだね、ぼく……、昴兄ちゃんとね、昴兄ちゃんがいっつも才兄ちゃんとしてるみたいなこと、したの」

「……昴星と、才斗がいつも……?」

 それは、オモラシであったり飲尿であったりする。つまりぼくとしていることと大差ないはずだけど。

「ううん……、あのね」

 流斗は、その賢さからすれば珍しいことに、言葉を発することに戸惑っている。

 けれど、腕に力を篭めて抱き付いて、言った。

「あのね、……おちんちんで、お尻の中、きもちよくするの、昴兄ちゃんにしてもらったの」

「え」

 思わず反応してしまった。

 流斗はほんのり頬を赤らめて、「えへへ」と笑う。

「……昴兄ちゃんのおちんちん、お尻に入れてもらったんだ。そしたらね、そのあと、ずっと、うんちするときどきどきしちゃうようになっちゃった……。ぼく、いっつもうんちするとき、お兄ちゃんのおちんちんのこと考えちゃうんだ……」

 流斗はぼくの身体から下りて、洗面器の向こう側にぺたんと座ってぼくを見上げる。

「ぼく、お兄ちゃんが好き。……昴兄ちゃん、お尻に入れてくれたのは、ぼくのこと好きだからだって、大事に思うからだって言ってくれたよ。才兄ちゃんも昴兄ちゃんのこと大好きだから、いっつもおちんちんとお尻でつながるんだって。……だからね、ぼく」

 流斗が、ほんの少しも緊張していないはずはない。

 だって、こんな小さな子。

 昴星とつながるのだって、相当な負担が要ったんじゃないか……。さっきから見ている限り、お尻の穴は健康そのもののようだけれど。

「お兄ちゃんのおちんちん、お尻に、欲しい……」

 ……賢い子だ、その無茶は百も承知のはずだ。

 痛みを怖れる気持ちだって、あるに決まっている。そしてぼくが「大人」として当然の判断を下すかもしれないということも。

「流斗」

「はじめて、お兄ちゃんと会ったとき、ぼく、お兄ちゃんにうんちするとこ見せたでしょ?」

 うん、「ソフトクリーム」って言ったときのこと。まだ流斗が「りょうた」と名乗っていたときのことだ。

「あのときから、お兄ちゃんと遊ぶとき、いっぱいうんちしてきて、……お兄ちゃんにね、ぼくのうんちの穴、出すとこだけじゃなくって、もっと、どきどきしたり、きもちよくなったりするののために、してほしいなって……」

 ぼくは何も言えなかった。ぼくが何も言えない理由を、流斗は先刻承知のはずだ。

「昴兄ちゃんのお尻に、入ったんでしょ……?」

 寂しそうな笑みを浮かべて、流斗は言った。ぼくの表情の変化は、恐らく完璧なまでに見通されている。

「……昴兄ちゃんには才兄ちゃんがいるけど、ぼくは二人といっつもは会えないし、だから……」

 頷いては、いけないのだ。……少年を愛するものとして、少年を傷つけることは絶対にしてはいけない。

 しかしもう一方で、その望みを全て叶えるために在りたいという願いだって、ぼくにはある。……いいや、綺麗ごとだ。単にぼくだって、……そうだ、ぼくだって、流斗に、入れたい。

「流斗……」

 おちんちんは緊張からか縮んでいる。ぼくは洗面器を退かして、いとおしい匂いを纏った「お嫁さん」を抱きすくめる。

「……流斗は、まだ昴星ほど身体が育ってないし、お尻の穴も小さい。昴星は才斗にしてもらってるから慣れてるだろうし、……だから、すごく、痛いと思う」

 流斗は黙っている。ただ、とくとく、とくとく、普段よりずっと早いスピードで鳴る鼓動が、ぼくには伝わってくる。

 ぼくもそれは同じだ。

「……約束しよう、流斗」

「……やくそく……?」

 腕の中からぼくを見上げた大きな瞳を見詰めて、ぼくは言った。

「痛いと思ったら、ちゃんと痛いって言う。ぼくは流斗に痛い思いは絶対にさせたくない。そんなことになるぐらいだったら、流斗と出会わなかったほうがいいって思うから。……ぼくは流斗のことが大好きだから、大好きだから心の底から……、約束して欲しいんだ」

 ちゃんと、流斗は頷いた。だからぼくは信じるしかない。ぼくを愛すると言ってくれた少年の心を、信じるしかない……。

 ぼくの膝から降りて、畳の上に四つん這い。両の肘を折り畳んでお尻を高く上げる。緊張しているはずなのに、流斗はローションの蓋を開けるぼくに振り返って、

「なんだか、お尻の検査するときみたい」

 と健気に笑って見せる。

「お尻の検査?」

「うん、学校でね、一年に一回するの。お兄ちゃんがぼくぐらいだったときはしなかった? お尻にぺたんって、シールみたいなの」

 ああ、ギョウ虫検査のことだ。懐かしい。

「今年はね、ひとりでちゃんとできたけど、それまではおかあさんにしてもらってたの。そのとき、こういうかっこうだったから」

 あれ、ぼくはもうあまり覚えていないのだけど、身内に見せる姿であるとはいえ、相当に恥ずかしい体勢だ。しかもあのセロハンみたいな検査フィルム、けっこう硬くって、お尻がちょっと痛くなった気がする。

 あの痛みを目安として、少なくともそれ以上を流斗にぼくは味わわせようとしているのだ。

 いや、違う。……どうにか、あれよりも楽に繋がれるように、慎重を期すのだ、そう考えるべきなのだ。

「んっ……」

 触れただけで、流斗はピクンと震えた。それでも、痛いのか、反射的に手を止めたぼくに、

「んん、ちがうよ。……冷たくって、ちょっとびっくりしただけ」

 優しい微笑が帰って来た。

「でも、あんまり冷たいまんまだとカゼひいちゃうかな……」

 示唆するところはわかる。けれど、そんなに性急に「熱」を突っ込んで、「カゼ」よりずっと酷い目にあわせるわけには行かないのだ。いたしかゆし。ただ、右のお尻に唇を当てることで流斗のはやる気持ちを少しでも宥めて、指をちらりと見る。爪は毎日丁寧に切っている。これは今年の秋からすっかり習慣となっていることで、自分のものならいざ知らず、少年たちの場所を愛撫することを考えれば当然のマナーと思っている。

 ぎゅ、ぎゅっとぼくの指に、流斗の括約筋が絡み付いてくる。流斗なりに力を抜く方法を模索してはいるのだろうけれど、やっぱり本質的には「出口」である場所だ……。初めてであることを加味すれば、それでも十分に頑張ってくれていると思うのだけど。

「ね……、お兄ちゃん……?」

 流斗が肩越しに振り返る。

「お兄ちゃんの、おちんちんのね、おいしいの、しながらだったら、うれしくってお尻、もっとやらかくなるかも……」

 その健気な努力、ぼくを幸せにしようという愛情、……どうして否定できるものか。

 一旦指を抜き布団の上に横たわったぼくに、先ほどと同じ体勢を流斗は見せる。お尻の周りはローションでぬるぬるで、肛門はほんの少し赤味を帯びていたし、顔を跨ぐときにはおちんちんも縮んでしまっているのが見えた。

 けれどぼくが再び其の場所へ指を押し込むときに、流斗は小さく笑い声さえ立てる。

「お兄ちゃんのおちんちん、おとなしくなっちゃったね……。でもぼくのよりずっとおっきいし、昴兄ちゃんのよりずっとずっとおっきい」

 ぼくのペニスを優しく掴んで、

「ね、お兄ちゃん、……ぼくも、お兄ちゃんのジュース、ほしいな」

 遠慮がちに流斗はそう求める。

「……いいよ」

 ぼくは滅多にしない。昴星と流斗にそれを求められても、やっぱり何と言うか、……少年たちのそれとは違って汚いものだという自覚が在るから、しかねる。

 それでも、ぼくのために頑張ろうとしてくれる流斗のためになら。

 流斗がしっかりとぼくの先端を口に収めたのを確かめてから、ぼくは下肢から力を抜いた。

 ぼくが流斗の口の中へと放尿し始めた途端、きゅ、とお尻の中が狭くなる。ぼくが勢いを調整しながら放出する液体を、喉を鳴らして飲みながら、流斗は身体の中へ流れ込むぼくの尿に反応したようにぼうっと肌を熱くする、……おちんちんが、また力を取り戻していく。

 一度、きゅうっと狭くなっておちんちんを反りかえらせた流斗の胎内は、ぼくの指に馴染んだようににわかに柔らかくなった。少し押し返すような力が働いたと思った次には、おなかに沿うように勃起した流斗のおちんちんから四度目のシャワーが解き放たれ、ぼくの腹部へとせせらぎを迸らせる。放尿を終えたぼくの性器を口から外し、右手をおちんちんに宛がった流斗は放物線の先をぼくのペニスに向ける。生温かな流斗のオシッコが、ぼくを擽った。

「えへへ……、お兄ちゃんもおいしくなっちゃった……、ぼくのオシッコでびしょびしょ」

 ずぶ濡れの毛の中に指を潜らせていた流斗は、自分の尿の匂いを纏ったぼくのペニスに興奮が煽られたように、勢いよくフェラチオを始める。……お尻に指を入れられながら、口いっぱいにペニスを頬張って。苦しいはずなのに、そんな素振りはおくびにも出さず、一生懸命な愛撫。

 そしてお尻の穴は、ぼくの二本目の指をすんなりと受け入れる。もちろん流斗のお口と舌はそのままぼくを射精にまで至らしめるぐらいに気持ちいい、だけど、ぼくは流斗を拓くことに集中していた。流斗の口にあるものはあくまで、流斗のこの場所を和らがせるためだけにある。ローションを注ぎ足して辛抱強く動かしているうちに、ぼくの指は「噛まれる」から「挟まれる」へと変わり、「擦る」から「滑る」へと変じた。

 伴って、ぼくを収める流斗の唇から漏れる声も、次第に甘いものへと変わってきた。……たぶん、ぼくの気のせいではないだろうと思う。

「あのね……、お兄ちゃん……」

 それでも時折、「噛んで」しまいながら、流斗は微かに笑みを含めた声で言う。

「お兄ちゃんの、指がね、お尻の穴……、いじってるの、ぼく、気持ちよくなってきちゃったかも……」

「……ほんとうに?」

「ん……。いつもね、ふというんちするとき、お尻、じぃんってなって、おちんちんかたくなっちゃうの、……それと、おんなじ感じ……」

 三本目が、既に滑り始めている。流斗のうんちは、さっきも見たとおり、いつも身体に似合わず立派なものだ。肛門を通過する物体に快楽を得る素養を、昴星同様この子も持ち合わせているというのは、この子の願いを叶える上ではとても大事なことだと言えるだろう。

「流斗」

 ぼくは、言葉を選んだ。……ぼくがどう思うかというのは、とても重要なことのように思える。この子に頼まれたから敢えてこの子を傷つけるようなことをする、……そうであっては、いけない。

「流斗の中に、入れていい? 流斗の中に入りたいよ」

 またぼくのペニスに舌を這わせていた流斗が、はっ……と息を震わせて、舌を離した。

「……お兄ちゃん……」

「すっごい、ドキドキしてるんだ、恥ずかしいぐらいにね。……流斗の中、気持ちいいんだろうなって思ったら、すごい……」

 流斗が、身体から降りて、ぼくの顔を見た。びっくりするぐらいに真面目で、冴え渡ったような顔になっている。緊張と逡巡が在る、しかし何より透明にぼくが見るのは、……流斗のぼくへと向かう、真っ直ぐな気持ちだった。

 ゴムを填めて、ぼく自身にもたっぷりとローションを纏わせる。

「……ぼく、どうしたらいいの? さっきみたいに、よつんばい?」

「……うん、そうだね。最初は後ろからの方が楽だと思う」

 流斗は素直にそうした。猫のようにお尻を高く上げてから、

「……ぼくが、もっとちゃんと出来るようになったら、さっきうんちさせてくれたときみたいに、……抱っこして、してくれる?」

 と振り返って訊く。

「うん、きっと、そうする。……ぼくもね、流斗のこと抱っこするの、好きだからさ」

 にっこりと微笑んで、流斗は頷いた。

 ゴム膜越しに、流斗の肛門へと押し当てる。

「あ……、すっごい……、お兄ちゃんのあついの、お尻の穴でわかる……」

 その小さな、縦に細長い穴はくすみがない。てらてらとローションで光って、ぼくとぴったり吸いあっているかのようだ。

「入れるよ……?」

「ん……、ん、んぁ……あ……!」

 じりじりと、……はじめ、強い抵抗がある。躊躇いを抱くほど、其処は硬く引き締まっているかに思えた。

 けれどもう後には引けない。

 ぼくは奥歯を噛み締めて、手を添えたペニスをただ前へと進ませることに集中していた。亀頭がひしゃげてしまいそうに思えても、流斗が味わう痛みに比べれば物の量ではないはずだ。

 壁との攻防は、不意に終わった。

「ひゃっ……あっ……あ……!」

 ずるん、と。

 滑り込むように、ぼくの砲身はほとんど全て、流斗の中に収まってしまっていた。勢いが良過ぎた、慌てて、「流斗」痛くない? 訊きかけたぼくより先に、

「お兄ちゃんの……、おちんちんだぁ……」

 流斗はただ、びっくりしたような声で言う。それから、微かに身を震わせた。

「……流斗……、平気? 苦しくない?」

 いや、苦しくないはずがないだろう。馬鹿なことを訊くな。

 けれど流斗は、「ん……」と案外に落ち着いた声で答える。

「入るとき、最初だけ、ちょびっとだけ痛いような気がしたけど……、いまは平気……」

 ぼくは出来る限り感じまいと努めていた。流斗のお尻の穴が伝える、三次元的な快感を。

 昴星よりも、ずっと狭い。苦しいほどだ。

 お尻のサイズがそもそもあの子よりも小さい。ぴったりと重なるぼくの腰骨と流斗のお尻の幅の違いからでもそれは明らかなことだ。

 しかし、流斗は弱々しい力でぼくのことを締め上げながら、「はあぁ……」とゆっくりと息を吐き出す。

「お兄ちゃんの……、およめさん、だよね? これで、ぼく……、お兄ちゃんのおよめさん、なれたよね……?」

 振り返るのも難しいのだろう。流斗はぺたんと肘を折り、顔を横に向けてそう訊いた。

 その声が、たまらなく嬉しそうであるという事実が、ぼくの胸を強く打つ。

「……そうだよ……、流斗は、ぼくのお嫁さんだ」

「えへへ……」

 細い腰、華奢な背中、伝った先の、ふわふわした髪。

 ぼくは流斗とセックスをしている、こうやって。

「またお兄ちゃんと、ちゅーしたくなっちゃった……。いっしょにきもちよくなったら、いっぱいちゅーしたいな……」

 気持ちよく、なれるの? 流斗は……。

 ぼくの懸念が伝わったのか、「おちんちん……」と流斗が求める。ぼくが恐る恐る其処へ指を当てると、……確かに其処は、熱を集めている、ぴんと、反り返っている。

「ぼくね、……お兄ちゃんがおちんちんきもちいいと、おちんちんかたくなるの、わかったんだ。お口でお兄ちゃんのことするときも、お兄ちゃんがどんどんおちんちんかたくして、きもちよくなって、せーし出してくれて……、順番にしてくれるあいだ、ぼくもおちんちんきもちよくなるの。……だから、いまだってそうだよ?」

 其処まで言って、ううん、と流斗は自分の言葉を打ち消した。

「いま、じゃなくって……、はじめてお兄ちゃんと会ったときから。……お兄ちゃんがぼくのおちんちん見て、うんちするとこ見て、おちんちんかたくしてるのわかってた。だから、ぼくもうれしくって、おちんちんかたくなっちゃったんだ……。最初からぼく、お兄ちゃんのおよめさんだったんだ……」

 可憐としか表現しようのない少年の言葉に、ぼくはもう止めることを諦めた。

 願いを叶えるために生きている。ぼくを愛してくれる少年を、愛して全てを満たすために、ぼくは生きていかなくちゃ。

「あ、あっ、あ! おにいちゃん……、おにいちゃっ、おちんちん、んあっ、あぁ!」

 流斗の肛道の収縮が激しくなった。行き詰まりそうになりながらも、ぼくは腰を動かした。少年の肛門の内部の構造を、ぼくのペニスはリアルに感じ取っている。根元を咥えて扱き、奥の比較的ゆったりとした空間から滲み出る熱がぼくに刺さる。

 普段は摘んで動かしてやる流斗のおちんちんを、手のひらで包み込んでぼくは愛撫していた。

「んひゃっ、おにひゃっ、おひんひんっ、しゅごっ、しゅごいっ……、おなかの中とつながっちゃっ……」

 流斗がおちんちんをピクピクさせるたび、ぼくのペニスを扱く力はより強まった。括約筋と連動しているのだから当然のことだ。流斗が確かに感じている……、その理解はぼくを安心させた以上に、急激に快感を募らせる結果となった。

「流斗……っ、出すよ……!」

「んっ、はやくっ、んぁう、あぁっはぁああ!」

 これまで、たくさん聴かせてくれたどんな声よりも、一番愛らしい声を上げて、……流斗が激しくぼくを締め上げる。ぼくはどこまでも素直に其れに従った。

「あ……はぁ……ああ……! あっ……ああん……」

 流斗のおちんちんが掌の中で何度も弾む。それは幸せの数を重ねていくのと同じことで、……そうだ、とぼくは薄ぼんやりした頭で思う。これから、何度も、何度も、重ねて、積み上げていかなきゃいけない……。

 ぼくにとっての幸せ、流斗にとっての幸せ、を。

「はうぅ……」

 ぼくがペニスを抜き去ると、……やはり無理がないはずがない。流斗はころんと身体を横たえた。けれどぼくは何を訊くよりも先に、流斗が求めたとおり、流斗の唇に唇を重ねた。流斗はしっかりと両手でぼくに抱き付き、それに応える。舌を絡めつけて、ぼくの体温をもう一度、確かめるように。

 唇が離れて、最初に流斗が言ったのは、「オシッコ、したくなっちゃった……」という、ちょっと恥ずかしそうな言葉。

「うん……、いいよ」

 ぼくは精液の滴る流斗のおちんちんに顔を寄せた。もう力をなくしていて、本当に小さく、白い。一口、まず精液を吸い上げるために含んだ口の中へ、はじめ、遠慮がちに、……すぐに確かな勢いのオシッコが、爽やかな潮の味と共に広がった。

「……およめさんに、なっちゃった」

 流斗はぼくの口に放尿しながら、夢の中にいるみたいに呟く。

 そうだよ、流斗。ぼくのおよめさんになっちゃったんだ。

 流斗は手のひらをぼくの髪に当てて、やや不器用に撫ぜる。「……お兄ちゃんは、ぼくのおむこさん」

 全部出し切った。ぼくは全部飲みきった。流斗から顔を上げると、流斗はぱっちりとした目で、「お兄ちゃん、ちゃんと気持ちよかった?」と訊く。

「そりゃあ……、もちろん」

 ぼくの下半身では、ようやく熱が収まり始めていた。先端の精液は、……何というかまあ、そりゃあ、これぐらい出たって不思議はないよなあ、という量。

 目をきらきらさせて、「すごぉい……、こんなにたくさんぼくのお尻で出たんだぁ……」流斗が覗き込む。

「まあ……、うん、だって、すごい気持ちよかったから……」

「ほんとに? ぼくのお尻、きもちよかった?」

「……うん」

 流斗は嬉しそうにぼくの頬にキスをして、自らの手でそのゴムを外しにかかる。ぼくが止める間もなく、くるくる外して、あっさりと精液を零してしまった。けれど、

「このあとお風呂?」

 と訊いて、ぼくが頷くと、

「じゃあ、お風呂のまえにぼくがきれいにしてあげる」

 ゴム臭く、生臭いはずのぼくのペニスに舌を当てる。カリ首の裏側を、本当に丁寧過ぎるぐらい丁寧に舐めながら、「おにぃひゃん、らいしゅき」と微笑をくれる。

 少年の細い足の間では、やっぱりおちんちん、また勃起している。

「えっちなお嫁さんだなあ」

 ぼくは嬉しくなって、流斗を抱え上げ、また身体の上に乗せる。ぼくの鼻の先には流斗しか持ち得ない、甘く優しい精液と尿の混じった匂いが届いた。

「らって……、ぼくがえっちだと、お兄ちゃんもうれしいでしょ……?」

 うん、そうだ。ぼくの「およめさん」にはおちんちんが生えている。そしてそこはとびっきり可愛くって、ぼくの幸せと呼応してこんな風にはしたなく硬くなってしまうのだ。

「んんぅ……」

 ぼくは流斗を咥えた。流斗もぼくを咥える。ぼくが流斗の弱い性器を幸せにしてあげるのは容易いことだけど、流斗にとっても、ぼくを射精させるのは朝飯前のことと言えるだろう。お尻を使わなくても、十分すぎる幸せが此処にはある。

 だけど、次の幸せを二人で感じあってから、

「……また、しようね?」

 流斗はぼくにぴったり抱き付いて、そう言った。まるでぼくが、もうしてくれないと思うかのように、不安そうに。

 キスという形で答えるのが、きっと、一番正しかったはずだ。


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