土曜の午後の楽園

 昴星の、諭良の、「恋人」の一人であるところの「おにーさん」と会わない週末というのはずいぶん珍しくなっていた。今日はどんなことして遊ぼうか、そう思って鼻歌交じりに「うんこ橋」近くの川沿いアパートの下まで辿り着いたのに、

「お兄さん、今日はいないよ」

 階段に座っていた諭良が残念そうに肩を落として言った。「メールしたら、いま長野にいるんだって」

「ながのー……? あー……、ってことは、由利香んとこか」

「そうだろうね。っていうか、昨日から出張で向こうに行ってて、だからついでに由利香と遊んできてあげることにしたみたいだよ。ぼくらと違って彼女はしょっちゅう会えるわけじゃないから」

 そもそも、こっちにいるときにしろ昴星は「おにーさん」の恋人ではあるにせよ、彼を独占したいと思っている訳ではない。そうでなければこんなに幸せではいられないだろう。「おにーさん」のことを「好き」だと思うからこそ、彼のことを同じく「好き」になる自分以外の存在――諭良、流斗、由利香ら――にも同じぐらい幸せな時間を過ごしてもらわなければならないと昴星は考えている。

 言うまでもなく、諭良もそれは同じに違いない。

「そっかー……、じゃー、諭良でもいいや。遊ぼうぜ」

「ぼく『でも』いいって昴星が言ってくれるなら、ぼくも昴星『で』いいかな」

 こなれたやり取りを二人でしながら歩きだせば、もう二人の気持ちは互いに向いている。「おにーさん」に会えないのは確かに残念ではあるけれど、二人で遊べばその時点で大いに楽しいことは確定している。それぞれに、学校へ行くわけでもないのにしっかりとしたサイズのバッグなりリュックサックなりを提げていて、その中には楽しい時間をより楽しくするためのものが詰まっている。アイディアについては、二人分ともなれば無限大に膨れ上がる。

「うちのプールに来る? 今日は土曜だからプール、人いっぱいいると思うけど」

 さすがにそのシチュエーションで平気で裸になれる諭良ほど気が太くないから、昴星は首を横に振った。人がたくさん、ということは泳げないことを恥ずかしく思う月渚はいないのだろうし。

「城址公園でもいいけど、しょっちゅう行ってるからなー」

 昴星は視線の先、東京まで繋がる線路の高架の向こう側、こんもりとした山を見遣った。一人で、「おにーさん」や諭良と二人で、ときには才斗も加わって三人で、遊ぶ場所の定番となっているが、どこが安全でどこが危険かをしっかり見極めきってしまったから露出をするにも刺激が少ない、……とまでは思わないが、たまには別の場所がいいような気がしないでもない。

「じゃあ、あっちは?」

 城址公園はこの街の南の端にあり、そこを超えると県道は急な上り坂になる、地名も変わるし、もう東京ではなくなる。

 諭良が指差したのは西側、川の上流だ。護岸されつつも緩やかにカーブを描く川はすぐ見えなくなり、ずっと向こう側には山が幾つも立ちはだかっている。遠足で登った山も向こうにあるし、あの山の向こうもやはり東京ではない。私鉄も終点で、山を越えるにはJRかバスに頼らなければならなくなる。

 距離的にはさほど遠くもないが、しかし縁や気持ちはずいぶん「遠い」場所である。

「ぼく、前に一人で自転車で行ったことあるんだけど、割りと結構……、何ていうか、本気で『山』と『川』って感じだよ。家もぜんぜんなくって」

「チャリでって、ここから?」

「うん。でも、電車で終点まで行ってから歩いて行けばそんなにかからないと思う。……どうかな?」

 諭良の言葉から、今日の予定が緩やかに決まって行く。

 気の向くまま、思いの向くまま、行くのも悪くない。だって土曜日だ。

「おまえさ、終点のいっこ前の駅の側にレオマーケットあんの知ってる?」

 うん、と諭良はすぐ頷いた。「あそこでパンツ買ったことあるもの」

「じゃー、あそこで何か新しいの買って行ってさ、ついでに食べ物とか飲み物とかも買って、おまえの言ってた方まで行ってみようぜ」

 傍から聴いてみれば、ただ土曜の午後に楽しくお出掛けをしようとしている男児二人にしか見えないだろうか。

 頭の中には、徐々に組み立てられていく予定がある。二人なら、二人で楽しい、そういう時間を大事に、昴星と諭良は生きている。

 

 

 

 

 電車の終着駅を超えて、更に十分近くは来ただろうか。

「この辺でいい?」

 昴星を振り返って、諭良が訊いた。運動神経においては昴星もなかなかのものだし、体力だって負けていない。しかし急な上り坂を自転車を押して歩くとなれば、一歩一歩の長さが違う分、体力の消耗も違う。それに、昴星は多少なりとも緊張していた。

 露出。いい加減もう慣れたっていいぐらいしてきてはいるが、……車どおりが稀だとはいえ公道である、そして真ッ昼間である。諭良は「おにーさん」と、それすら平気で出来るのかも知れないけれど。

 ここまで来て尻込みするのは馬鹿らしいに決まっている。そうは思うのだけど、まだ上着のボタンも外せないでいる昴星を見て、

「昴星」

「っお」

 諭良が、ぎゅうと抱き締めた。その身体はびっくりするほど温かい、いや、熱い。

「いっぱい遊ぼう。二人で、……たくさん思い出作ろう」

 髪に、唇が当てられる音がした。顔を上げると額に、頬に、そして唇へと、品の良いキスが降る。美しい顔をした諭良、もう「親友」とも「恋人」とも呼んでいい相手の顔が、すぐそこにある。

「……ん」

 諭良は、おれが気持ちよくなれると思ってるんだ、よな?

 昴星自身もそう思うのだ。おれはこいつといっしょに、気持ちよくなる。……感じたことのないくらい気持ちいい思いを、こいつといっしょにする。そうやって時間を重ねて、……二人で。

 それは、おれたちだけの大切な「思い出」になる。

「わかった」

 諭良の腕から抜け出して、昴星はひとつ、深呼吸。

 昴星の覚悟が決まったことを、諭良は確信したらしかった。昴星に先んじて、コートを脱ぐ。それから靴を脱ぎ、ジーンズのボタンを外し始めた。昴星もそれを見て、無茶な勇気を搾り出す。途中からは、昴星が諭良を追い越した。白ブリーフ一枚になったところで、今更のようにもう一度、道の上と下を眺め渡して、

「……でい!」

 一気にそれを引き摺り下ろして、足から抜いた。諭良が縮こまった昴星のペニスを見て微笑み、自らも紺色のブリーフを脱ぐ。靴下と靴はさすがに脱げないが、

「……ひひ……、フルチン、なっちゃった」

 間違いなく、いま、おれ、裸なんだ……。

 昴星は、股間を抜けていく寒風にそれを嫌と言うほど感じる。諭良はほとんど緊張などしていない様子で来ていたものを自転車のサドルに引っ掛けて、「大丈夫? 寒くない?」と昴星を案じた。

「さ、みー……、けど、へーき。でも……」

「でも?」

「……ん、やっぱ、ちょっと怖い、かな……」

 諭良は「ちょっとぐらいなら平気だよ」と微笑む。

「ここぐらいなら、城址公園とか、あと……、昴星も行ったことあるんでしょ? 流斗の家の方の」

 ここよりだいぶ都会の、流斗の街にも、街はずれには車どおりの少ない道がある。その道沿いの雑木林を登った先で全裸になったことは昴星にもあった。耳をすませば車の走行音だって聴こえてくるような場所ではあったけれど、「おにーさん」と一緒にたくさん気持ちよくなってしまった。

「ああいう場所より安全なぐらいじゃないかな。それにね、ここはもし車が来ても……、ん」

 諭良が昴星の手を引いた。「車、来たみたい」

「うえ」

「一応、隠れようか」

 諭良の手は、昴星を道沿いの林へと導く。太い木の陰に隠れて間もなく、坂の上の方からじゃりじゃりとチェーンを巻いた車のタイヤ音が聴こえて来た。

 昴星は身を縮ませ、息さえ止める。道からは死角、……だろう、とは思う、けれど。諭良がしっかりと手を握って「大丈夫だよ」と言ってくれなければ、パニックに陥っていたかもしれない。

 車のタイヤ音はどんどんと近付いてくる。昴星はいまさらのように、道路脇に脱ぎ散らかした自分の服を思い出した。あれを見られたら、ここにおれらが隠れてることなんて一瞬でバレちゃうんじゃ……?

 凍り付き震える昴星をよそに、車はどんどんと近付いてくる。百も二百も言い訳を並べたところで、こんな場所で全裸になる合理的な理由にはならないと判っていながら、昴星の用意する言い訳が三百を超えたところで、……車は速度を落とすこともなく、ごろごろとすぐ側を通り過ぎて行った。タイヤの音が、徐々に遠ざかっていき、やがて耳を澄ましても全く聴こえなくなった。

「行っちゃったね」

 諭良の吐息が肩に垂れる。それが、心地よく思えるほど温かかった。そっと見下ろせば、諭良のペニスはすっかり勃起して、ビクビクと震えているのだ。その余った皮の中で、もうガマン汁が漏れ出していることは想像に難くない。

「い、いまので……?」

「ん? うん、今ので。……もし一人きりだったらぼく、このままの格好でもっと車の側まで行っちゃってたかも」

 恐ろしいことを考えるものだ。それが単なる冗談ではない気がするあたりが、諭良という少年の恐ろしいところである。

 諭良は勃起したペニスをぶらぶら揺らしながら自転車の脇まで戻った。昴星もきょろきょろしつつ、縮み上がった陰茎を隠しつつ戻ると、二人して同時に同じことに気付く。自分のスマートフォンに着信があるのだ。

「誰からだろう……、流斗からだ」

「おれのも……」

 顔を見合わせて、二人揃って思い至るのは、あの少年も「お兄ちゃん」に会いに部屋まで行ったのでは、ということだ。

 諭良の電話が鳴った。

「あ……、流斗。うん……、そうだよ、お兄さんは今いない。長野に行ってるんだって、あ、聴いてた? そう……、え、あ、そうなの?」

 漏れ聴こえて来る流斗の声から察するに……、やはり「お兄ちゃん」がいないものだから、諭良と昴星に遊んでもらおうと考えたらしい。ただ、離れたところに住んでいる分、来るタイミングが少し遅れてしまったということだろう。

「今? えーと……、鴨抜山の近く、近くって言っても、駅から自転車で十分ぐらいのところだけど……、え?」

 諭良がスマートフォンを頬に当てたまま、「流斗も来たいって」と言う。

「流も……、いや別にいいけど、来れんの? あいつ歩きだろ?」

 昴星と諭良だって自転車では結構な頑張りが必要な距離であった。二つも年下で、性的な部分を除けばそう体力のある方ではない流斗一人で来るのは大変だろう。

 しかし、「お兄ちゃん」のいない土曜日を一人で過ごすというのも可哀想だ。流斗は三人の中でもとりわけ―一番、と言ってもいい―「お兄ちゃん」が大好きだから。

 少し悩んでから、

「……じゃあ、わかった。鴨抜山の駅までおいで」

 諭良が、溜め息交じりに答える。昴星としても、まあ異論はない。流斗一人で来させるには道程が長い。どちらかの自転車の後ろに乗せてやるのが効率的でもある。そもそも昴星にしろ諭良にしろ、流斗はとても可愛い「弟」のような存在なのだ。

 スマートフォンを切った諭良のペニスは勃起が収まっていた。

「じゃあ、ぼく今から流斗のこと迎えに行ってくる」

「え……、一人で?」

 もちろん一緒に行くつもりでいた昴星はきょとんとする。その昴星のブリーフとハーフパンツを摘まみ上げて、「昴星はここで待ってて。流斗、もう天永坂の駅だって言ってたから、乗っちゃえば十分もしないうちに着くよ」と答えながら、自分のカバンの中に昴星のブリーフとハーフパンツをしまった。

「って、ちょっと待ておまえ何でおれのパンツ!」

 諭良はそそくさと自分のブリーフを上げながら、

「寒いだろうから、上は着てていいよ。でもぼくが戻るまで昴星にはフルチンでいて欲しいな」

 優しい声と微笑みで、そんなことを言う。

「い、意味判んねー!」

「そう? 何のためにここに来たのか思い出せば、十分に『意味』はあると思うけどな」

 シャツを着て、ジーンズを上げた諭良が跪く。「帰って来るまでにここが、もうちょっとふっくらしてるといいな。そうしたら流斗も入れて三人で過ごす時間が、きっともっと楽しくなるよ……」

 昴星の肉付きのいい尻を両手で鷲掴んでぐいと引き寄せ、

「っひゃ……!」

 陰嚢と陰茎を一口に収める。ぬるん、と一度舌が廻った。

 ちゅぽ、と口から外して、「待っててね」颯爽、という言葉さえ相応しく自転車に跨ると、さっさと下り坂を降りて行ってしまう。昴星はただただ呆気に取られて、舐められた部分を風が撫ぜるたび冷やっこく感じることに心細さを覚えるばかりだ。

「じょ、じょーだんじゃねー……」

 穿いて来たブリーフとハーフパンツは諭良に持って行かれてしまったが、昴星のカバンには他にも下着が入っている、……言うまでもなく、「おにーさん」と遊ぶためのものだ。加えてここへ来る途中の駅でわざわざ仕入れた新品のブリーフだってある。ハーフパンツがないのは辛いが、

「フルチンでなんて待ってられるかよ……」

 大慌てでシャツに袖を通し、カバンを漁る。昴星なりに判断力をフル稼働させて、……白いのは、目立つ、黄色く汚れてるのなんてダメだ、女子のも絶対ダメ、ちらっと見られても「パンツ」ってばれないようなやつがいい……。

「これだ」

 結果的に掴み取ったのは、夏の間しか活躍の機会のない紺色の水着である。

 冬の山林で水着を穿いているというのも奇妙極まりない状況であるが、それでもブリーフよりはもう少し、見られても恥ずかしくない格好だろう。誰かに見咎められたら? そのときはまた、百でも二百でも言い訳を考えればいい。フルチンでいるよりはよっぽど容易く言いくるめられそうだ……。大慌てで穿いて、それからセーターもジャンパーも着て、……人心地。それでも一応、太い木の陰に隠れる。

「……あいつ、マジでこんなとこでいっつもフルチンでいるのかよ……」

 諭良が(流斗も)昴星の常識では到底測れない大きさの度胸を備えていることは知っている。リリィの件にしてもしかり、あの二人で他所の学校の女子(ただしうち一人は昴星も知る元同級生)に「お勉強」と称して陰茎の観察をさせたことさえあると言う。

 昴星自身、露出したいという願望がないわけではないことを認める。しかしそれでも、あいつらのはレベルが高すぎる!

 諭良は今、恐ろしいアイディアを持っている。

 今度、クラスの女子に見せようかと思うんだ……。

 ブリーフの中のペニスを、恐らく半分以上勃起させた状態で、諭良は昴星にそう言ったことがある。

 ぼくの家のプールに、仲のいい子たちを呼んで、そこで……。流斗も賛成してくれたんだ、一緒に見せたいって。もし良かったら昴星もいっしょに来ない?

 そのときは、回答を保留した。流斗一人でも手に負えなくなりそうなのに、その上諭良まで加わっては。「仲のいい女子」と言われて真っ先に浮かぶのは、いつも流斗のペニスを好き放題させている葵・砂南・那月の三人だが、彼女たちに自分のペニスを見せるなどと……。

 そういうことを、一度も想像して来なかったと言えば嘘になる。

 あいつらに見せたら、どんな風になってしまうんだろう……? そんなことを想像しながらオナニーをしたことは一度や二度ではない。そしてそういうときのオナニーで、普段以上に早漏になってしまう昴星なのだ。「おにーさん」にも、リリィにも月渚にも、「見せてあげてもいいんじゃない?」と言われた。実際、彼らに見られる分には恥ずかしさ以上に強烈な気持ちよさを感じる、それが同級生の女子に入れ替わって、喜びにならないと考えるのは難しい。

 しかし……。

「おれはあいつらみてーに強くねーし……」

 今だって、……冷静に考えれば誰も来るわけがない、来たって気付かれるはずがない場所で陰茎を出してほんの十分か二十分待っていることだって苦しいような自分に、それが可能かと言われれば。ならば自分の妄想にだけ留めておくのが一番賢いと、昴星なりには思うのだ。

 思うのだが。

 白い息が唇から漏れる。

 上はきちんと着ている、下も、一応、あくまで「一応」のレベルではあるけれど、水着で隠している。

 誰が来たって大丈夫。

 言い聞かせながら、昴星はゆっくり、ゆっくり、足音にさえ気を遣いながら、木の陰から辺りを伺い、停めたままの自分の自転車の元まで降りた。坂の上を見ても下を見ても車はないし、耳を済ませれば自分の呼吸音ばかりが大きく響く。

「……お、おれは……、その……」

 陰茎は依然として縮こまったままだ。しかし膀胱から尿道にかけて、じんと熱くなっているように思われる。喉元まで心臓がせり上がったかのように、鼓動のせいで自分に言い聞かせる言葉が震える。

「オシッコ、したくなった……、さみーから、オシッコしたい……、ただ、そんだけだから……」

 ならば、木陰でさっさとしてしまえばいいのだ。誰にも見られる懸念のない場所で、必要なことを当然のやり方で済ませてしまえばいいのだ。

 しかし。

 諭良なら、流斗なら、……そんなやり方で済ませるはずがない。もっとリスクを取るに決まっている。何故って、そうすればもっと「楽しい」ことを知っているから。

 坂の上から、下から、誰かが来るかもしれない。不意に車が現れたらどうしよう? しかし見渡した限り、未だその兆候は全く見られない。

 昴星は崖と道とを隔てるガードレールに尻を当てる。もし仮に崖の向こう側の山の中からこちらを見る目があったとしても、腰回りが隠れているから何をしているかは見えないだろう。ガードレールは氷のように冷たく、ところどころ錆びついてペンキが剥げ掛かっているのか、薄い水着ごしにも昴星の尻にざらりとした刺激を与えた。

 恐る恐る、水着のウエストを下ろす。目の前の道の、凹凸の目立つアスファルトの灰色、ひび割れに逞しく根を生やす雑草が、はっきりとこの場所が外であることを昴星に感じさせた。自分でも情けなくなるほど縮み上がった陰茎の余り皮を出すだけで、ツンとしみるように尿意が高まる。

 数秒、皮の先だけをはみ出させた格好で昴星は固まっていた。辺りから音という音が全て消えたかのような感覚、耳がじんと熱い。諭良なら、流斗なら、もうとうに勃起しているかも知れない。

「ふ……、フルチンだったら、さっきだって、したし……」

 震える声で自分を勇気づけるように呟き、水着のウエストと自分の下腹部とで挟んでいた皮を引っ張り、砲身そのものまで水着の外へと零す。それから更に勇気を振り絞って、人より大きめと自覚している陰嚢をも、水着の外へ放り出してみた。一度隠した時間があったからか、何より一人だからか、緊張は先程よりもずっと大きいものになっている。勃起とは程遠い状況にありながら、冷たい山の空気に晒された昴星の陰茎は引き締まって尿道が細まっているように、強い尿意の割にいつもよりもずいぶん長く膀胱に尿を押し留めていた。「おにーさん」とこのところ重ねている「膀胱訓練」の成果が徐々に出始めているのかも知れない。

 車や人の気配は依然として、皆無だった。

 水着の左右の腰に入れたままの指を、そのままゆっくりとずらしていく。背中を丸めて、……太腿まで、膝まで、……靴を足だけで脱いで、左足を抜いた、右足も、抜いた。

 下半身を遮るものは何一つない。

 ひう、とひときわ冷たい風が吹いた。反射的に身を縮めたところ、身体に埋もれそうなほど縮こまっていた包茎の先端から勢いよく尿が迸った。

「あ……はぁ……っ」

 放尿の解放感、……見上げれば青空、顧みれば冬の山の景色、右手は上り坂、左手は下り坂、ここは外、昴星は自分の考えが何一つまとまらなくなって行くのを覚えた。ただ、

「おれ、オシッコしてる……、オシッコ……」

 熱い吐息と共に声を漏らしながら、無意識のうちにシャツとセーターを捲り上げ、腹まで露出して放尿に耽る。自分のペニスから斜め下に零れるオシッコの向きが、徐々に角度を上げ始めることには気付いていた。しかしシャツを捲る両手の指で、自分の乳首を弄り始めていることには全くの無意識で、

「オシッコ……、オシッコすんの、きもちぃ……っ」

 呟きながら、自分の描く放物線を陶然と見つめる。勃起した分だけ高らかに、遠くまで飛び散る黄金色の滴が、冬の陽射に煌めいていた。

 やがてそれも力を喪って行く。滴の伝った丸型の包茎はぴんと上を向き、ひくひくと震えを繰り返していた。

「……っ……ん……、ちんこ、勃起したちんこ……、丸出しにしちゃった……」

 今更のようにそれが恥ずかしく思えて、左手に掴んだままの水着を広げる。

 しかし、昴星は今更それを穿くことの意味が判らなくなっていた。何のために脱いだか、……オシッコをするために脱いだだけだ、ただそれだけだ……、オシッコは、もう終わった、だとしたら、もう脱いでいる「意味」なんてない。

 そう思うのに、「穿く」ための意味が思い浮かばない。

 諭良だったら、流斗だったら……、そういうことを次々に考えてしまう。あの二人にとっては穿かないことにこそ意味がある。昴星がまだ判り切れない意味を、あの二人は判り切っていて、その世界で楽しむ術を持っている。

 水着を、ジャンパーのポケットに突っ込む。そのジャンパーの裾を、震える指先できつく握り締めて、……決して、怖くない、怖くなんかない、そんな風に自分に言い聞かせながら、ずっと寄りかかっていたガードレールから離れ、一歩、また一歩、狭い道の中央まで、至る。

「怖、くない……っ」

 その言葉とは裏腹に、勃起は見る見るうちに収まり、昴星の陰茎は元の通り竦みあがっていた。ただ、先端からは残尿とは明らかに違う粘り気を帯びた滴が長く糸を引き、垂れている。睾丸の内側が痺れるような錯覚の波、欲のスイッチが壊れてしまったような、……奇妙に心地よくふわついた感覚が股間を覆っていた。道の真ん中でジャンパーを脱ぎ、セーターとシャツとを一緒くたに脱ぎ捨て、自転車の車輪の下へ放るときにはほとんど何の躊躇いもなく、

「ひ……、ひひ、っ、フルチン、また、フルチンなっちゃった……」

 震える全裸を全天の下に晒す。この状況と、たかだか三人の女子の前で裸になるのと、どっちがましだろう? どっちが怖いだろう……? 考えるまでもない、女子の前で裸になる方がずっと怖くないに決まっている。これだけのシチュエーションに耐えられる自分に、一体何が怖く思えるだろう?

 いっそ誰か来たって平気だ……、と思い掛けて、いやそれは困るやっぱり困る、不意に冷静さを取り戻させるような風が吹き、坂の下の方から車が上がって来る音が聴こえた。大急ぎで服を抱えて、木の陰に隠れる。しかし先程諭良がいたときよりも、車が過ぎて行くスピードが速く感じられたのは気のせいだろうか? すぐそばを車が通り抜け、坂を上がって行く、……勇気を出して、自転車の辺りまで降りて、見上げてみる。遠ざかるテールランプ、バックミラーに自分が映っていたらどうしよう……、そんなことを思いながら、裸のまま、道の中央まで再び出てみる。車はもう見えなくなっていた。

 もう、寒さも感じない。諭良が流斗を連れて戻って来るまで裸でいようと決める。そうしたら、きっと諭良も流斗も感心してくれるに違いない。きっと二人は、昴星がこんな風に露天で裸になることなど出来ないと思っているに違いないから。

「……お、おれだって、こんくらい出来るし……」

 ジャンパーを広げて、座る。寒くはないし、喉も乾いていない、けれどたくさん遊びたい、だから昴星は持って来た水筒の蓋を開けて、温かいお茶を飲む。ふと視線を下ろせば足の間、勃起はしていない、けれど先程までのように情けなく縮み切ってもいないペニスが、当たり前の顔をしてそこにある。

 どうやら昴星のペニスそのものも、何かに隠されず外に出されることに慣れ始めたようだ。

「ひひ……、おれのちんこ、そんな臆病じゃねーもんな」

 こんどおにーさんに自慢しよう、昴星はそう思い決めて、開き直って全裸を愉しむ覚悟を決めた。

 

 

 

 

 軽いとはいえ流斗を自転車の後ろに跨らせて坂道を登るのは骨が折れた。

「だいじょぶ? ぼくもう降りるよ」

 おりこうさんの流斗はひょいと自転車から降りてくれた。間もなく昴星を置いて来た場所である。「あれ?」と指差した流斗に、そうだよと頷く。昴星の自転車が道路脇、無造作に置かれている。ただ、昴星の姿は見えない。きっと木陰に隠れているのだろう。

「昴兄ちゃん、どんなカッコでいるかなあ」

 ブリーフとハーフパンツは奪ってきたとはいえ、昴星のカバンの中には下半身を隠せるものなどたくさん入っている。だから、

「たぶん、もう何か穿いちゃってるんじゃないかな……?」

 諭良は想像する。気の小さい昴星に、フルチンのまま待ち続けることなど不可能だろうと思った。

 しかし流斗は、「そうかなあ」と首を傾げる。

「ぼく、たぶん昴兄ちゃんおちんちん出してると思うなあ。昴兄ちゃん、恥ずかしがりだけど恥ずかしいの大好きだもん」

 はたして、流斗の想像が当たっていた。木陰から不意に人影が現れた、と思ったら、それは白い裸身に靴だけ履いた昴星である。その姿は諭良にとっては眩しく、美しく、何より愛らしく思われる。昴星が自分自身の意志に基づいて、屋外で全裸を晒しているという事実が、諭良にはことのほか嬉しかった。

 昴星が坂下の自分たちに気付いた。一瞬身を強張らせたが、すぐに正体に気付いて安堵する。早く来いよ、と手招きをされるまでもなく、流斗と二人そろって、急な上り坂、駆けだしていた。

「すごいね、昴星……、全部脱いじゃってるとは思わなかった」

 抱き締めたい衝動は、流斗に先を越された。

「えへへ、うれしいなあ、昴兄ちゃんといっしょにお外ですっぽんぽんになれちゃうんだ!」

 いつも一人で露出してきた流斗にとって、それは特に嬉しいことだったのかもしれない。

「お、おれだって、これぐらい出来るし。っつーか、おにーさんとフルチンで城址公園歩いたんだぞ」

 昴星は強がって言うが、それでもまだ緊張しているに違いない。

「流斗、ぼくたちも脱ごう。三人で一緒にすっぽんぽんになろう」

「うん!」

 流斗の服を脱ぐスピードは驚異的だった。コートを脱ぎ捨てセーターとシャツを脱ぎ捨て、もちろん半ズボンとブリーフも一緒くた。あっという間にその愛らしい裸身へと変貌を遂げる。諭良も、羨ましさが込み上げてすぐに追った。

「おまえら……、服脱ぐの早すぎだろ……。どんだけ早く脱ぎたがってんだよ」

「ほんとは、電車乗ってるときから脱ぎたかったんだよ?」

 流斗が天使の笑顔で言う。それが本気だということを、諭良は知っている。ひょっとしたら電車の中でオシッコを漏らすぐらいして来るかもしれないと思っていたけれど、「寒いとこ行くのにびちょびちょだと風邪ひいちゃうし、お外や学校でオモラシするとお兄ちゃんが心配するから」しなかった、と言う。流斗はちゃんと賢い子だし、オシッコの我慢だって得意な子だ。

「やっぱりいいなあ、お外で、明るいところで、すっぽんぽん……。おうちの近くだとあんまり出来ないけど、こういうところまで来ればいいんだね。昴兄ちゃんと諭良兄ちゃんはここが近くていいなあ」

「近く、……ってほどでもないけど、流斗の家よりはずっと近いね」

 昴星はきょろきょろと辺りを見回して、「と、とりあえず、もうちょっと様子見ようぜ。……諭良が流のこと迎えに行ってから車また一台来たし」諭良の腕を引っ張る。

「そっちだと、誰にも見付からなくなっちゃうよ?」

「誰かに見付かるとやばいから隠れるんだよ!」

 昴星をリードできる諭良にも、さすがに流斗ほど何もかも怖がらずに振る舞える訳ではない。周囲の安全確認をして、慎重さの上に成り立つのが諭良の大胆さである。一方で流斗は本当に「いつ誰にどこで何を見られたって平気!」という顔でいる。諭良が知る限り誰より可愛らしい顔をした少年は、その愛くるしい幼茎を隠すどころか人に見せ、微笑ませたり興奮させたりすることが幸せなのだ。

「昴兄ちゃん、一人のときにおちんちんいじった?」

 昴星は昴星のジャンパーの上に尻を下ろし、流斗は立ったまま、本当に誰か来てくれないかと期待するように時折道の方に出たりする。諭良はコートを尻に敷くのが憚られて、かといって土や枯葉の上に直接座るのも何だか出来ない、だから中途半端にしゃがんでいた。

「い、いじらねーよ、何でだよ」

「えー、だって、おちんちんの先っぽ濡れてるもん」

 目ざとく見つけた流斗が、膝をついて昴星のペニスを覗き込んだ。諭良も一緒になって顔を寄せて見れば、そのぷっくりした形のペニスをすっぽり覆う皮の縁が、何となく湿っぽく見える。

「ち、ちげーよ、これはその、……さっき、一人んとき、オシッコしたくなって……」

「どこでしたの?」

 諭良の問いに、少しの間、昴星は答えを躊躇った。

「どこでー?」

 流斗が大きな目で覗き込むのには、昴星は勝てない、というか、弱い。もっとも流斗に見つめられて屈せずにいられる男などそうはいるまい。昴星が真っ赤になりながら、「……あそこ」と指差した先は、道の反対側のガードレールだ。

 なるほど確かに、アスファルトの上が一部分、不自然に濡れている。

「へえ……、昴星、すごい、頑張ったんだね」

 諭良の言葉に唇を尖らせて、「だ、だからっ、おれだってそんぐらいは出来るし!」抗弁するが、それが昴星としては相当な量の勇気を振り絞った果ての決断だったことは想像に難くない。

 昴星は「でも……」と溜め息を吐いて、

「おまえらは、もっとすげーの平気で出来んだもんな……」

 さすがに自分の限界を把握したように言う。確かに諭良ならば往来で全裸で放尿したその時点で勃起は禁じ得ないし、ことによってはそのままオナニーまでしてしまうに違いない。逆に流斗はそれぐらい何の動揺もなくしてしまうのだろう。

「お外でおちんちん出すの、そんなに恥ずかしいかなあ? ぼくも昔は恥ずかしかった気がするけど、いま全然へいきだよ?」

「……今は、だろ。おまえだって昔はフルチンになってぴーぴー泣いてたじゃねーか」

 そうなの? と問うた諭良に、流斗は懐かしそうに微笑んで頷いて、「あのね、おととしかな、神社のおまつりで、お相撲をしたの、ふんどし巻いてね。ぼくそのときはお尻出すのだって恥ずかしいって思ってたのに、お相撲してるとき、ふんどしがほどけちゃって……、みんなにおちんちん見られちゃったんだ」

「それで、泣いちゃったの?」

「うん。だってそのときは恥ずかしかったんだもん」

 今の流斗なら平然としていられるはずだ。つまりその当時から今に至るまで、それだけ流斗が生長したということ。

 そもそも、ぼくだってそうだ……、と諭良は考える。

 転校してくる以前から野外露出の一人遊びはしていたものの、当初は道端でそっとジッパーを下ろして、ブリーフを覗かせるのがやっとだった。それ以上は怖くてできなかったはずなのに、いつしか下着をまるごと露出してみたり、道端で立ち小便をしてみたり、……そのやり方も、最初はいつ車が来るかとおびえながら社会の窓からちょこんと覗かせた陰茎から放尿するだけだったが、やがて低学年児童のようにズボンを膝まで下してするようになったし、転校直前にはもう、下半身を完全に露出して一分以上野外で過ごすことも出来るようになっていた。

 物事は段階的に慣れて行く。昴星だって、こんな風に外で裸になって放尿が出来るようになったのだ。

 こころみに、

「……ねえ、昴星と流斗は、自分のどこが一番恥ずかしいって思う?」

 諭良は訊いてみた。

「んなんお前、ちんこに決まってんじゃん」

「いや、その……、まるごと『ちんちん』って言うんじゃなくて。つまり……」

「おちんちんの、どこが恥ずかしいかってこと?」

 流斗が首を傾げた。まあ、だいたいそんなところだ。

「たとえば、……ぼくならね」

 諭良は立ち上がって、自分の股間を右手で隠す。片方の手のひらだけで陰部をすっぽり覆えてしまうのは三人の共通した性器の特徴だった。

「この、根元のところ」

 手を少しずらして、……見上げる流斗と昴星には、諭良のペニスの根元、無毛部分、それから茎と陰嚢との輪郭が別れるところまでが見えたはずだ。「……この辺ぐらいまでなら、多分、どこでも、誰に見られても平気。それから」

 陰茎を指で隠して、上に持ち上げる。露わになるのは陰嚢だ。

「こっちも……。ほら、体操服のとき、トランクスの子でハミ出ちゃってる子、いるじゃない? その子は恥ずかしいって思うかもしれないけど、ぼくは仮に見られても、ここも平気。だけど」

 昴星と流斗、二人の視線は諭良の指で中途半端に覆われた陰茎に注がれていた。

 ゆっくりと指を、離す。

「この……、ちんちんの、……先っぽ。ぼくの、だるだるの、ちんちんの皮、ぼくの一番恥ずかしいところだと思うから、だからここ見られるのが一番、恥ずかしいって思うんだ……。お尻とか、袋とか、……最初にお兄さんと会ったとき、トイレで隣に立って、しっこするところ見せたんだけど、そのときお尻出すのは全然平気だったんだ。でも、お兄さんの目がぼくの、しっこ出してるちんちんの先っぽ見てるって思ったとき、頭がくらくらした……」

「へー……」

 昴星はつくづく意外そうな顔をして、じいいと諭良の特徴的な余り皮に注目する。

 諭良自身、早い頃から明らかに長い、ということは自覚していた。もとより細身で、昴星と比べればもちろん流斗よりも長さはある。しかしその先端に更に余計とも思われる長さの余り側が垂れているのだ。それは皮を思い切り先へ向けて扱き上げるというオナニーのやり方によって拍車が掛かった。

「おれはもう、諭良のちんこってこういう形してるもんだって思ってるから、今更何も感じねーけどなー……。そっか、初めて見る人からしたらそれすっげー気になんのかな」

「ぼくは諭良兄ちゃんのだるだるおちんちん好きだよ。諭良兄ちゃん、すごくきれいでちゃんとしてるのに、おちんちんがだるだるしてるからかわいいなって思う」

 見せ慣れている二人が相手でも、その場所を間近で観察されるうちに、諭良は自分の心の中がざわめき始めるのを覚えずにはいられなかった。諭良の内側で何が起きているかは、二人にも明確だっただろう。

「へー……、マジでちんこの先っぽそんな恥ずかしいんだなー……」

 くっきり上を向いて、しかし余り皮は向けるどころか先端から少し垂れる。そんな諭良の勃起を見て、昴星がそう呟いた。はっきり言ってしまえばこのまま扱いて射精まで至ってしまいたい、……ちんちんの皮をもっと「だるだる」にしちゃうみたいなオナニーをしたい! そういう思いをどうにか押し留めて、

「昴星は……?」

 諭良は一歩退いて、しゃがんだ。

「あん?」

「昴星は、自分のちんちん、どこまでだったら見られても平気だと思う?」

「あー……?」

 だらしなく足を開いて座った昴星の股間、ペコロスとかラッキョウとか、そういうものを想起させる円く短い陰茎と、それに比して大きめサイズの陰嚢がある。「昴星も、いまぼくがして見せたみたいに、……ね? どこまで平気か、やって見せてよ」

「えー……? おれはー……」

 昴星が、ジャンパーから立ち上がった。諭良が変わってジャンパーの上に尻を下ろす。流斗もすぐ隣に座って、

「昴兄ちゃんは、ぜんぶ恥ずかしいんじゃないの?」

 と訊く。恐らく流斗は、どこだって平気に違いない。

「そ、そりゃー……、だって、ちんこじゃん、ちんこは全部恥ずいよ……」

 右の掌を当てて、隠す。自分の下半身を見下ろして、「えー……、でも……、うーん……」そっと、指を曲げる。

 いかにも柔らかそうな陰嚢の二つ珠が覗けた。

「タマタマはへいきなの?」

「……やー、平気ってことはねーけど……、でもさ、ユルいパンツだとたまに、トランクスじゃなくってもさ、さっき諭良が言ったみたいに見えちゃったりするじゃん、……それはもう、あんま気になんねーかなって……、気にしてもしょうがねーかなって思う」

 諭良は頷いた。陰嚢の形も個人差があるし、例えばこの三人の中であれば流斗が一番小さく、昴星が一番大きい。ただ、諭良の陰茎の包皮ほどの特徴が見出される場所でもないだろう。

 つまり昴星も、

「じゃあ、ちんちんのそのものはやっぱり恥ずかしい?」

「……んー、うん」

 そのもの、を隠したまま昴星は頷いて、すぐに、「いや、でも……、やっぱ全部恥ずいよ。さっきそっち出たとき、……その、パンツ下ろして、ちんこ出すときな、緊張してたからちょっとずつしか出せなかったんだけど、そんときはお腹出すのだって恥ずかしい気ィしたし……。でも……、でもやっぱちんこかなー、わかんねーけど……」

「昴兄ちゃんのおちんちん見せて」

 流斗が見上げて言う。諭良も「ぼくも見たい」と求めた。見せ慣れている二人が相手でもどこかぎこちなく、昴星は指を緩めて、

「……こ、これでいいかよ」

 手を後ろに組んで、腰を突き出した。

「はーあ……」

 流斗が甘ったるく微笑む。「昴兄ちゃんのおちんちんだぁ。ね、諭良兄ちゃん、昴兄ちゃんのおちんちんっていいよね」

 何がどう「いい」かを、いちいち挙げていたらきりがない。

「いいね……、昴星のちんちん、ぼく、本当に好き」

 屋外でありながら、顔を寄せるだけでほんのりとその周辺に「昴星の臭い」がするのだ。丸くて小さいそのフォルムに、諭良ほどではないにせよ皮が余って、ごく小さなレモンのようにも見える。陰茎も陰嚢も腹部や胸部と変わらぬ色で、ややふっくらしたウエスト周りが余計にそのものの小ささを際立たせる。

「……ぼく、昴兄ちゃんのおちんちんみんなに見てもらいたいなって思うときある」

 流斗が昴星の太腿に側頭を当てて、そんなことを言いながら指先で小タマネギを弾いて微笑んだ。「ぼくね、諭良兄ちゃんのおちんちんも才兄ちゃんのおちんちんも好きだけど、昴兄ちゃんのおちんちんが一番可愛いって思うんだ。女の子もきっと昴兄ちゃんのおちんちん見たらすごくうれしいとおもうなあ」

 その言葉は流斗の心底から溢れ出すものだろう。自分をこの道に導いた、大好きな昴星の陰茎歯流斗にとっても当然宝物のようなものなのだ。

 ただ、そんな言葉に、昴星のペニスがほんの少し反応する。「女の子」という単語に、想像を働かせてしまったのだろう。

「も、もういいだろっ、おれのは、……こんなちっこいの見て嬉しいのなんておまえらとおにーさんぐらいしかいねーよ」

 昴星は諭良のいないときにマンションへ遊びに来て、そこでリリィと、更にもう一人の女子高生と知り合った。その女子高生の前でもリリィに見せたような痴態を晒して、大いに悦んだ、……ということをリリィから教えてもらった。羨ましい、と思うと同時に、「昴星はたくさん気持ちよくなっていました」という言葉をリリィから聴いたとき、素直に「よかった」と思った。また一つ、昴星の願いが叶ったのだから。

 昴星にはもっといい思いをしてもらわなきゃいけない、それでもまだ、昴星と出遭えた奇跡への感謝には足りないかも知れないけれど。

「流は、どうなんだよ、……っつーかおまえはどこでも平気なんだろうけどさ」

 勃起しそうなペニスを隠して、流斗を立たせて昴星は言う。流斗は平気で二人の前に立ち、手を後ろに回して、

「えーと、うん」

 と全く隠すということをせずに言った。「おちんちん見られても、ぜんぜんへいき。タマタマのうらも、皮の中も」

 右手の指で摘まんでそっと尿道口を覗かせる。諭良がすれば、そして多分昴星にしろ、屋外でそういうことをすれば興奮するはずなのだが、流斗の天使のごとき陰茎はまったく反応しない。

「じゃー、隠すとこなんてねーじゃん」

「んー? ……えへへ、でもいま、隠してるよ?」

 どこを? と諭良が問うより先に、流斗がくるりと背中を向けた。細くて、ほんのりくびれた腰、ごく小さな、しかし形容しがたい色気を纏った円い尻。

 その尻肉の間に、流斗は左手の中指を当てていた。

「……ぼくね、お尻の穴、ちょっと恥ずかしいかも。諭良兄ちゃんも昴兄ちゃんもお尻隠してなかったからへいきなの?」

 昴星と顔を見合わせた。……大前提として、「言うまでもない」と思っていた場所である。

 一方で、豪胆な流斗がその場所を恥ずかしがるというのは意外な気もした。

「おちんちんは、外に出てるでしょ? だからへいき。でもお尻の穴は、自分じゃ見えないし、……あのね、ぼくの学校のお友達の……、ルカくん。ルカくんがね、しゃがんでうんちするの、上手に出来ないんだ。むかししゃがんでしてるところ、変なおじさんに覗かれてすごく恥ずかしかったからって。それ聴いてね、ぼくは平気だと思ってたんだけど、でも……、ぼくのお尻の穴は、お兄ちゃんのとか、みんなのおちんちんとつながる女の子のとこだから、恥ずかしいし、ぼくとおちんちんでつながらない人にはあんまり見せたらいけないのかなって」

 そこに限らず、ブリーフの中で大事にしておかなければいけない場所、「見せていい場所」なんてあるはずもないのだが、

「……すげーな流、おまえそんなこと考えるんだ……」

 そこまで深い考察をしていることには、素直に諭良も驚かされた。

「恥ずかしいけど、でも、お兄ちゃんに見てもらうのは好きだよ。お兄ちゃん、ぼくのお尻すごく可愛がってくれるし、いっぱい気持ちよくしてくれるもん。……諭良兄ちゃんと昴兄ちゃんも、ぼく大好きだから」

 流斗が指を外す。

 少し、尻を突き出して、両手の指で引き締まった尻肉を割り開いた。

「……えへへ、ぼくのお尻の穴」

 その場所には、「清純」という言葉が相応しいように思われる。短い皺を集めた蕾にはどこか清潔感があって、とても自分や昴星や「お兄さん」を受け容れることに慣れているとは思えない。ましてや、

「……ここだけ見ると、流斗がここからうんちしてるところなんて想像出来ないね……」

 と思うし、

「きれーだな……、流の穴。おれのこんな白いのかな……」

 昴星の抱く思いにも同じ意見だ。

 普段、滅多なことでは恥じらいの表情を見せることはない流斗の肛門が、二人の視線を集めてきゅっと窄まる。

「もう、おしまいっ」

 振り返ったときにその頬がほんのり染まっているのもまた新鮮だし、視線を味わったことで陰茎が上を向いているところを見たときには、諭良の胸は熱くなった。

「……そっか、だから流はちんこ全然平気なんだなー……」

 こくん、流斗は勃起した陰茎を震わせて頷く。「ここは、だって……、昴兄ちゃんや諭良兄ちゃんとカタチは違うけど、おちんちんだもん、オシッコしたり、気持ちよくなってせーし出す、男の子にはみんなついてる、おちんちん。でもぼくたちのお尻は……、うんちするだけじゃなくって、お兄ちゃんのおちんちん入れてもらうとこでしょ? 普通の男の子の場所じゃないもん」

 そこまで深く自分の肛門の存在理由を考えていたのか、と諭良は少々気圧される。とは言え流斗の言う通りだと思った。形は違えど「ちんこ/ちんちん/おちんちん」である以上、そのパーツの働きは排尿並びに射精、これはあらゆる男子のその場所が共通して備えた機能である。しかし肛門が排便のみならずセックスのための場所になる男子が、極めて少ないことを、その意味を、価値を、誰より幼い流斗はしっかりと理解しているのだ……。

「な、なんかそう言われるとちんこよりケツの穴の方が恥ずかしい気ィしてくるな……」

 昴星はジャンパーの上の尻をもぞりと動かした。諭良も頷く。……お兄さんに舐めてもらえるのが嬉しい、排便をして、太いペニスで穿られるのが幸せ、……自分にとって最も大事な場所は、そっちかも知れない。

「ねえ、昴星は……、もしもだよ? クラスの女子に、ちんちんと肛門とどっちか見せてって言われたら……」

「んなこと言う女子がいるかよ!」

「いや、だから、もしもの話。そう言われたら、どっち見せる?」

「えー……」

 流斗は言うまでもなく「おちんちん」を見せるのだ。

 諭良も、……流斗に倣って考えるならば、……皮がダルダルで恥ずかしいけれど、でも、「ちんちん」って答えるかもしれない、いや……、逆だ、恥ずかしいと思うからこそ、「肛門見て」ってお願いするかもしれない。その点については流斗よりも少々品がないのかも知れない。

「……うー……、でも、うーん……、……やっぱ……、いや……」

 昴星は真剣に悩んでいるらしかった。たっぷり、約一分、流斗が「くちゅん!」とくしゃみをするほど待たせてから、

「……やー、でも……、やっぱ肛門の方がまだマシな気がする……」

 ようやくのことで結論を出した。その理由というのは、

「だってさ、ケツの穴のカタチはさ、ぶっちゃけ流のもいま見してもらったけどさ、見ただけじゃちんこ入ってるかどうかなんてわかんねーと思うんだよな。その、……うんことか拭いたトイレットペーパーとか付いてたらめちゃめちゃハズいと思うけど、でも……」

 ということで、要するに昴星にとってはその「ペコロス」の形をして年よりも小さな陰茎が何よりも恥ずかしい、ということになるらしい。

「みんな、それぞれ違うところが恥ずかしいんだねえ」

「お兄さん」に訊いたら、彼は何て言うだろう? ちょっと想像がつかない。ただ彼は、諭良の・昴星の・流斗の、「ちんちん/ちんこ/おちんちん」を、そしてそれぞれの肛門を、同じように愛してくれるのだった。

「っつーか、何で急にそんなこと訊いたんだよ」

 昴星も、少し寒くなって来たらしく膝を抱えた。性的な興奮が収まると少年の身体はこんな風に冷えやすい。

「うん……、その、ほら、今度ぼくと流斗、……うちで、見せるでしょ?」

 うち、というのは諭良のマンションの最上階、あの立派な屋内プールのことだ。次の土曜日、諭良は仲の良い女子三人をあのプールに招いて、「見せる」つもりでいる。具体的に何を、……どこまで? まだ決めていない。ただ、想像するだけで勃起してしまうようなことを、するのだ。

 その場には、流斗も呼ぶことにしている。流斗自身が来たがっているし、何より三人の女子を招くに当たっては流斗の存在はもう欠かせないようだから。

 加えて、昴星にもその場に来てもらうことになっている。

 昴星は今のところ、「流の付き添い」という態度でいる。ただ、諭良にも流斗にも、もちろん「お兄さん」にも明らかなのは、昴星自身、諭良と流斗がするように露出することが出来たら……、と思っているに違いないこと。

 気の小さい昴星がその一線を越えることが出来るかどうかは、今のところ誰にも判らないけれど、「お兄さん」にせよ、昴星が知り合った女子高生たちにせよ、「昴星のちんちんが小さいからって誰も悪く言ったりはしない」ということだけは判っている。要は昴星が恥ずかしがりなだけなのだ。

「……そこでさ、昴星、肛門だけでも彼女たちに見せたら?」

「ああ?」

 ぴく、と震えて、諭良を睨む。それから唇をにゅいっと尖らせて、

「おれは、いいよ。おまえらだけちんこでもケツの穴でも見せりゃいいだろ」

 とそっぽを向いて言った。

「諭良兄ちゃんは、どんなとこ見せたいの?」

 流斗が諭良の膝の上、身体の向きを変えて、すっかり勃起の収まったペニスの先っぽを摘まんで引っ張りながら言う。「ぼくねえ、オシッコもオモラシもうんちするとこも見せちゃったし、せーし出すのも見せちゃったから、どんなのがいいかなってずっと考えてるんだけど、思いつかないんだ」

「ぼくはまだ、その中の一つも見せてないからね……、どれでも興奮するだろうと思うけど」

「諭良兄ちゃん、ぼくの近所のおねえちゃんたちに見せたときすっごく興奮してたもんね」

 流斗に招かれて一人で赴いた流斗の街で、いつも流斗と遊んでいるという六年生の少女たちと会って、諭良も一緒に「遊んだ」ことがある。初めて同世代の異性に自分の性器を晒すという鮮烈な体験を経て、諭良自身、自分の腹の底にこれまでになかった勇気が備わったような気がしている。だからこそリリィと今のような関係になることも出来たのである。

 昴星の場合、順番が逆なだけだ。先にリリィと、それから月渚という少女とも知り合った、ならば……、いっそ、よりスムーズに愉しむことだって出来そうなものだけど。

 まだあと、一週間ある。昴星自身がその間、どれだけ考えて、どれだけ勇気を出すかという問題だ。もっとも、それがもし敵わなかったとしても仕方がない。昴星の中に残る後悔の量がいったいどれほどのヴォリュームかということまでは、さすがの諭良も気遣えない。

 ただ、そんな考えは、

「ね、昴兄ちゃん諭良兄ちゃん、ぼくさっきので興奮しちゃった」

 流斗のマイペースな言葉ですぐ止まる。流斗はピンと細い性器に上を向かせているのだった。

「さっきの? って、あー……、ケツの穴……」

 うん、と流斗は頷いて、「あのね、お尻、……見るだけじゃなくって、してほしいなって」……きっと「お兄さん」が見たらたまらないような上目遣いで求める。もちろん、諭良にしろ昴星にしろ「たまらない」と思うのだけど。

「お尻、か……」

 諭良の頭に一つのアイディアが浮かんだ。それは昴星にしろ同じだったらしい。

「あれ、やるか、三人で」

 目が合ったときにはもう、決まっていたことだ。「うん」と頷いて、諭良は躊躇いなく全裸になる。諭良がそうしたからだろう、そして流斗ももうすっぽんぽんだからだろう、昴星もすぐに追い付いた。

「流、うんこ出るか?」

 昴星が諭良に代わって流斗の肛門を覗き込んで訊いた。

「んっと……、うん、出る」

「そっか、じゃー、いつもみてーにさ、おまえのちんこより太いうんこ、いっぱいしろよな。……諭良」

 言われる前からもう、諭良はコンドームを包みから開けていた。

「えっと、なにするの……?」

 昴星が流斗の前に回り、ペニスに頬ずりをする。「ひひ、流のちんこやっぱかわいいなー」と笑いながら。

「このあいだ、ぼくと昴星で考えたすごく気持ちよくてえっちなことだよ。……こんな風に外でするなんて思ってなかったけど、楽しいと思うし、きっと流斗も興奮すると思う」

 流斗の肛門に、コンドームを宛がう。流斗は普段とは違う感触に、戸惑ったように尻を振り返るが、

「ほら、流、思いっきりうんこしろよ」

 昴星に催促される。もちろん昴星は、流斗の尿を顔に浴びせられることは織り込み済みでそこにいるのだ。

「ん……、なんか、わかんないけどわかった……」

 小振りな臀部に、そして見えないけれどその腹に、一度力が入って、コンドームの向こう側で肛門がぐにゅっと蠢いた。

「んぅ……」

 流斗がいきみ、

「お……、ひひ、オシッコあったけ……」

 放尿をする。昴星はそれを顔に浴びながら、恐らく口を開け、すぐに流斗のペニスから直接尿を飲み下し始めたようだ。

「も、もう、昴兄ちゃんっ、オシッコ止まっちゃうよぉ」

「んぉ、そっか」

 昴星は立ち上がって、流斗の唇を味わうことにしたらしい。外向きの力に応じて流斗の愛らしい肛門から顔を覗かせた便にゴムを被せる諭良には、流斗のオシッコが昴星の陰茎に向けて解き放たれることによって生じる飛沫が足の間から散って届いた。一度出始めるとそこからはスムーズだ。流斗の、可愛らしい顔には似合わない立派な便は適度な硬さを持って諭良の宛がうゴムを膨らませながら、じわじわと収まって行く。

「んふ……、昴兄ちゃんのお口、ぼくのオシッコの味」

 すぽん、と肛門から便が抜けた。けれど、まだ出そうだ。それまで収めるほどの余裕はコンドームにはない。

「流斗、お腹の中の、全部すっきりしちゃっていいよ」

 と立ち上がって後ろから昴星とサンドイッチにする。

「うん、……あは、諭良兄ちゃんおちんちんあっつい……」

 いまの流斗の排便を見ただけで鋭く反応してしまったものを、小さな尻に擦り付ける。諭良の陰茎のすぐ側から、また流斗の新しい便が産出され、足元の土にぺたんと落ちる。

「諭良、取れた?」

「もちろん。……はい流斗、自分で持って」

 振り向いた流斗は「わあ!」と声を上げた。目を丸くして口を丸くして、諭良の手にある棒状の物体に呆気にとられる。それは少年自身がいまひり出した便をゴムの中に封じたものである。とはいえ、密封はしていない。口は開けたままだ。その口の部分と重たい便を、流斗はこわごわした手つきで諭良から受け取った。

「これ……、ぼくのうんち……?」

「すげーな流のうんこ、めっちゃ太いな」

 流斗はまだしばしぽかんとして自分の便を見詰めていたが、その下腹部の勃起は収まらない。

「ぼく今、こんなおっきいの出してたんだ……」

「諭良、こんどお前」

 昴星が新しいコンドームを出して言う。諭良は肛門に徐々に降りて来つつある便の存在感に期待が高まるのを覚えながら、昴星に向けて尻を突きだす。

「ひひ、流、見てろよー」

 ぴったりとコンドームが肛門に押し当てられた。と、

「ひゃっ……、昴星っ……」

 ぐい、と昴星が肛門に指を突き入れて来た。

「んー、たぶんさ、こうすればもっと楽にうんこ入るんじゃねーかなって。ちゃんと指で押さえとくからだいじょぶ、早くうんこしろよ」

「う、うん……」

 両の掌を置いた膝を曲げて、やや前屈みになりながら、いきむ。反り返った包茎から勢いよく噴き出した尿が胸どころか顔まで濡らしたが、躊躇う暇もなく一気に力を篭めると、

「うお、おお、おおお……」

「わああ」

 肛門の内側を熱く押し広げる便が、一気にゴムの中へ収まって行ったようだ。硬いのが出る、ということは直感で判っていたが、二人の反応から察するに想像以上のものが溢れたらしかった。

「す、すっごい、諭良兄ちゃんのうんち……」

 昴星がゴムを外した気配があった。それでも排便欲求はほとんど収まらず、諭良は膝に置いていた手で両臀を割り開き、二本目の太い便を肛門から長々とぶら下げていた。正直に言えば、このまま射精してしまいたいぐらいの気持ちよさがある。しかしこの後のことを考えればここで達してしまうのはあまりにもったいなく、迂闊なことだ。それでも、二本目が落ち、更に三本目が降りて来ようかというところで、諭良は肛門を閉じた。

「お? 全部出たか?」

 熱い肛門を引き締めながら、諭良は首を振った。昴星の手にある便の太さと硬さ、そして色の濃さに、満足する暇はない。ぎこちない一歩一歩を着実に踏み、

「え、マジで? そっちですんのかよ……!」

 林から抜け出して、道の真ん中にまで至る。さっき昴星が作った飛沫の跡を跨ぐように、足を広げて、肛門を割り開いて、一気に放出するときの解放感と言ったら。全身がかっと熱くなって、誰か来てくれないかという切望さえ湧いてくる。最後の一塊を惜しみながら足の間へ落としたとき、もうこのまま射精まで行ってしまいたいという思いを堪えるのにはずいぶん苦労が必要だった。

 息と股間の包茎を弾ませて二人の元まで戻ったとき、

「ぼくもそっちですればよかったかなあ」

 と流斗が言った。彼の手には彼自身と諭良の便を包んだコンドームがあって、そのバナナ状の物体のサイズは同じぐらいか、むしろ自分の方が太いかに思われた。

「すごく気持ちよかった……、前に来たときはうんち出なくて、オシッコだけだったから」

「すげーな……」

 昴星は感心と言うよりは呆れたような声で言う。昴星もそうできるようになったら、きっと今の何倍も幸せになれるのにと思ったが、それは言わないで置いた。諭良が促さなくても、いつか自分からしてみたいと思うようになるに違いない……。

「じゃあ、昴兄ちゃんもするの? 昴兄ちゃんのがきっといちばん太いよね」

 流斗が二本の便を大事に掌に載せて訊いた。

「どうだろ、おまえらの太いからなー……」

 それは謙遜ではなくて、本気でそう思っているらしい。昴星が諭良に尻を向けて、肉付きのいい場所を割り開く。覗き込みかけた諭良に、「あ、ちょっとタンマ」と慌てて言う。そのむっちりとした印象の肛門に隙間が生まれて、一度、静かなガス放出があった。

「わあ……」

 諭良は声も出なかった。

「だ、だからっ、嗅がなきゃいいだろ!」

 目の前にあったから、反射的に嗅いでしまった。それは昴星の足元にある二人の便から漂うものよりも強烈で濃密な臭いである。一瞬気が遠のくほどの……、それでも、

「だ、だいじょうぶ、だよ……、昴星、オナラはもう出ない……?」

 気を取り直して訊く。昴星はむっと唇を尖らせて頷くと、もう一度先程と同じように肛門を開いた。

「あ、ちょっと待って」

 流斗が慌てて昴星を停める。「んな、なんだよ」もう完全に排便する態勢だった昴星の短い茎の先から、一瞬オシッコが迸ったところだ。

「えへへ、昴兄ちゃんのオシッコ、ここに入れて」

 流斗がコンドームの包みを開けて、昴星の丸っこいペニスに被せる。

「えー……、このまんますんの……?」

「いいんじゃない? うんちはぼくがちゃんとキャッチするし、オシッコは流斗に任せるよ」

 昴星はまだ躊躇っていたが、やがて納得したように、

「ふぅ……ンン……」

 力強くいきみ始めた。くぐもった水音が響き、「あは、出て来た、昴兄ちゃんのオシッコ」ゴムを膨らませて迸る尿に、流斗が歓声を上げる。コンドームの中に放尿しながら昴星が「んぅ……っ」と膝を震わせると、……環状筋を押し広げて、便が頭を出した。

 それを見て、諭良は思わず息を呑む。

「お……っ、出る……っ、出る出る……」

 すぐ足元にある自分と流斗の出したものと、見比べる。

 歴然、という言葉が諭良の脳に思い浮かんだ。ゴムの直径からはみ出してしまいそうで、慌てて諭良は左右の人差し指と中指を使ってゴムの口を開き、五センチほど伸びた便に被せる。ゴムの中にたちまち溜まっていくずっしりとした便の重さに任せて今度はゴムの「茎」の部分に持ち替えて、丸まったゴムの根元を徐々に伸ばしながら昴星の便を包んでいく。

「オシッコ、ぜんぶでた? 昴兄ちゃんすっきり?」

 流斗が訊いて、立ち上がる。昴星は排便に夢中でリアクションをしなかったようだ。

「オシッコはこぼさないように、ちゃんと結んでおくね」

 流斗が気の利く子で良かったと思いながら、諭良も昴星の排便に集中する。五センチを超えて、十センチを超えて、……一向に切れる気配がない。

「ちょ、ちょっと待って、昴星! 一回うんち切って!」

「ふえ? っひゃ!」

 そのためにどうすればいいか、流斗は判っている。突然流斗にペニスを摘ままれた昴星の肛門がぎうううっと引き締まり、ようやく便が切れた。一瞬の隙にゴムと手を退かす。昴星の肛門からはすぐにまた、堂々たる便が伸び始めた。

「……わ」

 諭良の手にあるものを見た流斗は、それきり何も言えなかった。昴星は諭良の手にあるものと同じほどのものを、更に飽き足らずに二本、三本と生みだして行く。

 それはもう、棍棒のような趣さえある。

「んほー……、超すっきりした……、めっちゃ硬いの出た……。っつーかこれさ、した後ケツ拭かねーの、なんか慣れないなー……」

 どうせこの後また肛門を汚すようなことをするのだから、別に今拭く必要はない。そういう言葉も諭良は口にできなかった。

 なあ、と振り返った昴星が、自分の出したものを見てあんぐりと口を開けた。

「……うえぇ……、マジで、おれ、これ……、したの……?」

 こく、こく、流斗と揃って諭良は頷く。

「昴兄ちゃんのうんちって……、いっつも太くてすごいなって思ってたけど……」

「これまでで一番太いんじゃない……? っていうか昴星は、いっつもお腹の中にこんなたくさんのうんち、入れてて大丈夫なの……?」

「よ、余計なお世話だよ! だいたいどんくらいうんこ入ってるかなんか判るか!」

 普段「太ってる」と気にしている昴星だが、その体重の何パーセントかはこれなのではないか……、そんなことまで考えさせるような、とにかく「凄い」の一言、逞しさ、あるいは風格のようなものさえ漂わせる。

 言うまでもなく、臭いも強烈なものが漂っているのだが。

「それで、このうんちどうするの?」

 流斗の右手には少年自身と諭良の便がぶら下がっている。十分な太さがあるはずのそれも、昴星のものを見た後では少し小振りに見えてしまう。

「もう流斗、うんち出ないね?」

「うん、お腹の中からっぽ」

 昴星が流斗の手から、諭良の便を受け取った。自分のものを自分の中に収めるのも悪くはないけれど、「流、こっち、お尻向けろ」と命じる。

「えーと、こう?」

 手近な木の幹に両手をついて、小さな尻を突きだす。太くて健やかな便をひり出した後で、肛門はほとんど汚れていないように見えた。それでも昴星はぺろりと指を舐めて、その肛門に指を差し入れる。

「ひゃ、こ、昴兄ちゃ……」

「いまからなー、おまえのココに、……諭良のうんこ入れてやる」

「ふえ……?」

「この間さ、諭良と一緒にうんこしたときにな、諭良のうんこ、おれの中に入れてさ、それ、すっげー興奮して、気持ちよかったんだ。オシッコのとりかえっこはいつもしてるし、おまえ好きだろ?」

 昴星が指を抜くと、流斗は振り返った。

 ひょっとして、抵抗感があるのだろうか……、そう思ったが、流斗は何の躊躇いもなくころんと仰向けになるなり、自分の太腿を抱えた。

「こっちのほうが……、諭良兄ちゃんのうんち入るとこ見れるし、お尻の穴もおっきくなるよ」

 その目は期待感に輝き、先程は少し落ち着いていたかに見えた陰茎は再びすっかり勃起しているのだった。

「ひひ……、やっぱ流はヘンタイだなー」

 嬉しそうに笑った昴星がしゃがむ。棒状の便を包んだゴムの口を流斗の肛門に押し当て、括約筋を緩めさせながら奥へとゆっくり、入り口を収める。流斗の小さくて愛らしい肛門に、ゴムは半ばまで押し込まれた。無論、まだ中身は外に出たままだ。

「諭良、こっからおまえやれよ。おまえのうんこだろ」

 そうしたい、という気持ちがあった。自分の汚くて恥ずかしい物体が、可愛らしい流斗の中に収まる瞬間を見届けたい、と。昴星の便を昴星自身に任せて、棒を支えながら、

「流斗、力抜いててね……?」

 優しく囁いて、コンドームの精液溜まりの部分に指を当てる。

 諭良の便は、まだ十分に熱を帯びていた。それが入り口で行き詰まったのは一瞬だけ。

「ふぁ……あああ……っ」

 上手に力を抜いた流斗は、ゆっくりと、しかし確実に、諭良の「うんち」は排便からまださほど時間の経っていない肛門へと、それを拉げさせたりちょん切ったりすることなく呑み込まれて行く。

「どう……? 流斗、ぼくのうんち入ってるの、判る……?」

 流斗は口を開けて、自身の陰嚢の向こう側にじわじわと短くなっていく諭良の便を見詰めて頷いた。

「ぼくのちんちんより太いね……、出たばっかりのぼくのうんちが、流斗の中に入って、……今度出て来るときは流斗のうんちだよ」

 自分の臭い便を従順に呑み込んでいく流斗が、諭良には可愛く思えて仕方がなかった。尋常ではない行為に興じているのに、流斗は誰より愛らしく見えるペニスに力を入れることで諭良の便を拒まないよう、浅い息を繰り返しながら耐えているようだった。既に大半がその肛門の中に収納された。流斗が感じるのは、自分以外の便によって喚起される強烈な排泄欲求だろう。

 それでも、

「……うん、全部入ったよ」

 諭良がゆっくりと手を退けると、僅かに汚れた肛門をぎゅうっと締め付けて、

「はぅ……」

 と排便したときのような満足げな溜め息を吐いて、微笑んだ。

「諭良兄ちゃんの、うんち……、入っちゃった……」

「うん……、流斗のお腹の中、ぼくのうんちでぎちぎちになってるんだ。ガマンできる?」

「ん、……えっと、おちんちんはガマンできないかもだけど……、うんち、ガマンする」

 肛門を窄めたままで、ゆっくりと流斗は立ち上がる。それから嬉しそうに背伸びをして、諭良にキスをした。

「なー、おれにも早くっ」

 大きく足を開いて尻を突き出した昴星が強請る。「諭良の、前入れてもらったから今日は流のうんこ欲しい」と、手にしたバナナの一本を股の下から差し出す。

「ぼくのうんち、欲しいの? 昴兄ちゃんのうんちより細いから気持ちよくないかもしれないよ?」

「そんなことねーよ、ちんこだってさ、おにーさんのが一番太いけどおまえらのだって気持ちィじゃん」

 昴星の言葉に「そっか」と流斗は納得したように頷く。諭良もそれには同意する。昴星の小さな陰茎でも、その熱と硬さは心地よい。「太さ」や「長さ」が足りなくても、諭良だって十分気持ちよくなってしまえる。

「流斗、入れる?」

「うん、入れたい! ……っと!」

 流斗が背伸びをして背中を反らした。それから恐る恐る自分のお尻を振り返って、「……出ちゃったかと思った」慎重に溜め息を吐く。元々一度出た場所で、そこにまた別のものを押し込まれて……、

「そうっと、ガマンしながら、ゆっくりしないとだめだよ?」

「うん、……ぼくオシッコもガマンしないですぐしちゃうから、今日はいっぱいガマンする」

 諭良の手から恐る恐るの手つきで自分の出した便を受け取った。

「すごい……、ぼくのうんち、こんななんだ……」

 しばし、口を開けてそれに見惚れてから、ゆっくり、ゆっくりと膝を付いて、「昴兄ちゃん、ぼくのうんち、お尻に入れるよ……?」昴星が両の親指で広げるアヌスを覗き込んで言う。

「おー、……ちんこ入れられるときみたくドキドキするなー、っと……」

 諭良がしてやったように、片手でゴムの口を昴星のアヌスに当てて、精液溜まりの部分からもう片方の手でゆっくり、棒状の便の向きをコントロールしながら、静かに昴星へと押し当てる。

「……っほー……」

 括約筋に力を篭めないためにだろう、昴星が腹を大きく膨らませてから溜め息を吐きだした。昴星の前側を覗くと、短い陰茎はそれでもヒクヒクと震えているし、余り皮は粘液でてらてらと光っている。年下の従弟の便を受け容れるという異常な状況を心底から愉しんでいるようだった。

「あ……っ、あっ、流、流っ、ゆっくり、ゆっくりな、ゆっくり……」

「うん……、昴兄ちゃんも、おちんちんぎゅってするの、ガマンね……?」

「んっ……」

 ゴムの半ばほどまでが、空になっていた。流斗が挿入する流斗の便は昴星の努力によって未だ切れずに一本の棒の形状を保ったまま、ゆっくりと昴星へと吸い込まれて行く。指が白くなるほど必死になって肛門を広げる昴星の陰茎から、腺液が糸を引いて零れ落ちた。

「ぅう……、まだぁ……?」

 涙目になって、股間から流斗を覗く。

「もうちょっと、……あとちょっとで全部……、……えい!」

「ふあ!」

 最後の最後で、流斗が勢いよく残りを搾って昴星の中へ押し込んだ。昴星は弾かれるように背中を反らし、同時に括約筋を引き絞る。ゴムの中にはもう、少しの便も残っていなかった。

「う、おっ、おっ……おっおっ……!」

 胸を張って背中反らして、つま先立ちで、くねくねと歩き回って数秒、ぶるぶるっと震えてから、昴星は「ほー……」と安堵したように溜め息を吐いた。そうっと自分の尻を伺って、そこから零れたものがないことを確かめてから改めて、

「はー……、あっぶね、ちょん切っちゃったかと思った……!」

 流斗がクスクスと笑う。「ぼく、上手だったでしょ」

「……なのかなー……、でも最後ぐいって入れんのはずりーよ、オシッコちびりそうになった……」

「昴兄ちゃん、お尻されるといつもオシッコ出ちゃうもんね」

「いつもじゃねーよ、……ときどき……。さいご、諭良におれのうんこだな」

 諭良の手には、三人の中で一番重たく太い昴星の便がある。それは力強く逞しく、もう排出されてから時間が経つのに未だ得体のしれない熱を帯びているかに思える。

 これが、ぼくの中に入る。

 想像するだけで、ぶるりと震えた諭良の手から、昴星が彼自身の便を引っ手繰る。

「うおすっげ……、こんな重たいのかよ……」

 昴星にとっても自らの便のボリュームは驚くべきものであるらしい。彼は身体の中にあるものが催させる強烈な排泄欲求を飼いならすように幾度か深呼吸をしてから、「諭良、ケツこっち」と命じる。

「あは、諭良兄ちゃんおちんちんすっごい」

 尻を昴星に向けた諭良のペニスをつんとつついて流斗が笑う。長く伸びた包皮からは、腺液が溢れて糸のように垂れていた。流斗に触れられただけで破裂しそうだが、いま射精してしまうのはあまりにもったいない。だって、昴星のうんちが貰えるのだ……。

 昴星が背後にしゃがんだ気配がある。

「力抜けよー、ぜってーお尻キュッてしたらダメだからなー……?」

 昴星が、恐らくゴムの口から自分の便の先を覗かせたのだろう。それだけで匂いが下半身から立ち上って来た。

「んひ……っ」

 ひたり、とその熱いものの粘っこい感触が、肛門に当たっただけで、思わず力が籠りそうになった。それを膝についた指に力を篭めることで逃す。

「ふふ……、諭良兄ちゃんも上手……、お兄ちゃんのおちんちんいっぱい入れてもらってると、お尻、だんだん上手になってくるよねえ、っはう……!」

 一瞬油断した流斗がビクンと跳ねた。「んん……、ダメ、諭良兄ちゃんのうんち……」浅い呼吸を繰り返して……、どうにか強い波をやり過ごす。諭良の肛門では昴星の持つ便が、ぐいぐいと入り口をノックする。

「たぶん、これゆっくりだと途中で諭良がガマン出来なくなっちゃうなー……」

 不吉な独り言が聴こえて来て、反射的に振り向こうとしたところだった。

「えい」

「んぅおほぉおっ!」

 焼けた鉄のような熱さが、一気に諭良の肛門を穿った。杭を打たれたように飛び上がりそうになった諭良を、流斗が抱き留める。諭良にはほとんど、昴星の付き入れたものが頭蓋骨まで達したように思われた。そんな錯覚に陥らせるほど深く一気に、大量の便が直腸へと突き入れられて、

「お、ほぉっ……おっ、おっ……!」

 諭良は流斗の身体に大量の尿を撒き散らしながら、全身を痙攣させる。

「あはっ、すごい、すごいすごい、諭良兄ちゃんっ、オシッコまだこんなたくさんっ」

 尿を浴びながら流斗は楽しそうに声を上げる。昴星は「早く全部出し切っちまえ」と、恐らくは諭良の便が零れないよう指で蓋をしながら叱るように言う。

「っんっちっ、うんちっ、こぉせへっ、うんちっ、ひゅっ、ごほぉっ」

 小便が全て出し切れないうちに、頭が真っ白になり、肌がかあっと熱くなった。恐らくこの世でも屈指のレベルの汚さであろう昴星の便を受け止めた肛門は、それを逃すまいとするようにきつく引き絞られる。

「諭良兄ちゃん、きもちぃ? 昴兄ちゃんのうんちそんなに気持ちいいんだ……?」

 流斗の指が余り皮を摘まむ。幾度も幾度もペニスを弾ませながら、濃い精液が皮の中に満ちて行く強い圧迫感と、昴星の指が抜かれた感触をも同時に覚える。括約筋が、授かったものを失うまいとして懸命に努力しているようだった。

「おー……、すげー、全部入った。……お、諭良のちんぽすげー」

 立ち上がった昴星が諭良のペニスを覗いて笑った。

「えへへ、諭良兄ちゃんのオシッコとせーしでおちんちんパンパンにしちゃった」

 真性の包皮の中を液体で満たされたせいで、そこは膨らんでいる。流斗がしゃがんで、口を近づけてから指を外す。中から尿とのミックスで黄色くなった精液がどろどろと溢れて来るのを、大事そうに吸い上げて、諭良に、そして昴星にも、分け与えるためのキスをする。

「んー、すげー。諭良はオシッコもせーしも濃くって美味しいなー、……うおあぶね漏れそうになった……」

 二人の手を借りて、ゆっくりと横たわる。身体全体が、異物感に粟立ちながらも、汗が止まらないほどの感じて、諭良の勃起はまるで収まらない。

「ね、昴兄ちゃん、ぼくももううんち出そう……」

「ん、おれも、もう限界……。でも、一瞬だけ待って」

 昴星がひくひく震えながら、まだ残っているコンドームを取り出す。二人の陰嚢と勃起したペニスを見上げながら、諭良は余韻と次なる熱の放射を求めて、腹の中がぐるぐる鳴り始めるのを覚えていた。

「流もこれ付けろ」

 昴星が何をしようとしているのかは判らなかった。判らないまま、昴星によってゴムを被せられ、昴星は自分の丸い陰茎にもそれを被せる。

「でも、うんちするときのオシッコぜんぶこの中に出ちゃうよ?」

 と流斗は首を傾げた。

「だからー、それでいいんだよ。おにーさんとこのお風呂だったらお風呂でしちゃえばいいけど……、あ、やば……、もう出る……、諭良っ」

 足を開いて膝を付いて、「ちんぽっ、ちんぽしてっ」肛門から早くも産出音をさせながら、強請る。

「んぅ、ぼくもっ」

 流斗も同じポーズになった。諭良は頷いて、二人のペニスを摘まむ。ゴムの匂いを感じながら、身を起こして、両手に摘まみながら愛しい勃起を順に舐める。いつも自分を翻弄してくれる二人を、完全に掌握しきったような気分だった。

「んぅっ」

「ひぃン!」

「っん!」

「んぁっ」

 交互に舐めてやっているうちに先に限界を迎えたのは、意外にも流斗のほうだった。

「ぅあぁンっ、ひゃっあぁあ!」

 どくどくという脈動とともに、ゴム膜の中があっという間に精液で満ちて行く。その脈動が収まるか収まらないかといううちに、その肛門の中に収められていた諭良の便が諭良のすぐ側へ次々落ちて行き、同時に白く濁った液体で満たされていたゴム膜が風船のように膨らみ始める。排便を堪えることと平行して行われていた排尿欲求の抑圧が、射精によって一気に解放されたのだ。していることの内容はどうあれ、どちらかと言えば諭良同様に上品なところの方を多く挙げられる流斗が、行儀の悪い音を立てて立ったまま諭良の実を落としていく。

「んぉっ、おっ! おほぉ!」

 その様子が、代わって諭良が刺激した昴星にとって留めとなった。

 ぷくっとゴムの中が一気に膨らむほど、勢いよく大量の精液を吐き出す。諭良の指には昴星の丸茎がビクビク弾む感触に遅れて、細道を押し広げるように尿が駆け抜ける震動のようなものが伝わって来た。ぶりゅっ、と音を立てて、昴星の肛門から流斗の具が溢れ始めた。

「んぅ……ンぅっ、んっ、お……はぁあ……あはっ……うんこぉ……!」

 尿に負けないほどの勢いで、昴星の肛門からはぼとぼとと便が落ちて行く。自分のものではない便によって得る悦びは、既に諭良が感動と共に味わったものだ。先に直腸の中身を解放した流斗も、すぐに「んはぁあ……!」と溜め息を吐きだした昴星も、どちらも恍惚の表情を浮かべ、水風船のごとくパンパンに膨らんだコンドームを諭良に支えさせたまま、余韻に浸っている。

「昴星……、どうしたらいい……?」

 諭良も、一刻も早く排泄したい、射精したい。二人の「水風船」を持ったままではそれも敵わない。

「ん……、はぁ……、わかった。流も、自分で持て」

「はう……、うん」

 それぞれ、支えていないと間違いなく落下するコンドームを慎重な手つきで陰茎から外す。昴星がすぐにそれの口を結んだのを見て、流斗もそれに倣った。ピンク色のゴム膜ごしでも二人の尿が濃い色をしているのが判ったし、その中をゼリー状の精液が泳いでいる。飲み干したくなるような気持ちに、諭良はなった。

 もっとも、それは二人も同じ気持ちであったようだ。

「あ」

 流斗が、自分のジュースを吸い上げる。それから背伸びをして、諭良にその味を分け与える。

「……えへへ、おいし?」

 うん、おいしい、と応える代わりに、諭良はキスを返す。それを見た昴星が、一瞬躊躇う様子を覗かせはしたものの、流斗の真似をする。昴星の方がやはり、味が濃くて、臭いも強い、ただ、「美味しいよ、昴星のしっこ」味わうことが出来て嬉しいのは同じだ。

「ぼくも昴兄ちゃんみたいなオシッコできたらいいのになあ」

「お、おれみてーなオシッコってなんだよ!」

「昴星みたいなしっこ……、ぼくも昴星味のしっこだったら毎日自分で飲んじゃうくらい嬉しいかも……」

 流斗が昴星の水風船を傾けて、それを諭良のペニスに垂らした。冷め始めた体温、それでも、昴星の体液が自分を汚してくれているという悦びだけで、諭良は頭がくらくらしたし、「りゅと、流斗、もっと……」跪いて求める。流斗は「はーい」と言って諭良の顔目掛けて黄金色の精液混じりシャワーをぶちまけた。自分の肌が一体どれほどその臭いと味を記憶できるものかは判然としないが、永遠に自分に刻み付けたい、染み込ませたい……、諭良は、そう願わずにはいられなかった。

「したら……、こんど諭良の番。おれら二人で、すげー気持ちよくしてやるからな」

 諭良の腕を引いて立ち上がらせる。射精を待ちわびて濡れるペニスに、「諭良兄ちゃんのも」と流斗がゴムを被せて、

「あ、そうだ」

 流斗が、何かを思いついた。

 流斗は三人の中で唯一の四年生である、体型からしても幼く、顔も愛らしい。しかしその一方で誰よりも柔軟で突飛な発想をする力を持っている。「ぼく、いいこと思い付いちゃった……」

 天使のような笑みと共にその口に乗るアイディアは、いつだって危険なものだ。

 そしてそれだけに、魅力的なものだ……。

「ね、昴兄ちゃん、寝っ転がって」

 既に膝を付いて諭良のゴムごしのペニスを咥えこもうとしていたところだった昴星は、びっくりしたように声を上げる。

「へ? なんで……?」

「あのね、昴兄ちゃんも諭良兄ちゃんも、すっごーく気持ちよくなれるやり方思い付いちゃったんだ。でもって、……うまく行ったらぼくもしたいなって」

 流斗には、諭良も弱い、それ以上に、昴星が弱い。昴星は流斗が可愛くって仕方がないのだろう。腕を引かれるまま、コートの上にごろんと仰向けになる、のみならず、

「昴兄ちゃん、自分でおちんちんお口でするときみたいにしてみて」

 と求める。

「じ、自分でちんこ……、えー……?」

 腰を上げて、太腿を抱えて、「……こう?」諭良よりは、身体が硬い。それでも昴星はそのポーズを取って見せた。排便直後でほぐれている昴星のアヌスと、ぷっくりとした陰嚢、それから昴星の戸惑ったような視線が見える、その一方で短い陰茎は玉袋の陰に隠れて見えなくなった。

「お尻の穴、にゅーって広げて」

「にゅ、にゅー? ……こう……?」

 太腿を抱えていた指で、尻の肉を左右に引っ張る。原則的に縦筋状、それが排便の際には円形に広がるのが肛門である。左右方向にそうやって伸ばすと、昴星の肛門の内側の肉色まで露わになった。

 強烈な排便衝動を堪え、そのたびにペニスを震わせながらも、諭良は僅かに残る理性で流斗のしたいことが見えて来た。諭良が呑み込んだことを察したのだろう。

「じゃあ、諭良兄ちゃん、昴兄ちゃんにうんち、返してあげて」

「んなっ……!」

 尻肉を割り開いたままの状態で昴星が声を上げた。その指を解く前に、諭良は昴星の尻に尻を重ねる。

「諭良兄ちゃんと昴兄ちゃんで、一つにつながれたらすごいきもちいいだろうなあって」

 そんなことが出来るかどうか、判らない。確かに腹の中にある昴星の便は、ごつごつとした硬さを感じさせるけれど、かと言って一旦完全に身体の外を通過した上で、再び昴星の肛門の中に収まるようなことが……。昴星が、諭良が、ほんの少しでも括約筋に力を入れたら、いかな頑丈な昴星の便とて崩壊することは免れまい。そうなれば昴星はその身体を汚すことになる。

「昴兄ちゃん、力抜いてないとお尻の周りうんちまみれになっちゃうよ? ぜったいにお尻きゅってしたらダメだよ……?」

「んまっ、待って、諭良っ、諭良ったんまっ」

 もう、待てない。肛門が熱く痺れていて、もう頭の中が真っ白だ。うんちしたいうんちしたいうんちしたい、欲望のままに腹に力を入れると、自分のものでは到底感じられないほど、肛門が熱く押し広がる。

「ふぁああ……うんちっ……うんちっ、ひゅごいっ、うんちひゅごいっ、ひゅごいのれてりゅっ!」

 それが出て、どういう風になるかを考えることは出来ない。

「や、やっやぁ! んはっ、はいっ、入ってっ、うんこ入ってるうんこっ、うんこ! うんこ入ってるっ」

 昴星が悲鳴にも似た声を上げる。諭良はそれを聴きながら、もう何の遠慮もなく身体の中に溜まっていたものを吐き出すためだけに力を篭める。いつからか流斗に摘ままれていたゴム膜の中に盛大に尿を噴出させながらも、「うんち出てる、うんち出てる、すっごい、すっごい出てるっ……!」快楽に酔い痴れた声を、涎と一緒に漏らしていた。

「ひっ、ンっ、うんこ、うんこ……! おれのうんこぉ……!」

 昴星は既に肛門を広げる手を離して、宙を掻いていた。それでも、

「ふふ、すごいすごい、昴兄ちゃん、うんちどんどん入ってる……、昴兄ちゃんのうんちが昴兄ちゃんの中に帰って来たんだねぇ」

 流斗は言う。実際、二人の肛門は一本の太い糞棒によって繋がっていた。諭良が思いのままひり出す便は呆然とする昴星の胎内へと真っすぐ押し込まれ、崩れることもないまま呑み込まれていく。いちどきに全部を吐き出すほどの爽快感こそないが、自分の排便の快感が昴星の肛門を刺激していることもまた、諭良にとっては間違いなく幸福な事実である。ゴムを膨らませる排尿が終わってもなお、尿道が熱く痺れるような感覚が尾を引いて続いている。僅かでも括約筋を引き締めれば途端に射精してしまうに決まっていたが、そうするにはあまりにも昴星の便が硬く、太い。

「ひ、ひぃ……っ」

 昴星がか細い悲鳴を上げた。自らの胸に顔に、金色の飛沫が散った。その飛沫が上がると同時に、それまでスムーズに昴星の中へと押し込まれていた便が、諭良の肛門の深部を下から押し上げる。僅かにそれを感じた次の瞬間には、

「んぅ!」

 一気に奥が広げられた。

「あ、はっ、はっ、はああっうんこっうんこっ出る出るうんこれるっ!」

 昴星が小刻みに震え、小便を撒き散らしながら排出へと力を篭めている。諭良は自分の排泄する力が昴星の便に負けるのを覚えた。僅かに力を抜いただけなのに、時間をかけてひり出していた便は一気に諭良の中を犯した。密着した二人の尻と尻の間で、硬く太ましい便は重力を無視してどんどんと諭良の中へと帰って来る。想定もしていなかった強烈な圧迫感と、背徳感さえ伴う快感は、まるで逞しい男性器に犯されているかのような耐えがたい悦びを諭良に与えた。

「あ、昴兄ちゃんすごい、うんちだけでおちんちん気持ちよくなっちゃった」

 流斗が感心したように呟くのが聴こえる。昴星が括約筋を引き絞った瞬間に、諭良には排便を始めたときよりももっと多い量の便が収まり……、きらない。尻に挟まったまま、「便座」から崩れて、肛門に昴星の実を挟んで膝を付いたまま、表に出た余りをちょん切るように括約筋が無意識の収縮をする。腹の中に昴星が詰め込まれて、

「んぅうう!」

 はみ出ていた分が、ぽろりと膝の間に落ちた。もちろん、大量の精液が枯れ葉の上に散らばると同時に。

 昴星のぬくもりが、射精してもなお身体の中に残っている。昴星、昴星、昴星でいっぱいだ。

「は……あぁ……、うんこぉ……!」

 自分のものではない排便音がすぐ後ろから響いた。

「ふふ、昴兄ちゃんすっごいねえ、諭良兄ちゃんがいっぱいになっちゃうぐらいにうんちしたのに、まだ出て来るんだぁ……」

 流斗が昴星の太腿を押さえて丸め、便の分だけ広がったその肛門を空に晒している。息苦しささえ感じる量、「諭良」という器一杯分出したというのに、同じほどの太さ、同じほどの肩さの便が肛門からむくむくと、逞しい形状を保ったままそそり出してくる。

「すごぉい……」

 うっとりと流斗が笑う声がする。僅かに動くだけでもせっかくもらった「昴星」を漏らしてしまいそうな懸念はあったが、震えながら諭良は起きあがる。流斗が昴星という名の便器に跨ろうとしているところだった。流斗は昴星から湧き出す糞棒に手を添えることはせず、代わりに自分の尻肉を思い切り開いて、そのままゆっくりと、昴星の顔を見降ろしながら腰を沈めて行く。

「昴兄ちゃん、わかる……? ぼくの中に、いっぱい、いっぱい出して、思いっきり、思いっきりうんちして……っ」

 二歳年下の流斗に身体の自由を奪われる昴星に出来ることなど、開き切った肛門からの排便以外何もない。流斗の肛門が昴星の便と触れたのが見えた。身体を叱咤して身を起こした諭良は、潤んだ眼を見開いた昴星が顔を真っ赤にして、ただ排便のためにぷるぷると震えて力を篭めている愛らしい表情を見る。

「は……あはぁあぁあん……!」

 流斗が甘ったるく吐息を漏らす。三人の中で一番小さいはずの肛門は、それでも昴星の便を呑み込んでいく。二人の境目は、やがて見えなくなった。

「あはっ、あはぁっ、こうにぃちゃっ、うんちっひゅごい……、ひゅごぉい!」

 流斗は身動きを止める慎重さこそ残しながらも、昴星の便を存分に味わい、その包茎の縁を腺液で濡らしている。「もっと、もっとだよ昴兄ちゃんっ、もっとうんちちょぉだいっ、昴兄ちゃんのうんちっ」

 三人揃って「お兄さん」のところへ泊まりに行く夜でも、大体一番元気で、一番冷静でいるのが流斗である。その流斗が、まるで「お兄さん」に抱かれているときのように悦んで、淫らさを全身からほとばしらせている。彼にとってそれだけ「昴星を身体で呑み込む」ことは衝撃的な感動で身を貫くらしい。

「あ……あっ、いっちゃう……、いっちゃう……こぉにいちゃっ、全部っ、ぜんぶっぜんぶちょうだ……あぁああ!」

 足を大きく広げて昴星に跨った流斗の身体が、ぶるぶると痙攣した。諭良がそうであったように、昴星の身体から生み出される熱い物体には理性を壊し男性としての機能さえ狂わせる魔力が備わっているのかも知れない。か細く幼い流斗の茎が弾むたび、そこからどくどくと濃い精液が低く射ち出され、それは便器となった昴星の顔に散る。昴星はと言えば、細い呼吸を繰り返しながら小便と精液に塗れた身体で、ただ流斗のために排泄するだけの生きものにまで堕している。

 流斗の括約筋の脈動によって便が切れれば、二人の肛門は相当に汚れてしまったはずだ。いや、今となってはそれも流斗を心地よくするためのスパイスにしかならないだろうか?

「んぅ……んうう……」

 しかし、流斗がしどけなく広げた足を叱咤するように腰を浮かせたとき、二人の肛門は懸念していたほど汚れてはいないのだった。昴星はきっと、流斗の望むまま、流斗に「ぜんぶ」を押し込んだ。それを飲みこみ切ったところで流斗が達して、……いま、流斗という身体の器に「昴星」が、本当に全部収まっている状態であるらしい。昴星の肛門は下から上へ、二度もの排便を終え、しばらくは弛緩していたが、やがてリラックスするようにゆっくりと閉じて行く。

「う、ううー……」

 昴星が、身体のあちこちを軋ませながら丸まっていた身体を下ろし、続いて身を起こす。

「お、お、おまえらなあっ、人の身体、身体っていうか、お尻の穴っ、アンドうんこ、何だと思ってんだよ!」

 さすがに昴星であっても怒るか。これで仮に平気でいられると言うのであれば、昴星を怒らせる方法などこの世に一つもないに等しいだろう。

「えへへ……、だって……、すっごくえっちなんだもん、昴兄ちゃんの、うんち……」

 膝で立ったまま、今にも漏れ出してしまいそうな便意を堪えるように身をくねらせる流斗は愛らしく笑う。限界が近いのは諭良も同じで、

「そう、そうだよ……、あんな……、こんな、太くて硬いのたくさん、してくれるのなんて、攻勢しかいないもの……」

 流斗も諭良も、もちろん昴星も大好きな「お兄さん」のペニスに比べても遜色なく、少なくとも昴星自身の陰茎に比べればはるかにボリューミーなものに犯されて、……しかもそれが、その肛門から生み出されたままの「うんち」であるという事実が、二人には嬉しくて仕方がないのだ。今もそれは二人の腹の中で暴れている。諭良のペニスも、流斗のペニスも、「昴星」を感じながら再びの射精を求めて休まる気配すらない。

 一方で昴星の陰茎は元の通り小さくなってしまっているし、

「だいたい、だいたいなあっ、……ひっくちん!」

 その小さなペニスを震わせて、くしゃみをした。いつの間にか陽が山の陰に隠れてしまった。こうなると、一気に寒くなってしまうことは想像に難くない。残念ではあるが、そろそろ引き上げなければならないようだ。

「じゃあ……、諭良兄ちゃん」

 流斗が諭良に向いて言う、「もう一回だけ、しよ。昴兄ちゃんの、ぼくもうガマンできない……」

 きっと、流斗がそう言わなければ自分がそう言っていた。流斗のように膝を付いて足を開いただけなのに、「あぁ……!」熱いものが肛門を押し広げて来る。

「ん……、ぼくもぉ……」

 流斗の可愛らしい肛門も昴星によって熱く開く。二人で形の違うペニスを摘まんで、どちらからともなく皮を剥いて、濡れた亀頭を重ねて糸を引く。お互いの下半身から昴星のものでしか生じえない強烈な便臭が立ち上って来るのが、たまらなく幸せだった。二人だけで気持ちよくなっているのに、まるで二人同時に昴星に肛門を弄られているかのようで。

「りゅ……、と、しっこ、しっこも出そう……」

「ん、らひて……、ぼくもっ……」

 どちらのものか、あるいは二人のものか、同時にいきんで、放屁の音を立てて、重ねた亀頭からしぶきを上げる。お腹の中の「昴星」が勢いづいて、一気にぼとぼとと足の間に折り重なって行く。二人して亀頭を擦り合わせるために腰を振るから、伸びた棒が揺れて震える、その感触もたまらない。

「あ……、あっ、ゆらにひゃっ、ひく……っ」

「んぅん、ぼくもっ、でうっ……!」

 途中からはオシッコの味のキスを交わしながら、二人は同時に射精した。お腹の中が、いつからかすっきりさっぱりしている。恐る恐る身を離して見下ろせば、

「わあ……」

「すごい……」

 本当にこれだけの量を一人で出したのかと思うような便が、山のように盛られ、湯気を立てている。

「言っとくけどな! これ全部おれのってわけじゃねーぞ絶対! おまえらの分も混じってると思うからな!」

 昴星は真っ赤になって言う。とはいえ、どうしたってこの大半が昴星の身体の中から生じたものであるという事実は誰にも否定できないだろう……。