清澄蜂蜜微少年!

 ナップがおもらしをした。

「おもらしじゃねえ!」

 本人は真っ赤になって否定する。けれど、

「パンツを濡らしたら、それはもう、立派におもらしだと俺は思う」

 ので、やっぱりナップはおもらしをした。

「ねえ、十三歳にもなって」

 悪い子には、乾いた新しいシャツは与えても、パンツは穿かせてあげないで放置の上、居間のソファの上に拘置。シャツの裾を精一杯伸ばして隠している様は、十三歳という分類しがたい年齢の織り成す有り様に違いない。

「お風呂沸くまでそのまま待機」

 俺は微笑んで、軍隊式に指をピッと伸ばして、その下半身を差した。

 ナップはおもらしをしていない。

 本人が否定した通りだ。失禁した訳ではなくて――そんな幼い可愛いものではなくて――寸止めの状態で抱き上げて、帰ってくる最中に我慢の限界が来て、射精してしまったというだけ。雨が叩き付ける音にも負けない可愛い音色を俺の耳だけに届かせて。家に着いて肩から降ろして、黙りこくってすぐに脱ぎたがったのを留めて俺が降ろしたズボンとパンツ、つう、と糸を引いた。

 もちろん、こうなる可能性は検討していた。それぐらい、ナップの性器は硬かったし、もう、先走りの露だって溢れていた。敏感な肌をどうにかすれば、どうにかなってしまうような状態だったので。俺の中にある邪な心は、純真な少年をからかって喜ぶ。あの頃の俺が臆病で出来なかったことを敢えて危険を犯してすることで、まるでタイトなロープのダンシング、つまりスリルとサスペンス。お風呂が沸くまでの数十分、胸は隠してお尻隠さずのナップは居心地の悪さ尋常ではないらしく、恨めしげに俺を見詰めていた。

「君のおちんちんはね、ナップ」

 心の底から俺は微笑む。

「俺、見慣れてるから、隠さなくても大丈夫」

 本音を言えば、見慣れていても、常に見ていたい。

「……変態」

 こう考えると、ナップと俺が出会ってこういう関係に落ち着いていることは、デートの日に夕立に遭ったから一緒にお風呂に入るのと同じ程に、必然という感じがしてならない。無論、これは冷静から切り離され、ただ只管ナップが可愛い愛してるという気持ちに浸って茹だった考えだということは認めなければならないけれど。ほんの半年前までは、怖くて肌に触れることすら出来なかったのに、反動というのは恐ろしいものだ。今しかないナップの幼い身体に掌を舌を這わせて遊ぶこの日々は、眩しいほどに黒光りしている。でも違うそうじゃない、俺は子供が好きなんじゃない、だから誓う、こうじゃない?「ナップがこの先大人になって行っても、同じようにするって、迷惑がられたって抱き締めて、傍から逃がさない」って。

「お風呂沸いたよナップ、入ろう」

「……いいよ、一人で入る」

「ダメだよ。この間君の後に入ったらお湯がずいぶん汚れていたからね、ちゃんと洗えていないんだよ。……全く、困った子だよ君は……」

 俺の一存で決めることは出来ないが、実態無き全世界に問う。ナップは可愛いよね?

「ほら、バンザイ」

 いつまでも裾を握ったまま離そうとしない強情張りは却って幼い。俺の伸ばした手をぺしりと叩いた。

「……先生全部着てんじゃねえかよ」

 唇尖らせ、そう言った。

「……なんでおればっか裸になんなきゃいけないんだよ」

 こうして一緒に入ることも、恐らくはその後のことも、ナップは容認してしまった。無理もないとは思う。射精一回、でも、愛の伴う形とは言いがたい。何より俺がまだ出してない。大人だから我慢出来なくはないけど、やはり公平を尊重するのは大事だ。

 ナップが俺に愛されたがっている、隠し切れない十三歳の純情は、二十三歳の邪念を擽った。

 二人で一緒に裸になれば、リズムに乗り出す鼓動、具体的に言えばそのリズムに乗ってこうよ、腰揺らしてこうよ。Hold on、ぎゅっと抱き締めたら大概のことは乗り越える、俺はもう今朝気付いた口内炎のことだって忘れてる。

 まだ小さな背中、早く追い越しておくれよ。俺がよぼよぼのおじいちゃんになったら君もいいおじさん。それでも一緒にいようよ異様に見られたって構わん容易にキスもしようよ。

「せんせ……、さみいよ、早く……」

「寒い……、本当に?」

 ちっとも冷えていない体温を、唇で舌で確認する。もっともっと温かくしてあげるのが、この、俺の、役目。

「ここだけはまだちょっと寒そうだね」

 とくんとくん聞こえるバスドラの牽引。しみじみ過ぎ行く時惜しみ互いにいとおしみ合う際は、無音状態じゃ出来んから、聞かせてくれる魂の息吹、君に響き、呆気に取られた瞬間を狙って心置き引き。ナップの性器を包み込んだ俺の両手をどけようと重なる掌、一応、二人の手は重なったことになる。

「やめろよ……っ、自分で、洗えるっ」

 摘んだ。ナップの性器はまだ握るものではなくて摘むものだった。摘んだり、先っぽを少し引っ張ったり、そういうものだった。この形の身体の時間はもうあまり長く残されてはいないだろうけれど、毛が生えて皮が剥けていつか身長も俺を追い越して、格好いい声になって、それでも俺は君の側にいたい。君に「先生」って呼ばれていたい。内心で「変態教師」って思われているのかな、それもいい。

「見せて」

 だから本心で俺は言う。

「君の身体の隅々まで見たい」

 もう怖くない。

「……見慣れてるって……」

「言った。でも、見たい、何度だって見たいよ」

 手を退けた。素直な言葉は何よりも強く、互いに尊重し合う誓いを立てた。

「ねえ。外なら誰かに見られるかもしれない。でもここなら俺しか見てない」

 ナップは鏡越しに見詰める俺から目を反らした。俺にだって見られたくは無いというのが本音なんだろうとは思うけど、ナップの本音と俺の本音を比べてナップがどちらを択んだかは、手に篭っていた力の緩みを感じる前から判っている。

 信じてくれている。そんな自覚が俺に勇気と責任を齎す。どんな形であれ、君を連れて行ってあげなくちゃ。俺が信じて幸せだと見据えた目標に向かって、君の手を離さないまま、最後まで連れて行ってあげなくちゃ。それが出来ないなら俺には、生きている意味だって無い。身の引き締まる思い、でも不思議なくらい俺には自信があった。

 掌は開かれた。包み込む前よりほんの少しふっくらしたナップの心があった。

「可愛いな」

 口をついて出た言葉に、鏡越し、強い視線が跳ね返った。俺は笑顔でそれを受け止める。

「だって可愛いんだもの……。『可愛い』って言われるの、嫌?」

「……やだ」

「でも、……ごめんな、ナップは可愛い、ここばっかりじゃなくてね、全部可愛いよ」

「……もう子供じゃない」

「うん、でも、子供じゃなくたって好き。ナップが大人になったって可愛いんだ」

 こういう言葉を差し込んだ小さな耳朶を、唇で挿んだ。ひんやりして柔かい、でも、耳の縁はさくらんぼのように染まっている。遅れて、摘んだ指の中、ナップの性器は硬さを帯び、指で支えずとも倒れない、しっかりとした芯が生まれた。手を離す。刻々と角度を変えてゆく性器の先端、開いた皮の隙間から覗ける亀頭、縦に短く走るおしっこの路。鏡にはナップの胸から上しか映らないから肩越し、覗き込む、ひくり、ひくり、ひくひく、上がってくテンション。

「っあ!」

 心臓に近い乳首、柔らかでささやかな先っぽ、両方一度に人差し指でくるり。淡い色の胸の先、平べったい中にアクセント、つんと実った。肩がかすかにぶれたのに伴って、性器の先端も震える。

「洗わないとね」

 石鹸を、よく泡立てる。ホイップ状にした白く滑らかな泡を、まずは尖った胸の先に、それから、すっかり勃ち上がったポールに。乳首を覆う泡は、極めて卑猥な女性物の下着にありそうなシルエット、下半身の茎に纏うのは、精液を模したホイップクリームの如き形。ちっとも洗っていない。ただかすかに馨る花の香りが、ナップをもっともっともっと可愛くしていくので、十分とも言える。ラグタイムラブタイム、バスタイムパラダイムパラダイス、ハッとするハートフルグッと来るグレートフル、そしてこうして行くのにどうして惑うの「もうして」迷うな戸押して、もう欲通して奥まで解して心も熔かして鼓動を届かす。

悪魔と天使で羽根も伸ばして。今だ耳元呪文詠唱、息の根揺らして「愛してる」、思いは必ず伝わってる。

「お湯かけるよ」

 流れていく泡の中から、濡れて艶めく性器が顕になる。

「先生……」

「うん、もうぎんぎんだね……」

 先端に指を当てて離す、ごく細い糸の、何と美しいことか。

 本人無自覚に震わす芯は、いつまでだって見ていたいようないとおしさ。思うにナップの心が裸になって、諦めの境地、そして「先生おれもうどうにかなりそう」、そんな様子を素直に示す肉が美しくないはずも無いのだ。唾を飲みたくなる。

「……でも、ナップ、俺も、さっきからずうっと待ってるんだ。だから、もうちょっとだけ我慢してね?」

 ナップは鏡越し、先程までとは打って変わっての儚げな目線を揺らした。

「一緒に気持ち良くなれたほうがいいだろ?一人ぼっちは寂しいよ」

 床にお湯流した、仰向けに横たわった。おいでって、手招きする。ナップは眉尻を下げて困惑する。だが、細い身体を屈めて、あべこべの向きで俺に重なる。往生際の悪い手が、ナップの身体の真ん中を隠していた。

 それならいいよ、と、俺はその手の甲から舐め始めた。

「……んっ……」

 舌先で、まず指が震える。双子の丘の緊張から、隠しているところも収縮したのだと判る。構わず爪の根元から指の股へ歩いて行く。砦は呆気なく崩れ、俺の眼前、小さな蕾が顕になる。

 それでも俺はナップの指先を咥えて、吸った。ナップの環状筋は貪欲そうに蠢いて、俺を誘う。それはすすり泣いている様にも見える。

「せんせぇ……っ、お尻っ……」

 でも、君が隠してたんだろ?

「お尻ぃっ……、して……!」

 声は焦りを帯びる。

「お尻?どうすればいいの?」

「……指っ……、ぃ、れてっ……、弄って……っ」

 ナップの目の前では俺の性器が熱く弾んでいるのが見えているに違いないし、ナップがそれを見て何も感じないはずも無い。だからこそ、分け合いたいと貪欲になるのだろう。

「すごいね、ナップ、お尻弄ってなんて言えちゃうんだ……?」

 卑猥な科白を口にした自分に、ナップは身を硬くする。見えない顔は真っ赤だろう。俺はナップを虐めたいんではなくて単に愛したいだけだから、もう大いに満足を得て、ナップのお尻の穴に顔を寄せ、下がる袋からゆっくりと、ナップの身体において最も隠されたエリアにキスをしながら、上がっていく。辿り着いた先は、解説不要、排泄の穴、でもまるで頓着しないで、舌の面で舐めた。ナップの背中が猫のように反った。

「んやあぁ……!」

 そんな、猫みたいな声と共に。だから俺の舌も猫みたいにざらざらしてたらもっと気持ちよかったね。その点は仕方ない、でも代わりに、ぺろりぺろりぺろりれろり、丹念に舐めて濡らす。ナップは右手を俺の性器に置いて、はぁはぁと熱い声混じりの息を這わせてくれるだけだ。

「ほら……、ナップ、俺のも舐めて濡らしておかないと」

 言いながら、指先を環状筋に食べさせた。第一関節、それから第二関節まで。一度咥えたものは離さないと、まるでそこが原始的な生物のように欲に忠実な動きを見せる。ナップの一番秘密の場所は、ナップが一番秘密にしておきたい欲までも、正直に晒してしまうようだった。

 窓の閉った風呂場であって、浴槽には四十度からのお湯が張られている身を重ね合う俺たちの身体には汗が浮かんでいた。ナップの太股を伝う露は、ナップの大事な成分で、それが流れていくのを少し、惜しく思った。人差し指と中指を食わせ、ナップが口一杯に俺を頬張って不器用にしてくれるのを感じながら、しばらく塩味を感じていた。それが、やがて遠ざかる。ナップの舌の懸命さが俺を幸せにしていく。歯を当てないように……、どうせおれ下手糞だけど、でも、先生のこと、ちょっとでも……、そんな気持ちの伝わってくる、舌の動き、手で握って、傘の裏を茎を、丁寧に舐めて。伝う唾液の感触すら、俺には嬉しかった。

「んっ、あ!」

 指を抜くと、口も抜けた。

「……ナップ」

 股下に指を入れて、茎の先を触った。もう、ずいぶんとぬるぬるしている。

「繋がろ」

 まだ俺のを握ったまま、こくんと頷いた。しばらく太股を震わせて動けないで、ようやく起き上がると、はしたなく足を広げたまま、俺のを跨いだ。手をかけたままの俺の性器の先を、もう排泄というよりは生殖のための器官に見える肛門に、あてがう。俺の身体の上に、ナップのお尻、細い腰に背中、肩、茶色い髪の頭。一つになる。ならなくてもいいよと言われても、なりたいので、なってしまう。

「っ……ぁあっ……、っ……」

 静かに、身体を静めてゆく。俺の目には、ナップに飲み込まれ、ナップの身体の中、一つの命として存在する自分を映し出す。緊張感溢れる臀部に、一対の笑窪が生じた。

「痛くない……?」

 一ミリずつ、俺が奥へ進んでいく。湿っぽい内部は十分に解したつもりでもまだ頑固なところを残してはいたが、どんな生き物のどんな場所よりも気持ちいい。

「おっ……きぃ、よぉ……っ」

 会話としてどうかは判らないが、俺はごく穏やかに微笑むことが出来る。

 ナップのお尻と俺の下腹部が重なり、繋がっているところは見えなくなった。こうなると俺たちは繋がっている二体の生き物ではなくて、本当に元から一つの生き物と、幸福な錯覚も容易になる。俺はそのまま起き上がり、ナップを後ろから抱き締めた。ナップのお腹の中は、絶えず俺を締め付けて、俺の声すら揺らそうとする。

「……気持ちいいよ。……ね?気持ちいい、ね?」

 こく、こく、ナップは頷く。俺の腕をぎゅっと握る。本当はおちんちん握って出しちゃいたい、それを、ぎりぎりのところで我慢している。

「愛してる」

 四本の指で摘んで、少し強く、扱いた。

「んやぁっ……出るっ、せんせ……っ、おれ、出る……っ」

「ん……、いいよ、出して。次まで、待ってるから……」

 腕、少し、爪立った。痛くないから構いやしない。

「あ、あぅ、んっ、んん!ひぁあっ……!」

 雄々しい潮、今はまだ幼いけれど。ナップの精液は、幾つかの濃厚な液の塊となって狭まっていた尿道を押し広げて高々と射ち出される。痙攣はいつ果てるとも無く、……大げさか、でも、長く続いた。

「……っん……、はぁ……、っ、んっ……あぅ……、はぁ……」

 相変わらず尖ったままの乳首に、白い蜜。艶やかな肌、匂い立つ少年の性臭が俺の鼻腔を満たす。ナップは浅く甘い呼吸を繰り返し、腹に回した俺の手を痛いほど握る。

「ナップ、……大丈夫?」

 余韻の大きさからか、ナップは答えることも出来ない。放熱した性器は、一秒ごとに硬さを失いながら震えている。

「……せん、せえ……」

「ん?」

 ぽたり、と、俺の腕に、ナップの顔から滴が落ちた。不意のことに戸惑った俺を、ナップは愛らしいやり方で、更に驚かせた。

「ごめん、なさい……っ」

 ナップの幼茎の先端から、薄黄色に澄んだ細い流れが生じ、風呂の床に流れていく。

瞬間、何が起こっているかを俺は飲み込めなかった。

「えええ?」

 そして事態を把握するに至っては、思わず声を上げてしまった。ナップは身を硬くして、かすかに震え、言葉も無い。

 雨に降られて体が冷えて、帰ってきてはすぐに裸にしてしまった。お風呂を沸かして、でも身体を温めることもなく、セックスを始めてしまった。……反芻すると、うん、何時間か、ナップ、トイレ、行ってないね。

「……我慢してたの?」

 ナップは耳を赤くして答えない。

……可哀想なことをしちゃった……、内心、深く反省。でも、喉の奥まで上がってきた「ごめんね」は言わなかった。その代わり、濡れた先っぽを、摘んだ。

「可愛いなあ……、やっぱりナップは可愛い」

 ぴく、とナップの肩が動いた。

「ナップはいくつ?」

「……っ、じゅう、さん」

「そう。なのにおもらししちゃうんだね、可愛いなあ」

 くしゃくしゃ、湿った髪を撫ぜて、ぎゅうと抱き締めて。こんな可愛い命が俺のもの、これが幸せでなくて、じゃあ何だ。こんな幸せなサプライズ、たくさん俺にくれて、退屈させないで、油断もさせないで、だからさ、スリルとサスペンス。この胸の鼓動は生々しく高鳴りっぱなし、そりゃもううるさいくらいに。

「っ、だってっ、……しょうがねえだろっ、もっと早く終わると……思ってたしっ、……行きたくても……っ、せんせえ、行かせてくんなかった……っ」

 声は既に半泣きだ。

「ちゃんと言えば行かせてあげたよ、俺はそんなに意地悪じゃない」

 ナップがおもらしをした。

「いいよ、俺は別に……。すごく可愛かったよ、また見せてね」

 謝るより喜びを作る材料にするのが最高の選択肢だと俺は信じてる。ナップの涙は枯れ、ただむうと口を尖らすだけになる。大丈夫、「君が可愛い」、俺が愛してる、それで全てがクリアに片付く。だから、ナップ、君は可愛い、愛してる。

「う、っあ!」

 腰を、少し揺すった。ね、泣いたり凹んだりして、放っておかないで。こんな自分を自覚するのも問題かもしれないが、ナップの失禁を見ても俺の性欲は衰えるどころか、ナップの中で欲の勢いを増すばかりだ。

「たっぷり出してすっきりしただろ?だからもう心置きなく愉しんで」

「っ……、言うなよ、そういうことっ、馬鹿っ」

 ナップの手は、蛇口に縋った。長らく放置された俺の性器は、ちょっと動かせば爆発的な快感に押し流されそうになる。

「ほら……、また大きくなってきた」

 掌の中、再び存在感を増す。先っぽを濡らすのは、まだおしっこか、もう先走りか。ナップの声はすぐさま再び甘さを混じらせる。俺の肉を駄々を捏ねるみたいに握り締めて離さない。

「好きだよ、ナップ。お尻の中、本当に気持ちいい……」

 ナップがこんなに俺を満たしてくれる幸せったら、ないよな。奥から手前へ腰を引けば、行かないで行かないでと追いすがられる。俺の性器とナップの肛路は強固に繋がり合っていた。絡みつくようにすら見える肉壁の出口は、ほの赤く腫れているが、拒むような声はナップの唇からは出なかった。それどころか、

「んっ、んんっ、っ、ふぁ、あっ……あっ、あぁんっ」

 蜂蜜のように粘り滴る甘さを浴室一杯に響かせる。心も身体も丸裸で、自分の恥ずかしい部分隠しておきたい部分を鏡に映しあう。俺たち自身の熱で曇った硝子に、肌はまるで溶け合ったように映る。一突きごとに溢れる声は俺の耳に入り、内側を犯し、俺の腰をもう一度振る原動力となる。亀頭の裏を、茎の表を、ナップの中に擦りつけて、ナップの性器を擦って。

ナップのお尻の中は俺を愛する。あ、このままいったら、ナップの子供が出来ちゃう。そんなことすら思った。ナップのお尻は俺にとって、概念上、もう立派に生殖器だった。

「ナップ……、いこう、一緒にいこう?」

 この声が聞こえているかどうか、覚束なくとも言って、摘んだ指に繊細な力を篭めた。

「っく、んっ……せんせっ、おれ、も、いくぅ……っ」

 言葉の途中から、ナップの性器は俺をぎゅうと締め付け、弾んでいた。俺は息を止めて、今は幼い身体を持つこの恋人との時間が、形を変えても永遠に続くことだけを願っている。

「……ん……ぁう……、あっ……あ……」

 バックから、では、キスがし辛い。鎖のように繋がり合っていたはずが、するりと解けて。でも、手はしっかり握って、何処にもやらないと言葉よりも確かな証、口付ける。汗びっしょりの互いの身体が滑り合うことに、ナップは複雑な表情を浮かべ、俺は笑う。

「……楽しかった?」

 当然のように答えは無く、しかし、俺は満ちる。だって、ね、俺も満足してない。一日に一回、ナップは三回、では到底、ね?確認したことは無いけれど、そうに違いないと思っているし、性欲がまさに急激な成長を遂げようとしている十三歳であれば、と想像する。

 だから、もちろん。今は午後五時、次は、午後九時。場所は、恐らくベッド。ソファでしてもいいけど、昨日したものね。

 小さな音を立てて、とりあえずは区切りのキス。

「次の時は、ちゃんとおしっこしてからしようね?」

 一秒後、思い切り鼻を摘まれた。ばかりか、その鼻を右左右左ぐいー。俺は笑いながら泣いて、改めて、この幸せを噛み締める。

 相変わらず俺はこの子に「先生」と呼ばれ、確かに教えられることは片っ端から教えている。けれど、実際には只の恋人同士、俺がナップから教わる幸せの、何と多いことか。不貞腐れた後ろ頭をくしゃくしゃ撫ぜながら、またいくつもを、学んだ気になっている。


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