「其れ」を「当たり前」という概念は、イクルの口から発される事で殆ど真理となる。氷のような輪郭を持ちながら、沸々と滾る劣情を滾らすイクルの双眸は、ほんの十一歳の少年の抗いで受け流せるような甘いものではなくて。
視神経を炙られ、解けて落ちた粘っこい雫はまっすぐにタカトの陰珠に垂れて、染みるような痛みと共に精子の群れを、最早生涯を棒に振るに等しい永続性と共に無駄撃ちするために生産させる。
精神的に圧倒的な上位に立っている自覚と共にイクルは悠然と思う、――タカトは早漏だ――蜂蜜の海の底へ溺れさせ、底の白砂糖に漬け込んで、……タカトはこんなに、こんなに、甘くなった。僕のために僕だけのために甘くなった。
きゅい、と軽い体の二人を乗せて、ベッドはそれでも少し、軋む。
「好き、だよ、タカト。すっごく、好き」
だってその舌までも、こんなにも。
滑らかな口の中を犯させながら犯しながら、タカトが耳の先まで赤くして必死に応ずるのは、まだ一本も虫歯のないイクルの清浄な口中に初体験の痛みを与える日が来るかも知れないと錯覚させる。其れを本望と思わなければ、執拗に唇を重ね舌を絡める事もしない。うん、そう、僕も同じように毒されている。タカトが可愛くって仕方がない、所謂所の「病気」。
「ひ、ヴ、ぅっ!」
例えばこのペニスの触り心地が。
「い、っひゃッ……んゥう!」
声が喉の奥で潰れたまま、イクルの舌の上で弾け、甘酸っぱい薫りを為す。イクルの愛撫に理性のヒューズを飛ばしかけながらも、一生懸命なキスの一つひとつ些細な舌の動きまでこの「恋人」に尽くさんとする姿を、肌を重ねた至近距離で見せられて、「好き」、言わずに居られなくなる、「好き」、僕のためのタカト、「好き」、僕の、「好き」、タカト。絶対的な私有物として定義した対象に向ける感情の選択肢の中から、不似合いなものを選んでいる気もしつつ、……「好き、だよ、タカト、……ホラ」、唇を外し糸を光らせて言うのは、これ以上ないほど我侭で真摯な愛の求めだ。
「い、っちゃんっ、好き……、好きだ、よっ、好きっ……」
「そう……、タカトは僕のことが好きなんだね……。可愛いタカト」
きゅ、と幼茎の根本を左手の指で縛ったまま、差し出した右手に「タカトのヨダレ、頂戴」、戸惑いながら開かれた口の中をひとしきり指で犯してたっぷりと塗らしてから天使――以外の何に見えた?――の微笑を浮かべる。タカトの心が緩んだ瞬間など刹那の数として成立したか覚束ないのに。
「うァ、あ、ふゥア、ア、あ! あ!」
勃起してもまだ何処か柔らかさを残すピンク色の亀頭を、唾液を塗りつけた指で捏ね回す、
「あは……っ、タカト……、どう? 自分のよだれでおちんぽ犯されてるの」
すっごいぬるぬるだね、邪気の一分だって無く、隙間無く愛しい気持ちを詰め込んでイクルは言う。「タカトはいやらしいね、自分のお口でフェラしてるのと一緒なのに、こんなに震えちゃって、どんどんヌルヌルにしちゃって……、ローションまみれになったみたい」、僕のために、僕が壊す、もっともっと、塗りつぶしていくのだ。イクルの指の鎖の中でタカトの幼器は頭部を真っ赤に腫らし、益々荒れ狂う。
壊れてしまうかもしれない。
もとよりそんな遠慮が少しでも在ったなら、タカトの体の一箇所だって拓くことは出来なかっただろう。
「手ぇ……ッ、手ぇっ、は、ず、っ、……ちぎっ、れひゃっ」
尿道口を弄っていた小指を止めて、イクルは湿度の高い視線をタカトの顎の下へ這わせて、
「イキそうなの?」
暗い光を固まりのまま、「おっぱいさわってないのに、精液出しちゃうの?」、まっすぐに弾き飛ばして、「約束、破っちゃうの?」。
興奮の最中に在りながら、タカトの真っ赤な顔からは音も無く血の気が引く。ぶるっと震え、慌てて首を何度も横に打ち振るう。「や、らっ、い、か、なっ……、まだぁっ、まだれないっ……!」、開いたままの口から唾液が頬に散る。自分という人間のためにこうまで狂う様を惜しげも無く見せる姿を前にして、イクルの包皮の淵が腺液で濡れる。
「タカト、いい子」
ビクン、ビクン、喉元まで込み上げた到達感が行き場を失うのを間近で観ながら、いとおしさが溢れそうになる、「約束したもんね? おっぱいと……、僕の中でだけイクって……」、こくこくと頷く健気な姿を見て、約束を破った時にはどんなおしおきをしようかと考えるだけで、其れは何週間分もの寂しさを癒す薬となる。タカトの痙攣が収まったのを見計らって、指の箍を外す。ほんの一滴だけ亀裂に滲み出た濁り蜜に狂おしいほどそそられた食欲を治める方が、タカトが射精を堪えるより余ッ程苦しいはずだとイクルは思う。
「じゃあ、……タカト」
枕に肘をついて、「ね?」、尻を掲げて見せ付ける。く、とタカトの喉が少し、動いたように見える。もう何度だってその身の中を往復したはずのタカトは、しかしいまだ童貞のように瑞々しい緊張と無縁では居られないらしい。
いいのに、と思う。
だって僕の体は隅々まで君のものなのに。
「タカト?」
「あ、う、……うん、……」
じめじめと温かい息が尾丁骨から這入って、垂れ下がるイクルの陰嚢までをくすぐって抜けた。思わずぞくりと背中を走った震えに、息が一つ乱れる。整える間もなく、たっぷりの唾液を纏ったタカトの震えた舌先が、イクルの短い皺の寄った肛門の周囲から、じっくりと二周かけて中央に至る。息は今にも暴走しそうなほど熱く、その周囲がじっとりと汗ばんでくる。薄暗がりに浮かんだ汗を愛しげに舐めながら、自分が括約筋をひくつかせる動き一つに、恋人が呼吸を乱して興奮を重ねてゆくのを、イクルははっきりと感じ取っていた。
「ンあ……、ッン……ん……、ぅはァ……ん……、タカトの……、舌、すっごく……っん、すっごく、えっちで……、気持ちイイよ」
無理にでも笑って、ほんの少し、尻をタカトの鼻に押し付けた、「すっかりヘンタイになっちゃったね、タカト、僕のウンチ穴舐めて興奮しちゃうんだ」、すべての刃の半分は、吐き出した途端から自分に切っ先を向けて降り注ぐ。其処をタカトにもっと舐めて欲しくてひくつかせているのは、他ならぬ僕だろうと、肩に止まった鴉が、鸚鵡の振りして声真似をする。
「ちが……、う、……よ」
執拗とも思えるほどにまた舌を這わせるタカトが言う。
「……いっちゃんの……、お尻、……痛くないから……、僕がいっぱい濡らせば……」
「理由なんてどうでもいいよ」
覆い被されそうになって、慌ててイクルは右腕で言葉を払い退ける、「タカトは変態なの。……僕の汚い場所舐めておちんぽ勃たせるような……」。タカトに否定できるだけの材料があるはずも無く、抗いの言葉は無かった。ただほうっておけば命令するまでいつまででも、こうしてクンニリングスと呼ぶのかも覚束ない行為を一つ覚えに続けるだろうという想像は容易だった。
だから、
「それに僕は」
イクルは不適に笑って股下からタカトの心臓の辺りに向かって言い放つ、「痛くなんか無いもの」、大雑把に舐めて濡らした中指を、殆ど無頓着とも言えるやり方で局部に挿入した。
「あ……はぁ……っ」
後ろでタカトがびくんと身を強張らせたのを感じる。直腸内に向けて爪の生えた指を突き入れるという行為に対して、要するにイクルの恋人は未だに緊張感無しでは居られないのだ。散々傷つけられて居るくせに、イクルの体の些細な一部分であっても傷つけてしまうのが恐ろしいと思っているらしい。
「ほら……、平気でしょ……?」
ころんと寝返りを打って仰向けになり、勃起した性器から陰嚢の裏までを晒し、その下の肛門を左右にくいと広げて見せる、「タカトのおちんぽ入ったくらいじゃ壊れないよ」、此処まで言ってもまだ、タカトは信じきれないように太く凛々しい眉の根を寝かせて、「……うん……」。狂おしいほど熱くなり精液交じりの腺液を先端に垂らしているくせに、何処か不安げに視線を揺らす。イクルの恋人は、イクルの恋人として在る為には、まだ少しく優し過ぎるのかもしれなかった。
「……あのね、タカト。人の身体って、そんな簡単には傷ついたり壊れたりなんかしないんだよ?」
「……、でも、あの……」
「大体、そんな華奢なものだったら、タカトなんてとっくの昔に壊れちゃってるじゃない」
くす、と笑って、手を伸ばす。おずおずと差し出された腕を引っ張って、自分の細い体と、一回りの差も無いようなタカトの体で覆わせた。太陽に愛されて浅黒く焼けた耳朶から指で辿り、ランニングシャツの焼け跡を脇の下まで経由してから、左に回って柔軟性を帯びた乳輪の央部、亀頭の鈴口にも似た亀裂を、人差し指の腹を押し当てる。其処に在るかすかな隙間から空気が逃げると、かすかに吸い付くような力が生まれる。
「いっちゃ……」
――左手は、今は汚れているからやめておいてあげようね、なんて。まるで同じことを気にするみたいに僕は――
「此処に……、モノ入れられて射精しちゃうようなタカトが、そんなことを気にするんだねえ。……フツーは金平糖なんて入れないし」
だけどそんなタカトが好きだよ、……其処に疼きが在るのは見なくても判る、ぐり、ぐり、ぐり、乳輪ごと、吸い付く指で小円を描く。タカトの眼から理性が失われていくのを、イクルは大いに楽しむ、まだ少し、余裕もある。いっそなくたっていいのにと思うけれど。
「僕はタカトにおちんぽ容れてほしい。……タカトもちくびマンコに容れて欲しいよね?」
かく、と操り人形のように頷く。黒い糸を手繰り寄せて、其の心の形だってイクルは、変えて見せるつもりだった。枕元に置きっぱなしの菓子をプラスチックケースから一粒、指だけで取り出して、口に放り込む。「其れ」に気付いたタカトが、「……い、いっちゃん……?」、不意に怯えたウサギのような目になった。
「……大丈夫、トゲトゲの金平糖だって飲み込めるタカトのエロマンコなんだよ? こんな小さいの、楽勝だよ」
「で、っ、でもっ……」
「ホラ……、いつも同じじゃつまんないでしょ? ちょっとずつでもさ、新しい事に挑戦していった方が、きっと楽しくってもっと幸せになれるよ」
タカトに反抗は許さない。身体をしっかりと捕まえて、逃がしはしない。「いっちゃ……」、そんな声なら、聞こえもしない。
「ひ、ぉ、あ、あぅ、ン!」
「……ね? これぐらいのものなら、簡単に飲み込めちゃうよね、タカト」
押し付けて白い粒を閉じ込めた舌で唇を舐めて、イクルは其れすら甘いと笑う、ぎゅうと小粒の閉じ込められた右乳首を抓り、与えられたおぞましいほどの冷感を逃がそうと藻掻くタカトの悲痛な表情さえも。
「こっちも、ね」
「や、あぁっ、やらぁっ、ちゅ、め、たぁあっぁあッ」
タカトが声としてのまとまりに欠如した声を上げて、首を横に振る。もちろん逃がしはしない、許す事などありえない。あべこべに押し倒して、口に含んだ一粒を、全く同じように押し込む。
「んんァあ! あ、お、ぉ、お、おおぁ、あ!」
「うわあ……、タカト、おちんぽ、壊れちゃいそうにピクピクしてる……」
くすくすと、笑う息にモノトーンの薄荷が透けて見える。……可愛いタカト、僕のタカト、大好き、大好き、大好き、……まっすぐに、届けばいい。
「……いいよ、容れて、タカト」
「い、ひゃ、あっ……」
「うん、僕のケツマンコに、タカトのちんぽいっぱい容れて、中でいっぱい出してね」
跳ねる腰、ペニスに手を添えて拓いた門にぴったりと、そう太くも無い肉塊を押し当てて、「うぁっ、あ、ア! あぁ ン!」、その熱さその湿っぽさ、ひっくるめてそのいやらしさに、脳の芯の輪郭がとろり蕩ける。内壁をグンと押し広げる脈動が、一回、二回、三回、其の度ごとにかたまりとして吐き出される精液の熱さに、喉が焼ける。
「う、はぁあ……、早ぁい……」
……嬉しくて、仕方が無い。
「えっちな……、タカトの、ちんぽ……」
腰を動かす暇も無く射精に至ったタカトの身体から、興奮に伴ってみなぎっていた力が抜ける。「っン……ぅ……んん……」、不意の圧迫に、一瞬、眉間に皺も寄ったが、この程度で動揺していたら、イクルはイクルで居られない。
「ぉ、あ……、あ……!」
がくがくと震えて、タカトが人間としての尊厳すら見失う。
イクルの身体の中が、濁る、……この子の心の中を汚す僕は、あべこべに濁される……。
そんな想像が、イクルの意識を益々煮え立たせる。
「っぷ……ッ、く、あ、はは、あははっ、あはははははは! だっさいのー、タカト、おもらししちゃったんだー、もう十歳なのに! ハズかしー子だなあ」
ビク、ビク、震える腰に、焦点を失ったような眼に、届く宛ても無いが、これだけのものを受け取ったのならば、返さなければならないと信じる。下腹部はタカトの吐き出した尿で張って苦しいが、圧迫感すらもタカトから与えられるものだと思えば、これ以上ない贈り物となる。
「……もう……、駄目だよぉ? タカト、赤ちゃんじゃないんだから……」
笑いを鎮めて、ゆっくりとため息を吐く。じわじわとタカトのペニスの隙間から溢れ零れていくに連れて、少しずつ腹が楽になる。腰を浮かせると栓が抜けたように、かすかな痛みのような感覚をイクルに味わわせながら、タカトの身体へ彼自身の小便が零れ落ちていく。ようやく意識を取り戻したタカトは真っ赤になって、……しかしまるで動けない。腰から下、任意の力が抜け落ちてしまった。……もう、おねしょだってしなくなって久しいのに……、そんな思いが薄ぼんやりと飛来するが、其れが陥没乳首の中に埋まった氷の塊のごときメントール・タブレットの前では、些細なことのように吹き飛ばされてしまう。内側からの冷気に、体幹から体温がどんどん奪われていく気になる、震えそうになる手前で、「ほんとに……、可愛いね、タカト」、イクルの声が火を点ける。
「い、いっ、ちゃ……」
「ちょっと刺激が強すぎた? でも慣らしていこうね、今日は一粒だけ、でも、小さいから片乳四粒くらいずつ入るよねー」
「よ、……っ」
「無理なことないよね? タカトは僕のこと好きなんだもんねえ?」
タカトは眉間に皺を寄せて、しかし、頷く、はっきりと、二度、頷いた。三度目を掌で捕えて、離さない、「僕も大好き」、透明な声ならば何処までだって見透かされるのも仕方がないと思う。
タカトの双眸は少し潤んでいるように見えた。
奥二重の瞼に三白眼は、優しい心を抱えて覚束なく震える。だけど……、君はその強さで僕を困らせる。
「こっちも……、繋がろうね、タカト」
勃起しきった乳首――其れはもう「乳首」という単語で括っていいのか、イクル自身にも判らない。そしてタカトの其れのことも、そう呼んでいいのか判らない。ただ、此れを、此れらを、僕らは小さなそしていとおしい僕らの世界で、僕らの言葉で、やっぱりそう呼ぶ――を見せて、言ったイクルに決然とタカトは頷く。イクルの唇はタカトの陥没乳首に吸い付き、中から冷たい破片を吸い出して奥歯で噛み砕く。両方の孔から異物を取り出されると、其の場所は薄く口を開けて、イクルだけが与えてくれる快楽を求めて、いやらしく濡れて涎を垂らしているように見える。
……僕だけが届く場所で、タカトが居る場所で。いや、……タカトを僕が、攫って行く、誰にも届かない場所へ、二人だけの場所へ、……。
「挿れるよ、……タカト」
「ん……」
タカトが指で、両の孔を広げた。イクルはゆっくりと胸を重ね、狂おしく尖った乳首の先を、ゆっくりと宛がう、……其れは身体の端所同士での接触を悦ぶように、すぐに境界線を失う、イクルの乳首の先は、見る見るうちにタカトの陥没乳首の中へ埋もれて見えなくなる。
「ン……、ぅ、ア! っおぉ……ァ! はっあ、あ、あ! ア……」
イクルの方が身長が低いし体重も軽い。外で身体を動かすことの多いタカトが肉体の性徴も早いのは当然だが、
「すっごぉ……い、……、タカトの……、ナカ……ぁ……、つ、め、た……ぁ……っ」
開発しきったイクルの乳首ですら、やっとの事で届くような陥穽の底に、タカトの乳首の眠る場所、イクルは其処を桃源郷と呼んでもいい気がした。イクルが肛門でタカトのペニスを受け入れるように、タカトは陥没乳首でイクルの乳首を飲み込んで、互いにかすかな痛みと壊れそうな快楽を共有する。「い、ッ、っひゃ、っあぁっ」、頭の芯を真っ白にしてタカトが射精する。鼓動がダイレクトに伝わって、心臓を弾けそうなほどに熱くする。そして通過するたび血液は、全身を燃え滾らせ盛らせ、もっとこのたった一人、僕のために壊れる相手のために、僕も壊れよう、ひ若い子供に過ぎぬイクルに其処まで思わせる。
「タカト……っの、しゅ、ごっ……ぉおあ……、ぎゅうって……っおっぱいっ、僕のっ、僕のおっぱいいくっ、タカトっ……ッ、ン! ぉ……あはぁァアっ」
どう在ることがどう成ることが、正しいとか間違っているとか、そんな狭ッ苦しい価値観から、天使か悪魔或いはもっと余ッ程イイモノの羽を背に生やして飛ぶイクルはとうに抜け出している。もっと遠くへもっと遠くへ高い処へ、目指して。
「……ッン! っん……ぅんぉあ……あ……! あ……っはっ……、すっごい……っ、タカトの……、僕の吸ってる……ッ」
ぐずぐずに崩れた理性の向こう側で、タカトがイクルの肛道へ、幾度目かの射精をした。泡が零れ二人の下肢を濡らしても腰も胸も止まらない。寧ろもっと汚れようとイクルが強請り、タカトは素直に其れに応じる。
「……いっ……ひゃ、あッ……ンん! ンッ、んぎィっ……! ぅ、はぁっ、あ……、まっ、たっ、……れぅっ、出ぅっ……!」
「んう……っ、だ、してぇっ……」
誰の手も届かない宙の果てへと。
夏はまだ終わらない、狂いようのない処まで狂って、全ての価値すら転倒するところまで、イクルはタカトを連れて行くつもりだ。
其処まで連れ去らないと、誰が来るか……、不安に苛まれる、僕だけのタカト、誰にも触らせたくない、僕のためだけのタカト、僕だけの。
――あれだけ好都合に、虐げて在るはずなのに、まだタカトは純粋な眼でイクルに「好き」と言うのだ。その性器を舐めるとき、自分の立場はイクルの奴隷でも構わないと言わんばかりに従順な表情を浮かべる。ならば、もっと……、もっと……、僕だけに適合する身体を、心を、僕のためだけに、君を誰にも渡さないで、僕のためだけの身体として……、たった一人、結び合える相手として、君を――そんな風に思う、タカトのための、イクル。