アリシア=バルバリシア、風の四天王、そしてスカルミリョーネの妹。しかし、どう見たってスカルミリョーネの方が五歳以上年下に見える。このあたりのことはすでに書いた。
二人は本当の兄妹ではないのだそうだ。
「物心ついたときにはすでに、私たちは同じ家に住んでいました」
それって、兄妹というよりは、恋人の同棲なんじゃないのか? 二人とも、何百年も前から同じ姿であるはずだし。
「いいえ、そういったことは、一切ございませんでしたわ」
バルバリシアは、妖艶な微笑み。
「わたくしも兄も、互いにそういった感情は一切抱いたことはございませんでした。そもそもカオスは、わたくしたちを、将来の四天王の候補として考えていたようですから、恐らくわたくしたちはカオスに、邪魔な感情を排されていたのでしょう。
まず、先代のバルバリシアが倒れ、力を失ったことで、わたくしが風の四天王、バルバリシアを次ぐことになりました。……兄はその際にまず、カオスの稚児」
と、あっさり彼女はそう言った。
「として登用され、その後、先代のスカルミリョーネが倒れると、後継としてその座に着いたのです」
カオスも変わった趣味の持ち主だなと思う。スカルミリョーネがストライクゾーンに入るなら、バルバリシアだって十分に入りそうなものだが、その口ぶりからは、彼女は稚児ではないということは明らかだった。
クラウドは、ユフィやメルやティファといった、見知った女性たちとは全く性質の異なる、色気たっぷりのバルバリシアの前で、ややどぎまぎしている。さっき、目があって、にっこりと微笑まれて、一瞬ぴしりと固まって、すぐに目線をそらし、真っ赤になっていた。
「で……」
クラウドや俺に比べれば人生経験豊富なヴィンセントは、落ち着いている。赤い目をちゃんとバルバリシアに向けて、それからスカルミリョーネに戻して、低い声で訊ねる。先日のカイナッツォの件があるから、スカルミリョーネのほかの四天王、及び、カオス、ひいては魔界というものに対して、まだ警戒心が解れたわけではない。
「どういった用件だ?」
スカルミリョーネは、懐から封筒を取り出す。当然、カオスからの手紙だ。
「カオスからの手紙を預かっております、こちらをお渡しするのが、まずひとつと……。そして、……もしも今度の仕事にご協力頂けるのでしたら、このバルバリシアを、皆さんにご紹介しておく必要があると思ったからです」
やっぱり、仕事なんだ。茶色い無愛想な封筒はあくまでもぴっしりと角を尖らせている。ヴィンセントが中から、三つ折りにされた便箋を取り出して広げる、カオスの丸文字だった。
カイナッツォのことがあってから、カオスも気を使って、しばらくの平穏をくれてはいたけれど、やっぱり俺たちも協力しなければならないことはわかっているし。けれど、やっぱりな、身構えてしまう。
ヴィンセントはじいっと手紙を一度、上から下まで読んで。
それからもう一度、上から下まで読んで。
もう一度。
「ヴィンセント?」
じー、とヴィンセントは便箋の文字に目を置いていた。それから、ゆっくりと立ち上がり、
「煙草を吸ってくる」
と言い残して、退席した。
「……どうしたんだあいつ」
どれ、と俺も手紙を読む。
一度、ゆっくり読んで。
二度読んで。
三度。
「……ごめん、俺もちょっと、煙草行く」
「にゃ……?」
勝手なことをと、ヴィンセントは不機嫌だった。しかし、クラウドは素直に「ごめんなさい」と言ったものの、怒られてでも選びたい甘露へと、果敢に舌を伸ばしたのだ。その表情には充実感が漂っている。
「仲直りしたんだね、うんうん、よかったよかった」
今またちょっと、微妙な状況だけどね、内心でそう呟いて、ユフィに頷く。スカルミリョーネがバルバリシアを紹介する、「妹の」というところで、俺と同様のリアクションを一つした。
俺とヴィンセントが「どうする……」「なんと言うかこう、またかと言うか、何と言うか」「やだよな」「やに決まってる」「しかし断りにくいな」「間が空いているだけにな」「でも」「いやなものはいやだ」というような、ネガティブな会話を煙草を吸いながらしている間に。
「用件ってなに?」
「ええ……、実は、また皆さんに戦っていただきたいのです。今回は少々厄介でして。場所はまた……ウータイなのですが」
「にゃ!」
「クラウド様?」
「にゃ、にゃ、にゃんでもにゃ……、続き」
「は。どうも、あの場所に亡霊どもが『塔』を建てようとしているようなのです。……塔、避雷針という言い方をしても宜しいかと思いますが」
「……ふ?」
「亡霊がこちらに下りてくる為には異次元間を結ぶエレベーターの作動が必要不可欠ということはすでにお話しましたよね? あのエレベーターは作動させる場所を選ぶのです。周囲の磁場によっては、正常に作動せず、亡霊体が降りて来る段階で消滅してしまうといった誤作動をしてしまうことがあります。ですから、亡霊の下りてきやすい場所と言うのは決まっておりまして。その中でも特に条件のいい、磁場の受けにくい場所というのがあります。そこに、亡霊の霊波を吸い寄せる塔、或いは避雷針的な存在を作られる場合があるのです。そう言った場所の周囲では、亡霊が悪事を行なう可能性が非常に高まってしまいます」
この辺の話って言うのは、クラウドにとってはどうでも良かったんだろうな。
「で、それがウータイにあるの?」
「現在、まだあるというわけではありません。しかし、徐々に完成に近づいているようなのです。……すでに二度、カイナッツォ率いる水の魔族、火の四天王のルビカンテ率いる火の魔族と悪魔軍団が破壊に挑んでいるのですが……、残念ながら共に成果を残せてはいません。警戒心の強い亡霊たちで、魔族に対しては中々姿を現さないのです……。そこで、皆さんのお力をお借りしたく思うのです。皆さんに誘い出していただいた亡霊群を、私とバルバリシアで掃討し、塔を破壊するというプランです」
ここ数ヶ月で三度目のウータイであって、クラウドにとっては、いろいろありはしたけれど幸せな日々と今は言えるだろう。そして、俺もヴィンセントも、ややしんどい。何度でも言うが、ユフィが嫌いなわけじゃなくてだな。
もうすぐ夏休みで、授業も短縮時間割。しかも今日は金曜日、だから、結論を言ってしまえば、多分今日から二泊三日だ。
「急ぐ必要はありません」
バルバリシアの後ろで、ユフィの視線から隠れているスカルミリョーネは言った。
「三日間のうちに」
――二泊はもう既成事実だった。
「片付ければよいのですから。まあ、今夜のうちに片付けてしまえば、ゆっくり休むことも出来ますし、私たちがお邪魔することもなくなります」
そして、スカルミリョーネとしては苦手なユフィから逃げられるのだ。結局、急がせたいのだろう。
二時半、ちょっぴり遅めの昼食をとったら、軽く卓球をして、だあだあ汗を流して、それから温泉だ。
「私はっ、私は、あっ、あっ、あとで! あとで一人で入りますからっ」
「何言ってんだよ、身体洗ってやるんだからさ」
「そんなっ、滅相も……ああああ」
「お兄様、往生際が悪いですわ」
「はっ、離しなさいアリシアっ……うわあああん」
一頻りスカルミリョーネをいじめて……。って、よくないよなあいじめたら。でも、可愛いんだものスカルミリョーネは。本当に、ぐしぐし泣いてるのとか見るとさ、本気で好きになっちゃいそうなくらい、可愛いんだ。さすがにカオスの稚児だと思うよ。
またも、あえなく気絶して、ヴィンセントに看病される。俺は一人でゆうゆう足を伸ばしてはいる。スカルミリョーネが撃沈した、
「バルバリシアって胸超でかいね」
「ユフィ様こそ、とてもお美しいですわ。兄が怖がる気持ちも良く判ります」
こういった会話を向こうでして居る、クラウドは向こうに居る、ただ、今日は声が聞こえてこない、バルバリシアのあの身体に圧倒されているのだということは、容易に想像が付く。無論、多少の心配はするが、ユフィもバルバリシアも大人だから、妙なことはするまい。
「あー……」
間の抜けたユフィの声がした。
「……ちょっとー、ザックスー?」
「何だよ」
「クラウド鼻血吹いた」
「……止めてやれ」
「そんだけじゃなくってさあ」
「何だよ」
「クラウドちんちん立ってる」
「……ッ、今すぐこっちに寄越せ!」
もう、ええ、みんな可愛いんですよ本当に。
「にゃはふ……」
「にゃはふじゃないよ、もう……。だらしない」
鼻に詰め物をしたクラウドを、スカルミリョーネと一緒に寝かせて、性格の悪いアニキとオヤジのお説教。本人たちだけが楽しい訳だ。
「だって……、あのおねえさん、おっぱいすっごい、でっかいんだよぉ……」
「おっぱい星人だったのかクラウドは」
「ぶ、ぶな……っ」
鼻詰まりの声で不平の声を上げる。可愛くってもう、どうしようもないなあ……。そもそもおっぱい星人だったらユフィで勃起したりはしないはず(失礼)だし、生でバルバリシアのあの胸を見たら俺も多分やばいことになるだろうけれど、とりあえずそうやっていじってしまう。
「はさまれたいとか思ってるんだろう、やらしいなあ。バルバリシアのお兄ちゃんが泣いちゃうぞ」
「ぶ、に、っ、にゃっ、う……」
「で、スカルミリョーネは結局のところ、ユフィくらいの手ごろな胸が好きなんだろ?」
「ひっ……」
「多分、お前の女嫌いはシスター・コンプレックスの表出の一形態だな。アレだけ女性的魅力に溢れたバルバリシアが側に居たんだものなあ、判るよ、何となく」
「そ、そんな、そんなことはっ、……私は生れてこの方女性に触れたことも、女性と目を合わせたことも……ッ、ましてや、ま、ましてやっ、せせせ性行為」
また勢いよく鼻血が湧き出る。世話が焼けるなあ、と苦笑いしながら、世話する喜びに酔い痴れているサディストだ。いや、俺は本来サディストではない、これは周知のことだろう。ただ、マゾヒストだって、時にはサディストになりたいものさ。
「なあ? お前はちんちん大好きないけない子なんだもんなあ」
と、ぱらり、腰に載せてやっていたタオルを捲る。可哀想なほどに縮こまったちんちん。これは誰が見たって可愛い。
「で、クラウドはクラウドで、男も女もイケちゃう節操なしか。はさんでやれる胸がなくてごめんな?」
「ぶにゃうう……」
クラウドのも捲ってやる、縮こまっているスカルミリョーネと同サイズの。これだって、可愛すぎる。
すぐにでも、何かしてやりたいところだったけれど、鼻血がちゃんと止まるまで自分でおあずけ。
ヴィンセントは煙草を吸いながら、興味のないふりをして、こっちを見ている。
さっき着いてからここへ歩いてくるまで、誰一人、見ていない。なら、余計な心配をする必要はないということだ。クラウドとスカルミリョーネが復活するまでは、つれづれだ。
脱衣篭から、スカルミリョーネの脱いだワイシャツを広げた。
「お前、暑いのによく長袖なんて着るよ。……暑くないのか?」
「ふあ……、は、はい」
「俺なんか暑いから、この季節は頼まれたって長袖なんて着たくない。うん、……汗の匂いだな」
「ざ、ざっくすさま!?」
「お前は一丁前にトランクス穿いてるんだよな。……こっちも汗の匂い」
「ざっ……」
「クラウドのはなあ、いつも見てるけど、可愛いんだよ。ほら、スカルミリョーネ、クラウドの可愛いだろ、純白のブリーフ。な? でも、ほら、ここんところ、可愛いよなあ」
「ぶなうううう! ぶにゃ!」
「ほらクラウド、あんまり興奮すると鼻血止まらなくなるよ」
下衆なことをやってる俺が鼻血を噴きそうだ。よしよしと、可愛い二人の美少年を撫でてやる。ヴィンセントが煙草を灰皿に捨てて、クラウドの下着を観察しに行った。
俺たちは変態だろうか? 違うもん、ただ、クラウドとスカルミリョーネが可愛くって好きなだけ。そう思うこと、そして行動に出すこと、どうして変態と言えるよ。
「二人とも、大好きだ」
カッコつけて言っているけれど、これは百パーセント真実だ。俺は二人に順々にキスをする。鼻栓を抜いてやった、もう、止まっていた。赤くなったティッシュを、ふたつともぽいぽいとゴミ箱にスローして、タオルをどかした。
「クラウドさ、いつも俺がお前のここ『可愛い』って言うと、怒るだろ? けどさ、けどな、ホラ、見てご覧よ、スカルミリョーネの、可愛いだろ?」
「う……、にゃ、ん」
「クラウド様……、そんな、私の、こんな」
「クラウドとスカルミリョーネの、大きさもほとんど変わらないし、先っぽまで皮が余ってるのもそっくりだ。スカルミリョーネのを可愛いって思えたなら、クラウドのだって同じ風に可愛いんだよ」
「にゃー……」
ヴィンセントが、俺の隣りに座った。
「恥じる感情なぞ……要らんぞ。恥知らずというのは悪いことだが、知っていればいいだけのこと。知っていて、必要なときだけ出せばいい。少なくとも今こう言う場合には、まったく無駄な感情の種類だな」
そして、フライング気味に、クラウドの唇を奪った。俺は、しょうがない、クラウドの奥に寝そべるスカルミリョーネのちんちんにキス。
「んあ……っ」
「……気の早い奴だ」
ヴィンセントが咎めるが、目は俺を責めていない。
「ん……ふっ……んん」
魔性の口付けを一瞬で終わらせて欲しくないと、クラウドは自分からヴィンセントに腕を回し、ぺろぺろと舌を出して唇を舐める。俺の口で、たちまちむくむくと大きくなりだしたスカルミリョーネを、起き上がらせて、俺たちもキス。ふたつのキスの音が、扇風機の廻る気温と湿度の高い脱衣所の中に澱む。
いつしか、俺たちは全員、貪欲に自分以外の体を欲しがっている。俺はスカルミリョーネにアソコを咥えてもらいながら、クラウドのを咥えていた、そのクラウドは、お尻にヴィンセントを咥えている。こういうことが出来るから男同士でよかったなあなんて思う訳だ。それこそ、怒られてしまうようなことかもしれないけれど。
ヴィンセントがクラウドの中で一度いって、俺もスカルミリョーネの口でいった。そうなるとどうなるか、当然、交代ということになる。俺はクラウドをバックから、ヴィンセントはスカルミリョーネを腹の上に乗せて、愛し合う訳だ。温泉だから、互いに精液ひっかけあっても、洗えるのが便利でいい。
「クラウド。……どう、気持ちいい? いっていいんだよ、いつでも」
「にゃ、はぁ、あっ、あんっ、あん! っ……ああ! あ! あ!」
下からぐいぐい突き上げれば、打てば響く感じにぴゅくんと愛らしすぎるシビレを見せる。スカルミリョーネは絡みつくように、クラウドは握り締めるように、どっちもお尻の穴でいっぱい俺を愛してくれる。たまらないよ。
「ん……っ、ひっ、……っく、んっ」
「ん?」
「ま、た……っ、おれ、だけ、さき、っ、いっちゃっ……っ」
「ああ……、もう、そんなことで泣くなよ。いいんだよ、いきたいところにいきたいところへいけば。俺はそれだけで嬉しいんだから」
本当のところ、いっちゃえないと最終的な幸せには届かないけども。クラウドがイク姿、顔、ちんちんその他もろもろの身体を見てるだけで、俺がビクビクしてるの、クラウドだって感じてるだろ?
「ね……、もう一回、しよう。泣かないで」
「……ん、ん……ん、お尻……、中、ちんちん、……」
「うん、もちろん」
ちゅうう、とキス。
愛なんだよ。いや、もちろんこれが全部だとは言わないよ、だけど、十代の身体の俺たち、そして二十代の身体のヴィンセントにとっては、これは絶対に欠かせないし、欠かしちゃいけない愛なのだ。ちんちんをさ、ギンギンに熱くしてさ、互いの身体も自分の身体も汚れるの全部、気にしないで。恥ずかしい言葉、一杯言い合って。
「どこがいい? ねえ、クラウド、何がいい?」
「ちんちん……っ、ザックスのちんちん、すっごい……すっごいよぉ」
本気だけで、愛情だけで……さ。
その思いが俺たちを繋いでいる。多少トラブったって、困ったって、俺たちうまくやれてるんだよ、ね?