性的欲求

考えてみると、俺たちって結構微妙なバランスの上で生活しているのかもしれない。

まず何を置いても生活の中心は、対外的に「息子」「弟」の性欲発散にあるらしい時点で既にダメな気がする。

慣れているとどうでもいいようなコトだし気付かないのだが、先日ユフィに会って、暫くしてから気付いた。俺たちって……実は物凄い変態なんじゃないかと。

「すっげぇ、クラウド、また百点だって〜」

今やすっかりクラウドの親友となったジャミル少年は、クラウドの算数のテストを覗き見て目を丸くする。ちなみにジャミル少年は30点。小学校二年生で半分以下の点数の彼は、体育と図工はクラウドよりも更に得意だ。学力偏重っていうのか、そういう風潮があるみたいだけど、俺はジャミル少年の、サッカーボールの巧みなコントロールは100点だと思う。

ジャミル少年の声に引かれて幾人もの生徒がクラウドに殺到する。俺は輪の外で、何となく心の中クラウドに拍手をせずにいられなかった。

どうだ、うちのクラウドはいい子だろう!

……そう、こういう、学校にいる時は全く正常なのだ。

初日に一度だけミスを犯しただけで、それ以外はオールクリア。夜の性欲のことなど嘘のように、ごく普通の小学校二年生として生活をしている。成績及び学習態度優秀、先日「個人面談」なるものがありヴィンセントが出席してきたのだが、タカハシ先生には誉められっぱなしだったそうだ。もともと、生まれたままで、まったく毒のない性格だからみんなにも好かれるし、この小さい学校で友達百人も夢じゃない。一緒に買い物に出たりするようにもなったから、街行く人とも挨拶をして顔見知り、好奇だけではない理由で話し掛けて来る人も増えた。その見た目ももはや問題ではないらしい。科学者たちはどうやら、

「なるほどDNA組成によってはああいう半獣半人を作る事も可能なのだ」

程度の結論を出したのかもしれないし、この街で生活する上で問題点はゼロだ。

つまり、家の外は正常なのだ。

いや、家の中では異常なのかというと、一概にそうとも言いがたい。

夕飯を食べおわって暫くの間は大抵、ごく普通の父・兄・弟の三人家族なのだが。

……ところで、男の性欲というもの、あれは非常に厄介な代物だ。これはあくまで聞いた話に過ぎないのだが、女性は男と違って年がら年中臨戦態勢というわけではないらしい。いや、男も年がら年中臨戦態勢というわけではなく、数日にいっぺん……まあ、とにかく、女性に比べて男の性的欲求の昂ぶる周期が短いのは事実だ。そして、それは大抵の場合、昂ぶったとしても自分の努力で何とかするべきものだ。

せいぜいティッシュと、妄想と、必要ならば何か猥褻な写真でもあればいい。一人の場合は。

つまり、俺たちは一人じゃなくて、例えば俺からしたらクラウドとヴィンセントは物凄く愛しくて愛しくて気持ちいい存在だっていうのは、もう確認するまでもないことで、ちょっと、何というか、ムラムラッと来た時、というか溜まってる時、立ってる時にそういう存在に側にいられると。……もう、それは自分の努力で済まそうとかそういうことは頭から消えてしまう訳だ。

性欲というのは贅沢で、出来る限り気持ちいい方に流れるコトを欲する。いや、一人でするのが一番気持ち良いという話もあるけど、それは皮膚の感覚として気持ち良いのであって、つまりクラウドとヴィンセントの存在は俺の精神が一番感じるものなのだ!

……下世話な話になってすまない。 ただ、この感情は俺だけじゃない、クラウドにも、ヴィンセントにも共通して当てはまる事なのだ。そして俺たち三人が三人、必ず同じ日にしたくなるわけじゃない。例えばクラウドは何となく俺の膝の上に座っているだけでしたくなってしまう。

毎日毎日してたら、さすがに腰が持たないしカラッポになってしまうから、なるべくしないで済ますなら済ませたい、その方が正常な形なのだと常々思っているのだが。ただ、立ってしまうともう、駄目なのだ。こんな家庭が他にあるか。

異常というほかない。

 

 

 

 

クラウドの様子がさっきからおかしい。ここ三日ほどしていないから、そろそろ溜まっているのかもしれない。暫くは一人でゴロゴロしたり、鈴を鳴らしたりして気を紛らわせていたのだが、我慢出来なくなったらしく、配られた保護者会のプリントを読んでいた俺にぐるぐると甘えて尻尾を腕に絡み付けて来た。

「ザックス〜」

ペロペロと俺の唇を舐めて、求めて来る。

「なんだよ……」

俺が口を開けると、嬉しそうに舌を差し入れてくる。やれやれ、と応じるが、俺のは哀しいかな少し反応してしまう。これがまず何よりいけないのだ。

「ん……っ」

そしてクラウドが可愛らしく震えるのをみると、もう、硬くなってしまう自分。クラウド程ではないが、俺も感じやすい。その辺も原因かもしれない。そして、クラウドがこんな風にしてきたら、やっぱり俺としても「俺は別にしたくないんだ」なんて、そんな言葉言えるはずもない。

クラウドを悦ばせてやりたいと思ってしまうわけだ。

……ついでに、俺もしたくなってきたからシタイ、と。

「ここじゃやり難いから、ベッドでやろう」

……結局、自分でこんな言葉を吐いてる。ダメだ。

そしてベッドに寝かせる頃には、俺もかなり身体が熱くなってしまっている。今日はどんな風にしてやろうかなんて考えてる。

「もう、ここ立ってる。まだ触ってもいないのに、な」

朝夕は充分涼しいから、最近は服を二枚着せるようにしている。上を脱がせたあと、シャツごしに乳首が立ち上がっているのが解る。俺はシャツの上からそこを舌で撫でた。布だから、細かい毛が舌にくっついたけど、服の上からっていうことにクラウドがいつもと違う感じを受けて、またひくっと震えてくれたからまあよしとしよう。ああ……、だから、この「よしとしよう」という発想が間違いなんだ。間違いの根本、こういう、クラウドが感じてくれるから、とか、クラウドがカワイイから、とか、そういう考えが諸悪(翌朝の疲れ、腰痛、筋肉痛その他)の根源なんだ……、解ってはいるんだけど。 でもなぁ……。

「どうして欲しい?」

愛があるとかそういうことはこの際抜きにして考えた方がいいかも、それは多分言い訳だ。

性欲というのは暴走させてはいけないものなのだ。

合意の上とは言え、互いに強姦し合っているようなもんだ、こんなの。強姦は、性欲を自分で何とか出来ない人間がすることだ。

「っ、んんぁ……ちょくせつ……」

シャツを捲り上げる手、いいのかこれで。

脱がせて改めて見下ろす……。

何度見ても飽きないのはどうしてか。

ピンク色の乳首、浅い呼吸に上下する薄っぺらな胸板、まるで女の子みたいにくびれた腰のライン。……それは自分のからだなんだぞ、俺。けど、そのことはもうとっくの昔に解決した事だろう、俺。言い訳、正当化してしまっただけのような気も……。

「あっ、あぅ……」

声も、だ。ついでに言うと、顔も。

潤んだひとみ、染まった頬、はぁはぁと切ない吐息を漏らすくちびる、全部が全部。なあ、教えてくれ。何でお前はこんなふうに、俺のことを昂奮させるすべを知っているんだ?

「クラウド、下脱いで」

敢えて自分でパンツを脱がせる。恥ずかしそうな顔がまたそそる。しょうがないか。

「あのなぁ……普通は一週間くらいガマン出来るもんなんだぞ。抜かなくても」

うん、自分でも思う。フツーなら、それくらいだ。だけど……痛いことに俺が既に普通じゃないんだからコピーが普通のはずも無い。

俺が指摘すると、ますます顔を真っ赤にして泣きそうになる。

だけど抜いて欲しいから反抗は出来ない。

「……まぁ、責めてる訳じゃないよ。クラウド、俺の上、乗って」

俺の言葉に戸惑いの色を見せる。俺の意図が分からずに、真っ正面に乗っかろうとするのを制する。

「逆」

「え?」

「お前は俺のを咥えて。俺はお前のに、するから」

「なっ……」

「ほら」

クラウドを抱上げて、俺の上に逆さまに乗せる。即座に降りようとするクラウドを抑え、クラウドの蕾がもろ目の前に見えるような体勢。

「やだ……っ、見ちゃ、やぁ……」

よく見えるようにこの体勢にしたんだ。クラウドが気持ち良いように。

「クラウドは俺のしてくれてればいいよ」

もっとも、それだけで済むわけではもちろんない。クラウドは俺の目に晒されている後孔を気にしながらも、俺のに口付けてその小さな口いっぱいに頬張る。

なんていうか……、俺、クラウドにされるとスゴイ早漏になってるみたいな気がする、っていうか元々結構早いほうだけど。ヴィンセントも多分そう。何かこの子のすることって、いちいちツボというか。いつからの癖か解かんないけど、口でするとき必ずキスする、それもかなり、来る。

しかも目の前にはクラウドの隠された場所。触って欲しいのか、震えている。両手の親指で割り開くと、クラウドはすぐに抗うように入り口を狭くする。ただ……まぁ、ここからはお決まりのパターンで、舌先で軽く皺の辺りをなぞってやるとすぐに緩んでしまう。

「んっ……ぅ……ん……」

俺のをしゃぶった口が苦しそうだ。鼻にかかった喘ぎ声でまた俺は感じてしまう。指が二本入るともう駄目で、クラウドはたまらず俺のから口を離し、もう耐え切れないといった感じで遠慮なく鳴きはじめる。

「ん、ぁっっん……ぃ……あぁ……」

「クラウド、俺の、してくれないのか?」

「無理、だよぅっ、んっ、ひぃ……っ」

尻尾がぴく、ぴく、と揺らめく。悪戯心を起こして、ぎゅっと握ってやると、俺の指を潰すくらいの勢いで狭くする。

喉を反らして、鳴く。

「で……、どうして欲しい?」

ヴィンセントみたいに、とことん意地悪に責めることなんて俺には出来ない。クラウドはか細い声で応えた。

「いれて……ほしい」

お揃いだ、俺も一緒、入れたい。

「いいよ。おいで」

このごろ、俺がしたくてするときを除いては、大抵の場合クラウドに入れさせる。自分で恥ずかしそうに、気持ち良さそうに、俺のを体の中に入れていくクラウドの姿は俺のお気に入りだ。

腰を最後まで落して、不規則に体を震わせる姿はなんかもう、謝るしかないような気がして来る。

もうこういう事を言うのはこれが最後にした方がいいかもしれない、いい加減しつこいと言われるかもしれないし、だけどこれからも何度でも言うだろう、猫耳、猫手、猫足、尻尾、クラウドの体!

……もう、可愛い以外のどんな言葉があるだろう。

「はぁ……ん……」

体いっぱいに俺を感じてくれているのが嬉し過ぎる。

恍惚の表情で、ヴィンセントにも見せてるけど多分俺の方が愛は多いであろう愛しい吐息を吐いて、俺の手を求め猫手を伸ばす。その手を握り返して、開いた方の手で上を向くクラウドの欲求に指を絡める。

「んっ」

ぐっと中が狭くなって、俺もかなりいい。互いに、そんなに我慢するのは体によくないから、俺はクラウドに促した。

「動いて……」

こくんと頷いて、膝を使ってゆっくり体を上下させる。それに合わせてピンク色のを動かしてやると、クラウドの唇から、またどうしようもない喘ぎが漏れる。

なんか、する度にどんどん感じやすくなってるみたいで、声もどんどん艶っぽいというか可愛いというか。俺としてはすごく耳に良いから、いいんだけど。

じゃあする度に感じやすくなってるって、俺も一緒じゃないか。

「ああぁぁ、だめぇっ、もう……っ、ああん、っ」

「っ……く、……ぁ……クラウド……」

だらしなく壊れた声、けど、お互い様に俺もかなりいきそう。

クラウドのを握って、扱き上げる。

クラウドが反応して、俺のを締め上げる。

嬌声がかぶった。

っていうか抱きながら鳴く俺も俺かもしれない。……けれど、クラウドの体は。

俺の腹の上に精液を放って、クラウドは崩れるように俺に抱き付いてきた。キスしたら、またぴくっと震える。白いのをたくさん出したばっかりのそこを軽く扱くと、まだ出て来る。

「あぁ……ん……」

繋がったままの余韻を目を閉じて感じている姿は色っぽい。同時に、可愛い。

結論は最初から出ているのに。明日も学校がある。今日はもう、後始末したら寝よう。けど、明後日と明々後日は休みだからいっぱい出来る。クラウドか俺か、どちらかが壊れてしまうまで抱き合っていよう。

厄介だな、俺ははぁはぁと俺の胸で吐息を繰り返すクラウドの耳を撫でながら思った。

愛無しでもセックスは出来る。やろうと思えば。とりあえず立ってれば出来る。結果がどうかは別として。愛があると、セックスはかなり困る。楽しいし、気持ちよさは何者にも代え難いけど、困る。

やってる最中はもう、他の事はどうでも良くなって、俺たちのしてることはまるで神様も認めているような気がして来る。同性愛だろうが何だろうが関係ない、俺たちは愛し合ってる、片方が猫だろうが、歪んだ形だろうが。それはもう、倒錯とかそういうもんじゃなくて、愛なんだ、愛。

誰にも文句は言わせない。

と、どうしてここまで強気になれるのか解らない。

恐らくは、胸の中の存在が俺の事を愛してくれてるという自信みたいなものがあるからだろう。このさい、ヴィンセントは置いといて。俺はこの子に愛されている。その事実だけで、性的欲求を正当化することは出来るのではないか。

そうだな、異常かもしれない。けれど、俺たちが異常なのは、もう随分前からの事だ。

もし俺たちが異常だと定義付けたなら、クラウドなんて、可哀相に、彼は生まれたときから異常だ。俺が居るから。だけどクラウドはその異常さを恥じることはない、悲しむ事はない。寧ろ、俺に抱かれる事に悦びをおぼえている。俺も、クラウドを抱く事に悦びをおぼえている。

それは異常なことじゃない、幸せを生む行為だ。

俺にも段々よく解らなくなってきたけど、多分、互いに好きだから愛し合ってるから、性欲も暴走してしまうのだ。

すきだすきだすきだすきだすきだだいすきだ、そういう気持ちが、暴走して、性欲になってるんだ。もしそれでなお、異常という奴がいるなら。生きることが既に変態のしてることだって事に気付けばいい。

……そうでも考えないと、もう。

 

 

 

 

論理の飛躍?

…………興味ないな。

 


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