パワーシフト

 ヴィンセントの血をあの亡霊によって魔界に送られてから一ヶ月が経過して、それとは別に九月一日からきちんとクラウドの二学期も始まっているので、ニブルヘイムでの日々を送っている。その間、わざわざ記すべきことも無く、まあまあ平穏な日々を送っている。

「ヴィンセント様の血が向こうに行ったからといって、すぐに何かのアタックを仕掛けてくることはないでしょう。ですが、警戒だけはしておかなくてはなりませんから」

 カイナッツォよりも、バルバリシアよりも、そしてカオス自身よりも俺たちが信頼するスカルミリョーネが、俺たちと同じ屋根の元で生活している。彼の指一本で召喚されるSP風の死霊戦士四人組、「スカルナント」の皆さんは、普段は村の一軒だけの宿屋で。いつでもアタックに反応できる場所で待機してもらっている。たった三人の人間たちの為だけにと考えれば破格の待遇ではあるが、カオスもあれで情け深い。俺たちに大迷惑をかけたという自覚があるんだろう、考え得る限りで俺たちの一番やりやすい形を択んでくれている。これはありがたいと思わなければならない。

 ウータイの亡霊塔は、指揮を執っていたあの亡霊のリーダーの消滅とともに跡形もなく消えた。高硬度の結界を張り巡らせたから、暫くはあの土地に亡霊が降り立つ心配も無いだろうとバルバリシアは言っていた。だから俺たちがウータイに行く理由は無く、アタックをかけられるとしたら俺たちの居るこの土地、ニブルヘイムということになる。

 前回、ウータイへ俺たちが出向き、亡霊を直接叩く……。これは、今思い直せば、亡霊の罠だったのだ。魔界側の恩恵を最も被っているのは俺たちであり、また俺たちも人間ながら亡霊と戦える戦力を持った者として魔界の恩恵となっている。即ち、亡霊からしたら最も煩い連中というのが俺たちである。その俺たちがのこのこ乗り込んでいったのだ、そして、連中は当初の目的どおり、きっちりとヴィンセントの血をせしめていった。魔界の戦士である俺たちを凌駕しかねない戦力を、むざむざ与えてしまったわけだ。

 だから、今度はきっちりと守りを固めて。仮にヴィンセント級の亡霊がやってきたとしても、四天王の一人と、その配下、更にヴィンセント、変身能力の備わったクラウド、そしてまあ、一応俺もいるのだ、そう相手の思い通りにはいかないはずだ。いや、いかせてはならないのだ。

 時折、怖くなる瞬間はある。果たして、ヴィンセント並みの能力を持った亡霊と、どこまでやりあえるんだろう、と。

「私とスカルミリョーネやバルバリシアを比べたならば……、やはり、あいつらの方が上だろう。だがそれは、もちろん生身の私なら、の話だ。仮にカオスを宿した私であれば……、判らんな」

 ヴィンセントは静かにそう言う。

 クラウドの尻尾がふらふら揺れる。

「だが……、カオスを宿していると言っても、それはカオスの実力の十分の一にも満たないものだ。カオス自身の力量が人智を超えているのは確かだが、悲観的になる必要は無い。こちらはスカルナントたちを含めれば人間以上の力を持つ者が九人居るわけだ。私の分身一人くらい、どうにか出来ぬはずはない」

 緊張感は保つべきだが、恐怖感は必要以上に抱くことはない、とヴィンセントは言って、クラウドと俺の頭を撫でた。その手に、俺は何より安心する。クラウドの尻尾も止まる。

「それにな、私のことは……、一応は私自身、ある程度以上、知識を持っている。もちろん、カオスと通じていることでカオスのこともな。得体の知れぬ相手ではない、ヴィンセント=ヴァレンタインという、お前たちの良く知る男だ。油断することは無いが、未知の相手より戦いやすいこともあるだろう」

 そう言って、「出かけようか」と言った。俺たちとスカルミリョーネを車に乗せて、村から数キロ離れた荒野。もう夏の名残は少なく、トンボが飛んでいる。

 車を止めて、ヴィンセントは少し考えた。その後に、

「非常に不本意ではあるが」

 と前置きして、……茶封筒を取り出す、「クラウドへ」と丸文字で書いてある。――カオスからのものだ――そう、クラウドも俺も、理解する。

「スカルミリョーネに委ねられたんだ。私に判断してくれ、とな。……渡さなくて済むのなら、渡したくない。迷った。だが、お前自身を護る為の力ならば、今はあった方がいい。……終わったら全て、カオスに返す」

 変身か。

 俺は少し、気が滅入る。けれど、クラウドが馬鹿じゃない事を知っている、学習する子であるということを知っている。そして、俺はクラウドを信じたいと思う。だから黙って、クラウドにその封筒が渡されるのを見た。クラウドが封筒から手紙を取り出すのを手間取るので、スカルミリョーネが手伝ってくれた。

 クラウドは、硬い表情で中から取り出された白い便箋を見詰める。

 そして、うん、と頷く。その顔は、決意に満ちたものだった。

「……では、出よう」

 ヴィンセントは車から降り、数歩、俺たちと距離を取ってから、振り返る。

「え……?」

「格好の練習台がここに居るのだ、活用しない手は無い」

 ヴィンセントは、背中に羽根を生やす。

「しかし」

 スカルミリョーネが代弁した戸惑いを、ヴィンセントは振り払うように、

「……かかってこい。全力でな」

 そう、言って、ふわりと浮き上がった。

 クラウドが一人、まっすぐヴィンセントに向き直り、戦闘体勢に入る。

「ううう……」

 自分を抱き締めて、頭を垂れて、

「うにゃあ……」

 その身に備わった、二つ目の変身が始まる。

「アアアア!!」

 声が変わる、低くなる、体が大きくなる、尻尾がぶわってなる、爪が黒く染まる……、此処までは従来と同じだ。

 だが、

「ウウウ……アア」

 その体型の変化は、前回のものより烈しい。

 あの変身でも、確かにクラウドの身体は成長した。恐らく十六歳くらいの、即ち俺よりちょっと小さいくらいの体に。

 でも、今回は。

「あああ!!」

 腕をがっと開いて、仁王立ちしたクラウドは、俺と全く変わらない……いや、俺よりも身長……高くないか?

「……パワー型、なんです」

 スカルミリョーネが、呟く。

「なんだって?」

「……クラウド様の、前回の変身は……俊敏さに秀でた、言わばスピードモデルなのです。が、今回カオスがお贈りしたのは」

 しゅう……と、クラウドが息を吐く。

「殺傷能力に特化した、パワー型なのです」

 俺の声って、ああなんだ……。

「行くよ……」

 クラウドが言うのを聞いて、妙な気分になった。

 俺よりもでかいクラウド、というのに、ちょっとした眩暈を感じる。

「ザックス、いい? 俺、本気で行くよ?」

 クラウドにそう振返られて、俺のものなのに俺のものとは思えないくらい凛々しい顔に、俺はこくこくと頷く。

「なるほど……、確かにパワーは従来のとは桁違いのようだな」

 ヴィンセントは挑発するように笑う。

「だが、その分鈍臭くなっては意味が無い。どんなパワーも当たらなければ、な」

 すっと、地面に降りてきた。その誘いに乗るように、クラウドは突っ込んでく……速いじゃないか。俺も、剣を脇に、突っ込む、スカルミリョーネがヴィンセントの背後を狙って石の拳を突き上げる。ヴィンセントはその一つひとつに適確な対応をして見せる。クラウドの突き出した爪の一撃をフットワーク軽く回避すると、背後から襲い掛かる石飛礫をその羽根で殆どノーダメージで受け止めると、俺の剣をくるりと交わし、三方向へ一度に反撃する、クラウドへはその右手に生じさせた魔法の手刀で、遠距離のスカルミリョーネには左手から発した気弾で、そして俺へは翼撃で。襲い掛かった俺たちの輪の半径が広がると、その隙を突いて、恐らくは一番弱い俺に狙いを定めて手刀を振りかざす。それを剣で受け止めるたび、顔を顰めたくなるような重さが俺の両腕に掛かる。クラウドが飛び込んで長くなった足を思い切り振り上げる、それを身体を横にスライドさせて交わし、咎めるように翼で引っ叩き……ながら、まだ距離を詰められないスカルミリョーネが詠唱しはじめた魔法を、気弾で妨害する、もちろん、俺には続けざまに二発切り込んで、オマケに厭味なくらい長い足で踵落しをしかけ。

 完璧だ、と感心してしまうよ……。戦いの一から百いや千、万までこの人は知ってるんじゃないか。じゃあカオスはどんだけのもんなんだよ……。渾身の振り上げも、……左手で剣の腹をぱんっと弾かれて、俺はバランスを崩す、クラウドが飛び掛っても、半身に避けてしまう。

「その程度か?」

 不適に笑うと、

「私を退屈させないでくれ。お前たちの実力で楽しませてくれよ」

 両手に青白い炎を燃やす。

 赤い目を白く光らせて、

「それとも、この程度では不満なのか? ならば殺す気で行ってやろうか」

 その炎が、……二匹の龍になる。

 牙を剥いて、やっぱり一番弱いと思われているらしい俺に狙いを定め、二匹が一気にやってくる。俺は舌を一つ空打ちして、飛び退く、二匹が首を傾け、邪悪に俺を睨みつける。その視線で焦げてしまいそうな熱さを感じる。

「安心しろ……、火がついたら消してやるし、死んだら骨くらい拾ってやる」

 ああそりゃあ安心。

「アアアッ」

 悪鬼の如くと評するのが一番しっくり来るような声を俺は上げ――クラウドは真似しちゃダメだよ――て、剣を横に凪いだ、一瞬生まれた空白に、左の一匹を上段から、まっぷたつに。炎だから実体なんて無くて、すぐにまためらめらともとの形に戻ってしまうけど、その間にもう一体を切り裂いてやる。

「ほう」

 感心したようなヴィンセント、しかしまだまだ余裕がある。

「……何してるっ、クラウド! スカルミリョーネ!」

 棒立ちになって俺の戦いッぷりに見惚れてなくていいから。

「はああ……」

 気を取り直して、スカルミリョーネが大地から霊体的に浮遊するものを幾つも幾つも浮かび上がらせる。それらが、ヴィンセントへと殺到する、火炎龍が怯む。やはりヴィンセントの生み出したものだから、宿主の動揺がそのまま伝わるようだ。

 ヴィンセントが表情を変えずに、翼の羽ばたきでそれをぐるんと回避する、クラウドが背後に回りこんで、気合一閃、爪を突き出す、……それがはじめて、ヴィンセントの懐に潜り込む契機となった。

「うううっ、にゃあっ」

 ……俺の声でにゃあとか言わないでくれよ。

 ともあれ、ヴィンセントが身を翻し、俺ではなくクラウドに視線を移した。これまで俺たち三人を均等に見ていたのが、一箇所に集中するわけで、その分俺とスカルミリョーネに対しては隙ができる。無謀にも思えたクラウドの突撃が奏効する――これで調子に乗らなければいいが――、とにかく、スカルミリョーネが一気に距離を詰めた、俺たちの中で今だけは最も小さな体となっているスカルミリョーネは、ヴィンセントの足元、地面スレスレに飛び込んで、そこから翼の死角から、痛烈な魔法の一撃を食らわせんと。それを……ヴィンセントは跳躍で回避する、俺もジャンプして、俺の身長と同じ程長い剣の先で突き出す、掠った。

 何より、ヴィンセントが空を飛んだ……つまり、初めて防御体制を取った。これは、結構自身になる。最後の一撃、空振りしたクラウドがどべしと地面に倒れる、そこを容赦なく狙って、今度はヴィンセントが光の雨を降らせる。うわアレは危ない、そう思った瞬間、スカルミリョーネがクラウドを庇う、って、お前死ぬなって! クラウド夜寝られなくなったらどうするんだよ!

「スカルミリョーネっ」

 凛としたクラウドの声。

 スカルミリョーネは左手をぶすぶす言わせながら、それでも……変身しない、よし、いい子だ、あとで舐めて違う褒めてあげよう。

 俺、ようやく着地、今度は俺を狙って光の雨が降る、ぴょんと飛び退くと、その雨がついてくる。

「卑怯者っ」

 クラウドが怒鳴る。

 おお、そうだ、言ってやれ言ってやれ。

 ヴィンセントはクラウドに詰られても、少しも痛くないというように、フンと鼻で笑う。

「そう……、私は卑怯者だ。だがな、卑怯者を卑怯者と詰って泣き寝入りするほど情けない事は無いと肝に銘じて置くのだな」

 また、挑発。

 そして、……飛び上がったのは間違い無く劣勢を感じたからに違いないくせに、ヒュッと風を切って降りてきて、……、

「うにゃ!」

 俺よりも数センチ大きいクラウドを片手に抱き上げる。

「うううっ、にゃっ、お、下ろせよっ」

 尻尾、ぶわあってなって。クラウド、高いところそんな得意じゃないらしい。

「何だ。せっかく空中散歩に連れて行ってやろうと言うのに。では下ろしてやろう」

 ぱっ、と。

 躊躇無く、クラウドを抱いていた腕を放す。するん、とクラウドが落ちる、

「……クラウド!!」

「クラウドさまっ」

 まずい……、遠い……!

 間に合わない……!!

 ヴィンセントがまさかクラウドに、ほんとに怪我させたりするとは、……いや、しかし……、俺は間に合わないことを判りながらクラウドの下敷きにならんと駆ける、スカルミリョーネも。

「うっ……にゃああッ」

 その、俺たちの視線の交わった先、クラウドは空中、ぐるんっ、回って、足から、どたんっ、ふらり。

 背中から叩き付けられると、俺もスカルミリョーネも思ったのに。空中で体勢を立て直して……そっか、猫……。

「にゃー……ああああっ」

 そして……パワー型になって秀でた跳躍力、びよんとジャンプして、一気にヴィンセントの漂う中空へ。

「馬鹿め」

 ヴィンセント、不敵に笑い、

「空中ではどんな力があろうとも、自在に動くことは出来んぞ……。狙えと言っているようなものだ」

 真っ直ぐに飛び上がったクラウドを、迎え撃つ。光を帯びた手刀で……!

「にゃう!」

 うわ。

 と目を背けそうになった。が……、クラウドの動きは、弾かれることなく、空中で止まった。

「……うう……」

 がしり、とばかりに、

「……ほう……」

 鋭く繰り出されたヴィンセントの手刀を抱え込んでいる。

「だが、手は二本ある」

 容赦なくもう左手で、クラウドの背中を攻撃し……ようとして。

「うう!」

 クラウドはぱっと手を離す、緩く落ちながら、ヴィンセントの長い足にしがみ付く、かかとに爪を立て、ふくらはぎ、太股、ぎいっと爪で身体を支えて……。

「……なるほど」

 ヴィンセントの身体を地表から剥がす、大きな翼の片方を全身で抑えつける。ヴィンセントの身体がゆらり、とバランスを失う。

「考えたな」

 ヴィンセントはぐんぐんと地面に向かって落ち出す。クラウドは必死の形相でその右の翼にしがみついて、絶対に離さないと言わんばかりに。二人が、絡まりあいながらどんどん落ちてくる……叩き付けられる! その寸前で、ヴィンセントが右手からエネルギーを放つ、引力に逆らって放たれた衝撃波で、二人は軟着陸、するその瞬間、クラウドが翼から手を離し、その背中へ、渾身の蹴りを浴びせる。

 クリーンヒット。

 ヴィンセントの身体が大きくぶれる。

 チャンスは今しかない。咄嗟に、俺は飛び込む。スカルミリョーネが岩の雨を降らせる。

「……図に……乗るな!」

 細い体から、緑っぽい閃光が放たれる。

「うにゅ!」

「……っ」

 アルテマだ。半端じゃない閃光が空気を引き裂く凄まじい高音が、俺たちを劈く。遅れて轟音と、烈しい衝撃の刃が俺たちの全身に襲い掛かる。辛うじて剣を握る手だけは緩めないで、しかし俺は背中から地面に倒れた。

「感心したぞ」

 顔を上げる、クラウドが、ヴィンセントに襟首を捕まれている。一番近くでアルテマを味わったクラウドは、……既に変身が解けている、元の愛らしい子猫の姿に戻っている。……気を失っている。

「この私を一瞬とは言え、本気にさせたのだからな」

 ヴィンセントの身体も一部傷ついている。クラウドとの空中格闘、そして落下、クラウドの蹴りを背中に喰らったのもある、血の流れている部分もある。

 それでも、余裕綽々の笑みを浮かべている……、……なんつう化け物だよ……!

「だが……、まだまだだな」

「……ふ……ふにゃ……、……にゃにゃ!」

 クラウドが、目を覚ます。だがヴィンセントに吊るされて、出来るのはじたばたすることのみ。ヴィンセントはにこおと微笑んで。

 ぴん、とクラウドの額に、でこぴんを一発。

 

 

 

 

 と言うわけで。

「……まず……、ザックス」

 ダメ出しのお時間である。俺たちの喰らった傷は、ヴィンセントがケアルガで綺麗に治してくれた。けれど、どっと出る疲れまではいかんともしがたい。

「動きにキレがなくなったな。太ったのではないか?」

「そっ……そんなはずは」

「動かなくなって久しいからな。柔軟性にも乏しくなった。はっきり言って今のままでは単なる足手まといだ」

 痛……。

 太った……のかなあ、と思い起こしてみる。あの旅の頃の体重は……、確か、七十五とかそれくらいだったはず。……ええとでも、待てよ、そうだ、つい昨日、何となく体重計乗って……、……ええと……、な、七十……九、くらい……。

「それから、スカルミリョーネ」

 ちょっとしたショックを感じ、うなだれた……、太ったのかぁ……、うわあぁ。中年太りかよ……。

「お前は何を遠慮しているのだ。お前の目的は何だ。カオスに気を使うためにここへいるのか、違うだろう。もっと自分の役割を考えろ。サポートに回るのか、それともお前自身が突っ込むのか。クラウドよりもザックスよりも、私に近い力を持っているのはお前だろう。中途半端に自己を抑圧して戦力を下げてどうする」

「……申し訳、ございません……」

「そして、クラウド」

 でこぴんの痛みだけは回復してもらえなかったらしい。まだ、おでこをすりすり撫でている。

「まだまだ未熟だな。お前は自分の身体能力に意識が付いて来られていない。それから、お前はやはり無謀すぎる。お前の無茶な突撃に、ザックスとスカルミリョーネがどれだけ気を揉んでいると思っている。考えなしに突っ込んで危険な思いをして、……またあの時と同じことを繰り返したくないのなら、視野を広げろ」

「……にゃうー……」

「しかし……」

 溜め息を、ヴィンセントはひとつ吐き出す。

「……今のままでは、不安だな。場合によっては、お前たちだけではなく、他の四天王も呼んだほうがいいのか。しかしそうすれば、他の場所の守りが甘くなることは避けられないだろうし……」

 太ったのか……、そうか……、はあ、俺は落ち込んでいる。

「……一週間後に、もう一度、戦おう。それまでに……ザックス」

「はい?」

「お前は身体を絞れ」

「……はい」

 太ったのかぁ……。なんだか凄く、とほほな気持ちになってしまう俺なのだった。


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