そしてお約束通りなことに、クラウドはものの見事にウィルスに惚れられたらしく、今朝からベッドから殆ど動けない。何とか起きだして、リンゴを食べて薬を飲んで、それでまたふらふらと手術台へ。

そっとしておいた方がいい、と俺たちはクラウドが眠ったのを確認すると、二階へ上がった。

「……青姦などするからだ。馬鹿者」

ヴィンセントが俺に言い放つ。

「違う。あんたが伝染したからだ。その証拠に、あんたもう元気になってるじゃないか」

俺が反論する。

「そんな迷信など信じているのかお前は。……現実的に、寒空の下に裸で長時間いたらどうなるか考えても見ろ。もし私のウィルスが感染したのだとしても、それは抵抗力が弱まった結果だ。私のせいではない」

「でも、風邪ひきの精液飲んだりとか中に出されたりとかしたら伝染るに決まってる」

「なるほど、だとするとあれが小さくて早いのはお前のが伝染ったのだな。なるほど、合点が行く話しだ」

「……ッ」

俺の方が熱が出そうだ。病み上がりのくせにやたら元気なヴィンセントは、ふん、と鼻で笑うと、テレビを点けた。

午前十一時、部屋の掃除も済んだし、洗濯するものもない。買い物はまだ行く必要なし。どちらかが学校ならいいのだが、両方居ても、相手がコイツだと……とお互い疎ましくさえ思ってしまうこれでも恋人同士。

クラウドがいないと、俺たちはなんだかすごく険悪ムードになってしまう。憎しみあってるわけじゃないし、ここには、多分ちゃんと愛があるんだろうけれど、それを互いに出す方法を知らないから。ほんの一年前まで「愛してるよクラウド」「俺も」「僕は君さえいれば他には何もいらないんだ」「俺も、あんたが生きていてくれればそれで」……あれはほんとに俺たち? 気持ちは今でも変わらないつもりなのだけど。

「暇ならお粥とか作れよ」

朝刊を広げて、ヴィンセントの背中に言う。

「お前こそ暇なのだろう、お前が作れ」

「何で俺が」

「いいではないかそれくらい。お前の愛情たっぷりのお粥を作って食わせてやればいいではないか。その方がきっと早く治るぞ」

上手いこと言って面倒くさいだけ。何て奴だ。

「それもそうか」

でも丸め込まれるのは俺。クラウドに蓮華を使って火傷しないように食べさせてやるのは楽しいかもしれない。小さな土鍋を火にかける。

 

 

 

 

食べ物と薬、それに着替えと体温計を運んで螺旋階段を下りて行くと、いろいろな、元々この屋敷に済んでいた住民たちが寄越せ寄越せと集って来る。

「ッ、馬鹿っ、退けっ、まとわりつくなッ」

蝙蝠とか南瓜とかはまだ、いい。天井からぶら下がってる奴も、鏡も、まだ我慢出来る。いやなのは。

「ひっっ」

背中にべたぁ、と張りつくインとヤン。ぞっと寒気が走り、危うく粥を乗せた盆を落しそうになる。コイツら魔物たちはもう、クラウドとも仲良しになってしまっているから、手を出すに出せない。俺は全身総毛立たせながらも耐えて耐えて、地下室の扉を開けた。

「ああぁ……粘液が」

首筋、ぬるぬるする。とりあえず、服も濡らされてしまったので、脱いだ。インとヤン、腐ってるから、風呂にも入れさせられない。……かなり、臭う液体。

気になるけど、仕方ない。後で洗濯しよう。

「クラウド、大丈夫か?」

苦しそうな息、俺を見て、頼りない手を伸ばす。肉球が熱く湿っぽかった。

「まだ熱は下がらないか……」

額に触れてみる、未だウィルスと戦闘中、朝ほど熱くはないが、まだ火が燻ってる感じだ。

首筋、汗でしっとり濡れているから、薬は効いているみたいだけど、まだ辛そうだ。

「お粥持ってきたけど……」

ふるふる、首を振る。

「いらない……おなか、へってない」

「でも……食わなきゃ薬飲めないだろ」

それでも、首を振る。 まぁ、無理に食べさせて気持ち悪くするのも可哀相か。俺はグラスに注いだ水――少し零れてしまっているが――を指して、聴いた。

「じゃあ、水一口でも飲んでおくか? 唇、カサカサになってるぞ」

「ん……」

俺の手を借りて半身を起こす。用途を失した蓮華に少し注いで、飲ませてやる。

「美味しいか?」

力なく頷く。俺が蓮華を置くと、そのまま俺に抱き付いてきた。

「ざっくす……」

寒いのか、震えた声で、ついでに舌足らずに俺を呼ぶ。

潤んだ瞳、染まった頬、犯罪レベルに可愛い。

「どうした?」

けど、俺が性的欲求に任せて可愛いなんて思ってると、不意にクラウドの目から大粒の涙が零れた。

「おれ…………こわい……。くるしいよ……アタマが、ぼおっとして……わかんない……」

「クラウド……」

ぐすぐすと、俺に抱き付いてクラウドは子供のように(いや、実際子供なんだけど)泣き始めた。してるとき、感じて泣くことはしょっちゅうだけど、こういう風に、何の前触れもなく泣き出されると、その涙が恐くて堪らない。

しゃくりあげる体が、急に儚げで、俺はなるべく力を篭めずに抱き締めた。

「どうしたんだよ……クラウド、……なぁ、どうしたんだ?」

俺の胸に、クラウドの涙が流れる。鼻水も少しくっついたけど、インとヤンの粘液みたいに不快じゃない。というか、それどころじゃない。

「ねぇ……おれ、しんじゃうよ、おれ……っ」

「クラウド?」

「……アタマ、なんか、へんなの……っ、熱くてっ」

恐らく、風邪による発熱と、短時間にしろもたらされた孤独で、急に不安になってしまったのだろう。……考えてみればこれまで、二日酔いはあったけどこれだけの風邪をひくのは初めて。

ただ気持ち悪いお腹痛い、だけじゃなく、全身が脱力して意識が朦朧とする感覚が、恐くなってしまったのだろう。

「大丈夫だよ。……お薬飲んで、ちゃんと寝てれば、すぐ良くなる。……ヴィンセントだって昨日一日で治っただろう? ……だから、クラウドもすぐ治るよ。ヴィンセントは年だけど、クラウドはまだ子供だから、病気に負けたりなんか、しないよ」

いつもより艶のない髪の毛を撫でてやる。ようやく少し落ち着いたのか、俺を見上げて、言った。

「ザックス……、そばにいて」

赤い鼻で。頷くしかなかった。

「……解かったよ。どこにもいかない。お前の側にいてやるよ」

やっと安心したように、クラウドは俺から身を離した。こういう、本当に、裸で弱々しいところを見せられると、責任感が溢れて来る。

もちろん、この子を不安にしないように、寂しい想いなんてさせないように、守り続けて行くっていう気持ちはいつも変わらず持っている俺を形作る重要な要素だけど、改めて、絶対にこの猫手を離さないと誓う。

「パジャマ、随分汗かいただろ」

ボタンを外し、ぴったり体に張り付いた下着を、バンザイをさせて脱がせる。続いて下も。どっちも汗でびしょ濡れだ。

「……すごい汗かいたんだな。……熱はどれくらい下がったかな」

体温計を取り出す。

「咥えて」

家庭によって、体温計の使い方って違うらしい。普通は腋の下、だけど、舌の温度も体温らしいから、こっちで計っても一緒らしい。昨日ヴィンセントが下ろした奴、もうアイツの腋の下に一回嵌まってた奴だけど、綺麗に拭いておいたから咥えても多分平気だろう。クラウドも嫌がらない。ヴィンセントを恋人として認知しているからだろう。

「ん……」

細い先端を口の中に収めて、一分経つのを待つ。デジタル式、時間が来ると電子音で知らせるタイプだ。

 体温を測る時の一分というのは意外と長いものだ。

クラウドは口に物を入れてるから喋れない、話し掛ける訳にもいかない。ただ、物を考えるだけだ。そう、クラウドがほんの数時間でさえも一人が耐えられないのと同じように、俺もクラウドがいないのは耐えられない。ヴィンセントと一応平和に暮せているのも、クラウドのお蔭だろうし、それ以上に、俺はクラウドに会えなくなったらまた元のように狂ってしまうだろう。

セフィロス、ザックス、ルーファウス、そしてクラウドを失って、俺はもう何もなくなってしまう。

またヴィンセントとふたりぼっち。

クラウドがいなくなったら、俺は多分死んでしまう。死ねなくとも、心は死んでしまう。

ピッ、と体温計が鳴いた。

「…………七度六分、ほら、もう大分下がってきただろ、今朝は八度二分だったから」

「ん……ろくぶ、さがった」

「そうだな。……もう、明日には元気になってるよ」

ようやく、クラウドは笑ってくれた。

「……じゃあ……しょうがないな、一緒に寝ててやるよ」

「うん」

少し、元気が出たようだ。現金な奴、でも、いい。

新しいパジャマを着させて、俺はクラウドの布団に潜り込んだ。汗の匂いがするけど、気にならない。もちろん、ちょっとは臭いけど。

「ザックス……」

「ん?」

俺の胸に額を当てて、呟くように。

「あいしてる」

俺の心臓が小躍りした、聞かれていたとしたら、カッコ悪い。やっぱり、愛があるから感じる、一緒に居られる幸せ。同じことは、もちろんヴィンセントに対してだって言える、一つ一つの言い合いも楽しんでるのは互いが互いを大好きだからだろう。俺はクラウドのことを、こんな日々を、永遠に守り続けてく、そんな、当たり前だけど、当たり前にしちゃいけないことを噛み締める。少し、強く、クラウドを抱き締めた。 触れたい、もっと、触れていたい、今は少し熱い温もりに、

「愛してる」

そのはずが、どうして俺の血液は低く低く流れようとするんだろう。

「……」

 数分後、すやすや眠るクラウドの顔。

また少し乾いてる唇をキスして潤してやりたい衝動にかられはじめると、まるでそこは俺の唇を求めているかのようにさえ見えてきてしまう。折角さっきまで、自分の中の、カッコイイの自負できる部分が俺の原動力になっていたのに、今は俺も出来れば隠しておきたいような情けない部分ばかり増長して、硬化している。

こうなるともう、本能のまま生きる原生動物と同じだ。

そう、だって、考えてみると、さっき見たクラウドの裸は熱でうっすら色づいていて、潤んだ瞳も感じてしまうような破壊力を持っていたし、大体、真剣じゃないときにあんな無防備な様子を見せられたら、俺は大抵、クラウドにキスして、そのままし始めてしまう可能性が高い。

……我慢なんて出来ない。どうせ俺は早漏だよ、ヴィンセント。愛してるが暴走する。

 時計を見る。クラウドが眠ってからまだ三十分しか経っていない。

けれど。 申し訳なく思いながら、俺はクラウドを揺すり起こした。

「ん……にゃ……?」

薄目を開けて俺を見る。少し俺の手を抱いていた腕が緩んでいたことに気付いて、またきゅっと抱き付いて来る。

「熱……計ろう、クラウド」

「え……? ……さっきはかったよ……」

「うん……でも、少し寝て、また下がってるかもしれないだろ? だから……」

適当な事を言う。下がっていたとしても、多分一分か二分。体温計、クラウドに少し咥えさせて検温がはじまったところで、すぐに口から抜く。

「え? ……なんで?」

「ああ。……体温計は、口だけじゃなくて、他のところでも計れるから。例えば、腋の下とかでも計れる。……昨日ヴィンセントがしてたから知ってるだろ? ……あと」

クラウドのズボンを脱がせ、下半身を裸にし、膝を曲げて秘穴に。

「え……、な、なに?」

直腸温も体温だ。

「ココでも、計れるんだ」

細い先、間違っても折らないように、クラウドの中に収めた。普段、こんなのよりずっと太い物を入れてる訳だから、痛みとか快感とかは全然ないんだろうけど。

「や……やだあ……はずかしいよ……」

「動くなよ。体温計の先っぽ折れたら大変だから、大人しくしてるんだ」

なんだか、変態医師みたいな俺……、けど……何か、楽しい。

クラウドは恥ずかしさで、晒したそこを少し大きくしている。

「ん……っ……」

体温計が一分経過を教える。……こういう時の一分の短いこと。

抜いて、見る。Eの表示。

「……エラーになってるな……途中で外したからか。……クラウド、もう一回だ。今度は、うつ伏せで、俺にお尻を向けて。その方がし易いから」

あくまでこれは「検温」なのだ。だから、クラウドは逆らえずに俺に従う。逆らう力もまた、無いのだろう。俺に尻を向けてこっちを向く。

「検温」に秘められた俺の熱い愛欲の存在を嗅ぎ取って、不安いっぱいの顔で。

「ん……ふっ……」

また、挿入する。実際、どんなに細くても、自分の肛門に何かが刺さってるということが、また、その様子を俺に晒しているということが恥ずかしいから、熱では無く顔を染める。声を殺して、耐えている。早くやめて欲しいのだろう、まだ、自分の理性が残っている間に。

けれど、既に後ろは理性が侵食されはじめている。

ひくっ、ひくっと、体温計が震えている。こんな生半可な快感じゃ満足出来ないと言わんばかりに。

また、一分が経った。

体温計の数値は……七度八分、少し上がっている。

「……やっぱり薬を飲まないと汗はかかないか。……汗かかないと熱は下がらないからな」

一応、間違ったことは言っていないが、熱が上がった一番の原因は明らかに恥ずかしさだろう。俺の言葉に、クラウドは動けない。尻をこちらに向けたまま、硬直。体温計なんかよりももっといい刺激が欲しいという素直な欲望と、イヤラシイ事を嫌う嘘吐きな純情が絡み合って、動けない、彼の体を縛る。

「仕方ないな、……お前の熱を下げるためなら」

俺の欲求だって正当化されるハズだ。 って、される訳がない。

「ざ、ざっくす……?」

一応まだ、純情の方が勝ってるらしい。不安いっぱいの目で俺を見る。俺は安心させるように微笑む。

「大丈夫、すぐ、風邪なんてどっか行っちゃうから」

そしてお前も俺も多分すぐいっちゃうんだろうから。

「ほら、力抜いて」

軽く双丘を撫でると、身体が逆に強ばる。俺のことを求めてる素直な部分だけを召喚するために、俺の手が印を結ぶ。印を結んで、召喚するは邪淫の妖精。

「さっきから、欲しがってたもんな、俺の指……」

指摘すると、違うといいたいのか、頑なに蕾を閉ざす。ちっとも否定出来てない。

しかも、コップの水で濡らした俺の冷たい指が触れるとまた蕩けるように震えて緩む。

「んっ……んやぁ……」

それは拒絶ではなく歓喜の声、悦楽に溺れて行く淫魔が喚び出された声だ。指を入れただけで動かさずにいると、やがて自分から腰を振り始める。

「やだぁ……ぬいてよぅ……」

「クラウド……素直になれよ。ここ、硬くなってるのに」

「やっ……ちがうっ……」

「何がどう違うんだ?」

クラウドは首を振る。

「かんじてなんか、ないよっ」

そうなのか、と俺は首を傾げる。

「なんか、自信喪失だな……俺で感じてくれてるのかと思ったら……違ってたのか。ショックだな」

「え……ええ?」

俺は大仰に溜め息をついて、アタマを抑えた。

「クラウドは俺のこと好きで、だから俺の指で感じてくれてるんだと思ってたんだけど。……そうか……俺のこと、クラウドは嫌いなんだな。俺にされてもちっとも嬉しくないか」

「う……」

「いや、もういいよ、ごめんな? 無理強いして。……もうしないよ。本当、ゴメン。……風邪ひいてるんだしな、無理してやったらいけないよな」

そこまで、自分を責めてる演技を見せてやると、とうとう、クラウドは泣き出して言った。

「……き……気持ち良いからっ、ザックスのゆびが、きもちいいから、出て来るのっ、ザックスのこと、好きだからっ」

顔を真っ赤にして。

「……解かってるよ、そんなこと」

にっこり笑って、俺は突っ込んだ指をぐっと奥まで入れる。

「やぁあっ」

奥まで突っ込んで、引いて、内壁を存分に擦って、折り曲げていいところを突く。感じる度に、クラウドは俺の指が絡み付く前を震わせて、いきたがる。

「ザックスっ、おねがい……っ、もぉっ、ああぁんっ、ぁっ、してっ、おれのちんちんしてぇっ」

完全に、淫魔降臨。降臨――じゃないか、内なる物が目を覚ますのだから、覚醒と言った方が正しい。

俺はクラウドのを握って、幾度か動かす。……で、そろそろいくかな? ってところで、手を離す。

「やっ、いやっ、やだっ、っ、はなさないでっ、いきたいっ……ざっ、くすっ、っ」

放置してる間も俺は内部を刺激し続ける。奥の方を突き、感じるところを狙って折り曲げたりして。

「んっ、ああっ、やだぁっ、ああ、っああああ」

クラウドは、本体に触られないまま、どくどくと臍のあたりに精液を零した。

「ぁん……んっ、んっ……っ……」

「……へえ……すごいな、クラウド、お尻だけでいけるんだな」

といっても、ギリギリまで追いつめた後だ。引き金になるのは括約筋だから、可能だろうとは思ってたけど。そのうちもっと簡単にいけるようになるだろう。

後ろだけで射精してしまった恥ずかしさに、クラウドはぽろぽろとまた泣き出す。……さっき俺にしがみ付いて流した涙とはまったく別の質。

「っ……ひっ……ひぅっ……っく……ざ、ざっくすの、ばかぁっ……」

馬鹿でも何でもいい。……お前としたいと思う俺の気持ちはきっと愛情。トロトロと流れる精液を舌と指で綺麗に拭って、張り詰めた俺のをズボンから取り出す。

俺のに少し塗り付けて、よく滑るように。……まぁ要らないくらいクラウドのは緩んでると思うんだけど、まだ指一本しか入れてなかったし、クラウドも楽な方がいいだろう。

「クラウド、入れるよ?」

「やっ……やだっ、もうやだっ」

また、清純なところが顔を出してる。でも、入り口に俺のが触れると、もう。

「ふっ……ぁん」

熱さに流される。

可愛いコ。

……ニヤリと笑った時、部屋の扉がカチャリと開いた。

「……どうせこんな事だろうと思った」

「ヴィンセントか。……何しに来たんだよ」

入れかけていた腰を引いて聞くと、不機嫌そうに答える。

「クラウドに薬をやりに来た」

薬なら俺の手許にある。それに。

「飯食ってないのに飲ませたら胃が荒れるだろう」

俺が言うと、ヴィンセントはフッと笑い、……ベルトを外し始める。

「ザックス、入れろ…………後ろからだ」

……コイツ。

言われた通りに、クラウドの体をまたうつ伏せに。

「やぁ……もぅ、俺、やだよぉ……」

まだ嫌がってるクラウドに、ヴィンセントは優しく微笑んで。

「薬を飲まないと、良くならないぞ」

薬になるのかそんなもん。

「じゃあ、俺は……」

言いかけて、やめた。あまりにも下品すぎる、「注射」に「座薬」だなんて。

「んぁああっ」

「潤滑」のお蔭で、きつい空間にも割りとすんなり俺のは納まった。軽く動かすと、濡れてぐちゃぐちゃなそこは卑猥な粘っこい水音を立てる。

「クラウド……ほら、薬飲まないと治らないって」

ヴィンセントのを咥えるよう、促してやる。俺もヴィンセントも、そしてクラウド本人も、それが「薬」ではないことを知っていた。けれどクラウドはそれでもヴィンセントの性器を口に含む。もう俺よりずっと上手な舌で、ヴィンセントに尽くす。

「んっ……ふっ……ぅんんん」

前に手を回して、また動かす。収まることのない性は、また臍に突きそうなほど反り返っている。扱いてやると、また中を狭くした。止まない前後の侵食。……なんか、本当に変態だ俺たち、もちろんヴィンセントも含めて。

「……ぁ……熱い、な、クラウドの中……っ、やっぱり、熱、あるからかな……」

何かいつもよりもさらに気持ち良い。熱くてヌルヌルしてる中、動かしてる俺も実はいきそう。

「はぁ……ッ」

久しぶりにヴィンセントのそういう声を聞いた。クラウドの上手な舌に絡み付かれて、かなり表情が苦しそうだ。いつも、ヴィンセントより先にいくのは悔しいから耐えてたけど、もう我慢することは無いみたいだ。

「クラウド……また、いっていいよ。ちゃんと、今度は最後まで、お前の、動かしててあげるから」

「んんんっ、っ、んっぅう……ぅんっ」

……気持ち良い。熱くて、狭くて。 きっと、ヴィンセントの入れてる口も同じに気持ち良いんだろう。

「……っんんん! っ、んぅっ」

急激に狭くなった中、俺が放つと同時にクラウドも放ち、ヴィンセントもクラウドの顔目掛けて白濁をたくさん放出した。

シーツが、ぐちゃぐちゃだ。

 

 

 

何にせよ、熱が下がってよかった。同時に、すごい良かったから、なおよかった。俺とヴィンセントに挟まれて、クラウドは物凄く複雑な表情。

「大好きだよ、クラウド」

ヴィンセントが優しく耳元で囁く。

「……俺もだ。愛してる」

俺も、心から。 俺たちに愛されているという事が根底にあると、クラウドは例えどんなことをされても許せてしまうようで、それは度を越して寛容なのか非常識なのか淫乱なのか。

ただ、俺たちに愛されてるという事実が嬉しくて仕方ないらしく、本当は不機嫌になりたいのに、なれない。

「にゃうー……」

困ったように鳴いて、でも結論は一つしかない。俺がお前無くしては生きられないように、お前も俺たちを失ったら生きられないのだから。

「……おれ、も」

言ってしまったことに対して、かあっと赤くなる。悔しそうだ。暫く、幸せな気分でくっつき遭っていたが、クラウドの腹がぐぅとなった。

「……食欲出てきたな、もう安心だ」

ヴィンセントが起き上がり、額にキス。

「上で何か作って来る。……ザックス、そろそろクラウドに何か着せてやれ」

脱ぎっぱなしになっていたパジャマを着せてやる。

……まったく……自分で自分に苦笑する。途中が抜けても何ら問題の無い俺たち。「途中」――言うまでもなくセックス。

三人で暖めあっていました、そうしたら、クラウドの熱も下がりました。……それじゃいけないのか。

いけないんだろうな、俺の下半身。

結果的に、愛が深まったのかどうなのか解らないけど、こうやってクラウドをとりあえず幸せにできる。俺も幸せだ。風邪、治って本当によかったな。きっと薬と注射が効いたんだ。

 そして、俺は割れそうな頭を抱えて翌朝を迎えることになる。


top