一緒にお風呂、ホントにウィズユー。

まず、風呂から慣れさせるのだ。食事は、手が猫だから致し方ない。おしっこだって一人じゃ出来ない。そこらあたりを差し引いたって、しかし、クラウドはやっぱり、十三歳にしてはあまりにもあんまりな部分が多すぎる。

猫っぽかったり(実際半猫なんだから仕方ないが)、子供っぽかったり(生まれてちょっとしか経過してないから以下同文)。そういったところを、一つ一つ治していかなければならない、それが俺たちの、まずしなければならないことなのだ。

 そして、まず第一段階として、清潔になろう、風呂に入れるようにしよう。

――とは、ヴィンセント曰く。

「……考えたくはないが」

髪の毛をバンダナで纏め、薄着になってヴィンセントが言う。

「……お前も私も……そして、『クラウド』も、ジェノバの産物な訳だからな」

まさか今のやんちゃ坊主のまま、何百年もほったらかしにしておけるほど甘くはない。なるほど、もっともなことだ。

……が、お風呂。

思いっきりひっかかれた記憶があるから、怖い。ちなみに、まだ背中の傷跡は消えたわけではない。あの時はクラウドの舌で済ませてしまったが、やはり横着せずにマテリアを使えばよかった。

「クラウド、ちょっとおいで?」

俺はちちち、と舌打ちをして、クラウドを呼び寄せる。

「……そういう、猫を呼ぶときのような真似も控えた方がいいかも知れんな」

俺の後ろでぼそりとヴィンセントが呟く。

「クラウド、おいでってば。別に、何もしないから」

とは言うものの、一応ジーンズとシャツを身に付けているヴィンセントとは対照的に、裸に腰タオルひとつだけの俺のいでたちに、何かイヤな予感がしているのだろう。クラウドは部屋の隅っこでじーっとこっちを見たまま、動こうとしない。

「……仕方ないな」

ヴィンセントがすっと俺の脇を通り過ぎて、一瞬逃げかけたクラウドの身体を簡単に抱き上げる。

「う、あっ、やだっ、降ろしてよっ」

持ち上げられてクラウドはじたばたと暴れるが、ヴィンセントは動じず、抱いたまま風呂場へと向かう。俺もはらはらしながら、あとに続く。

「やぁだあっ、怖いっ、やだっ、絶対やだっ」

「……暴れるな。……一週間も風呂に入らないなんて、そんな人間がいるか」

ヴィンセントはクラウドのパジャマのボタンをぷちぷちと外し、大き目のズボンも冷静に脱がせ、全裸にすると、その身体を今度は俺に預けた。

「……どうしろと」

「知れたこと。身体を洗って、風呂に入れてやればいい」

「……」

「やだ、ザックスっ、怖いから、やだっ、お風呂やだっ」

がしっと俺にしがみ付いて来る。

体重は軽いが、十三歳。ある程度の容積はある身体でしがみ付かれると、説得力がある。

けれど。

「……大丈夫、俺も、一緒に入るから。……怖くない、怖くない……」

心を鬼にして、俺はその身体をぴったり抱いたまま、浴室に入る。……多少の流血なんて、怖くない、怖くない……。

「回復と蘇生のマテリアなら準備してある。心配しなくてもいいからな」

「……ありがとう」

クラウドが逃げないように浴室の扉はヴィンセントが塞いで、俺はクラウドを降ろすと、お手本を示すように自分の身体に湯をかけた。

ちょうど良い温度で、気持ちいい。

「大丈夫だろ? 別に………………」

「ぎゃあああああああっ、やだああああああああああッッ」

振り返ると、ヴィンセントの塞ぐ扉から必死に外に逃れようと暴れるクラウド。鼓膜が、破れそうだ。そんなに風呂が嫌いか。いつもはあんなに素直なのに。

ヴィンセントはその爪の餌食にならないように、一応防御の態勢は取っているが、あまり効果はなさそうだ。

「……クラ……ザックス」

引いた声で俺に言う。俺はやっぱりこんなの無理だったんだと少し後悔しながらも、暴れるクラウドの身体を後ろから両手ごと抱きかかえる。抑えのきかない足でげしげしと蹴られるけれど、その辺はもう、我慢するしかない。脛を蹴るのだけは、何とかして欲しいが。

「ああ、解かった解かった、落ち着けって、クラウド、な? 頼むから……」

それでも、ぎゃんぎゃんとクラウドは僅かな逃げられる確率を探して騒ぎ立てる。前回入ったときと、殆ど変わらない。……いや、前回以上に。

俺は途方に暮れて、ヴィンセントに救いの手を求める。

が、ヴィンセントも予想以上に悪い子なクラウドに、打つ手なしといった感じだ。

「……な、落ち着こうよ、……クラウド……」

「ぴぎ」

俺は最後の手段で、尻尾をぎゅっと握った。心の中で俺も一緒に痛がって感じながら。

「あっ、ああん、にゃああああっ、はな、して……っ」

クラウドの全身が脱力して、必死に四肢で身体を支えようとするが、実際問題ここは先端や後ろに勝るとも劣らない彼のウィークポイントなのであって。ここでは全く無関係なのだが、即座に反応して勃起してしまう彼の身体は、本当に人間たりえない。こんないやらしい人間なんて、居てたまるか。

……とは言え、人間の部分は俺のコピーなのだが。

……大丈夫だ、俺は自分が淫乱だということを認めている。

はたして、何が大丈夫なのか。

「……逃げないって、約束するか?」

「あ、っやぁ、やだぁ……」

「約束したら、この手を離してやる。……さぁ、どうする?」

「やんっ、あっ、いじわる、っ」

全然関係ないところで、俺もクラウドを苛めるのが少し楽しい。俺の言葉態度ひとつひとつに、過敏すぎるほど反応してくれるから。しかも、美味しすぎる声のオマケ付きでだ。

「ああ、意地悪だよ、俺は。……離して欲しいんだろ? ……だったら、言うことを聞いた方が得だぞ? ……な?」

俺は少し手の握力を抜く。

すると、息を吹き返したかのように暴れの体勢に入るので、すぐにまた握り込む。

「やぁんっ」

「悪い子だな……クラウドは……」

俺はそのままクラウドを抱き上げて、ヴィンセントに預ける。

ヴィンセントは尻尾を掴まず、力づくでクラウドを拘束する。クラウドはもう身動きも取れない状態になって、ぼろぼろと流れる涙で顔をぐしゃぐしゃにした。

ちなみに下の方は、尻尾を握られていたせいで、俺じゃなくても肌が触れ合ってるだけで感じてしまうのか、すごく硬くなっているようだ。

慰めに相手をしてやりたい気もするが、今は全く問題にしないでいいことだ。

「……大人しくしていれば、怖いことは何もない」

耳元でヴィンセントが囁く。ひくっと泣きながらも感じている。

「な? よく見てろよ、クラウド」

俺はもう一度手桶に湯を汲んで、頭のてっぺんから一気に被った。言うことを聞かない髪も、水を吸うとそうでもない。

降りると結構長くなる髪を手ぐしで後ろに流して、シャンプーを手にとり、洗ってゆく。

一通りしたら、大雑把に濯いで、泡を落とし、続けて、ボディーソープで身体を洗ってゆく。

……ちら、とクラウドを見ると、相変わらずの恐怖の表情。

一回目のトラウマがあるからか。

けれど、いつも汚いままでいいはずがない。何かの病気にかからないとも限らない。性病とか。

俺は立ち上がり、ヴィンセントから再びクラウドを受け取る。

「やだっ、あ、っ、ぬるぬるするっ」

「当たり前だろ、石鹸なんだから」

俺は……乱暴で反則だと思いながらも、クラウドを一気に抱きしめて、その石鹸の感覚を覚えさせた。

「クラウド……、これでお前、綺麗になれるんだよ?」

「ん、んっ、キレイになんて、ならなくてもいいっ」

もがいて暴れるけど、身体の表面のぬるつく感じは、俺的に決して悪いものではない。

だから、クラウドにとっても結構気持ちいいのかも知れない。抵抗する腕が頼りなくなる。

「一応、こういう物も用意してあるが」

ヴィンセントはシャンプーハットを見せて、俺に渡した。

俺はクラウドの身体を膝の上に抱くと、手のひらでその首や腕や腹を撫ではじめた。

「んっ」

ぴくんと身体が強ばる。

「優しく……そっとすれば、大丈夫だろう?」

乳首が指に引っ掛かる。大丈夫どころではないらしい。

「……止むを得ないとは思うが、あまり精神衛生上良い光景ではないな」

「……済まない」

第三者から見て、愛撫を施す自分自身なんて、見られたものじゃないだろう。いくら恋人だったとしても。

俺はクラウドの身体を撫で回しながら、タオルでゆっくりクラウドの身体を擦りはじめた。

抵抗しようとする理性は俺の手のひらが殆ど奪い取ったから、クラウドは呆気ないほど大人しい。

「はぁ……あっ、ん」

ぬるぬるの中でプツンと硬くなった乳首を弄り、一方ではクラウドの背中や腕を洗っていく。

「……ふぅ、あ……っ……えっ?」

俺はシャンプーハットを被せて、左手で立ち上がったクラウドのそれに触れ、右手に湯を入れた手桶をスタンバイして、覚悟を決めた。

……引っ掛かれても、回復すればいいんだ。

「ひぅっ」

俺はクラウドの頭にざばっと湯をかけ、続けてシャンプーをつけた右手でクラウドの頭を洗いにかかる。抗えないよう、下の方も緩やかな刺激を与えながら。

「……気持ちいいだろ? クラウド」

「……んっ、ああ……ん」

俺たちを見て、ヴィンセントが何か苦しげな溜め息を吐いた。

「……本当に、精神衛生上よくないよ、この光景は」

……本当に申し訳なく思う。

感じてしまうようになった俺と、クラウドにも同様に。自分たちで、慰め合うしかない、これは。

「はぁ、ああ」

クラウドのてっぺんからまた湯をかけて、石鹸ごと洗い流したら、あとは風呂に入れるだけ。

くったりと、胸を上下させてもっと快感を欲しがるクラウドには悪いが、ここからが、本番。

まだ序の口だ。

「さ、クラウド」

前回、頭から突っ込んでたっぷり水を飲み、危うく溺れかけた、恐怖のバスタブへ。

俺の膝少し上くらいまでしかない深さのそれも、クラウドにはきっと底無し沼のように見えるのだろう。

「…………え?」

ひょいとばかりに抱き上げられて、彼は全てを察したらしい。しつこく逃げようとするが、今度は尻尾ではなく軽い口付で動きを止める。もう全身が性感帯になってしまったクラウドは、それだけで俺の胸の中、陥落する。お手軽で良い……なんて。

「やぁ……ザックス……こわい、よぉ……」

逃げるのはさすがにもう諦めたらしいが、微かに震えて(これは快感によるものではなく、恐怖だろう)、不安いっぱいの目で俺を見上げる。 くっ、と俺の胸のどこかが痛みを訴えた。

が。

「大丈夫、俺も一緒に入るから、平気だよ。しっかりつかまってれば、怖くないだろ? 絶対に、放したりしないから」

「……ほんと、に?」

「本当だ」

万に一つ離したりしたら、クラウドに嫌われることは請け合い。そんなのは絶対に嫌だ。

「いい子だったら、あとでしてやるよ」

けれど、緊張で彼のは縮こまってしまったのだが。

「……ん」

「……」

無言で何かの圧力を加えて来るヴィンセントの視線が気にならないでもなかった。

「ゆっくり、な?」

バスタブを跨ぎ、抱っこしたまま俺はそっと浴槽に身を沈めていく。クラウドの身体が水に接し、そのまま包まれる。少し身体が強ばって、抱き付いて来る。

「ほら……大丈夫だったろ?」

別に潜っているわけでもないのに、目をキツく閉じて、息を止めて、クラウドはがくがくと頷く。

「やれやれ、だな」

ヴィンセントは壁にもたれて、溜め息を吐く。

「時間は腐るほどあるが、この調子では『クラウド』を育て上げるのに、何百年かかることか……」

けれど、優しげな苦笑を浮かべている。

……ああ、まんざら、悪いものじゃない。

「気持ちいいか? クラウド」

その名の対象に、抵抗が無くなっていることに、ヴィンセントも気付いているのだろうか。

「ん……あったかい……」

相変わらず俺に抱き付いたままだが、目は開いている。

「……ただ、尻尾は反則だな。人間に尻尾が生えている筈ない」

ぶつり、ヴィンセントは呟いて、後ろ手に持っていたぜんまい式のチョコボを前に示した。

「私から、ご褒美だ。お前たちによく似ている」

ヴィンセントがじりじりとぜんまいを巻いて浴槽に浮かべると、

チョコボはせかせかと足をばたつかせて泳ぎはじめた。クラウドはぱぁっと笑って、その様子を見つめる。

「ほら、お礼は? クラウド」

「あ、ありがとうっ、ヴィンセントっ」

実際、十三歳の男の子がお風呂の玩具ではしゃぐ様子は、クラウドで無ければ滑稽極まりないに違いない。

「ありがとう、ヴィンセント」

ヴィンセントは小さく肩を竦めて見せた。その表情は、悪くない。

 

 

 

 

その後、温めの風呂でたっぷりくつろいで(と言っても、十三歳と十八歳の男が一つのバスタブに入っているわけだから、狭い事は間違いないし、むさ苦しいばかりなのだが)その後風呂を浴びて上がってきたヴィンセントを混ぜて、乾杯をした。もちろん、クラウドはミルク。

「俺も、飲んでみたいなぁ……」

「もうちょっと、大人になったらな?」

「……もう、十分大人ではないか?」

ヴィンセントはそう言ってニヤリと笑うと、ビールを一口含んで、何とそのままクラウドに重ねた。一瞬の、出来事。

「っ、ヴィンセント!?」

ヴィンセントは俺が慌てるのを見ると、ふっと笑い、改めてグラスからビールを飲む。

「んんぅ……にがい……」

「大人の味だ。……やはりまだ早かったな」

ぱくぱくと色々ある言いたいことを纏められない俺にも、クラウドの目が別のものに行っている僅かな間に、キスをしてくる。

生ぬるいトロッとしたビールが舌と一緒に流れ込んできた。

「……んっ……」

思わずくらっと来て、一歩蹈鞴を踏んだ俺を見上げて、クラウドが訊ねる。

「ザックス? どうしたの?」

「どうやらザックスもまだコドモのようだな」

愉快そうに婉然と微笑む。風呂上がりだというのに、殆ど顔色を上気させていないヴィンセントに対して、真っ赤な俺。

「……違う……のぼせたんだ」

馬鹿な嘘を吐いて、その場を取り繕う。

ゴマカシが効くのはもちろん、クラウドに対してだけだが。

思いっきり、俺はグラスを呷った。だがそこに、さらに追い討ち。

「ねえ、ザックス、してくれるって約束だよね?」

「そう言えば、そう言っていたな……確か」

俺がむせ返ってゲホゲホ言っているのにも関わらず、この二人のサディストどもは、天使の皮を被った笑顔で。

「……安心しろ、私が手伝ってやる」

気が遠くなった。

これがあと何百年、何千年と続くだとすると、ひょっとしたら俺は不幸かもしれない。

「安心しろ、冗談だ」

やめてくれ。

 

 

 

 

「……さっきは収まってたのに……」

手術台。

せっかく風呂に入ったばかりなのに、また汗をかこうとしている俺たち。限りある地球の水資源を、なんて馬鹿なことで浪費するんだろう。でも、ある程度(本当に「ある程度」だが)お利口さんで風呂を終えたわけだし、約束しちゃったわけだから、今日のオマケのご褒美みたいな感じで、してあげてもいいのだけど。

クラウドは――すっかりもう、あの頃の俺状態、いや、俺以上にヒドイ。

セックスの快感に目覚めても、俺は自分から求めたことなんて、そりゃ多少はあるけど、ない。……こんな、淫乱じゃなかった、と思う。……という、自信の無さが虚しい。とにかく、まぁ……。

「……クラウド」

「ん……」

とろんとした瞳、閉じさせて、唇を重ねる。向こうから俺の首に手を回して、少し唇を開け舌を出す。応えてやりながら、人間らしいらしくない以前に、生物として問題があるような気がする。

それはクラウドよりも「俺」に原因があるような気も。……俺のそういう部分が増長された訳だから。

「ぅ……ん……ふ」

舌と舌が触れて、そこがくすぐったく痺れる。簡単に荒くなる呼吸、早くなる鼓動も、自己管理からは程遠く、互い、淫乱なことを認めざるをえなくてだんだんキスは深くなっていく。

涎が唇の端から零れることすら、楽しく、拭おうと考えることはない。

「は……あ」

唇を離して、改めてその、俺と同じ顔を見る。ィンセントの目からしたら、ヤだろうな、やっぱり。

自分でヤバイと思うけど、……だけど彼は理解している。そういう形だって存在することを。……彼と俺とが、既にそうだから。

膝から崩れたような形で手術台の縁に腰を下ろした彼の顔、流れた唾液を追って、光る軌跡を付けながら、時折吸い上げて、俺にしては珍しく跡をつけることに執着する。次に風呂に入るときに、ヴィンセントに見られてしまうだろうが、パジャマのボタンを外して、白くて、それでいて少し色づいた胸にも。

吸われる度に強ばる身体は、俺のもの。

「いい匂いだ……」

この間は気付かなかったけど、この石鹸の香いは相当に突いて来る。どこからどこまでも、味わってしまいたくなる。全身、ベタベタにしてやろう、あとで拭けばいいんだ。

「やぁ、っ」

腋の下とか、足の裏の肉球なんて舐められて、非難の声を上げるけれど、震えるだけで逃れようとはしない。

「決めたんだ。……今日は、ドロドロにしてやるって」

何を何時どう決めたんだ。……結局、虜になっている俺。

「ん、はぁあっ、にゃ……あ……」

鳴き声が壊れるくらいまで、勃ち上がった乳首を舐め、弄り、時折緩く噛む。それだけでいってしまえるのではないかと思えるほど過敏な反応を示すのが、たまらなくカワイくて。

……って、いきそうなのは、俺も同じ事だ。どんなに背徳的だと考えていても、淫乱なのは俺、

だから、俺は止まらない。全身が熱くて、汗が吹き出して来る。耳まで真っ赤なことだろう。

「……ざ、っくす……っ、俺のちんこ……、もぉ、……だめ……だからぁ……」

「もう? ……やらしいな、クラウドは」

どっちが、だ。

俺だって、駄目になりかけている。

「小っちゃいし、早いし。……しかも、女の子みたいだよな、感じるところとか、声なんかも」

「っ、やっ、俺……」

「本当に。憶えてる?この間、我慢できなくてズボン履いたままいっちゃったの。……憶えてないかなぁ……酔っ払ってたもんな。……あの時のズボン、洗わずにまだ取ってあるよ。ガビガビだけど、……見てみるか? いっぱい白いのくっついて、お前のヤラシさの象徴みたいな感じだよ」

「……やぁあ、っ、いじわるっ」

意地悪、で済めばいいが。

コレは意地悪通り越して苛めだ。というか、途中からキチガイでヘンタイだ。

そして、泣き出したクラウドに胸が締め付けられて。

「泣くなよ、ほら、してやるから」

「っ、ひっ、ぅ、っ、ざ、ックスが、するから、ぁっ」

何が言いたいのかは、大体解る。可愛すぎる。そして俺はやっぱり歪んでる。そりゃそうだ。俺がクラウドをここまでしたんだし、俺がしなければ、ただ純粋な十三歳の男の子だったかもしれないんだから。

けれど、……もう、遅い。クラウドは俺の恋人だ。

――という発想は、俺本来ではなく、ザックスのものだろう。完全にザックスになりきっている俺、滑稽ながら、笑えるならいいやとも思う。

「……やっぱり、可愛いな、クラウドの」

未発達。肌色で、実際立ってるんだけど、どこか柔らかそうで。先端に浮き出た透明な雫も、なんだか飾りみたいでかわいい。

今の俺のと二つ並べて比べたら、その差は歴然。クラウドのなら、口に含むのだって、まるで平気。

「ん、んんんっ」

溢れ出した蜜を舌先で舐めとって、その舌でクラウドの唇を舐める。

「美味しいの、いっぱい出てきてるよ? ……そんなに俺のこと、好き?」

ゆるゆると下に絡ませた指を動かしながら。

「ぁあっ、嫌いっ、ザックスなんて……ぇ、っ」

単純に、そう応えるであろうことは当然解かっていたから、俺のイタズラ心はますます膨張する。

「そう? 嫌いなの? ……じゃあいいや。クラウド気持ちよくするの、やめた」

身を放す。すっかり裸のクラウドとは対照的に、俺はまだ脱いでいない。

そのまま身を翻して去ろうとすると、予想通り、パジャマの裾に爪を立てる。……が、パジャマの裾ならよかったのだが、俺の尻に爪を立ててきた。

「痛っ」

思わず振り返ると、クラウドはぼろぼろと泣いて、鳴く。

「にゃ……っ……何でぇ、っ、そんな、意地悪するっ、っ……ザク、っ、ス、俺、っっ、俺のことぉ、っ、き、き、……嫌いっ、なんだぁっ……」

あんまりにも可愛すぎて、俺はもうクラクラだ。

「馬鹿」

俺は後から後から溢れて来るクラウドの涙を舐めながら、俺は笑った。

「お前、俺の話聞いてないだろう。……前に――一番はじめに風呂入ったときに、言っただろ? ……お前が、好きだからするんだって。……こういう事だって、お前の事が可愛くて可愛くてしょうがないから、苛めたくなっちゃうんだよ。……苛められて、にゃあにゃあ喘いでるお前、すごく綺麗だから」

「っ、うそっ、嘘だぁっ、ザックス、俺のこと、嫌いっ、だか、らっ」

……「嫌い」になってほしいのか?

……さらに苛めるネタを思い付いたが、余りやると本当に可哀相だから、そろそろ。

「……大好きだよ」

耳元で、低く囁く。

嘘偽りない。どんなに俺が猥褻なことをしても、間違いなく、絶対に、それは、愛があるから。愛がなければ、しない。

嘘じゃない。

「これから、解らせてあげるよ」

「んぅ……っ」

ようやく、涙の勢いが止まった。

俺は少し萎えてしまったクラウドに手を添え、キスをし、復活を促す。再び硬くなってくるそこを口に含み、手で扱きながら、悦ばせる。

「ああん、っ……ふああ、あ」

一旦、口から抜いて、訊ねる。

「……俺はクラウドのことが好きだ。……クラウドは?」

「んああっ、あ、愛してるっ、、、ザックスっ、愛してるっっ」

俺の胸はこれ以上ないほどぎゅうぎゅうと締め付けられた。壊れそうだ。

「…………ありがとう」

「やぁああっ」

俺が再度口に含むと、その途端、破裂するように脈打つクラウドからたくさんの白濁が解放された。

「……ああ……あん……っ」

ひくひく震えて、遅れて少しずつ精が溢れて来る。勿体無いからそれを丹念に舐める、一滴残らず。到達直後で、感覚は壊れているのに研ぎ澄まされているから、クラウドはどうしようもなく感じて、硬いまま収まらない。

しばらく扱いてやると、こんど溢れて来るのはまた、先走りの蜜だ。

「……もう一回、したいだろ?」

「んっ、んっ……」

「……実際、まだお尻にあげてないもんな。……それじゃあ、満足しないよな」

「んやあ……ぁ」

手をクラウドから放し、足を開かせて俺の肩に。

仰向けに寝かせ双丘を割り開く。最奥へ顔を近づける。

「なぁ、何でいつも、ここ舐められるの嫌がるんだ?」

その理由は、もちろん俺の身体だから知ってる。……敢えて聞く。

「……だ、って、汚いから……そんな……」

「汚い? ……そうかな。クラウドの身体だよ?どこからどう見たって、汚いところなんかないよ。しかも今日は風呂上がりで、石鹸のいい香いがいっぱいしてるし」

もちろん、震える性器からは精の匂いもして来るが。それも俺にしたらいい匂い。俺が嗅ぐと、とにかく嫌がるが、……嫌がるだけ、それ以上はない。逆に、恥ずかしくて感じてしまうから、嫌がっても説得力がない。

「やだあっ、恥ずかしいよぉっ」

俺の顔が近づくと、また泣きそうになって言うけれど。

……だけど、ここ舐められるのって、俺の性感帯だから、解るんだよな、すごくイイって。

「ひぃ……っ」

引き攣ったような鳴き声。

舌が触れる前から震えてたそこは、ぴちゃりと唾液が接触した途端、きゅうっときつく締まる。ところが、締まったところ、突き入れるように穴の皺を舐めると今度は拒絶よりも快感を求める反応へと代わって来る。

「ひああ、ぁ」

本人にその気がなくても、ひくついて俺の舌を求めるような動きになる蕾。俺の唾液でびしょ濡れのそこを、さらにしつこく舐めて責める。洗った直後だからっていう大義名分が俺の中でたっているからかもしれないが、いつも以上に、俺を攻撃的にさせる。

「も……やぁ……お願……い……も……、やめ、……」

「……なんか、触らないでもいっちゃいそうだな」

こんなに嫌がってる癖に、俺の舌が蕾に触れるたびに反り返ってるのを見せられると、嫌だって言われても、やめるにやめられない。

逃げようとした腰をくるりと回転させて、四つん這いにする。こっちの方が、体勢としてもやりやすい。

俺は両手の人差し指を突き入れて、穴を広げ、さらに内壁へと舌を侵入させる。指と舌、同時に弄ばれて、壊れてもおかしくないのに、恥ずかしすぎて感じてしまう俺の分身。

「いやあ、っ、やだ、きたない、からぁ」

「汚い? どうしてさ」

「だっ……、だって、……そこ……うんち、出てくる……」

「それがどうかしたかい? そんなん、汚くなんか、ないって。……クラウドの中、目で見ても解る。綺麗で、可愛くて……俺のこと、ぐちゅぐちゅ動いて求めてるよ? ……ねぇ、ここはこんなに素直なのに、どうして本人は言えないんだろう? 気持ちいいって」

言葉をかけるたびに、濡れた音を立てて狭くなろうとする内壁。狭くなると、必然的に俺の指に中を擦られ、よくなって、また広がって、そうするともっと奥まで責められて、狭くなって、彼にとっては大いなる悪循環。

「ひぅっ、っああ、……や、っぱり、ザック、すなんて……嫌い……ぃ」

「だけど、俺はクラウドのこと、大好きだ」

クラウドの尻にちゅっとキスをする。きゅうっと俺の指を縛り上げて、感じてるんだと叫ぶ。

「……大好きなクラウド、……舌や指なんかよりも、欲しいものあるだろ?」

俺は指を抜き、最後にもう一度、ペロペロとそこを舐めて、意地悪だから意地悪く訊ねた。

「も……いらないっ、いらないよぉ……」

「嘘つけ」

ズボンを脱いで、トランクスの中、自分でも少し呆れてしまうほど昂ぶった俺を、起き上がらせて彼に見せる。目を逸らしたいのだろうが、欲求は素直で釘付けになる。視覚的に感じている証拠を、隠蔽しようとする無駄な努力が愛らしい。

「欲しいんだろ?」

ふるふると首を振って、形ばかりの否定。

けれど後ろ、本人の意志とは裏腹に、前と連動して震える蕾の奥は、舌も指も届かない場所への圧力を欲して。

トランクスも脱ぎ去って、完全な裸になって、クラウドの隣に腰掛ける。

「……おいで」

抗えないのを、知っているから。

クラウドはゆっくりと、俺の足を跨ぎ、こちら向き肉球を添えて、俺のをそろそろと胎内に納めていく。

唾液でぐしょぐしょになったそこは、もう十分慣らされているから、彼にも、そして俺自身にも、さほどの痛みもなく入りやすい。奥まで入ると、はぁっ、と息をついて、俺の首に抱き付き、額を俺の肩に落とす。

「……わかんない、よぉ……」

「うん?」

「なんで、好きなのに…………いじめる、の……」

震えた声で、言う。

胎内で俺のが少し脈打つたびに、彼の全身には稲妻が走る。

「……そういう愛し方もある」

俺はその髪をぽんぽんと緩く叩く、慰める。

「お前の笑顔とか、そういうのだけじゃない。怒った顔も、泣いた顔も、全部好きだから、全部見たいから、さ」

「う……ぅう……」

「嘘は、つかないよ」

くっ、と腰を少し突き上げると、俺にしがみ付いて、壊されないように。

安心しろ、壊したりなんかしない。

「俺のこと、全身で……」

俺の言葉の途中、クラウドはいつものごとく、自ら腰を振り始める。唾液その他でぬるぬるの胎内、さらに不規則な締め付け。……やっぱり、最高だ。

「あああ、はあっ、あっ、ああっ」

全て捨てて、快感に乱れ踊り狂う姿も、また愛しい。

「気持ちいい?

「んっ、にゃ! ざっ、くすのちんちん……っ、気持ちいいっ、ザックスのちんちん気持ちいいよう」

俺のが抜けそうになるたびに、内壁は無意識のうち奥へと導く。

もっと保つかと思っていたが。

「……クラウド……クラウド、もう、俺、出すから……、いっていいよ」

俺とクラウドの身体に挟まれて、汗と涙と蜜で濡れているそれ。

動かすと、湿っぽい音。羞恥心が触発される。

「ひああっ、ああん、やぁっ」

「っ」

「ぁんっ」

二人、自我を手放したのはほぼ同時。クラウドが狭くした中に、俺も多分相当に濃い精液を叩き付けた。

その衝撃に触発されて、またびくんと震えるクラウドの小さな身体を抱き留めて、抱きしめて。俺は、今一度つながっていたことを確認すると、ゆっくりとクラウドの身体を持ち上げて、俺を抜いた。離れる瞬間、クラウドの蕾が名残惜しそうに戦慄いた。俺の吐き出したものが、ドロドロと流れ出て来る。

その液体の感じに、クラウドが小さな鳴き声をあげた。

「……はぁ……あ、……あ……」

完全に、彼の中から俺がいなくなって、クラウドは、急に寂しくなったかのように俺に身体を預けてくる。俺は、その未だ収まらない呼吸を少し吸い取るような、緩いキスをして、汗だくの身体を抱きしめる。

「……あいし、てる」

ぽつり、とクラウドが呟く。

「おれのこと、好きでいてくれる……ざっくす…………愛してる、大好き、愛してる……」

「ああ、俺も、だ。……愛してる」

ヴィンセントに聴かれたら、何て言われるだろう。

「俺のことを、好きでいてくれるなら」

なら、ヴィンセントとて、同格。

俺たちの間にはやっぱり、愛はある。悪いが、否定できない。どっちも。けれど、この俺と同じ彼を、今は、この瞬間は、誰よりも大切に思う。

猥褻な行為も、全て、愛。しつこいけど、愛。他に言いようがない、愛してるから。アイシテルから、したくなる。

純粋に、気持ちいいからじゃない。そう考えると、クラウドが俺を求めるのも、快感云々というよりも、愛があるから……。

はぁ、と溜め息を吐いたら、そろそろ互いのこの身体をどう処理するか、考えはじめなければなるまい。

本当に、風呂、意味なしだ。……さて……どうするか。まさかヴィンセントに応援は頼めまい。

「…………風呂一回分、無駄になってしまったではないか」

「「げっ」」

「……愛し合うのは構わないが、……後先を考えても損はない。ザックス、口だけで済ませればいいものを……」

俺の言いかけた言葉に被せるように、また次の言葉が来る。

「汗ビショビショだぞ、二人とも。……とっとと入ってこい。……何なら私が手伝ってやるが」

「……ヴィンセント……」

「み、み、見てたのっ!? 何で気付かないんだよ、ザックスのばかーッ」

「ば、ばか!?」

セックスの最中壊れて言われたのと、今理性的に言われたのとではショックが違う。

一瞬ぐらっときてよろっときて、グサっときた。

「……喧嘩はそれくらいにしろ。……まぁ、喧嘩するほど仲がいいのだろうが……お前たちは」

ふっ、とヴィンセントが笑い、二人分のバスタオルを俺に笑う。

「……尻の穴まで何の抵抗も無く舐めたり舐められたり出来るほどだからな。……なあ、ザックス?」

こいつ。

「ヴィンセントのえっち、スケベ、ばかっ、嫌いだっ」

変な意味で味方になったクラウドがヴィンセントを非難……というか、罵詈雑言を浴びせている。ヴィンセントはにっこり笑って、あろうことか、またクラウドの頬にキスをした。

「にゃう」

「……あまり、苛めないでくれよ? ……私も、お前が大好きなのだから」

「「な、な、な……」」

「いい子でいたら、今度また、何か新しい玩具を買ってきてやろう」

『玩具』という単語に、ぴっとクラウドの耳が立った。

「にゃっ、ホント!?」

「ああ、大好きなクラウド。……本当だよ」

「う、うわ、っ、ありがとうっ、ヴィンセント大好きっっ、愛してる!!」

肉体年齢;十三歳、精神年齢;一ヵ月とちょっと。ベース;相当淫乱で馬鹿な俺。

「……クラウドなんか、嫌いだい」

ぼそっと、俺はいじけて呟いた。

結局その後、またまた風呂に入ったわけだが。 意外とお利口さんだった、クラウドは。そうして……まあ、いろいろしたけど、あとはご想像にお任せすることにしよう。


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