無修正一日

冬の風呂場は、寒い。脱衣場など、「ここは南極かッ」と震えながら着替えるほどで、なるほどお年寄りの事故が多発する理由も解る。最近では風呂の床に床暖房の設備を入れたり、脱衣所にまでエアコンを入れたりする住宅も増えているとの事で、こういう地に足のついた工夫はどんどんしていくべきだと思う。我が家には幸い、高齢者は一応七十近いの人がひとりいるけれど心身ともに丈夫なのでそういった設備に積極的な投資をすることはないが、やっぱり生活は健やかに快適に暮らしたいと思うものだから、あまり大規模なリフォームはしないが、脱衣所にタオル掛けも兼ねた板状の暖房を入れた。入浴前十分くらいにスイッチをつけて置けば、今ではもう震えることもなくなった。板の温度も決して過激な熱さには成らないから、クラウドが誤って触れてしまっても安心だ。お値段は一万六千ギル、安くはないが、これで向こう二十年は快適な冬のお風呂に入れると考えれば決して高くもない。
「んっ、にゃ……あ……」
「はぁ……、ん……、やあっ」
 浴室の中で、クラウドとヴィンセントは二人とも同じ体型、すなわち、ヴィンセントも猫型で、二人、身体を石鹸でヌルヌルにし合って、絡み合っている。冷たい床にシャワーでお湯を流しながら、ヴィンセントが下にクラウドが上になって、噴水の音をバックに二人で楽しんでいる。時折、舌を絡ませてのキスと、くぐもった鼻声が聞こえてくる。
 風邪をひかなければいい。まあ、クラウドの相手が俺ではなくてヴィンセントだから、あまり無茶なことはしないだろうが。
 って、俺がどこにいるか、一応説明しておく必要があるだろうか。
 俺は、あまり寒くない脱衣所にいて、立て付けの悪い風呂の扉の隙間から、二人の情事をのぞき見ているのである。なぜそんなことをしているのかと問われても、返答には困ってしまうのだが、簡単に言えば、昨日は俺と風呂に入り、ローテーションで今日はヴィンセントと風呂に入るクラウドを思っての事だ。ちっとも簡単じゃないか。……つまりその、安っぽい嫉妬だ。昨日、クラウドは風呂場ではさせてくれなかった。その分ベッドでしたのだけれど、俺も石鹸でクラウドとぬるぬるしたかったのだ。それで、今日ヴィンセントと風呂に入るクラウドが、ぬるぬるするのを許すのだろうかと、訝って、こういう非道徳的な行為に走ったのである。
 そうしたら、悔しいことにクラウドのほうから誘っていたのだ。しかも、ヴィンセントに猫になって、とお願いまでして。ヴィンセントは少し戸惑っていたが、クラウドの頼みを断れないのは俺と同じで、あっさり猫に変身して、今にいたる。
「にゃあん……」
 クラウドは、猫のヴィンセントが好きみたいだ。いやもちろん、人型のヴィンセントだって好きなのだろうし、もちろんもちろん、俺の事だって大好きなのだろうけれど、とにかく猫ヴィンセントのことも、ちょっとは好きみたいなのだ。どうも、観察に基づいて言うのだけど、ヴィンセントがクラウドと寝るときの三回に一回は猫になってと頼んでいるらしい。俺がヴィンセントと寝る数少ない時には、そんなことまず頼まない、普段のままのヴィンセントでいてもらうのだが。これは、クラウドが決して人型ヴィンセントとするのを嫌がっているわけでもないらしい。むしろ、理由は、人型ヴィンセントや俺とは出来ないことが、猫同士だと出来る、という点にあるようだ。
「あんん、んっ、クラウド、……っ、出ちゃうよぉ……」
 クラウドは俺相手でも、人型ヴィンセント相手でも、同じように「猫」である。つまり、「下」であり「受」である。いつだってお尻を弄られて入れられて、にゃんにゃん鳴かされる側の立場にある。それが気持ち良いから、それでも嫌がらずに俺たちに抱かれてくれるのだろうが、しかしいつもそれでは、彼も一応男の子なのだから、男の子の男の子らしさを発揮したいと思うのは自然である。しかし、俺やヴィンセント相手では、どちらも一応戦闘員の身体をしているし、仮に立場を逆転させたとしても、彼が思うようには掌握できない。だから、猫のヴィンセントの体というのは、クラウドのそういった心の部屋を満たすのには、非常に都合がいいのだろう。
 ひとたびそういう立場に回ると、クラウドはやはり俺の分身というだけある。非常にいやらしい子になるみたいだった。今宵も、見ている限り、ヴィンセントは基本的にされるがまま。先に手を出したのも舌を出したのもクラウドだが、精液を出さされたのはヴィンセントのほうだ。
「んん、まだ、だめぇ、一緒……、一緒にいくの……」
 ヴィンセントも、クラウドのその欲求に、非常に上手に応えている。俺もヴィンセントも、別にどっちが上でも構わなくって、ただお互い間の関係性とか立場とか、心の依存の割合とかから、俺がヴィンセントの下になるほうが相応しいように思いこんでいるだけだ。それでもまた、今でも、時々は俺がヴィンセントの上になることもある。ヴィンセントはとても綺麗でかっこいい、俺はすごく興奮してヴィンセントを抱く。ヴィンセントはだから、どちらでも平気だから、猫になればクラウドの「猫」として踊らされても構わないのだろう。いや、クラウドが望むなら、俺もそうなったって平気だけど。
 要は、クラウドの「男性」、これは「man」ではなくて、「母性」とか「父性」に近い意味での「男性」、男の子としての持ち味、を発揮したいという要求が、ヴィンセントに甘える形で発露しているのだろう。うん、ちょっと悔しいけどな、解る。
「無理……っ、出る、っ、ん、ひゃあ……っ」
 こうして眺めている二匹の猫の猫っぷりには、非常な危うさなまめかしさがある。「男の子」たるべきクラウドもまた、色っぽく頬を染めているし、ヴィンセントは言うまでもない。二人とも、「男の子」でありながら、されるときの快感が身に染み付いてしまっているからか、性をあまり感じさせない存在になっているみたいだ。まあ、それもまたどうせ、夜だけのことだから良いのだ。昼間はクラウドだって、カッコいいくらい男の子なんだから。男女平等が叫ばれているからとかではなくて、昼間は人間に「性」なんて関係ないのかもしれないなと、ふと考えてみた。
 しかし……、ヴィンセントを見ていてなんとなく思うのは、猫型になっている時はどういう気分なのだろうなということだ。
「……もう、……早いんだから、ヴィンは。えっちだね」
 クラウドの下になって、あんな風に喘いで、しかも口調は完全に子供のそれだ。そういう言葉を発するのって、どんな気分なんだろう。
 例えばだ、三十一歳の俺が、十八歳の体とはいえ、「んっ、気持ち良いよぅ、うにゃあん、あっ、あっ、出ちゃうぅ」なんて言ってたらどうだよ。ああ、なんだか自分で考えてて気持ち悪くなってくるな。でも、そういうものだろ? ヴィンセントがしていることって。そう、最初のとき、彼がはじめて俺の前に、猫の姿を見せた時だってそうだった。完全に子供の声で、子供の話し方で。だけど、正体を明かした時には、口調と声色をころころ変えて。まるで、どちらも自分の声と言わんばかりに。
「だって……、気持ちよかったんだもん……」
 普段のヴィンセントの話し方って、ちょっと聞いただけで「ああこの人は真面目なんだ」という誤解を与えるようなものだ。
 俺と二人で暮らしていた一時期には一人称が「僕」で、柔らかい言葉遣いをしていた時期もあったが、アレは彼が「無理をしない」という理由で試みていた手段だった。逆に今は無理をしているのかといえばそうではなく、俺とクラウドが誇れるようなヴィンセントという存在になる、その一環として、「私」一人称に固い言葉というスタイルを選んでいるのだろう。しかしそれは演技という小手先ではなくて、もっと本質的に、根付いた彼のやり方である。
 とすると、その彼の「スタイル」の一つとして、俺やクラウドの性的欲求を心地よく果たさせるために、ああいう「なんとかなんだもん」みたいな口調、というのも、もともと彼の中にあったんだろうかな。そう考えてみると、そういえばヴィンセントの中で、そういう言葉遣いをする奴がいたことを思い出す。カオスだ。カオスは少年のような言葉遣いをする。そこから知識を引っ張ってきて、ヴィンセントが猫のときに、その口調を用いているのかもしれない。「義務と演技」なんて言葉を思い出す、セックスは、気持ちよくなるために演技の一つも必要かもしれない、それで幸せに慣れるんなら、うそはうそでなくなる。
「……俺、ひとりでいくの? 寂しいよ、そんなの」
 俺もクラウドもヴィンセントも、自分の中に何人かの自分を抱えている。クラウドは人格こそ一つかもしれないが、年齢的には三歳だったり十四歳だったりするのだから、例外ではない。そういった三人だから、互いの要求に応えあえるのだと、俺は思って嬉しくなる。今はもちろん、俺の分裂症は治ったけれど、依然、時々は裏表を感じることだってある。そうして、それが普通だから、それでいいのだ。
「……、ごめんね? お口でするから……」
 と、真面目な物思いに耽ってしまったが、そんなことを考えても俺の下半身の疼きが収まるものでもない。ずっとクラウドとヴィンセントの猫同士のえっちを見ていれば、恐らくこういう方面に興味のない男でも勃起するんじゃないかと思う。そう、あのブリジットの話を蒸し返すが、最初は女だと思ってハマっていた男たちの中に、「ブリジットは男の子でした!」ということが発覚してなお、ブリジットにハマり続けている連中がいるという、そしてその数は非常に多いという。イイものはイイ、生えてたってイイ! そういうオープンなのか節操がないだけなのか解らないが、気持ちというのは人間の中にはきっと少なからずあるものだ、だから、それまでそういう方向に興味を抱いていなかった男でも、この光景を見たら下半身に何か変化が起こらないとも限らない。
 オナニーで済まそうかな……。
 なんて考えない。クラウドは、俺が二人を覗いてオナニーして勝手に終えたとしたら、多分いい気分はしないだろう。だったら、これから入って行って、混ぜてもらったほうが喜んでくれるかもしれない。
 それに、かれこれ何ヶ月も俺、猫のヴィンセントとはしていない。昔の経験があるから、やっぱりヴィンセントには抱かれるほうが気持ちいいと思い込んでいるからだ。しかし、二匹の猫を同時に抱くなんて、ちょっとしたハーレムよりもすごいことだ。地獄の魔王だってこんな好き勝手はそうは出来ない。
「ん……、上手……、ヴィン、お口、上手……って!」
 クラウドが、目を真ん丸くして、開け放たれた扉に立つ俺を見上げた。いまはじめて風呂場に来た風を装って、俺ははぁっとため息を吐いた。ヴィンセントも同様にびっくりしている。どうも、猫になって抱かれているときは、普段のタークス仕込みのアンテナも効かなくなるらしく、素で呆然としている。
「ふにゃ……」
 そんな、本当に猫の声で言うのだから、可愛すぎる。
「何をやってるんだよ、お前たちは……。お風呂場でえっちしちゃだめとは言わないけど、二人とも入ってから何分経ってると思ってるんだ、三十分だぞ? それなのに髪の毛も洗わないで……。ヴィンセント、お前が」

人相手の時には「あんた」なのに、猫の時にはなんとなく「お前」なんて言ったほうが、相応しいように感じられてしまうのだ。細かなことだが。

「ついていながら、どういうことだよ。ええ?」
 ヴィンセントはハッとして、しかし、クラウドの望む通り「猫」だから、しどろもどろに、
「だ、だって……、その……」
 と応えきれない。いや、人間だったとしても俺の正論には、今は勝てないだろう。
「風邪ひいたらどうするんだよ。クラウドも。明日も学校あるんだぞ?」
「にゃ……、にゅ……」
「全く、……子供二人、仲良いのは良いけど、そういうところちゃんとしないとダメだろう?」
 と言って、服を脱ぎ始める俺。何と言うか、ある意味非常にスマートだと思うのだが。呆然としている二人をよそに、浴室に入って、シャワーを捻ってお湯を掛ける。触ってみると二人の肩は冷たくなっている。……猫のヴィンセントはあまり頼りにならないということだな。
「さあ、風呂に入るぞ」
「え、でも、俺、まだヴィンに……」
「風邪ひきたいのか?」
「えー」
「ほら、ヴィンセントも」
「……うー……」
 二人とも、まだまだしたりていないといった感じで、下半身のそれはピンと張っている。特に、先ほどのぬるぬるでいけなかったクラウドのほうが元気いっぱいだ。ヴィンセントも、それを見てひそかにつばを飲み込んでいる。そして、バレないようにはしているが俺も、かなり元気いっぱいだ。若い者には負けない。
「ザックス〜……」
「温まるまで待てよ」
「……待てないよぅ……」
 百まで数えて焦らして、それから出る。クラウドはのぼせかけてしまったが、ちゃんと肩も温まったし、これでいいのだ。俺はいま、唯一の大人だから、こういう分別あるところを見せなければいけない。
「ヴィンセント、してやるんだろう?」
「……う、うん……」
「クラウドが待ってるぞ」
 ヴィンセントは赤い顔のクラウドの前に跪いて、ふたたび細い茎に口をつけた。薄紅色に張り詰めたクラウドは、んっ、と目を閉じ、眉間にしわを寄せる。
「ふにゃあ……、んっ」
 焦らされた分、開放されれば快感のスピードは速い。俺は浴槽の縁に腰掛けて、クラウドのを咥えるヴィンセントの顔を、快感に歪むクラウドの顔を、かわるがわる見て、楽しむ。うん、いい光景だ……。
「あ……、あっ」
 クラウドがヴィンセントの黒髪に手を置いて、到達した。その口目掛けて、無遠慮に精を放出する。ヴィンセントの唇の端から、少しこぼれたのは、濃厚な蜂蜜ミルク、おいしそうだ。
 クラウドはへなへなと膝を突いた。そうして、俺を見上げる。残り香のように、快楽を纏わせて、俺たちを狂わせるような表情をして。
「ヴィンセントもまだ一度しかいってないんだよな?」
 ヴィンセントは口の端を手で拭って、俺を見上げた。
「……うん。……、何で知ってるの?」
「じゃあおいで」
 遮って、手招きする。そうして、俺の膝の上に乗せて、
「ふにゃ!?」
 足を大きく、M字に開かせる。
「や、やだ、こんな格好、いやだよお」
 お尻の穴も隠しようなく晒して、しかしクラウドの前で見せる恥ずかしい姿に小さなペニスをひくりひくりと震わせる。ここからは残念ながら見えないのだが、肛門もいっしょにヒクヒクしてるんだろうと思う。
「クラウド、お礼、してあげなよ。気持ちよかったんだろ? お尻、気持ちよくしてあげるんだ」
「うん……」
 クラウドは、素直にヴィンセントのお尻の方に顔を入れる。が、すぐに上げて、俺を見上げた。
「……ザックスの、すごい、おっきい……」
 不覚にも、その誉め言葉にピクリとしてしまった俺だ。
「……いいから。ヴィンセントにしてあげろよ」
「ん……」
 顔を入れて、舐める音がし出した。ヴィンセントは目をぎゅっとつぶって、口を抑える、がそんなことで快感から逃げ出せるのなら、俺だってやっていたよ。あえなく、恥ずかしい声がだだ漏れになる。
「ん、ん、っ、はっ……はぁあ……! っ、にゃ……」
「OK、クラウド、もういいよ」
 クラウドが両足の下から抜け出す。ヴィンセントは恨めしげな声で鳴いた。
「安心しろ、今もっと気持ちよくしてあげるから」
 指を差し入れる。勝手がわかっているからだろう、窮屈では在るが、それほど抵抗はなく、俺の指を飲み込んでくれる。
「にゃあ……!」
 二本でかき混ぜて蕩かせて、それから抜いた。クラウドは興奮したような面持ちで、ヴィンセントのそのあたりを見つめている。
「……う、にゃ……」
 そんな声が、見ているクラウドからも無意識に漏れてしまうようだ。
 中を十分広げて、俺はヴィンセントを開放した。ヴィンセントはずるりと風呂場の床まで落ちて、体内を覗き見られた途方もない恥ずかしさに、一部分を覗いて、力を失っている。
「ヴィンセント、クラウドにお願いしたら?」
「ふえ……?」
 ヴィンセントは呆けたような目で俺を見上げる。俺相手に、こんな無防備な顔をすることなど、まずない人なのに。俺は子供相手だと考え、にっこり笑って、
「お願いしてごらんよ。クラウド、欲しいものをくれるかもしれないよ?」
 と言った。
 ヴィンセントは、クラウドに縋るように両手を、鷹揚に伸ばして、
「……クラウド……、おちんちん頂戴」
 第三者として聞いている俺が一番興奮して聞いていたかもしれない、とにかく、そう言った。
「……ん、ザックス……、俺、入れても……」
「いいよ。ヴィンセントが欲しがってるんだから」
 その代わりにね。
 ヴィンセントを愛しげに見つめながら、腰をそっと進めていくクラウドを見つつ、俺は我ながら、何だかなあ、と思っていた。変態なんだろうかなあ。何をいまさら。
「んっ、……ん、ん、……っ」
「はぁ……あ……、クラウド……っ」
 二人の猫が絡み合っている。クラウドは快感に目を潤ませ、しかしどことなく、いつもより男らしい表情であるように見える。俺はしばらくそれを見つめていたが、立ち上がって、クラウドの後ろに、回りこんで。
「にゃ!?」
「力抜いて。三人一緒が一番いいだろ?」
「にゃ、にゃ……、にゃあ!」
 指二本、一度に入れて、ちょっと慣れたらすぐに挿入する。
「んっ、やっ……、クラウド、おっきくなって……っ」
 ヴィンセントも泣き声を上げるが、前も後ろもされて、クラウドが我慢出来る筈もない。こんな風に三人つながってやると、どうしても真中の子が早くなっちゃうんだよな、それはしょうがないことなんだけど。
「やあ……っ、やっ、んっ、んん!」
「んっ!」
 クラウドはヴィンセントを置き去りにして、その中に射精してしまった。
 俺は後ろから、クラウドの頬にキスをして、愛してるよと呟き、抜いた。クラウドのも、ヴィンセントのから抜き去る。粘液質の音がちゅぷっと鳴って、その細い茎の先っぽと、ヴィンセントの内部まで、一本の半透明に光る糸でつながっていた、それもやがて切れた。快感の大きさに、クラウドは脱力している。
「気持ちよかった? クラウド」
「……にゃ……、ん……」
「そう、嬉しいよ。ヴィンセントも嬉しいだろ? ヴィンセントで気持ちよくなったのも半分は在るんだから」
「……うん」
「ヴィンセントも、お返しにクラウドに入れてあげたら?」
「え……? でも……」
「喜ぶはずだよ、クラウドは。なあ?」
 クラウドは俺をヴィンセントを見上げて、こくんと頷いた。
 これが俺と人型ヴィンセントだったら、多分だいぶ形は違ってくるんだろうし、クラウドもここでは頷かないはずだと俺はひそかに考えた。「猫」が二匹だから、一人でされて恥ずかしいだけではないのだという、「逃げ道確保」が重要なのだろう。
 ヴィンセントが、下半身を最早ガードすることなど思いつきもしないクラウドの股の間に這入って、一度キスをした。そうして、俺ので十分すぎるくらいに押し広げられた所へ、少年のペニスを、差し入れる。
「あ……っ」
 ヴィンセントがひくんと身体を震わせた。
そうして、俺のすることなんて、もうひとつしかない。決まっているよな? クラウドの精液が滴る、ヴィンセントのお尻の穴へ、
「な、……っ、ザックス!?」
 クラウドのより、謙虚に見ても二周りは大きい俺のを、挿入する。十分に緩んではいるが、そこの直径をさらに広げ掘り進んでいくのだ。中はクラウドの放った精液で必要以上にぬるぬるしているから、それも楽だった。
「にゃああ」
 同じことさ、さっきと。ただ、今度は俺もいく。そうして、出来ればクラウドにももう一度くらいいってもらいたい。
 前にもこうやって三人でつながったときがある。そのときは、クラウドの尻尾を引っ張って、同時にいけるよう調整をした。だけど今日は、クラウドのアソコを直接扱く。俺も、あまり時間はかからないような感じだったし。
 何ていうか、やらしいよな……、俺たち。いや、いまは主に俺が。だけど、これが幸せ、これもまた、幸せなのだ。三人である証明。
 こんな一日も、どんな一日も、二度とは来ない。だから包んだり隠したり、手直ししたりしないで、低俗ならば低俗なまま、焼き付けていったっていいと思うんだ。少なくとも、俺たちはそれでいいのだから、それでいい。
「ヴィン、ザックス、いっちゃうよぉっ」
 耳に心地よいそんな声に後押しされて、俺は、ヴィンセントは、それぞれ入れた身体へと、精液を注ぎ込む。そして、三人こんがらがったまま、浴室の床で、火照った身体を冷やす。愛してる、愛してるって、呪文のように唱えながら。
 普通の人なら三十分もあれば十分済むであろう入浴時間が、一時間になり一時間半になってしまう理由はこのあたりにあるのだと思いながら、三人でぎゅうぎゅうになりながら浴槽で暖まる。俺は何だか、二人の息子に囲まれているような、非常に満足な気分である。クラウドとヴィンセントも、快感から回復して、俺に身をゆだねて暖まっている。俺は水面上に出たままの二人の肩が冷えないように、ときどきお湯を掛けてあげる。そんな行為が自慢したくなるくらい嬉しいぞ。
 うん、ほんとに自慢したくなるくらい、嬉しいぞ。行為を撮影したヴィデオをダートなんかに見せて「どうだどうだ」と。……友達をなくすな、やめとこう、だたでさえ少ないんだから。
 だけどな、ほんとに。モザイクのかからない俺たちの日々って、本当に幸せなんだな。
 湯気を流す体が、すぐには冷えないように、脱衣室用の暖房兼タオル掛けが役に立つ。大げさな言い方をしてしまうのなら、俺たちの幸せのためにだ。……セックスの後は、どうしてこんな、いろんなことを悟ったような気分になるんだろうな……。
 風邪をひきませんようにと神様にお願いをしても、神様、おまえたちみたいなやつは知らん、そんなことを言いそうだ。
 どうでもいいくらい、普通で無修正な一日は、あと残すところ、眠るだけである。


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