ハートガーダー

恵まれた環境の中にある不幸せに、すぐそばで悩んでいる人が居たとしたら、俺たちはやっぱり、それを巣食ってやらなければイケナイと思う。俺たち、イコール家族、その人が無償の愛をくれるから、俺たちはやっぱり、同じ以上のものを返さなきゃいけない。奇麗事かも知れないしエゴかもしれないし、だけど俺たちは……俺たちのやり方で愛し合っているから、そういう時だって、俺たちらしいやり方が一番、効き目がある、クスリになる。

とはいえ、弱さを見せない人だ。弱点なんて、ない。脇腹は、触るとほんの少しだけ「ぴく」ってするけど、俺みたいに「きゃあ」とか言ったりはしないし。猫になったときは全身がやばいような感じになるけど、それすら彼は、楽しんでいるようにみえる。何というか……、どんな状況であっても彼は「余裕」を感じさせるのだ。だから、多分追いつめられてても、ギリギリ一杯という状況にはしないようにするのだろう。そういう人は、ピンチになっても冷静さを失わない。この間の戦いの時にも、あんな血みどろの状況でも的確な判断を下した彼を見ればそれは、一目瞭然だ。 逆に俺とクラウドはいつも、何だか訳も無く、せっぱつまってるかも。

俺はまだ……、その点、「余裕だ」って見せる術を知ってるからいいかもしれないけれど、クラウドは、もう、ちょっとのことでパニック状態になる。そっと抱きしめただけで、ぽうっとなって、正常な思考能力が著しく低下、理性の線路からも脱線してしまうのだ。そうなると「もう、やだ、だめぇ」って。単純

なのは悪いことじゃないんだけど。俺も、ヴィンセントに何かされると、落ち着こうと思っても落ち着けなかったりして。このへんは……どうにもならないか。

とにかく、大人なんだ。いや、もちろん大人なのだけど。

前者の大人は「精神的に」、後者の大人は、言うまでもなく「年齢的に」だ。仮に彼が普通に年を取るいきものだとしたら、もう、いっそおじさんというか、おじいちゃんだ。そう、俺だって三十路なわけだけど。でも、自分の外見がそれにそぐわないものだから、つい意識の外に置き忘れてしまう。俺たちは大人、彼に限れば「老人」なのだ。 中身と見た目にギャップを感じはじめると、それは「青年」でも「老人」でもない、まったく斬新な性格が自己に蔓延るようになる。俺はずっとティーンエイジャーの気分でいる、これは、いつしか、生き方を考えて、「こうやっていってみよう」という答えらしきものが巣食い、定着してしまった結果だ。クラウドも、何だかんだ子供たちに囲まれているうちに、見た目とは裏腹の、言ってしまえば生まれたままの、純粋な心のまま育っていくと思う。地脈の森のドラグーン・ロゼは、ずっとずっとずっと生きているうちに、色んな外的干渉を吸収して、漂白して生きるというやり方を見つけた。

ヴィンセントは。

二十七で眠りにつき、五十八で目が覚めるまで、ずっと眠り続けて、その間彼の時が、俺たちとはまたちょっと違った意味で止まっていたわけで。

ある意味ではすごく、精神的に未熟な老人であるという考え方も出来る。俺たちが子供だから、相対的に大人になってくれているというところがある。内面までは覗けないけれど、時に……、演技ではなく、たちを、本気でからかったり、それこそティーンエイジャーのように情熱的な「愛してる」をくれたり、

することがある。

それはきっと、彼独特の「生きて行き方」なんだろうと、勝手に想像するのだけど……。

だから、言いようによってはとてもアンバランス。俺なんかよりもずっと、危なっかしいわけだ。もちろん、それはゆっくり生きていくに連れて、治ってくることなんだろうけど。

知り合ったばかりの頃の彼は、自分から言葉を発することなんて、まずなかった。俺が話し掛けてやると、ようやく、ぽつりぽつりと声を出す程度で。考えてみるとそれも奇妙ではあった。いくら暗い過去を持っていたとしても……、だ。彼は、まるで喋り方を知らないようにすら、見えたのだ。二十七歳、と言っても、ひょっとしたら通用しないのではないかというほどの。それはようするに、人とあまりに長く話さなかったゆえに摩耗された言語能力、彼の持前も、もちろん関係していたろうが。

といって、襲ったりしてみると、子供みたいに怒っていた。徐々に慣れてからは、そういう状況でも俺が精神的下位に立つようになる。そのプロセスで彼が、二十七歳以上の自分の正しい姿を取り戻しつつあったということだろう。俺、今ですら、自分で納得行っていない。「年を取れない」ということを理解するのは、多分永遠に無理な相談。そしてヴィンセントも例外ではなくて、きっと三十年以上考え続け、罪に苛まれても、解決できなかったことなのだろう。

そんな、偉そうなことを俺が思っているなんて彼に知られたらたぶん、ひっぱたかれる。

だけどね、それでも。彼が大人ぶってて、だけど大人じゃない部分を持ってるんだったら、俺がすこしでも助けてあげられれば、って思うのだけど。

決まってる。彼のことを、心から愛しているからだ。俺たちは何のために、三人でいるんだ?

「何してるんだ?」

つまらなそうな映画を、つまらなそうに見ている彼は、うんざりしたような手つきでナッツを一つつまんで、口にほうり込む。グラスの底、とろりとした氷の踵くらいまでしか入っていない酒は琥珀の色。

ヴィンセントは俺の声に顔を上げない。テレビから視線をはなさずに、

「クラウドはどうした」

と言った。

「寝てるよ、下で」

「……お前はどうした」

「のどが渇いたから、ポカリでも飲もうと思って」

ヴィンセントは俺の返答なんてどうでもいいような感じで、映画に意識を止めていた。ただ、ブラウン管の中は一目見ただけでつまらなそうな古い映画、ヴィンセントの瞳は自ずと、ぼんやりとしている。右手が、動き出した。リモコンを探し当て、電源を切る。

「何をしてる、冷蔵庫はあっちだ」

「あんたは寝ないのか?」

ヴィンセントは答えない。答えないで、椅子に腰を落とした俺にナッツをすすめた。

「……」

その、少し上目遣いで俺を見つつも偉そうな態度に、俺は当初の目的からはそれるものの、すんなり従った。

「……こぼすな」

「うん」

そして彼は、彼の唇のあとがうっすらとついたグラスを押しやった。

「飲めないよ」

「飲め」

「……無理だってこんな濃そう」

「飲め、いいから」

酔っ払っているのか? 顔色には全く出ない。酔っ払ったらどうなってしまうのかな、この人。普段から酔ってるみたいな雰囲気だけど。

恐る恐る、口にしてみた。カッと、口の中が熱くて、無理矢理飲み込むと喉が焼けた。俺は、かはあと辛く熱い息を吐いて、一つ深呼吸をして、それからもう一度、尋ねた。

「何を、してたんだ?」

ヴィンセントはぼんやりとナッツの入った硝子の器を眺める。無表情。この人の表情筋は不思議で。笑顔はとてもさわやか、その笑顔もいろんな種類があって、いやらしく色っぽく見えたりも、少し寂しそうに見えたりも、する。 だけど無表情である時間が、多い。多彩な表情を出し惜しみしているかのように。意図的にか、それとも自然にかは俺の考えが及ぶ所ではないけれど。

「眠れなくて」

彼はゆっくりと口を開いた。目はずっと、硝子の器を見つめ続けている。それはなんとなくというよりは、ある種の強い念力でも篭っているかのような、強い視線だった。

「……眠れなくて?」

「眠れなくて、起きてきたのだが。……アルコールが入ったら、かえって目が冴えてしまった。駄目だな」

彼は訥々とした感じで説明した。口が達者というよりは、本当の意味で頭の良い彼にしては、黄身が二つ入ってる卵よりもずっと、珍しいことだ。だが、そのどことなく淡い感じの語調とは裏腹に、目線はガラスを砕いてしまうのではないかと思わせるほど、キッとしたものだ。俺は居心地が悪くなって、ソファに座り直した。何だか、彼は今夜どこか変だ。 俺はそして、思い当たって、躊躇いながらも聞いてみた。

「……違ったら、ごめん」

一応、そういう逃げ道を用意して。

「……夢を、見た、んだ?」

俺は語尾とともに上目遣いで彼を見て、反応を伺った。

彼はずっとガラスに当てていた視線を、ふわりと天井に向けた。そして俯く。肯定の印だった。

こんな生活をするようになって、ヴィンセントはまるで、あの三十一年間などはじめから存在していなかったようにも見える。俺たちに、そんな過去など無かったと自分は最初から幸せで今だってもちろんと、とても上手に演じているから。うっかり騙されてしまうけれど、でも実際は、決して繊細ではないけれど、でも十人並のナイーブさだって持ち合わせている彼なのだ。 普通の人間だからこそ、悩んで悩んで死ぬと言う選択をすることも出来ず、一生何かを呪い続け眠り続け、逃避することを選んだ。

そんな人なんだ。

「どんな、夢?」

「……言いたくない」

俺が尋ねると、昔から彼はいつも、そう言う。昔から……、そう、彼の悪夢に俺が立ち会ったことなど殆ど無いが、それでも同居するようになって、彼は幾度か、夜中に一人でベッドから抜け出し、冷蔵庫を開けていることがあった。何で隣にいる俺を起こさないようにして、そんな事をするのか、俺の理解を超えていた。だから彼が悪夢に苦しんでいるのを直に見たのは数度しかない。そしてその度俺は大した役に立てていない。

でもヴィンセントがそうやって、中途半端に自分だけで背負い込もうとするのを見るたび、俺は無視されたような、憤りを感じてしまうのだ。 俺が、どれだけ迷惑をかけたってあんたは笑っていられるのに、と。

「……怖い夢は口に出してしまえば、なんだそんな物かって、そう思えるものなんだそうだ。俺も経験あるからわかる。もちろんあんたみたいに苦しんではいないさ、でも」

「有り難う」

そんな言葉は求めていない。

「何のために俺が側に居るのか考えてみてくれ。あんたが俺の側に居る理由を、俺は知っているつもりだ」

「すまない」

そんな言葉も求めていない。

「……話せ。どんな夢を見たんだ。怖くて眠れないのか」

「怖くて眠れない」

「じゃあ、一緒にいてやるよ」

「お前はクラウドと一緒にいてやれ」

「勝手だろう、そんなのは。いいから話せ」

ヴィンセントは首を振る。

「お前に迷惑がかかる、いいからお前は寝ろ。私のことは放っておけ。父親の言うことが聞けないのか」

「誰も一人で眠れない男の事を父親だなんて思わないよ」

俺は唇を歪めてそう言い放ち、立ち上がってヴィンセントの髪を引っ張って、こっちを向かせて、鼻がぶつかるくらい、顔を寄せた。

「いいか? 俺はあんたがどんなでも好きなんだ。このキモチの件に関しては俺の勝手にさせてくれ。いいか? あんたは綺麗な顔をしてるけど、あんたの顔がどんなんでも俺はもういいんだよ。恥ずかしい所なんてもうみんな知ってるから。俺の前では裸でいてくれよ、別に大人なんかじゃなくてもいいからさ」

ヴィンセントの顔に唾を飛ばしながら俺は一気にそうまくしたてた。言葉の断片をそのまま放擲したら、それがたまたま唾だったみたいだ。 彼は黙ったままだった。俺が顔を解放すると、ソファに身を委ね、ぼうっと天井から釣り下がる年代物の灯かりを見つめた。飴色の光が紅に吸い込まれて、そこに宿った。彼の目が煌いた。

「クラウド」

彼はそれでも、まだ澄んだ声で言う。

「おいで」

それでもなおかつ、命令形で。

俺はその胸に頭を押し付け、身体の両脇にだらりと垂れた腕を掴んだ。体勢的に苦しんだが、彼の両腕を俺の背中にまわさせる。そして俺は彼の身体に手を回す。エビぞり、背筋が背骨が痛い。でもちょっと見たら、彼が俺を抱いてくれているようにも見えて、きっと大した問題にはならないだろうと思う。

彼は息をしていた。不安定なリズムで息を吐いて吸って。それは間断なく続いた。リズムを乱しながら続いた。その度に彼の胸が強ばって、俺の心臓は縮こまる。彼は声を出さず、だから俺も出さず、ただはっ、はっ、は、という息の音だけに意識を奪われているほか出来なかった。俺はそれでもどこか、クラウドがするみたいに幼気に、その肩を撫でている。それには大変な努力が要ったけれど。

彼は自分の意志で腕を動かし、右、いや、左手で俺の頭を押さえつけた。俺は鼻腔を彼のシャツに塞がれて、彼の匂いだけを嗅いだ、口は開けなかった。そして俺の背中にあった右手で、何かを拭いているみたいだった。何を拭いていたか、俺には、わからない。俺には永遠に判らない。

ずっとまっくらだったから、顔を上げたとき飴色の光はとても眩しかった。

彼は俺をどかすと、手を伸ばしてナッツを摘み上げ、口に入れた。かり、かり、と軽い音がする。

「セフィロスを殺す夢さ。この手でな。銃弾じゃない、この右手で直接、心臓を抉り取って。私は苦笑いを浮かべていたんだ。お前は俺の幸せには要らないんだ、残念だな、そんな言葉をずっと呟きながらな、手がぬるぬるして、私はセフィロスの頬で血を拭った。彼の顔は私そっくりで、けれど私よりも遥かに美しかった。緑色の瞳が光の加減で紅く光った。そして、気がつくと私は、私の心臓を抉り取って、苦笑いを浮かべながらそこに立ち尽くしていたんだ」

俺は肯いて、ナッツに手を伸ばした。ナッツはいろんな種類があって、カシューナッツ以外、俺は名前を知らなかった。ひょろりとして色白のを、俺は一粒つまんだ。うっすらと塩味、それから噛み砕くと、香ばしい豆の香り。口の中に砕片がじゃりじゃりするから、水っぽくなったグラスに手を伸ばした。まだちょっと辛かったけど、飲めなくはない。

「嫌な夢だね」

「そう、とても嫌な夢だった」

「そうか。怖かったんだ」

「ああ、とても怖かった」

俺は、小さな球根みたいな一粒を口にした。

「でもあんたには、俺たちがついているよ。あんたをおんぶすることくらい、何でもないさ」

「ああ」

ヴィンセントは少し考えた後、ぽつり、と呟いた。

「……私の中に一つの疑念がある」

俺は耳を澄ました。

「セフィロス……セフィロスは、ルクレツィアの子だ。間違いなく。あの顔、形」

彼はまた、かすかに表情を歪めた。

「ルクレツィアの血を引いていることは一目で解った。長い睫毛に縁取られた双眸、凛々しく通った鼻筋も」

俺は黙ってそれを聞く。次のナッツに手を伸ばすのは、やめておいた。

「だが……、……これはお前がセフィロスと共に過ごしていたという経験も含めて、正直に教えて欲しいのだが」

「答えられることならな」

「……セフィロスは、宝条の、子だと思うか?」

「俺は、宝条のこと良く知らないから」

「解る範囲で良い。病的な神経質、病的な潔癖症、病的な完璧主義者、しかし三流。そういった宝条の性質を、セフィロスは……どれかひとつでも、受け継いでいたか?」

俺は、サンドペーパーで心臓をこすられるような妙な苦しさを、何故だか覚えていた。

「……神経質、だったと思う」

俺はややどもりがちになって、答えた。

「神経質……うん、セフィロスは神経質だった。神経質……いや、なんていうんだろう、神経が繊細……それを神経質って言うのか? わかんないけど、割と、俺に関することならどんな細かいことも、気にしてくれていたと思う。優しいっていうよりは、俺に不快な想いさせるのが、すごく怖かったみたいだ。もしそうしたら俺が、いなくなるんじゃないかとか、そう思ってたんじゃないかな……。わからないけど」

俺の言葉に、ヴィンセントは何ら表情を変化させなかった。

「……ただ……」

俺は言葉を繋ぐ。

「完璧主義者でも三流でもなかったと思う。彼自身は、……会社の広告塔として、『完璧な英雄』っていうレッテル貼られて、崇めたてられてたけど、俺があった限りではもっと、……おっとりして、今振り返ってみるとそういうオーラは……少なくとも戦場以外では無い人だった。周りが勝手に怖がってるような感じで。……それに」

何でこんな、俺、言い訳がましく言ってるんだろう? そのくせ次の言葉を吐くのが、少ししんどい。

「潔癖症な人間が、男とセックスなんて、しないと思う……」

俺はナッツをつまんで、口にほうり込んだ。

「そうか、なるほど」

ヴィンセントは想っていたよりも淡々としたリアクションを見せた。

「なるほどな」

ヴィンセントは、はあっと息を吐いた。

「単刀直入に聞こう。セフィロスと私は似ていると思うか?」

 

 

 

 

ヴィンセントは子供のように俺の胸に額を圧しつけて眠っている。大人っぽく見えるのに、なあ? 彼はすやすやと、心地良さそうな眠りに落ちている。悪夢に苛まれているような様子はない。ソファのはしっこでは、さっき無理矢理起こしてここに連れてきたクラウドがタオルケットに包って眠っている。こういうこ

との相手には、クラウドよりも俺の方が向いているのかもしれないな。多少は俺のこと、大人だって思ってくれてるのかもしれない。それはそれで、ちょっと困るけど。

一人だったら? この人もし一人だったら、今、あの地脈の森に繋がってる地下室でひとりきりだったら、ヴィンセントはどうしてるだろう? 欠伸をかみ殺しながら考える。きっと、彼はまたあのかび臭い空間から出られなくなってしまうのだろう。彼は三十一年の間あの部屋から、彼の力を持ってすれば出ることは

出来た。けれど、「出られなかった」のだ。出て、生きていく自信がなかったから。

一人だったら、……うん、一人じゃないから、彼は今、俺にこうして甘えられるわけで。それってすごく、すごくすごく重要。ヴィンセントの側には俺がいる、俺の側にはクラウドがいて、クラウドの側にはヴィンセントがいる。甘えられる構図、傷の舐め合い、痛くないように。一緒にいる理由は理屈抜きで、楽だから。

人の中に揉まれて生きてゆくのは辛い。たくさんの誹謗中傷が罷り通っているわけだから、神経すり減らしながら涙流して傷を重ねてかさぶたむいたところにまた針を刺されて。だけど、それでもやってけるのは、自分を傷付ける人ばかりではなく、たくさんの人の中に僅かでも、自分を一番に思ってくれる人がいるからだ。

俺たちにとっては、それが、俺たち。家族。俺にとってのクラウドヴィンセント、クラウドにとってのヴィンセント俺、ヴィンセントにとっての俺クラウド。絶対裏切らないという、強いツヨイ強いツヨイ証。

どうしよう、俺も寝ちゃおうかな。ちょっとだけ、重いんだけど。暑いし。

しょうがない奴だな。

なんて頭を撫でる。彼は可愛いことに、俺に擦り寄った。良い子、良い子。俺のタイセツなヴィンセント。

俺をこんな風に護ってもくれる、大切な。


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