微熱の高熱の灼熱の焦熱の
ビフォアザディナー

「ちなみに、さっきまで話していた内容っていうのは、……ひとことで言ってしまえば下ネタだ。ひょっとして参加したかったか?」

クラウドは小さく溜め息を吐いて、恐らくは一瞬、思考の裏側でやっぱり部屋に戻ろうと想ったに違いなかった。

「……どうしてふたりとも、そういう話好きなの? 一日のうちほとんど、そういう事考えてるでしょ」

「簡単な問いだな。俺たちの会話の内容っていうのはだいたいがお前に関することだ。そうなると、話題はどうしても下の方へ下の方へと流れるわけで」

クラウドがぱたんっ、と一つ尻尾を振るった。

「ザックスもヴィンも、俺のことそういう風にしか見ていないんだ!」

今度こそ立ち上がりそうだったから、俺はその手を握る。冬毛に生え変わったあとだから、柔らかくて何度でも撫でてあげたい、いっそのこと咥えてしまいたいような、素敵な触りごこち。

「お前以外の誰を、そんな風に見ることが出来る? お前が俺を世界中でお前しかいないと思ってるんだけど」

「見なくていいよそんなの!」

なんだ、せっかくヴィンセントの真似をしてかっこいいこと言ったつもりだったんだけど。機嫌をこれ以上損ねさせないために、手を伸ばして耳を掻いてやる。尻尾や手が急所ならばここは真逆。耳の後ろを掻いてもらうと、恐らく自分の中の何かが柔らかく熔けていくんだろう、深いキスよりもずっとスマートなやりかたで。猫が耳の後ろを喜ぶのは、自分では触れられないところだからだ。クラウドは自分でも掻けるのだけれど、それでも「ザックスに撫でてもらっている」ということが重要なファクターとしてあるらしい。毒気の抜けた顔で、俯いてしまう。

「逆にお前も、俺のことを見ていいんだよ。例えば、俺はいつでもお前のことを欲しいと思っていて、だけどお前はあんまり欲しいとは思っていないけど、その逆の時だってあるかもしれない。お前が寂しくなった時、お前が俺を欲しくなった時が。そういう時には、お前は俺をもっと、欲望のままに見ていいんだよ」

もっとも……、クラウドはもうほとんど俺を求めてくれない。キレてしまえばどんな風にだって求めてくるけど、平常時に自分から「抱いて」とせがむことなど皆無だ。

一番記憶に新しいのは、温泉に行った時の晩。俺たちと一晩放されるのが耐えられなくて、抜け出してやってきた時。あの時は、もう、嬉しくて嬉しくて。深夜の風呂場で誰に見られてもいい気持ちで、お互いに狂ったように抱き合った。

「……クラウドはまだ子供だから、あまり解からないとは思うが」

ヴィンセントはもう一点の曇りもなくなった眼鏡をかけて、その顔を見詰める。別に目なんてそんな悪くないくせに。でもクラウドの顔は眼鏡かけてでも、克明に見ていたいというのは解かる。って、俺視力、両方一・五だけど。

「年を取ってくると寂しいと思う気持ちが強くなる。孤独を感じる事が多くなる。そして、欲張りになる。……言葉だけ、存在だけで我慢出来なくなってしまうのだ」

どこか憂いを含んだ赤い瞳に呑まれそう。

演技だとしても、悪い人間に進んで変身しようとする俺たちの姿勢を、俺たちは嫌いだけどもしもクラウドが好きになってくれたらいいなと思っているのだ。それに、ヴィンセントが言ったのは俺の気持ちでもある。少しずつ、ほんの、僅かずつでも、俺が知っているクラウドは大人になっていく。その過程で一体俺は、どの程度の割合を占め続けていられるのか。昔みたいにすんなり「愛してる」と言ってくれなくなった事実に、ふかぶかと開いたくらい穴の前に佇んでいるようで。寂しいという気持ちは、どうしようもない。本当に永遠だからこそ、俺たちの想いが風化する可能性は他の誰より高いわけだし。

きっとその穴の向こうにクラウドはいて、その存在と言葉と愛情と身体が、橋を作り出すのだ。

そうして、また出会えた時に抱きしめて、キスをする。辿り着ければもう、クラウドは俺に「愛してる、大好き」と、俺にしか見せない笑顔で言うに違いない。

「……別に、うん……、いや、いいんだよ? 下ネタ話してても。でも……」

「でも?」

「ザックスもヴィンも、大人ならもっと、えっちしないでも大丈夫になればいいのに」

ヴィンセントと思わず顔を見合わせてしまった。

「ふたりとも病気なんだよ」

俺は言った。

「お前見てると、正常な神経が麻痺して、おかしくなってくる」

「……じゃあ一緒にいないほうがいいじゃん」

「それはまた別問題だ。……おいで」

膝の上を指差す。少し渋っていたけれど、相手は病人。優しさ溢れる彼は、ちゃんと俺の膝の上に収まる。

「私たちにしか見えない、綺麗な花が咲いて見える」

「はな?」

「ああ。……俺にも見える、嗅げる。甘くて優しい香りがする」

「……?」

クラウドは釈然としない顔で俺を見あげた。

「その花の香りが実は、俺たちを惑わせてるんだけどな」

クラウドが身じろぎをした。居心地悪そうに。

だけど、思い直して再び落ち着くと、少し間をおいて言った。

「……俺の知ってる人の数なんて、ぜんぜんいないけど、他の誰に嫌われてもザックスとヴィンに嫌われたくないよ」

「誰がお前を嫌うもんか」

「……それでも、ふたりがいなくなったりしたらやだから、ふたりが欲しいって言ったら、……」

語尾は縮こまって、上手く聞き取れなかった。抱きしめて、腹一杯に髪の香りを吸い込む。ヴィンセントと同じ匂い、そして俺と同じ匂い。俺はこんなに、いい匂いがするんだ。 こういう時に痛烈に走り抜ける、泣く寸前のような愛しさ。大好き大好き、何度言っても、俺の「大好き」って気持ちを上回る「大好き」は言えない。何で人間はもっと、いい言葉を思い付かなかったんだろう。一番上手に伝えられる手段のくせになんて不便。

「……あの、クラウド。ひょっとしたら誤解してるかもしれないから、一応言っておくよ」

抱き締めたまま、俺は掠れてしまう声で、大きな耳に囁いた。

「こういう時に俺がお前を抱きたいって言ったら、お前はきっと嫌な顔をするだろう。だけどな、それは直接的な欲求じゃないんだ。お前を見て反射的に勃起してたらそれこそ病気だよ、認める。でも、こうしてる時に抱きたいって思うには、いくつかステップがあるんだ。お前のことが好き、お前に好きって言いたい、だけど言葉には限界がある、それがもどかしい、もっともっと伝えたい、解かってもらいたい……。お前と俺が共有出来て、たぶん一番幸せになれる行為が、セックスだと俺は思うんだ」

返事は返ってこなかった。ただ、顔を上げた頬が赤く染まり、俺のボタンダウンに爪を立てて、一声だけ鳴いた。言葉無くてもこの子はこんな上手に伝えられるのに、俺の表現力の、何て稚拙なこと……。

 

 

 

この家にはダブルベッドが無い。

いや、なら買えばいいだろうと思うんだが、俺とクラウドが寝るのは未だにあの元手術台の机だし、ヴィンセントは二階の二つあるシングルベッドの片方を使っている。必要性を感じないのだ。

三人居るのだから、大きいサイズのベッドを買って川の字で寝ればいいのではないかと偶に思うのだが、そうすると二人だけの時間が取れなくなる。これは俺とクラウドの時だけのことを言ってるんじゃなくて、クラウドとヴィンセントの時間も必要、俺とヴィンセントの時間も、また必要。地下のベッドも二階のベッドも、クラウドか俺の汗と、行儀悪く撒き散らした精液を吸っている。

三人で愛し合う時は逆に、場所を選ばなかったりする。ハッキリ言ってどこでも構わないって感じで、地下に置いたソファ、一回の食卓兼ピアノホール、一度など、エントランスホールでしたこともあった。クラウドの泣き声にエコーがかかってそれはそれで、よかった。

そんな訳で、こんな風にベッドを二つくっ付けて、広々とした場所でするのは滅多にあることじゃない。

「……なんだか……あのね」

クラウドはベッドの中央に座って、ゆらゆらと尻尾を揺らしている。

「……俺も、ふたりに抱かれたいって気持ちが、ある、のかなぁ…………」

なにを今更……あるに決まってるじゃないか。と言うのは辞めておく。我ながら賢明な選択である。 そのかわり、

「構わないよ」

頬に口付ける。

「でも、どうしてそんな事を思ったんだ?」

クラウドは手の肉球を付き合わせて弄りながら、吃った。上手い言葉が見付からないんだろう。「好き」という純粋な言葉や気持ちと、「セックス」という邪まに見やすい行為とが、きっと彼の頭の中ではすんなりとは伝わらない。

「……俺に抱かれたい時は、いつでも、どんなときでも構わないから、言って」

「…………うん……。……で、でも、俺はえっちじゃないんだ。ふたりがえっちなだけで、俺は普段はべつに……」

最近口癖のように「俺はえっちじゃないもん」と言う。自分では見えないものがあるんだよな。

「大丈夫。クラウドはたぶん、えっちじゃないよ」

「そうそう。えっちなのは僕たちだから……」

「……何時の間に変身してるんだあんた」

「悪い? ベッド二つ並べたって言っても、三人でぎっこんばったんやる訳だから、僕がおっきかったら狭いでしょ?」

……ぎっこんばったん……。

「……愛してるよ、大好きだよ、クラウド」

「……ん……」

クラウドとヴィンセントは目を閉じて唇を重ねる。互いの猫手で互いを抱き寄せ合い、何度も何度も、角度を少しずつ変えながらキスをする。恐らく、俺が感じている以上に同じ味を感じているんだろう、そう思うと少し嫉妬してしまうのだった。

「服、脱がせてやろうか?」

吐息の合間を縫って俺が聞く。クラウドがこくんと頷いた。その頬は林檎の赤。揃いのボタンダウンとシャツ、それからズボンとパンツ、全部脱がせて広いベッドに横たえる。お蔭様であいも変らず細い体、胸から腰、腰から尻と、非の打ち所の無い愛らしい輪郭。たまらなくて、屈み込んで腰の括れているあたりに舌を。妙なところを最初に責められた驚きからか、クラウドの腰が逃げてしまう。

だが反対側では熟れた苺のような乳首にヴィンセントが吸い付く。俺のすぐ目の前で、裸にした時点ではまだ柔らかめだったペニスに力が篭る。仔猫ではあるが技術は大人と同等のヴィンセントの舌の動きに、思わず腰が浮いて、やがて、強烈な興奮による呼吸促進――喘ぎが漏れ始める。

「……ひ……ぅ……ん、っ、あ……あ」

喘ぎ声っていうのは、全力疾走したあとのゼエハアいってる時に、無理に喋ろうとした時のものと似てるんだそうだ。五十メートル走のテストの後で、フラフラになって、それでも無理に記録更新を喜ぼうとしているクラウドが危うい感じでかわいいのはそのせいか。

「っん……! かんじゃ、やだ、……あ」

「痛かった?」

「……ん……、うぅん……」

ヴィンセントがふ、と笑う。

「少し気持ち良かったんだ?」

「……ん……」

「じゃあ……、痛くしないように、してあげるから」

「……ん」

ヴィンセントが再びイチゴを口にする。ペロペロ、ピチャピチャ、音を立てて吸い付き舐め回す合間、時折軽く歯を立てて、クラウドに鳴き声を上げさせる。刺激を受けていない方の果実も熟れさせて、腰はもう落ち着くことなく震わせて、直截的な接触を求めている。ヘソを舐め、そこから腰、尻の外側、太股の裏、舌で肌を味わってから、クラウドの足を大きく広げる。反射的に隠そうとする手を抑え、張り詰めた肌色の袋の裏側から肛門へと続くラインを舌先で辿る。クラウドが焦れて、泣き始めた。

「……ん、あ、やぁ……」

「やだ?」

「……ん……、そこ、そこだけじゃ、出ないよぉ……」

顔を上げて見てみれば、もう透明な液体を飾りのように一滴滲み出させている幼い茎。

「……ザックス、僕、飲みたいな……、クラウドの」

ヴィンセントが猫手で触れる。俺も飲みたかったけど、猫が猫にそういうことする姿を見てみたい気もした。

「いいよね?」

「……ああ」

ヴィンセントはクラウドの上に覆い被さる。黒い毛の尻尾が生えた尻をクラウドの眼前に晒し、甘いような辛いような香りを醸す肉茎にしゃぶりつく前に、強請った。

「クラウド、ね……、僕のお尻舐めて。あとで僕の中、あげるから……」

「……ん、ん……」

柔らかな唇で、皮によって奥床しく隠された敏感な部分を剥き出しにして、ヴィンセントはクラウドを味わい始めた。ヒトならば手で、簡単に出来てしまうことなのに、唇で不器用にクラウドを剥いてやる姿に、俺は思わず震えてしまう。クラウドもヴィンセントの口淫に応ずるように、あまり力の入らない両手で丘を開き、谷奥の洞穴に舌を差し出す。ヴィンセントが苦しげに目を細める。 完全においてけぼりを食っているけれど、猫同士の69を見られるのは、僥倖と言えるのかも。ヒトガタヴィンセントだったら嫉妬するところを、猫型だというだけで、二倍愛しげに見えてしまう。

赤い舌の応酬に、やはりクラウドが先に音を上げた。あられもなく拓かれた太股を痙攣させて、自分で腰を刻み、ヴィンセントの口に包まれた自身を擦る。

「ん、んっ、あっ」

ヴィンセントの後ろを濡らすことなどほとんど出来ぬうちに、到達してしまった。ヴィンセントの唇から白く細い糸が引かれる。それに俺の奥底がたまらなく痛む。思わず屈んでヴィンセントの唇から、出されたばかりの精液を吸い取る。生臭さに混じってアールグレイの味も微かにする、優雅で贅沢な精液。

「半分残しておいてやっただろ」

ヴィンセントは恨めし気な顔で唇を舐めたと思ったら、クラウドの上から身を降ろし、開けと言わんばかりに尻を向ける。クラウドの唾液に濡れたそこは、きっと猫になって感度も良好になっているからだろう、プライドの高い本人すら自制出来ない動きを見せている。この子もといこの男に対して優越感を抱くなんていつ以来だろう? もう十分だというのに、べったりと舌を付けて、濡らす。両手で入口を横に広げ、指では無く、舌でねじ開く。普段は閉じられたままの肉は危険な味がする。 愛しく思えるほどのこの場所について、あんまりこういうことは思い出したくないのだけど、尻の中だから当然、何らかの菌がいっぱいいるわけ。だけど、幸いなことに俺たちは壊れない身体だから、気にしなくていい。あとで多少、腹が痛くなるってだけで。コンドームなんていう無愛想なものに隔たれない喜びを感じられるのは、とても幸運なことだ。

とにかく、ヴィンセントは俺のイヤガラセ的な愛撫に、震えて鳴きながら耐えている。クラウドに「あげる」という目的を果たすためになら我慢出来るのだ。仮にヒトガタが俺の為だったりしたら、とっくの昔に銃を取り出されるか、あるいは逆に押し倒されて犯されているかだろうに。

「……ザク……ぅ」

ようやく押し当てた指はすんなりと奥へ進む。隙間から唾液を流し込んで、中を濡らしかき混ぜる。

「……もう、……お願い、やめ……はっ……あっ……ん! ……んぅ……」

「……そう言われたって。クラウドを受け容れるんだろう? ちゃんと慣らさなきゃいけないってことくらいお前だって百も承知だよな」

「……ん、はぁ……あっ、あぁ……、駄目……、それ以上しちゃ、駄目ぇ」

「……どうして?」

「……っ、……い、っちゃう、……お尻だけで、出しちゃうからぁ……」

ヴィンセントが尻だけでイク。ちょっと見たい気がしたが、俺はとにかく指を抜いた。

「クラウド、ほら、ヴィンセントが待ってるぞ」

ヴィンセントから漏れる甘い呻きに再び茎を、真上に向けているクラウドは赤い頬、こくこくと頷いて、ぎこちない腰をゆっくりヴィンセントにあてがう。

「……あ、……ついよ……、クラウドぉ……」

「……ん、ん、おれ、もう、ぜんぜんガマン出来ないよ?……ヴィン、いっぱい、また……」

「ん。……出して、いいよ、クラウド、……ちょうだい、クラウド……。……あ、ああ……」

ゆっくり繋がる猫と猫。二匹の尻尾は同じように小刻みにぶるぶる震えて、少年の唇からは思わず、溜め息と仔猫の喘ぎ声が。

「……す、ごぉ……い、よぉ……、ヴィ……なか、あっ、……んふぅ……」

「どう凄いんだ?」

「……ぬるぬる、して、……っん……きゃんっ、やっ、あっ、そんな、しめたら……っ」

「……クラウ、ド、の、あつくて、気持ち、いん、だもんっ……あぁ、っん」

……何というか。 こんなの見せられてもな。 人っていうのは、自分の許容を越える素晴らしさに出会うと、しばしば呆然と考え込んでしまう。素晴らしすぎて、自分がひどくちっぽけなものに思えてしまう。俺は、そういえば、立ち上る無数のライフストリーム竜巻を見て、そう思ったものだった。 それに比べれば、誰の命もかかっていない物ではあるけれど。俺にとっては同程度に……なんて言ったらエアリスに失礼か、ちょっと劣るけど、それでも素晴らしいものだった。素晴らしいほどに下劣。そして、俺は世界でいちばんの、みっともない野郎だ。行きたくて逝きたくて仕方が無い。だけど、この二匹の猫、とりわけクラウドの前で、一人射精するというのはどうしてもみっともない気がして出来なかった。

とはいえ、俺は感動の涙をこぼしている。

「あっ、あっ、ひんっ……っんっ、いぃ、っ、クラ……っ、いく、いくぅ……、早く出してぇ」

猫化故の快感に、身体の下に突き出した己が欲求をビクビク震わせて、掛け布団の上に大量の精液を放つヴィンセント。結局尻だけでいってしまった。

「あ、あっ。……あぁ……あん!」

無我夢中に腰を振り、小さな尻の奥へ向けて何度も何度も痙攣するクラウド。

それを息が止まるような気持ちで見つめ、下半身の衝動を堪える俺。

なんとまあ、みっともない家族であることか。……ユフィでなくたって、「アンタたちねえ」と呆れられるだろう。ひょっとしたら回りに誰も寄り付かなくなるかもしれない。

同じ病気だ、俺たちは。

「あ……、あ……」

「……んっ……にゃ……あ……あぁん……」

クラウドとヴィンセントは、接合部が外れるとぐったりベッドに横たわった。だが無意識に手を伸ばし、互いの身体に触れる。クラウドが何とか起き上がり、ヴィンセントの胸に額を押し当てる。ヴィンセントが優しくその頭を抱き締めた。猫同士にしか解からない意志の疎通何だろうか。性的な意味は全くなしに、互いの身体を舐めずり合う。俺がやったらきっと、二人とも感じてしまうんだろう。言ってみれば毛繕いのようなものか。 直接的でありすぎたために、間接的に見える愛情の交わし合いに、俺の幹はズボンがすれるそれだけのことで大袈裟に反応する。もう……いい加減、いいだろう?

「……なあ、おまえたち」

こちらに向けた二匹の陶然とした表情の、なんて可愛い事!

「……俺のは……ひょっとして、いらない?」

二匹とも、きょとんと目を丸くする。だけどヴィンセントが妖しく笑み、クラウドを抱き起こす。

「いいよ……。ザックス、いかせてあげる」

猫型だと、本当にいい子だよな、あんたは。きっと、身体の形に比例して、心の穢れが消えてしまうのだろう。この、「猫ヴァージョン性格」が無ければ、きっとその笑顔を見たってかわいいなんて、思えやしないだろう。 立て膝で、ジッパーを開き、湿っぽい肉棒を晒す。頭を俺の股に寄せ、漂う雄の臭いにいとおしげに口付けて、ヴィンセントはクラウドを誘う。

「……ね、クラウド、一緒に……ほら」

「……え……?」

「ザックスのこと、好きなんでしょう?」

「…………」

クラウドがヴィンセントのすぐ横に跪き、俺のペニスに顔を寄せる。

「あんまり、……本当に、我慢出来ないからな。すぐ、出すぞ」

二人してぬらぬらした舌で、俺の腫れ上がった陰部を味わっている。目を薄く開け、愛しそうに、美味しそうに、俺に施す。けれど、二人とも、俺がいちばんして欲しいことはしてくれない。茎ばかり舐めていたかと思えば、顔を二人して下にずらし、袋の中身を一つずつ両端から口で引っ張る。

「痛ッ」

声を上げると、慰めるようにやたらめったらに舐めてびしょびしょにする。

「なあ……、焦らす、の、無しにしないか?」

震える声が恥ずかしいが。

「ん。……そうだよね、ザックスいきたいよね。さきっぽ、おつゆいっぱい出てるよ……」

クラウドのその言葉が一層拍車をかける。肉球の指でぬるりと触り、指先と俺の先の間に繋がれた細い糸に、きらめくような笑顔を浮かべる。

愛を食ういじめっ子! いじめられる側の気持ちになってみろ! って……ああそうか、こういう気持ちなのか。

「……ザックスがこ〜んなに感じてくれるのが、嬉しくてたまらないんだよ。ね?」

ヴィンセントが俺に横になるよう促して、言う。今に限ってはこの子達に対してもいじめられっ子な俺は、素直に仰向けになる。俺の臍の回りにたくさんのキスを降らせ、ペニスの表側の根っこのほう、俺の陰毛が頬に当たってヤじゃないのか、遠回しすぎる快感を与える。そして茎を一周して裏側の方では、クラウドが飽きずに音を立てて俺の袋を吸い回す。

「……クラ……、お前、そんな、……そういうことする子だったっけ……?」

クラウドは答えない。ただ、本人ではないようなほどに積極的、というより変態的なクラウドが、ちょっと、コワイ、そして、嬉しい。……間違いなく俺の分身なんだな……。

「……二人とも……あのさ、本当に……出させてくれないのか?」

「……誰もそんな事言ってないじゃん。……いいよ、ザックスの全部、俺が飲んであげるから」

「ずるい、僕も飲むんだ」

「じゃあ、一緒に飲もう?」

「うん。半分こしようね」

俺のはオヤツのジュースじゃない。

とにかく、二人は幸いなことにようやく、俺のペニスの、一番欲しい部分に欲しいことをしてくれる気になったらしい。この子たちの同じ物とは違い、十何年も前に俺と同じ名前のバカヤロウに、皮膚化させられた敏感部分に、両側からしゃぶりつく。俺の、そんな広くない亀頭の上、ちょうど尿道口の当りで、唾液と「いっぱい出てるおつゆ」で濡れた二人の唇が触れ合っているのが見えて、それがまた俺を窮地に追いつめる。 素面の時のクラウドは忌避するだろう。でも、こういうので――こういうのでも、俺は幸せを感じられるし、そしてそう感じることは、肉体から精神へ伝わる素直でリアルな声によるものだから、実はそう汚らしいことじゃない。

今はクラウドも、興奮して、単純な欲求ばかりで俺を感じさせているんだろう。実際のところは、奥底には数え切れないほどの恋愛感情活性化細胞がざわざわして、「ザックスが好き好き大好き」という初歩的なところに気付いていないだけ。俺がクラウドの全てが好きで、例えばクラウドの尻の中を舐めても、足の肉球を咥えても、生まれたての頃に寝小便垂れたのを片付けてやったことを良い思い出だと振り返ることが出来るのも、すべて、「クラウド好き好き」という細胞の為せる技。クラウドも、同じ事。

「……出るよ、……出る、……ヴィン……、クラウド……!」

顔射。二人の顔の、それぞれ右側左側目掛けて、俺は思いっきりぶちまけた。オナニーしなれてない餓鬼みたいに、何処に何が飛ぶのかも気にしないで、尻の穴に全力篭めて、俺に尽くしてくれた顔に、本気でかけた。射精と痙攣が収まるまで、五秒もかかった。なかなか、ないよこんなことは。本当に、メチャメチャたまってたんだ、本当に、メチャメチャいとしいんだ。 凝縮されてもこれだけ長く続く快感、一体、放たれた物の中に何匹いるんだか知らないけど、だけど一匹一匹が「アイシテル」って言葉を知ってる。きっとクラウドたちが女の子だったら、一回のセックスで全てのオタマジャクシがクラウドの卵に密集するに違いない。そう考えれば、よかったねクラウド、お前は男の子で。お陰でホモだけど。

「……すごい、半分こしても、いっぱいだよ、ザックス」

唇の左側にかかった白濁を肉球で触れて、ヒトハダの液体の量にヴィンセントがにっこり笑う。

「ん……。飲みきれないよ、きっと、一人なら」

右頬が汚れたのはクラウドだ。唇の端をぺろりと舐める。

未だ収まらない呼吸をゆっくり時間をかけて直しながら、二人が互いの頬を舐め合う様子を見る。心底美味しいと感じてくれているらしい、満たされた表情が俺を幸せにした。クラウドも、オリジナルヴィンセントも、こんなことなんてまず有り得ない。クラウドには猫ヴィンが、猫ヴィンにはクラウドが、俺に対して素直にえっちになる、いい材料になっているんだろう。いいことだ。

「……気持ち良かったよ、……ありがとう」

最後に甘い溜め息を吐いて俺は礼を言った。 俺は何だかんだ言って幸せだ……すごくすごく。

「ザックス、またすぐ……したい?」

「ん……?」

ヴィンセントが、溢れてきた余韻を舌で掬い、その舌でクラウドの唇を舐めてから、聞いてきた。

「やろうと思えば、何度でも出来るよ」

「じゃあ、別に今はやろうと思わないでもいいよ。少し休んでて。また、あとですぐ、ね?」

「……別に構わないけど」

見ると、クラウドもヴィンセントも、俺への施しのせいで、再びあそこが真上を向いている。二人とも剥けきっていないから、上を向いた先っぽは、少しだけ甘酸っぱい場所と、本来はおしっこだけ出してりゃいいはずの穴が覗き、まだ自力では下までめくれない包皮が亀頭の根本を覆って膨らんでいる。俺も確かに昔はそうだった、七転八倒した後に現在のようになった。確かに……ね、完全に剥けてた方が便利かなという気もする。クラウドたちの状態を、「包茎」って呼ぶわけで、そういう状態であれば、あんまりきれいな話は出来ないけど、垢が溜まるみたいだし、衛生的にあんまりよくない(……ということを本で読んだので、クラウドと風呂に入る時は、彼がどんなに嫌がっても、一応……「衛生の為に」中までな、洗うようにしてる)。やってることが不衛生極まりないことは百も承知だから、それ以外のところは、綺麗に、したいじゃないか。それにカユくなって人目憚らず下半身掻いてるクラウドなんて見たくな……。

ヴィンセントはクラウドに手招きして、自分のすぐ目の前に座らせた。抱き寄せたかと思ったら、腰を前に出して、自分の幼化したペニスを、クラウドの元々幼いペニスに押し当てた。

「……直に当ててこすったら、きっと気持ち良いよ」

いい思い付き、と子供の笑顔。

「……それとも、クラウドはまた、僕の中入ってみたい?」

「……うぅん」

「……クラウドは、僕に入れられるのも、あんまり嬉しくないでしょう?」

「……ん」

「じゃあ、こうやっていっしょに、感じよう」

大昔、俺はザックスの寝込みを襲ったことがある。その時にはたしか、入れることを躊躇って、自分のを擦りあててザックスをいかせたっけ。いろんな思い出があるけど、あんまりいいものがないな、ザックスに関しては……寂しいことだ。

膝立ちで、ぎこちなく同時に艶めかしい腰の揺らめき、茜差す頬、その微妙な快感によって微妙に溢れる同じ吐息、トラ猫とペルシャのそんなご様子を拝見して、俺はゆっくりと起き上がった。

「……気持ち良いだろうな、それ」

「……ん……、は、……ああ……」

ヴィンセントがうっとりと誘う。

「ねえ……、ザックス、ザックスも、やる……?」

「ん? ……俺はいいよ。足の長さも大きさも合わないからやりづらいだろうし、それにそれよりも……」

「え……」

ヴィンセントとクラウドをまとめて横たえる。上下に重なり合ったまま、俺は二人で続けるように促した。上に乗ったクラウドがイニシアティブを取って腰を振り出す。ヴィンセントの声が少し大きくなった。

俺は猫たちの足のほうに身を入れて、上下二つのいとおしく狭い穴を愛してやるのだ。

「きゃぅ……」

俺の舌にまずクラウドが上げた声に、ヴィンセントがびくりと震える。考えを巡らす暇は与えないで、俺はそのまま、ヴィンセントの尻にも指を差し入れる。

「や……っ、ザックス!?」

「ヴィンセント、……お前の尻、クラウドので濡れてて入りやすい。せっかくクラウドがお前の中に出したのに、漏らすなんて勿体無いだろう。太股まで垂らして……、何かはしたないな」

「いやぁ……、ザックス……、あぁ、あっ」

一度クラウドへの愛撫を中断して、顔をずっと下へ、零れて穴の回りを濡らす液体を残さず舐める。それから、中に残った液をかき出すために指を動かす。

クラウドは俺に再び舐められて、ただ震えて泣くだけ、さっきまでしていたことをもう忘れてしまっている。お尻が、やっぱりこの子は一番好きらしい。きっと爆発しそうなほど恥ずかしいのだろうが、ここばかりは恥ずかしげもなくもっともっとと口をひくつかせて求めてくるのだ。

「クラウド、動かなきゃ駄目だろ。ヴィンセントが欲しがってるよ」

「ん、んんっ、……あぁ……はっ、はぅ……」

さきほどよりも更にぎこちなく、腰を振る。角度を変えて見てみれば、クラウドから溢れた淫蜜が摩擦で下まで剥けたヴィンセントの亀頭を艶やかに濡らしている様子がはっきりと。もちろん、ヴィンセントからも蜜は漏れ、それは彼のへその下当たりに薄く広がっている。頭の中が侵食されている俺には、二本とかかった蜜がとても、美味しそうに見えた。 俺のような単純な雄の臭いじゃない、健康的な汗の匂いや、小便の匂い、残った精の匂い――彼らしか持ち合わせていない芳香を漂わせる細い茎は、性欲と、そして「食べちゃいたいくらいかわいい」から、俺の食欲もそそった。――汗の匂いと小便の匂いは「臭い」じゃないか、確かにそんな気もする。だけどな、ぶっちゃけて言ってしまえば俺は、クラウドと猫ヴィンの汗やおしっこはちっとも汚いと思わないんでな、申し訳ないが。猫手だから自分で小便に行けない二匹、ヴィンセントはその度にヒトガタ回帰して行くけど、クラウドは未だに、俺に手伝ってもらう。俺はその行為を、案外、いやとっても、楽しんでいた。

「クラウド、ヴィンセント。互いの感じてる顔はどんなだ?」

奇妙な状況を、二人に自覚させる。

「お前たちのそういう顔を見て、俺はいつも感じてるんだ」

反らしたくても反らせない顔。自分の恥ずかしい顔を隠すよりも、相手のそういう顔で感じたい――

「……ヴィン……、ヴィンの、……あっ……ぅん! ……ヴィンの、顔、……綺麗、あ!、あ!……っ、すご、綺麗だよ……ぉ」

「クラウドも……、かわいいもん……、っ、……かわい……っ、いっ、っんくぅ……っ」

賛美しあい、口付け合い、徐々に動きが忙しなくなる腰。

「二人とも、そろそろか?」

「んっ、むぅ……ん! ……きゅ、……っ、いっ、……うん……っ、出そう……」

クラウドが音を上げた。似たような形の猫二匹で、同じように敏感だけど、やっぱりクラウドのほうが早漏。俺は尻への刺激を中断し、クラウドを抱きあげ、ヴィンセントから剥がした。うっとりと刺激に酔っていたヴィンセントは、俺を恨めしそうに見上げ、

「……もっとぉ」

と甘えた声で鳴いた。

「もっと、させてやるよ、勿論。……でも、お前たち見てたら、俺だって欲しくなる。ヴィンセント、クラウドを抱いてやってくれ。……俺が一緒に咥えられるように」

腰にあまり力の入らない二匹は、俺の要求を棄却しなかった。ヴィンセントは足を開いて正座すると、太股の上にクラウドの足を同様に開いて座らせる。下半身で再び擦れ合う肉に、クラウドはヴィンセントの頭に縋り付く。ナナメ上を指してピクンピクンと震え、今にも白蜜が噴き出してきそうなほどに張り詰めた二本の愛らしい棒の先がぴったりとくっつき、二本同時に、横から頭を入れた俺の口に入る形になる。

「い……やぁ……!」

「ん……っふぅ……あ……! あ……っ」

二人の物の大きさが、ミニだからこそ出来る芸当だ。俺は片手をベッドについて身体を支え、もう片方で二本がずれないよう抑え、ピンクに腫れた二つの果実を同時に口に含んだ。狭くて舌が不自由だから、口を上下に動かして刺激を与える。予想していたとおり、果実と果汁の味は、充分に狂えるほど、甘い。

俺は口から抜いて、尋ねてみた。

「……どうだ? ……いいか?」

 快感に支配されて身震いするクラウドは、すすり泣くような喘ぎをするほどだ。またたびなくても、このレベル……、人間の身体っていうのは快感をより求めていくようにできているから、こういう風になっていくのは「開発が進んでいく」とでも言うんだろうか?

「お……口のなかで、……っん、……当たってぇ……」

ヴィンセントに身体を支えてもらいながら、二本重なった淫らで小さな幹を見下ろし、その異常とも呼べるような光景に、目が釘付けになる。

「……なんか、とろとろしたり、ごりごりしたりして、…………気持ちいいよお……」

翻訳するなら……、口の中の生暖かい温もりと、口内で擦り合う互いの裏側がいい。

「ヴィンセントは、どうだ?」

ヴィンセントは、もうこの快感に陶酔しきった瞳を濡らし、掠れた声で、呟く。

「僕、……もう。……駄目……」

「駄目?」

掠れた声が、次第に抑えが利かなくなり、暴走し出す。

「……我慢できないよぅ……、ざ、くす、……お願いっ、もぉ、焦らさないで、僕の舐めて、いかせてよぉ!」

「……お前がそんな風に求めるなんてな……」

「もう、どうでもいいのぉ、いっぱい、たくさん、出したいっ、クラウドの、と、ザックスので、おかしくなりたいんだよぉっ」

我を捨てて、クラウドの茎に擦り付けて強請る。

「解かったよ。……だからお願いだ、出すのは俺の口の中にしてくれよ」

そう言って咥え込み、頬を窄め少し吸った。それだけで、口の中、二本が激しく痙攣して、俺の喉の奥目掛けて強く精液が発射された。同じ味、同じ匂い、だけど微かに、クラウドの側から放たれたもののほうががより甘く、生臭い気がした。……ヴィンセントのは薄いんだろうか。 口から二本を出す。遅れ出の液体が滲み出てきた。勿体無いのでそれも吸う。吸うとクラウドもヴィンセントも同じようにぶるぶる震える。果実に、透明なシロップ、白い蜜。作為的ではないデコレーションが、帰って美味しそうに見える。クラウドを抱き上げていたヴィンセントの手が解けて、クラウドがベッドに横倒しになる。ヴィンセントも、ぱたんと横になり、頼りなげな吐息を荒げたままだ。

「……美味しかった。ありがとうな、二人とも」

ありがとう――でも、俺が今度は……臨戦態勢に入っていたり。いけないな、猫が二人もいると。終わるタイミングが見つからない。

「お前たちもそろそろ、ツライだろう? 最後に三人一緒にっていうのはどうだ?」

二人とも潤んだ瞳で見つめてくる。「もうやだぁ」っていうのと「もっとしてぇ」っていうのの入り交じった、純粋な悪意だ。

「……同時に二人に入れるのは勿論無理だから……片方だけ。二人で決めな」

クラウドとヴィンセントは、困ったように顔を見合わせる。どうやら……あれだけいってたくせに、まだ二人とも、俺のが欲しいらしい。

「ヴィン……、していいよ」

クラウドがおずおずと言った。

「クラウド……?」

「おれ、もう、今までいっぱい、してもらってるから。ヴィン、いれてもらっていいよ」

「……いいの?」

「ん」

「決まったみたいだな」

俺はヴィンセントを抱き上げると、胡座の中、向こう向きにして座らせた。

「もう散々慣らしたから、準備はしないよ」

「え……?」

その身体を太股支えて持ち上げて、真ん中で上を向く俺の奴の上に、降ろしてゆく。意表を突いた開拓に、ヴィンセントが短い悲鳴を上げた。肩越しに見えるそれが、びくびくっと震えて、休まる暇なく、勃起したまま再び卑らしい律動を始める。

「そうしたら……、クラウド、仰向けになって足広げて」

「ど、どうして……」

「三人一緒にいくんだ。お前のには、ヴィンセントのを」

ヴィンセントがびくとこちらを向いた。俺は気にせず、ヴィンセントの前を掴み、空いた手でヴィンの胸を支えて前傾姿勢を取り、ゆっくりとヴィンセントの肉根をクラウドの肉蕾に押し当て、一気に串刺しにした。

「あぁ……いっ」

クラウドよりもヴィンセントのほうが細い悲鳴を上げた。

「あ……はぁん、ん、……や、ヴィン、おっきぃ、おっきぃのぉ…≠、きゅうん……」

ヴィンセントのペニスを賛美して、クラウドも彼の顔を指すペニスの先を何度か細かく痙攣させた。このまま動いたなら、クラウドと俺を残して、ヴィンセントだけが先に到達してしまうだろう。俺はクラウドの腰の後ろで震えるその尻尾に手を伸ばし、掴んだ。

「にゃあん!」

それだけで大きく跳ねたクラウドの身体に、胎内での方向を無理矢理変えさせられたヴィンセントが悲鳴を上げた。

「三人一緒に。……いいな、二人とも」

「ひゃぅ、んっ、にぁ……ぅん! ……あ、……あ」

「……い、ぅ……くふぅ……、は…………あっ」

クラウドのペニスから垂れ出す蜜は、きっとヴィンセントからも溢れているんだろう。そして、クラウドの胎内の快感によって余計に感じて締め付けるヴィンセントの胎内でも、俺のが零れているのに違いない。余裕があるように見せて……俺も結構、しんどいんだ、この状況を長時間耐えろというのは。

だから、短期決戦。よし、イこうよ、みんな。

「きゃあん! あっ、あっ、あっ……あ、っ、ん!あっ……駄目、だめぇ、っ、くらうどぉ、そんな……あぁ、しめちゃ、……はぁあ! ざ、く、おおき……っん! おちんちん大き……ひっ、ひゃぅ」

「やっ、ざっく……しっぽ、……っ、んん、はぁ、やあん、しびれちゃ……っ、もれちゃうぅ、も、でるぅ、あっう、ヴィン、いい、いいっ、ひいぃっ……奥ぅ……そこ、いいっ」

二匹とも……もう好き勝手過ぎるよ、声が。

もっとも、俺にはその方が良いんだ。良い声しているよ二匹とも。実際、ヴィンセントの尻の中は蕩けそうだし、握ったクラウドのしっぽの動きはリアルだし、二人の嬌声は、俺を内部から破壊する。

「……いって……いいか?」

俺が訊ねるまでもなく、二人の声はかぶった。

「いくぅ、いくっ……いっちゃうよぉ!」

クラウドのしっぽが電流走ったようにびびびと震えたのと、ヴィンセントが尻を五度強く締めたのと、……ギリギリ、ヴィンセントの方が早かったかな。俺はそれに触発されて射精しながら、クラウドのしっぽの電気を感じた気がする。

三人とも、射精した直後は動けなかった。それほどの快感だったのだ。ゆっくりと接続を解くと、クラウドがぶるぶるっと震えた。ヴィンセントも、ぴくんぴくんと反応する。俺は胸いっぱいの快感に、ただ横たわることしか出来ない。

 

 

ヴィンセントもクラウドも、お腹が痛いと言って晩飯はいらないらしい。精液をあれだけ、互いに腹の中に放っていれば当然といえば当然か。一応溢れてきたのは全部拭ったんだけど、多少は胎内に残っているかもしれない。かきだそうと指を突っ込むと二人ともとても怒るので、断念したのだ。

いま裸のまま折り重なってソファに沈む二匹は、尻尾を絡ませて、未だに催眠術から抜けきれていないように見える。あれほど何度も到達すれば、たぶん俺だって腰と腹が壊れてしまうことだろう。まして、あのように幼いからだでは。きっとヴィンセント、途中何度もヒトガタに戻ろうと想ったに違いない。アイツが俺に、あそこまで好き勝手を許すなんて。

「二人とも。リンゴくらいは食べないか? 甘くて旨いぞ」

目線だけ、俺が不器用に兎型に切ったリンゴに向ける。耳が短くて、猫にしか見えない。

「食べさせてやろうか。なあ」

俺は笑って、口に咥える。去年、クラウドがヴィンセントにこうやって食わせて、俺の中で少しだけマイブームになったやり方だ。クラウドがペロリ、リンゴの先を舐めて、それからしゃくっと軽い音を立てて齧った。残った半分は、ヴィンセントに。口の中、俺の唾液が絡んだリンゴをぼんやりと眠そうな目で食べた。

「もう一つくらい食べるか?」

二人とも力無く首を振る。

「も……、いい。はいんない」

「……そうか? じゃあ、ゆっくり休んでろよクラウド。……ヴィンセント」

俺はヴィンセントを抱き上げて、立たせる。とろんとした目の中に、微かな不平の色が見える。ぼーっとしてたい寝ていたい、だらけたい欲求の色だ。

「後片付けするから、手伝えよ」

「……いやです」

「嫌ですじゃない。掛け布団二枚、精液とかでグチャグチャなんだぞ、一人で片付けられるわけないだろ。手伝えよ」

「……いやだ。だって、僕はされただけだ、あなたが触ったから出たものばかりでしょう?」

「四の五の言うな、いいだろ、ヒトガタ戻って手伝えよ」

抱き寄せて、尻尾を軽く撫ぜる。ヴィンセントは可愛らしい猫型らしからぬ舌打ちをひとつして、俺を突き飛ばすと一瞬で、俺を見下ろすほどの元の形に戻る。全裸、あの可愛らしいあそこが、完全に大人の物になってしまった。しまった、って、別に悔やむようなことじゃないけど。仰向けでうたたねに入ってしまったクラウドの、あそこも眠っている、その様子は丸解かりだ、可愛さで言えば当然そっちの方がいいわけで。いや、でも、用途にもよる……。

「服を着たら手伝ってやる。……しかし、あれだけ好きにさせてやったというのに、まだ私を使うのかお前は」

「あんたにしたって趣味の一環だろう」

俺のひとことにフンと鼻を鳴らし、尻を出したまま汚れたベッドが放ったままの部屋へと向かっていった。細いながらも無駄のない筋肉を隠した身体、見ているとまた余計な気を起こしそうだから、彼が服を着た頃に、部屋に向かうことにした。

「……ほら、クラウドも。裸んぼうだと風邪ひくぞ」

悪戯心に、縮んだペニスを引っ張ってやると、一瞬で跳び起きた。

「服着よう。持ってきてやるから」

「にゃぅう……」

引っ張られた所を隠して鳴く。俺は耳の後ろを掻いて機嫌を直させてから、クロゼットへと向かった。クラウドに服を着せて、ベッドを元通りにするころには、二人とも食欲を取り戻しているかもしれない。そうしたら大した事のない腕を奮って、俺を幸せにしてくれた二人のために、ささやかなディナーを作るとしようか。


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