こんな感情、馬鹿げてる。


ありえない、理解出来ない、いや…理解したくない。











それは。















「成歩堂。」

呼ばれなれた声に振り返ると、幼馴染の検事がそこにいた。

「御剣、久しぶり!」

成歩堂は零れるような笑顔を見せると、嬉しそうに近況と語り始めた。
真宵のこと、春美のこと、たった今扱った法廷のこと。
―――それから、アヤメのこと。

思いがけない再会の後も、何度か面会に訪れているということ。

彼女が出所したら出来るだけ協力していきたいと思っていること。

そこまで話したところで、御剣の様子がおかしいということに気付いた。

「…御剣…?どうかした?」

「…いや、なんでもない。――悪いがこれから所用があるのでな…、私はこれで失礼する。」

「御剣…?」

そう言うと御剣は振り返ることなくその場を立ち去る。

















成歩堂と別れ、検事局の己に宛がわれた部屋に戻ると御剣は大きな舌打をした。

ドサリとデスクチェアに腰掛けると両手で顔を覆い、大きく溜息をつく。



―――自分の行動が理解出来ない。



御剣は己の行動と感情に戸惑いを隠せないでいた。

成歩堂の口から聞きなれない、アヤメ嬢の話題が出た途端にスーっと感情が冷めていくのが判った。何故だかは判らない。けれど、成歩堂の口からそれ以上の言葉を聞きたくはないと思い、嘘をついてまでその場から離れた。

己の行動の理由がまったく判らなかった。

別に成歩堂が昔の恋人と懇意にしているからといって、御剣には関係のないこと。

それなのに―――。

成歩堂の口からその言葉を聞いた瞬間、己の中に走った激情にも似た感情。

これではまるで、成歩堂の恋人に嫉妬しているみたいではないか―――。


こんなことありえない、馬鹿げてる。


そう一笑出来ない自分が腹立たしい。


これでは、まるで―――。








成歩堂に恋をしているようだ。






その考えに行き着いて、ストンと胸の内にスッキリとした感覚が生まれた。

認めたくはない、そう思いたくはない。

けれど。

この感情は、これは。







恋愛感情だと。







成歩堂が、己以外の誰かのために懸命に働きかけるのを見ているのが嫌だ。

成歩堂が、己以外の誰かに固執するのが嫌だ。

成歩堂の思考を占めるのは私だけでいい。






あぁ、そうかと。

今まで感じていた、成歩堂に対する理由の判らない感情。




これは、独占欲。




これは、恋愛感情なのだ。