再会
ここのところ、事件の調査や裁判の準備でずっと
事務所から帰宅することが出来ない日々が続い
ていたが、裁判も無事に片付き、ようやく数日振
りに帰宅することが出来た。
部屋に入るなり、シャワーも浴びずに資料がたっ
ぷりと詰まった鞄をソファに投げつけて寝室へ直
行してバフッと真っ白なシーツに誘われるままに
疲れきった身体をスプリングのきいたベッドへと預
けた。
そうとうに疲れている。
…自覚はある。けれど、なぜか寝付けずにぼんや
りと寝室の天井を見上げていると頭の中に先ほど、
別れ際に真宵から言われた台詞が浮かび上がっ
てきた。
「いい加減にしないと本当に身体を壊すよ?…な
んでそんなに無茶してまで仕事をするの?」
たしなめるような言葉で、心配してくれているのが
とてもよく判る優しい声で。
心配をかけて悪いとは思っている。けれど、どうし
ても。
山ほど仕事をこなして、頭の中を裁判のことでいっ
ぱいにしていないと、どうしても。
思い出してしまう。
今は傍にいない、彼の人を。
傍にはいない、判っているのに。
そんなことは判りきっているのに。
声を聞きたくて、姿を見たくて堪らなくなってしま
うから、だから。
身体をクタクタにして、何も考えられないように、
思い出さないように。
仕事で頭をいっぱいにして、思い出す暇すらもな
いように。
自分が、こんなに弱い人間だとは思わなかった。
彼が傍にいない、ただそれだのことなのに。
もっとずっと長い間、離れ離れになっていたのに。
逢いたい、逢いたい、逢いに行ってしまいたい。
それは決して出来ない、今の僕の望み。
例え、僕が逢いに行ったところで彼の人は決して
逢ってなどくれないだろう。判ってる。
今のままじゃ、駄目だから。
だから。
いつの日か。
堂々と逢うことが出来るその日まで。
彼の人は自分を戒めているのだろう、だから。
いつの日か、君に逢えるまで。
僕も自分を戒めて、磨き続けよう。
いつの日か。
END