弁護士の憂鬱。











数ヶ月前に、一応幼馴染という関係にある検事から愛の告白をされた。

仕事のあとの居酒屋。

というムードの欠片も存在しない場所で、奴は日本酒の入ったコップを片手にイキナリ真面目な顔つきになったと思ったらイキナリ口走った。


「…どうやら私は君のことを愛しているらしい。」


…正直、とうとう頭に虫でも湧いたのだろうかと思った。

普段から変な奴だという認識はあったが、まさかその変な奴に告白なんてものをされるだなんて思わないだろう。ましてや、同性同士で。


だから。


だから、僕はただの冗談だと思って軽く、その告白を流したんだ。…それが全ての間違いだった。













告白から数日たった頃から、御剣は僕の部屋に入り浸るようになった。流石に毎日ではないけれど、一週間に数度の頻度で姿を見せるのだから入り浸っていると言っても過言ではないだろう。

現れる御剣の手にはケーキだの、酒だの、はたまた僕の扱っている事件に役立ちそうな資料だったりと様々な手土産がぶら下がっており、迷惑だと追い出すには少々勿体無いと歓迎とまではいかないまでも、一応出迎えてやっていた。

…今思えば、それすら全ても拒絶すべきだったというのに。

御剣が僕の部屋に入り浸るようになって、数週間。

油断していたのだ、僕は。

あの告白以降、別段何をするでもなくただ僕の部屋に入り浸っているだけで…。
だから、告白されたということ自体をすっかり忘れてしまっていたんだ。




その日、僕は酔っていた。

御剣が手土産に持ってきた、日本酒。

それは幻の一品と呼ばれるもので僕なんかがお目にかかれるだなんてそうそうはないだろうという一級品。折角の機会だし、これは飲まない手はない、そう思って口にした。口当たりもよく、ついつい飲みすぎてしまって、飲み始めて一時間もしないうちに僕はすっかりロレツが回らなくなってしまっていた。

持ってきた当の本人はセーブしていたのか、許容範囲が広いのか平然とした顔をして御猪口を煽っていて、そのすかした面が少〜し腹立たしいと思った。

…そこまでは覚えてる。




次に目が覚めたとき、僕は寝室にいた。

リビングで飲んでいたはずが、気が付けば寝室のベッドの上。



…そしてふと見ればシャツは半剥き状態で胸を露わにされいて、尚且つ僕の上には御剣が馬乗りになっている状況だった。

知らぬ間に脱がされて、あまつさえ男に乗られ一気に酔いが覚めた。


「…これは一体何の真似だ?」

「…成歩堂、頼む!」


僕の質問はさらりと無視し、至極真面目な顔で何言うのかと思えば。







「挿れさせてくれ!!」




…僕がその場でこの変態検事を殴り飛ばしたのは言うまでもない。



そう、恐ろしいことに御剣のあの告白は真剣なものだったのだ。


それ以来、毎日のように僕の部屋、もしくは事務所で繰り広げられている会話が。










「挿れさせてくれ」



「…殺すぞ、変態フリル男v」









…なのである。

どんなに手酷く拒絶しても、奴は懲りない。いや、言葉が通じないのだとしか思えない。本当に。








「いい加減にしろ!」

「そんなに照れることはない。」


「いっぺん死ね!」

「お前の中で死ぬのならそれもまた本望だ。」


「近寄るな、変態検事!」

「フッ、その恥じらいがまたそそるな…。」





…万事においてこの調子なのだ。

あぁ、神様。

一体僕が何をしたというのでしょうか。

お願いですから、あの変態検事をどうにかしてください。









…そして今日もまた、検事と弁護士の不毛な攻防戦が始まる。