無題







綱吉にとって雲雀恭弥は決して近づきたくない存在だった。
泣く子も黙る鬼の風紀委員長。
けれど、リボーンが現われる前ならば自分が気を付けてさえいれば一生関わらずに済む、そんな相手だった。
…リボーンが現われさえしなければ。







並盛中の応接室。
校内近づきたくない場所ランキング一位の場所。
そのソファに綱吉はいた。

少し短めな制服のプリーツの裾は捲れて白い太股は惜し気もなく晒されている。両腕は頭の上で括られていて動こうにも動けない。誰がどう見てもこの姿は拘束されている。
綱吉は間違いなく拘束されていた。

こんな姿、教師や級友たちに見られたらただじゃ済まない。…綱吉を拘束している相手が雲雀でさえなければ、だけれど。

「ひば、りさん」

呟いた声は半分泣き声でかすれている。
白い頬は涙の跡が幾筋もあって、大きな瞳は赤く瞼さえ腫れていてひどく痛々しい。

「放して下さい…」

必死な願いはとても弱々しいもので、雲雀の加虐心を煽る以外の何物でもなかったけれど、綱吉はそんなことに気付きもしない。

「駄目だよ」

迷いもせずに返された言葉にまた、じわりと涙が滲む。


どうして。


そう問いただしたいのに言葉にできずに、喉の奥からひくっとしゃくり上げる音だけが漏れた。
雲雀の行動の意味も、理由も理解できずに恐怖心だけが植え付けられていく。


こわい
だれかたすけて
りぼーん
ごくでらくん
やまもと


そこまでで思考は停止した。
否、停止させられたのだ。
視界一杯に広がる整った顔、塞がれた唇。
何度目かもわからない口付けを落とされたのだと理解出来たのはぬるりとした感触を舌先に感じてからだった。
噛み付くような、乱暴なキス。
口膣内を犯されていく、浸食されていく感覚。
晒された太股に手を這わされて、ぞわりと鳥肌が立つ。


いやだいやだこわい


抵抗する術をすべて封じられて、ただ犯されていくのを甘受するしか出来ない自分が情けなくて涙は一層はらはらとこぼれ落ちる。




「そんなに俺が目障りですか」

長く、痛いキスから解放されてからぽつりと呟く。
その瞳はひどく空虚だった。

「これは罰だよ、悪いのは君だ」
僕以外のオトコと群れたりするから。
僕を見ないから。

胸の中でだけ理由を告げて、雲雀は静かに涙を流す綱吉に再び口付けた。
抵抗しようとすらしない綱吉の唇は冷たく、塩辛かった。




「悪いのは君だよ」







僕はこんなに君を好きなのに、気付こうとしないから。