没文001





どきどきした。

白いうなじに汗が流れて、陽の光が反射してキラキラしていた。
見てはいけないものを見てしまった気がして、どきどきした。

細い首、細い腕、白い肌。

初めて逢ったときは女の子かと間違えた。
廉の全てがおれにはカルチャーショックだった、のだと思う。
女の子だと勘違いしていた俺にとって廉は、今まで回りにいた全ての女の子たちと違っていた。
誰よりも可愛いと思ったんだ。
ほにゃっと笑った顔が可愛くて、毛虫が怖いと泣き出した顔まで可愛いと思った。
だから廉が男なのだと知ったときは酷く落胆したものだった。

廉が自分以外の誰かを優先させるのが許せなくて、子供染みた(実際子供だったけれど)独占欲で廉が群馬にやってくるときはずっとずっと一緒に過ごした。
それはおれたちにとって空気みたいにごくごく自然のことだったから。


おれの隣には廉がいて。
廉の隣にはおれがいて。


ずっと、そうなのだと信じていたんだ。
ずっとずっと一緒なんだと。














没文002






泣いている廉を慰めるのはいつだって俺だった。子供の頃からずっと、それは成長した今だって変わらなかった。



皆の言うことなんて気にするな
俺はお前の実力を知っている
胸をはっていい
三星のエースはお前だ



優しく頭を撫でてやりながら、ゆっくり、ぽつりぽつりとそう囁いて廉が泣きやむまでずっと傍にいた。
泣いている廉を見ているのはとても苦痛で仕方なかったから、少しでも早く泣き止んでほしくて。
けれどはらはらと涙を零す廉の横顔は酷く儚く見えて、消えてしまうんじゃないかと錯覚を覚えてしまう。
体育座りでぺたりと地面に座り込んで、俯きしゃくりあげている。

自分に出来うる限り、全てのことをして守ってやりたかった。
だからどんなときも傍にいて、守って。
けれど廉は泣く。
俺がどんなに守っても、庇っても、廉は泣く。

俯いて嗚咽を繰り返して、気付けば廉は。
隣にいても俺のことを見なくなった。
俺の言葉を否定して、涙を流して謝罪を繰り返す。

傷付いて傷付いて。
それでも悪いのは自分だからと。


そんな廉にひどく腹が立った。
廉の置かれた状況を考えればそれは仕方のないことなのかもしれない。
けれど、感情がついていかなかった。



俺は、いつでもどんなときだって廉の味方なのに。
どうして廉は俺のことを信じて頼らないんだ。