一人きり












風が頬を刺す。

痛いくらいの寒さ。

吐息は白く目の前を曇らす。




せめてマフラーくらい身に付けてくるべきだったのかもしれない。

そういえば、昨夜の天気予報で今日はこの冬一番の冷え込みになると言っていたような気がする。

コート一枚では寒さが身に染みた。


空は灰色で、空気に湿気が混じっているのを感じたからもしかしたら雪でも降るのかもしれない。


一人で歩く街はすっかりクリスマスのイルミネーションに飾られていて、赤と緑と白の洪水だった。

至るところからクリスマスソングが聞こえてきて、あぁ今年のクリスマスは一人なのだと妙に実感してしまった。














好きが苦しくなりだしたのは一体いつからだったろう。

二人を取り巻く環境は子供の頃のような単純なものではなくなってしまった。
ただ好きなだけだったのに。

ただ好きで、好きで。

好きでいたかっただけ、好きで傍にいたかっただけだったのに。



気がつけば、一緒にいるだけで苦しくなってしまった。

傍にいられるのが何よりも嬉しくて、大好きで。

それが、苦しくて、痛くて。

辛くて、辛くて。


離れたのは、廉から。

勇気がなくて、痛いのにそれでも離れがたくて自分からは出来なかったこと。

そんな叶を差し置いて廉は離れた。叶を置いて、一人で離れていった。

苦しかったのも、痛かったのも二人なのに。それは廉も同じなのに。最後の最後、一番辛い選択を廉はした。

…叶のために。




離れて、苦しくはなくなった。

けれど、痛さと辛さは増した。

心が痛かった、辛くて辛くて堪らなかった。


廉が離れたのは自分のためなのに。こうするのが一番いいんんだ、そう思ってのことなのに。


痛くて、辛くて。











「廉…」


灰色の空に叶の呟きが消える。

離れてようやく気付いた己の馬鹿さにため息が零れそうになりながら。

苦しくても、痛くても、辛くても。





傍にいられるだけでよかったのだと。












クリスマスムードに浮かれた街並の中。

もう一度呟いた。


「廉…」




頬を刺す冷たさは増すばかりだった。