「お前が三橋のこと好きゆうんはよぉーく判ったけど、三橋のどこがそんなええの?」




唐突の質問。


それは織田にとって純粋な疑問だ。











僕が君を好きになった理由











昼休みの喧騒の中、1リットルの紙パックのお茶を男らしく豪快にラッパ飲みしていた叶は一瞬驚いて目を見開いてから、もう一口お茶を飲み込んだ。

「なんだよ、突然。」

「せやから、三橋のどこがええの?」




織田には判らなかった。




確かに三橋には野球をやる者にとって魅力的なコントロールを持ってはいるけれど。

織田にとってはそれだけだ。

野球はコントロールだけでするものではない、それが織田の持論だ。

織田には叶の方がよっぽど魅力的な投手で、だからこそ叶が何故そこまで三橋に入れ込むか理解出来ない。

だから思わず口からついて出た疑問。





「廉ってめっちゃ可愛いんだ。」

「…は?」



菓子パンを頬張りながら答えた叶はこれ以上はないっていうくらいに真剣な面持ちで呟いた。

織田はといえば、思いも寄らない叶の言葉に目を丸くした。

そんな織田の様子に気にも留めずに叶は言葉を続ける。





「色は白いし、同じ投手とは思えないほど華奢で細いし、目はくりくりしててでっかいし。」

「へ?」

「ふわふわのくせっ毛は茶色いし、びくついた様子も可愛いし。」

「ぇえ…?」

「泣き虫なくせに頑固だし、まぁよく泣くけど、その分よく笑うやつだし。泣き止んでオレのこと呼びながら上目遣いで笑うのとかマジ可愛いし。」

「か、叶さん…?」

「うひって言ってさー照れ隠しの笑顔とかすっごい可愛いんだよな。」

「……。」






延々と『三橋はどんだけ可愛いか。』について語りだした叶はぺらぺらぺらと止まることなく喋り続ける。




これは一体何なのだろう。
叶は一体何を言っているんだろう。




ぐるぐるした思考で、そう考えていた織田に一緒に昼食を取っていた畠がポンと肩を叩いた。

「…ああなったら叶はしばらく止まんねぇから…。」

「は、畠…叶って。」

「…だから、叶は三橋のことが”大好き”なんだよ。」


どこか遠くを見詰めるような目で畠はそう言う。

もう一度視線を叶に戻せば、叶はまだまだ『三橋の魅力』とやらについて語っている。

「…好きってそういう意味なん…?」

「……。」








出来ることならこんな事実知りたくなかった。

織田はまだ延々と三橋について熱く語っている叶を前に、迂闊な己の言動を後悔するのだった。