おもいなみだきす











「修ちゃんが一番好きだ、よ」

そんなの言われなくても判ってる。

「だから、別れるの」

どうして!

「ごめんなさい、…大好きだよ」

嫌だ。

「さよなら」

嫌だ!








必死で縋った。

手離したくなくて、離れたくなくて、別れたくなくて。

無様なくらいに、格好悪く。

無様でも、格好悪くてもいい。





手離したくなんてなかったから。

離れたくなんてなかったから。

別れるなんて、考えたこともなかったから。

きっとどんなことがあっても、廉はずっとオレの隣にいるんだと。そう、信じていたから。


けれど、それはオレの勝手な思い上がりで。

廉は振り返ることなく、必死で追い縋ろうとしていたオレの手をするりとかわして。

そしてそのまま、オレの隣から消えた。





そうしてオレの手元に残ったものは。

マウンドとボール。

手に残る僅かな廉の温もり。


それから、マウンドに登れるということに対する隠しようがない喜びと、その喜びとは裏腹な胸にぽかりと穴が開いたような空虚感。





廉がいない。すぐ隣に、ずっとオレの傍にいるはずだった廉がいない。

オレの左側、少し遅れ気味に。

控え目に笑いながら隣にいたのに。




廉がいない。




廉のいない隣は温もりを失って、ひどく冷えたように感じる。

だから、その温もりを取り戻したくて。

また、隣で笑っていてほしくって。



オレの隣にいてほしくって、望んだ練習試合。



廉は戻らなかった。


「さみしくない、よっ!」


そう言った廉はまるで知らない誰かのように思えて、別れを告げられたときと同じように胸が痛かった。

それでも、そのまま終わりになんて出来なくって。








すぐにでも合宿所へ戻るという西浦の女性監督に頼んでなんとか廉と話をする時間を作った。
畠や織田たちは苦笑いして、気を利かせてくれて。
西浦の選手達も(一人だけ刺すような目で睨み付けてきた奴がいたけれど)オレと廉を二人にしてくれた。


「…れ、ん」

内心オレは少し…いやかなり、恐る恐るとしながら。別れてから口にしていなかった呼び名で廉の名を呼んだ。

「しゅう、ちゃん…」

廉は一瞬だけ酷く驚いた顔をして、そしてオレと同じように昔どおりの呼び名で呼んでくれた。
たったそれだけでもオレにはとても嬉しかった。

「ごめん、な。時間ないってのに…」

「ううん、大丈夫っ」

うひっと変な顔で笑う廉が愛しい。

「…これだけは言わないと、終われないから」

大好きだから。
だから。

「オレ、廉のこと一番好きだ」

別れを告げられた日に、廉に言われた言葉をそのまま返す。

「ごめんな…」

「しゅ、…ちゃ…」

オレの言葉に驚いた廉の頬にそっと触れて、一瞬だけ唇を寄せてすぐに離す。

「ごめん、な」

「しゅうちゃん…」






それ以上、言葉なんていらなかった。

大好きだから。

だから。





これ以上一緒にいることは出来ない。

オレにもようやく判った。

一緒にいたらきっと、傷だらけになるから。

誰より好きだから、傷付けたくないから。

離れるのは辛いし、苦しいし、痛いけど。










だけど。






「だいすきだよ…」






呟きながら。

きっともう二度と、触れることのない温もりを感じながら。

もう一度だけ廉の頬に唇を寄せて。





「だいすきだよ」












みことさんと約束した交換こ文章のほっぺにちゅーですv
これで堂々とみことさんに頂いた文章二つともUPできるよ…っ!