桃色両想い。 3










偶然出会った野球部の面々と別れて、二人はゆっくり顔を見合わせてやっぱり照れくさそうに笑い合った。

この前逢ったのは、3月の終わり頃。

廉が群馬に出向いて、叶の部活の合間にちらっと逢っただけでこうしてゆっくりとデートをするのは冬休み以来だった。

久しぶりすぎて、叶の顔見るのが恥ずかしい。

妙にどきどきしてしまって、顔が熱くなっていくのが判った。

「廉、いこっか」

叶はそんな廉の様子に気付いているのか、いないのか。普段通り変わらぬ優しさで、手を差し出した。

「う、んっ!」

そんな叶の優しさが嬉しくて、やっぱり修ちゃんはかっこいいなぁと思いながら廉は差し出された手を取った。

そうして、隣に並んで歩き出そうとしたとき。

ちゅ。

軽く音を立てて、触れていたのはほんの一瞬ですぐに離れてしまったけれど。

叶が唇を重ねてきた。

「しゅ、ちゃ…っ!」

こんな人ごみでっそう言おうと思ったけれど、あまりに驚いて恥ずかしくて舌が上手く廻らない。

「行こう」

叶はそんな廉の反応は予想済みだとばかりに優しく微笑んで廉の手を引いた。











お腹が空いたからと言ってまずは食事だと二人で駅前のファストフード店に入って、食事を取った。

成長期の男の子だからと、それなりの量を食べる叶と、見かけにはよらずにその叶と変わらぬ量の食事をぺろりと平らげてしまう二人。部活で忙しく、バイトなどもってのほかで少ない小遣いでやり繰りしている身としてはデートでの食事は大抵安いバイキングか、安くて腹に溜まるファストフードで取るのが常だ。

廉はよく食べる。

それは見ている方が気持ちいいと思ってしまえるくらいに。

食べているときの廉は本当に幸せそうで、叶はそんな廉を見るのが好きだ。普段は限られた時間で食事を終えなければならない運動部員の性質で、自分は早く食べ終わってしまうけれどもこもこと目の前にあるものを口いっぱいに頬張って、幸せそうに食べる廉を見るのが好きだ。

じっと見詰めてると時折廉は恥ずかしそうに、頬を染める。…口を動かすのは忘れずに。

そんな廉の様子が可愛くて可愛くて。

…廉は食べてるときに見るのは恥ずかしいからやめて欲しいと言うけれど、可愛いからつい目が追ってしまう。

そうして、そんな廉をこうして見ていられるのが幸せだなぁと思う。




一度は離れてしまったから、余計にこんななんでもないことを幸せだと思うのかもしれない。

去年の今頃は、まだ西浦との練習試合の前で廉とは別れていた状態だった。

なんで別れないといけなかったのか、廉なりに考えて出した結論に納得がいかなくて毎日毎日考えていた。

廉と離れるのは辛かった。

毎日辛くて辛くて、やり切れない空虚感を埋めるためだけに野球に取り組んでいた。

けれどやはり、廉と別れることに納得なんて出来なくて。

練習試合をしたあの日、もう一度廉と向き合って話をした。

叶の気持ち、想いを全て伝えて。そして廉の気持ちも考えも全てを聞いて。

互いに想い合っていることを確認して、叶を気遣う余りに別れを切り出したこと、廉にとっても別れは辛いものだったこと。

全てを話し合って、想いを確認し合って。

再び付き合い始めた。

埼玉と群馬と距離は離れたままだったけれど、想いは以前よりもずっと近くに。そんな気がして。

距離は辛いけれど、それでもずっと幸せだと思う。









「しゅうちゃ?」

もぐもぐと口を動かしながら、じっと己を見詰める叶を不思議に思ったのか問いかける。

「なんでもないよ、廉」

こんな風にまた、廉との時間を持つことが出来る。

あぁ、なんて幸せなんだろう。

廉を見詰めながら、叶は幸せをかみ締めた。







続く。