二人だけの秘密。 お母さんにも、お父さんにも内緒だよって指きりして約束して。 にっこり笑って。 「二人だけのひみつきちだね」 そう言った。 約束とひみつきち その場所は二人だけの秘密だった。 その場所を見つけた日、いつもなら文句を言いながらも廉と叶の後をついてくるルリはピアノ教室があるからといなかった。 だから、女の子がいるときには決して行かないようなちょっと危ない、だけどワンパク盛りの男の子には面白そうな場所で遊ぼうと二人であっちこっちと遊び歩いていて偶然に見つけた場所。 原っぱの丘をちょっと下ったところにある、小さな窪み。洞窟だなんてお世辞にも言えない浅い窪みけれど子供二人が入り込むには十分な広さで丘の高さのそこは町全体を見渡せた。 どきどきして、ここを二人だけのひみつきちにしようねと約束した。 そうして、日が暮れるまでその場所で遊んでいたのはもうずっと昔のこと。 廉は数年ぶりにひみつきちを訪れた。 子供の頃の記憶ではもっと広いと思っていたその場所は、15になった廉にはとても狭く窮屈なものだった。 けれど膝を抱えて座り込めば一人分スペースには充分で、廉は黙って腰を下ろす。 この場所に最後にきたのは小学生の頃だ。 中学に入ってからは、色々と…本当に色々とあってこの場所にくることはなかった。 いや、無意識に避けていたのかもしれない。 この場所には、楽しい思い出がたくさん詰まっていて。ここを訪れれば否応なく楽しい思い出を思い出して、その頃と今を比べて辛くなってしまうから。 ここには叶との思い出がありすぎるから。 二人きりのひみつきちだから。 ここには二人の思い出がたくさんあって。 だからここには、ずっと来なかった。 叶とのたくさんの思い出。 だから、今日ここを訪れた。 今日、廉はこの街を離れる。 気軽にここに来れるのはきっと、今日が最後のチャンスだ。 だから。 最後、だから。 直接叶へさよならなんて言えなくて、だからその代わりに。 この場所で叶と決別するために廉は。 座り込んで目を閉じる。 瞼の裏に浮かぶのは、叶の笑顔。 遠い昔、ここをふたりのひみつきちにしよう。そう言って笑った叶の。 酷いことばかりしてたのに、いつだって優しく笑って廉と呼びかけてくれた叶の笑顔。 直接さよならと言えないのは廉の弱さ。 だからこの場所で。 直接は言えない別れを。 |