知らない横顔







そこに在るのはオレの知ってる廉じゃなかった。


廉が着ているのはオレとは違うユニフォーム。

廉の周りにいるのはオレの知らない、オレのいない学校での仲間たち。

全てが違った。









ほんの数メートルの距離の先にいる。

ほんの少し足を踏み出して、いつものように声を掛ければいい。

そうすればいいのに、オレはあと少しの距離を縮められずにいる。

笑って声を掛ければいい、オレの傍に戻ってこない、廉はそう言い切った。けれど、オレのことを否定したわけではない。

そう判っているのに。

声を掛けることも、距離を縮めることも出来ずに。

そのまま廉は、オレの知らない奴等に囲まれて車に乗り込んで。

三星学園を後にした。








声を掛けるだけ、ただそれだけだったのに。

出来なかった。

廉の顔が、目の前にある廉の顔が。


オレの知らない横顔だった。



オレの知らない奴等に囲まれて、オレの知らない笑顔で笑い、オレの知らない表情で、オレの知らない横顔で。

オレの前にいた廉は、確かに廉だったけれど。

廉じゃなかった。

手を伸ばせば届く距離にいたのに、そこにいた廉にもう手が届かない。

そう思って。

だから、声を掛けられなかった。

なんて臆病な、自分でもそう思うけれど。









あんな廉は知らない。

あんな風に笑う廉は知らない。

あんな廉は今まで見たことがない。







オレがいなくても平気、そんな風に言う廉をオレは知らない。







目の前に、ほんの数メートル先にいたのは。

知らない横顔の、知らない君。








お題配布元:水影楓花